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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086522
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】圧縮空気貯蔵発電装置
(51)【国際特許分類】
   F02C 6/16 20060101AFI20230615BHJP
   F02C 1/02 20060101ALI20230615BHJP
   F02C 9/16 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
F02C6/16
F02C1/02
F02C9/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201090
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】松隈 正樹
(57)【要約】
【課題】装置全体としての発電量を任意に選択する圧縮空気貯蔵発電装置を提供する。
【解決手段】圧縮空気貯蔵発電装置1は、蓄圧タンク6と、蓄圧タンク6から供給される圧縮空気によって駆動される直列接続された複数の膨張機本体を有し、複数の膨張機本体は第1膨張機本体8bと、第1膨張機本体8bより低圧段側に配置された第2膨張機本体8aとを含む多段型の膨張機8と、第1膨張機本体8bを迂回して、第2膨張機本体8aに空気を流動させるバイパス流路24と、バイパス流路24に設けられ、バイパス流路24を通過する空気の圧力を減圧する第1減圧弁27aと、蓄圧タンク6から供給された空気をバイパス流路24を使用して第1膨張機本体8bを迂回するか切り替えるためのバイパス切替部26と、バイパス切替部26を制御する制御装置30とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変動する入力電力により駆動される電動機と、
前記電動機と機械的に接続され、空気を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機と流体的に接続され、前記圧縮機により圧縮された圧縮空気を貯蔵する蓄圧タンクと、
前記蓄圧タンクと流体的に接続され、前記蓄圧タンクから供給される圧縮空気によって駆動される直列接続された複数の膨張機本体を有し、前記複数の膨張機本体は第1膨張機本体と、前記第1膨張機本体より低圧段側に配置された第2膨張機本体とを含む多段型の膨張機と、
前記第1膨張機本体と機械的に接続された第1発電機と、
前記第2膨張機本体と機械的に接続された第2発電機と、
前記第1膨張機本体を迂回して、前記第2膨張機本体に空気を流動させるバイパス流路と、
前記バイパス流路に設けられ、前記バイパス流路を通過する空気の圧力を減圧する第1減圧弁と、
前記蓄圧タンクから供給された空気を前記バイパス流路を使用して前記第1膨張機本体を迂回するか切り替えるためのバイパス切替部と、
前記バイパス切替部を制御する制御装置と
を備える、圧縮空気貯蔵発電装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記バイパス流路を介して前記第2膨張機本体に圧縮空気を供給した場合の前記第2発電機の発電量が、前記第1膨張機本体を介して前記第2膨張機本体に圧縮空気を供給した場合の前記第1発電機および前記第2発電機の発電量の合計より高い場合、圧縮空気が前記第1膨張機本体を迂回して流れるように前記バイパス切替部を制御する、請求項1に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
【請求項3】
前記第1減圧弁は、前記第2膨張機本体および前記第2発電機による圧力から電力への変換効率が最高効率の80%以上となるように減圧する、請求項1または2に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
【請求項4】
前記複数の膨張機本体のうち最も高圧段である第3膨張機本体に機械的に接続された第3発電機と、
前記第3膨張機本体と前記蓄圧タンクを流体的に接続する圧縮空気流路に設けられ、前記圧縮空気流路を通過する空気の圧力を減圧する第2減圧弁と
をさらに備え、
前記第2減圧弁は、前記第3膨張機本体および前記第3発電機による圧力から電力への変換効率が最高効率の80%以上となるように減圧する、請求項1から3のいずれか1項に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
【請求項5】
前記複数の膨張機本体のそれぞれに供給される圧縮空気の供給圧力と、前記供給圧力における前記複数の膨張機本体のそれぞれの変換効率とが記録される記録媒体をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気貯蔵発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用した発電は、気象条件に依存するため、出力が安定しないことがある。このため、圧縮空気貯蔵(CAES:compressed air energy storage)発電装置等のエネルギー貯蔵装置を使用して出力を平準化する必要がある。
【0003】
CAES発電装置では、圧縮機を使用することで電気エネルギーを圧縮空気として蓄圧タンクに蓄え、膨張機を使用することで蓄圧タンクに蓄えられた圧縮空気を電気エネルギーに変換する。
【0004】
特許文献1には、蓄圧タンクの内圧が減少した際、多段型の膨張機において運転効率が悪くなる段の膨張機には圧縮空気を通さずバイパスさせることで装置全体としての運転効率の低下を抑制しているCAES発電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-008867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のCAES発電装置では、バイパス流路は設けられているが、そのバイパス流路を通過する圧縮空気の圧力の調整については特段の示唆がない。換言すると、バイパス流路に接続された段の膨張機本体には蓄圧タンクの内圧の圧縮空気が供給される。つまり、バイパス流路に接続された段の膨張機本体に対して変換効率が向上するような圧力で圧縮空気を供給することについて、改善の余地がある。
【0007】
本発明は、バイパス流路によって膨張機本体を迂回するかを選択し、かつ、バイパス流路に接続された段の膨張機本体に供給される圧力を調整することで、装置全体の変換効率を向上する圧縮空気貯蔵発電装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、変動する入力電力により駆動される電動機と、前記電動機と機械的に接続され、空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機と流体的に接続され、前記圧縮機により圧縮された圧縮空気を貯蔵する蓄圧タンクと、前記蓄圧タンクと流体的に接続され、前記蓄圧タンクから供給される圧縮空気によって駆動される直列接続された複数の膨張機本体を有し、前記複数の膨張機本体は第1膨張機本体と、前記第1膨張機本体より低圧段側に配置された第2膨張機本体とを含む多段型の膨張機と、前記第1膨張機本体と機械的に接続された第1発電機と、前記第2膨張機本体と機械的に接続された第2発電機と、前記第1膨張機本体を迂回して、前記第2膨張機本体に空気を流動させるバイパス流路と、前記バイパス流路に設けられ、前記バイパス流路を通過する空気の圧力を減圧する第1減圧弁と、前記蓄圧タンクから供給された空気を前記バイパス流路を使用して前記第1膨張機本体を迂回するか切り替えるためのバイパス切替部と、前記バイパス切替部を制御する制御装置とを備える、圧縮空気貯蔵発電装置を提供する。
【0009】
多段型の膨張機では、配置される段が異なると、供給される圧縮空気の圧力と、その圧力が有するエネルギーを電力に変換する際の変換効率との関係も異なることがある。換言すると、第1膨張機本体および第2膨張機本体のそれぞれに対して同じ圧力の圧縮空気を供給した場合であっても、発電量が異なることがある。本発明によれば、バイパス流路を介することで第1膨張機本体を迂回するかを選択することができ、かつ、減圧弁によって第2膨張機本体に供給される圧縮空気を減圧することができる。すなわち、第1膨張機本体および第2膨張機本体の両方で発電した場合の装置全体の変換効率と、バイパス流路を介して調整された圧力の圧縮空気を第2膨張機本体に供給し発電した場合の装置全体の変換効率とを比較して選択することができる。そのため、装置全体の変換効率が向上され得る。
【0010】
前記制御装置は、前記バイパス流路を介して前記第2膨張機本体に圧縮空気を供給した場合の前記第2発電機の発電量が、前記第1膨張機本体を介して前記第2膨張機本体に圧縮空気を供給した場合の前記第1発電機および前記第2発電機の発電量の合計より高い場合、圧縮空気が前記第1膨張機本体を迂回して流れるように前記バイパス切替部を制御してもよい。
【0011】
前記の構成によれば、バイパス流路を介する場合と介さない場合とのそれぞれの発電量を比較して、発電量が多い方を選択するように制御しているため、装置全体として発電量を増加させることができる。
【0012】
前記第1減圧弁は、前記第2膨張機本体および前記第2発電機による圧力から電力への変換効率が最高効率の80%以上となるように減圧してもよい。
【0013】
前記の構成によれば、第2膨張機本体および第2発電機による圧力から電力への変換効率が最高効率を含む高い効率であるため、第2発電機による発電量を多くすることができる。
【0014】
圧縮空気貯蔵発電装置は、前記複数の膨張機本体のうち最も高圧段である第3膨張機本体に機械的に接続された第3発電機と、前記第3膨張機本体と前記蓄圧タンクを流体的に接続する圧縮空気流路に設けられ、前記圧縮空気流路を通過する空気の圧力を減圧する第2減圧弁とをさらに備え、前記第2減圧弁は、前記第3膨張機本体および前記第3発電機による圧力から電力への変換効率が最高効率の80%以上となるように減圧してもよい。
【0015】
前記の構成によれば、第3膨張機本体および第3発電機による圧力から電力への変換効率が最高効率を含む高い効率であるため、第3発電機による発電量を多くすることができる。
【0016】
圧縮空気貯蔵発電装置は、前記複数の膨張機本体のそれぞれに供給される圧縮空気の供給圧力と、前記供給圧力における前記複数の膨張機本体のそれぞれの変換効率とが記録される記録媒体をさらに備えてもよい。
【0017】
前記の構成によれば、圧力および変換効率の関係を実データから採取できる。そのため、圧力および変換効率の関係を計算から求める場合に比べ、圧力および変換効率の関係の信頼性が向上し得る。
【発明の効果】
【0018】
本発明の圧縮空気貯蔵発電装置によれば、バイパス流路によって膨張機本体を迂回するかを選択でき、かつ、バイパス流路に接続された段の膨張機本体に供給される圧力を調整できるため、装置全体の変換効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態における圧縮空気貯蔵発電装置の概略構成図。
図2】第1実施形態における第1発電態様における圧力および変換効率の関係を示すグラフ。
図3】第1実施形態における第2発電態様における圧力および変換効率の関係を示すグラフ。
図4】第1実施形態における圧縮空気貯蔵発電装置の発電動作の制御を説明するフローチャート。
図5】本発明の第2実施形態における圧縮空気貯蔵発電装置の概略構成図。
図6】第2実施形態における第1発電態様における圧力および変換効率の関係を示すグラフ。
図7】第2実施形態における圧縮空気貯蔵発電装置の発電動作の制御を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1を参照して、本実施形態に係る圧縮空気貯蔵(CAES:compressed air energy storage)発電装置1の全体的な構成と機能を説明する。CAES発電装置1は、再生可能エネルギーを利用して発電する発電設備の出力変動を平準化して電力系統に電力を供給するとともに、発電需要の変動に合わせた電力を電力系統に供給する。
【0021】
CAES発電装置1は、圧縮機4、蓄圧タンク6、および膨張機8を備える。
【0022】
本実施形態では、圧縮機4は、低圧段圧縮機本体4aおよび高圧段圧縮機本体4bを有する2段型のスクリュ圧縮機である。低圧段圧縮機本体4aおよび高圧段圧縮機本体4bはそれぞれ、モータ(電動機)14a,14bを備える。モータ14a,14bは、低圧段圧縮機本体4aおよび高圧段圧縮機本体4bの内部のスクリュに機械的に接続されている。図示しない発電設備で発電された変動する入力電力がモータ14a,14bに供給されると、この電力によりモータ14a,14bが駆動され、スクリュが回転して低圧段圧縮機本体4aおよび高圧段圧縮機本体4bが作動し、空気を圧縮する。圧縮機4は2段型に限定されず3段型以上であってもよく、複数台設置されてもよい。圧縮機4の種類は特に限定されず、例えばターボ式、スクロール式、およびレシプロ式等であってもよい。
【0023】
蓄圧タンク6は、圧縮機4と流体的に接続され、圧縮機4から圧送された圧縮空気を貯蔵する。従って、蓄圧タンク6には、圧縮空気としてエネルギーが蓄積されている。蓄圧タンク6で貯蔵された圧縮空気は、膨張機8に供給される。
【0024】
膨張機8は、蓄圧タンク6と流体的に接続され、直列接続された低圧段膨張機本体(第2膨張機本体)8aおよび高圧段膨張機本体(第1膨張機本体)8bを有する2段型のスクリュ膨張機である。低圧段膨張機本体8aおよび高圧段膨張機本体8bは、蓄圧タンク6から供給される圧縮空気によって駆動される。低圧段膨張機本体8aは、発電機(第2発電機)12aを備える。高圧段膨張機本体8bは、発電機(第1発電機)12bを備える。発電機12a,12bは、低圧段膨張機本体8aおよび高圧段膨張機本体8bの内部のスクリュに機械的に接続されている。発電機12a,12bで発電した電力は、図示しない外部の電力系統に供給される。本実施形態では、高圧段膨張機本体8bは、膨張機8において最も高圧段に配置された最高圧段膨張機本体(第3膨張機本体)であり、発電機12bは、最高圧段膨張機本体に接続された最高圧段発電機(第3発電機)である。膨張機8は2段型に限定されず3段型以上であってもよく、複数台設置されてもよい。膨張機8の種類は特に限定されず、例えばターボ式、スクロール式、およびレシプロ式等であってもよい。
【0025】
低圧段圧縮機本体4aの吸気口4cは、空気配管10aを介して大気に開放されている。低圧段圧縮機本体4aの吐出口4dと高圧段圧縮機本体4bの吸気口4eとは空気配管10bを介して流体的に接続されている。高圧段圧縮機本体4bの吐出口4fは、空気配管10cを介して蓄圧タンク6に流体的に接続されている。
【0026】
蓄圧タンク6は、空気配管(圧縮空気流路)10dを介して高圧段膨張機本体8bの給気口8cに流体的に接続されている。高圧段膨張機本体8bの排気口8dと低圧段膨張機本体8aの給気口8eとは空気配管10eを介して流体的に接続されている。低圧段膨張機本体8aの排気口8fは、空気配管10fを介して大気に開放されている。
【0027】
本実施形態のCAES発電装置1は、バイパス流路24、バイパス切替部26、および制御装置30を備える。バイパス流路24は、高圧段膨張機本体8bを迂回して、低圧段膨張機本体8aに圧縮空気を流動させる(図1の破線参照)。バイパス切替部26によって、バイパス流路24を使用して高圧段膨張機本体8bを迂回するか、または、迂回しないかが切り替えられる。また、制御装置30によってバイパス切替部26が制御される。
【0028】
バイパス流路24は、一端が空気配管10dに接続され、他端が空気配管10eに接続されている。詳細は後述するが、圧縮空気は、バイパス切替部26が制御されることによって、高圧段膨張機本体8bまたはバイパス流路24のどちらか一方を流れる。
【0029】
空気配管10cには、バルブ18aが設けられており、必要に応じてバルブ18aを開閉し、蓄圧タンク6への圧縮空気の供給を許容または遮断する。
【0030】
また、空気配管10dにおける、空気配管10dおよびバイパス流路24の接続点より上流側には、バルブ18bが設けられており、必要に応じてバルブ18bを開閉し、膨張機8への圧縮空気の供給を許容または遮断する。
【0031】
バイパス切替部26は、バルブ27a,27bを有する。バルブ27aは、バイパス流路24に設けられ、バルブ27bは、空気配管10dにおける、空気配管10dおよびバイパス流路24の接続点より下流側に設けられている。バイパス切替部26によって、バルブ27a,27bの開閉を切り替えられ、圧縮空気が、高圧段膨張機本体8bまたはバイパス流路24のどちらを流れるかが切り替えられる。
【0032】
本実施形態では、バルブ27aは第1減圧弁である。バルブ27aは、圧力調整機能および遮断機能を有している。すなわち、図示しない調整ねじを調整することで、圧力を調整でき、例えば、バルブ27aは、圧縮空気の圧力が減圧される減圧状態、または圧縮空気の圧力が減圧されない開状態に切り替えられる。また、図示しない調整ねじを完全に閉じ、バルブ27aを閉状態とすることで、遮断状態、つまり、圧縮空気が流れない状態にできる。圧縮空気の減圧時には、バイパス流路24を通過する圧縮空気は、バルブ27aにおいて圧力P(r)まで減圧される。
【0033】
空気配管10dのバルブ18bより上流側には圧力計16aが設けられている。圧力計16aでは、空気配管10dを流れる圧縮空気の圧力が計測される。換言すると、高圧段膨張機本体8bに供給される圧縮空気の圧力が計測される。
【0034】
また、空気配管10eには圧力計16bが設けられている。圧力計16bでは、空気配管10eを流れる圧縮空気の圧力が計測される。換言すると、高圧段膨張機本体8bから排気され低圧段膨張機本体8aに供給される圧縮空気の圧力が計測される。
【0035】
発電機12a,12bにはそれぞれ、変換効率を算出するために発電量を測定するための発電量測定器13a,13bが設けられている。ここで、変換効率とは、ある圧力の圧縮空気が有するエネルギーが電力に変換される割合である。圧縮空気の圧力から圧縮空気が有するエネルギーが算出され、そのエネルギーにおける発電量を測定することで変換効率が算出される。変換効率が高い程、圧縮空気が有するエネルギーの損失が相対的に少なく電力に変換される。
【0036】
低圧段圧縮機本体4aがモータ14aにより駆動されると、低圧段圧縮機本体4aは、空気配管10aおよび吸気口4cを介して空気を吸気し、圧縮する。圧縮された空気は、吐出口4d、空気配管10b、および吸気口4eを介して高圧段圧縮機本体4bに圧送される。高圧段圧縮機本体4bに圧送された圧縮空気は、モータ14bで駆動される高圧段圧縮機本体4bでさらに圧縮され、吐出口4fおよび空気配管10cを介して蓄圧タンク6に圧送される。この際、バルブ18aは開状態で、バルブ18bは閉状態である。
【0037】
蓄圧タンク6に貯蔵された圧縮空気は、膨張機8に送られ、発電に用いられる。この際、バルブ18aは閉状態で、バルブ18bは開状態である。本実施形態では、CAES発電装置1は、第1発電態様および第2発電態様の2つの発電態様を有する。第1発電態様では、高圧段膨張機本体8bおよび低圧段膨張機本体8aの両方において発電される。第2発電態様では、低圧段膨張機本体8aのみにおいて発電される。これら2つの発電態様は、バイパス切替部26によってバルブ27a,27bの開閉が制御されることによって切り替えられる。
【0038】
第1発電態様では、バルブ27aが閉状態で、バルブ27bが開状態である。すなわち、蓄圧タンク6から流出した圧縮空気は、バイパス流路24には流れず、空気配管10dおよび給気口8cを介して高圧段膨張機本体8bに供給される。高圧段膨張機本体8bに供給された圧縮空気は、高圧段膨張機本体8b内で膨張し、スクリュを回転させる。スクリュが回転することによって、発電機12bで発電される。高圧段膨張機本体8bで膨張することによって減圧され排気口8dから排気された圧縮空気は、空気配管10eおよび給気口8eを介して低圧段膨張機本体8aに供給される。低圧段膨張機本体8aに供給された圧縮空気は、低圧段膨張機本体8a内で膨張し、スクリュを回転させる。スクリュが回転することによって、発電機12aで発電される。低圧段膨張機本体8aで膨張した圧縮空気は、排気口8fから空気配管10eを通じて外部に排気される。
【0039】
第2発電態様では、バルブ27aが開状態で、バルブ27bが閉状態である。すなわち、蓄圧タンク6から流出した圧縮空気は、高圧段膨張機本体8bには供給されず、バイパス流路24に流れる。バイパス流路24に流れた圧縮空気は、バルブ27aで圧力P(r)まで減圧され、低圧段膨張機本体8aに供給される。低圧段膨張機本体8aに供給された圧縮空気は、低圧段膨張機本体8a内で膨張し、スクリュを回転させる。スクリュが回転することによって、発電機12aで発電される。低圧段膨張機本体8aで膨張した圧縮空気は、排気口8fから空気配管10eを通じて外部に排気される。
【0040】
図2および図3を参照して、第1発電態様および第2発電態様のそれぞれにおける圧縮空気の圧力および変換効率について説明する。
【0041】
図2は、第1発電態様における高圧段膨張機本体8bおよび低圧段膨張機本体8aのそれぞれに供給される圧縮空気の圧力、つまり、圧力計16aで測定される圧力、およびその圧力における変換効率の関係を示すグラフである。高圧段膨張機本体8bに供給される圧縮空気の圧力およびその圧力における変換効率は、細い実線で示す。低圧段膨張機本体8aに供給される圧縮空気の圧力およびその圧力における変換効率は、太い実線で示す。また、一点鎖線は、高圧段膨張機本体8bから排気された圧縮空気の圧力、つまり、圧力計16bで測定される圧力を仮想的に示したものである。
【0042】
本実施形態では、高圧段膨張機本体8bおよび低圧段膨張機本体8aのそれぞれに供給される圧縮空気の供給圧力が、圧力計16a,16bで計測され、記録媒体32に記録される。また、高圧段膨張機本体8bおよび低圧段膨張機本体8aのそれぞれに供給される圧縮空気の供給圧力における発電量が発電量測定器13a,13bによって計測され、変換効率として記録媒体32に記録される。
【0043】
高圧段膨張機本体8bに供給される圧力の一例として、圧力P(A)~P(C)を用いて説明する。
【0044】
高圧段膨張機本体8bに圧力P(A)で供給された圧縮空気は、高圧段膨張機本体8b内で膨張し、圧力P(a)で排気される。この際、圧縮空気が有するエネルギーは、発電機12bにおいて変換効率Eh(A)で電力に変換される。圧力P(a)で排気された圧縮空気は、低圧段膨張機本体8aに圧力P(a)で供給され、低圧段膨張機本体8a内で膨張し、排気される。この際、圧縮空気が有するエネルギーは、発電機12aにおいて変換効率El(a)で電力に変換される。
【0045】
同様に、高圧段膨張機本体8bに圧力P(B)で供給された圧縮空気は、高圧段膨張機本体8b内で膨張し、圧力P(b)で排気される。この際、圧縮空気が有するエネルギーは、発電機12bにおいて変換効率Eh(B)で電力に変換される。圧力P(b)で排気された圧縮空気は、低圧段膨張機本体8aに圧力P(b)で供給され、低圧段膨張機本体8a内で膨張し、排気される。この際、圧縮空気が有するエネルギーは、発電機12aにおいて変換効率El(b)で電力に変換される。
【0046】
また、同様に、高圧段膨張機本体8bに圧力P(C)で供給された圧縮空気は、高圧段膨張機本体8b内で膨張し、圧力P(c)で排気される。この際、圧縮空気が有するエネルギーは、発電機12bにおいて変換効率Eh(C)で電力に変換される。圧力P(c)で排気された圧縮空気は、低圧段膨張機本体8aに圧力P(c)で供給され、低圧段膨張機本体8a内で膨張し、排気される。この際、圧縮空気が有するエネルギーは、発電機12aにおいて変換効率El(c)で電力に変換される。
【0047】
このように、高圧段膨張機本体8bに圧力P(A),P(B)で供給された圧縮空気は、高圧段膨張機本体8bにおいて相対的に高い変換効率Eh(A),Eh(B)で電力に変換される。その上さらに、高圧段膨張機本体8bから圧力P(a),P(b)で排気された圧縮空気は、低圧段膨張機本体8aにおいても相対的に高い変換効率El(a),El(b)で電力に変換される。
【0048】
一方で、高圧段膨張機本体8bに圧力P(C)で供給された圧縮空気は、高圧段膨張機本体8bにおいて相対的に低い変換効率Eh(C)で電力に変換される。その上さらに、高圧段膨張機本体8bから圧力P(c)で排気された圧縮空気は、低圧段膨張機本体8aにおいても相対的に低い変換効率El(c)で電力に変換される。
【0049】
以上の内容を一般化するために、変数である圧力P(X)を用いて説明する。高圧段膨張機本体8bに圧力P(X)で供給された圧縮空気は、高圧段膨張機本体8bにおいて変換効率Eh(X)で電力に変換される。そして、高圧段膨張機本体8bから圧力P(x)で排気された圧縮空気は、低圧段膨張機本体8aにおいて変換効率El(x)で電力に変換される。
【0050】
図3は、第2発電態様における低圧段膨張機本体8aに供給される圧縮空気の圧力およびその圧力における変換効率の関係を示すグラフである。圧力計16aで測定される圧縮空気の圧力の一例として、圧力P(A)~P(C)を用いて説明する。
【0051】
図3を参照すると、蓄圧タンク6から圧力P(A)で流出した圧縮空気は、バイパス流路24を介して低圧段膨張機本体8aに供給される。バイパス流路24を通過する際、圧縮空気は、バルブ27aで圧力P(r)まで減圧される。圧力P(r)で供給された圧縮空気は、低圧段膨張機本体8a内で膨張し、排気される。この際、圧縮空気は、発電機12aにおいて変換効率El(r)で電力に変換される。本実施形態では、変換効率El(r)は、低圧段膨張機本体8aにおいて、最も高い変換効率(最高効率)である。
【0052】
同様に、蓄圧タンク6から圧力P(B),P(C)で流出した圧縮空気は、バイパス流路24を介して低圧段膨張機本体8aに供給される。バイパス流路24を通過する際、圧縮空気は、バルブ27aで圧力P(r)まで減圧される。圧力P(r)で供給された圧縮空気は、低圧段膨張機本体8a内で膨張し、排気される。この際、圧縮空気は、発電機12aにおいて変換効率El(r)で電力に変換される。
【0053】
このように、第2発電態様では、蓄圧タンク6から圧力P(A)~P(C)で流出した圧縮空気はいずれも、圧力P(r)まで減圧され、低圧段膨張機本体8aにおいて変換効率El(r)で電力に変換される。
【0054】
以上の内容を一般化するために、変数である圧力P(X)を用いて説明する。蓄圧タンク6から圧力P(X)で流出した圧縮空気は、圧力P(r)まで減圧され、低圧段膨張機本体8aにおいて変換効率El(r)で電力に変換される。
【0055】
本実施形態では、バルブ27aにおいて、変換効率El(r)となるように圧力P(r)まで減圧している。しかし、変換効率El(r)の例えば80%である変換効率El(q)以上となる、圧力P(q1)から圧力P(q2)までの範囲に収まるように減圧してもよい。
【0056】
図4を参照して、本実施形態におけるCAES発電装置1の発電動作の制御について説明する。
【0057】
CAES発電装置1が発電を開始すると、圧力計16aによって空気配管10dを流れる圧縮空気の圧力P(X)が測定される(ステップS1)。次いで、発電量OUTh(P(X))、発電量α*OUTl(P(x))、および発電量α*OUTl(P(r))が算出される(ステップS2)。発電量OUTh(P(X))は、圧力P(X)における第1発電態様の高圧段膨張機本体8bの発電量である。発電量α*OUTl(P(x))は、圧力P(x)における第1発電態様の低圧段膨張機本体8aの発電量である。発電量α*OUTl(P(r))は、圧力P(r)における第2発電態様の低圧段膨張機本体8aの発電量である。
【0058】
圧力P(X)における第1発電態様の高圧段膨張機本体8bの発電量OUTh(P(X))は、以下の式(1)で表される。
【0059】
【数1】
Ch:定数
Rh:高圧段膨張機本体8bのスクリュの回転速度
【0060】
また、圧力P(x)における第1発電態様の低圧段膨張機本体8aの発電量α*OUTl(P(x))は、以下の式(2)で表される。
【0061】
【数2】
Cl:定数
Rl:低圧段膨張機本体8aのスクリュの回転速度
【0062】
ここで、膨張比αは、以下の式(3)で表される。
【0063】
【数3】
【0064】
また、圧力P(r)における第2発電態様の低圧段膨張機本体8aの発電量α*OUTl(P(r))は、以下の式(4)で表される。
【0065】
【数4】
【0066】
次いで、CAES発電装置1の装置全体としての発電量が大きくなるように、制御装置30によって第1発電態様または第2発電態様が選択される(ステップS3)。具体的には、発電量OUTh(P(X))および発電量α*OUTl(P(x))の合計が、発電量α*OUTl(P(r))より大きい場合(YES:ステップS3)、第1発電態様によって発電される(ステップS4)。つまり、バルブ27aを閉じ、バルブ27bを開ける。また、発電量OUTh(P(X))および発電量α*OUTl(P(x))の合計が、発電量α*OUTl(P(r))より小さい場合(NO:ステップS3)、第2発電態様によって発電される(ステップS5)。つまり、バルブ27aを開け、バルブ27bを閉じる。
【0067】
ステップS1~S5の制御は、CAES発電装置1の発電中は常時行われる。
【0068】
本発明におけるCAES発電装置1によれば、バイパス流路24を介することで高圧段膨張機本体8bを迂回するかを選択することができ、かつ、バルブ27aによって低圧段膨張機本体8aに供給される圧縮空気を減圧することができる。すなわち、高圧段膨張機本体8bおよび低圧段膨張機本体8aの両方で発電した場合の装置全体の変換効率と、バイパス流路24を介して調整された圧力の圧縮空気を低圧段膨張機本体8aに供給し発電した場合の装置全体の変換効率とを比較して選択することができる。そのため、装置全体の変換効率が向上できる。
【0069】
また、バイパス流路24を介する場合と介さない場合とのそれぞれの発電量を比較して、発電量が多い方を選択するように制御しているため、装置全体として発電量を増加させることができる。
【0070】
また、変換効率El(q)以上となる、圧力P(q1)から圧力P(q2)の範囲に減圧する場合、低圧段膨張機本体8aおよび発電機12aによる圧力から電力への変換効率が最高効率を含む高い効率であるため、発電機12aによる発電量を多くすることができる。
【0071】
また、記録媒体32を備えるため、圧力および変換効率の関係を実データから採取できる。そのため、圧力および変換効率の関係を計算から求める場合に比べ、圧力および変換効率の関係の信頼性が向上し得る。
【0072】
本実施形態では、2段の膨張機について説明したが、前述の通り、3段以上の膨張機でもよい。その場合、バイパス流路24は任意の膨張機本体を迂回するように設けることができ、また、2段以上の膨張機本体を迂回するように設けてもよい。
【0073】
(第2実施形態)
図5から図7を参照すると、第2実施形態に係るCAES発電装置1の構成は、以下の点で第1実施形態と異なる。第2実施形態のその他の構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同一ないし同様の要素には同一の符号を付している。
【0074】
図5を参照すると、第2実施形態では、バルブ18bに代わり、バルブ28(第2減圧弁)が、空気配管10dにおける圧力計16aの下流側、かつ、バイパス流路24と空気配管10dとの接続点の上流側に設けられている。バルブ28は、圧縮空気を圧力P(S)まで減圧する減圧弁である。そのため、空気配管10dを通過する圧縮空気の圧力が、圧力P(S)より大きい場合、圧縮空気は、バルブ18bにおいて圧力P(S)まで減圧される。
【0075】
図6を参照すると、高圧段膨張機本体8bでは、圧力P(S)で供給された圧縮空気は、変換効率Eh(S)で電力に変換される。第2実施形態では、変換効率Eh(S)は、高圧段膨張機本体8bにおいて、最も高い変換効率(最高効率)である。
【0076】
第2実施形態では、バルブ18bにおいて、変換効率Eh(S)となるように圧力P(S)まで減圧している。しかし、変換効率Eh(S)の例えば80%である変換効率Eh(T)以上となる、圧力P(T1)から圧力P(T2)までの範囲に収まるように減圧してもよい。
【0077】
図7を参照して第2実施形態におけるCAES発電装置1の発電動作の制御について説明する。
【0078】
CAES発電装置1が発電を開始すると、圧力計16aによって空気配管10dを流れる圧縮空気の圧力P(X)が測定される(ステップS1)。そして、圧力P(X)が圧力P(S)より大きいかが判定される(ステップS2)。圧力P(X)が圧力P(S)より大きい場合(YES:ステップS2)、第1発電態様によって発電される(ステップS3)。つまり、バルブ27aを開け、バルブ27bを閉じる。バルブ18bにおいて圧力P(S)まで減圧された圧縮空気が高圧段膨張機本体8bに供給され、高圧段膨張機本体8bにおいて、圧縮空気のエネルギーは変換効率Eh(S)で電力に変換される。圧力P(X)が圧力P(S)より小さい場合(NO:ステップS2)、発電量OUTh(P(X))、発電量α*OUTl(P(x))、および発電量α*OUTl(P(r))が算出される(ステップS4)。以降の動作に関しては第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0079】
第2実施形態におけるCAES発電装置1によれば、高圧段膨張機本体8bおよび発電機12bによる圧力から電力への変換効率が最高効率を含む高い効率であるため、発電機12bによる発電量を多くすることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 CAES発電装置
4 圧縮機
4a 低圧段圧縮機本体
4b 高圧段圧縮機本体
4c,4e 吸気口
4d,4f 吐出口
6 蓄圧タンク
8 膨張機
8a 低圧段膨張機本体(第2膨張機本体)
8b 高圧段膨張機本体(第1膨張機本体、第3膨張機本体)
8c,8e 給気口
8d,8f 排気口
10a,10b,10c,10e,10f 空気配管
10d 空気配管(圧縮空気流路)
12a 発電機(第2発電機)
12b 発電機(第1発電機、第3発電機)
13a,13b 発電量測定器
14a,14b モータ(電動機)
16a,16b 圧力計
18a,18b バルブ
24 バイパス流路
26 バイパス切替部
27a バルブ(第1減圧弁)
27b バルブ
28 バルブ(第2減圧弁)
30 制御装置
32 記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7