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特開2023-86572蓄電池制御装置、蓄電池制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086572
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】蓄電池制御装置、蓄電池制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20230615BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230615BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20230615BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20230615BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 130
H02J7/35 K
H02J7/34 G
H02J9/06 120
H02J3/38 180
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201184
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂手木 直也
(72)【発明者】
【氏名】坂倉 早紀
(72)【発明者】
【氏名】環貫 陽
【テーマコード(参考)】
5G015
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G015GB01
5G015JA53
5G015JA55
5G066AA02
5G066AE03
5G066AE09
5G066HA11
5G066HA15
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA02
5G066JA04
5G066JB03
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA08
5G503CB13
5G503CC02
5G503DA05
5G503DA07
5G503EA05
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】ピーク超過及び余剰電力の予測による、蓄電池の蓄電残量制御において、停電予測を含む特定の条件に応じて必要十分な目標蓄電池出力値を設定して、前記蓄電池の残量を制御する。
【解決手段】蓄電池の蓄電量制御が推移予測に準じて、適正な制御が行われているとき、蓄電池残量は成り行きの位置となる。そこで、ピーク超過、余剰充電のどちらも予測されない場合を第3条件成立とし、蓄電残量上限値まで充電を行うようにした。ピーク超過、余剰充電のどちらも予測されない場合、蓄電残量回復のための充電を指示する。ピーク放電と余剰充電に対応するという本来の目的の制御を実行しながら、停電等、電力が必要となる状況に向けて充電量を確保することができる。第3条件成立を、停電予測時とすれば、より有用な蓄電池残量とすることができる。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷設備で消費する電力供給源として、系統からの受電による第1の電力、再生可能エネルギー発電による第2の電力、及び蓄電池からの放電による第3の電力を備え、前記第1の電力が受電電力の上限値を超えない第1条件、及び、前記第2の電力の前記系統への逆潮流を回避する第2条件を維持するための、前記第3の電力を制御する蓄電池制御装置であって、
負荷予測及び発電予測に基づくピーク超過及び余剰電力の予測結果から前記蓄電池の残量の推移を予測し、ピーク超過時の放電に対して前記蓄電池の残量が不足する場合は事前に充電を行うと共に、余剰充電に対して前記蓄電池の残量が多過ぎる場合は事前に放電を行うための目標蓄電池出力値を設定して、前記蓄電池の残量を制御する制御部と、
前記制御部によって前記蓄電池の残量が充放電不要な適正範囲内に制御されている状態で、前記制御部で制御したときの前記蓄電池の残量と、予め予測した将来必要となる蓄電池の残量とに所定以上の差がある場合に第3条件の成立とし、当該第3条件が成立した場合に、前記目標蓄電池出力値を補正する補正部と、
を有する蓄電池制御装置。
【請求項2】
負荷設備で消費する電力供給源として、系統からの受電による第1の電力、再生可能エネルギー発電による第2の電力、及び蓄電池からの放電による第3の電力を備え、前記第1の電力が受電電力の上限値を超えない第1条件、及び、前記第2の電力の前記系統への逆潮流を回避する第2条件を維持するための、前記第3の電力を制御する蓄電池制御装置であって、
将来の一定期間を対象として、前記負荷設備で消費する負荷電力の時系列の推移予測と、前記第2の電力の発電量の時系列の推移予測とから、前記蓄電池の蓄電量下限値及び蓄電量上限値を演算すると共に、前記負荷設備で電力が消費されるとき、前記第1条件を維持するための蓄電池充電上限値及び前記第2条件を維持するための蓄電池放電上限値のそれぞれを決定し、前記蓄電池の残量と前記蓄電量下限値及び蓄電量上限値との関係に基づき、充電するときの前記蓄電池充電上限値、放電するときの前記蓄電池放電上限値、並びに、前記第1条件及び第2条件の下では充電も放電も実行しない値、の少なくとも3種類から、目標蓄電池出力値を選択して、前記蓄電池の残量を制御する制御部と、
前記制御部によって前記蓄電池の残量が充放電不要な適正範囲内に制御されている状態で、前記制御部で制御したときの前記蓄電池の残量と、予め予測した将来必要となる蓄電池の残量とに所定以上の差がある場合に第3条件の成立とし、当該第3条件が成立した場合に、前記目標蓄電池出力値を補正する補正部と、
を有する蓄電池制御装置。
【請求項3】
負荷設備で消費する電力供給源として、系統からの受電による第1の電力、再生可能エネルギー発電による第2の電力、及び蓄電池からの放電による第3の電力を備え、前記第1の電力が受電電力の上限値を超えない第1条件、及び、前記第2の電力の前記系統への逆潮流を回避する第2条件を維持するための、前記第3の電力を制御する蓄電池制御装置であって、
将来の一定期間を対象として、前記負荷設備で消費する負荷電力の時系列の推移予測と、前記第2の電力の発電量の時系列の推移予測とから、前記第1の電力の受電電力の上限値超過分を正の数、前記第2の電力の系統への逆潮流分を負の数として、前記正の数及び前記負の数を区別して時系列で積算する積算部と、
前記積算部において、時系列で積算していく電力量の推移の正の数の最大値と、負の数の最小値とを抽出する抽出部と、
前記抽出部で抽出した最大値に基づき前記蓄電池の蓄電量下限値を演算し、かつ、前記抽出部で抽出した最小値に基づき前記蓄電池の蓄電量上限値を演算する演算部と、
前記第1の電力、前記第2の電力、及び前記第3の電力が、前記負荷設備で消費されるとき、前記第1条件を維持するための蓄電池充電上限値、並びに、前記第2条件を維持するための蓄電池放電上限値のそれぞれを決定する決定部と、
前記蓄電池の残量と、前記蓄電量下限値及び蓄電量上限値との関係に基づき、充電するときの前記蓄電池充電上限値、放電するときの前記蓄電池放電上限値、並びに、前記第1条件及び第2条件の下では充電も放電も実行しない値、の少なくとも3種類から、目標蓄電池出力値を選択する選択部と、
前記選択部によって前記蓄電池の残量が充放電不要な適正範囲内に制御されている状態で、前記選択部で選択したときの前記蓄電池の残量と、予め予測した将来必要となる蓄電池の残量とに所定以上の差がある場合に第3条件の成立とし、当該第3条件が成立した場合に、前記目標蓄電池出力値を補正する補正部と、
を有する蓄電池制御装置。
【請求項4】
前記補正部が、
前記第3条件が成立した場合に補正する蓄電池出力値の目標として、予め定めた前記蓄電池の残量の上限又は下限に設定する、請求項1~請求項3の何れか1項記載の蓄電池制御装置。
【請求項5】
観測地点の風速情報、雷発生情報、降雪情報、及び浸水情報の少なくとも1つの情報を含む気象条件情報に基づき、過去の気象条件情報と停電情報との相関関係に基づき、少なくとも停電発生の有無を判定する判定情報を取得する取得部をさらに有し、
前記補正部が、
前記取得部で取得した判定情報が停電発生有りの場合に、前記第3条件の成立と判断し、補正する蓄電池出力値の目標として、予め定めた前記蓄電池の残量の上限に設定する、請求項1~請求項3の何れか1項記載の蓄電池制御装置。
【請求項6】
観測地点の風速情報、雷発生情報、降雪情報、及び浸水情報の少なくとも1つの情報を含む気象条件情報に基づき、過去の気象条件情報と停電情報との相関関係に基づき、少なくとも停電発生の有無を判定する判定情報を取得する取得部をさらに有し、
前記取得部で取得した判定情報が停電発生有りの場合に、前記第1条件、前記第2条件、及び前記第3条件に基づく蓄電池出力値制御の前に、最優先で蓄電池出力値を、予め定めた前記蓄電池の残量の上限に設定する、請求項1~請求項3記載の蓄電池制御装置。
【請求項7】
コンピュータに、
請求項1~請求項6の何れか1項記載の蓄電池制御装置の各部として機能させるための蓄電池制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、系統電力、太陽光発電に代表される再生可能エネルギー発電による電力、及び蓄電池から受ける電力を併用して負荷に電力を供給する場合に、特に、蓄電池電力から受ける電力を制御する蓄電池制御装置及び蓄電池制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、系統電力から受電する電力と、太陽光発電(再生可能エネルギーの代表例)による電力と、蓄電池からの放電による電力と、を併用する電力システムが適用されている。
【0003】
特許文献1には、太陽光発電、建物電力負荷の予測から、受電電力を予測することが記載されている。
【0004】
特許文献1では、受電電力の予測から、余剰電力に対して蓄電池の空き容量が不足する際、必要な空き容量が、余剰発生までの負荷電力よりも大きく、余剰発生までの時間内に空き容量を確保できないことが予想される場合、逆潮流電力のピークが最小となるように平準化して逆潮流を行うことが記載されている。
【0005】
また、特許文献1では、ピーク電力が予測され、ピーク電力量の総量に対して蓄電残量が小さく、またピーク発生までの時間内にピーク電力以下で充電できる電力量が必要な蓄電残量より小さく、必要な蓄電残量を確保できないことが予想される場合、ピーク電力が最小となるように平準化して設定されたピーク電力を超過することが記載されている。
【0006】
この特許文献1に代表される方式では、予測が外れた場合、無駄に逆潮流やピーク超過を発生させてしまう懸念がある。また、逆潮流もピーク超過も予想されない場合、蓄電残量が低い状態であっても充電が行われないため、停電時への対策として十分ではない。
【0007】
なお、参考として、特許文献2には、負荷予測、発電予測から、ピーク超過、余剰電力を予測することが記載され、予測から蓄電残量の推移を判定し、ピーク超過時の放電に対して残量が不足する場合は、事前に充電を行うと共に、余剰充電に対して空き容量が不足する場合は、事前に放電を行うことが記載されているが、予測上、ピーク超過、余剰電力が発生しないとき(特許文献2の目的が達成されているとき)は、予め定めた蓄電残量の許容範囲内において、所謂「成り行き」となり、停電への対応として十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-284586号公報
【特許文献2】特開2019-193480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ピーク超過及び余剰電力の予測による、蓄電池の蓄電残量制御において、停電予測を含む特定の条件に応じて必要十分な目標蓄電池出力値を設定して、前記蓄電池の残量を制御することができる蓄電池制御装置、蓄電池制御プログラムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る蓄電池制御装置は、負荷設備で消費する電力供給源として、系統からの受電による第1の電力、再生可能エネルギー発電による第2の電力、及び蓄電池からの放電による第3の電力を備え、前記第1の電力が受電電力の上限値を超えない第1条件、及び、前記第2の電力の前記系統への逆潮流を回避する第2条件を維持するための、前記第3の電力を制御する蓄電池制御装置であって、将来の一定期間を対象として、前記負荷設備で消費する負荷電力の時系列の推移予測と、前記第2の電力の発電量の時系列の推移予測とから、前記蓄電池の蓄電量下限値及び蓄電量上限値を演算すると共に、前記負荷設備で電力が消費されるとき、前記第1条件を維持するための蓄電池充電上限値及び前記第2条件を維持するための蓄電池放電上限値のそれぞれを決定し、前記蓄電池の残量と前記蓄電量下限値及び蓄電量上限値との関係に基づき、充電するときの前記蓄電池充電上限値、放電するときの前記蓄電池放電上限値、並びに、充電も放電も実行しない値、の少なくとも3種類から、目標蓄電池出力値を選択して、蓄電池の残量を制御する制御部、を有している。
【0011】
本発明によれば、負荷電力及び第2の電力の時系列の推移予測から、蓄電池の蓄電量下限値及び蓄電量上限値を演算すると共に、第1条件を維持するための蓄電池充電上限値及び第2条件を維持するための蓄電池放電上限値を決定し、蓄電池の残量との関係に基づき、充電するときの前記蓄電池充電上限値、放電するときの前記蓄電池放電上限値、並びに、充電も放電も実行しない、の少なくとも3種類から、目標蓄電池出力値を選択して、蓄電池の残量を制御する。
【0012】
これにより、系統から受ける電力、再生可能エネルギー発電による電力、蓄電池から放電された電力を併用する場合に、日照時間や負荷の変動の推移の予測による計画電力の推定ロジックを確立し、ピークカットの担保と商用電力系統への売電回避を両立することができる。
【0013】
第1の発明に係る蓄電池制御装置は、負荷設備で消費する電力供給源として、系統からの受電による第1の電力、再生可能エネルギー発電による第2の電力、及び蓄電池からの放電による第3の電力を備え、前記第1の電力が受電電力の上限値を超えない第1条件、及び、前記第2の電力の前記系統への逆潮流を回避する第2条件を維持するための、前記第3の電力を制御する蓄電池制御装置であって、負荷予測及び発電予測に基づくピーク超過及び余剰電力の予測結果から前記蓄電池の残量の推移を予測し、ピーク超過時の放電に対して前記蓄電池の残量が不足する場合は事前に充電を行うと共に、余剰充電に対して前記蓄電池の残量が多過ぎる場合は事前に放電を行うための目標蓄電池出力値を設定して、前記蓄電池の残量を制御する制御部と、前記制御部によって前記蓄電池の残量が充放電不要な適正範囲内に制御されている状態で、前記制御部で制御したときの前記蓄電池の残量と、予め予測した将来必要となる蓄電池の残量とに所定以上の差がある場合に第3条件の成立とし、当該第3条件が成立した場合に、前記目標蓄電池出力値を補正する補正部と、を有している。
【0014】
第2の発明に係る蓄電池制御装置は、負荷設備で消費する電力供給源として、系統からの受電による第1の電力、再生可能エネルギー発電による第2の電力、及び蓄電池からの放電による第3の電力を備え、前記第1の電力が受電電力の上限値を超えない第1条件、及び、前記第2の電力の前記系統への逆潮流を回避する第2条件を維持するための、前記第3の電力を制御する蓄電池制御装置であって、将来の一定期間を対象として、前記負荷設備で消費する負荷電力の時系列の推移予測と、前記第2の電力の発電量の時系列の推移予測とから、前記蓄電池の蓄電量下限値及び蓄電量上限値を演算すると共に、前記負荷設備で電力が消費されるとき、前記第1条件を維持するための蓄電池充電上限値及び前記第2条件を維持するための蓄電池放電上限値のそれぞれを決定し、前記蓄電池の残量と前記蓄電量下限値及び蓄電量上限値との関係に基づき、充電するときの前記蓄電池充電上限値、放電するときの前記蓄電池放電上限値、並びに、前記第1条件及び第2条件の下では充電も放電も実行しない値、の少なくとも3種類から、目標蓄電池出力値を選択して、前記蓄電池の残量を制御する制御部と、前記制御部によって前記蓄電池の残量が充放電不要な適正範囲内に制御されている状態で、前記制御部で制御したときの前記蓄電池の残量と、予め予測した将来必要となる蓄電池の残量とに所定以上の差がある場合に第3条件の成立とし、当該第3条件が成立した場合に、前記目標蓄電池出力値を補正する補正部と、を有している。
【0015】
第3の発明に係る蓄電池制御装置は、負荷設備で消費する電力供給源として、系統からの受電による第1の電力、再生可能エネルギー発電による第2の電力、及び蓄電池からの放電による第3の電力を備え、前記第1の電力が受電電力の上限値を超えない第1条件、及び、前記第2の電力の前記系統への逆潮流を回避する第2条件を維持するための、前記第3の電力を制御する蓄電池制御装置であって、将来の一定期間を対象として、前記負荷設備で消費する負荷電力の時系列の推移予測と、前記第2の電力の発電量の時系列の推移予測とから、前記第1の電力の受電電力の上限値超過分を正の数、前記第2の電力の系統への逆潮流分を負の数として、前記正の数及び前記負の数を区別して時系列で積算する積算部と、前記積算部において、時系列で積算していく電力量の推移の正の数の最大値と、負の数の最小値とを抽出する抽出部と、前記抽出部で抽出した最大値に基づき前記蓄電池の蓄電量下限値を演算し、かつ、前記抽出部で抽出した最小値に基づき前記蓄電池の蓄電量上限値を演算する演算部と、前記第1の電力、前記第2の電力、及び前記第3の電力が、前記負荷設備で消費されるとき、前記第1条件を維持するための蓄電池充電上限値、並びに、前記第2条件を維持するための蓄電池放電上限値のそれぞれを決定する決定部と、前記蓄電池の残量と、前記蓄電量下限値及び蓄電量上限値との関係に基づき、充電するときの前記蓄電池充電上限値、放電するときの前記蓄電池放電上限値、並びに、前記第1条件及び第2条件の下では充電も放電も実行しない値、の少なくとも3種類から、目標蓄電池出力値を選択する選択部と、前記選択部によって前記蓄電池の残量が充放電不要な適正範囲内に制御されている状態で、前記選択部で選択したときの前記蓄電池の残量と、予め予測した将来必要となる蓄電池の残量とに所定以上の差がある場合に第3条件の成立とし、当該第3条件が成立した場合に、前記目標蓄電池出力値を補正する補正部と、を有している。
【0016】
第1の発明、第2の発明、及び第3の発明によれば、補正部では、制御部によって蓄電池の残量が充放電不要な適正範囲内に制御されている状態で、制御部で制御したときの蓄電池の残量と、予め予測した将来必要となる蓄電池の残量とに所定以上の差がある場合に第3条件の成立とし、当該第3条件が成立した場合に、目標蓄電池出力値を補正する。
【0017】
この補正部の補正により、制御部で許容範囲に制御された蓄電池の残量を、近い将来(例えば、停電等によって通常時よりも蓄電池の電力が必要となる場合が予測される将来)に対して、適正な蓄電池の残量を維持しておくことが可能となる。
【0018】
このため、ピーク超過及び余剰電力の予測による、蓄電池の蓄電残量制御において、停電予測を含む特定の条件に応じて必要十分な目標蓄電池出力値を設定して、前記蓄電池の残量を制御することができる。
【0019】
第1の発明、第2の発明、及び第3の発明の何れかの発明において、前記補正部が、前記第3条件が成立した場合に補正する蓄電池出力値の目標として、予め定めた前記蓄電池の残量の上限又は下限に設定することを特徴としている。
【0020】
制御部での制御許容範囲を逸脱することなく、所謂、蓄電池のデマンド予測制御と停電等特定条件時蓄電池残量制御とを両立することができる。
【0021】
第1の発明、第2の発明、及び第3の発明の何れかの発明において、観測地点の風速情報、雷発生情報、降雪情報、及び浸水情報の少なくとも1つの情報を含む気象条件情報に基づき、過去の気象条件情報と停電情報との相関関係に基づき、少なくとも停電発生の有無を判定する判定情報を取得する取得部をさらに有し、前記補正部が、前記取得部で取得した判定情報が停電発生有りの場合に、前記第3条件の成立と判断し、補正する蓄電池出力値の目標として、予め定めた前記蓄電池の残量の上限に設定することを特徴としている。
【0022】
取得部では、観測地点の風速情報、雷発生情報、降雪情報、及び浸水情報の少なくとも1つの情報を含む気象条件情報に基づき、過去の気象条件情報と停電情報との相関関係に基づき、少なくとも停電発生の有無を判定する判定情報を取得する。
【0023】
すなわち、第3条件の成立を、停電予測に特化することで、蓄電池の残量を、停電予測に準じて、予め必要量(例えば、BCP(Business Continuity Plan)で必要とする容量)を確保することができる。
【0024】
第1の発明、第2の発明、及び第3の発明の何れかの発明において、観測地点の風速情報、雷発生情報、降雪情報、及び浸水情報の少なくとも1つの情報を含む気象条件情報に基づき、過去の気象条件情報と停電情報との相関関係に基づき、少なくとも停電発生の有無を判定する判定情報を取得する取得部をさらに有し、前記取得部で取得した判定情報が停電発生有りの場合に、第1の条件、第2の条件、及び第3の条件に基づく蓄電池出力値制御の前に、最優先で前記蓄電池出力値を、予め定めた前記蓄電池の残量の上限に設定することを特徴としている。
【0025】
例えば、停電等の非常事態に、十分な蓄電池の残量を確保することができる。
【0026】
本発明の蓄電池制御プログラムは、コンピュータに、上記蓄電池制御装置の各部として機能させるためのプログラムである。
【0027】
本発明によれば、目標電力を予測し、この目標電力と現在電力との差分で、蓄電池の放電を制御することで、第1の電力が受電電力の上限値を超過しないようにする第1条件、及び、第2の電力の系統への逆潮流を回避する第2条件を維持することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明した如く本発明では、ピーク超過及び余剰電力の予測による、蓄電池の蓄電残量制御において、停電予測を含む特定の条件に応じて必要十分な目標蓄電池出力値を設定して、前記蓄電池の残量を制御することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本実施の形態に係る蓄電池制御が実行される需要家の設備を示す概略図である。
図2】本実施の形態に係る電力供給制御装置の制御ブロック図である。
図3】本実施の形態に係る蓄電池制御を実行するための電力供給制御の一部の流れを示す機能ブロック図である。
図4】本実施の形態に係る蓄電池制御を実行するための電力供給制御の流れの他の一部を示す機能ブロック図である。
図5】本実施の形態に係る必要蓄電残量演算ルーチンを示す制御フローチャートである。
図6】本実施の形態に係る蓄電池出力制御ルーチンを示す制御フローチャートである。
図7】本実施の形態に係る図5のステップ178における、蓄電池出力補正処理制御サブルーチンを示すフローチャートである
図8】第1条件、第2条件、及び第3条件の各々における蓄電残残量の推移を示す特性図である。
図9】(A)は蓄電池32の残量のレベル表示特性図、(B)は蓄電池残量計測値S-計画電力P特性図である。
図10】蓄電池制御装置における、図7のフローチャートの処理によって得られた、補正蓄電池出力X’に基づく、充放電の制御の流れを示すフローチャートである。
図11】本実施の形態の変形例1に係る蓄電池制御装置における、図7のフローチャートの処理によって得られた、補正蓄電池出力X’に基づく、充放電の制御の流れを示すフローチャートである。
図12】本実施の形態の変形例1に係る気象情報取得割り込みルーチンを示す制御フローチャートである。
図13】停電等、電力が必要となる時期を予測した場合の停電等特定条件時蓄電池残量制御の実施例を示すタイミングチャートである。
図14】実施例に係る、停電に特化した場合における、第3条件成立による蓄電池残量の回復の効果について説明したタイミングチャートである。
図15】本実施の形態の変形例2に係る蓄電池制御装置における、充放電の制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1に示される如く、系統電力10から受電する需要側12が備える負荷設備14へ電力を供給するための電力配線系統の一例を示している。なお、需要側12としては、例えば、大中小の工場、住宅、ビルディング等が挙げられる。
【0031】
需要側12は、主電力計16を備えており、当該主電力計16の入力側には、系統電力10から電力(第1の電力)が供給されるように配線されている。
【0032】
主電力計16の出力側は、受電設備18に接続されている。受電設備18は、例えば、ブレーカーや漏電遮断機等を含み、負荷設備14に電力を分配する役目を有する。
【0033】
本実施の形態における負荷設備14は、例えば住宅を例にとると、空調設備及び照明設備等がある。
【0034】
負荷設備14には、受電設備18から、負荷設備14用の電力計20及び変圧器22を介して、電力が供給されるようになっている。空調設備や照明設備においても同様である。
【0035】
また、本実施の形態の需要側12は、再生可能エネルギー発電として太陽光発電(以下、必要に応じてPV発電という場合がある)システムを有している。
【0036】
太陽光発電による電力は、系統電力からの受電による電力である第1の電力に対して、第2の電力という位置付けとなる。
【0037】
太陽光発電システムは、太陽光発電デバイス24を備えている。太陽光発電デバイス24は、太陽光の光を受けて充電する役目を有する。
【0038】
太陽光発電デバイス24は、パワーコンディショナー26、変圧器28、及びPV用の電力計30を介して、受電設備18に接続されている。
【0039】
さらに、本実施の形態の需要側12は、蓄電池32を備えている。蓄電池32は、充電及び放電(以下、総称する場合、「充放電」という)が可能である。
【0040】
蓄電池32は、充電の際、蓄電池用の電力計34、変圧器36、及びパワーコンディショナー38を介して、電力が供給されるようになっている。また、蓄電池32は、放電の際、第3の電力として、負荷設備14へ電力を供給する。
【0041】
蓄電池32の充放電は、蓄電池制御装置40からの指示で実行されるようになっている。
【0042】
主電力計16、電力計20、電力計30、電力計34、受電設備18、及び蓄電池制御装置40は、電力供給制御装置42に接続されている。電力供給制御装置42は、負荷設備14、並びに、蓄電池32を対象とした充放電制御を実行すると共に、受電設備18を介して、太陽光発電システムによる発電状態を監視する。
【0043】
すなわち、電力供給制御装置42では、以下の電力供給制御を実行する。
(電力供給制御1) 太陽光発電の発電量の自家消費
(電力供給制御2) ピークカットの担保
【0044】
本実施の形態では、系統電力10、太陽光発電デバイス24、及び蓄電池32において、系統電力10の上限値を超えない第1条件、及び、太陽光発電デバイス24の系統電力10への逆潮流を回避する第2条件を維持するための、前記蓄電池32電力を制御することを主制御として実行する。加えて、本実施の形態では、ピーク超過、余剰充電のどちらも予測されない場合を、第3条件成立(特に、空き容量が不要な場合)と定義し、蓄電残量上限値まで充電を行う。
【0045】
図8は、第1条件、第2条件、及び第3条件の各条件において、本実施の形態の制御を実行しない場合(図8の左欄)と、実行した場合(図8の右欄)との比較を示す特性図である。
【0046】
詳細な後述するが、図8にそれぞれの条件による充放電制御の概略を示す。
(第1条件) ピーク放電による枯渇が予想される場合には、蓄電残量を上げる。
(第2条件) 余剰充電による満充電が予想される場合には、蓄電残量を下げる。
(第3条件) ピーク超過も余剰電力も発生しない場合は、上限値に到達するまで充電を行う。
【0047】
図2に示される如く、電力供給制御装置42は、マイクロコンピュータ50を備えている。マイクロコンピュータ50は、CPU50A、RAM50B、ROM50C、入出力ポート(I/O)50D及びこれらを接続するデータバスやコントロールバス等のバス50Eを含んで構成されている。ROM50Cには、本実施の形態に係る電力供給制御プログラムが記憶されており、CPU50Aが当該電力供給制御プログラムに従って動作することで、需要側12を対象として電力供給制御が実行される。なお、電力供給制御プログラムは、蓄電池制御装置40を制御するための蓄電制御プログラムを含む。
【0048】
なお、I/O50Dには、大規模記憶装置(例えば、ハードディスク)52が接続されている。電力供給プログラムは大規模記憶装置52に記憶してもよいし、図示しないUSBメモリやSDカード等の記憶媒体に記憶するようにしてもよい。また、大規模記憶装置52は、後述する設定値記憶部72(図3参照)として機能する。
【0049】
また、I/O50Dには、インターフェイス(I/F)54を介して蓄電池制御装置40、I/F56を介して受電設備18がそれぞれ接続されている。さらに、I/O50Dには、主電力計16、負荷設備14用の電力計20、太陽光発電用の電力計30、蓄電池用の電力計34が接続されている。
【0050】
ところで、上記電力供給制御1及び電力供給制御2を実現するためには、蓄電池32に蓄電した電力を最大限に活用し、系統電力10からの買電量を低減し、受電電力の上限値を超えそうなときのための蓄電量を管理することが重要である。
【0051】
そこで、本実施の形態の電力供給制御装置42では、事前に(例えば、前日に)、将来の(例えば、明日の)負荷設備14の消費量や太陽光発電システムでの発電量の推移を予測し、蓄電池32の残量を制御して、電力供給制御1及び電力供給制御2を実行するようにした。
【0052】
特に、本実施の形態では、負荷設備14の消費量や太陽光発電システムでの発電量について、比較的に細かい時間帯毎に推移の予測を行うようにしている。
【0053】
細かい時間帯とは、例えば、前日に明日(制御当日)の負荷設備14の消費量や太陽光発電システムでの発電量を予測する場合に、24時間単位で行うよりも細かい時間帯を指し、本実施の形態では、30分毎、かつ、制御当日を起算日とした72時間(3日)先まで期間(確保時間T)の推移を予測するようにしている。
【0054】
ここで、太陽光発電システムの発電量が少ない場合に、蓄電池の残量がなくなっている可能性があり、ピークカットを担保することができず、受電電力の上限値を超えてしまう場合がある。
【0055】
一方、ピークカットを優先で制御する場合は、常時、蓄電池の残量を確保しておく必要があり、蓄電池が満充電状態で太陽光発電量が余剰になると、商用電力系統へ売電することになり、自家消費量が低下する。
【0056】
図3及び図4は、電力供給制御装置42における蓄電池の充放電制御を主体とした電力供給制御の流れを示す機能ブロック図である。なお、図3及び図4の各ブロックは機能別に分類したものであり、ハード構成を限定するものではない。例えば、一部又は全部が制御プログラムに基づき所謂ソフト的に動作するものであってもよい。
【0057】
(電力負荷予測部60、PV発電予測部62)
【0058】
図3に示される如く、電力供給制御装置42は、電力負荷予測部60及びPV発電予測部62を備えている。電力負荷予測部60及びPV発電予測部62では、外部情報に基づき、将来(本実施の形態では、確保時間Tとして、明日午前0時から72時間を設定する。)の電力負荷及びPV発電電力を予測する(電力負荷予測値Lf及びPV発電予測値PVf)。
【0059】
電力負荷予測部60が入手する外部情報としては、日付情報、需要側12を利用する需要家(例えば、一般住宅であれば住人)のスケジュール情報等が挙げられ、需要家が負荷設備14を利用する機会を解析することで、電力負荷予測値Lfを予測する。
【0060】
また、PV発電予測部62が入手する外部情報としては、気象情報、日照時間情報等が挙げられ、需要側12における太陽光発電デバイス24の設置位置での、天気及び日照時間を解析することで、PV発電予測値PVfを予測する。
【0061】
なお、外部情報から電力負荷予測及びPV発電予測を行う場合、予測初期は誤差を認識し、日々の学習によって誤差を低減し、精度を上げる、人工知能による機械学習を適用してもよい。
【0062】
(電力負荷・発電差分予測演算部64)
【0063】
電力負荷予測部60及びPV発電予測部62は、電力負荷・発電差分予測演算部64に接続されている。
【0064】
電力負荷・発電差分予測演算部64では、電力負荷予測部60から受け付けた電力負荷予測値Lfと、PV発電予測部62から受け付けたPV発電予測値PVfとに基づいて、予測電力Fを演算し(F=Lf-PVf)、必要蓄電量演算部66へ送出する。
【0065】
(必要蓄電量演算部66)
【0066】
必要蓄電量演算部66は、ピーク超過積算量演算部68A、必要蓄電量抽出部69A、逆潮流積算量演算部68B、必要空き容量抽出部69B、蓄電量下限値演算部70A、蓄電量上限値演算部70B、及び現在蓄電量演算部71を備えており、それぞれ、設定値記憶部72に接続されている。
【0067】
ピーク超過積算量演算部68Aでは、電力負荷・発電差分予測演算部64で演算した予測電力Fと、設定値記憶部72に記憶された上限電力P’及び確保時間Tとに基づき、F>P’を条件としたピーク超過積算量PRを演算する。
【0068】
すなわち、ピーク超過積算量演算部68Aでは、確保時間T(例えば、72時間)において、予測電力Fが上限電力P’を超えると予測されるときの、予測電力Fと上限電力P’との差分の積算値を演算する。
【0069】
上限電力P’とは、予め設定した系統電力10から受ける電力の上限値であり、この上限電力P’を超えないようにすることを、ピークカット担保という。ピーク超過積算量PRは、ピークカット担保のために必要な電力量ということができる。
【0070】
ピーク超過積算量演算部68Aで演算されたピーク超過積算量PRは、必要蓄電量抽出部69Aに送出される。必要蓄電量抽出部69Aでは、確保時間T(時刻t~t+T)までのピーク超過積算量PRの最大値Spを抽出し、蓄電量下限値演算部70Aへ送出する。
【0071】
一方、逆潮流積算量演算部68Bでは、電力負荷・発電差分予測演算部64で演算した予測電力Fと、設定値記憶部72に記憶された上限電力P’及び確保時間Tとに基づき、F<0を条件として、逆潮流積算量GRを演算する。
【0072】
すなわち、逆潮流積算量演算部68Bでは、確保時間T(例えば、72時間)において、予測電力Fが0未満(すなわち、マイナス値)と予測されるときの、予測電力Fの積算値を演算する。
【0073】
逆潮流積算量演算部68Bで演算された逆潮流積算量GRは、必要空き容量抽出部69Bに送出される。必要空き容量抽出部69Bでは、確保時間T(時刻t~t+T)までの逆潮流積算量GRの最小値Sqを抽出し、蓄電量上限値演算部70Bへ送出する。
【0074】
図3に示される如く、蓄電量下限値演算部70Aでは、設定値記憶部72から蓄電池32の容量(蓄電池容量M)、蓄電池32の残量の下限値(蓄電池残量下限値Umin)、及び下限予備率aを読み出し、蓄電量下限値Sminを演算する(Smin={Sp×(1+a)}+{Umin×M})。蓄電量下限値Sminは、蓄電池容量Mに対する比率(例えば、0~1の数値、又は百分率「%」)で表現される数値である。
【0075】
一方、蓄電量上限値演算部70Bでは、設定値記憶部72から蓄電池32の容量(蓄電池容量M)、蓄電池32の残量の上限値(蓄電池残量上限値Umax)、及び上限予備率bを読み出し、蓄電量上限値Smaxを演算する(Smax={Umax×M}-{Sq×(1+b)}と共に、蓄電量下限値演算部70Aから蓄電量下限値Sminを読み出し、蓄電量上限値Smaxとして、上記演算結果({Umax×M}-{Sq×(1+b)})、又は蓄電量下限値演算部70Aから読み出した蓄電量下限値Sminの何れか大きい方を選択する。蓄電量上限値Smaxは、蓄電池容量Mに対する比率(例えば、0~1の数値、又は百分率「%」)で表現される数値である。
【0076】
また、現在蓄電量演算部71は、設定値記憶部72から蓄電池容量Mを読み出すと共に、蓄電池残量率計測部74から蓄電池残量率Rsを取得し、現在蓄電量Sを演算する(S=Rs×M)。
【0077】
蓄電量下限値演算部70Aで演算された蓄電量下限値Smin、蓄電量上限値演算部70Bで選択した蓄電量上限値Smax、並びに、現在蓄電量演算部71で演算された現在蓄電量Sは、それぞれ、図4に示す蓄電池出力演算部76の目標蓄電池出力選択部78へ送出される。図4の蓄電池出力演算部76については後述する。
【0078】
(蓄電池充放電上限演算部80)
【0079】
図3に示される如く、必要蓄電量演算部66での演算は推移予測に基づくものであり、この推移予測が終了し、蓄電池制御の当日になると、蓄電池充放電上限演算部80が起動する。
【0080】
蓄電池充放電上限演算部80は、現在電力計測部82、蓄電池放電上限決定部84、及び蓄電池充電上限決定部86を備える。
【0081】
現在電力計測部82は、負荷設備14用の電力計20から負荷電力Lを取得し、蓄電池用の電力計34から蓄電池充放電電力BATを取得することで、現在電力L’を演算する(L’=L+BAT)。
【0082】
現在電力計測部82は、蓄電池放電上限決定部84及び蓄電池充電上限決定部86に接続されている。現在電力計測部82では、演算した現在電力L’を蓄電池放電上限決定部84及び蓄電池充電上限決定部86へ送出する。また、演算した現在電力L’は、図4に示す蓄電池出力演算部76の補正部79へ送出される。図4の蓄電池出力演算部76については後述する。
【0083】
蓄電池放電上限決定部84は、設定値記憶部72に接続され、当該設定値記憶部72に記憶された蓄電池放電最大出力Xoutを読み出すと共に、現在電力計測部82から現在電力L’を取得し、何れか小さい方を蓄電池放電上限X’outとして、X’out選択部85へ送出される。X’out選択部85には、必要空き容量抽出部69Bから必要空き容量Sqが入力され、必要空き容量Sqの値に応じて、蓄電池放電上限X’outを決定する。すなわち、Sq=0の場合は、蓄電池放電上限X’outのままとし、そうでない場合(Sq≠0)は、X’outの値を0として、図4に示す蓄電池出力演算部76の蓄電池出力選択部78及び補正部79へ送出する。
【0084】
一方、蓄電池充電上限決定部86は、設定値記憶部72に接続され、当該設定値記憶部72に記憶された蓄電池充電最大出力Xin、及び上限電力P’を読み出す。また、蓄電池充電上限決定部86は、現在電力計測部82から現在電力L’を取得し、上限電力P’との差分Δ(P’-L’)を演算すると共に、蓄電池充電最大出力Xinと差分Δとの何れか小さい方を蓄電池充電上限X’inとして決定し、図4に示す蓄電池出力演算部76の蓄電池出力選択部78へ送出する。なお、P’-L’<0のときは、現在電力が上限電力を超えているときなので、充電は不可(X’in=0)とする。
【0085】
(蓄電池出力演算部76)
【0086】
図4に示される如く、蓄電池出力演算部76は、蓄電池出力選択部78及び補正部79を備えている。
【0087】
蓄電池出力選択部78には、現在蓄電量演算部71(図3参照)から現在蓄電量Sが入力される。
【0088】
また、蓄電池出力選択部78には、蓄電量上限値演算部70B(図3参照)から蓄電量上限値Smaxが入力され、かつ、蓄電量下限値演算部70A(図3参照)から蓄電量下限値Sminが入力される。
【0089】
さらに、蓄電池出力選択部78には、X’out選択部85(図3参照)から蓄電池放電上限X’outが入力され、かつ、蓄電池充電上限決定部86(図3参照)から蓄電池充電上限X’inが入力される。
【0090】
また、蓄電池出力選択部78には、設定値記憶部72(図3参照)から上限側蓄電余裕幅Uhighが読み出される。
【0091】
ここで、蓄電池出力選択部78は、予め蓄電池出力Xを選択する判定式-蓄電池出力テーブル78Tを具備している(表1参照)。
【0092】
判定式は、蓄電量上限値Smax、蓄電量下限値Smin、及び上限側蓄電余裕幅Uhighで設定される範囲の内、入力される現在蓄電量Sが、何れの範囲に属するかを判定する。この判定結果を判定式-蓄電池出力テーブル78Tに当てはめることで、蓄電池出力Xが選択される。
【0093】
【表1】
【0094】
図9は、蓄電池32の残量のレベル表示(図9(A))と、蓄電池残量S計測値-蓄電池出力X特性図(図9(B)との対応関係を示している。なお、図9(A)の段階数は、20段階としている。
【0095】
図9(A)に示される如く、蓄電量下限値Sminは6レベル分であり、蓄電残量不足の範囲となっている。空充電の状態から、この蓄電残量不足範囲と蓄電残量少なめ範囲の上限(6レベル分)が、表1の判定式のSminとなる。
【0096】
レベルゲージの6レベル(Sminの位置)から6レベル分は、蓄電池32の残量が余裕有りとされ、それ以上の蓄電池残量は、空き容量の少なめ、又は、空き容量不足の範囲となる。
【0097】
空き容量不足の範囲は、満充電から6レベル分であり、この位置が、蓄電量上限値Smaxとなる。また、蓄電量上限値Smaxから2レベル分が空き容量少なめの範囲であり、上限側蓄電余裕幅Uhighとなる。満充電の状態から、この蓄電空き容量不足範囲と空き容量少なめ範囲の下限(8レベル分)が、表1の式のSmax-Uhighとなる。
【0098】
表1の判定において、0~蓄電量下限値Sminまでの6レベルが判定D(Smin≧S)となる。
【0099】
表1の判定において、蓄電残量少なめの上限であるSminから6レベル分の余裕有りの上限であるSmax-Uhighまでの範囲が判定C(Smax-Uhigh≧S>Smin)となる。
【0100】
表1の判定において、余裕有りの上限であるSmax-Uhighから2レベル分の空き容量少なめの上限である蓄電量上限値Smaxまでの範囲が判定B(Smax≧S>Smax-Uhigh)となる。
【0101】
表1の判定において、蓄電量上限値Smaxを超えた分が判定A(S>Smax)となる。
【0102】
各判定(判定A~D)は、図9(B)の蓄電池残量S計測値-蓄電池出力X特性図に反映されて、現在の蓄電池32の残量(現在蓄電量S)により、蓄電池出力Xが選択される。
【0103】
図9(B)の蓄電池残量S計測値-蓄電池出力X特性図では、ピーク超過回避に余裕が有るときの蓄電池出力Xと、余裕が無いときの蓄電池出力Xとの段差を解消するため、比例制御によって接続している。これにより、蓄電池出力Xの変更時での微増微減に対して、オーバーシュートとアンダーシュートを繰り返す現象(ハンティング)を解消することができる。
【0104】
また、図9(B)の蓄電池残量S計測値-蓄電池出力X特性図では、逆潮流回避に余裕が有るときの蓄電池出力Xと、余裕が無いときの蓄電池出力Xとの段差を解消するため、蓄電量上限値Smaxを上限とする上限側蓄電余裕幅Uhighの間を、比例制御によって接続している。これにより、蓄電池出力Xの変更時(蓄電池32の残量が上限側蓄電余裕幅Uhighの上下端付近)での微増微減に対して、オーバーシュートとアンダーシュートを繰り返す現象(ハンティング)を解消することができる。
【0105】
図4に示される如く、蓄電池出力選択部78で選択された蓄電池出力Xは、補正部79へ送出される。補正部79には、設定値記憶部72(図3参照)から上限電力P’が読み出され、現在電力計測部82(図3参照)から現在電力L’が入力されている。また、X’out選択部85(図3参照)から蓄電池放電上限X’outが入力されている。
【0106】
補正部79では、蓄電池出力選択部78で選択された蓄電池出力Xに対して、リアルタイム、すなわち、現在の電力を考慮して補正する。
【0107】
補正部79には、蓄電池出力Xに対して、現在電力L’を考慮して補正した蓄電池出力(補正蓄電池出力X’)を得るための判定式-補正蓄電池出力テーブル79Tが、予め設定されている(表2参照)。
【0108】
【表2】
【0109】
表2における判定式に基づく補正により、以下の目的を達成することができる。
【0110】
(目的1) 現在電力L’がピーク超過の場合、蓄電池32の蓄電量の制御よりもピーク超過回避(抑制)を優先する。
【0111】
(目的2) ピーク超過かつ蓄電池32の残量を下げたい場合、上限電力以下までは放電を実行する。
【0112】
(目的3) ピーク超過でも逆潮流でもない場合、蓄電池32の蓄電量の制御を優先する。
【0113】
(目的4) 現在電力L’が逆潮流する場合、逆潮流回避(抑制)のための蓄電池32への充電を優先する。
【0114】
(目的5) 蓄電池32の残量を上げたい場合、逆潮流分を超えて充電を実行する。
【0115】
(蓄電池出力指令部88)
【0116】
蓄電池出力演算部76の補正部79は、蓄電池出力指令部88に接続され、補正済の蓄電池出力(補正蓄電池出力X’)を、蓄電池出力指令部88へ送出する。蓄電池出力指令部88では、蓄電池制御装置40(図1参照)に対して、補正蓄電池出力X’に基づき蓄電池32を制御するように指令する。
【0117】
以下に、本実施の形態の作用を、図5図7のフローチャートに従い説明する。
【0118】
図5は、図3の必要蓄電量演算部66を主体として実行される、必要蓄電残量演算ルーチンを示す制御フローチャートである。
【0119】
ステップ100では、電力負荷予測値Lfを入力し、次いで、ステップ102へ移行して、PV発電予測値PVfを入力して、ステップ104へ移行する。
【0120】
ステップ104では、入力された電力負荷予測値LfとPV発電予測値PVfとに基づいて、予測電力Fを演算する(F=Lf-PVf)。
【0121】
次のステップ106では、設定値記憶部72から、上限電力P’を読み出し、次いで、ステップ108では、設定値記憶部72から確保時間Tを読み出して、ステップ110へ移行する。
【0122】
ステップ110では、ステップ104で演算した予測電力Fと、ステップ106及びステップ108で読み出した上限電力P’及び確保時間Tとに基づいて、ピーク超過積算量PRを演算する。
【0123】
次のステップ112では、ステップ110におけるピーク超過積算量PRの演算に基づき、必要蓄電量Spを抽出する。必要蓄電量Spは、時間t~t+Tまでのピーク超過積算量PRの最大値である。
【0124】
次のステップ114では、ステップ104で演算した予測電力Fと、ステップ106及びステップ108で読み出した上限電力P’及び確保時間Tとに基づいて、逆潮流積算量GRを演算する。
【0125】
次のステップ116では、ステップ114における逆潮流積算量GRの演算に基づき、必要空き容量Sqを抽出する。必要空き容量Sqは、時間t~t+Tまでの逆潮流積算量の最小値に-1を積算した値、又は0(零)の内何れか大きい方である。
【0126】
次のステップ118では、設定値記憶部72から、蓄電池容量M、蓄電池残量下限値Umin、下限予備率a、蓄電池残量上限値Umax、及び上限予備率bをそれぞれ読み出し、ステップ120へ移行する。
【0127】
ステップ120では、蓄電量下限値Sminを演算する(Smin={Sp×(1+a)+{(Umin×M)})。
【0128】
次のステップ122では、蓄電量上限値Smaxを演算する(Smax={(Umax×M)}-{Sq×(1+b))と共に、蓄電量上限値Smaxとして、上記演算結果({Umax×M}-{Sq×(1+b)})、又は蓄電量下限値Sminの何れか大きい方を選択する。次のステップ123では、ステップ120で演算した蓄電量下限値Smin、及びステップ122で演算した蓄電量上限値Smaxをそれぞれ一時保存し、このルーチンは終了する。
【0129】
図6は、図4の蓄電池出力選択部78を主体として実行される、蓄電池出力制御ルーチンを示す制御フローチャートである。
【0130】
ステップ150では、設定値記憶部72から蓄電池容量M、上限電力P’、蓄電池放電最大出力Xout、及び蓄電池充電最大出力Xinを読み出して、ステップ152へ移行する。
【0131】
ステップ152では、電力計20で計測した負荷電力L、及び電力計34で計測した蓄電池充放電電力BATをそれぞれ入力して、ステップ154へ移行する。
【0132】
ステップ154では、入力された負荷電力Lと蓄電池充放電電力BATとに基づいて、現在電力L’を演算する(L’=L+BAT)。
【0133】
次のステップ156では、現在電力L’又は蓄電池放電最大出力Xoutの何れか小さい値の方を蓄電池放電上限X’outに決定し、ステップ158へ移行する。
【0134】
ステップ158では、上限電力P’と現在電力L’との差分Δ(P’-L’)、又は蓄電池充電最大出力Xinの何れか小さい方を蓄電池充電上限X’inに決定し、ステップ160へ移行する。但し、P’-L’<0のときは、現在電力が上限電力を超えているときなので、蓄電池充電上限X’in=0(すなわち、充電は不可)とする。
【0135】
ステップ160では、一時保存した蓄電量下限値Smin及び蓄電量上限値Smaxを読み出し、次いで、ステップ162では、設定値記憶部72から上限側蓄電余裕幅Uhighを読み出し、次いでステップ164へ移行して判定式-蓄電池出力(X)テーブル78Tを読み出して、ステップ166へ移行する。
【0136】
ステップ166では、判定式-蓄電池出力(X)テーブル78Tの変数(Smax、Smin、Uhigh、X’out、及びX’in)のそれぞれに、取得(読出、入力、演算、及び決定)した数値を割り当てて、ステップ168へ移行する。これにより、判定式の範囲が確定する。
【0137】
ステップ168では、蓄電池残量率Rsを計測した値を入力し、次いで、ステップ170へ移行して現在蓄電量Sを演算する(S=Rs×M)。
【0138】
ステップ172では、ステップ170で演算した現在蓄電量Sを、ステップ166で各変数の数値を割り当てた判定式-蓄電池出力(X)テーブル78Tと照合し、ステップ174で現在蓄電量Sが属する、判定種(A~D)を特定し、ステップ176へ移行する。
【0139】
ステップ176では、ステップ174で特定した判定種(A~D)に基づき、判定式-蓄電池出力(X)テーブル78Tの右欄から蓄電池出力Xを決定する。この蓄電池出力Xによって、蓄電池32の残量を制御することで、ピーク超過及び逆潮流の双方を回避することができる。
【0140】
ところで、この蓄電池出力Xは、現在の電力、すなわち、当日の予測に対する誤差分を考慮していない。そこで、次のステップ178では、補正部79(図4参照)において、蓄電池出力Xの補正処理制御を実行する。
【0141】
図7は、図6のステップ178の蓄電池出力Xの補正処理制御サブルーチンの詳細な流れを示す制御フローチャートである。
【0142】
ステップ200では、判定式-補正蓄電池出力X’テーブル79Tを読み出して、ステップ202へ移行する。
【0143】
ステップ202では、現在電力L’と上限電力P’との比較(L’:P’)により、判定種(α、β、又はγ)を特定し、ステップ204へ移行する。
【0144】
ここで、判定種αは、L’≧P’を意味し、判定種βは、P’>L’>0を意味し、判定種γは、0≧L’を意味する。なお、「0」は下限電力である。
【0145】
ステップ204において、判定種がαと判定された場合は、ステップ206へ移行して蓄電池出力X、又は、X’outの何れか大きい方を補正蓄電池出力X’として選択し、ステップ212へ移行する。
【0146】
ステップ204において、判定種がβと判定された場合は、ステップ208へ移行して蓄電池出力Xを補正蓄電池出力X’として選択し、ステップ212へ移行する。
【0147】
ステップ204において、判定種がγと判定された場合は、ステップ210へ移行して蓄電池出力X、又は、-X’outの何れか小さい方を補正蓄電池出力X’として選択し、ステップ212へ移行する。
【0148】
ステップ212では選択結果の補正蓄電池出力X’を蓄電池制御装置40(図1参照)へ送出し、このルーチンは終了する。
【0149】
(蓄電池のデマンド予測制御+停電等特定条件時蓄電池残量制御)
【0150】
上記では、蓄電池のデマンド予測制御について説明した。この蓄電池のデマンド予想制御では、許容範囲の領域に収まっている蓄電池の残量が制御の経緯に依存した成り行きの位置であり、通常な環境では問題ないが、例えば、停電等の特定条件の下(近い将来)での、必要な蓄電池の残量まで考慮されていない。
【0151】
以下では、蓄電池のデマンド予測制御に、停電等特定条件時蓄電池残量制御を加えたシステムについて説明する。
【0152】
図10は、蓄電池制御装置40における、図7のフローチャートの処理によって得られた、補正蓄電池出力X’に基づく、充放電の制御の流れを示すフローチャートである。
【0153】
この充放電制御フローチャートは、例えば、1分周期で実行することが好ましいが、周期は限定されるものではない。
【0154】
ステップ250では、現在電力L’を演算し、次いで、ステップ252で現在電力L’>上限電力P’であるか否かを判断する。ステップ252で肯定判定(現在電力L’>上限電力P’)された場合は、ステップ254へ移行して、ピーク超過を予測して、放電を指示し(ピーク放電)、このルーチンは終了する。これは、図7のαに属する判定に対応する。
【0155】
ピーク放電では、受電電力がピーク電力(目標値)以上の場合、蓄電池から給電する。蓄電池が空の場合は、PVのみから放電する。
【0156】
また、ステップ252で否定判定された場合は、ステップ256へ移行して、現在電力L’≦下限電力0か否かを判断する。なお、「0」は下限電力である。ステップ256で肯定判定(現在電力L’≦下限電力0)された場合は、ステップ258へ移行して、逆潮流を予測して、充電を指示し(逆潮流充電)、このルーチンは終了する。これは、図7のγに属する判定に対応する。
【0157】
逆潮流充電では、PVにより逆潮流が起きる場合は、余剰電力分を蓄電池に充電する。蓄電池が満充電になった場合は、余剰分のPV発電を抑制する。
【0158】
ここで、ステップ256で否定判定(言い換えれば、ステップ252でもステップ256でも否定判定(上限電力P’ >現在電力L’>下限電力0)された場合は、ステップ260へ移行する。これは、図7のβに属する判定に対応する。
【0159】
ステップ260では、図3の必要蓄電量抽出部69A及び必要空き容量抽出部69Bで定期的(例えば、30分毎)に演算される、必要蓄電量Sp及び必要空き容量Sqを読み出し(すなわち、最新のデータを読み出し)、次いで、ステップ262へ移行して、現在の蓄電残量S<必要蓄電量Spか否かを判断する。このステップ262で肯定判定されると、ステップ264へ移行して、蓄電残量を回復するために充電を指示し、このルーチンは終了する。
【0160】
蓄電残量回復では、今後ピーク超過が予想される場合、PVと系統から蓄電池へ充電する。蓄電池が必要蓄電残量を満たした場合は、PVから系統に回生する。また、空き容量確保も必要ない場合でも、満充電まで充電する。
【0161】
ステップ262で否定判定された場合は、ステップ266へ移行して、蓄電残量S>上限蓄電量(蓄電容量M-必要空き容量Pq)か否かを判断する。このステップ266で肯定判定されると、ステップ268へ移行して、空き容量確保のための放電を指示し、このルーチンは終了する。
【0162】
空き容量確保では、今後逆潮流が生じる場合は、蓄電池から放電し、残量を低下させる。
【0163】
ところで、ステップ266において否定判定されるということは、蓄電池の蓄電量が適量の範囲、例えば、図9に示す余裕有りの領域(蓄電量下限値Smin~蓄電量上限値Smaxの領域でもよい。)に属しているため、蓄電池の蓄電量制御が推移予測に準じて、適正な制御が行われているということになる。言い換えれば、上記領域における蓄電量は、制御の経緯に依存した、所謂成り行きの位置となり、領域での位置が特定されない。
【0164】
そこで、本実施の形態では、ステップ266で否定判定され、ピーク超過、余剰充電のどちらも予測されない場合を、本発明の第3条件成立(特に、空き容量が不要な場合)と定義し、蓄電残量上限値まで充電を行うようにした。蓄電池残量上限値とは、例えば、後述する停電予測の場合は、蓄電池のデマンド予測制御を考慮した上で、図9のレベルゲージ(図9(A)の90%の位置(Smax-sp)が好ましい。なお、蓄電池残量上限値の定義としては、図9(A)の90%の位置(Smax-sp)に限定されず、図9(A)に示す蓄電量上限値Smaxであってもよい。また、停電予測を最優先とし、満充電(100%)でもよい。少なくとも、成り行きの状態ではなく、成り行きの状態の充電量から目的の充電量に移行(本実施の形態では、充電量増加)することで、本発明の目的は達成し得る。
【0165】
すなわち、ステップ266で否定判定されると、ステップ270へ移行して、蓄電残量回復のための充電を指示し、このルーチンは終了する。
【0166】
これは、ピーク放電と余剰充電に対応するという本来の目的の制御を実行しながら、停電等、電力が必要となる状況に向けて充電量を確保することができる。
【0167】
なお、以下に、ステップ254のピーク放電、ステップ258の逆潮流充電、ステップ264(ステップ270)の蓄電残量回復、及び、ステップ268の空き容量確保の定義について説明する。
【0168】
ピーク放電:受電電力がピーク電力(目標値)以上の場合、蓄電池から給電する。蓄電池が空の場合は、PVのみから放電する。
【0169】
逆潮流充電:PVにより逆潮流が起きる場合は、余剰電力分を蓄電池に充電する。蓄電池が満充電になった場合は、余剰分のPV発電を抑制する。
【0170】
蓄電残量回復:今後ピーク超過が予想される場合、PVと系統から蓄電池へ充電する。蓄電池が必要蓄電残量を満たした場合は、PVから系統に回生する。また、空き容量確保も必要ない場合でも、満充電まで充電する。
【0171】
空き容量確保:今後逆潮流が生じる場合は、蓄電池から放電し、残量を低下させる。
【0172】
図10のステップ266の否定判定後の変形例1)
【0173】
本実施の形態では、図10のステップ266で否定判定され、ピーク超過、余剰充電のどちらも予測されない場合、一意的に、蓄電残量の回復のための充電を指示し、蓄電残量上限値(一例として、図9(A)の90%の位置まで充電するようにした。
【0174】
これに対して、変形例1では、気象情報を用いて、例えば、荒天による停電を予測するシステムを構築し、図10のステップ266の否定判定、かつ、停電が予測される場合に、第3条件成立とし、蓄電残量の回復のための充電を指示し、蓄電残量上限値まで充電するようにした。また、停電予測を条件とした充電では、蓄電池を満充電するようにしてもよい。
【0175】
図11は、変形例1に係る充放電の制御の流れを示すフローチャートである。なお、図10と同一ステップには、同一の符号を付し、各処理の説明を省略する。
【0176】
図11に示される如く、ステップ266で否定判定されると、ステップ269へ移行して、フラグFが立っているか(F=1か)否かを判断する。
【0177】
ステップ269で肯定判定(F=1)されると、第3条件成立と判断し、ステップ270へ移行して、蓄電残量回復のための充電を指示し、このルーチンは終了する。
【0178】
また、ステップ269で否定判定(F=0)されると、第3条件不成立と判断し、このルーチンは終了する。
【0179】
また、図12は、停電予測システムにおける停電予測制御ルーチンを示すフローチャートである。この停電予測制御ルーチンは、例えば、図11のフローチャートの処理と並行し、定期的に割り込まれて実行されるサブルーチンである。
【0180】
図12に示すステップ300では、新たな気象情報を取得する。例えば、気象情報発信サイトから、現在の温度、湿度、気圧等を含む数値情報を取得して、ステップ302へ移行する。
【0181】
ステップ302では、今後の気象情報を予測する。例えば、ステップ300で取得した数値情報に基づく統計的処理から、特定地点の風速、雷、降雪、浸水等の災害情報を予測し、ステップ304へ移行する。
【0182】
ステップ304では、データベース化された、気象情報と停電情報の相関情報を読み出し、次いで、ステップ306へ移行して、予測した気象情報と相関情報とから、予測した気象情報に一致又は類似する停電の発生の有無を解析し、今回予測した気象情報による停電の可能性(確率)を予測する。
【0183】
次のステップ308では、停電予測の確率が所定以上か否かを判断し、肯定判定された場合は、フラグFをセット(1)し(ステップ310)、否定判定された場合は、フラグFをリセット(0)し(ステップ312)、このルーチンは終了する。なお、フラグの状態は、次の気象情報取得時まで保持される。
【0184】
なお、図12に示すような停電予測制御ルーチンを本実施の形態の蓄電量制御に組み込まず、別途、停電予想システム(ウェブサイト)から、直接停電予測情報を取得して利用してもよい。
【0185】
このように、停電予測制御システムを、本実施の形態の蓄電量制御に追加することで、停電を考慮した蓄電量制御が可能となる。
【0186】
(ステップ266の否定判定後の変形例2)
【0187】
本実施の形態(及び変形例1)では、図10(及び図11)のステップ266で否定判定され、ピーク超過、余剰充電のどちらも予測されない場合、蓄電残量の回復のための充電を指示し、蓄電残量上限値まで充電するようにした。
【0188】
これに対して変形例2は、蓄電残量下限値まで放電する制御を行う。この制御は、例えば、本実施の形態又は変形例1の充電制御を基本として、以下の条件を第3条件と定義し、当該以下の第3条件が成立した場合に、放電制御に切り替える、予備的制御という位置付けでもよいし、制御する地域や環境によって、放電制御を基本としてもよい。
【0189】
変形例2の第3条件としては、例えば、本システムの導入対象とする建物において、PVと蓄電池の他に、ピークカット用に発電機や燃料電池などの発電設備を保有し、蓄電池はピークカットにも使うものの、PVの余剰電力充電を優先事項として制御させる場合がある。この場合、ピーク超過・余剰電力のどちらも予測されていなければ、予測が外れて余剰が発生する事態に備え、できるだけ蓄電池の空き容量を確保しておくことも想定される。
【0190】
(最優先処理追加(第4条件)の変形例3)
例えば、本実施の形態では、第1条件及び第2条件に基づく、「蓄電池出力に基づく充電放電制御」を行った。
【0191】
これに対して、変形例3では、図15に示される如く、図10の蓄電池出力に基づく充電放電制御を開始する初期(最初のステップ248)で、停電予測有りか否かを判断し、肯定判定された場合に、第4条件成立とし、「蓄電池出力に基づく充電放電制御」を実行せず、ステップ249へ移行して、蓄電残量回復処理を実行する。
【0192】
これにより、停電等、定常時よりも電力を比較的多く状況を予測して、予め充分な電力を確保することができる。
【0193】
(蓄電池のデマンド予測制御+停電等特定条件時蓄電池残量制御に係る実施例)
【0194】
以下に、変形例1~変形例3の何れかで説明した蓄電池のデマンド予測制御において、停電等、電力が必要となる時期を予測した場合の停電等特定条件時蓄電池残量制御の実施例を、図13に基づき説明する。
【0195】
図13の横軸は、時間(hour)を示しており、以下、時系列に(具体的には、図13の矢印A~矢印Iで示す時間帯における)、契約電力レベル(図13のしきい値X)及び建物負荷(図13の点線特性Y)に基づく、受電電力(図13の白抜き棒グラフ)、蓄電池放電(図13の黒塗り棒グラフ)、蓄電池充電(図13の格子斜線棒グラフ)、及び太陽光発電(図13の一点鎖線特性Z)との関係を説明する。
【0196】
(矢印A)
建物負荷が、契約電力レベルを超えているため、太陽光発電を利用すると共に、蓄電池32から放電するし、ピークカットに対応する。
【0197】
(矢印B)
次の放電に必要な分を充電しておく。
【0198】
(矢印C)
余剰の予測がないため、所定のレベル(例えば、停電に備えて満充電)まで充電しておく。
【0199】
(矢印D)
蓄電池32の蓄電池残量を、余剰の予測がない限り、BCP用に、所定のレベルの充電状態を維持する。
【0200】
(矢印E)
充分な空き容量があるため、放電しない。
【0201】
(矢印F)
太陽光発電と建物負荷の差分を、余剰電力として蓄電池32に充電する。
【0202】
(矢印G)
ピークと余剰が予測に対し、両方の充放電に対応できる残量まで蓄電池32の電力を放電する。
【0203】
(矢印H)
建物負荷(図13の点線Y参照)が、契約電力レベルを超えているため、太陽光発電を利用すると共に、蓄電池32から放電するし、ピークカットに対応する。
【0204】
(矢印I)
太陽光発電と建物負荷の差分を、余剰電力として蓄電池32に充電する。
【0205】
以上説明したように、実施例では、負荷予測、発電予測から、ピーク超過、余剰電力を予測し、予測から蓄電残量の推移を判定し、ピーク超過時の放電に対して残量が不足する場合は、事前に充電を行うと共に、余剰充電に対して残量が多過ぎる場合は、事前に放電を行う基本制御と、さらに、将来において、蓄電池32の電力が必要となる条件(例えば、停電予測システムにおける停電予測)が成立した場合に、上記基本制御で許容範囲内である蓄電量を、例えば、満充電まで充電しておくことで、電力必要時対策(例えば、停電予測対策)制御と併設することができる。
【0206】
図14は、一例として、停電に特化した場合における、第3条件成立による蓄電池残量の回復の効果について説明したタイミングチャートである。
【0207】
図14(B)は、停電等特定条件時蓄電池残量制御が実行されない比較例である。
【0208】
図14(B)に示される如く、蓄電池のデマンド予測制御では、蓄電池残量(蓄電材残量率SOC)の管理を実行しているが、例えば、蓄電池残量(許容範囲)が、BCPで必要な容量以下のときに、停電が発生すると、容量不足となって、BCPを満足することができない場合がある。
【0209】
これに対して、図14(A)に示される如く、蓄電池のデマンド予測制御+停電等特定条件時蓄電池残量制御では、例えば、蓄電池のデマンド予測制御の下での放電中、停電予測を受けると(第3条件が成立すると)、蓄電池32へ充電指示がなされ、停電予測時刻までに、BCPを満足し得る蓄電池残量にすることができる。
【0210】
なお、以下において、本実施の形態(実施例の含む)で適用した変数の単位の一例を列挙する(表3参照)。当然、例示した単位に限定されるものではない。また、式の演算において、一貫性のある単位であることが好ましいが、各変数を表記する場合に単位系を統一する必要はなく、演算の際に換算すればよい。
【0211】
【表3】
【符号の説明】
【0212】
10 系統電力(第1の電力)
12 需要側
14 負荷設備
16 主電力計
18 受電設備
20 電力計
22 変圧器
24 太陽光発電デバイス(再生可能エネルギー発電、第2の電力)
26 パワーコンディショナー
28 変圧器
30 電力計
32 蓄電池(第3の電力)
34 電力計
36 変圧器
38 パワーコンディショナー
40 蓄電池制御装置
42 電力供給制御装置
50 マイクロコンピュータ
50A CPU
50B RAM
50C ROM
50D 入出力ポート(I/O)
50E バス
52 大規模記憶装置
54 インターフェイス(I/F)
56 I/F
60 電力負荷予測部
62 PV発電予測部
64 電力負荷・発電差分予測演算部
66 必要蓄電量演算部
68A ピーク超過積算量演算部(積算部)
68B 逆潮流積算量演算部(積算部)
69A 必要蓄電量抽出部(抽出部)
69B 必要空き容量抽出部(抽出部)
70A 蓄電量下限値演算部(演算部)
70B 蓄電量上限値演算部(演算部)
71 現在蓄電量演算部
72 設定値記憶部
74 蓄電池残量率計測部
76 蓄電池出力演算部(選択部、補正部)
78 蓄電池出力選択部(選択部)
79 補正部(補正部)
80 蓄電池充放電上限演算部(決定部)
82 現在電力計測部
84 蓄電池放電上限決定部(決定部)
85 X’out選択部
86 蓄電池充電上限決定部(決定部)
88 蓄電池出力指令部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15