(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086532
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】防火ダンパー
(51)【国際特許分類】
A62C 2/24 20060101AFI20230615BHJP
F24F 13/14 20060101ALI20230615BHJP
F24F 13/15 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
A62C2/24 C
F24F13/14 K
F24F13/15 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201112
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】390022666
【氏名又は名称】協立エアテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】柿原 秀規
(72)【発明者】
【氏名】占部 寿雄
【テーマコード(参考)】
3L081
【Fターム(参考)】
3L081AA05
3L081AB02
3L081FA03
3L081FA06
(57)【要約】
【課題】温度ヒューズの誤作動により羽根が全閉状態となったときに生じる諸問題を防止することができ、内部を流動する気体流(排気など)を停止することなく温度ヒューズのメンテナンスや交換作業を行うことができる防火ダンパーを提供する。
【解決手段】防火ダンパー100は、四角筒状のケーシング1内に設定された流路2を開閉するためケーシング1内に回動可能に配置された複数の羽根3a,3b,4a,4bと、複数のグループ3,4に分けられた複数の羽根3a,3b,4a,4bをグループ3,4ごとに開閉する複数の開閉器5,6と、を備え、開閉器5(6)は、羽根3a,3b(4a,4b)を閉止方向に付勢する弾性手段と、弾性手段の付勢力を係留して羽根3a,3b(4a,4b)を開放状態に保持し、ケーシング1内の温度が所定値を超えると作動して前記係留を解除する温度ヒューズ7(8)と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケーシング内に設定された流路を開閉するため前記ケーシング内に回動可能に配置された複数の羽根と、
複数のグループに分けられた複数の前記羽根を前記グループごとに開閉する複数の開閉器と、を備え、
前記開閉器が、前記羽根を閉止方向に付勢する弾性手段と、前記弾性手段の付勢力を係留して前記羽根を開放状態に保持するとともに前記ケーシング内の温度が所定値を超えると作動して前記係留を解除する単数の温度ヒューズと、を備えた防火ダンパー。
【請求項2】
筒状のケーシング内に設定された流路を開閉するため前記ケーシング内に回動可能に配置された複数の羽根と、
複数のグループに分けられた複数の前記羽根を前記グループごとに開閉する複数の開閉器と、を備え、
前記開閉器が、前記羽根を閉止方向に付勢する弾性手段と、前記弾性手段の付勢力を係留して前記羽根を開放状態に保持するとともに前記ケーシング内の温度が所定値を超えると作動して前記係留を解除する複数の温度ヒューズと、を備えた防火ダンパー。
【請求項3】
筒状のケーシング内に設定された流路を開閉するため前記ケーシング内に回動可能に配置された単数または複数の羽根と、
前記羽根を開閉する単数の開閉器と、を備え、
前記開閉器が、前記羽根を閉止方向に付勢する弾性手段と、前記弾性手段の付勢力を係留して前記羽根を開放状態に保持するとともに前記ケーシング内の温度が所定値を超えると作動して前記係留を解除する複数の温度ヒューズと、を備えた防火ダンパー。
【請求項4】
複数の前記温度ヒューズのうちの一部が作動したときに異常発生信号を発報し、複数の前記温度ヒューズの全てが作動したときは火災発生信号を発報する機能を設けた請求項1~3の何れかの項に記載の防火ダンパー。
【請求項5】
複数の前記温度ヒューズのうちの一部が作動したときに異常発生信号光若しくは異常発生信号音の少なくとも一方を発報し、複数の前記温度ヒューズの全てが作動したときは火災発生信号光若しくは火災発生信号音の少なくとも一方を発報する機能を設けた請求項1~3の何れかの項に記載の防火ダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種建築物の空調設備を構成する空調用ダクトや排気ダクトなどに配備される防火ダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の空調設備を構成する空調用ダクトなどに配備されている防火ダンパーは、火災発生などにより当該防火ダンパー内を流動する気体の温度が所定値より高くなると、防火ダンパーに設けられている温度ヒューズが作動して羽根が閉止状態となり、空調用ダクトを閉鎖する機能を有している。
【0003】
一般に温度ヒューズを構成する材料は金属であるため、近年、増加している半導体工場などにおいては、工場内から排気ダクトなどを経由して排出される排気ガス中に含まれる酸性成分、アルカリ性成分その他の薬剤成分などによって温度ヒューズが腐食して誤作動し、火災などが発生していないのに、防火ダンパーの羽根が閉鎖して排気ダクトを閉塞してしまうことがあった。
【0004】
火災などが発生していないのに排気ダクトなどが閉塞されると、工場内の排気ガスが排出されず、排気ダクトの内圧が上昇して排気ダクトが破損し、これにより排気ダクトの上流側の各種装置にトラブルが生じたり、工場の製造ラインが停止したりすることがあり、様々な問題となっている。
【0005】
一方、本発明に関連する先行技術として、例えば、特許文献1に記載された「ダブルヒューズ作動防火ダンパー装置」がある。この「ダブルヒューズ作動防火ダンパー装置」は、ダンパー羽根をダクトを閉鎖する方向に回転する様にスプリングによって付勢させ、常時はダンパー羽根の回転軸にダクト壁側で連結したアームに2個以上の温度ヒューズを係止して、ダンパー羽根を開放状態に保持し、温度ヒューズの全てが作動したときのみダンパー羽根が閉鎖動作することを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、従来の防火ダンパーにおいては、火災以外の原因により温度ヒューズが誤作動すると、羽根が全閉状態となってダクトが閉鎖され、これによって様々な問題(排気不良、ダクト内圧上昇によるダクト破壊などの問題)を生じている。
【0008】
一方、特許文献1に記載された「ダブルヒューズ作動防火ダンパー装置」は羽根の枚数が単数である場合には有効であるが、複数の羽根を備えた防火ダンパーの場合、それぞれの羽根ごとに複数の温度ヒューズを設けなければならないので、構造が複雑化するだけでなく、温度ヒューズのメンテナンス作業も煩雑化するという問題がある。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、羽根の枚数や温度ヒューズの個数が単数または複数であっても、温度ヒューズの誤作動により羽根が全閉状態となって生じる問題(排気不良、ダクト内圧上昇によるダクト破壊などの問題)を防止することができ、また、内部を流動する気体流(排気など)を停止することなく温度ヒューズのメンテナンスや交換作業を行うことができる防火ダンパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る第一の防火ダンパーは、
筒状のケーシング内に設定された流路を開閉するため前記ケーシング内に回動可能に配置された複数の羽根と、
複数のグループに分けられた複数の前記羽根を前記グループごとに開閉する複数の開閉器と、を備え、
前記開閉器が、前記羽根を閉止方向に付勢する弾性手段と、前記弾性手段の付勢力を係留して前記羽根を開放状態に保持するとともに前記ケーシング内の温度が所定値を超えると作動して前記係留を解除する単数の温度ヒューズと、を備えたことを特徴とする。
【0011】
このような構成とすれば、開閉器が具備する温度ヒューズの作動に連動して閉鎖する羽根が複数のグループに分かれていることにより、一部の温度ヒューズが誤作動したときも一部の羽根しか閉鎖せず、ケーシング内の流路には羽根が開放したままのエリアが残存するので、このエリアにて気体流動を確保することができ、この結果、防火ダンパーが誤作動により閉鎖(全閉状態)となることによって生じる諸問題(排気不良、ダクト内圧上昇によるダクト破壊などの問題)を防止することができる。
【0012】
また、一部の温度ヒューズが作動しても防火ダンパーが閉鎖(全閉状態)にならないので、例えば、温度ヒューズの点検作業や、作動済み温度ヒューズの交換作業を行うために、防火ダンパー内を流動する気体流(排気など)を停止する必要がなくなる。
【0013】
次に、本発明に係る第二の防火ダンパーは、
筒状のケーシング内に設定された流路を開閉するため前記ケーシング内に回動可能に配置された複数の羽根と、
複数のグループに分けられた複数の前記羽根を前記グループごとに開閉する複数の開閉器と、を備え、
前記開閉器が、前記羽根を閉止方向に付勢する弾性手段と、前記弾性手段の付勢力を係留して前記羽根を開放状態に保持するとともに前記ケーシング内の温度が所定値を超えると作動して前記係留を解除する複数の温度ヒューズと、を備えたことを特徴とする。
【0014】
このような構成とすれば、複数の温度ヒューズの一部が誤作動しても他方のヒューズが正常であれば、羽根は閉鎖しないので、防火ダンパーが誤作動により閉鎖(全閉状態)となることによって生じる諸問題(排気不良、ダクト内圧上昇によるダクト破壊などの問題)を防止することができる。特に、開閉器がそれぞれ複数の温度ヒューズを備えたことにより、誤作動により防火ダンパーが閉鎖(全閉状態)となることを防止する機能を高めることができる。
【0015】
次に、本発明に係る第三の防火ダンパーは、
筒状のケーシング内に設定された流路を開閉するため前記ケーシング内に回動可能に配置された単数または複数の羽根と、
前記羽根を開閉する単数の開閉器と、を備え、
前記開閉器が、前記羽根を閉止方向に付勢する弾性手段と、前記弾性手段の付勢力を係留して前記羽根を開放状態に保持するとともに前記ケーシング内の温度が所定値を超えると作動して前記係留を解除する複数の温度ヒューズと、を備えたことを特徴とする。
【0016】
このような構成とすれば、開閉器が複数の温度ヒューズを具備していることにより、一部の温度ヒューズが誤作動しても羽根が閉鎖しないので、流路内の気体流動を確保することができ、この結果、防火ダンパーが誤作動により閉鎖(全閉状態)となることによって生じる諸問題(排気不良、ダクト内圧上昇によるダクト破壊などの問題)を防止することができる。
【0017】
また、一部の温度ヒューズが作動しても防火ダンパーが閉鎖(全閉状態)にならないので、例えば、温度ヒューズの点検作業や、作動済み温度ヒューズの交換作業を行うために、防火ダンパー内を流動する気体流(排気など)を停止する必要がなくなる。
【0018】
前記防火ダンパーにおいては、複数の前記温度ヒューズのうちの一部が作動したときに異常発生信号を発報し、複数の前記温度ヒューズの全てが作動したときは火災発生信号を発報する機能を設けることができる。
【0019】
このような構成とすれば、一部の温度ヒューズが作動したときに異常発生信号が発報されるので、防火ダンパーの状況(防火ダンパーに配備された温度ヒューズの状況、火災発生)をいち早く把握することができる。
【0020】
前記防火ダンパーにおいては、複数の前記温度ヒューズのうちの一部が作動したときに異常発生信号光若しくは異常発生信号音の少なくとも一方を発報し、複数の前記温度ヒューズの全てが作動したときは火災発生信号光若しくは火災発生信号音の少なくとも一方を発報する機能を設けることができる。
【0021】
このような構成とすれば、一部の温度ヒューズが作動したときは異常発生信号光若しくは異常発生信号音の少なくとも一方で異常事態発生を知ることができ、全部の温度ヒューズが作動したときは火災発生信号光若しくは火災発生信号音の少なくとも一方で火災発生を知ることができるので、防火ダンパーの状況(防火ダンパーに配備された温度ヒューズの状況、火災発生)をいち早く把握することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、羽根の枚数や温度ヒューズの個数が単数または複数であっても、温度ヒューズの誤作動により羽根が全閉状態となって生じる問題(排気不良、ダクト内圧上昇によるダクト破壊などの問題)を防止することができ、また、内部を流動する気体流(排気など)を停止することなく温度ヒューズのメンテナンスや交換作業を行うことができる防火ダンパーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】(a)は本発明の実施形態である防火ダンパーが全開状態にあるときの一部省略正面図であり、(b)は前記防火ダンパーの一部省略側面図である。
【
図2】
図1中の矢線Aで示す部分の一部省略拡大図である。
【
図3】
図1中の矢線Bで示す部分の一部省略拡大図である。
【
図4】(a)は
図1に示す防火ダンパーが全閉状態にあるときの一部省略正面図であり、(b)は前記防火ダンパーの一部省略側面図である。
【
図5】
図4中の矢線Eで示す部分の一部省略拡大図である。
【
図6】
図4中の矢線Fで示す部分の一部省略拡大図である。
【
図7】(a)は
図1に示す防火ダンパーが半開状態にあるときの一部省略正面図であり、(b)は前記防火ダンパーの一部省略側面図である。
【
図8】
図1に示す防火ダンパーの動作状態を示すフローチャートである。
【
図9】本発明のその他の実施形態である防火ダンパーが全開状態にあるときの一部省略側面図である。
【
図11】
図10中の矢線K方向から見た一部省略拡大図である。
【
図12】
図9に示す防火ダンパーが全閉状態にあるときの一部省略側面図である。
【
図13】
図12中の矢線L方向から見た一部省略拡大図である。
【
図14】
図9に示す防火ダンパーが全閉状態を保持しているときの一部省略側面図である。
【
図15】
図14中の矢線M方向から見た一部省略拡大図である。
【
図16】
図9に示す防火ダンパーの動作状態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、
図1~
図16に基づいて、本発明の実施形態である防火ダンパー100,200について説明する。
【0025】
始めに、
図1~
図8に基づいて、防火ダンパー100について説明する。
図1に示すように、防火ダンパー100は、四角筒状のケーシング1内に設定された流路2を開閉するためケーシング1内に回動可能に配置された複数の羽根3a,3b,4a,4bと、
複数のグループ3,4に分けられた複数の羽根3a,3b,4a,4bをグループ3,4ごとに開閉する複数の開閉器5,6と、を備えている。
【0026】
開閉器5,6は同じ構造、機能を有し、開閉器5(6)は、羽根3a,3b(4a,4b)を閉止方向に付勢する弾性手段(図示せず)と、この弾性手段の付勢力を係留して羽根3a,3b(4a,4b)を開放状態に保持するとともにケーシング1内の温度が所定値を超えると作動して前記係留を解除する温度ヒューズ7(8)と、を備えている。温度ヒューズ7,8も同じ構造、機能を有している。
【0027】
複数の羽根3a,3b,4a,4bはケーシング1を水平方向に貫通した状態でケーシング1内に配置された支軸3c,3d,4c,4dにそれぞれ回動可能に軸支され、羽根3a,3bの開閉動作を連動する連結部材3e,3f並びに羽根4a,3bの開閉動作を連動する連結部材4e,4fが設けられている。支軸3c,4cの一方の端部3g,4gはそれぞれケーシング1の側面部1aを貫通し、開閉器5,6の正面部5a,6aに露出し、それぞれの端部3g,4gにハンドル12,13が取り付けられている。
【0028】
前述したように、開閉器5と6並びに温度ヒューズ7と8は、それぞれ同じ構造、機能を有しているので、
図2,
図3に基づいて、開閉器5、温度ヒューズ7について説明し、開閉器6、温度ヒューズ8についての説明は省略する。
【0029】
図2,
図3に示すように、ケーシング1内に突出する温度ヒューズ7の先端側には温度センサ10が設けられ、温度ヒューズ7の頭部7b側はケーシング1の側面部1aに配置された開閉器5の正面部5aから露出している。
【0030】
温度ヒューズ7の頭部7bにはヒューズピン7aが突設され、このヒューズピン7aが、ハンドル12の把持部12aの反対側に設けられたヒューズフック12bに係合し、ハンドル12の回動を阻止することにより、羽根3a,3bを閉止方向に付勢する弾性手段(図示せず)の付勢力を係留して、羽根3a,3bを開放状態に保持している。
【0031】
温度ヒューズ7の温度センサ10は、形状記憶合金のセンサが好適であるが、これに限定するものではなく、半田合金のセンサであっても良い。後述するように、温度センサ10が、ダクトD内の温度上昇を感知し、形状記憶合金が変形すること(若しくは半田合金が溶融すること)により、温度ヒューズ7の頭部7bのヒューズピン7aが温度ヒューズ7内に引き込まれると、ヒューズフック12bとヒューズピン7aとの係合が解除されるので、羽根3a,3bを閉止方向に付勢している弾性手段(図示せず)の付勢力(復元力)により、羽根3a,3bが瞬時に閉鎖する。
【0032】
図2に示すように、温度ヒューズ7の頭部7bと対向する位置には、基板16に取り付けられたリミットスイッチ15が、そのレバー15aをヒューズピン7aの先端部に向けた状態で配置されている。温度ヒューズ7のヒューズピン7aが突出状態にあることで羽根3a,3bが全開しているとき、ヒューズピン7aはリミットスイッチ15のレバー15aを押圧した状態に保持されている。
【0033】
温度センサ10がダクトD内の温度上昇を感知することにより、温度ヒューズ7の頭部7bのヒューズピン7aが温度ヒューズ7内に引き込まれると、ヒューズフック12bとヒューズピン7aとの係合が解除され、羽根3a,3bが瞬時に閉鎖する(火災発生による正常動作)。そして、これと同時に、後述する
図5に示すように、ヒューズピン7aがリミットスイッチ15のレバー15aから離れることで押圧力が解除されるので、リミットスイッチ15は温度ヒューズ7が作動したことを知らせる信号を発信する回路に切り替わり、この信号は基板16を介して発信される。
【0034】
図1に示すように、開閉器5の下方に配置された開閉器6においても、基板18に取り付けられたリミットスイッチ17が、温度ヒューズ8の頭部と対向する位置に配置されており、
図2に基づいて説明したリミットスイッチ15と同様の機能を発揮する。
【0035】
平常時においては、
図1に示すように、防火ダンパー100の温度ヒューズ7,8が、羽根3a,3b,4a,4bを閉止方向に付勢する弾性手段(図示せず)の付勢力を係留しているので、羽根3a,3b,4a,4bを開放状態に保持され、ケーシング1内の流路2は全開状態にあり、ダクトD内を流動する気流は流路2を通過して下流側へ流れていく。
【0036】
火災発生時、ダクトDを流動してくる高温気流によりケーシング1内の温度が所定値を超えると温度センサ10,11が感知して温度ヒューズ7,8が作動し、
図5に示すように、ヒューズピン7aなどが温度ヒューズ7,8内に引き込まれると、羽根3a,3b,4a,4bの係留が解除され、
図4~
図6に示すように、羽根3a,3b,4a,4bは全閉状態となり、流路2は閉鎖される。
【0037】
図5に示すように、温度センサ10がダクトD内の温度上昇を感知し、温度ヒューズ7の頭部7bのヒューズピン7aが温度ヒューズ7内に引き込まれると、前述したように、ヒューズピン7aがリミットスイッチ15のレバー15aから離れることで押圧力が解除されるので、リミットスイッチ15は温度ヒューズ7が作動したことを知らせる信号を発信する回路に切り替わり、この信号は基板16を介して発信される。
【0038】
一方、平常時において、ダクトDを経由して流動してくる気流中に含まれる酸性成分、アルカリ性成分その他の薬剤成分などにより、片方の温度ヒューズの温度センサ(例えば、温度ヒューズ7の温度センサ10)が腐食したり、特に半田ヒューズの場合はクリープ現象が発生したりするなど、火災以外の要因により温度ヒューズ7が誤作動することがある。この場合、
図7に示すように、片方のグループ3の羽根3a,3bが閉止状態となるが、他方のグループ4の羽根4a,4bは開放状態に保たれるので、流路2全体は半開状態となる。従って、防火ダンパー100に向かってダクトDを流れてくる気流は流路2の下半分の領域を通過して下流側へ流動可能な状態に保たれる。
【0039】
なお、
図7は、上方の温度ヒューズ7の温度センサ10のみが誤作動した場合を示しているが、下方の温度ヒューズ8の温度センサ11のみが誤作動した場合も前述と同様、グループ3の羽根3a,3bが開放状態に保たれ、流路2は半開状態となるので、防火ダンパー100に向かってダクトDを流れてくる気流は流路2の上半分の領域を通過して下流側へ流動可能な状態に保たれる。
【0040】
このように開閉器5,6が具備する温度ヒューズ7,8の作動に連動して閉鎖する羽根3a,3b,4a,4bが複数のグループ3,4に分かれていることにより、一部の温度ヒューズ(温度ヒューズ7または8)が誤作動したときも一部の羽根(羽根3a,3bまたは羽根4a,4b)しか閉鎖せず、ケーシング1内の流路2には残りの羽根(羽根4a,4bまたは羽根3a,3b)が開放したままのエリアが残存するので、このエリアにて気体流動を確保することができる。従って、防火ダンパー100が誤作動により閉鎖状態(全閉状態)となることによって生じる諸問題(例えば、排気不良、ダクトDの内圧上昇によるダクトDの破壊などの問題)を防止することができる。
【0041】
また、一部の温度ヒューズ(温度ヒューズ7または8)が誤作動しても防火ダンパー100は閉鎖状態(全閉状態)にならないので、例えば、温度ヒューズ7,8の点検作業や、作動済み温度ヒューズ7,8の交換作業を行うために、防火ダンパー100内を流動する気体流(排気など)を停止する必要もない。
【0042】
図1に示すように、防火ダンパー100においては、温度ヒューズ7,8の作動の有無を検知するリミットスイッチ15,17がそれぞれ温度ヒューズ7,8の近傍に配置されている。前述したように、温度ヒューズ7が作動すると、リミットスイッチ15が温度ヒューズ7が作動したことを知らせる信号を発信する回路に切り替わり、この信号が基板16を介して発信され、温度ヒューズ8が作動すると、リミットスイッチ17が、温度ヒューズ8が作動したことを知らせる信号を発信する回路に切り替わり、この信号が基板18を介して発信される。
【0043】
また、防火ダンパー100は、リミットスイッチ15,17の切り替わりにより基板16,18を経由して発信される、温度ヒューズ7,8が作動したことを知らせる信号に基づいて、複数の温度ヒューズ7,8のうちの一部(一方)が作動したときに「異常発生信号」を発報し、複数の温度ヒューズ7,8の全てが作動したときは「火災発生信号」を発報する機能を備えている。
【0044】
さらに、防火ダンパー100は、リミットスイッチ15,17から基板16,18を経由して発信される信号(温度ヒューズ7,8が作動したことを知らせる信号)に基づいて、複数の温度ヒューズ7,8のうちの一部(一方)が作動したときに「異常発生信号光」、「異常発生信号音」の少なくとも一方を発報する機能、並びに、複数の温度ヒューズ7,8の全てが作動したときは「火災発生信号光」、「火災発生信号音」の少なくとも一方を発報する機能と、を備えている。
【0045】
ここで、
図8に基づいて
図1に示す防火ダンパー100の動作状態について説明する。温度ヒューズ7,8が火災により正常作動した場合、または、火災以外の他の要因で誤作動した場合、開閉器5,6のリミットスイッチ15,17から温度ヒューズ7,8の作動信号が発信されると(S101)、「全ての開閉器5,6の温度ヒューズ7,8は作動したか?」の判断が行われ(S102)、「No(複数の温度ヒューズ7,8のうちの一方が作動した)」と判断された場合は火災以外の他の要因で温度ヒューズ7,8が誤作動したと判断して「異常発生信号発報」が実行され(S103)、「異常発生信号光発報」、「異常発生信号音発報」の少なくとも一方が実行される(S104)。
【0046】
一方、前述したステップ(S102)において、「Yes(複数の温度ヒューズ7,8の全てが作動した)」と判断された場合は火災発生により温度ヒューズ7,8が正常に作動したと判断して「火災発生信号発報」が実行され(S105)、「火災発生信号光発報」、「火災発生信号音発報」の少なくとも一方が実行される(S106)。
【0047】
このように、防火ダンパー100においては、一部の温度ヒューズ(温度ヒューズ7または8)が作動したときは「異常発生信号発報」が実行される(S103)とともに、「異常発生信号光発報」、「異常発生信号音発報」の少なくとも一方が実行される(S104)ので、防火ダンパー100の状況(防火ダンパー100に配備された温度ヒューズ7,8の状況、火災発生の有無など)をいち早く把握することができる。
【0048】
また、防火ダンパー100においては、複数の温度ヒューズ7,8の全てが作動したときは「火災発生信号発報」が実行される(S105)とともに、「火災発生信号光発報」、「火災発生信号音発報」の少なくとも一方が実行される(S106)ので、火災発生を迅速に把握することができる。
【0049】
次に、
図9~
図16に基づいて、その他の実施形態である防火ダンパ200について説明する。
図9に示すように、防火ダンパ200は、四角筒状のケーシング21内に設定された流路22を開閉するためケーシング21内に支軸9を介して回動可能に配置された複数の羽根23a,23bと、羽根23a,23bを連動する連結部材24と、羽根23a,23bを開閉する単数の開閉器25と、を備えている。
【0050】
開閉器25は、羽根23a,23bを閉止方向に付勢する弾性手段(図示せず)と、弾性手段の付勢力を係留して羽根23a,23bを開放状態に保持するとともにケーシング21内の温度が所定値を超えると作動して前記係留を解除する複数の温度ヒューズ27,28と、を備えている。
【0051】
ここで、
図9~
図11に基づいて、開閉器25並びに温度ヒューズ27,28について説明するが、温度ヒューズ27と28は、それぞれ同じ構造、機能を有しているので、温度ヒューズ28についての説明は省略することがある。
【0052】
図9~
図11に示すように、ケーシング21内に突出する温度ヒューズ27,28の先端側には温度センサ37,38が設けられ、温度ヒューズ27,28の頭部27b,28b側はケーシング21の側面部21aに配置された開閉器25の正面部25aから露出している。本実施形態では温度ヒューズ27,28の温度センサ37,38は半田ヒューズを使用しているが、これに限定するものではない。
【0053】
温度ヒューズ27,28の頭部27b,28bにはそれぞれヒューズピン27a,28aが突設され、このヒューズピン27a,28aが、ハンドルの把持部29aの反対側に設けられたヒューズフック29b,29cに係合し、ハンドル29の回動を阻止することにより、羽根23a,23bを閉止方向に付勢する弾性手段(図示せず)の付勢力を係留して、羽根23a,23bを開放状態に保持している。
【0054】
前述したように、温度ヒューズ27,28の温度センサ37,38は半田ヒューズであり、温度センサ37,38が、ダクトD内の温度上昇を感知し、半田合金が溶融することにより、温度ヒューズ27,28の頭部27b,28bのヒューズピン27a,28aが温度ヒューズ27,28内に引き込まれると、ヒューズフック29b,29cとヒューズピン27a,28aとの係合が解除されるので、羽根23a,23bを閉止方向に付勢している弾性手段(図示せず)の付勢力(復元力)により、羽根23a,23bが瞬時に閉鎖する(火災発生による正常動作)。
【0055】
図11に示すように、温度ヒューズ27,28の頭部27b,28bと対向する位置には、基板39に取り付けられたリミットスイッチ31,32が、そのレバー31a,32aをヒューズピン27a,28aの先端部に向けた状態で配置されている。温度ヒューズ27,28のヒューズピン27a,28aが突出状態にあることで羽根23a,23bが全開しているとき、ヒューズピン27a,28aはリミットスイッチ31,32のレバー31a,32aを押圧した状態に保持されている。
【0056】
温度センサ37,38の両方がダクトD内の温度上昇を感知することにより、温度ヒューズ27,28の頭部27b,28bのヒューズピン27a,28aが温度ヒューズ27,28内に引き込まれると、ヒューズフック29b,29cとヒューズピン27a,28aとの係合が解除され、羽根23a,23bが瞬時に閉鎖する(火災発生による正常動作)。そして、これと同時に、後述する
図13に示すように、ヒューズピン27a,28aがリミットスイッチ31,32のレバー31a,32aから離れることで押圧力が解除されるので、リミットスイッチ31,32は、温度ヒューズ27,28が作動したことを知らせる信号を発信する回路に切り替わり、この信号が基板39を介して発信される。
【0057】
火災発生時、ダクトDを流動してくる高温気流によりケーシング21内の温度が所定値を超えると、前述したように、温度センサ37,38が感知して温度ヒューズ27,28が作動し、羽根23a,23bの係留が解除され、
図12に示すように、羽根23a,23bは全閉状態となり、流路22は閉鎖される。
【0058】
一方、平常時において、ダクトDを経由して流動してくる気流中に含まれる酸性成分、アルカリ性成分その他の薬剤成分などにより、一方の温度センサ(例えば、温度センサ37)が腐食した場合や、その他の要因により片方の温度ヒューズ(温度ヒューズ27)が誤作動した場合、
図14に示すように、他方の温度ヒューズ(温度ヒューズ28)は羽根23a,23bの係留を維持するので、羽根23a,23bは開放状態に保たれ、流路22は全開状態となるので、防火ダンパー200に向かってダクトDを流れてくる気流は流路22を通過して下流側へ流動可能である。
【0059】
ここで、
図16に基づいて、
図9に示す防火ダンパー200の動作状態について説明する。温度ヒューズ27,28が火災により正常作動した場合、または、火災以外の他の要因で誤作動した場合、開閉器25のリミットスイッチ31,32から温度ヒューズ27,28の作動信号が発信されると(S201)、「開閉器25の全ての温度ヒューズ27,28は作動したか?」の判断が行われ(S202)、「No(複数の温度ヒューズ27,28のうちの一方が誤作動した)」と判断された場合は火災以外の他の要因で温度ヒューズ27または28が誤作動したと判断して「異常発生信号発報」が実行される(S203)ので、防火ダンパー200に異常発生していることが分かる。
【0060】
一方、前述したステップ(S202)において、「Yes(複数の温度ヒューズ27,28の全てが作動した)」と判断された場合は火災発生により温度ヒューズ27,28が正常に作動したと判断して「火災発生信号発報」が実行され(S205)ので、防火ダンパー200は正常に作動していることが分かる。
【0061】
このように、防火ダンパー200においては、一部の温度ヒューズ(温度ヒューズ27または28)が作動したときは「異常発生信号発報」が実行される(S203)ので、防火ダンパー200の状況(防火ダンパー200に配備された温度ヒューズ27,28の状況、火災発生の有無など)をいち早く把握することができる。
【0062】
また、防火ダンパー200においては、複数の温度ヒューズ27,28の全てが作動したときは火災発生により温度ヒューズ27,28が正常に作動したと判断して「火災発生信号発報」が実行される(S205)ので、火災発生を迅速に把握することができる。
【0063】
このように、防火ダンパー200においては、開閉器25が複数の温度ヒューズ27,28を具備していることにより、一部の温度ヒューズ(温度ヒューズ27または28)が誤作動しても羽根23a,23bが閉鎖しないので、流路22内の気体流動を確保することができ、この結果、防火ダンパー200が誤作動により閉鎖(全閉状態)となることによって生じる諸問題(排気不良、ダクトDの内圧上昇によるダクトDの破壊などの問題)を防止することができる。
【0064】
また、一部の温度ヒューズ(温度ヒューズ27または28)が作動しても防火ダンパー200が閉鎖(全閉状態)にならないので、例えば、温度ヒューズ27,28の点検作業や、作動済み温度ヒューズ27,28の交換作業を行うために、防火ダンパー200内を流動する気体流(排気など)を停止する必要もない。
【0065】
次に、図示していない、その他の防火ダンパーについて、
図1,
図4に基づいて説明する。この防火ダンパーは、
図1に示す防火ダンパー100の開閉器5,6の代わりに、それぞれ
図9に示す開閉器25を設けた構成を備えている。この防火ダンパーは、
図1中に示すような、四角筒状のケーシング1内に設定された流路2を開閉するためケーシング1内に回動可能に配置された複数の羽根3a,3b,4a,4bと、複数のグループ3,4に分けられた複数の羽根3a,3b,4a,4bをグループ3,4ごとに開閉するための
図9中に示す開閉器25を複数個、備えている。その他の部分は、
図1に示す防火ダンパー100と同様である。
【0066】
このような構成とすれば、複数の温度ヒューズ27,28の一部が誤作動しても残りの温度ヒューズが正常であれば、羽根3a,3b,4a,4bは閉鎖しないので、防火ダンパーが誤作動により閉鎖(全閉状態)となることによって生じる諸問題(排気不良、ダクト内圧上昇によるダクト破壊などの問題)を防止することができる。特に、開閉器25,25がそれぞれ複数の温度ヒューズ27,28を備えたことにより、誤作動に起因して、防火ダンパーが閉鎖(全閉状態)となることを防止する機能を高めることができる。
【0067】
なお、
図1~
図16に基づいて説明した防火ダンパー100,200などは本発明に係る防火ダンパーを例示するものであり、本発明に係る防火ダンパーは、前述した防火ダンパー100,200などに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る防火ダンパーは、各種建築物の空調設備を構成する空調用ダクトや排気ダクトなどに配備される防火ダンパーとして、土木建築業や土木建設業などの産業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1,21 ケーシング
1a,21a 側面部
2,22 流路
3,4 グループ
3a,3b,4a,4b,23a,23b 羽根
3c,3d,4c,4d,9 支軸
3e,3f,4e,4f,24 連結部材
3g,4g 端部
5,6,25 開閉器
5a,6a,25a正面部
7,8,27,28,37,38 温度ヒューズ
7a,8a,27a,28a ヒューズピン
7b,8b,27b,28b 頭部
10,11,37,38 温度センサ
12,13,29 ハンドル
12a,29a 把持部
12b,29b,29c ヒューズフック
15,17,31,32 リミットスイッチ
15a,31a,32a レバー
16,18,39 基板
100,200 防火ダンパ
D ダクト