(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086551
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】露光方法および露光システム
(51)【国際特許分類】
G03F 9/00 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
G03F9/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201137
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】300091670
【氏名又は名称】株式会社アドテックエンジニアリング
(71)【出願人】
【識別番号】391043332
【氏名又は名称】公益財団法人福岡県産業・科学技術振興財団
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 聖昭
(72)【発明者】
【氏名】高松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】比企 達也
(72)【発明者】
【氏名】野北 寛太
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA05
2H197AA21
2H197AB13
2H197AB18
2H197CA07
2H197CE01
2H197CE10
2H197EB23
(57)【要約】
【課題】インターポーザが大型化しても、生産性の低下を抑えることができる露光方法および露光システムを提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る露光方法は、第1の露光工程と、第2の露光工程とを有する。前記第1の露光工程は、第1の露光精度を有する第1の露光装置を用いて、基板上のレジストに第1のパターンを露光する。前記第2の露光工程は、前記第1の露光精度とは異なる第2の露光精度を有する第2の露光装置を用いて、前記第1のパターンを露光した前記レジストに、第1のパターンとは異なる第2のパターンを露光する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の露光精度を有する第1の露光装置を用いて、基板上のレジストに第1のパターンを露光する第1の露光工程と、
前記第1の露光精度とは異なる第2の露光精度を有する第2の露光装置を用いて、前記第1のパターンを露光した前記レジストに、第1のパターンとは異なる第2のパターンを露光する第2の露光工程と
を有する露光方法。
【請求項2】
請求項1に記載の露光方法であって、
前記第1のパターンおよび前記第2のパターンを露光した前記レジストを現像する現像工程をさらに有する
露光方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の露光方法であって、
前記第2の露光精度は、前記第1の露光精度よりも高い露光精度であり、
前記第2の露光工程は、前記第1の露光工程の後に行われる
露光方法。
【請求項4】
請求項3に記載の露光方法であって、
前記第1のパターンは、前記第2のパターンに対する位置合わせ用のアライメントマークを含み、
前記第2の露光工程において、前記第2の露光装置は、前記レジストに露光された前記アライメントマークを基準として前記第2のパターンの露光位置を調整する
露光方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の露光方法であって、
前記第1の露光工程は、前記基板上の第1の照射面積に前記第1のパターンを露光し、
前記第2の露光工程は、前記基板上の前記第1の照射面積よりも狭い第2の照射面積に前記第2のパターンを露光する
露光方法。
【請求項6】
請求項5に記載の露光方法であって、
前記基板は、複数の単位基板の集合体である集合基板であり、
前記第1の露光工程は、2以上の単位基板ずつ前記第1のパターンを一括して露光し、
前記第2の露光工程は、各単位基板に前記第2のパターンを個別に露光する
露光方法。
【請求項7】
請求項6に記載の露光方法であって、
前記第1のパターンのパターンピッチは、前記第2のパターンのパターンピッチよりも広い
露光方法。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1つに記載の露光方法であって、
前記第1の露光装置および前記第2の露光装置の少なくとも一方は、投影露光装置である
露光方法。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか1つに記載の露光方法であって、
前記第1の露光装置および前記第2の露光装置の少なくとも一方は、直描露光装置である
露光方法。
【請求項10】
第1の露光精度を有し、基板上のレジストに第1のパターンを露光する第1の露光装置と、
前記第1の露光精度とは異なる第2の露光精度を有し、前記レジストに、第1のパターンとは異なる第2のパターンを露光する第2の露光装置と、
前記第1の露光装置に、前記レジストに第1のパターンを露光させる第1の露光処理と、前記第2の露光装置に、前記第1のパターンを形成した前記レジストに前記第2のパターンを露光させる第2の露光処理とを実行可能な制御装置と
を具備する露光システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半導体パッケージ用のインターポーザの製造に用いられる露光方法および露光システムに関する。
【背景技術】
【0002】
マルチチップ型の半導体パッケージとして、ロジックチップとメモリチップが並列配置されたインターポーザと、インターポーザと電気的に接続され外部接続端子を有するパッケージ基板とを備えた半導体パッケージが知られている。例えば特許文献1には、ロジックチップのマイクロバンプとメモリチップのマイクロバンプとの間を電気的に接続する信号配線と、上記マイクロバンプとパッケージ基板との間を電気的に接続するTSV(Through Silicon Via)とを有するシリコン基板で構成されたインターポーザが開示されている。
【0003】
また、シリコン基板で構成されたインターポーザにおいては、ウエハサイズの制約から基板サイズに限界があった。しかし近年、半導体パッケージの高性能化、高機能化の要請によりインターポーザが大型化する傾向にある。そこで、シリコン基板に代えて、インターポーザに樹脂基板の採用が進められている。
【0004】
このような樹脂基板に信号配線やTSVなどの配線パターンを形成する技術の一つとして、フォトリソグラフィ技術が広く用いられている。例えば特許文献2には、集合基板であるプリント基板上に、ステップ&リピートの手法で、製品サイズの基板単位で配線パターンを繰り返し露光する技術が開示されている。
【0005】
インターポーザに形成される信号配線とTSVは、大きさがかなり異なり、これらを形成するための露光技術の精度にもかなりの差がある。信号配線は、狭い範囲に多数必要となるため、例えば、1μm~3μmのライン・アンド・スペース(L&S)で形成される。一方、TSVは、そのピッチは、例えば10μm程度である。
【0006】
L&Sが例えば3μm以下の微細パターンを形成するためには、露光装置として、例えば半導体製造に用いられるステッパのような先端技術に相当する露光精度の高い装置が必要とされるのに対して、10μm程度の粗いパターンを形成するのであれば、比較的露光精度が低い露光装置で十分とされる。しかしながら、インターポーザに配線パターンを露光するに際しては、微細パターンである信号配線を形成する必要があるため、粗いパターンであるTSV部分に関しても、オーバースペックであることは承知のうえで、高精度の露光を行うステッパを使用しているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-37465号公報
【特許文献2】特開2017-90747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、露光装置の露光精度が高くなるほど、一回の露光で光を照射することができる面積(照射面積)は狭くなるため、インターポーザの大型化が進むと、微細な信号配線のパターン精度を維持しつつ、TSVの形成領域まで照射面積を広げることは、技術的に困難となる。そうなると、一個のインターポーザに配線パターンを形成するのに、少なくとも二回の露光処理が必要となるため、高精度の露光を行うステッパをオーバースペックと知りつつ使用する効率の悪い露光時間も二倍になり、生産性の低下(露光装置のランニングコストの悪化)という問題を招く。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、インターポーザが大型化しても、生産性の低下を抑えることができる露光方法および露光システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態に係る露光方法は、第1の露光工程と、第2の露光工程とを有する。
前記第1の露光工程は、第1の露光精度を有する第1の露光装置を用いて、基板上のレジストに第1のパターンを露光する。
前記第2の露光工程は、前記第1の露光精度とは異なる第2の露光精度を有する第2の露光装置を用いて、前記第1のパターンを露光した前記レジストに、第1のパターンとは異なる第2のパターンを露光する。
【0011】
上記露光方法においては、露光精度が異なる2つの露光装置を用いて、各露光装置の露光精度に対応した照射面積で各パターンの露光を行うようにしている。これにより、基板が大型化しても、微細な信号配線のパターン精度を維持しつつ、露光工程に要する時間の短縮を図って生産性の低下を抑えることができる。
【0012】
上記露光方法は、前記第1のパターンおよび前記第2のパターンを露光した前記レジストを現像する現像工程をさらに有してもよい。
これにより、第1の露光工程と第2の露光工程との間において現像工程とレジストの再形成工程が不要となる。
【0013】
前記第2の露光精度は、前記第1の露光精度よりも高い露光精度であってもよく、この場合は、前記第2の露光工程は、前記第1の露光工程の後に行われてもよい。
【0014】
前記第1のパターンは、前記第2のパターンに対する位置合わせ用のアライメントマークを含み、前記第2の露光工程において、前記第2の露光装置は、前記レジストに露光された前記アライメントマークを基準として前記第2のパターンの露光位置を調整してもよい。
これにより、第1のパターンとともに形成されたアライメントマークを指標として第2のパターンのマスク位置合わせが可能となる。
【0015】
前記第1の露光工程は、前記基板上の第1の照射面積に前記第1のパターンを露光し、前記第2の露光工程は、前記基板上の前記第1の照射面積よりも狭い第2の照射面積に前記第2のパターンを露光してもよい。
【0016】
例えば、前記基板は、複数の単位基板の集合体である集合基板であり、前記第1の露光工程は、2以上の単位基板ずつ前記第1のパターンを一括して露光し、前記第2の露光工程は、各単位基板に前記第2のパターンを個別に露光する。
この場合、前記第1のパターンのパターンピッチは、前記第2のパターンのパターンピッチよりも広くてもよい。
【0017】
前記第1の露光装置および前記第2の露光装置の少なくとも一方は、投影露光装置であってもよい。
あるいは、前記第1の露光装置および前記第2の露光装置の少なくとも一方は、直描露光装置であってもよい。
【0018】
本発明の一形態に係る露光システムは、第1の露光装置と、第2の露光装置と、制御装置とを具備する。
前記第1の露光装置は、第1の露光精度を有し、基板上のレジストに第1のパターンを露光する。
前記第2の露光装置は、前記第1の露光精度とは異なる第2の露光精度を有し、前記レジストに、第1のパターンとは異なる第2のパターンを露光する。
前記制御装置は、前記第1の露光装置に、前記レジストに第1のパターンを露光させる第1の露光処理と、前記第2の露光装置に、前記第1の露光パターンを形成した前記レジストに前記第2のパターンを露光させる第2の露光処理とを実行可能に構成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基板が大型化しても、生産性の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】半導体パッケージの一構成例を示す概略側断面図である。
【
図2】上記半導体パッケージにおけるインターポーザの概略平面図である。
【
図3】上記インターポーザが複数形成された集合基板を示す平面図である。
【
図4】上記インターポーザの製造方法の一例を示す集合基板の概略平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る露光方法を説明する集合基板の概略平面図である。
【
図6】アライメントマークを含む露光パターンの一例を示す図である。
【
図7】アラメントマークの他の一例を示す図であって、Aはポジ型レジストに形成した現像前の円形のアライメントマークパターン、Bはネガ型レジストに形成した現像前の円形のアライメントマークパターンである。
【
図8】本発明の一実施形態に係る露光システムの構成を示すブロック図である。
【
図9】直描露光装置の露光精度を説明するための露光パターンの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0022】
<第1の実施形態>
図1は、半導体パッケージの一構成例を示す概略側断面図である。本実施形態では、半導体パッケージに用いられるインターポーザの製造に用いられる露光方法を例に挙げて説明する。
【0023】
[半導体パッケージ]
図1に示すように、半導体パッケージ100は、GPU(Graphic Processing Unit)、CPU(Central Processing Unit)、SoC(System on Chip)等のロジックチップにより構成されるロジック層111と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等のメモリがスタックされたメモリ層112と、インターポーザ113と、複数の外部接続端子114aを有するプリント基板114と、を備える。メモリ層112は、積層された複数(
図1では4つ)のメモリダイ1121~1124を有し、これらメモリダイ1121~1124は、マイクロバンプ112aとTSV112bとを備えた配線構造によって接続されている。
【0024】
ロジック層111とメモリ層112とは、インターポーザ113上に並んで配置され、インターポーザ113の表面上に形成された信号配線120を介して電気的に接続される。なお
図1においては、信号配線120を便宜上、図の上下方向に並べて示したが、実際には、信号配線120は、インターポーザ130の面内に単層または多層で引き回されるようにして形成される。
【0025】
一方で、インターポーザ113とプリント基板114とは、バンプ113aによって接続されている。インターポーザ113にはTSV113bが形成されており、ロジック層111とプリント基板114、およびメモリ層112とプリント基板114とは、それぞれバンプ113aおよびTSV113bを介して接続されている。TSV113bは、ロジック層111またはメモリ層112に主に電源を供給するビア(via)である。
【0026】
[インターポーザ]
図2は、信号配線120とTSV113bとを模式的に示すインターポーザ113の平面図である。インターポーザ113は、信号配線120およびTSV113bが形成される基板本体10を有する。基板本体10は、絶縁層が有機材料で形成された矩形の樹脂基板であり、本実施形態では多層配線基板で構成される。
なお一般に、TSVは、シリコン基板を貫通するビアという意味で用いられているが、この明細書では便宜上、インターポーザ113に形成される貫通電極をもTSVと称する。
【0027】
図2に示すように、基板本体10のほぼ中央領域には信号配線120が形成される第1領域A1と、ロジック層111と接続されるTSV113bが形成される第2領域A2と、メモリ層112と接続されるTSV113bが形成される第3領域A3とを有する。第2領域A2および第3領域A3は、第1領域A1を挟んで基板本体10の長手方向(図中横方向)に対向して配置される。TSV113bは、基板本体10に2次元的に配列される。
【0028】
図3は、インターポーザ113が複数形成された集合基板11を示す平面図である。集合基板11は、一個のインターポーザ113に相当する大きさの単位基板10aの集合体である。単位基板10aは、インターポーザ113の基板本体10(
図2参照)に相当する。
【0029】
各インターポーザ113は、集合基板11上で一括的に形成された後、集合基板11を単位基板10aの境界部で切断することで個片化される。各インターポーザ113の大きさは共通であり、例えば、縦が約40mm、横が約70mmの長方形である。集合基板11の大きさは、インターポーザ113を縦方向に10個、横方向に6個並べた大きさであり、その縦および横の寸法は、周縁部の余白部分を含めて、それぞれ約500mmである。
【0030】
各インターポーザ113の信号配線120およびTSV113bは、フォトリソグラフィ技術を用いて形成される。ところが、信号配線120とTSV113bは、大きさがかなり異なり、これらを形成するための露光技術の精度にもかなりの差がある。信号配線120は、狭い範囲に多数必要となるため、例えば、1μm~3μmのライン・アンド・スペース(L&S)で形成される。一方、TSV113bは、そのピッチは、例えば10μm程度である。
【0031】
一般に、L&Sが例えば3μm以下の微細パターンを形成するためには、露光装置として、例えば半導体製造に用いられるステッパのような先端技術に相当する露光精度の高い装置が必要とされる。一方、10μm程度の粗いパターンを形成するのであれば、比較的露光精度が低い露光装置で十分とされる。しかしながら、インターポーザに配線パターンを露光するに際しては、微細パターンである信号配線を形成する必要があるため、従来では、粗いパターンであるTSV部分に関しても、オーバースペックであることは承知のうえで、高精度の露光を行うステッパを使用していた。
【0032】
具体的にはまず、インターポーザ一個分の信号配線120およびTSV113bのパターンを形成したマスクをステッパに取り付ける。
次いで、集合基板11の表面に感光性のレジスト(フォトレジスト)を形成する。
続いて
図4に示すように、集合基板11に形成されるインターポーザ113の数に合わせて、ステップ&リピートにより、TSV113b形成用の第1のパターンP1および信号配線120形成用の第2のパターンP2を各単位基板10a上のレジストに同時に露光する。
【0033】
図3に示す計60個(縦10個×横6個)のインターポーザ113が面付けされる集合基板11を用いる場合には、60回のステップ&リピートによる露光が行われる。露光順序は特に限定されず、例えば
図4において矢印で示すように、集合基板11を支持するステージを横方向または縦方向に間欠移動させながら、最上段の左上の単位基板10aから最下段の左下の単位基板10aまで順次、信号配線120およびTSV113bのパターン露光を繰り返す。
【0034】
しかしながら、露光装置の露光精度が高くなるほど、一回の露光で光を照射することができる面積(照射面積)は狭くなるため、インターポーザの大型化が進むと、微細な信号配線のパターン精度を維持しつつ、TSVの形成領域まで照射面積を広げることは、技術的に困難になる。
例えば、1μm~3μmのL&Sを形成できる露光精度を有する露光装置は、一回の露光で光を照射できる面積が35mm四方~70mm四方程度であるため、インターポーザの基板サイズが例えば縦100mm×横100mm以上に大面積化したとき、一回の露光の照射面積では一個のインターポーザの基板サイズにわたって光を照射することができない。このため、一個のインターポーザにパターンを形成するには、少なくとも二回の露光が必要となる。この場合、一枚の集合基板11に上述した手法でインターポーザを形成する場合、高い露光精度を有する露光装置の露光時間(使用時間)が二倍になる。つまり、
図4に示したステップ&リピートを120回行う必要がある。
【0035】
[本実施形態の露光方法]
このような問題を解消するため、本実施形態の露光方法は、第1の露光工程と、第2の露光工程とを有する。
第1の露光工程は、第1の露光精度を有する第1の露光装置を用いて、基板上のレジストに第1のパターンを露光する。
第2の露光工程は、第1の露光精度とは異なる第2の露光精度を有する第2の露光装置を用いて、第1のパターンを露光したレジストに、第1のパターンとは異なる第2のパターンを露光する。
【0036】
ここで、露光精度とは、典型的には、露光されるパターンの分解能をいい、露光精度が高いほど分解能が高いパターンを露光することができる。したがって、パターンが微細なほど高い露光精度が要求される。露光精度は、使用する光源波長やマスクパターンの精度、マスクの位置合わせ精度などが含まれる。ここでは、露光精度が高いほど露光光の照射面積が狭く、また、マスクとの位置合わせ精度が高いことを意味する。
【0037】
本実施形態において、第1の露光装置は、10μm程度の比較的粗いパターンを形成できる露光精度(第1の露光精度)を有する露光装置が用いられる。第1の露光装置には、本実施形態ではTSV113bを形成するための第1のパターンP1を有する露光用マスクが装着される。
【0038】
10μm程度の比較的粗いパターンの形成であれば、比較的露光精度の低い露光装置を使用できる。露光精度が低くなるほど一回の露光での照射面積は広くすることができる。そのため、第1の露光装置としては、一回の露光処理で光を照射できる面積(第1の照射面積)が例えば250mm四方である投影露光装置を使用することができる。この照射面積は、本実施形態では、縦40mm×横70mm程度のインターポーザ113の15個分(縦5個×横3個)~18個分(縦6個×横3個)の面積に相当する。本実施形態において第1の露光装置は、インターポーザ113の15個分の第1のパターンP1が形成された露光用マスクを用いて、当該15個分の第1のパターンPを集合基板11上に一括して露光することが可能に構成される。
【0039】
一方、第2の露光装置は、1μm~3μmのL&Sを形成できる露光精度(第2の露光精度)を有するステッパ等の比較的高い露光精度を有する投影露光装置が用いられる。第2の露光装置には、本実施形態では信号配線120を形成するための第2のパターンP2を有する露光用マスクが装着される。
【0040】
第2の露光装置としては、一回の露光処理で光を照射できる面積(第2の照射面積)が第1の露光装置のそれよりも狭く、例えば、35mm四方から70mm四方のものを使用することができる。この照射面積は、上記サイズのインターポーザ113において信号配線120の形成領域である第1領域A1(
図2参照)をカバーできる大きさであればよい。
【0041】
図5A,Bは、本実施形態の露光方法を説明する集合基板11の概略平面図である。ここでは、集合基板11として
図3に示す集合基板11と同一の基板サイズのものが用いられ、この集合基板11に60個のインターポーザ113が形成される例について説明する。
【0042】
(レジスト形成工程)
まず、集合基板11上に感光性のレジストが形成される。レジストには、液状レジストが用いられるが、フィルム状のレジストが用いられてもよい。また、レジストとしては、非感光領域が現像液で溶解するネガ型のレジストが用いられてもよいし、感光領域が現像液で溶解するポジ型のレジストが用いられてもよい。
【0043】
(第1の露光工程)
第1の露光工程では、レジストが塗布された集合基板11に対して、第1の露光装置によってTSV113bを形成するための比較的粗い(約10μmピッチの)第1のパターンP1が露光される。
【0044】
図5Aに示すように、第1の露光装置の照射面積は約250mm四方であるため、本実施形態では一回の露光処理で15個(縦5個×横3個)分の単位基板10aに第1のパターンP1が一括的に露光される。したがって、4回のステップ&リピートによって、集合基板11上のすべての単位基板10aに第1のパターンP1が露光される。
なお、第1の露光装置の照射面積は上記の例に限られず、少なくとも2以上の単位基板10aの面積に相当する広さがあればよい。
【0045】
(第2の露光工程)
第1の露光工程の終了後、レジストを現像せずに、第2の露光工程が行われる。第2の露光工程では、第2の露光装置によって、第1のパターンP1を露光したレジストに、信号配線120を形成するための比較的微細な(L&Sが1μm~3μmの)第2のパターンP2が露光される。
第1の露光工程を比較的粗いパターンの形成とし、それに続く第2の露光工程を比較的微細なパターンの形成とするのは、粗いパターンに比べて微細なパターンの方が、外的な影響を受けやすく、露光から現像までを短時間で行うことが好ましいためである。
【0046】
第2の露光装置は、第1の露光装置よりも露光精度が高いため、一回の露光処理で光を照射することができる面積が小さい。このため、第2の露光工程では、
図5Bに示すように、単位基板10aごとに60回のステップ&リピートを繰り返すことで、各単位基板10aに第2のパターンP2が露光される。
【0047】
ここで、TSV113b形成用の第1のパターンP1と信号配線120形成用の第2のパターンP2とは、互いに所定の位置関係になければならない。本実施形態ではTSV113b形成用の第1のパターンP1を有するマスクに、
図6に示すようなアライメントマークP3がさらに形成される。これにより、第1のパターンP1の露光と同時に、集合基板11上の各単位基板10a上のレジストにアライメントマークP3が露光される。
【0048】
本実施形態では、第1のパターンP1の露光後、レジストを現像せずに第2の露光処理を実行するため、第1のパターンP1とともに形成されたアライメントマークP3を指標として第2のパターンP2の露光位置(マスク位置)の調整が可能となる。また、第1のパターンP1の近傍にアライメントマークP3が形成されるため、第2のパターンP2の高い位置合わせ精度を確保することができる。
【0049】
アライメントマークP3の形状は図示する十字形状に限られず、円形や四角形等の任意の幾何学的形状が採用可能である。また、アライメントマークP3の数は図示する4つに限られず、縦方向(Y方向)、横方向(X方向)および回転方向(θ方向)のアライメントを可能にするため、少なくとも2つあればよい。アライメントマークP3の位置も特に限定されず、例えば
図6に示すように、信号配線120形成用の第2のパターンP2が露光される第1領域A1の四隅あるいはその周辺位置に形成されてもよい。
【0050】
アライメントマークP3が形成されるレジストは、ポジ型およびネガ型のいずれであっても、現像を行わない露光のみの状態で、カメラ等で容易に識別可能であることが確認されている。一例として
図7Aおよび
図7Bにそれぞれ、ポジ型レジストおよびネガ型レジストに形成した、現像を行わない露光のみの状態の円形のアライメントマークパターンを示す。
【0051】
図7A,Bに示すように、レジストは露光すると、光化学反応により、露光した部分の色や光の反射率が露光前の状態から変化する。第2の露光工程では、第2の露光装置により、この変色したアライメントマークP3を検出し第2のパターンP2のマスクと位置合わせを行う。アライメントマークP3は、第1のパターンP1の露光時に形成したものであるため、このアライメントマークP3を基準に第2のパターンP2の位置合わせを行うことにより、第1のパターンP1(粗いパターン)に対して第2のパターンP2(微細なパターン)をあらかじめ設定した所定位置に露光形成することができる。
【0052】
(現像工程)
第2の露光工程の終了後、集合基板11上のレジストの現像工程が行われる。この現像工程では、集合基板11上に現像液を塗布して第1のパターンP1および第2のパターンP2に対応するレジストパターンを形成する。即ち、露光の工程は、第1と第2の2回の露光工程があるが、現像の工程は、第2の露光工程の終了後の1回のみであり、従来に比べて現像工程が増えことがなく、したがって現像工程の増加による生産性の低下は生じない。
【0053】
レジストパターン形成後の工程は、配線パターンの形成方法によって異なる。
例えば、アディティブ法の場合には、形成されたレジストパターンをめっきレジストとして利用し、電界めっき法によりレジストパターン内に銅めっき等の導体層を埋め込む。この場合、レジストを塗布する前に、集合基板11上にあらかじめ銅薄膜などのシード層(給電層)がスパッタ法あるいは無電解めっき法によって形成される。銅めっき等の導体層を形成した後、リフトオフ法などによりレジストパターンを除去し、シード層をウェットエッチング法で除去する。その後、ペースト状あるいはシート状の絶縁層を集合基板11上に塗布あるいは積層し、上述した工程を繰り返す。このようなビルドアップ工法によって、配線パターンを一層ずつ積み上げることで、多層構造の配線パターンが形成される。
【0054】
配線パターンの形成方法は上述したアディティブ法に限られず、サブストラクティブ法が採用されてもよい。この場合、形成されたレジストパターンはエッチングマスクとして利用される。この場合、レジストを塗布する前に、集合基板11上にあらかじめ銅薄膜などの導体層が形成される。レジストパターンの開口部から露出する導体層をエッチング液で除去した後、レジストを除去する。その後、ペースト状あるいはシート状の絶縁層を集合基板11上に塗布あるいは積層し、上述した工程を繰り返すことで、多層構造の配線パターンが形成される。
【0055】
以上のように本実施形態においては、TSV113b用の第1のパターンの露光処理と信号配線120用の第2のパターンの露光処理を行うに際して、露光精度が異なる2つの露光装置を用いて、各露光装置の露光精度に対応した照射面積で各パターンの露光を行うようにしている。これにより、微細な信号配線120のパターン精度を維持しつつ、TSV113bの形成領域まで照射面積を広げることができる。
【0056】
また、特にTSV113b用の第1のパターンの露光処理にあっては、一回の露光処理で複数(本実施形態では15個)の単位基板10aを一括して露光するため、60個の単位基板10aに個々に第1のパターンP1を露光する場合と比較して、ステップ&リピートの回数を60回から4回に削減することができる。これにより、露光処理に要する時間が大幅に削減される。また、高精度の露光を行うステッパをオーバースペックと知りつつ使用する効率の悪い工程を削減することができる。したがって、露光工程における生産性の低下を抑えることができる。
【0057】
このような作用効果は、インターポーザ113の基板サイズが大型化するほど顕著に得られる。したがって本実施形態によれば、インターポーザ113が大型化しても、微細な信号配線120のパターン精度を維持しつつ、露光処理に要する時間を短縮して生産性の低下を抑えることが可能となる。
【0058】
さらに本実施形態によれば、第1および第2の2つの露光装置を用いて露光処理を行うようにしているが、第1の露光工程と第2の露光工程との間でレジストの現像を行わないため、これら露光工程の間において現像工程とレジストの再形成工程が不要となる。これにより、露光から現像までの工程の総時間が長くなるのを極力抑えることが可能である。
【0059】
<第2の実施形態>
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。
図8は、本実施形態に係る露光システム200の構成を示すブロック図である。ここでは、第1の実施形態で説明した露光方法を実現する露光システムを例に挙げて説明する。
【0060】
<露光システム>
図8に示すように、本実施形態の露光システム200は、第1の露光装置201と、第2の露光装置202と、制御装置203とを備える。
【0061】
第1の露光装置201は、第1の露光精度を有し、集合基板11上のレジストに、TSV113bを形成するための第1のパターンP1を複数の単位基板10aにわたって一括的に露光する投影露光装置である。すなわち、第1の露光装置201は、上述の第1の露光工程において用いられる第1の露光装置に相当する。
【0062】
一方、第2の露光装置202は、上記第1の露光精度よりも高い第2の露光精度を有し、集合基板11上のレジストに、第1のパターンP1とは異なる信号配線120形成用の第2のパターンP2を個々の単位基板10aごとに個別に露光する投影露光装置である。すなわち、第2の露光装置201は、上述の第2の露光工程において用いられる第2の露光装置に相当する。
【0063】
制御装置203は、第1の露光装置201に、レジストに第1のパターンP1を露光させる第1の露光処理と、第2の露光装置202に、第1のパターンP1を形成したレジストに第2のパターンP2を露光させる第2の露光処理とを実行可能に構成される。制御装置203は、CPUやメモリを有するコンピュータで構成される。上記メモリには、上記第1の露光処理と第2の露光処理とを実行させるプログラムが格納される。
【0064】
露光システム200は、第1の露光装置201で露光処理を行った集合基板11を第2の露光装置202へ搬送する搬送装置204をさらに備えてもよい。この場合、制御装置203は、第1の露光装置201から第2の露光装置202へ集合基板11を搬送させる指示を搬送装置204へ出力可能に構成される。なお、集合基板11は、搬送装置204による自動搬送に代えて、作業者による手動搬送が採用されてもよい。
【0065】
以上のように構成される露光システム200によれば、第1の露光装置201を用いた第1の露光工程と、第2の露光装置202を用いた第2の露光工程とを、制御装置203によって自動的に実行することができる。第1の露光装置201および第2の露光装置202は独立した2つの露光装置で構成される場合に限られず、露光精度が異なる2つの露光処理部を備えた1つの露光装置で構成されてもよい。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0067】
例えば以上の実施形態では、半導体パッケージ用のインターポーザを製造するための露光方法および露光システムについて説明したが、適用対象はインターポーザに限られない。例えば、シリコン基板を用いた半導体製造プロセス、インターポーザ以外の各種プリント基板の製造プロセスにも本発明は適用可能である。
【0068】
また、以上の各実施形態では、第1の露光装置および第2の露光装置としていずれも投影露光装置が採用されたが、少なくとも一方の露光装置に直描露光装置が採用されてもよい。直描露光装置は、ダイナミックスキャン方式とも称される描画装置であり、レーザー光源と、レーザー光源を基板の面内方向に走査する駆動部などを備える。レーザー光源は1つに限られず、複数であってもよい。直描露光装置における露光精度は、描画するパターンの分解能に相当し、例えば、単位面積あたりに描画できる本数あるいはドット数、レーザー光の走査精度等で使い分けられる。
【0069】
例えば
図9A、Bを参照して、6つのレーザー光源を用いて縦方向への二回の走査で基板S上に「A」から「N」までの13文字の英字パターンを露光する場合を説明する。
図9Aは、一ラインおきに配列された6つのレーザー光源から射出されるレーザー光で基板Sを露光する例を示しており、
図9Bは、一ライン間隔で配列された6つのレーザー光源から射出されるレーザー光で基板Sを露光する例を示している。
図9Aに示す露光パターンは、
図9Bに示す露光パターンよりも、一回の走査で露光できる範囲は広いが、単位面積あたりの描画密度は小さい。このことから、
図9Aに示す露光パターンよりも、
図9Bに示す露光パターンの方が、露光精度が高いといえる。
【0070】
したがって、露光精度が異なる2つの直描露光装置を用いてインターポーザ113のTSV113bおよび信号配線120の各パターンを露光する場合には、露光精度が低い方の直描露光装置を用いてTSV113bを形成する第1のパターンP1を露光し、露光精度が高い方の直描露光装置を用いて信号配線120を形成する第2のパターンP2を露光するようにすることで、上述の第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0071】
10…基板本体
10a…単位基板
11…集合基板
100…半導体パッケージ
111…ロジック層
112…メモリ層
113…インターポーザ
113b…TSV
120…信号配線
200…露光システム
201…第1の露光装置
202…第2の露光装置
203…制御装置
P1…第1のパターン
P2…第2のパターン
P3…アライメントマーク