(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086553
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】位置推定装置、荷物管理機器及び荷物監視システム
(51)【国際特許分類】
G08C 17/00 20060101AFI20230615BHJP
G08C 17/02 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
G08C17/00 A
G08C17/02
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201149
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】野原 和樹
【テーマコード(参考)】
2F073
【Fターム(参考)】
2F073AA02
2F073AA11
2F073AA19
2F073AA23
2F073AA31
2F073AA40
2F073AB02
2F073BB01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CC09
2F073CC12
2F073CD11
2F073DE02
2F073DE06
2F073DE13
2F073DE16
2F073EE01
2F073EE11
2F073EF09
2F073FF01
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG05
2F073GG08
(57)【要約】
【課題】GPS位置データのばらつきの影響を抑えて現在位置データを更新する位置推定装置を提供する。
【解決手段】本開示の位置推定装置20では、GPS位置データで特定される位置は、実際には静止状態であっても一定範囲のばらつきが生じるため、新たに取得するGPS位置データが、前回更新された現在位置データからばらつきの範囲を超えて変化しなかった場合に、その変化は位置推定装置20の移動によるものではなくばらつきによるものと判別する一方、ばらつきの範囲を超えて変化した場合に、その変化は位置推定装置20の移動によるものと判別する。そして、ばらつきによるものと判断した場合には現在位置データを更新せず、移動によるものと判断した場合に、そのGPS位置データで現在位置データを更新する。これにより、本開示の位置推定装置20では、GPS位置データのばらつきの影響を抑えて現在位置データを更新することができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPSモジュール(11)から順次入力される複数のGPS位置データから一部を使用して現在位置データを更新し、出力する位置推定装置(20)であって、
新たに取得する前記GPS位置データと前記現在位置データとの間に、前記GPS位置データのばらつきの範囲を超えた変化があるか否かを判別し、前記変化があると判別される場合に、そのGPS位置データで前記現在位置データを更新する第1データ更新部(32)を備える位置推定装置(20)。
【請求項2】
前記位置推定装置(20)と共に移動して振動を含む移動の有無を検知する移動検知センサ(12)から検出結果を取得し、前記位置推定装置(20)の移動が検知されたか否かを判別し、前記移動が検知されたと判別される場合に、前記現在位置データを、新たに取得する前記GPS位置データで更新する第2データ更新部(33)を備える請求項1に記載の位置推定装置(20)。
【請求項3】
前記第1データ更新部(32)による判別を、前記第2データ更新部(33)による判別より先に行い、前記第1データ更新部(32)が前記変化がないと判別したことを条件にして、前記第2データ更新部(33)による判別を行う請求項2に記載の位置推定装置(20)。
【請求項4】
前記第2データ更新部(33)による判別を、前記第1データ更新部(32)による判別より先に行い、前記第2データ更新部(33)が前記移動が検知されなかったと判別したことを条件にして、前記第1データ更新部(32)による判別を行う請求項2に記載の位置推定装置(20)。
【請求項5】
前記移動検知センサ(12)は、加速度センサである請求項2から4の何れか1の請求項に記載の位置推定装置(20)。
【請求項6】
請求項2から5の何れか1の請求項に記載の位置推定装置(20)と、GPSモジュール(11)と、振動を含む移動の有無を検知する移動検知センサ(12)と、荷物(P)に係る物性値を計測するための荷物管理用センサ(13)と、を有し、前記荷物(P)と共に移動する荷物管理機器(10)。
【請求項7】
前記現在位置データ及び前記物性値の検出結果を記憶するデータロガー(14)を備える請求項6に記載の荷物管理機器(10)。
【請求項8】
前記現在位置データ及び前記物性値の検出結果を無線送信する無線回路(15)を備える請求項6又は7に記載の荷物管理機器(10)。
【請求項9】
請求項8に記載の荷物管理機器(10)と、
前記荷物管理機器(10)から前記現在位置データ及び前記物性値の検出結果を無線受信して蓄える荷物監視装置(50)と、を備える荷物監視システム(100)。
【請求項10】
前記荷物監視装置(50)には、前記現在位置データ及び前記物性値の検出結果に基づく送信データを、通信ネットワーク(101)を介して外部端末(70)に送信するデータ送信部(55)が備えられている請求項9に記載の荷物監視システム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、位置推定装置、荷物管理機器及び荷物監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年,GPSモジュールがスマホ、子供や荷物の位置追跡端末等の様々な機器に搭載されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-161906公報(段落[0006])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、GPSモジュールが出力するGPS位置データはばらつくので、そのばらつきの影響を抑えて現在位置データを更新する技術の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、GPSモジュール(11)から順次入力される複数のGPS位置データから一部を使用して現在位置データを更新し、出力する位置推定装置(20)であって、新たに取得する前記GPS位置データと前記現在位置データとの間に、前記GPS位置データのばらつきの範囲を超えた変化があるか否かを判別し、前記変化があると判別される場合に、そのGPS位置データで前記現在位置データを更新する第1データ更新部(32)を備える位置推定装置(20)である。
【0006】
請求項2の発明は、前記位置推定装置(20)と共に移動して振動を含む移動の有無を検知する移動検知センサ(12)から検出結果を取得し、前記位置推定装置(20)の移動が検知されたか否かを判別し、前記移動が検知されたと判別される場合に、前記現在位置データを、新たに取得する前記GPS位置データで更新する第2データ更新部(33)を備える請求項1に記載の位置推定装置(20)である。
【0007】
請求項3の発明は、前記第1データ更新部(32)による判別を、前記第2データ更新部(33)による判別より先に行い、前記第1データ更新部(32)が前記変化がないと判別したことを条件にして、前記第2データ更新部(33)による判別を行う請求項2に記載の位置推定装置(20)である。
【0008】
請求項4の発明は、前記第2データ更新部(33)による判別を、前記第1データ更新部(32)による判別より先に行い、前記第2データ更新部(33)が前記移動が検知されなかったと判別したことを条件にして、前記第1データ更新部(32)による判別を行う請求項2に記載の位置推定装置(20)である。
【0009】
請求項5の発明は、前記移動検知センサ(12)は、加速度センサである請求項2から4の何れか1の請求項に記載の位置推定装置(20)である。
【0010】
請求項6の発明は、請求項2から5の何れか1の請求項に記載の位置推定装置(20)と、GPSモジュール(11)と、振動を含む移動の有無を検知する移動検知センサ(12)と、荷物(P)に係る物性値を計測するための荷物管理用センサ(13)と、を有し、前記荷物(P)と共に移動する荷物管理機器(10)である。
【0011】
請求項7の発明は、前記現在位置データ及び前記物性値の検出結果を記憶するデータロガー(14)を備える請求項6に記載の荷物管理機器(10)である。
【0012】
請求項8の発明は、前記現在位置データ及び前記物性値の検出結果を無線送信する無線回路(15)を備える請求項6又は7に記載の荷物管理機器(10)である。
【0013】
請求項9の発明は、請求項8に記載の荷物管理機器(10)と、前記荷物管理機器(10)から前記現在位置データ及び前記物性値の検出結果を無線受信して蓄える荷物監視装置(50)と、を備える荷物監視システム(100)である。
【0014】
請求項10の発明は、前記荷物監視装置(50)には、前記現在位置データ及び前記物性値の検出結果に基づく送信データを、通信ネットワーク(101)を介して外部端末(70)に送信するデータ送信部(55)が備えられている請求項9に記載の荷物監視システム(100)である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、位置推定装置(20)は、GPSモジュール(11)から順次入力される複数のGPS位置データから一部を使用して現在位置データを更新する際、新たに取得するGPS位置データと、前回更新された現在位置データとの間に、ばらつきの範囲を超えた変化があるか否かを判断して、変化があると判別される場合に、そのGPS位置データで現在位置データを更新する。つまり、本開示の位置推定装置(20)では、GPS位置データで特定される位置は、実際には静止状態であっても一定範囲のばらつきが生じるため、新たに取得するGPS位置データが、前回更新された現在位置データからばらつきの範囲を超えて変化しなかった場合に、その変化は位置推定装置(20)の移動によるものではなくばらつきによるものと判別する一方、ばらつきの範囲を超えて変化した場合に、その変化は位置推定装置(20)の移動によるものと判別する。そして、ばらつきによるものと判断した場合には現在位置データを更新せず、移動によるものと判断した場合に、そのGPS位置データで現在位置データを更新する。これにより、本開示の位置推定装置(20)では、GPS位置データのばらつきの影響を抑えて現在位置データを更新することができる。
【0016】
そして、第1データ更新部(32)に加えて、請求項2,3の発明のように、位置推定装置(20)と共に移動して振動を含む移動の有無を検知する移動検知センサ(12)から検出結果を取得し、位置推定装置(20)の移動が検知されたか否かを判別し、移動が検知されたと判別される場合に、現在位置データを、新たに取得するGPS位置データで更新する第2データ更新部(33)を備えれば、第1データ更新部(32)により、新たに取得するGPS位置データが、前回更新された現在位置データからばらつきの範囲を超えた変化がないと判別された場合であっても、第2データ更新部(33)の判別により、荷物管理機器(10)の移動が検知されたと判別されれば、現在位置データを更新することができる。
【0017】
この構成によれば、新たに取得するGPS位置データが、前回更新された現在位置データからばらつきの範囲内で実際に移動していたとしても、第1データ更新部(32)では、その移動をばらつきによるものと判別して現在位置データを更新しないが、第2データ更新部(33)により、ばらつきの範囲内での移動を検知して、現在位置データを更新することができる。このとき、請求項3の構成のように、第1データ更新部(32)による判別を、第2データ更新部(33)による判別より先に行い、第1データ更新部(32)が変化がないと判別したことを条件にして、第2データ更新部(33)による判別を行う構成とすれば、不要な加速度データの収拾が抑えられて電池の無駄な消耗を抑えることができる。
【0018】
また、請求項4の構成のように、第2データ更新部(33)による判別を、第1データ更新部(32)による判別より先に行い、第2データ更新部(33)が移動が検知されなかったと判別したことを条件にして、第1データ更新部(32)による判別を行ってもよい。
【0019】
ここで、移動検知センサ(12)として、例えば、加速度センサ(12)を用いることができ(請求項5の発明)、加速度センサ(12)が検出する速度変化から移動を検知してもよいし、移動中には振動を伴うことから振動を検出し、振動により移動を検知してもよい。また、移動速度を算出して移動を検知してもよい。
【0020】
そして、本開示の位置推定装置(20)を、GPSモジュール(11)と、移動検知センサ(12)と、荷物(P)に係る物性値を計測するための荷物管理用センサ(13)と共に備えて荷物(P)と共に移動する荷物管理機器(10)として用いれば(請求項6の発明)、現在位置データにより荷物(P)の移動軌跡、荷物管理用センサ(13)により荷物(P)に係る物性値等の輸送状況を把握することができる。なお、荷物管理用センサ(13)として、例えば、温度センサ、湿度センサ、圧力センサ、照度センサ、加速度センサ等が挙げられ、温度センサ、湿度センサにより温度や湿度、圧力センサや加速度センサにより衝撃や振動、照度センサにより荷台の開閉等を把握することができる。
【0021】
さらに、請求項8のように、荷物管理機器(10)に無線回路(15)を備えて、現在位置データ及び荷物(P)に係る物性値の検出結果を無線送信する構成とし、例えば、請求項9のように、荷物監視装置(100)がそれら現在位置データ及び荷物(P)に係る物性値の検出結果を無線受信して蓄える荷物監視システム(100)とすれば、荷物(P)の輸送状況を荷物監視装置(50)でリアルタイムで監視することができる。
【0022】
また、請求項7のように、荷物管理機器(10)にデータロガー(14)を備えれば、例えば、荷物(P)が航空機や船舶に載せられて無線通信を行うことができない状況であっても、その間のデータをデータロガー(14)に蓄積して無線通信が可能となったときに一括送信することができる。また、データロガー(14)には、現在位置データ及び荷物(P)に係る物性値の検出結果を時系列で蓄積できるので、例えば、輸送終了後に荷物(P)の移動軌跡や輸送条件の検証等を行うことができる。
【0023】
また、請求項10のように、現在位置データ及び荷物(P)に係る物性値の検出結果に基づく送信データを、通信ネットワーク(101)を介して外部端末(70)に送信する構成とすれば、例えば、荷物(P)の輸送途中の移動軌跡や異常等を、適宜、荷物(P)の出荷元や受取先、又は、輸送中のドライバーに通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態の荷物監視システムの全体構成を示す概略図
【
図2】位置推定装置及びクラウドサーバの電気的な構成を示すブロック図
【
図3】位置推定装置の制御的な構成を示すブロック図
【
図4】クラウドサーバの制御的な構成を示すブロック図
【
図6】第2実施形態の位置特定プログラムのフローチャート
【
図7】第3実施形態の位置特定プログラムのフローチャート
【
図8】他の実施形態の位置特定プログラムのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
本開示の第1実施形態の荷物監視システム100について、
図1~
図5を参照して説明する。本実施形態の荷物監視システム100は、管理対象物である荷物Pの輸送状況を把握するシステムであり、
図1に示すように、荷物Pと共に移動して輸送状況に関する情報を取得する荷物管理機器10と、荷物管理機器10が取得した輸送状況に関する情報を管理するクラウドサーバ50と、クラウドサーバ50を介して荷物管理機器10が取得した情報の提供を受ける外部端末70と、を備えてなる。荷物管理機器10と、クラウドサーバ50と、外部端末70とは、無線基地局400,401を含んだ通信ネットワーク101を介して接続されている。
【0026】
ここで、荷物Pの輸送は、荷物Pの出荷から受け取りまでの行程における、車両、航空機、船舶、列車又は人等による荷物Pの移動や、倉庫やコンテナ等での一時的な保管が含まれる。なお、荷物管理機器10は、例えば、荷物Pを収容して荷物Pと共に運搬可能な収容容器91の内部に取付けられている。収容容器91は、例えば、断熱容器、クーラーボックス、冷蔵庫、冷凍庫、ドライコンテナ等である。荷物Pは、例えば、食料品、医薬品、検体、美術品等である。また、荷物監視システム100において、荷物管理機器10は複数であってもよいし、一つであってもよい。
【0027】
荷物管理機器10は、
図2に示すように、GPSモジュール11と、加速度センサ12と、荷物管理用センサ13と、位置推定装置20と、データロガー14と、無線回路15とを備えている。なお、荷物管理機器10は、GPSモジュール11、加速度センサ12、荷物管理用センサ13、位置推定装置20、データロガー14、無線回路15等に電力を供給する図示しない電源を備えている。電源は、例えば、一次電池、二次電池等である。
【0028】
GPSモジュール11は、GPS衛星信号を受信し、荷物管理機器10(荷物P)のGPS位置データを算出する。GPS位置データは、荷物Pの輸送状況に関する情報としての荷物管理機器10の現在位置を示す現在位置データを特定する際に使用される。GPS位置データは、例えば、10[m]の誤差を有し、GPS位置データで特定される位置は、例えば、半径10[m]の範囲でばらつく。
【0029】
加速度センサ12は、荷物管理機器10の移動を検知するのに利用される。加速度センサ12が検出する加速度データとして、例えば、速度変化データを用いて、加速中、減速中又は加速してから減速するまでの間を移動中と判別し、それ以外を静止状態と判別してもよい。また、移動には振動が伴うことから、加速度データとして、振動データを用いて、振動の有無により移動を検知してもよい。なお、加速度センサ12は、特許請求の範囲の「移動検知センサ」に相当する。
【0030】
荷物管理用センサ13として、本実施形態では、温度センサ、湿度センサ、圧力センサ、照度センサを備え、荷物Pの輸送状況に関する情報として、収容容器91内の温度、湿度、気圧、及び照度等の物性値を取得する。また、本実施形態では、加速度センサ12も荷物管理用センサ13として利用し、衝撃や振動に関する物性値を取得する。荷物管理用センサ13は、温度センサ、湿度センサ、圧力センサ、照度センサのうちの一部を備える構成であってもよいし、これらのセンサに加えて、その他の物性値を測定するセンサを備える構成であってもよい。
【0031】
位置推定装置20は、CPU21Aと、RAM、ROM、フラッシュメモリ等のメモリ21Bとを含んでなるマイコン21を主要部として備える。CPU21Aは、GPSモジュール11、加速度センサ12、荷物管理用センサ13、データロガー14等の機器に接続されて、それら機器を制御して後述する位置推定プログラムPG1を実行する。メモリ21Bは、特定データ記憶部22と、識別番号記憶部23及びプログラム記憶部24等を有する(
図3参照)。
【0032】
特定データ記憶部22には、現在位置データが更新されたときにその現在位置データが一時的に記憶されるようになっている。識別番号記憶部23は、荷物管理機器10の識別番号が格納されている。そして、プログラム記憶部24には、位置推定プログラムPG1等が格納されており、GPSモジュール11C等により計測が行われる度に、CPU21Aが位置推定プログラムPG1を実行する。
【0033】
位置推定装置20は、
図3に示す制御ブロックを有する。具体的には、CPU21Aは、前述の位置推定プログラムPG1を含む複数の所定のプログラムを実行することで、トリガ生成部30、データ処理部31等として機能する。
【0034】
トリガ生成部30では、一定期間(例えば、1分)毎に計測トリガが生成され、それら計測トリガが生成される度にGPSモジュール11、加速度センサ12及び荷物管理用センサ13が計測を行う。そして、GPSモジュール11が算出したGPS位置データ及び加速度センサ12が計測した加速度データは、計測時刻と対応付けてデータ処理部31に付与され、荷物管理用センサ13が検出した物性値の検出結果は、計測時刻と対応付けてデータロガー14に付与される。
【0035】
データ処理部31は、GPSモジュール11及び加速度センサ12により計測が行われる度に、位置推定プログラムPG1を実行する。データ処理部31は、第1データ更新部32と、第2データ更新部33とを有して、GPS位置データ及び加速度データに基づいて、現在位置データを更新する。
【0036】
第1データ更新部32は、新たに取得するGPS位置データと、前回更新された現在位置データとの間に、ばらつきの範囲を超えた変化があるか否かを判別する。前述したように、GPS位置データで特定される位置は、荷物管理機器10が実際には静止状態であっても一定範囲のばらつきが生じるため、第1データ更新部32では、新たに取得するGPS位置データが、前回更新された現在位置データからばらつきの範囲を超えて変化した場合に、その変化が荷物管理機器10の移動によるものと判別するようになっている。そこで、第1データ更新部32では、前回更新された現在位置データを特定データ記憶部22から読み出して、その前回更新された現在位置データと、新たに取得するGPS位置データとの間に、ばらつきの範囲を超えた変化があるか否かを判別し、ばらつきの範囲を超えた変化があると判別した場合に、そのGPS位置データで現在位置データを更新する。
【0037】
第2データ更新部33は、加速度データを用いて荷物管理機器10の移動が検知されたか否かを判別し、移動が検知されたと判別される場合に、新たに取得するGPS位置データで現在位置データを更新する。
【0038】
本実施形態では、第1データ更新部32による判別を、第2データ更新部33による判別より先に行い、第1データ更新部32が、新たに取得するGPS位置データと、前回更新された現在位置データとの間に、ばらつきの範囲を超えた変化がないと判別した場合にのみ、第2データ更新部33による判別を行うようになっている。つまり、第1データ更新部32が、新たに取得するGPS位置データが、前回更新された現在位置データからばらつきの範囲を超えた変化があると判別した場合には、第2データ更新部33による判別を行わないで現在位置データを更新する。そして、第1データ更新部32が、新たに取得するGPS位置データが、前回更新された現在位置データからばらつきの範囲を超えた変化がないと判別した場合には、第2データ更新部33による判別を行い、荷物管理機器10の移動が検知されたと判別されれば、現在位置データを更新する。つまり、第1データ更新部32により、新たに取得するGPS位置データの前回更新された現在位置データからの変化がばらつきと判別された場合であっても、第2データ更新部33により移動が検知されたと判別される場合には、その変化は荷物管理機器10の移動によるものと判別される。
【0039】
そして、第1データ更新部32によりばらつきの範囲を超えた変化がないと判別され、かつ、第2データ更新部33により荷物管理機器10の移動が検知されなかったと判別された場合には、新たに取得するGPS位置データの前回更新された現在位置データからの変化は、移動によるものではないと判別され、現在位置データは更新されず、前回更新された現在位置データがそのまま引き継がれる。このようにして、特定された現在位置データは、特定データ記憶部22に格納されると共に、計測時刻と対応付けてデータロガー14に付与される。
【0040】
データロガー14は、データ処理部31により特定された現在位置データと、荷物管理用センサ13が検出した物性値の検出結果とを収集して時系列にまとめて保存する。データロガー14は、データ取込部35と、保存部36と、データ送信部37と、返信判別部38とを備える。
【0041】
データ取込部35は、データ処理部31により特定された現在位置データと、荷物管理用センサ13が検出した物性値の検出結果とを取り込んで、計測時刻毎にまとめた輸送状況データD1を生成し、保存部36に保存する。
【0042】
データ送信部37は、予め定められたデータ長さのデータフレームに、保存部36に蓄積されている複数の輸送状況データD1と、識別番号記憶部23から読み出した荷物管理機器10の識別番号とを格納した送信データD2を生成する。そして、トリガ生成部30にて、所定の周期(例えば、10[分])で送信トリガが生成される毎に、データ送信部37は、生成した送信データD2を無線回路15を使用して無線送信する。
【0043】
データ送信部37が送信した送信データD2は、汎用通信回線300を介してクラウドサーバ50で受信される。クラウドサーバー50は、
図2に示すように、少なくとも、監視端末51を含む1つ以上のパソコンと、記憶装置60とを有してなる。なお、クラウドサーバ50が特許請求の範囲の「荷物監視装置」に相当する。
【0044】
記憶装置60は、データ記憶部61と、識別番号記憶部62と、地図データ記憶部63等を有している(
図4参照)。データ記憶部61には、受信した送信データD2から生成した後述する移動軌跡データ等が格納される。識別番号記憶部62には、荷物管理機器10の識別番号が格納されて、識別番号から荷物管理機器10を特定することが可能となっている。地図データ記憶部63には、地図データが格納されている。
【0045】
監視端末51は、
図2に示すように、少なくとも、通信回路52と、CPU53Aを含む制御部53と、を主要部として備える。通信回路52は、汎用通信回線300を介して荷物管理機器10からの送信データD2の受信を行うと共に、外部端末70とデータの送受信を行う。そして、通信回路52が荷物管理機器10から送信データD2を受信する度に、CPU53Aは、図示しない所定のプログラムを実行し、データ解析部54等の制御ブロックとして機能する(
図4参照)。
【0046】
監視端末51は、
図4に示す制御ブロックを有する。具体的には、CPU53Aは、前述のプログラムを実行することで、データ受信部53、データ解析部54等として機能する。
【0047】
データ受信部53は、荷物管理機器10から送信されてくる送信データD2を通信回路52を通して取り込む。
【0048】
ここで、データ受信部53が送信データD2を受信したときには、データ送信部55が受信したことを示すACK信号の返信を行う。詳細には、データ送信部55は、送信データD2に含まれる荷物管理機器10の識別番号を取り出し、その識別番号と受信時刻を予め設定されているデータフレームに格納してACK信号を生成し、通信回路52にて無線送信する。これに対して、荷物管理機器10の返信判別部38(
図3参照)が、自身の識別番号が含まれるACK信号を受信したか否かによって送信データD2がクラウドサーバ50に受信されたか否かを判別する。
【0049】
そして、返信判別部38がACK信号を受信すると、送信データD2はクラウドサーバ50に受信されたと判別し、データロガー14の保存部36からその送信データD2に含まれる輸送状況データD1を削除する。ここで、荷物Pが航空機や船舶に載せられたとき等無線基地局400,401と無線通信を行うことができない場合がある。そのような場合、荷物管理機器10が送信した送信データD2は、監視端末51に受信されない。すると、監視端末51のデータ送信部55はACK信号の返信を行わないので、荷物管理機器10の返信判別部38は、送信データD2がクラウドサーバ50に受信されなかったと判別し、受信されなかった送信データD2に含まれる輸送状況データD1を保存部36に保存したままにし、次の送信データD2を送信するタイミングで、それらの輸送状況データD1も含めた送信データD2を生成して送信する。
【0050】
監視端末51は、データ受信部53が送信データD2を受信すると、例えばそれらに受信時刻を付加してバッファ53Aに蓄える。そして、データ解析部54がバッファ53Aに蓄えられた送信データD2に含まれる現在位置データ及び物性値の検出結果を解析する。具体的には、地図データ記憶部63から地図データを取得し、現在位置データにより特定される位置をその地図データ上にプロットし、荷物管理機器10の移動軌跡を時系列的に示した移動軌跡データを生成する。また、各物性値についての時系列にまとめた物性値テーブルを生成する。これらは、データ記憶部61に格納される。そして、荷物管理機器10から次の送信データD2が送信されてくると、随時、移動軌跡データや物性値テーブルに追加していく。そして、外部端末70から要求があった場合に、データ送信部55が、識別番号に対応する荷物管理機器10を識別番号記憶部62から特定し、移動軌跡データや物性値テーブルを外部端末70に送信する。また、外部端末70からの要求が無くても定期的に外部端末70に送信するようにしてもよい。また、各物性値に対して、異常な変化があるか否かを判別して、異常があった場合に異常判定データを生成して外部端末70に送信するようにしてもよい。
【0051】
外部端末70は、荷物Pの出荷元や受取先、又は輸送中のドライバーが有する端末であって、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット、スマートフォンなどであり、クラウドサーバ50と通信可能な一般的な通信手段であればよい。外部端末70は、前述したように、クラウドサーバ50から移動軌跡データ、物性値テーブル及び異常判定データ等の通知を受信する。また、外部端末70からクラウドサーバ50にアクセスして、クラウドサーバ50上で、移動軌跡データ、物性値テーブル及び異常判定データ等について自由に閲覧できるように構成されていてもよい。
【0052】
以下、位置推定装置20のCPU21Aが実行する位置推定プログラムPG1の一例を
図5に示す。位置推定プログラムPG1は、前述したように、GPSモジュール11及び加速度センサ12からGPS位置データ及び加速度データを取得する度に実行される(S11でYES)。そして、ステップS12により、GPSモジュール11により新たに取得するGPS位置データが、前回更新された現在位置データからばらつきの範囲を超えて変化したか否かを判別する。そして、新たに取得するGPS位置データがばらつきの範囲を超えて変化したと判別された場合には(S12でYES)、その変化が荷物管理機器10の移動によるものと判断して、そのGPS位置データで現在位置データを更新する(S13)。ここで、ステップS12,S13を実行しているときのCPU21Aが前述した第1データ更新部32に相当する。
【0053】
そして、新たに取得するGPS位置データがばらつきの範囲を超えて変化しなかった場合には(S12でNO)、ステップS14により、新たに取得する加速度データから、荷物管理機器10の移動が検知されたか否かを判別する。そして、移動が検知されたと判別された場合には(S14でYES)、GPS位置データの変化はばらつきではなく荷物管理機器10の移動によるものと判別して、そのGPS位置データで現在位置データを更新する(S13)。
【0054】
一方、GPS位置データの変化がばらつきの範囲にあると判別され、かつ、荷物管理機器10の移動が検知されなかったと判別された場合には(S12でNO,S14でNO)、GPS位置データの変化は、移動によるものではないと判別され、このGPS位置データを、現在位置データとして更新せず、荷物管理機器10の現在位置は、前回更新された現在位置データをそのまま引き継ぐ(S15)。このようにして特定された現在位置データは、データロガー14に付与される(S16)。ここで、ステップS13~S15を実行しているときのCPU21Aが前述した第2データ更新部33に相当する。
【0055】
本実施形態の荷物監視システム100の構成に関する説明は以上である。本実施形態の荷物監視システム100では、管理対象物である荷物Pと共に輸送される荷物管理機器10にGPSモジュール11及び加速度センサ12を備えて、それらの検出結果に基づいて、荷物管理機器10に備えられた位置推定装置20が、荷物Pの移動に伴って現在位置データを更新する。位置推定装置20は、GPSモジュール11から新たに取得するGPS位置データと、前回更新された現在位置データとの間に、ばらつきの範囲を超えた変化があるか否かを判別して、変化があると判別される場合に、そのGPS位置データで現在位置データを更新する第1データ更新部32と、加速度センサ12から取得する加速度データにより荷物管理機器10の移動が検知されたか否かを判別し、移動が検知されたと判別される場合に、新たに取得するGPS位置データで現在位置データを更新する第2データ更新部33と、を有している。そして、第1データ更新部32は、新たに取得するGPS位置データが前回更新された現在位置データからばらつきの範囲を超えて変化した場合に、その変化が荷物管理機器10の移動によるものと判別して、そのGPS位置データで現在位置データを更新する。この構成によれば、GPS位置データの変化がばらつきの範囲を超えたときに現在位置データを更新するので、GPS位置データのばらつきの影響を抑えて現在位置データを更新することができる。
【0056】
さらに、本実施形態では、第1データ更新部32が、新たに取得するGPS位置データが、前回更新された現在位置データからばらつきの範囲を超えて変化していないと判別した場合には、さらに、第2データ更新部33による判別を行い、荷物管理機器10の移動が検知されたと判別されれば、現在位置データを更新する。この構成によれば、第1データ更新部32の判別では、新たに取得されたGPS位置データが前回更新された現在位置データからばらつきの範囲を超えて変化しなかった場合に、その変化が実際には荷物管理機器10の移動によるものであったとしても、ばらつきによるものと判別されてしまうが、第2データ更新部33による判別により、荷物管理機器10のばらつきの範囲内での移動を見逃さずに検知して、現在位置データを更新することができる。
【0057】
また、荷物管理機器10には、荷物管理用センサ13が備えられて、荷物Pに係る物性値が計測されるので、荷物Pに係る物性値等の輸送状況も把握することができる。本実施形態では、荷物管理用センサ13として、温度センサ、湿度センサ、圧力センサ、照度センサ、加速度センサが備えられているので、荷物Pの輸送状況として、温度センサ、湿度センサにより温度や湿度、圧力センサや加速度センサにより衝撃や振動、照度センサにより荷台の開閉等を把握することができる。
【0058】
また、荷物管理機器10に無線回路15を備えて、現在位置データ及び物性値の検出結果をクラウドサーバ50に無線送信するので、荷物Pの輸送状況をクラウドサーバ50でリアルタイムで監視することができる。
【0059】
また、荷物管理機器10には、データロガー14が備えられているので、例えば、荷物Pが航空機や船舶に載せられて無線通信を行うことができない状況であっても、その間のデータをデータロガー14に蓄積して無線通信が可能となったときに一括送信することができる。また、データロガー14には、現在位置データ及び物性値の検出結果が時系列で蓄積されるので、例えば、輸送終了後に荷物Pの移動軌跡や輸送条件の検証等を行うことができる。
【0060】
また、クラウドサーバ50が、データ送信部55を備えて外部端末70に送受信可能な構成となっているので、例えば、荷物Pの輸送途中の移動軌跡や異常等を、適宜、荷物Pの出荷元や受取先、又は、輸送中のドライバーに通知することができる。
【0061】
[第2実施形態]
次に、本開示を適用した第2実施形態の位置推定装置20について説明する。以下の説明では、上記第1実施形態との相違点のみを説明し、共通する構成については重複した説明は省略する。
【0062】
上記第1実施形態の位置推定装置20では、データ処理部31がGPS位置データ及び加速度データに基づいて、現在位置データを更新する際、第1データ更新部32による判別を、第2データ更新部33による判別より先に行い、第1データ更新部32が、新たに取得するGPS位置データが、前回更新された現在位置データからばらつきの範囲を超えて変化していないと判別した場合に、第2データ更新部33による判別を行う構成であったが、本実施形態では、第2データ更新部33による判別を、第1データ更新部32による判別より先に行い、第2データ更新部33により、荷物管理機器10の移動が検知されなかったと判別された場合に、第1データ更新部32による判別を行う構成となっている。
【0063】
具体的には、本実施形態では、位置推定装置20のCPU21Aは、
図6に示す位置推定プログラムPG1Vを実行する。位置推定プログラムPG1Vは、GPSモジュール11及び加速度センサ12からGPS位置データ及び加速度データを取得する度に実行され(S21でYES)、ステップS22により、新たに取得する加速度データから、荷物管理機器10の移動が検知されたか否かを判別する。そして、移動が検知されたと判別された場合には(S22でYES)、新たに取得するGPS位置データで現在位置データを更新する(S23)。ここで、ステップS22,S23を実行しているときのCPU21Aが第2データ更新部33に相当する。
【0064】
そして、ステップS22により、荷物管理機器10の移動が検知されなかったと判別された場合には(S22でNO)、新たに取得するGPS位置データと、前回更新された現在位置データとの間にばらつきの範囲を超えた変化があるか否かを判別する。そして、新たに取得するGPS位置データがばらつきの範囲を超えて変化したと判別された場合には(S24でYES)、GPS位置データの変化はばらつきではなく荷物管理機器10の移動によるものと判断して、そのGPS位置データで現在位置データを更新する(S23)。
【0065】
一方、荷物管理機器10の移動が検知されなかったと判別され、かつ、GPS位置データの変化がばらつきの範囲にあると判別された場合には(S22でNO,S24でNO)、GPS位置データの変化は、移動によるものではないと判別され、このGPS位置データを、現在位置データとして更新せず、荷物管理機器10の現在位置は、前回更新された現在位置データをそのまま引き継ぐ(S25)。ここで、ステップS23~S25を実行しているときのCPU21Aが第1データ更新部32に相当する。
【0066】
本実施形態では、第2データ更新部33の判別を行う前に、GPS位置データと加速度データを取得していたが(S21)、ステップS21で加速度データのみを取得し、ステップS22で第2データ更新部33の判別を行った後で、GPS位置データを取得してもよい。
【0067】
本実施形態によれば、第2データ更新部33の判別だけでは、例えば、新幹線等の低振動の移動体に搭載されて移動した場合に、荷物管理機器10の移動が検知されず、現在位置データが更新されないという事態が生じてしまうことがあるが、第1データ更新部32による判別も行うことで、そのような事態が生じることを抑えて現在位置データを更新することができる。
【0068】
[第3実施形態]
上記第1実施形態及び上記第2実施形態の位置推定装置20では、データ処理部31がGPS位置データ及び加速度データに基づいて、現在位置データを更新する際、第1データ更新部32による判別、又は、第2データ更新部33による判別のうち、どちらか一方を先に行う構成であったが、本実施形態では、どちらの判別も並行して行い、第1データ更新部32により新たに取得するGPS位置データがばらつきの範囲を超えて変化したという判別、又は、第2データ更新部33により荷物管理機器10の移動が検知されたという判別、の少なくともどちらか一方の判別があった場合に、新たに取得するGPS位置データで現在位置データを更新する構成となっている。
【0069】
具体的には、本実施形態では、位置推定装置20のCPU21Aは、
図7に示す位置推定プログラムPG1Wを実行する。位置推定プログラムPG1Wは、GPSモジュール11及び加速度センサ12からGPS位置データ及び加速度データを取得する度に実行され(S31でYES)、ステップS32により、新たに取得するGPS位置データがばらつきの範囲を超えて変化したか否かの判別、及び、新たに取得する加速度データから荷物管理機器10の移動が検知されたか否かの判別を行う。そして、新たに取得するGPS位置データがばらつきの範囲を超えた変化があるとの判別、又は、荷物管理機器10の移動が検知されたとの判別のどちらか一方の判別があった場合に(S32でYES)、新たに取得するGPS位置データで現在位置データを更新する(S33)。
【0070】
そして、ステップS32により、新たに取得するGPS位置データがばらつきの範囲を超えた変化がなかったとの判別、かつ、荷物管理機器10の移動が検知されなかったとの判別の両方の判別があった場合に(S32でNO)、GPS位置データの変化は、移動によるものではないと判別され、このGPS位置データを、現在位置データとして更新せず、荷物管理機器10の現在位置は、前回更新された現在位置データをそのまま引き継ぐ(S34)。ここで、ステップS32~S34を実行しているときのCPU21Aが第1データ更新部32及び第2データ更新部33に相当する。
【0071】
[他の実施形態]
(1)前記実施形態では、第2データ更新部33は、GPS位置データが取得されたときの荷物管理機器10が移動中か否かを判別する構成であったが、GPS位置データが取得される前後の荷物管理機器10の移動を判別する構成であってもよい。この場合、トリガ生成部30は、GPSモジュール11と加速度センサ12の計測タイミングをずらして計測トリガを生成すればよい。
【0072】
(2)前記第1実施形態の位置推定装置20では、一定期間毎にGPSモジュール11及び加速度センサ12からGPS位置データ及び加速度データを取得する構成となっていたが、一定期間毎に取得されるのはGPS位置データのみとし、第1データ更新部32の判別により、新しく取得するGPS位置データが前回更新された現在位置データからばらつきの範囲を超えて変化していないと判別された場合に、加速度センサ12から加速度データを取得して第2データ更新部33による判別を行う構成であってもよい。
【0073】
具体的には、位置推定装置20のCPU21Aは、
図8に示す位置推定プログラムPG1Xを実行する。位置推定プログラムPG1Xは、GPSモジュール11からGPS位置データを取得する度に実行され(S41でYES)、新たに取得するGPS位置データと、前回更新された現在位置データとの間に、ばらつきの範囲を超えた変化があるか否かを判別する(S42)。そして、ばらつきの範囲を超えて変化したと判別された場合に、現在位置データを更新する(S42でYES,S43)。一方、ばらつきの範囲を超えて変化していないと判別された場合に(S42でNO)、加速度センサ12から加速度データを取得し(S44)、荷物管理機器10の移動の有無を判別する(S43,S45,S46)。この構成によれば、不要な加速度データの収拾が抑えられて電池の無駄な消耗を抑えることができる。
【0074】
(3)データ処理部31は、第1データ更新部32のみを有して現在位置データを更新する構成であってもよい。
【0075】
(4)前記実施形態では、第1データ更新部32及び第2データ更新部33の判別により特定した現在位置データを、データロガー14に付与していたが、第1データ更新部32及び第2データ更新部33の判別結果、例えば、第2データ更新部33の判別により得られる移動状態か否かについての情報等も、荷物Pの輸送状況に関する情報の一つとしてデータロガー14に付与してもよい。
【0076】
(5)前記実施形態では、第2データ更新部33で、加速度データとして、速度変化データや、振動データを用いて、荷物管理機器10の移動を検知していたが、加速度センサ12から移動速度を求めて、荷物管理機器10の移動を判別してもよい。これによれば、前述したような新幹線等の低振動の移動体に搭載されて移動した場合でも、移動状態と判別して現在位置データを更新することができる。
【0077】
このとき、移動速度から、徒歩等の低速移動中か、車両や列車による高速移動中か等の判別も行って、輸送状況に関する情報の一つとして取得し、データロガー14に付与してもよい。
【0078】
(6)前記実施形態では、第2データ更新部33で加速度センサ12を用いて移動の有無を判別していたが、移動の有無を検知するものであればこれに限定されない。
【0079】
(7)前記実施形態では、データロガー14の保存部36に蓄積された輸送状況データD1を、クラウドサーバ50に送信した後には削除していたが、削除せず、保存したままにしてもよい。
【0080】
また、保存部36を、USBメモリやSDカード等の可搬の記憶媒体としてもよい。
【0081】
(8)位置推定装置20は、データ処理部31が現在位置データを更新する度にそのデータを無線送信してもよい。このとき、荷物管理用センサ13により計測された物性値も計測する度に無線送信すればよい。
【0082】
(9)前記実施形態では、データ処理部31が、第1データ更新部32と第2データ更新部33とを有してそれらの判別結果に基づいて、現在位置データを更新する構成であったが、第1データ更新部32及び第2データ更新部33とは別の第3のデータ更新部も備えて、3つのデータ更新部の判別結果に基づいて現在位置データを更新する構成であってもよい。第3のデータ更新部としては、例えば、現在位置データが更新されてから予め定められた時間が経過したか否かを判別するものであり、第1データ更新部32及び第2データ更新部33によりGPS位置データの変化は、移動によるものではないと判別されたとしても、第3のデータ更新部により予め定められた時間が経過していたら、現在位置データを更新するようにしてもよい。
【0083】
(10)クラウドサーバ50の識別番号記憶部54Cに、荷物Pの情報として、例えば、荷物の種別や外観写真、必要な環境(要冷蔵、天地無用等)等を格納しておき、データ解析部54は、これらの情報に基づいて異常を判定してもよい。
【0084】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0085】
10 荷物管理機器
11 GPSモジュール
12 加速度センサ(移動検知センサ)
13 荷物管理用センサ
14 データロガー
15 無線回路
20 位置推定装置
32 第1データ更新部
33 第2データ更新部
50 クラウドサーバ(荷物監視装置)
55 データ送信部
70 外部端末
100 荷物監視システム
101 通信ネットワーク
P 荷物
【手続補正書】
【提出日】2022-07-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPSモジュール(11)から順次入力される複数のGPS位置データから一部を使用して現在位置データを更新し、出力する位置推定装置(20)であって、
新たに取得する前記GPS位置データと前記現在位置データとを比較してその間に、前記GPS位置データのばらつきの範囲を超えた変化があるか否かを判別し、前記ばらつきの範囲として予め定められた一定範囲を超えた変化があると判別される場合に、そのGPS位置データで前記現在位置データを更新する第1データ更新部(32)と、
前記位置推定装置(20)の振動を含む移動の有無を検知する移動検知センサ(12)から検出結果を取得し、前記位置推定装置(20)の移動が検知されたか否かを判別し、前記移動が検知されたと判別される場合に、前記現在位置データを、新たに取得する前記GPS位置データで更新する第2データ更新部(33)と、を備える位置推定装置(20)。
【請求項2】
前記第1データ更新部(32)による判別を、前記第2データ更新部(33)による判別より先に行い、前記第1データ更新部(32)が前記変化がないと判別したことを条件にして、前記第2データ更新部(33)による判別を行う請求項1に記載の位置推定装置(20)。
【請求項3】
前記第2データ更新部(33)による判別を、前記第1データ更新部(32)による判別より先に行い、前記第2データ更新部(33)が前記移動が検知されなかったと判別したことを条件にして、前記第1データ更新部(32)による判別を行う請求項1に記載の位置推定装置(20)。
【請求項4】
前記移動検知センサ(12)は、加速度センサである請求項1から3の何れか1に記載の位置推定装置(20)。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1の請求項に記載の位置推定装置(20)と、GPSモジュール(11)と、振動を含む移動の有無を検知する移動検知センサ(12)と、荷物(P)に係る物性値を計測するための荷物管理用センサ(13)と、を有し、前記荷物(P)と共に移動する荷物管理機器(10)。
【請求項6】
前記現在位置データ及び前記物性値の検出結果を記憶するデータロガー(14)を備える請求項5に記載の荷物管理機器(10)。
【請求項7】
前記現在位置データ及び前記物性値の検出結果を無線送信する無線回路(15)を備える請求項5又は6に記載の荷物管理機器(10)。
【請求項8】
請求項7に記載の荷物管理機器(10)と、
前記荷物管理機器(10)から前記現在位置データ及び前記物性値の検出結果を無線受信して蓄える荷物監視装置(50)と、を備える荷物監視システム(100)。
【請求項9】
前記荷物監視装置(50)には、前記現在位置データ及び前記物性値の検出結果に基づく送信データを、通信ネットワーク(101)を介して外部端末(70)に送信するデータ送信部(55)が備えられている請求項8に記載の荷物監視システム(100)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、GPSモジュール(11)から順次入力される複数のGPS位置データから一部を使用して現在位置データを更新し、出力する位置推定装置(20)であって、新たに取得する前記GPS位置データと前記現在位置データとを比較してその間に、前記GPS位置データのばらつきの範囲を超えた変化があるか否かを判別し、前記ばらつきの範囲として予め定められた一定範囲を超えた変化があると判別される場合に、そのGPS位置データで前記現在位置データを更新する第1データ更新部(32)と、前記位置推定装置(20)の振動を含む移動の有無を検知する移動検知センサ(12)から検出結果を取得し、前記位置推定装置(20)の移動が検知されたか否かを判別し、前記移動が検知されたと判別される場合に、前記現在位置データを、新たに取得する前記GPS位置データで更新する第2データ更新部(33)と、を備える位置推定装置(20)である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
請求項2の発明は、前記第1データ更新部(32)による判別を、前記第2データ更新部(33)による判別より先に行い、前記第1データ更新部(32)が前記変化がないと判別したことを条件にして、前記第2データ更新部(33)による判別を行う請求項1に記載の位置推定装置(20)である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
請求項3の発明は、前記第2データ更新部(33)による判別を、前記第1データ更新部(32)による判別より先に行い、前記第2データ更新部(33)が前記移動が検知されなかったと判別したことを条件にして、前記第1データ更新部(32)による判別を行う請求項1に記載の位置推定装置(20)である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
請求項4の発明は、前記移動検知センサ(12)は、加速度センサである請求項1から3の何れか1の請求項に記載の位置推定装置(20)である。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
請求項5の発明は、請求項1から4の何れか1に記載の位置推定装置(20)と、GPSモジュール(11)と、振動を含む移動の有無を検知する移動検知センサ(12)と、荷物(P)に係る物性値を計測するための荷物管理用センサ(13)と、を有し、前記荷物(P)と共に移動する荷物管理機器(10)である。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
請求項6の発明は、前記現在位置データ及び前記物性値の検出結果を記憶するデータロガー(14)を備える請求項5に記載の荷物管理機器(10)である。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
請求項7の発明は、前記現在位置データ及び前記物性値の検出結果を無線送信する無線回路(15)を備える請求項5又は6に記載の荷物管理機器(10)である。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
請求項8の発明は、請求項7に記載の荷物管理機器(10)と、前記荷物管理機器(10)から前記現在位置データ及び前記物性値の検出結果を無線受信して蓄える荷物監視装置(50)と、を備える荷物監視システム(100)である。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
請求項9の発明は、前記荷物監視装置(50)には、前記現在位置データ及び前記物性値の検出結果に基づく送信データを、通信ネットワーク(101)を介して外部端末(70)に送信するデータ送信部(55)が備えられている請求項8に記載の荷物監視システム(100)である。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
請求項1の発明によれば、位置推定装置(20)は、GPSモジュール(11)から順次入力される複数のGPS位置データから一部を使用して現在位置データを更新する際、新たに取得するGPS位置データと、前回更新された現在位置データとを比較してその間に、ばらつきの範囲を超えた変化があるか否かを判断して、ばらつきの範囲として予め定められた一定範囲を超えた変化があると判別される場合に、そのGPS位置データで現在位置データを更新する第1データ更新部(32)を備える。つまり、第1データ更新部(32)では、GPS位置データで特定される位置は、実際には静止状態であっても一定範囲のばらつきが生じるため、新たに取得するGPS位置データが、前回更新された現在位置データからばらつきの範囲を超えて変化しなかった場合に、その変化は位置推定装置(20)の移動によるものではなくばらつきによるものと判別する一方、ばらつきの範囲を超えて変化した場合に、その変化は位置推定装置(20)の移動によるものと判別する。そして、ばらつきによるものと判断した場合には現在位置データを更新せず、移動によるものと判断した場合に、そのGPS位置データで現在位置データを更新する。これにより、本開示の位置推定装置(20)では、GPS位置データのばらつきの影響を抑えて現在位置データを更新することができる。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
そして、本開示の位置推定装置(20)では、第1データ更新部(32)に加えて、位置推定装置(20)と共に移動して振動を含む移動の有無を検知する移動検知センサ(12)から検出結果を取得し、位置推定装置(20)の移動が検知されたか否かを判別し、移動が検知されたと判別される場合に、現在位置データを、新たに取得するGPS位置データで更新する第2データ更新部(33)も備えているので、第1データ更新部(32)により、新たに取得するGPS位置データが、前回更新された現在位置データからばらつきの範囲を超えた変化がないと判別された場合であっても、荷物管理機器(10)の移動が検知されたと判別されれば、現在位置データを更新することができる。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
即ち、第1データ更新部(32)のみ備えた構成では、新たに取得するGPS位置データが、前回更新された現在位置データからばらつきの範囲内で実際に移動していたとしても、その移動をばらつきによるものと判別して現在位置データを更新しないが、本開示の位置推定装置(20)では、第2データ更新部(33)も備えて、ばらつきの範囲内での移動を検知して、現在位置データを更新することができる。このとき、請求項2の構成のように、第1データ更新部(32)が変化がないと判別したことを条件にして、第2データ更新部(33)による判別を行う構成とすれば、不要な加速度データの収拾が抑えられて電池の無駄な消耗を抑えることができる。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
また、請求項3の構成のように、第2データ更新部(33)による判別を、第1データ更新部(32)による判別より先に行い、第2データ更新部(33)が移動が検知されなかったと判別したことを条件にして、第1データ更新部(32)による判別を行ってもよい。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
ここで、移動検知センサ(12)として、例えば、加速度センサ(12)を用いることができ(請求項4の発明)、加速度センサ(12)が検出する速度変化から移動を検知してもよいし、移動中には振動を伴うことから振動を検出し、振動により移動を検知してもよい。また、移動速度を算出して移動を検知してもよい。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
そして、本開示の位置推定装置(20)を、GPSモジュール(11)と、移動検知センサ(12)と、荷物(P)に係る物性値を計測するための荷物管理用センサ(13)と共に備えて荷物(P)と共に移動する荷物管理機器(10)として用いれば(請求項5の発明)、現在位置データにより荷物(P)の移動軌跡、荷物管理用センサ(13)により荷物(P)に係る物性値等の輸送状況を把握することができる。なお、荷物管理用センサ(13)として、例えば、温度センサ、湿度センサ、圧力センサ、照度センサ、加速度センサ等が挙げられ、温度センサ、湿度センサにより温度や湿度、圧力センサや加速度センサにより衝撃や振動、照度センサにより荷台の開閉等を把握することができる。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
さらに、請求項7のように、荷物管理機器(10)に無線回路(15)を備えて、現在位置データ及び荷物(P)に係る物性値の検出結果を無線送信する構成とし、例えば、請求項8のように、荷物監視装置(100)がそれら現在位置データ及び荷物(P)に係る物性値の検出結果を無線受信して蓄える荷物監視システム(100)とすれば、荷物(P)の輸送状況を荷物監視装置(50)でリアルタイムで監視することができる。
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
また、請求項6のように、荷物管理機器(10)にデータロガー(14)を備えれば、例えば、荷物(P)が航空機や船舶に載せられて無線通信を行うことができない状況であっても、その間のデータをデータロガー(14)に蓄積して無線通信が可能となったときに一括送信することができる。また、データロガー(14)には、現在位置データ及び荷物(P)に係る物性値の検出結果を時系列で蓄積できるので、例えば、輸送終了後に荷物(P)の移動軌跡や輸送条件の検証等を行うことができる。
【手続補正20】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
また、請求項9のように、現在位置データ及び荷物(P)に係る物性値の検出結果に基づく送信データを、通信ネットワーク(101)を介して外部端末(70)に送信する構成とすれば、例えば、荷物(P)の輸送途中の移動軌跡や異常等を、適宜、荷物(P)の出荷元や受取先、又は、輸送中のドライバーに通知することができる。