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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086538
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】空調装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/88 20180101AFI20230615BHJP
   F24F 11/80 20180101ALI20230615BHJP
   G05B 11/36 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
F24F11/88
F24F11/80
G05B11/36 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201122
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】二渡 直樹
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 陽介
(72)【発明者】
【氏名】平松 美紀
(72)【発明者】
【氏名】白川 拓也
【テーマコード(参考)】
3L260
5H004
【Fターム(参考)】
3L260AA11
3L260AA12
3L260BA27
3L260CA12
3L260FC34
5H004GA07
5H004HA01
5H004HB01
5H004KB01
5H004KB06
5H004KC31
(57)【要約】
【課題】 室内の温度を適切に制御可能な空調装置の一例を開示する。
【解決手段】 空調装置1では、評価時間内に過上変化量及び過降変化量が発生した場合には、ハンチングが発生したものとみなして、通常の微分ゲインより小さい抑制微分ゲインを用いたフィードバック制御を実行する。したがって、ハンチングが抑制され得るので、室内の温度を適切に制御可能となり得る。なお、評価時間とは、予め決められた時間であって、サンプリング時間より長い時間をいう。変化時間とは、評価時間より短く、かつ、サンプリング時間以上の時間をいう。 過上変化量とは、変化量が正の値であって、当該変化量の絶対値が予め決められた値以上となる変化量をいう。過降変化量とは、変化量が負の値であって、当該変化量の絶対値が予め決められた値以上となる変化量をいう。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温を調整する空調装置において、
室内に供給される空気を冷却又は加熱する熱交換器と、
室内に供給される空気の温度を検出する温度センサと、
前記熱交換器で発生する冷熱量又は温熱量を制御する能力制御部とを備え、
前記能力制御部は、前記温度センサにより検出された温度(以下、測定温度という。)を予め決められた時間間隔(以下、サンプリング時間という。)で取得するとともに、当該測定温度と予め決められた設定温度との偏差、及び前記測定温度の変化率を利用したPD制御又PID制御(以下、これらをフィードバック制御という。)にて供給熱量を制御可能であり、
予め決められた時間であって、前記サンプリング時間より長い時間を評価時間とし、
前記評価時間より短く、かつ、前記サンプリング時間以上の時間を変化時間とし、
前記評価時間内で取得される複数の前記測定温度のうち異なる時刻で取得された測定温度の差であって、当該異なる時刻間が前記変化時間である場合の差を変化量とし、
前記変化量が正の値であって、当該変化量の絶対値が予め決められた値以上となる変化量を過上変化量とし、
前記変化量が負の値であって、当該変化量の絶対値が予め決められた値以上となる変化量を過降変化量としたとき、
前記能力制御部は、前記フィードバック制御に用いる微分ゲインとして、通常微分ゲイン、及び当該通常微分ゲインに比べて小さい抑制微分ゲインが利用可能であり、
さらに、前記能力制御部は、前記評価時間内に前記過上変化量及び前記過降変化量が発生した場合には、前記抑制微分ゲインを用いた前記フィードバック制御が実行可能である空調装置。
【請求項2】
室温を調整する空調装置において、
室内に供給される空気を冷却又は加熱する熱交換器と、
室内に供給される空気の温度を検出する温度センサと、
前記熱交換器で発生する冷熱量又は温熱量を制御する能力制御部とを備え、
前記能力制御部は、前記温度センサにより検出された温度(以下、測定温度という。)を予め決められた時間間隔(以下、サンプリング時間という。)で取得するとともに、当該測定温度と予め決められた設定温度との偏差、及び前記測定温度の変化率を利用したPD制御又PID制御(以下、これらをフィードバック制御という。)にて供給熱量を制御可能であり、
予め決められた時間であって、前記サンプリング時間より長い時間を評価時間とし、
前記評価時間内で前記サンプリング時間毎に取得される複数の前記測定温度のうち、いずれかの測定温度とその測定温度の1つ前に取得された測定温度との差を変化量とし、
前記変化量が正の値であって、当該変化量の絶対値が予め決められた値以上となる変化量を過上変化量とし、
前記変化量が負の値であって、当該変化量の絶対値が予め決められた値以上となる変化量を過降変化量としたとき、
前記能力制御部は、前記フィードバック制御に用いる微分ゲインとして、通常微分ゲイン、及び当該通常微分ゲインに比べて小さい抑制微分ゲインが利用可能であり、
さらに、前記能力制御部は、前記評価時間内に前記過上変化量及び前記過降変化量が発生した場合には、前記抑制微分ゲインを用いた前記フィードバック制御が実行可能である空調装置。
【請求項3】
前記能力制御部は、前記評価時間内に検出された前記測定温度が前記設定温度未満となった場合には、前記通常微分ゲインを用いた前記フィードバック制御が実行可能である請求項1又は2に記載の空調装置。
【請求項4】
前記能力制御部は、前記評価時間内の複数の前記測定温度の平均値が前記設定温度未満となった場合には、前記通常微分ゲインを用いた前記フィードバック制御が実行可能である請求項1又は2に記載の空調装置。
【請求項5】
室温を調整する空調装置において、
室内に供給される空気を冷却又は加熱する熱交換器と、
前記熱交換器にて熱交換される前の空気の温度を検出する吸込側温度センサと、
前記熱交換器にて熱交換された後の空気の温度を検出する吹出側温度センサと、
前記熱交換器で発生する冷熱量又は温熱量を制御する能力制御部であって、通常時フィードバック制御及び抑制時フィードバック制御が可能な能力制御部とを備え、
前記通常時フィードバック制御は、前記吸込側温度センサにより検出された温度(以下、吸込温度という。)を予め決められた時間間隔(以下、サンプリング時間という。)で取得するとともに、当該吸込温度と予め決められた設定温度との偏差、及び前記吸込温度の変化率を利用したPD制御又PID制御であり、
前記抑制時フィードバック制御は、前記吸込温度を前記サンプリング時間で取得するとともに、当該吸込温度と前記設定温度との偏差、及び前記吹出側温度センサにより検出された温度の変化率を利用したPD制御又PID制御であり、
予め決められた時間であって、前記サンプリング時間より長い時間を評価時間とし、
前記評価時間より短く、かつ、前記サンプリング時間以上の時間を変化時間とし、
前記評価時間内で取得される複数の前記吸込温度のうち異なる時刻で取得された吸込温度の差であって、当該異なる時刻間が前記変化時間である場合の差を変化量とし、
前記変化量が正の値であって、当該変化量の絶対値が予め決められた値以上となる変化量を過上変化量とし、
前記変化量が負の値であって、当該変化量の絶対値が予め決められた値以上となる変化量を過降変化量としたとき、
さらに、前記能力制御部は、前記評価時間内に前記過上変化量及び前記過降変化量が発生した場合には、前記抑制時フィードバック制御が実行可能である空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1の段落0005、0006には、二次冷媒温度がオーバシュートしてハンチングしてしまうことを解消する手段として、制御ゲインを小さくする旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-89783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、サーバ室内には、情報通信技術用機器等の発熱体が設置されている。情報通信技術用機器は、CPUやGPU等の演算ユニット及び冷却ファンを有している。当該冷却ファンは、室内空気を演算ユニットに送風して当該演算ユニットを冷却する。
【0005】
そして、サーバ室の冷房を行う空調装置は、当該サーバ室の気温が設定温度となるように冷房能力を自動的に調節する。このとき、温度センサが検出した室内温度が大きく上下した場合には、温度変化の傾向を正常にとらえることができず、室内の温度を適切に制御することができなくなるおそれがある。
【0006】
本開示は、上記点に鑑み、室内の温度を適切に制御可能な空調装置の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
室温が目標とする設定温度(Tt)となるように調整する空調装置は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0008】
すなわち、当該構成要件は、空調を行うための冷熱又は温熱を生成する熱源機(11)と、室内空気の温度を検出する温度センサ(7)と、室内に供給する熱量を制御する能力制御部(6)とを備え、能力制御部(6)は、温度センサ(7)により検出された温度(以下、測定温度(Ts)という。)を予め決められた時間間隔(以下、サンプリング時間という。)で取得するとともに、当該測定温度(Ts)と設定温度(Tt)との偏差(P)、及び測定温度(Ts)の変化率(D)を利用したPD制御又PID制御(以下、これらをフィードバック制御という。)にて供給熱量を制御可能であり、能力制御部(6)は、フィードバック制御に用いる微分ゲインとして、通常微分ゲイン(Kd1)、及び当該通常微分ゲイン(Kd1)に比べて小さい抑制微分ゲイン(Kd2)が利用可能であり、さらに、能力制御部(6)は、評価時間内に過上変化量及び過降変化量が発生した場合には、抑制微分ゲイン(Kd2)を用いたフィードバック制御が実行可能であることである。
【0009】
なお、評価時間とは、予め決められた時間であって、サンプリング時間より長い時間をいう。変化時間とは、評価時間より短く、かつ、サンプリング時間以上の時間をいう。
【0010】
変化量とは、評価時間内で取得される複数の測定温度(Ts)のうち異なる時刻で取得された測定温度(Ts)の差であって、当該異なる時刻間が変化時間である場合の差をいう。
【0011】
過上変化量とは、変化量が正の値であって、当該変化量の絶対値が予め決められた値以上となる変化量をいう。過降変化量とは、変化量が負の値であって、当該変化量の絶対値が予め決められた値以上となる変化量をいう。
【0012】
これにより、当該空調装置では、評価時間内に過上変化量及び過降変化量が発生した場合には、ハンチングが発生したものとみなして、抑制微分ゲイン(Kd2)を用いたフィードバック制御を実行する。したがって、ハンチングが抑制され得るので、室内の温度を適切に制御可能となり得る。
【0013】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る空調装置を示す図である。
図2】第1実施形態に係る空調装置の制御を示すフローチャートである。
図3】A及びBは、第1実施形態に係る空調装置の特徴を説明するためのグラフである。
図4】第2実施形態に係る空調装置の制御を示すフローチャートである。
図5】第3実施形態に係る空調装置を示す図である。
図6】第3実施形態に係る空調装置の制御を示すフローチャートである。
図7】第3実施形態に係る空調装置の特徴を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0016】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された空調装置は、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0017】
(第1実施形態)
<1.空調装置の構成>
本実施形態は、通信機器室やサーバ室等(以下、サーバ室という。)の空調を行う空調装置に本開示を適用したものである。なお、サーバ室には、少なくとも1台の情報通信技術用機器等が設置されている。
【0018】
図1に示される空調装置1は、サーバ室内の空調を行うための冷熱を生成する。当該空調装置1は蒸気圧縮式冷凍機により構成されている。具体的には、空調装置1は、圧縮機2、放熱器3、減圧器4及び蒸発器5、並びに制御部6及び温度センサ7等を有している。
【0019】
圧縮機2は、蒸発器5から流出した低圧の気相冷媒を圧縮する。放熱器3は、圧縮機2から吐出されて温度が上昇した高圧冷媒を冷却する。なお、本実施形態に係る放熱器3では、冷却された冷媒は、凝縮(液化)する。
【0020】
減圧器4は、放熱器3から流出した冷媒を減圧する。なお、本実施形態に係る減圧器4は、温度式膨張弁にて構成されている。温度式膨張弁は、蒸発器5の出口側における冷媒の過熱度が予め決められた値となるように、開度(減圧度)を自動調節する。
【0021】
蒸発器5は、減圧器4にて減圧された液相の冷媒を蒸発させて冷凍能力、つまり冷熱を生成する。具体的には、蒸発器5は、サーバ室に供給される空調風と当該冷媒とを熱交換し、当該空調風を冷却する熱交換器である。
【0022】
なお、室内ファン5Aは、サーバ室に供給される空調風の風量を調節するための送風機である。室外ファン3Aは、放熱器3に冷却用の空気(本実施形態では、室外空気)を送風するための送風機である。
【0023】
温度センサ7は、サーバ室に供給される空気の温度を検出する。具体的には、温度センサ7は、蒸発器5の上流側又は下流側に配置されて空気の温度を検出する。そして、制御部6は、当該温度センサ7の検出温度(以下、測定温度Tsという。)を予め決められた時間間隔(以下、サンプリング時間という。)で取得する。
【0024】
制御部6は、圧縮機2及び室内ファン5A等の作動を制御する。具体的には、制御部6は、測定温度Tsが目標とする温度(以下、設定温度Ttという。)なるように、圧縮機2の回転数及び停止(以下、圧縮機2の作動状態という。)を制御する。つまり、制御部6は、蒸発器5で発生する冷熱量を制御する能力制御部として機能する。
【0025】
なお、蒸発器5の上流側に温度センサ7が配置された場合(以下、吸込温度制御という。)の設定温度Ttと、蒸発器5の下流側に温度センサ7が配置された場合(以下、吹出温度制御という。)の設定温度Ttとは、異なる値である。
【0026】
そして、吸込温度制御の場合には、吸込温度と吹出温度との差が予め決められた温度差となるように室内ファン5Aの風量が制御される。吹出温度制御の場合には、圧縮機2の回転数の増減に応じて室内ファン5Aの風量が増減される。なお、本実施形態では、吸込温度制御にて圧縮機2及び室内ファン5A等が制御される。
【0027】
制御部6は、CPU、ROM及びRAM等を少なくとも有するマイクロコンピュータにて構成されている。圧縮機2及び室内ファン5A等の制御を実行するためのソフトウェアはROM等の不揮発性記憶部(図示せず。)に予め記憶されている。
【0028】
<2.空調装置(特に、圧縮機)の制御>
<制御の概要>
制御部6は、圧縮機2の作動状態をPD制御(P-D制御も含む。)又PID制御(以下、これらをフィードバック制御ともいう。)する。具体的には、制御部6は、圧縮機2の回転数を変化させる際の操作量uを、偏差P及び変化率Dを利用して決定する。
【0029】
偏差Pは、測定温度Tsと設定温度Ttとの差である。変化率Dは、測定温度Tsの変化率Dである。そして、制御部6は、例えば、「u=Kp・P+Kd・D」を用いて圧縮機2の操作量uを決定する。
【0030】
Kpは比例ゲインである。本実施形態では、予め決められた固定値が常に比例ゲインとしてPD制御に利用される。Kdは微分ゲインである。本実施形態では、予め決められた2種類の微分ゲインがPD制御に利用される。
【0031】
すなわち、本実施形態に係る制御部6は、圧縮機2の作動状態の制御として、通常制御及びハンチング抑制制御が実行可能である。通常制御とハンチング抑制制御とでは、操作量の決定に用いられる微分ゲインの値が異なる。
【0032】
具体的には、制御部6は、通常制御時には、微分ゲインとして通常微分ゲインKd1を用い、ハンチング抑制制御時には、微分ゲインとして抑制微分ゲインKd2を用いる。抑制微分ゲインKd2は、通常微分ゲインKd1に比べて小さい値(0も含む。)である。なお、本実施形態に係る抑制微分ゲインKd2は、0である。
【0033】
そして、制御部6は、評価時間内に過上変化量及び過降変化量が発生した場合には、ハンチング抑制制御を実行する。制御部6は、評価時間内に検出された測定温度Tsが設定温度Tt未満となった場合には、通常制御を実行する。
【0034】
前記過上変化量とは、変化量が正の値であって、当該変化量の絶対値が予め決められた値A以上となる変化量をいう。前記過降変化量とは、変化量が負の値であって、当該変化量の絶対値が予め決められた値A以上となる変化量をいう。
【0035】
前記変化量とは、(a)「評価時間内で取得される複数の測定温度Tsのうち異なる時刻で取得された測定温度Tsの差であって、当該異なる時刻間が変化時間である場合の差」、又は(b)「評価時間内でサンプリング時間毎に取得される複数の測定温度Tsのうち、いずれかの測定温度とその測定温度の1つ前に取得された測定温度との差」をいう。
【0036】
本実施形態に係る変化量は、上記(a)の定義による。前記評価時間とは、予め決められた時間であって、サンプリング時間より長い時間をいう。前記変化時間とは、評価時間より短く、かつ、サンプリング時間以上の時間をいう。なお、本実施形態では、サンプリング時間を変化時間としている。
【0037】
<制御の詳細>
図2は、上記の圧縮機2の制御フローを示す一例である。当該制御フローは、空調装置1の電源スイッチ(図示せず。)が投入されたときに起動し、当該電源スイッチが遮断されたときに停止する。
【0038】
当該制御フローが起動すると、制御部6は、測定温度Ts(本実施形態では、吸込温度)の変化量を演算した後、その演算した変化量を記憶する(S1)。そして、制御部6は、評価時間内に過上変化量及び過降変化量が発生した場合には、その発生回数を記憶する(S2、S3)
そして、評価時間内に過上変化量及び過降変化量が少なくとも1回発生した場合には(S4:YES)、制御部6は、評価時間内に検出された複数の吸込温度の全てが設定温度Tt以上であるか否かを判断する(S5)。
【0039】
評価時間内に検出された複数の吸込温度の全てが設定温度Tt以上である場合には(S5:YES)、制御部6はハンチング抑制制御を実行する。評価時間内に検出された複数の吸込温度のうち少なくとも1つの吸込温度が設定温度Tt未満である場合(S5:NO)、又は評価時間内に過上変化量及び過降変化量が発生しなかった場合には(S4:NO)、制御部6は、通常制御を実行する。
【0040】
<3.本実施形態に係る空調装置の特徴>
本実施形態に係る空調装置1では、評価時間内に過上変化量及び過降変化量が発生した場合には、ハンチングが発生したものとみなして、抑制微分ゲインKd2を用いたフィードバック制御を実行する。したがって、ハンチングが抑制され得るので、室内の温度を適切に制御可能となり得る。
【0041】
すなわち、従来の圧縮機2の制御、つまり通常制御のみで圧縮機2を制御した場合には、図3Aに示されるように、測定温度Tsが設定温度Ttより高い状態が継続しているときであっても、ハンチングが発生すると、制御部は、圧縮機の能力、つまり圧縮機2の駆動周波数を下げてしまう(図3Aのa部参照)。
【0042】
これに対して、本実施形態に係る空調装置1では、評価時間内に過上変化量及び過降変化量が発生した場合には、ハンチング抑制制御が実行されるので、制御部6が圧縮機の能力を下げてしまうことが抑制される(図3Bのb部参照)。延いては、室内の温度を適切に制御することが可能となる。
【0043】
(第2実施形態)
第1実施形態では、制御部6は、評価時間内に検出された測定温度Tsが設定温度Tt未満となった場合には、通常制御を実行した。これに対して、本実施形態では、図4のS5Aに示されるように、評価時間内の複数の測定温度Ts(本実施形態では、吸込温度)の平均値が設定温度Tt未満となった場合には、通常制御を実行する。
【0044】
なお、上記点以外は、第1実施形態と同じである。そして、図4では、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0045】
(第3実施形態)
上述実施形態に係る抑制微分ゲインKd2は、予め決められた固定値であった。これに対して、上述実施形態に係る抑制微分ゲインKd2は、評価時間内における吹出温度の変化率を変数とする関数値として決定される。
【0046】
つまり、制御部6は、評価時間内における吹出温度の変化率を利用して抑制微分ゲインKd2を決定し、その決定された抑制微分ゲインKd2を用いてハンチング抑制制御(抑制時フィードバック制御ともいう。)を実行する。
【0047】
このため、本実施形態に係る空調装置1では、図5に示されるように、第2の温度センサ8が設けられている。第2の温度センサ8は、蒸発器5にて熱交換された後の空気の温度を検出する。なお、温度センサ7は、蒸発器5にて熱交換される前の空気の温度を検出する。
【0048】
そして、図6に示されるように、評価時間内に過上変化量及び過降変化量が少なくとも1回発生した場合には(S4:YES)、制御部6は、評価時間内における吹出温度の変化率を利用して決定した抑制微分ゲインKd2を用いてハンチング抑制制御を実行する(S8)。
【0049】
また、評価時間内に過上変化量及び過降変化量が発生しなかった場合には(S4:NO)、制御部6は、通常制御(通常時フィードバック制御ともいう。)を実行する。なお、本実施形態に係る通常制御は、吸込温度と予め決められた設定温度Ttとの偏差、及び吸込温度の変化率を利用したPD制御又PID制御である。
【0050】
なお、上記点以外は、第1実施形態と同じである。そして、図6では、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。のため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0051】
以上のように、本実施形態に係るハンチング抑制制御は、吸込温度(温度センサ7の検出温度)と設定温度Ttとの偏差、及び吹出温度(第2の温度センサ8の検出温度)の変化率を利用したPD制御又PID制御であるので、制御部6が圧縮機の能力を下げてしまうことが抑制される(図7のc部参照)。延いては、室内の温度を適切に制御することが可能とる。
【0052】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係る空調装置1は、蒸気圧縮式冷凍機にて構成された、いわゆる「パッケージエアコン」であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、冷水又は温水を熱交換器に循環させることにより、冷房又は暖房を行う空調装置にも適用可能である。
【0053】
なお、当該空調装置に係る能力制御部は、熱交換器に循環させる冷水又は温水の流量を制御することにより、当該熱交換器で発生する冷熱量又は温熱量を制御する。具体的には、能力制御部は、流量制御弁の開度を制御して冷熱量又は温熱量を制御する。
【0054】
上述の実施形態では、過上変化量の閾値である値Aと過降変化量の閾値である値Aとが同一値であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、それら2つの値が異なる値であってもよい。
【0055】
上述の実施形態では、(1)評価時間内に過上変化量及び過降変化量が少なくとも1回発生し、かつ、評価時間内に検出された測定温度Tsが設定温度Tt以上となった場合、又は(2)評価時間内に過上変化量及び過降変化量が少なくとも1回発生し、かつ、評価時間内の測定温度Tsの平均値が設定温度Tt以上となった場合に、ハンチング抑制制御が実行される構成であった。
【0056】
しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、評価時間内に過上変化量及び過降変化量が少なくとも1回発生した場合に、他の条件が判断されることなく、ハンチング抑制制御が実行される構成であってもよい。
【0057】
上述の実施形態に係る空調装置1は、冷熱を利用する冷房装置であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、温熱を利用する暖房装置にも適用可能である。
【0058】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成でもよい。
【符号の説明】
【0059】
1… 空調装置
2… 圧縮機
3… 放熱器
3A… 室外ファン
4… 減圧器
5… 蒸発器
5A… 室内ファン
6… 制御部
7… 温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7