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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086504
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】吐水装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/28 20060101AFI20230615BHJP
   B05B 1/18 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
A47K3/28
B05B1/18 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201062
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】中島 平裕
(72)【発明者】
【氏名】八板 遼平
(72)【発明者】
【氏名】森泉 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】村下 武司
(72)【発明者】
【氏名】花城 加奈子
【テーマコード(参考)】
2D132
4F033
【Fターム(参考)】
2D132FA03
2D132FC04
2D132FJ20
2D132FJ23
4F033AA11
4F033BA04
4F033DA05
4F033EA01
4F033FA03
4F033KA00
4F033LA00
4F033NA01
(57)【要約】
【課題】コンパクトな構成で、十分に広い着水面積を確保することができる吐水装置を提供する。
【解決手段】本発明は、吐水装置(1)であって、吐水装置本体(10)と、所定の振動平面内で水を往復振動させながら吐水する振動発生素子(22)と、を有し、振動発生素子は、給水通路(24)と、この給水通路の流路断面の一部を閉塞するように配置され、その下流側に交互に反対回りの渦を発生させる衝突部(30)と、形成された渦を導くように給水通路の下流に設けられた渦列通路(26)と、この渦列通路の途中に設けられた流れ拡散部(27)と、渦列通路によって導かれた水を吐水させる吐出通路(28)と、を備え、流れ拡散部は、下流側に向かって渦列通路を高さ方向に流路を狭めるように形成された段部から構成され、この段部の高さは、渦列通路の高さの50%以下であることを特徴としている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を往復振動させながら吐水する吐水装置であって、
吐水装置本体と、
この吐水装置本体に設けられ、所定の振動平面内で水を往復振動させながら吐水する振動発生素子と、を有し、
上記振動発生素子は、
供給された水が流入する給水通路と、
この給水通路の流路断面の一部を閉塞するように、上記給水通路の下流側端部に配置され、上記給水通路によって導かれた水が衝突することで、その下流側に交互に反対回りの渦を発生させる衝突部と、
この衝突部により形成された渦を導くように上記給水通路の下流に設けられ、上記振動平面に平行な方向の幅が、上記振動平面と直角な方向の高さよりも広く形成された渦列通路と、
この渦列通路の途中に設けられた流れ拡散部と、
上記渦列通路によって導かれた水を吐水させる吐出通路と、を備え、
上記流れ拡散部は、下流側に向かって上記渦列通路を高さ方向に流路を狭めるように形成された段部から構成され、この段部の高さは、上記渦列通路の高さの50%以下であることを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
上記吐出通路は、その高さが、上記渦列通路の最小の高さ以上の高さに構成されている請求項1記載の吐水装置。
【請求項3】
上記渦列通路は、渦列通路の上流側が形成された上流側部材と、渦列通路の下流側が形成された下流側部材を接続することにより構成されている請求項1又は2に記載の吐水装置。
【請求項4】
上記段部は上記上流側部材と上記下流側部材の接続部に形成される請求項3記載の吐水装置。
【請求項5】
上記下流側部材に設けられた渦列通路の上流端における高さは、上記上流側部材に設けられた渦列通路の下流端における高さよりも低く構成されている請求項4記載の吐水装置。
【請求項6】
上記下流側部材に設けられた渦列通路の高さは一定である請求項3乃至5の何れか1項に記載の吐水装置。
【請求項7】
上記段部は、上記下流側部材に形成された渦列通路の途中に形成されている請求項3記載の吐水装置。
【請求項8】
上記段部は、上記渦列通路の内壁面のうち、上記振動平面に平行な方向に向けられた一方の内壁面に設けられている請求項1乃至7の何れか1項に記載の吐水装置。
【請求項9】
上記渦列通路は、上記段部の下流側において、上記振動平面と直角な方向の高さが一定に構成され、上記渦列通路の、上記段部に対向する内壁面は、上記渦列通路を下流側に向かって高さ方向に流路を広げるように屈曲されている請求項8記載の吐水装置。
【請求項10】
上記振動発生素子は、上記衝突部よりも下流側から、上記渦列通路に水を流入させるバイパス通路を備え、このバイパス通路の内壁面の一部は、上記下流側部材によって形成されている請求項3乃至9の何れか1項に記載の吐水装置。
【請求項11】
上記バイパス通路は、その最も下流側に位置する内壁面のみが、上記下流側部材によって形成されている請求項10記載の吐水装置。
【請求項12】
上記上流側部材は硬質部材で形成され、上記下流側部材は軟質部材で形成されている請求項3乃至11の何れか1項に記載の吐水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐水装置に関し、特に、水を往復振動させながら吐水する吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-108830号公報(特許文献1)には、吐水装置が記載されている。この吐水装置には、供給された水を往復振動させながら吐出させる振動発生素子が備えられている。振動発生素子は、給水通路と、この給水通路の下流端に設けられている衝突部と、衝突部に水が衝突することによって発生した渦を導く渦発生通路と、渦発生通路の下流側に設けられた吐水口通路と、を有する。吐水装置に供給された水は、振動発生素子の給水通路に流入し、その下流端に設けられた衝突部に衝突する。水が衝突部に衝突することによって、下流側の渦発生通路内では、交互に反対回りの渦が発生し、渦発生通路によって下流側に向かって導かれる。渦発生通路によって導かれた渦を含む水の流れは、渦発生通路よりも流路断面積の狭い吐水口通路から、往復振動しながら吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-108830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された振動発生素子によれば、線状の水を往復振動させながら吐出させるので、コンパクトな構成でありながら、広い範囲に水を着水させることができる。このため、特許文献1に記載の振動発生素子をシャワー装置に応用した場合には、シャワーヘッドのデザインの自由度を十分に確保しながら、シャワーの浴び心地を良くすることが期待できる。しかしながら、特許文献1に記載された振動発生素子では、吐水の着水範囲を更に広げるべく、吐水の往復振動の角度を大きくした場合でも、着水範囲は線状に長く伸びるだけであり、着水面積を十分に広げることができないという問題がある。即ち、振動発生素子をシャワー装置に応用した場合、着水範囲が線状に長くなっても、使用者の身体に当たらない無駄水が増えるだけであり、シャワーの浴び心地はあまり良くならない。
【0005】
従って、本発明は、コンパクトな構成で、十分に広い着水面積を確保することができる吐水装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、水を往復振動させながら吐水する吐水装置であって、吐水装置本体と、この吐水装置本体に設けられ、所定の振動平面内で水を往復振動させながら吐水する振動発生素子と、を有し、振動発生素子は、供給された水が流入する給水通路と、この給水通路の流路断面の一部を閉塞するように、給水通路の下流側端部に配置され、給水通路によって導かれた水が衝突することで、その下流側に交互に反対回りの渦を発生させる衝突部と、この衝突部により形成された渦を導くように給水通路の下流に設けられ、振動平面に平行な方向の幅が、振動平面と直角な方向の高さよりも広く形成された渦列通路と、この渦列通路の途中に設けられた流れ拡散部と、渦列通路によって導かれた水を吐水させる吐出通路と、を備え、流れ拡散部は、下流側に向かって渦列通路を高さ方向に流路を狭めるように形成された段部から構成され、この段部の高さは、渦列通路の高さの50%以下であることを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明においては、吐水装置本体に設けられた振動発生素子の給水通路に供給された水が流入する。流入した水は、給水通路の流路断面の一部を閉塞するように配置された衝突部に衝突し、下流側に交互に反対回りの渦が発生し、発生した渦を含む水の流れは、給水通路の下流に設けられた渦列通路によって導かれる。さらに、渦列通路によって導かれた水は、吐出通路を介して、振動平面内で往復振動しながら吐水される。また、渦列通路の途中には、下流側に向かって渦列通路を高さ方向に流路を狭めるように形成された段部から構成された流れ拡散部が設けられる。
【0008】
このように構成された本発明によれば、衝突部の下流側に発生した交互に反対回りの渦が、渦列通路によって導かれ、吐出通路から吐出されるので、吐出される水を、所定の振動平面内で往復振動させることができる。また、渦列通路の途中に、渦列通路を高さ方向に流路を狭める段部が、流れ拡散部として設けられているので、吐出通路から吐出された吐水は、振動平面に直角な方向にも拡散される。これにより、コンパクトな構成で、十分に広い着水面積を確保することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、吐出通路は、その高さが、渦列通路の最小の高さ以上の高さに構成されている。
このように構成された本発明によれば、吐出通路の高さが、渦列通路の最小の高さ以上の高さに構成されているので、流れ拡散部によって渦列通路の高さ方向に拡散され、吐出通路から吐出された水を、振動平面に直角な方向に、容易に拡散させることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、渦列通路は、渦列通路の上流側が形成された上流側部材と、渦列通路の下流側が形成された下流側部材を接続することにより構成されている。
【0011】
このように構成された本発明によれば、渦列通路が上流側部材と下流側部材を接続することにより構成されているので、給水通路、衝突部、渦列通路、及び吐出通路を有する振動発生素子を容易に成形することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、段部は上流側部材と下流側部材の接続部に形成される。
このように構成された本発明によれば、段部が上流側部材と下流側部材の接続部に形成されているので、渦列通路の途中に、流れ拡散部として、段部を容易に成形することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、下流側部材に設けられた渦列通路の上流端における高さは、上流側部材に設けられた渦列通路の下流端における高さよりも低く構成されている。
このように構成された本発明によれば、下流側部材に設けられた渦列通路の上流端における高さが、上流側部材に設けられた渦列通路の下流端における高さよりも低く構成されているので、上流側部材と下流側部材の接続部に、下流側に向かって渦列通路の流路を高さ方向に狭める段部を確実に形成することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、下流側部材に設けられた渦列通路の高さは一定である。
このように構成された本発明によれば、下流側部材に設けられた渦列通路の高さが一定に構成されているので、衝突部に水が衝突することによって発生した渦の崩壊を抑制し、渦列を確実に導くことができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、段部は、下流側部材に形成された渦列通路の途中に形成されている。
このように構成された本発明によれば、段部が下流側部材に形成された渦列通路の途中に形成されているので、衝突部から段部までの距離を長くすることができ、流れ拡散部である段部に到達するまでに、渦を十分に発達させることができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、段部は、渦列通路の内壁面のうち、振動平面に平行な方向に向けられた一方の内壁面に設けられている。
このように構成された本発明によれば、段部が、振動平面に平行な方向に向けられた一方の内壁面に設けられているので、段部の下流側における渦列通路の高さを十分に確保することができ、流れを所定の振動平面内で往復振動させつつ、振動平面に直角な方向にも拡散させることができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、渦列通路は、段部の下流側において、振動平面と直角な方向の高さが一定に構成され、渦列通路の、段部に対向する内壁面は、渦列通路を下流側に向かって高さ方向に流路を広げるように屈曲されている。
【0018】
このように構成された本発明によれば、段部の下流側において、渦列通路が高さ一定に構成され、渦列通路の、段部に対向する内壁面は、渦列通路を下流側に向かって高さ方向に流路を広げるように屈曲されているので、渦列通路を通る水の流れの向きを段部に対向する内壁面側へと変えることができ、振動平面に直角な方向に拡散させることができる。
【0019】
本発明において、好ましくは、振動発生素子は、衝突部よりも下流側から、上記渦列通路に水を流入させるバイパス通路を備え、このバイパス通路の内壁面の一部は、上記下流側部材によって形成されている請求項3乃至9の何れか1項に記載の吐水装置。
【0020】
このように構成された本発明によれば、振動発生素子がバイパス通路を備えているので、振動発生素子から吐出される水の往復振動の振幅等を、バイパス通路から流入する水の流量によっても調整することができる。また、バイパス通路の内壁面の一部が下流側部材によって形成されているので、バイパス通路を備えた形態の振動発生素子も、容易に成形することができる。
【0021】
本発明において、好ましくは、バイパス通路は、その最も下流側に位置する内壁面のみが、下流側部材によって形成されている。
このように構成された本発明によれば、バイパス通路は、その最も下流側に位置する内壁面のみが、下流側部材によって形成されているので、上流側部材と下流側部材を接続することにより流路断面積が変化する部分を衝突部から離間させ、衝突部によって形成された渦を十分に発達させることができる。
【0022】
本発明において、好ましくは、上流側部材は硬質部材で形成され、下流側部材は軟質部材で形成されている。
このように構成された本発明によれば、上流側部材を硬質部材で形成することにより、水の圧力が比較的高い上流側の部分において、水圧による渦列通路の変形を抑制することができる。また、下流側部材を軟質部材で形成することにより、下流端の吐出通路内に、水道水に含まれるカルシウム成分が堆積し、固化した場合でも、吐出通路の部分を弾性変形させて、堆積したカルシウム成分(スケール)を容易に除去することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の吐水装置によれば、コンパクトな構成で、十分に広い着水面積を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態による吐水装置を上方から見た分解斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態による吐水装置を下方から見た分解斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態による吐水装置において、散水板に機能部材を取り付けた状態を示す斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態による吐水装置において、散水板に機能部材を取り付けた状態の断面図である。
図5図4のV-V線に沿う断面図であり、1つの振動発生素子の部分のみを抜き出して描かれている。
図6図5のVI-VI線に沿う断面図である。
図7】本発明の第1実施形態による吐水装置において、振動発生素子を振動平面に平行な方向に切断した斜視断面図である。
図8】本実施形態の吐水装置に備えられている振動発生素子から吐出される水の状態を示す図である。
図9】流れ拡散部が設けられていない、比較例による振動発生素子から吐出される水の状態を示す図である。
図10】流れ拡散部の段部の高さが渦列通路の高さの60%にされた、比較例による振動発生素子から吐出される水の状態を示す図である。
図11】本発明の第1実施形態による吐水装置において、2つの部材から構成された振動発生素子を模式的に示す図である。
図12】一体で構成された振動発生素子を模式的に示す図である。
図13】本発明の第1実施形態による吐水装置において、振動発生素子の変形例を示す断面図である。
図14】本発明の第1実施形態による吐水装置において、振動発生素子の変形例を示す断面図である。
図15】本発明の第1実施形態による吐水装置において、振動発生素子の変形例を示す断面図である。
図16】本発明の第2実施形態による吐水装置であるシャワーヘッドの外観を示す斜視図である。
図17】本発明の第2実施形態による吐水装置であるシャワーヘッドの全断面図である。
図18】本発明の第2実施形態によるシャワーヘッドに備えられている振動発生素子の斜視断面図である。
図19】本発明の第2実施形態によるシャワーヘッドにおいて、振動発生素子を振動平面に平行な方向に切断した断面図である。
図20】本発明の第2実施形態によるシャワーヘッドにおいて、振動発生素子を振動平面に直角な方向に切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による吐水装置を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による吐水装置を上方から見た分解斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態による吐水装置を下方から見た分解斜視図である。
【0026】
図1及び図2に示すように、本実施形態の吐水装置1は、いわゆるハンドシャワーであって、吐水装置本体10と、この吐水装置本体10に取り付けられた散水板12と、散水板12の背面に取り付けられた機能部材14と、から構成されている。
【0027】
吐水装置本体10は、吐水ヘッド部10aと把持部10bとを有し、供給された水が内部に流入するように構成されている。
散水板12は概ね円板状の部材であり、吐水装置本体10の吐水ヘッド部10aに取り付けられる。また、図2に示すように、散水板12の前面には、複数の円筒形の散水ノズル16が突出するように設けられている。
【0028】
また、図1に示すように、機能部材14は、散水板12の背面側中央に取り付けられ、散水板12の一部と共に、5つの振動発生素子を構成するようになっている。この振動発生素子は、供給された水を所定の振動平面内で往復振動させながら吐水するように構成されている。振動発生素子の詳細については後述する。
【0029】
本実施形態の吐水装置1は、供給された水が吐水装置本体10内に流入し、吐水ヘッド部10aに取り付けられた散水板12の散水ノズル16及び振動発生素子を通ってシャワー吐水されるように構成されている。各散水ノズル16から吐出される水は夫々1本の線状に吐出され、各振動発生素子から吐出される水は、所定の振動平面内で往復振動しながら吐出される。
【0030】
次に、図3乃至図7を新たに参照して、振動発生素子について説明する。
図3は散水板12に機能部材14を取り付けた状態を示す斜視図であり、図4は、その断面図である。また、図5は、図4のV-V線に沿う断面図であり、1つの振動発生素子の部分のみを抜き出して描かれている。図6は、図5のVI-VI線に沿う断面図である。図7は、振動発生素子を振動平面に平行な方向に切断した斜視断面図である。
【0031】
振動発生素子22は、上流側部材18と、下流側部材20を接続することにより構成されている(図5)。即ち、本実施形態においては、図3に示すように、5つの上流側部材18が環状に連結され、上述した機能部材14が構成されている。また、本実施形態においては、図4に示すように、下流側部材20は散水板12と一体に形成され、散水板12の一部が下流側部材20として機能している。
【0032】
即ち、図4に示すように、下流側部材20は、散水板12の背面側に突出するように形成された背面部20a(図1)と、散水板12の前面側に突出するように形成された前面部20b(図2)から構成されている。これにより、本実施形態においては、機能部材14を散水板12の背面側に取り付けることで、環状に配列された5つの振動発生素子22が構成される。また、本実施形態においては、機能部材14(上流側部材18)は、硬質部材(例えばPOM(ポリアセタール))で形成されており、散水板12(下流側部材20)は、軟質部材(例えばTPE(熱可塑性エラストマー))で形成されている。なお、本実施形態においては、機能部材14を散水板12に嵌め込むことにより両者が結合されているが、上流側部材18と下流側部材20を、接着や溶着等、任意の方法で結合することもできる。なお、硬質部材としては、通常の給水圧によって変形しない程度の強度をもつ部材であればよく、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)などでもよい。また、軟質部材は、使用者が力を加えることで容易に弾性変形する部材であればよく、例えば、シリコーンゴムなどでもよい。
【0033】
図5に示すように、振動発生素子22は、供給された水が流入する給水通路24と、この給水通路24の下流に設けられた渦列通路26と、渦列通路によって導かれた水を吐水させる吐出通路28と、を有する。さらに、給水通路24の下流側の端部には、給水通路24の流路断面の一部を閉塞するように、衝突部30が設けられている。また、渦列通路26の途中には、流れ拡散部27が設けられている。各振動発生素子22は、供給された水を、図5の紙面に平行な振動平面内で往復振動させながら、吐出通路28の下流端から吐水するように構成されている。
【0034】
また、上述したように、各振動発生素子22は、上流側部材18と下流側部材20の2つの部材から構成されており、上流側部材18には、給水通路24と、渦列通路26の上流側の部分が形成されている。また、下流側部材20には、渦列通路26の下流側の部分と、吐出通路28が形成されている。即ち、渦列通路26は、上流側が上流側部材18に形成され、下流側が下流側部材20に形成され、上流側部材18と下流側部材20を接続することにより構成されている。さらに、渦列通路26の途中に設けられた流れ拡散部27は、上流側部材18と下流側部材20の接続部に形成される。
【0035】
給水通路24は、吐水装置本体10内に流入した水が流入するように構成された、断面の寸法、形状が一定の通路である。また、給水通路24は、振動平面に平行な方向の幅が、振動平面と直角な方向の高さよりも大きい扁平な長方形断面を有するように形成されている。また、給水通路24の下流には、同一の断面形状に構成された渦列通路26が連続して設けられている。
【0036】
衝突部30は、給水通路24の下流側の端部に、給水通路24の流路断面の一部を閉塞するように設けられている。即ち、衝突部30は、給水通路24、渦列通路26を形成する、振動平面に平行な2つの内壁面同士を連結するように設けられている(図6)。また、本実施形態において、衝突部30は、振動平面に直角な方向から見て、直角二等辺三角形状に形成されており(図5)、その斜辺が上流側に向くように、給水通路24の中央に配置されている。この衝突部30には、給水通路24によって導かれた水が衝突することで、その下流側に交互に反対回りの渦列V1が、振動平面に平行な面内で発生する。
【0037】
渦列通路26は、給水通路24の下流に形成され、衝突部30により形成された渦を導くように構成されている。また、渦列通路26は、その上流部において、給水通路24と同一の断面寸法、形状で連続するように形成された通路である。即ち、渦列通路26は、振動平面に平行な方向の幅が、振動平面と直角な方向の高さよりも広く形成された扁平な長方形断面を有する通路である。衝突部30により形成された渦は、この渦列通路26によって導かれることにより成長しながら下流へ移動する。
【0038】
吐出通路28は、渦列通路26の下流側に接続された流路であり、渦列通路26によって導かれた水を吐水させるように構成されている。また、吐出通路28の上流端における振動平面に平行な方向の幅は、渦列通路26の下流端の幅よりも狭く、下流側に向けてテーパ状に幅が広くなっている。さらに、図6に示すように、吐出通路28の上流端における振動平面に直角な方向の高さは、渦列通路26の下流端の高さと同一であり、下流側に向けてテーパ状に高さが高くなっている。従って、吐出通路28の高さは、渦列通路26の最小の高さ以上の高さに構成されている。衝突部30の下流側で発生した交互に反対回りの渦は、渦列通路26において成長し、吐出通路28から吐出される。この際、反対回りの渦が交互に到達することにより、吐出通路28から吐出される水の方向が振動平面内で往復振動する。
なお、吐出通路28における振動平面に直角な方向の高さは、下流側に向けてテーパ状に高くならず、一定の高さとなるように構成されていてもよい。
【0039】
次に、図6及び図7に示すように、渦列通路26の途中には、流れ拡散部27が設けられており、この流れ拡散部27は、下流側に向かって渦列通路26を高さ方向に流路を狭めるように形成された段部から構成されている。この段部は、渦列通路26全体を横切るように、渦列通路26内の水の流れに対して直角な方向に延び、振動平面に平行な方向に向けられた2つの内壁面のうちの一方に設けられている。このように、渦列通路26の途中には、渦列通路26の流路を高さ方向に狭める「段部」が、流れ拡散部27として設けられている。これにより、渦列通路26の中を流れてきた水の一部が「段部」に衝突し、渦列通路26内の水の流れに、振動平面に直角な面内で小さな渦V2図6)が発生する。この結果、渦列通路26内の水の流れが渦列通路26の高さ方向に適度に拡散される。これにより、衝突部30の下流側に形成される振動平面内における渦列V1に加え、流れ拡散部27により、振動平面に直角な方向の渦V2が発生し、適度な流れの乱れが生じる。
【0040】
この振動平面に直角な方向の乱れにより、吐出通路28から吐出される水は、振動平面に直角な方向にも適度に拡散される。本実施形態において、流れ拡散部27を構成する段部の高さは、渦列通路26の高さの約30%の高さに構成されている。好ましくは、流れ拡散部27として、渦列通路26の高さの約5%以上、約50%以下の高さの段部を設けることにより、吐出通路28から吐出される水が振動平面に直角な方向にも適度に拡散する。即ち、流れ拡散部27を渦列通路26の高さの約50%よりも大きい段部とすると、衝突部30の下流側に形成された渦が大きく破壊されてしまい、吐出通路28から吐出される水は振動平面で往復振動しなくなるか、往復振動の振幅が小さくなってしまう。また、渦列通路26の高さの約5%未満の段部では、吐出通路28から吐出される水を振動平面に直角な方向に十分に拡散させることができない。
【0041】
ここで、図6に示すように、下流側部材20に形成された渦列通路26、及び上流側部材18に形成された渦列通路26の高さは全長に亘って一定であり、下流側部材20の渦列通路26の高さH2と、上流側部材18の渦列通路26の高さH1は同一である。このため、上流側部材18と下流側部材20の接続部において、渦列通路26の一方の内壁面には、下流側に向かって高さ方向に流路を狭める段部が、流れ拡散部27として形成され、渦列通路26の他方の内壁面には、下流側に向かって高さ方向に流路を広げるように屈曲された屈曲部27aが形成される。なお、下流側部材20に形成された渦列通路26の高さH2が、上流側部材18に形成された渦列通路26の高さH1よりも低くなるように構成することもできる。この場合には、渦列通路26の一方の内壁面に流路を狭める段部が流れ拡散部27として形成され、他方の内壁面には段差が存在しない渦列通路を構成することもできる。
【0042】
また、本実施形態においては、図5に示すように、下流側部材20に形成された渦列通路26の上流端における幅W2は、上流側部材18に形成された渦列通路26の下流端における幅W1と同一の幅に構成されている。
【0043】
さらに、本実施形態においては、衝突部30の上流端から、上流側部材18に形成された渦列通路26の下流端(流れ拡散部27)までの長さLが約6.7mmであり、衝突部30の最大幅WMAXは約2mmに構成されている。このように、長さLを長く設定することにより、衝突部30によって形成された渦が渦列通路26の流れ拡散部27に到達するまでに十分に成長する。このため、流れ拡散部27において振動平面と直角な方向に流れが拡散された場合でも、衝突部30によって形成された振動平面内の渦の崩壊が抑制される。好ましくは、衝突部30の上流端から、渦列通路26に形成された流れ拡散部27までの長さLを、衝突部30の最大幅WMAXの2.0倍以上に構成する。
【0044】
次に、図8乃至図10を参照して、本発明の実施形態による吐水装置に備えられている振動発生素子の作用を説明する。
図8は、本実施形態の吐水装置に備えられている振動発生素子から吐出される水の状態を示す図であり、A欄は吐出される水を振動平面に直角な方向から撮影した写真であり、B欄は吐出される水を振動平面に平行な方向から撮影した写真である。図9は、流れ拡散部27が設けられていない、比較例による振動発生素子から吐出される水の状態を示す図である。図10は、流れ拡散部27の段部の高さが渦列通路の高さの60%にされた、比較例による振動発生素子から吐出される水の状態を示す図である。なお、図9図10においても、A欄には振動平面に直角な方向から、B欄には振動平面に平行な方向から撮影した写真を示す。
【0045】
図8に示す本発明の実施形態による吐水装置1に備えられている振動発生素子22には、上述したように、渦列通路26の高さの30%の高さの段部によって構成された流れ拡散部27が設けられている。図8のA欄に示すように、本実施形態における振動発生素子22から吐出される水は、振動平面内で正弦波状に往復振動されている。このため、振動発生素子22から吐出される水は振動平面に平行な方向に広い着水範囲を有する。さらに、図8のB欄に示すように、振動発生素子22から吐出される水は、振動平面に直角な方向にも拡散されており、振動平面に直角な方向にも比較的広い着水範囲を有する。従って、本実施形態における振動発生素子22では、比較的広い着水面積を確保することができる。
【0046】
これに対し、図9に示すように、流れ拡散部27を備えていない、比較例による振動発生素子から吐出される水は、振動平面内では正弦波状に往復振動されている(図9のA欄)ものの、振動平面に直角な方向には、吐水は殆ど広がっていない(図9のB欄)。このように、図9に示す、流れ拡散部27が設けられていない比較例による振動発生素子では、振動平面に直角な方向には吐水が拡散せず、振動平面に直角な方向の着水範囲が狭くなる。即ち、流れ拡散部27が設けられていない振動発生素子では、着水範囲が線状に広がるため、着水面積を広くすることが困難である。
【0047】
一方、図10のB欄に示すように、流れ拡散部27の段部の高さが渦列通路の高さの60%に構成された比較例による振動発生素子では、振動平面に直角な方向に吐水が拡散するものの、A欄に示すように、振動平面内における往復振動が殆ど発生していない。このように、流れ拡散部27を構成する段部の高さが渦列通路26の高さの50%を超えると、衝突部30の下流側に形成された渦が、流れ拡散部27によって破壊されてしまい、吐水の振動平面内における往復振動が殆ど発生しなくなり、着水面積を広くすることができない。
【0048】
次に、図11及び図12を参照して、振動発生素子22を2つの部材から構成することによる製造上の利点を説明する。図11は、2つの部材から構成された本実施形態における振動発生素子を模式的に示す図であり、図12は、一体で構成された振動発生素子を模式的に示す図である。
【0049】
図11に示すように、本実施形態の振動発生素子22は、上流側部材18及び下流側部材20から構成され、渦列通路26が2つの部材から構成されている。このため、射出成形により上流側部材18を成形する場合には、成形型M1及びM2を衝突部30の部分で分割しておくことにより、成形型M1及びM2を上流側及び下流側から夫々抜き取ることができる。同様に、下流側部材20を成形する場合には、成形型M3及びM4を渦列通路26と吐出通路28の境界で分割しておくことにより、上流側及び下流側から成形型M3及びM4を夫々抜き取ることができる。このため、上流側部材18及び下流側部材20は、射出成形等により、容易に成形することができる。
【0050】
一方、図12に示すように、一体で成形された振動発生素子32では、射出成形を行う場合、成形型M5を上流側から引き抜くことができるものの、成形型M6は、図中に破線で囲った部分が係合してしまう。このため、成形型M6を下流側から容易に引き抜くことはできず、これを可能とするために、射出成形に使用する材料として、弾性変形が可能なものを選択する等の対策が必要となる。このため、振動発生素子を一体で成形する場合には、材料の選択等に一定の制約が発生し、本実施形態のように振動発生素子22を分割構造とすることには大きなメリットがある。
【0051】
次に、図13乃至図15を参照して、本発明の第1実施形態の変形例を説明する。
上述した第1実施形態においては、図6に示すように、吐出通路28は、下流に向かって通路の高さが高くなるように構成されていた。これに対して、変形例として、図13に示すように、吐出通路34全体の高さを、下流側部材20に形成された渦列通路26の高さと同一に構成することもできる。また、図13に示す変形例においては、下流側部材20に設けられた渦列通路26の上流端における高さH4が、上流側部材18に設けられた渦列通路26の下流端における高さH3よりも低く構成されている。このため、上流側部材18と下流側部材20の組み付けに誤差が生じた場合でも、確実に下流側に向かって渦列通路の流路を高さ方向に狭める段部を形成することができる。
【0052】
また、上述した第1実施形態においては、図6に示すように、流れ拡散部27は、上流側部材18に設けられた渦列通路26と、下流側部材20に設けられた渦列通路26の接続部に設けられていた。これに対し、図14に示す変形例において、流れ拡散部27は、渦列通路26の接続部に設けられるのではなく、下流側部材20に設けられた渦列通路26の途中に設けられている。この変形例によれば、上流側部材18と下流側部材20の接続位置に関わりなく、流れ拡散部27を下流側に配置することができる。このため、衝突部30から段部までの距離を長くすることができ、流れ拡散部27である段部に到達するまでに、渦を十分に発達させることができる。
【0053】
或いは、図15に示す変形例のように、流れ拡散部27を下流側部材20に設けられた渦列通路26の途中に設けると共に、下流側部材20に形成された渦列通路26の上流側の端部の高さを、上流側部材18に形成された渦列通路26の下流側の端部の高さよりも高く形成することもできる。この変形例によれば、上流側部材18及び下流側部材20の寸法誤差等により、各部材に設けられた渦列通路26の接続にズレが発生した場合でも、接続部において渦列通路26の流路を高さ方向に狭める段部が発生しない。このため、下流側部材20の渦列通路26に形成された段部を、確実に流れ拡散部27として作用させることができる。
【0054】
本発明の第1実施形態の吐水装置1によれば、衝突部30の下流側に発生した交互に反対回りの渦が、渦列通路26によって導かれ、吐出通路28から吐出されるので、吐出される水を、所定の振動平面内で往復振動させることができる。また、渦列通路26の途中に、渦列通路26を高さ方向に流路を狭める段部が、流れ拡散部27として設けられているので、吐出通路28から吐出された吐水は、振動平面に直角な方向にも拡散される。これにより、コンパクトな構成で、十分に広い着水面積を確保することができる。
【0055】
また、本実施形態の吐水装置1によれば、吐出通路28の高さが、渦列通路26の最小の高さ以上の高さに構成されている(図6)ので、流れ拡散部27によって渦列通路26の高さ方向に拡散され、吐出通路28から吐出された水を、振動平面に直角な方向に、容易に拡散させることができる。
【0056】
さらに、本実施形態の吐水装置1によれば、渦列通路26が上流側部材18と下流側部材20を接続することにより構成されているので、給水通路24、衝突部30、渦列通路26、及び吐出通路28を有する振動発生素子22を容易に成形することができる。
【0057】
また、本実施形態の吐水装置1によれば、流れ拡散部27である段部が上流側部材18と下流側部材20の接続部に形成されているので、渦列通路の途中に、流れ拡散部として、段部を容易に成形することができる。
【0058】
さらに、本実施形態の吐水装置1によれば、下流側部材20に設けられた渦列通路26の高さが一定に構成されているので、衝突部30に水が衝突することによって発生した渦の崩壊を抑制し、渦列を確実に導くことができる。
【0059】
また、本実施形態の吐水装置1によれば、流れ拡散部27である段部が、振動平面に平行な方向に向けられた一方の内壁面に設けられているので、段部の下流側における渦列通路26の高さを十分に確保することができ、流れを所定の振動平面内で往復振動させつつ、振動平面に直角な方向にも拡散させることができる。
【0060】
さらに、本実施形態の吐水装置1によれば、段部の下流側において、渦列通路26が高さ一定に構成され、渦列通路26の、段部に対向する内壁面は、渦列通路26を下流側に向かって高さ方向に流路を広げるように屈曲されているので、渦列通路26を通る水の流れの向きを段部に対向する内壁面側へと変えることができ、振動平面に直角な方向に拡散させることができる。
【0061】
また、本実施形態の吐水装置1によれば、上流側部材18を硬質部材で形成することにより、水の圧力が比較的高い上流側の部分において、水圧による渦列通路26の変形を抑制することができる。また、下流側部材20を軟質部材で形成することにより、下流端の吐出通路28内に、水道水に含まれるカルシウム成分が堆積し、固化した場合でも、吐出通路28の部分を弾性変形させて、堆積したカルシウム成分(スケール)を容易に除去することができる。
【0062】
次に、図16乃至図20を参照して、本発明の第2実施形態の吐水装置であるシャワーヘッドを説明する。
本実施形態の吐水装置は、吐水装置本体が円柱形に構成されている点、及び内蔵されている振動発生素子がバイパス通路を備えている点が上述した第1実施形態とは異なる。従って、以下では、本実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成、作用、効果については説明を省略する。
【0063】
図16は本発明の第2実施形態によるシャワーヘッドの外観を示す斜視図である。図17は本発明の第2実施形態によるシャワーヘッドの全断面図である。図18は本発明の第2実施形態によるシャワーヘッドに備えられている振動発生素子の斜視断面図である。図19は振動発生素子を振動平面に平行な方向に切断した断面図であり、図20は振動発生素子を振動平面に直角な方向に切断した断面図である。
【0064】
図16に示すように、本実施形態のシャワーヘッド100は、概ね円柱形の吐水装置本体であるシャワーヘッド本体102と、このシャワーヘッド本体102内に、軸線方向に一直線に並べて埋め込まれた9つの振動発生素子104と、を有する。本実施形態のシャワーヘッド100は、シャワーヘッド本体102の基端部102aに接続されたシャワーホース(図示せず)から水が供給されると、各振動発生素子104の吐水口104aから水が往復振動しながら吐出される。
【0065】
次に、図17を参照して、シャワーヘッド100の内部構造を説明する。
図17に示すように、シャワーヘッド本体102内には、通水路を形成すると共に、各振動発生素子104を保持する通水路形成部材106が内蔵されている。
通水路形成部材106は、概ね円筒形の部材であり、シャワーヘッド本体102の内部に供給された水の流路を形成するように構成されている。通水路形成部材106の基端部には、シャワーホース(図示せず)が水密的に接続されるようになっている。また、通水路形成部材106の内部には、概ね軸線方向に延びる主通水路106aが形成されている。
【0066】
さらに、通水路形成部材106には、各振動発生素子104を挿入して保持するための9つの素子挿入孔106cが、主通水路106aと連通するように形成されている。各素子挿入孔106cは、通水路形成部材106の外周面から主通水路106aまで延びるように形成されている。また、各素子挿入孔106cは、概ね等間隔に、軸線方向に一直線に並べて形成されている。これにより、通水路形成部材106の主通水路106a内に流入した水は、通水路形成部材106に保持された各振動発生素子104に、その背面側から流入し、正面に設けられた吐水口104aから吐出される。
【0067】
次に、図18乃至図20を参照して、本実施形態のシャワーヘッドに内蔵されている振動発生素子104の構成を説明する。
図18乃至図20に示すように、振動発生素子104は概ね薄い直方体状の部材であり、その正面側の端面には長方形の吐水口104aが設けられ、背面側の端面中央には主流入口104bが形成され、その両側にはバイパス流入口104cが設けられている。各振動発生素子104が素子挿入孔106cに挿入されると、主流入口104b及びバイパス流入口104cが通水路形成部材106の主通水路106aに連通する。
【0068】
また、振動発生素子104は、上流側部材118と下流側部材120の2つの部材から構成されており、上流側部材118が背面側から下流側部材120の内部に挿入されている。この構成により、上流側部材118の両側面と、下流側部材120の内壁面との間に、第2給水通路140が夫々形成される。
【0069】
さらに、図19に示すように、振動発生素子104の内部には、上流側から順に、給水通路124、渦列通路126、吐出通路128が形成されている。また、給水通路124の下流側端部には、衝突部130が設けられている。ここで、給水通路124と、渦列通路126の上流側は上流側部材118の内部に形成され、渦列通路126の下流側と、吐出通路128は下流側部材120の内部に形成されている。
【0070】
給水通路124は、振動発生素子104背面側の主流入口104bから延びる断面積一定の長方形断面の直線状の通路である。
【0071】
渦列通路126は、給水通路124の下流に、給水通路124に連続して設けられた長方形断面の通路である。即ち、本実施形態においては、上流側部材118の内部に設けられた給水通路124及び渦列通路126の上流側は、同一の断面形状で一直線に延びている。また、渦列通路126の下流側は、下流側部材120の内部に設けられている。
【0072】
ここで、図20に示すように、下流側部材120に形成された渦列通路126の上流端における高さH6と、上流側部材118に形成された渦列通路126の下流端における高さH5は、同一の高さに構成されている。これら下流側部材120及び上流側部材118の渦列通路126は、高さ方向にズレて接続されており、これらの接続部に流れ拡散部127が形成される。即ち、下流側部材120の渦列通路126と、上流側部材118の渦列通路126の接続部に、下流側に向かって渦列通路126の流路を高さ方向に狭める流れ拡散部127として、段部が形成される。渦列通路126内を流れる水の一部が、この「段部」に衝突することにより、水の流れが振動平面に直角な方向に拡散される。また、図19に示すように、下流側部材120の上流端における渦列通路126の幅W6は、上流側部材118の下流端における渦列通路126の幅W5と同一に構成されている。
【0073】
吐出通路128は、渦列通路126と連通するように下流側に設けられた通路であり、下流に向かって幅が広くなるように構成されている。また、吐出通路128の高さは、一定に構成されている。この吐出通路128の上流端における流路断面積は、渦列通路126の流路断面積よりも小さく、渦列通路126によって導かれた渦列を含む水流が絞られて、吐水口104aから吐出される。
【0074】
さらに、渦列通路126の両側の側面には、互いに向かい合うように、長方形断面のバイパス通路142が夫々設けられている。各第2給水通路140から夫々流入した水は、各バイパス通路142を通り、衝突部130よりも下流側において、渦列通路126の側面から渦列通路126に流入する。各バイパス通路142は、上流側部材118と下流側部材120の接続部に設けられている。このため、バイパス通路142を構成する内壁面の一部が下流側部材120に設けられ、残りの部分が上流側部材118に設けられている。
【0075】
本実施形態においては、図19図20に示すように、バイパス通路142を構成する、最も下流側に位置する内壁面120aのみが下流側部材120に設けられ、残りの内壁面118a及び内壁面118b、118cは上流側部材118に設けられている。このように、本実施形態においては、上流側部材118と下流側部材120の接続部にバイパス通路142が設けられている。これにより、バイパス通路142を成形するための成形型(図示せず)を、バイパス通路142の方向(側方)に向けて抜く構成とする必要がなく、バイパス通路142を有する振動発生素子104を容易に成形することができる。
【0076】
また、変形例として、最も上流側に位置する内壁面118aのみを上流側部材118に形成し、他の内壁面118b、118c、120aが下流側部材120に形成されるように本発明を構成することもできる。或いは、内壁面118aを上流側部材118に形成し、内壁面120aを下流側部材120に形成し、内壁面118b、118cが上流側部材118及び下流側部材120によって形成されるように本発明を構成することができる。
【0077】
一方、給水通路124の下流端に形成された衝突部130は、給水通路124の流路断面の一部を閉塞するように設けられている。この衝突部130は、給水通路124の高さ方向に対向する壁面(天井面及び床面)を連結するように延びる三角柱状の部分であり、給水通路124の幅方向の中央に、島状に配置されている。衝突部130の断面は、直角二等辺三角形状に形成されており、その斜辺が給水通路124の中心軸線と直交するように配置され、また、直角二等辺三角形の直角の部分は下流側に向くように配置されている。
【0078】
衝突部130を設けることにより、その下流側にカルマン渦が生成され、吐水口104aから吐出される水が往復振動される。また、上述したように、渦列通路126の両側の側面にはバイパス通路142が互いに向かい合うように設けられており、第2給水通路140からバイパス通路142を通った水が流入する。このため、バイパス通路142は、渦列通路126が延びる方向に対して直交する方向に水を流入させる。
【0079】
各バイパス通路142からの湯水は、衝突部130によって形成されたカルマン渦を含む流れに側面から合流する。即ち、バイパス通路142を通って流入する水は、衝突部130を迂回して、渦列通路126の中に流入する。
【0080】
このように、衝突部130によって形成されたカルマン渦を含む流れに、各バイパス通路142からの水が渦列通路126内で合流するため、渦列の進行に伴う吐水口104aにおける流速の変化は小さくなる。これにより、吐出通路128から吐出される水の偏向が小さくなり、噴射される水の振動平面内における振動振幅が小さくなる。即ち、衝突部130を通って渦列通路126に流入する水の流量と、バイパス通路142から流入する水の流量の割合を、適宜設定することにより、水の振動振幅を自由に設計することができる。また、渦列通路126内を流れる水が、その途中に設けられた流れ拡散部127により、渦列通路126の高さ方向に適度に拡散される。これにより、吐出通路128から吐出される水は、振動平面に直角な方向にも拡散される。
【0081】
本発明の第2実施形態の吐水装置によれば、振動発生素子104がバイパス通路142を備えている(図18)ので、振動発生素子104から吐出される水の往復振動の振幅等を、バイパス通路142から流入する水の流量によっても調整することができる。また、バイパス通路142の内壁面の一部が下流側部材120によって形成されているので、バイパス通路142を備えた形態の振動発生素子104も、容易に成形することができる。
【0082】
また、本実施形態の吐水装置によれば、バイパス通路142は、その最も下流側に位置する内壁面120a(図20)のみが、下流側部材120によって形成されているので、バイパス通路142を接続することにより渦列通路126の流路断面積が変化する部分と、上流側部材118と下流側部材120を接続することにより流路断面積が変化する部分を衝突部130から離間させ、衝突部130によって形成された渦を十分に発達させることができる。
【0083】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、本発明をシャワーヘッドに適用していたが、台所のシンクや洗面台等で使用する水栓装置や、便座等に備えられる温水洗浄装置等、任意の吐水装置に本発明を適用することができる。また、上述した実施形態においては、シャワーヘッドに複数の振動発生素子が備えられていたが、吐水装置には適用に応じて任意の個数の振動発生素子を備えることができ、単一の振動発生素子を備えた吐水装置を構成することもできる。
【0084】
また、上述した実施形態においては、下流側部材に上流側部材を嵌め込むことにより、両部材が嵌合されていたが、上流側部材に下流側部材を嵌め込むことにより、両者が嵌合される構成とすることもできる。
【0085】
なお、上述した本発明の実施形態において、振動発生素子内の通路について、便宜的に「幅」、「高さ」等の用語を用いて形状を説明したが、これらの用語は振動発生素子を設ける方向を規定するものではなく、振動発生素子は任意の方向に向けて使用することができる。例えば、上述した実施形態における「高さ」の方向を水平方向に向けて振動発生素子を使用することもできる。
【符号の説明】
【0086】
1 吐水装置
10 吐水装置本体
10a 吐水ヘッド部
10b 把持部
12 散水板
14 機能部材
16 散水ノズル
18 上流側部材
20 下流側部材
20a 背面部
20b 前面部
22 振動発生素子
24 給水通路
26 渦列通路
27 流れ拡散部(段部)
27a 屈曲部
28 吐出通路
30 衝突部
32 比較例による振動発生素子
34 吐出通路
100 シャワーヘッド
102 シャワーヘッド本体
102a 基端部
104 振動発生素子
104a 吐水口
104b 主流入口
104c バイパス流入口
106 通水路形成部材
106a 主通水路
106c 素子挿入孔
118 上流側部材
118a 内壁面
118b 内壁面
118c 内壁面
120 下流側部材
120a 内壁面
124 給水通路
126 渦列通路
127 流れ拡散部
128 吐出通路
130 衝突部
140 第2給水通路
142 バイパス通路
図1
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