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特開2023-86533情報処理装置、情報処理方法およびコンピュータプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086533
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
G01N21/17 620
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201114
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】巻田 修一
(72)【発明者】
【氏名】安野 嘉晃
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059BB12
2G059BB20
2G059EE02
2G059EE09
2G059FF02
2G059MM01
2G059MM09
2G059MM10
2G059MM14
(57)【要約】
【課題】観測対象となる生体の動きによる影響を低減できる情報処理装置、情報処理方法およびコンピュータプログラムを提供すること。
【解決手段】情報処理装置は、複素信号で表されたOCT画像を受け付ける受付部と、受付部が受け付けたOCT画像を複数のセグメントに分割する分割部と、複数のセグメントの各々の走査方向を特定し、特定した走査方向に基づいて、複数のセグメントの収差を補正する収差補正部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複素信号で表されたOCT画像を受け付ける受付部と、
前記受付部が受け付けた前記OCT画像を複数のセグメントに分割する分割部と、
複数の前記セグメントの各々の走査方向を特定し、特定した前記走査方向に基づいて、複数の前記セグメントの収差を補正する収差補正部と
を備える、情報処理装置。
【請求項2】
複素OCT信号を出力する画像再構成部
をさらに備え、
前記受付部は、前記画像再構成部が出力した前記複素OCT信号をOCT画像として受け付ける、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
複数の前記セグメントの各々の位相を補正する位相補正部
をさらに備え、
前記収差補正部は、前記位相補正部によって位相補正された複数の前記セグメントの収差を補正する、請求項1又は請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
複数の前記セグメントの各々は、1次元走査分の信号に相当する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記受付部が受け付けた前記OCT画像の走査軌道を特定する情報を取得する取得部
をさらに備え、
前記収差補正部は、前記走査軌道を特定する情報に基づいて、複数の前記セグメントの各々の走査方向を特定する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記走査軌道は、リサージュ走査軌道と、ラスター走査軌道と、サイクロイド走査軌道とのいずれかである、請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記収差補正部によって収差が補正された複数の前記セグメントに対して、観察対象の不随意運動による位置ずれを補正するモーション補正部
をさらに備える、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記モーション補正部によって補正された複数の前記セグメントの各々を合成する合成部
をさらに備える、請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記合成部は、複数の前記セグメントの各々を実数データに変換する、請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記合成部は、実数データに変換した複数の前記セグメントの各々の信号を、重複する信号間で幾何平均する、請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
複素信号で表されたOCT画像を受け付けるステップと、
前記受け付けるステップで受け付けた前記OCT画像の走査軌道を特定する情報を取得するステップと、
前記OCT画像を複数のセグメントに分割するステップと、
前記走査軌道を特定する情報に基づいて、複数の前記セグメントの各々の走査方向を特定し、特定した前記走査方向に基づいて、複数の前記セグメントの収差を補正するステップと
を有する、コンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項12】
コンピュータに、
複素信号で表されたOCT画像を受け付けるステップと、
前記受け付けるステップで受け付けた前記OCT画像の走査軌道を特定する情報を取得するステップと、
前記OCT画像を複数のセグメントに分割するステップと、
前記走査軌道を特定する情報に基づいて、複数の前記セグメントの各々の走査方向を特定し、特定した前記走査方向に基づいて、複数の前記セグメントの収差を補正するステップと
を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理装置、情報処理方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
光コヒーレンストモグラフィー(Optical Coherence Tomography: OCT)は、低コヒーレンス光干渉を用いることで、内部構造の深さ方向を分解(時間コヒーレンスゲート)することと、生体組織からの弱い散乱光を増幅して検出することができる。
また、フーリエドメインOCTでは、異なる深さの組織で散乱された光を効率よく同時に検出することでさらに感度を高め、高速な三次元生体組織イメージングを可能とする。
【0003】
しかし、生体組織の深部を高い空間分解能で撮影するには高開口数と多重散乱の問題がある。横空間分解能を高くするには、開口数を高くする必要があるが、高開口数で生体内の深部を観察する際、生体組織自身によって発生する光波面の収差が大きくなり、分解能が逆に低くなってしまう。これは光生体イメージングに共通する問題である。
OCTで開口数を高くする場合、さらなる問題がある。一般的なOCTは、多重散乱の影響を抑えるため共焦点効果を用いている。しかし、集光する焦点の深さ位置は固定であるため、断層画像内の焦点位置から離れた深さではピントがズレて横分解能が落ちてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第9269144号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2021/0109340号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Y. Chen et al., “Three-dimensional eye motion correction by Lissajous scan optical coherence tomography”, Biomed. Opt. Express 8(3), 1783-1802 (2017).
【非特許文献2】M. F. Kraus et al., “Motion correction in optical coherence tomography volumes on a per A-scan basis using orthogonal scan patterns”, Biomed. Opt. Express 3(6), 1182-1199 (2012).
【非特許文献3】K. Liang et al., “Cycloid scanning for wide field optical coherence tomography endomicroscopy and angiography in vivo”, Optica 5(1), 36-43 (2018).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
断層画像内の焦点位置から離れた深さでピントがズレて横分解能が落ちてしまう問題を解決するため、追加の光変調デバイスを用いる方法と、信号処理によって補正するという2つのアプローチが提案されてきた。
前者は、焦点位置を変えて複数回撮影したデータを組み合わせるダイナミックフォーカシング(dynamic focusing)と収差を補正する補償光学系を用いる方法である。しかしこれらには光学系に可変レンズ、可変鏡、波面センサーなどのデバイスを追加する必要があるため、コスト高になる。また、複数のデータを取得するために撮影時間が長いという問題がある。
【0007】
これに対して後者は、OCTが光の位相情報も光干渉によって取得できることを利用し、データ取得後の複素信号処理によってピンぼけと収差の影響を補正するデジタル収差補正(Digital Aberration Correction: DAC)と呼ばれるアプローチである。この場合、追加の装置は必要無いが、生体の不随意運動が大きなハードルとなる。不随意運動による小さな画像の歪みでもデジタル収差補正の成否に大きく影響するため、OCTの撮影速度に求められる条件が通常の3DOCT画像撮影(数秒)より遥かに厳しく(コンマ数秒以下)なってしまう。
超高速なOCT装置(>1,000,000A-lines/s)は実現されているが、研究用の高価な実験装置である。商用化されている一般的なOCT装置の速度(~100,000A-lines/s)では、ごく狭い撮影範囲に限定しなければならない。
本発明の目的は、観測対象となる生体の動きによる影響を低減できる情報処理装置、情報処理方法およびコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、複素信号で表されたOCT画像を受け付ける受付部と、前記受付部が受け付けた前記OCT画像を複数のセグメントに分割する分割部と、複数の前記セグメントの各々の走査方向を特定し、特定した前記走査方向に基づいて、複数の前記セグメントの収差を補正する収差補正部とを備える、情報処理装置である。
本発明の一実施形態は、前述の情報処理装置において、複素OCT信号を出力する画像再構成部をさらに備え、前記受付部は、前記画像再構成部が出力した前記複素OCT信号をOCT画像として受け付ける。
本発明の一実施形態は、前述の情報処理装置において、複数の前記セグメントの各々の位相を補正する位相補正部をさらに備え、前記収差補正部は、前記位相補正部によって位相補正された複数の前記セグメントの収差を補正する。
本発明の一実施形態は、前述の情報処理装置において、複数の前記セグメントの各々は、1次元走査分の信号に相当する。
本発明の一実施形態は、前述の情報処理装置において、前記受付部が受け付けた前記OCT画像の走査軌道を特定する情報を取得する取得部をさらに備え、前記収差補正部は、前記走査軌道を特定する情報に基づいて、複数の前記セグメントの各々の走査方向を特定する。
本発明の一実施形態は、前述の情報処理装置において、前記走査軌道は、リサージュ走査軌道と、ラスター走査軌道と、サイクロイド走査軌道とのいずれかである。
本発明の一実施形態は、前述の情報処理装置において、前記収差補正部によって収差が補正された複数の前記セグメントに対して、観察対象の不随意運動による位置ずれを補正するモーション補正部をさらに備える。
本発明の一実施形態は、前述の情報処理装置において、前記モーション補正部によって補正された複数の前記セグメントの各々を合成する合成部をさらに備える。
本発明の一実施形態は、前述の情報処理装置において、前記合成部は、複数の前記セグメントの各々を実数データに変換する。
本発明の一実施形態は、前述の情報処理装置において、前記合成部は、実数データに変換した複数の前記セグメントの各々の信号を、重複する信号間で幾何平均する。
【0009】
本発明の一実施形態は、複素信号で表されたOCT画像を受け付けるステップと、前記受け付けるステップで受け付けた前記OCT画像の走査軌道を特定する情報を取得するステップと、前記OCT画像を複数のセグメントに分割するステップと、前記走査軌道を特定する情報に基づいて、複数の前記セグメントの各々の走査方向を特定し、特定した前記走査方向に基づいて、複数の前記セグメントの収差を補正するステップとを有する、コンピュータが実行する情報処理方法である。
【0010】
本発明の一実施形態は、コンピュータに、複素信号で表されたOCT画像を受け付けるステップと、前記受け付けるステップで受け付けた前記OCT画像の走査軌道を特定する情報を取得するステップと、前記OCT画像を複数のセグメントに分割するステップと、前記走査軌道を特定する情報に基づいて、複数の前記セグメントの各々の走査方向を特定し、特定した前記走査方向に基づいて、複数の前記セグメントの収差を補正するステップとを実行させる、コンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、観測対象となる生体の動きによる影響を低減できる情報処理装置、情報処理方法およびコンピュータプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態の情報処理装置の構成例を示す図である。
図2】本実施形態の情報処理装置の処理の一例を示す図である。
図3】本実施形態の情報処理装置の処理の一例を示す図である。
図4】本実施形態の情報処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図5】本実施形態の情報処理装置の他の構成例を示す図である。
図6】実施形態の変形例の情報処理装置の構成例を示す図である。
図7】リサージュ走査軌道の一例を示す図である。
図8】ラスター走査軌道の一例を示す図である。
図9】サイクロイド走査軌道の一例を示す図である。
図10】実施形態の変形例の情報処理装置の動作の一例を示す図である。
図11】実施形態の変形例の情報処理装置の動作の一例を示す図である。
図12】実施形態の変形例の情報処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図13A】実施形態の変形例の情報処理装置の処理結果の例1を示す図である。
図13B】実施形態の変形例の情報処理装置の処理結果の例1を示す図である。
図13C】実施形態の変形例の情報処理装置の処理結果の例1を示す図である。
図14】実施形態の変形例の情報処理装置の処理結果の例2を示す図である。
図15】実施形態の変形例の情報処理装置の処理結果の例3を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本実施形態の情報処理装置、情報処理方法およびコンピュータプログラムを、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。
なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
また、本願でいう「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0014】
(実施形態)
(情報処理装置)
図1は、本発明の実施形態の情報処理装置の構成例を示す図である。
本実施形態の情報処理装置10は、複素信号で表されたOCT画像(複素OCT信号)を受け付ける。OCT画像の一例は、OCT装置によって得られた画像である。OCT装置の一例は、In vivo生体組織を、走査方向を変えて重複した位置をサンプリングする走査型コヒーレントイメージング装置である。
OCT画像の一例は、観測対象平面が試料の深さ方向に垂直な正面の画像である。ここで、試料の深さ方向とは、測定光の試料への入射方向である。正面は、en-face面とも呼ばれる。
情報処理装置10は、OCT装置が取得した位相情報を含む異なる走査方向の複数データから、光学収差の影響を低減した画像を生成する。情報処理装置10は、走査型コヒーレントイメージングにおいて、光学収差における分解能の低下を信号処理によって補正する。
具体的には、情報処理装置10は、受け付けた複素信号で表されたOCT画像を複数のセグメントに分割する。例えば、情報処理装置10は、複素信号で表されたOCT画像を、短い取得時間で得られた、モーションによる歪みが殆どないセグメント(short rigid segments)に分割する。モーションによる歪みが殆どないセグメントに分割することによって、デジタル収差補正を適用できる。
情報処理装置10は、複数のセグメントの各々の走査方向を特定する。ここで、走査方向とは、OCTのプローブ光が走査された方向である。情報処理装置10は、特定した走査方向に基づいて、複数のセグメントの各々をデジタル収差補正する。情報処理装置10は、複数のセグメントの各々をデジタル収差補正した結果を出力する。
【0015】
情報処理装置10は、パーソナルコンピュータ、サーバ、スマートフォン、タブレットコンピュータ又は産業用コンピュータ等の装置によって実現される。情報処理装置10は、例えば、入力部11と、受付部12と、分割部13と、収差補正部16と、出力部19と、記憶部20とを備える。
入力部11は、情報を入力する。一例として、入力部11は、キーボードおよびマウスなどの操作部を有してもよい。この場合、入力部11は、ユーザによって当該操作部に対して行われる操作に応じた情報を入力する。他の例として、入力部11は、外部の装置から情報を入力してもよい。当該外部の装置は、例えば、可搬な記憶媒体であってもよい。
入力部11には、複素信号で表されたOCT画像が入力される。複素信号で表されたOCT画像の一例は、観測対象平面が試料の深さ方向に垂直な正面(en-face面)である画像である。
試料とする観測対象の物体の一例は、人間もしくは動物の生体、非生物などである。生体の一例は、眼底、血管、歯牙、皮下組織などである。非生物の一例は、電子部品、機械部品など人工的な構造体、石材、鉱物などの天然の構造体、特定の形状を有しない物質である。
【0016】
受付部12は、入力部11に入力された複素信号で表されたOCT画像を受け付ける。複素信号で表されたOCT画像は、複素信号で表されている。受付部12は、受け付けた複素信号で表されたOCT画像を、記憶部20に記憶させる。
分割部13は、記憶部20に記憶された複数の複素信号で表されたOCT画像を取得する。分割部13は、複素信号で表されたOCT画像の走査軌道に基づいて、取得した複素信号で表されたOCT画像を複数のセグメントに分割する。複数のセグメントの各々の一例は、1次元走査分の信号に相当する。ここで、分割部13は、複素信号で表されたOCT画像の走査軌道を示す情報を予め取得している。
収差補正部16は、分割部13から複数のセグメントを取得する。収差補正部16は、取得した複数のセグメントの各々の走査方向を特定する。
【0017】
図2は、本実施形の情報処理装置の処理の一例を示す図である。図2において、横軸はHorizontal(水平方向)であり、縦軸はVertical(垂直方向)である。図2は、OCTのプローブ光の走査パターン(軌跡)の一例を示す。ここでは、OCTのプローブ光が、曲線に沿って走査される。点1と点2と点3とは、プローブ光の走査パターン上の点である。
走査パターンの一例において、点1では縦方向(垂直方向)の走査(スキャン)が行われ、点2では斜め方向(横軸の増加に対して縦軸も増加する方向)の走査(スキャン)が行われ、点3では横方向(水平方向)の走査(スキャン)が行われている。
ここでは、一例として、収差補正部16が、複数のセグメントとして、点1と点2と点3とを取得し、点1の走査方向として垂直方向、点2の走査方向として斜め方向、点3の走査方向として水平方向を特定した場合について説明を続ける。点1と点2と点3との各々は、1次元走査分の信号である。点1と点2と点3との各々は、非等間隔であってもよい。
収差補正部16は、特定した走査方向に基づいて、複数のセグメントの各々の収差を補正する。例えば、収差補正部16は、複数のセグメントの各々と収差補正フィルターとで畳み込み演算を行う。収差補正部16は、点1の走査方向として特定した垂直方向に基づいて点1の収差を補正し、点2の走査方向として特定した斜め方向に基づいて点2の収差を補正し、点3の走査方向として特定した水平方向に基づいて点3の収差を補正する。
【0018】
図3は、本実施形の情報処理装置の処理の一例を示す図である。図3は、点1と点2と点3との各々についての収差補正の結果を模式的に示す。図3において、点1と点2と点3との各々の点像の分布を示す。
収差補正部16は、点1に対して垂直方向にデジタル収差補正を行う。その結果、点1aに示すように垂直方向の点像の分布が狭くなるため、垂直方向の分解能が向上する。収差補正部16は、点2に対して斜め方向(横軸の増加に対して縦軸は減少する方向)にデジタル収差補正を行う。その結果、点2aに示すように斜め方向(横軸の増加に対して縦軸も増加する方向)の点像の分布が狭くなるため、斜め方向(横軸の増加に対して縦軸も増加する方向)の分解能が向上する。収差補正部16は、点3に対して水平方向にデジタル収差補正を行う。その結果、点3aに示すように水平方向の点像の分布が狭くなるため、水平方向の分解能が向上する。図1に戻り説明を続ける。
【0019】
出力部19は、情報を出力する。一例として、出力部19は、画面を持つディスプレイを有してもよい。この場合、出力部19は、当該画面に情報を表示出力する。他の例として、出力部19は、外部の装置に情報を出力してもよい。当該外部の装置は、例えば、可搬な記憶媒体であってもよい。
出力部19は、収差補正部16から、点1と点2と点3とに対してデジタル収差補正を行った結果を取得し、取得した点1と点2と点3とに対してデジタル収差補正を行った結果を出力する。
記憶部20は、情報を記憶する。記憶部20は、受付部12が出力した複素信号で表されているOCT画像を記憶する。
【0020】
受付部12、分割部13、収差補正部16および出力部19は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサが記憶部20に格納されたコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。
また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。
コンピュータプログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVD(Digital Versatile Disc)やCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0021】
(情報処理装置10の動作)
図4は、本実施形態の情報処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。図4を参照して、複素信号で表されたOCT画像が情報処理装置10に入力された後の動作について説明する。
(ステップS1-1)
受付部12は、入力部11に入力された複素信号で表されたOCT画像を受け付ける。受付部12は、受け付けた複素信号で表されたOCT画像を、記憶部20に記憶させる。
(ステップS2-1)
分割部13は、記憶部20に記憶された複素信号で表されたOCT画像を取得する。分割部13は、複素信号で表されたOCT画像の走査軌道に基づいて、取得した複素信号で表されたOCT画像を複数のセグメントに分割する。
(ステップS3-1)
収差補正部16は、分割部13から複数のセグメントを取得する。収差補正部16は、取得した複数のセグメントの各々の走査方向を特定する。収差補正部16は、特定した走査方向に基づいて、複数のセグメントの各々の収差を補正する。
(ステップS4-1)
出力部19は、収差補正部16から、複数のセグメントの各々に対してデジタル収差補正を行った結果を取得し、取得した複数のセグメントの各々に対してデジタル収差補正を行った結果を出力する。
【0022】
前述した実施形態では、観測対象平面が試料の深さ方向に垂直な正面である場合について説明したが、この例に限られない。例えば、観測対象平面が、観測対象領域の一部または全部を横断する面である場合に適用できる。
前述した実施形態では、情報処理装置10が、複素信号で表されたOCT画像(複素OCT信号)を受け付ける場合について説明したが、この例に限られない。例えば、情報処理装置10に、OCT装置において、干渉光を受光するセンサーからの検出信号が入力されてもよい。
図5は、本実施形態の情報処理装置の他の構成例を示す図である。
情報処理装置の他の構成例は、情報処理装置10と比較して、入力部11の代わりに入力部11-1と画像再構成部11-2とを備える。
入力部11-1には、センサーからの検出信号が入力される。入力部11-1は、入力された検出信号を、画像再構成部11-2へ出力する。
画像再構成部11-2は、入力部11-1が出力した検出信号を取得し、取得した検出信号に基づいて、画像を再構成する。例えば、画像再構成部11-2は、通常のフーリエドメインOCTの画像再構成を適用できる。画像再構成部11-2は、画像を再構成することによって複素信号で表されたOCT画像(複素OCT信号)を取得する。画像再構成部11-2は、取得した複素OCT信号を、受付部12に出力する。
受付部12は、入力部11に入力された複素OCT信号を、複素信号で表されたOCT画像として受け付ける。受付部12は、受け付けた複素OCT信号を、記憶部20に記憶させる。
【0023】
本実施形態の情報処理装置10によれば、情報処理装置10は、複素信号で表されたOCT画像を受け付ける受付部12と、受付部12が受け付けた複素信号で表されたOCT画像を複数のセグメントに分割する分割部13と、複数のセグメントの各々の走査方向を特定し、特定した走査方向に基づいて、複数のセグメントの各々の収差を補正する収差補正部16とを備える。
このように構成することによって、情報処理装置10は、複素信号で表されたOCT画像の走査軌道に基づいて、複素信号で表されたOCT画像を複数のセグメントに分割できる。情報処理装置10は、複数のセグメントの各々の走査方向を特定し、特定した走査方向に基づいて、複数のセグメントの各々の収差を補正できる。このため、情報処理装置10は、観察対象となる生体の動きによる影響がある場合でも、OCTデータにデジタル収差補正を行うことができる。情報処理装置10は、高価な超高速装置ではなくとも、ある程度の範囲を高分解能で撮影したOCTデータのデジタル収差補正が可能となる。
情報処理装置10において、複素OCT信号を出力する画像再構成部11-2をさらに備え、受付部12は、画像再構成部11-2が出力した複素OCT信号を、複素信号で表された前記OCT画像として受け付ける。
このように構成することによって、情報処理装置10は、OCT装置のセンサーからの検出信号を受け付けることができる。
【0024】
情報処理装置10において、複数のセグメントの各々は、1次元走査分の信号に相当する。
このように構成することによって、情報処理装置10において、収差補正部16は、取得した複数の1次元走査分の信号の各々の走査方向を特定し、特定した走査方向に基づいて、複数の1次元走査分の信号を補正できる。複数の1次元走査分の信号の各々の一例は、非等間隔であってもよい。このため、情報処理装置10は、観察対象となる生体の動きによる影響がある場合でも、OCTデータにデジタル収差補正を行うことができる。
【0025】
(実施形態の変形例)
(情報処理装置)
図6は、実施形態の変形例の情報処理装置の構成例を示す図である。実施形態の変形例の情報処理装置10aは、複素信号で表されたOCT画像を受け付ける。複素信号で表されたOCT画像の一例は、観測対象平面が試料の深さ方向に垂直な正面(en-face面)である。
情報処理装置10aは、受け付けた複素信号で表されたOCT画像の走査軌道を特定する情報を取得する。走査軌道の一例は、リサージュ(Lissajous)走査軌道と、ラスター走査(raster scan)軌道と、サイクロイド(Cycloid)走査軌道とのいずれかである。
情報処理装置10aは、取得した複素信号で表されたOCT画像の走査軌道を特定する情報に基づいて、受け付けた複素信号で表されたOCT画像を、複数のセグメントに分割する。例えば、情報処理装置10は、複素信号で表されたOCT画像を、複素信号で表されたOCT画像の走査軌道のサイクルに分割することによって複数のセグメントを取得する。
情報処理装置10aは、複数のセグメントの各々の位相を補正する。例えば、情報処理装置10aは、複数のセグメントの各々に対してバルク位相補正(Bulk-phase-correction)を行う。
【0026】
情報処理装置10aは、取得した複素信号で表されたOCT画像の走査軌道を特定する情報に基づいて、複数のセグメントの各々の走査方向を特定する。情報処理装置10aは、特定した走査方向に基づいて、複数のセグメントの各々をデジタル収差補正する。
情報処理装置10aは、デジタル収差補正された複数のセグメントの各々に対して、観察対象の不随意運動による位置ずれを補正する。
情報処理装置10aは、位置ずれを補正した複数のセグメントの各々を合成する。情報処理装置10は、位置ずれを補正した複数のセグメントの各々を合成した結果を出力する。
【0027】
情報処理装置10aは、パーソナルコンピュータ、サーバ、スマートフォン、タブレットコンピュータ又は産業用コンピュータ等の装置によって実現される。情報処理装置10aは、例えば、入力部11と、受付部12と、分割部13aと、位相補正部14と、取得部15と、収差補正部16aと、モーション補正部17と、合成部18と、出力部19aと、記憶部20とを備える。
取得部15は、受付部12が受け付けた複素信号で表されたOCT画像の走査軌道を特定する情報を取得する。走査軌道の一例は、リサージュ走査軌道と、ラスター走査軌道と、サイクロイド走査軌道とのいずれかである。
例えば、取得部15は、複素信号で表されたOCT画像の識別情報とその複素信号で表されたOCT画像の取得に使用した走査軌道を特定する情報とを関連付けた走査軌道関連情報を記憶した記憶部から、受付部12が受け付けた複素信号で表されたOCT画像の識別情報に関連付けられる走査軌道を特定する情報を取得するようにしてもよい。ここで、記憶部は、情報処理装置10aが備えてもよいし、クラウドが備えてもよい。
【0028】
図7は、リサージュ走査軌道の一例を示す図である(例えば、非特許文献1参照)。リサージュ走査軌道は、互いに直交する二つの単振動を合成して得られる平面図形によって表される走査軌道である。図7において、左図はリサージュ走査軌道の一例であり、右図は左図の中央部分の拡大図である。サンプリングポイントを黒色の点で示す。曲線は、単一の水平サイクルの一例である。OCTがリサージュ走査軌道に基づいてプローブ光を走査することによって、OCT画像が得られる。
【0029】
図8は、ラスター走査軌道の一例を示す図である(例えば、特許文献1、非特許文献2参照)。図8において、実線の矢印はBスキャンの取得を示し、点線の矢印はフライバックを示す。図8において、左図に示されるようにXFASTスキャンはOCTスキャナー座標系のX軸に平行なBスキャンで構成され、右図に示されるようにYFASTスキャンはY軸に平行なBスキャンで構成されている。dfastとdslowとは、2つのスキャンタイプ間で交換される。OCT装置がラスター走査軌道に基づいてプローブ光を走査することによって、OCT画像が得られる。
図9は、サイクロイド走査軌道の一例を示す図である(例えば、特許文献2、非特許文献3参照)。サイクロイド走査軌道は、円がある規則にしたがって回転するときの円上の定点が描く軌跡として得られる平面曲線によって表される走査軌道である。黒い点は、等しい時間フレーム間隔でスキャンされた各円のスポットを示し、ミラー反転効果により、スキャン中に円の中心を中心にゆっくりと局所的に回転することを示す。OCTがサイクロイド走査軌道に基づいてプローブ光を走査することによって、OCT画像が得られる。図6に戻り説明を続ける。
【0030】
分割部13aは、記憶部20に記憶された複数の複素信号で表されたOCT画像を取得する。分割部13aは、取得部15から複素信号で表されたOCT画像の走査軌道を特定する情報を取得する。分割部13aは、取得した複素信号で表されたOCT画像の走査軌道を特定する情報に基づいて、取得した複素信号で表されたOCT画像を、複数のセグメントに分割する。複数のセグメントの各々の一例は、非等間隔の1次元走査分の信号に相当する。
例えば、情報処理装置10は、リサージュ走査軌道を特定する情報を取得した場合には、複素信号で表されたOCT画像を、リサージュ走査軌道のサイクルに分割することによって複数のセグメントを取得する。複数のセグメントの各々の一例は、非等間隔の1次元走査分の信号に相当する。
例えば、情報処理装置10は、ラスター走査軌道を特定する情報を取得した場合には、複素信号で表されたOCT画像を、B-スキャンに分割することによって複数のセグメントを取得する。
例えば、情報処理装置10は、サイクロイド走査軌道を特定する情報を取得した場合には、複素信号で表されたOCT画像を、サイクロイド走査軌道のサイクルに分割することによって複数のセグメントを取得する。複数のセグメントの各々の一例は、非等間隔の1次元走査分の信号に相当する。
位相補正部14は、分割部13aから複数のセグメントを取得する。位相補正部14は、取得した複数のセグメントの各々に対してバルク位相補正を行う。
【0031】
収差補正部16aは、収差補正部16を適用できる。ただし、収差補正部16aは、位相補正部14からバルク位相補正が行われた複数のセグメントを取得する。例えば、収差補正部16aは、取得したバルク位相補正が行われた複数のセグメントの各々と収差補正フィルターとで畳み込み演算を行う。
具体的には、収差補正部16aは、取得部15から複素信号で表されたOCT画像の走査軌道を特定する情報を取得する。収差補正部16aは、取得した複素信号で表されたOCT画像の走査軌道を特定する情報に基づいて、バルク位相補正が行われた複数のセグメントの各々の走査方向を特定する。OCTのサンプリングのタイミングに基づいて特定される複素信号で表されたOCT画像の走査軌道上のサンプリング位置から、走査方向を特定できる。収差補正部16aは、特定した走査方向に基づいて、複数のセグメントの収差を補正する。
例えば、収差補正部16aは、リサージュ走査軌道を特定する情報を取得した場合には、バルク位相補正が行われた複数のセグメントの各々と収差補正フィルターとでリサージュサイクルワイズ畳み込み演算を行う。
例えば、収差補正部16aは、ラスター走査軌道を特定する情報を取得した場合には、バルク位相補正が行われた複数のセグメントの各々と収差補正フィルターとでBスキャンワイズ畳み込み演算を行う。
例えば、収差補正部16aは、サイクロイド走査軌道を特定する情報を取得した場合には、バルク位相補正が行われた複数のセグメントの各々と収差補正フィルターとでサイクルワイズ畳み込み演算を行う。
【0032】
モーション補正部17は、収差補正部16aから収差が補正された複数のセグメントを取得する。モーション補正部17は、取得した収差が補正された複数のセグメントに対して、観察対象の不随意運動による位置ずれを補正する(例えば、非特許文献1参照)。この結果、観察対象のある一点において走査方向の異なる複数のデータが得られる。
ここで、収差が補正された複数のセグメントは、バルク位相補正が行われた複数のセグメントの各々と収差補正フィルターとでリサージュサイクルワイズ畳み込み演算を行った結果と、バルク位相補正が行われた複数のセグメントの各々と収差補正フィルターとでBスキャンワイズ畳み込み演算を行った結果と、バルク位相補正が行われた複数のセグメントの各々と収差補正フィルターとでサイクルワイズ畳み込み演算を行った結果とのいずれかである。
【0033】
図10は、実施形態の変形例の情報処理装置の動作の一例を示す図である。図10は、観察対象の不随意運動による位置ずれを補正した結果、観察対象のある一点Pにおいて走査方向の異なる複数のデータAとデータBとデータCとが得られたことを示す模式図である。図6に戻り説明を続ける。
合成部18は、モーション補正部17から観察対象の不随意運動による位置ずれが補正された収差が補正された複数のセグメントを取得する。合成部18は、取得した収差が補正された複数のセグメントの各々を合成する。
例えば、合成部18は、複数のセグメントの各々を実数値に変換する。具体的には、合成部18は、画像化される各信号を、元となる複素信号から生成する。通常のいわゆるOCT画像となる光強度を表す信号も、この段階で生成される。これによって、OCT強度信号やOptical coherence tomography angiography(OCTA)信号が得られる。
合成部18は、実数値に変換した複数のセグメントの各々を重複する信号間で幾何平均(インコヒーレントで合成)する。合成部18は、複数の走査方向の1次元補正データから2次元で光学収差補正された画像を再構成する。
【0034】
図11は、実施形態の変形例の情報処理装置の動作の一例を示す図である。図11は、走査方向の異なる複数のデータをインコヒーレントで合成する模式図を示す。垂直方向の分布が狭い点像と斜め方向の分布が狭い点像と水平方向の分布が狭い点像とが合成されることによって2次元の横分解能回復を行うことができる。
出力部19aは、出力部19を適用できる。ただし、出力部19aは、合成部18から実数値に変換した複数のセグメントの各々を重複する信号間で幾何平均した結果を取得する。出力部19aは、取得した実数値に変換した複数のセグメントの各々を重複する信号間で幾何平均した結果を出力する。
【0035】
受付部12、分割部13a、位相補正部14、取得部15、収差補正部16a、モーション補正部17、合成部18および出力部19aは、例えば、CPUなどのハードウェアプロセッサが記憶部20に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPUなどのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。
コンピュータプログラムは、予めHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0036】
(情報処理装置10aの動作)
図12は、実施形態の変形例の情報処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。図12を参照して、複素信号で表されたOCT画像が情報処理装置10aに入力された後の動作について説明する。
(ステップS1-2)
受付部12は、入力部11に入力された複素信号で表されたOCT画像を受け付ける。受付部12は、受け付けた複素信号で表されたOCT画像を、記憶部20に記憶させる。
(ステップS2-2)
取得部15は、受付部12が受け付けた複素信号で表されたOCT画像の走査軌道を特定する情報を取得する。走査軌道は、リサージュ走査軌道と、ラスター走査軌道と、サイクロイド走査軌道とのいずれかである。
(ステップS3-2)
分割部13aは、記憶部20に記憶された複数の複素信号で表されたOCT画像を取得する。分割部13aは、取得部15から複素信号で表されたOCT画像の走査軌道を特定する情報を取得する。分割部13aは、取得した複素信号で表されたOCT画像の走査軌道を特定する情報に基づいて、受け付けた複素信号で表されたOCT画像を、複数のセグメントに分割する。
【0037】
(ステップS4-2)
位相補正部14は、分割部13aから複数のセグメントを取得する。位相補正部14は、取得した複数のセグメントの各々に対してバルク位相補正を行う。
(ステップS5-2)
収差補正部16aは、位相補正部14からバルク位相補正が行われた複数のセグメントを取得する。収差補正部16aは、取得部15から複素信号で表されたOCT画像の走査軌道を特定する情報を取得する。収差補正部16aは、取得した複素信号で表されたOCT画像の走査軌道を特定する情報に基づいて、バルク位相補正が行われた複数のセグメントの各々の走査方向を特定する。収差補正部16aは、特定した走査方向に基づいて、複数のセグメントの収差を補正する。
(ステップS6-2)
モーション補正部17は、収差補正部16aから収差が補正された複数のセグメントを取得する。モーション補正部17は、取得した複数のセグメントに対して、観察対象の不随意運動による位置ずれを補正する。
【0038】
(ステップS7-2)
合成部18は、モーション補正部17から観察対象の不随意運動による位置ずれが補正された複数のセグメントを取得する。合成部18は、複数のセグメントの各々を実数値に変換する。合成部18は、実数値に変換した複数のセグメントの各々を重複する信号間で幾何平均する。
(ステップS8-2)
出力部19aは、合成部18から実数値に変換した複数のセグメントの各々を重複する信号間で幾何平均した結果を取得する。出力部19aは、取得した実数値に変換した複数のセグメントの各々を重複する信号間で幾何平均した結果を出力する。
【0039】
前述した実施形態の変形例では、観測対象平面が試料の深さ方向に垂直な正面である場合について説明したが、この例に限られない。例えば、観測対象平面が、観測対象領域の一部または全部を横断する面に適用できる。
前述した実施形態の変形例では、取得部15が、受付部12が受け付けた複素信号で表されたOCT画像の走査軌道を特定する情報として、リサージュ走査軌道と、ラスター走査軌道と、サイクロイド走査軌道とのいずれかを取得する場合について説明したが、この例に限られない。例えば、リサージュ走査軌道と、ラスター走査軌道と、サイクロイド走査軌道とに限らず、任意の走査軌道を適用できる。
前述した実施形態の変形例では、情報処理装置10aが、複素信号で表されたOCT画像を受け付ける場合について説明したが、この例に限られない。例えば、情報処理装置10aに、OCT装置において干渉光を受光するセンサーからの検出信号が入力されてもよい。この場合の処理については、実施形態で説明した方法を適用できる。
【0040】
実施形態の変形例の情報処理装置10aによれば、情報処理装置10aは、複素信号で表されたOCT画像を受け付ける受付部12と、受付部12が受け付けた複素信号で表されたOCT画像を複数のセグメントに分割する分割部13と、複数のセグメントの各々の位相を補正する位相補正部14と、複数のセグメントの各々の走査方向を特定し、特定した走査方向に基づいて、複数のセグメントの収差を補正する収差補正部16aとを備える。収差補正部16aは、位相補正部14によって位相補正された複数のセグメントの収差を補正する。
このように構成することによって、情報処理装置10aは、複数のセグメントの各々の位相を補正することができるため、位相補正された複数のセグメントの収差を補正できる。このため、情報処理装置10aは、観察対象となる生体の動きによる影響がある場合でも、OCTデータにデジタル収差補正を行うことができる。情報処理装置10aは、高価な超高速装置ではなくとも、ある程度の範囲を高分解能で撮影したOCTデータのデジタル収差補正が可能となる。
【0041】
情報処理装置10aにおいて、受付部12が受け付けた複素信号で表されたOCT画像の走査軌道を特定する情報を取得する取得部15をさらに備える。収差補正部16aは、走査軌道を特定する情報に基づいて、複数のセグメントの各々の走査方向を特定する。
このように構成することによって、情報処理装置10aは、複素信号で表されたOCT画像の走査軌道を特定する情報を取得できる。このため、情報処理装置10aは、取得した走査軌道を特定する情報に基づいて、複数のセグメントの各々の走査方向を特定できる。
【0042】
情報処理装置10aにおいて、走査軌道は、リサージュ走査軌道と、ラスター走査軌道と、サイクロイド走査軌道とのいずれかである。
このように構成することによって、情報処理装置10aは、複素信号で表されたOCT画像の走査軌道を特定する情報として、リサージュ走査軌道と、ラスター走査軌道と、サイクロイド走査軌道とのいずれかを取得できる。このため、情報処理装置10aは、リサージュ走査軌道と、ラスター走査軌道と、サイクロイド走査軌道とのいずれかに基づいて、複数のセグメントの各々の走査方向を特定できる。
【0043】
情報処理装置10aにおいて、収差補正部16aによって収差が補正された複数のセグメントに対して、観察対象の不随意運動による位置ずれを補正するモーション補正部17をさらに備える。
このように構成することによって、情報処理装置10aは、観察対象の不随意運動による位置ずれを補正できるため、観察対象となる生体の動きによる影響をさらに低減できる。情報処理装置10aは、不随意運動のある生体組織に対して、デジタル収差補正による横分解能を回復できる。
【0044】
情報処理装置10aにおいて、モーション補正部17によって補正された複数のセグメントの各々を合成する合成部18をさらに備える。
このように構成することによって、情報処理装置10aは、観察対象の不随意運動による位置ずれが補正された複数のセグメントの各々を合成できる。このため、情報処理装置10aは、不随意運動のある生体組織に対して、デジタル収差補正による横分解能を回復した画像を作成できる。
【0045】
情報処理装置10aにおいて、合成部18は、複数のセグメントの各々を実数データに変換する。
このように構成することによって、情報処理装置10aは、複数のセグメントの各々を実数データに変換できるため、複数のセグメントの各々を実数データに変換した結果に基づいて、横分解能を回復した画像を作成できる。走査型コヒーレントイメージングの応用において、頻繁に観察対象が動く場合でも、情報処理装置10aは、デジタル収差補正が可能となる。例えば、情報処理装置10aは、眼科臨床、OCT、内視鏡OCTにおけるピントずれによる分解能低下の信号処理による補償を行うことができる。
【0046】
情報処理装置10aにおいて、合成部18は、実数データに変換した複数のセグメントの各々の信号を、重複する信号間で幾何平均する。
このように構成することによって、情報処理装置10aは、実数データに変換した複数のセグメントの各々の信号を、重複する信号間で幾何平均できる。このため、情報処理装置10aは、横分解能を回復した画像を作成できる。
【0047】
情報処理装置10aは、リサージュ走査とデジタル収差補正とを組み合わせ、(1)1次元走査分の信号のデジタル収差補正を行い、(2)収差補正された信号間の不随意運動による位置ずれを補正し、(3)異なる走査方向の信号を合成してピンぼけ、収差により低下した横分解能を回復する。
これまで、Digital holographyに代表されるように、コヒーレントイメージングでは補償光学装置を用いなくても、信号処理によってピントのずれ(defocus)などの光学収差の影響を補正することが可能である。
Digital holographyでは、試料の正面から見た構造を一度にカメラで撮影する(full-field)が、in vivoの生体のように分厚い散乱組織が対象の場合、共焦点効果による多重散乱の影響を抑えた走査型イメージング装置の方が簡便に組織の奥深くを高いコントラストで画像化できる。
【0048】
しかし、走査型の光コヒーレントトモグラフィにおいて提案されている従来の光学収差補正信号処理方法では、走査中に試料が動いてしまうと光学収差補正が機能しなくなってしまう。そのため、撮影中に試料が動かないよう、高速な撮影速度(眼底の場合、約0.2s/volume)が求められる。そのため、高速な光走査速度とデータ収録速度もしくは狭い視野に限定した撮影が必要となる。
従来のデジタル収差補正では、不随意運動による歪みの無い2次元プローブ光走査を行った複素OCT信号が必要であるのに対し、情報処理装置10と情報処理装置10aは1次元走査分の複素OCT信号のみでデジタル収差補正を行うことができる。これによって、情報処理装置10と情報処理装置10aでは、空間分解能は、使用される信号の走査方向に対してのみ回復されるが、要求される速度は一般的なOCT装置(~100,000A-lines/s)においても問題ない程度であると考えられる。
【0049】
情報処理装置10aは、補正したデータ間では不随意運動による位置ずれが起こってしまうが、リサージュ走査に対するモーション補正方法を適用できる(例えば、非特許文献1参照)。
これらにより、情報処理装置10aは、観察対象のある一点において走査方向の異なる複数のデータを取得できる。情報処理装置10aは、これらの複数のデータをインコヒーレントで合成することで、2次元の横分解能回復を行うことができる。
情報処理装置10aは、デジタル収差補正と不随意運動による位置ずれ補正を組み合わせることにより、in vivo生体中での光学収差の信号処理補正が可能となる。不随意運動のある生体組織に対し一般的なOCT装置でも、デジタル収差補正による横分解能回復を実現することができる。
【0050】
実施形態の変形例の情報処理装置10aの効果の一例について説明する。
波長1μm帯域の分光器型OCTを使用して、実施形態の変形例の情報処理装置10aの効果について、原理検証を行った。マイクロ粒子と生体組織試料とを、リサージュ走査軌道にしたがって、OCTのプローブをスキャンされることによって得られる像を撮影し、デジタルフォーカス補正を試行した。プローブの有効開口数は約0.05である。
【0051】
図13Aから図13Cは、実施形態の変形例の情報処理装置の処理結果の例1を示す図である。
図13Aから図13Cは、マイクロビーズファントムの代表的な断面画像の一例を示す。マイクロビーズファントムとは、10μポリスチレンマイクロ粒子試料のことである。図13Aは、OCTのプローブの走査の軌跡の一例を示す。図13B図13Cとは、マイクロビーズファントムの代表的な断面画像の一例である。図13B図13Cとは、同じ試料を撮影したものである。図13Bは、焦点がぼけたOCT断面強度画像の一例を示す。図13Cは、図13Bをリフォーカスすることによって得られる画像の一例を示す。
【0052】
図14は、実施形態の変形例の情報処理装置の処理結果の例2を示す図である。図14は、情報処理装置10aの処理結果の一例として、10μmポリスチレンマイクロ粒子試料を撮影した結果の一例を示す。スキャンエリアは550(水平)および500(垂直)μmである。
図14において、(a)から(c)は、リサージュ走査軌道にしたがって、OCTのプローブをスキャンされることによって得られたマイクロビーズの正面画像を示す。
(a)は、焦点が合っている状態で得られた画像である。(b)は、焦点が合っていない状態で得られた画像である。(c)は、(b)に適用されるリサージュサイクルワイズ(LCW)リフォーカスである。
(d)から(g)は、ラスター走査軌道にしたがって、OCTのプローブをスキャンされることによって得られたマイクロビーズの正面画像を示す。
(f)は、(e)のx補正およびy補正ボリュームの積である。(g)は、(e)に適用される2Dリフォーカスである。
【0053】
図15は、実施形態の変形例の情報処理装置の処理結果の例3を示す図である。
図15は、リサージュ走査軌道にしたがって、OCTのプローブをスキャンされることによって得られた生体組織(鶏胸肉)の正面画像を示す。図15は、組織表面から深さ約300μm付近を撮影したものである。
(a)は、焦点が合っている状態で得られた画像である。(b)と(c)とは、焦点が合っていない状態(フォーカスずれ約1mm)で得られた画像である。(c)は、情報処理装置10aによってデジタルフォーカス補正を適用したものである。
【0054】
図13Aから図15によれば、プローブの有効開口数は顕微鏡と比較して低いが、OCTの画像化深さ範囲(約1mm)はRayleigh rangeの数倍に相当する。そのため、深さ範囲程度のフォーカス位置ずれで大きく分解能が低下してしまっている。実施形態の変形例の手法によって、低下した分解能が回復できることが確認できる。
ここでは、実施形態の変形例の情報処理装置10aの効果の一例について説明したが、本実施形態の情報処理装置10についても当てはまる。
【0055】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組合わせを行うことができる。これら実施形態およびその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0056】
なお、前述の情報処理装置10、情報処理装置10aは内部にコンピュータを有している。そして、前述した各装置の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。例えば、走査型OCT製品に対して、走査パターンの変更と、情報処理装置10、情報処理装置10aの各処理の過程をソフトウェアにアドオン搭載することによって、新なハードウェア開発をすることなく実施できる。
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどをいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
10、10a…情報処理装置、 11…入力部、 12…受付部、 13、13a…分割部、 14…位相補正部、 15…取得部、 16、16a…収差補正部、 17…モーション補正部、 18…合成部、 19、19a…出力部、 20…記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14
図15