IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧 ▶ 東亞エルメス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-変位計測装置および地盤変位計測方法 図1
  • 特開-変位計測装置および地盤変位計測方法 図2
  • 特開-変位計測装置および地盤変位計測方法 図3
  • 特開-変位計測装置および地盤変位計測方法 図4
  • 特開-変位計測装置および地盤変位計測方法 図5
  • 特開-変位計測装置および地盤変位計測方法 図6
  • 特開-変位計測装置および地盤変位計測方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086579
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】変位計測装置および地盤変位計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/16 20060101AFI20230615BHJP
   G01C 7/06 20060101ALI20230615BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20230615BHJP
   G01D 5/353 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
G01B11/16 Z
G01C7/06
G01B11/00 Z
G01D5/353 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201196
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510009267
【氏名又は名称】東亞エルメス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 一雄
(72)【発明者】
【氏名】水野 史隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 茂
【テーマコード(参考)】
2F065
2F103
【Fターム(参考)】
2F065AA02
2F065AA03
2F065AA09
2F065BB08
2F065CC14
2F065DD16
2F065FF41
2F065LL02
2F065QQ28
2F065UU03
2F103CA07
2F103EC09
2F103GA01
(57)【要約】
【課題】地盤変位を計測した後に、計測孔内から光ファイバーケーブルセンサを回収できる変位計測装置を提供する。
【解決手段】変位計測装置10であって、計測孔90に挿入されるガイド管20と、ガイド管20内で膨張収縮可能な袋状のパッカー30と、パッカー30の外面とガイド管20の内面との間に配置された光ファイバーケーブルセンサ50と、を備えている。光ファイバーケーブルセンサ50は、光ファイバーケーブルセンサ50の変位を測定する測定装置に接続可能である。パッカー30を膨張させた状態では、光ファイバーケーブルセンサ50がパッカー30の外面とガイド管20の内面との間に挟まれて固定される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測孔に挿入されるガイド管と、
前記ガイド管内で膨張収縮可能な袋状のパッカーと、
前記パッカーの外面と前記ガイド管の内面との間に配置された光ファイバーケーブルセンサと、を備え、
前記光ファイバーケーブルセンサは、前記光ファイバーケーブルセンサの変位を測定する測定装置に接続可能であり、
前記パッカーを膨張させた状態では、前記光ファイバーケーブルセンサが前記パッカーの外面と前記ガイド管の内面との間に挟まれて固定されることを特徴とする変位計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の変位計測装置であって、
前記ガイド管は、前後方向に延びており、
前記ガイド管の外面には、少なくとも上下左右の四つ平面が形成されていることを特徴とする変位計測装置。
【請求項3】
請求項1に記載の変位計測装置であって、
前記ガイド管は、前後方向に延びており、
前記ガイド管の内面には、少なくとも上下二つの平面または左右の二つ平面が形成されていることを特徴とする変位計測装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の変位計測装置であって、
前記パッカーの外面と前記ガイド管の内面との間には平板が配置され、
前記平板の内面は、前記パッカーの外面に対峙し、
前記平板の外面は、前記ガイド管の内面に対峙しており、
前記平板の内面または外面には、前後方向に延びている窪み部が形成され、
前記窪み部に前記光ファイバーケーブルセンサが嵌め込まれていることを特徴とする変位計測装置。
【請求項5】
請求項4に記載の変位計測装置であって、
前記窪み部は、前記平板の内面に形成されており、
前記パッカーを膨張させた状態では、前記光ファイバーケーブルセンサが前記パッカーの外面に接することを特徴とする変位計測装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の変位計測装置であって、
前記パッカーの上下左右の側方にそれぞれ前記平板が配置されており、
前記各平板にそれぞれ前記光ファイバーケーブルセンサが設けられていることを特徴とする変位計測装置。
【請求項7】
地盤の変位を計測する地盤変位計測方法であって、
地盤に設けた計測孔に請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の変位計測装置を挿入する工程と、
前記計測孔の内壁と前記ガイド管との間に充填材を充填して、前記ガイド管の位置決めを行う工程と、
前記パッカー内を加圧して前記パッカーを膨張させ、前記光ファイバーケーブルセンサを前記パッカーの外面と前記ガイド管の内面との間に挟んで固定する工程と、
前記光ファイバーケーブルセンサの変位を計測する工程と、
前記パッカー内を減圧して、前記パッカーを収縮させる工程と、
前記パッカーおよび前記光ファイバーケーブルセンサを前記ガイド管から抜き出す工程と、
を備えていることを特徴とする地盤変位計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル施工における切羽前方の地盤変位を計測する変位計測装置および変位計測装置を用いた地盤変位計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、トンネルの施工において、切羽前方の地山状況に応じて適切な工法を採用するためには、切羽前方の地盤変位を管理する必要がある。
地盤変位の計測方法としては、切羽前方に向けて形成した計測孔に光ファイバーケーブルセンサを挿入し、測定装置から光ファイバーケーブルセンサに光を入射して散乱光が戻るまでの時間や散乱光の周波数分布を解析することで、地盤変位を把握する方法がある。
特許文献1には、ガイド管の外周面に光ファイバーケーブルセンサを取り付け、計測孔にガイド管を挿入し、計測孔内にグラウト材を充填することで、光ファイバーケーブルセンサを計測孔内に固定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-156215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の地盤変位計測方法では、計測孔内に充填したグラウト材に光ファイバーケーブルセンサが埋め込まれるため、地盤変位を計測した後に、光ファイバーケーブルセンサを回収できないという問題がある。例えば、OFDR方式(Optical Frequency Domain Reflectometry)の変位計測方法では、高価な光ファイバーケーブルセンサを用いる必要があるが、このような光ファイバーケーブルセンサを前記した従来の地盤変位計測方法に適用すると、施工コストが嵩んでしまう。
また、円形断面のガイド管の外周面の上下左右の位置に光ファイバーケーブルセンサを取り付け、このガイド管を円形断面の計測孔に挿入したときに、ガイド管が周方向に捻じれて、各光ファイバーケーブルセンサが上下鉛直および左右水平に配置されないことがある。
【0005】
本発明は、前記した問題を解決し、地盤変位を計測した後に、計測孔内から光ファイバーケーブルセンサを回収できる変位計測装置および地盤変位計測方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、第一の発明は、変位計測装置であって、計測孔に挿入されるガイド管と、前記ガイド管内で膨張収縮可能な袋状のパッカーと、前記パッカーの外面と前記ガイド管の内面との間に配置された光ファイバーケーブルセンサと、を備えている。前記光ファイバーケーブルセンサは、前記光ファイバーケーブルセンサの変位を測定する測定装置に接続可能である。前記パッカーを膨張させた状態では、前記光ファイバーケーブルセンサが前記パッカーの外面と前記ガイド管の内面との間に挟まれて固定される。
前記課題を解決するため、第二の発明は、地盤の変位を計測する地盤変位計測方法である。地盤に設けた計測孔に前記変位計測装置を挿入し、前記計測孔の内壁と前記ガイド管との間に充填材を充填して、前記ガイド管の位置決めを行う。続いて、前記パッカー内を加圧して前記パッカーを膨張させ、前記光ファイバーケーブルセンサを前記パッカーの外面と前記ガイド管の内面との間に挟んで固定する。そして、前記光ファイバーケーブルセンサの変位を計測した後に、前記パッカー内を減圧して前記パッカーを収縮させ、前記パッカーおよび前記光ファイバーケーブルセンサを前記ガイド管から抜き出す。
【0007】
本発明では、地盤に設けた計測孔に挿入したガイド管内でパッカーを膨張させ、光ファイバーケーブルセンサをパッカーの外面とガイド管の内面との間に挟むことで、ガイド管内に光ファイバーケーブルセンサを固定できる。そして、光ファイバーケーブルセンサを用いて地盤変位を計測した後に、パッカーを収縮して、光ファイバーケーブルセンサのガイド管への固定を解除することで、ガイド管内から光ファイバーケーブルセンサを回収できる。
このように、本発明では、地盤変位を計測した後に地盤内から光ファイバーケーブルセンサを回収できるため、高精度の変位計側が期待できる高価な光ファイバーケーブルセンサとパッカー装置を用いる場合でも、地盤変位の計測に要するコストを抑えることができる。つまり、OFDR方式の変位計測方法のように、高価な光ファイバーケーブルセンサとパッカー装置を用いた変位計測方法に本発明を適用して、地盤変位を精度良く計測できる。
前記した変位計測装置において、前記ガイド管を前後方向に延ばして、前記ガイド管の外面に少なくとも上下左右の四つ平面を形成した場合には、計測孔にガイド管を挿入するときに、ガイド管が軸回りに回転し難いため、光ファイバーケーブルセンサを計測孔の所定位置に正しく挿入できる。
前記した変位計測装置において、前記ガイド管を前後方向に延ばして、前記ガイド管の内面に少なくとも上下二つの平面または左右の二つ平面を形成することで、鉛直方向または水平方向の地盤変位を計測できる。
【0008】
前記した変位計測装置において、前記パッカーの外面と前記ガイド管の内面との間に平板を配置し、前記平板の内面を前記パッカーの外面に対峙させ、前記平板の外面を前記ガイド管の内面に対峙させる。前記平板の内面または外面には、前後方向に延びている窪み部を形成し、前記窪み部に前記光ファイバーケーブルセンサを嵌め込んだ場合には、光ファイバーケーブルセンサを安定させることができる。
また、前記窪み部を、前記平板の内面に形成し、前記パッカーを膨張させた状態では、前記光ファイバーケーブルセンサが前記パッカーの外面に接するように構成した場合には、地盤変位の計測精度を高めることができる。
前記した変位計測装置において、前記パッカーの上下左右の側方にそれぞれ前記平板を配置し、前記各平板にそれぞれ前記光ファイバーケーブルセンサを設けることで、水平方向および鉛直方向の地盤変位を計測できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の変位計測装置および地盤変位計測方法では、地盤変位を計測した後に地盤内から光ファイバーケーブルセンサを回収できるため、高精度な地盤変位の計測に要するコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るトンネルを示した側断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るトンネルを示した図で、図1のII-II断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る変位計測装置において、パッカーを収縮させた状態を示した軸断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る変位計測装置において、ガイド管、平板およびパッカーを示した斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る変位計測装置において、パッカーを膨張させた状態を示した軸断面図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る変位計測装置において、パッカーを膨張させた状態を示した軸断面図である。
図7】本発明の他の実施形態に係る変位計測装置において、ガイド管の軸断面が長方形である構成の軸断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るトンネル1を示した側断面図である。
本実施形態の変位計測装置10および地盤変位計測方法は、図1に示すトンネル1の切羽2前方の地盤変位を把握するものである。
図2は、本発明の実施形態に係るトンネル1を示した図で、図1のII-II断面図である。
本実施形態のトンネル1は、図2に示すように、山岳トンネル工法によって形成されたものであり、馬蹄形状の断面形状である。なお、トンネル1の施工方法や断面形状は限定されるものではなく、例えば、トンネルが円形断面でもよい。
トンネル1の壁部には、図1に示すように、延長方向に所定の間隔(例えば12m)毎に拡幅部3が形成されている。拡幅部3は、トンネル1の壁部を標準断面よりも外側に拡幅した部位である。本実施形態のトンネル1では、図2に示すように、延長方向に所定の間隔毎に五つの拡幅部3が形成されている。
拡幅部3は、トンネル1の左右の端部および頂部にそれぞれ形成されるとともに、左右の端部と頂部との間にそれぞれ形成されている。
トンネル1の周囲の地盤には、図1に示すように、拡幅部3から切羽2の前方に向けて斜め上向きに計測孔90が形成されている。計測孔90は、円筒状の鋼管91によって形成されている(図3参照)。図2に示すように、各拡幅部3からそれぞれ切羽2前方に向けて計測孔90が形成されている。
なお、図1に示す計測孔90を形成するための管体は、鋼管91に限定されるものではなく、例えば、樹脂製の管体を用いてもよい。
本実施形態では、トンネル削岩機を用いたAGF工法によって、鋼管91を地盤に埋設している。具体的には、鋼管91の先端部に掘削刃(図示せず)を取り付け、トンネル削岩機を用いて鋼管91を軸回りに回転させ、掘削刃によって地盤を掘削しながら鋼管91を地盤に挿入している。
【0012】
図3は、本発明の実施形態に係る変位計測装置10において、パッカー30を収縮させた状態を示した軸断面図である。
変位計測装置10は、図3に示すように、計測孔90に挿入されるガイド管20と、ガイド管20内に配置されたパッカー30と、パッカー30の外面とガイド管20の内面との間に配置された四枚の平板40および四本の光ファイバーケーブルセンサ50と、を備えている。
【0013】
図4は、本発明の実施形態に係る変位計測装置において、ガイド管、平板およびパッカーを示した斜視図である。
ガイド管20は、図4に示すように、前後方向に延びているPVC(ポリ塩化ビニル)製の管体である。なお、ガイド管20の材質は樹脂製に限定されるものではなく、例えば、鋼管を用いてもよい。
ガイド管20の外面には、上下左右の四つの平面21が形成されている。上下の平面21,21は水平に配置され、左右の平面21,21は鉛直に配置されている。
本実施形態のガイド管20は、図3に示すように、正方形の断面形状に形成されているが、長方形の断面形状でもよい。なお、隣り合う二つの平面21,21の間に傾斜面を形成して六角形や八角形等の多角形の断面形状に形成してもよい。
ガイド管20は、計測孔90の下部に配置されている。ガイド管20の外面と計測孔90の内面との間には、シリカレジンやセメントミルク等の充填材4が充填されており、この充填材4によってガイド管20が計測孔90内に位置決めされている。
【0014】
パッカー30は、図4に示すように、前後方向に延びている合成ゴム製の袋体である。パッカー30は内部を気体または液体によって加圧することで、膨張可能である。また、パッカー30を膨張させた後に、パッカー30の内部を減圧することで、収縮可能である。このように、パッカー30は、膨張収縮を繰り返すことが可能である。
なお、パッカー30の材質は合成ゴムに限定されるものではなく、膨張収縮可能であれば各種の材料を用いることができる。
膨張させる前のパッカー30は、図3に示すように、円形断面に形成されている。パッカー30の外面31は、ガイド管20の上下左右の内面22にそれぞれ間隔を空けて対峙している。
【0015】
平板40は、図4に示すように、前後方向に延びているPVC(ポリ塩化ビニル)製の板状の部材である。なお、平板40の材質はPVCに限定されるものではなく、各種の材料を用いることができる。
平板40は、図3に示すように、パッカー30の外面31とガイド管20の内面22との間に配置されている。パッカー30の側方には上下左右の四枚の平板40が配置されている。
平板40の内面42は、パッカー30の外面31に対峙し、平板40の外面41は、ガイド管20の内面22に対峙している。
【0016】
平板40の内面42には、前後方向に延びている窪み部43が形成されている(図4参照)。窪み部43は、平板40の幅方向の中央部に形成されている。また、窪み部43は、平板40の内面42から外側に向かうに連れて幅が小さくなるように三角形の断面形状に形成されている。なお、窪み部43の位置や断面形状は限定されるものではない。
本実施形態の変位計測装置10では、上下の平板40,40の窪み部43,43が左右方向において同じ位置に配置され、左右の平板40,40の窪み部43,43が上下方向において同じ位置に配置されている。
【0017】
光ファイバーケーブルセンサ50は、図3に示すように、前後方向に延びている。四本の光ファイバーケーブルセンサ50は、上下左右の平板40の窪み部43にそれぞれ嵌め込まれている。光ファイバーケーブルセンサ50を窪み部43に嵌め込んだ後に、エポキシ樹脂によって窪み部43をコーティングすることで、光ファイバーケーブルセンサ50が平板40の内面42に固定されている。
上下の光ファイバーケーブルセンサ50,50は、左右方向において同じ位置に配置され、左右の光ファイバーケーブルセンサ50,50は、上下方向において同じ位置に配置されている。
光ファイバーケーブルセンサ50は、図1に示すように、光ファイバーケーブルセンサ50の変位を測定する測定装置80に接続可能である。
測定装置80は、コンピュータであり、光ファイバーケーブルセンサ50に光を入射して散乱光が戻るまでの時間や散乱光の周波数分布を解析することで、光ファイバーケーブルセンサ50の径方向の変位を把握できる。本実施形態の測定装置80では、OFDR方式の変位計測方法によって光ファイバーケーブルセンサ50の変位を算出しているが、BOTDR方式やPPP-BOTA方式等の各種の解析方法によって光ファイバーケーブルセンサ50の変位を算出してもよい。
【0018】
図5は、本発明の実施形態に係る変位計測装置10において、パッカー30を膨張させた状態を示した軸断面図である。
図5に示すように、ガイド管20内でパッカー30を膨張させると、パッカー30によって平板40がガイド管20の内面22側に押し出され、平板40の外面41がガイド管20の内面22に押し付けられる。
また、パッカー30の外面31が上下左右の平板40の内面42にそれぞれ押し付けられることで、パッカー30の外面31に上下左右の四つの平面が形成され、パッカー30は四角形の断面形状に変形する。
そして、光ファイバーケーブルセンサ50がパッカー30の外面31とガイド管20の内面22との間に挟まれて固定される。光ファイバーケーブルセンサ50はパッカー30の外面31に接している。このようにして、上下左右の四本の光ファイバーケーブルセンサ50がガイド管20内に固定される。
【0019】
次に、本実施形態の変位計測装置10を用いた地盤変位計測方法について説明する。
まず、図1に示す鋼管91の先端部に掘削刃(図示せず)を取り付け、トンネル削岩機(図示せず)を用いて鋼管91をトンネル1の拡幅部3から切羽2前方の地盤に挿入する。これにより、鋼管91によって地盤に計測孔90が形成される。
また、図4に示すように、ガイド管20にパッカー30を挿入するとともに、パッカー30の外面とガイド管20の内面との間に上下左右の平板40を挿入する。なお、平板40には光ファイバーケーブルセンサ50が固定されている。
そして、図3に示すように、ガイド管20とともに、パッカー30、各平板40および各光ファイバーケーブルセンサ50を鋼管91の基端部から計測孔90に挿入する。
ガイド管20を計測孔90に挿入した後に、ガイド管20の外面と計測孔90の内面との間に充填材4を充填して、計測孔90内にガイド管20を位置決めする。
【0020】
図5に示すように、パッカー30内を加圧して、パッカー30を膨張させると、各平板40がガイド管20の内面22に押し付けられる。これにより、光ファイバーケーブルセンサ50がパッカー30の外面31とガイド管20の内面22との間に挟まれて固定される。このようにして、上下左右の光ファイバーケーブルセンサ50がガイド管20内に固定される。
地盤に変位が生じて、鋼管91の一部が湾曲すると、鋼管91の変位に追従してガイド管20および各光ファイバーケーブルセンサ50に変位が生じる。
そして、図1に示す測定装置80から光ファイバーケーブルセンサ50に光を入射して散乱光が戻るまでの時間や散乱光の周波数分布を解析することで、各光ファイバーケーブルセンサ50の変位を計測することができる。光ファイバーケーブルセンサ50の変位は、地盤の変位を示しているため、測定装置80によって切羽2前方の地盤変位を把握できる。
【0021】
切羽2前方の地盤変位を計測しながらトンネル1を計測孔90の先端部まで延長させた後に、図3に示すように、パッカー30内を減圧して、パッカー30を収縮させる。これにより、ガイド管20への各平板40および各光ファイバーケーブルセンサ50の固定が解除される。
ガイド管20の基端部からパッカー30および各平板40を抜き出して回収する。これにより、平板40とともに光ファイバーケーブルセンサ50をガイド管20内から回収できる。
同様にして、図1に示すトンネル1の切羽2前方の地盤に計測孔90を形成し、図3に示すように、計測孔90に変位計測装置10を挿入して地盤変位の計測を繰り返す。
【0022】
以上のような変位計測装置10および地盤変位計測方法では、図5に示すように、地盤に設けた計測孔90に挿入したガイド管20内でパッカー30を膨張させ、光ファイバーケーブルセンサ50をパッカー30の外面とガイド管20の内面との間に挟むことで、ガイド管20内に光ファイバーケーブルセンサ50を容易に固定できる。
そして、光ファイバーケーブルセンサ50を用いて地盤変位を計測した後に、図3に示すように、パッカー30を収縮して、光ファイバーケーブルセンサ50のガイド管20への固定を解除することで、ガイド管20内から光ファイバーケーブルセンサ50を回収できる。
このように、本実施形態の変位計測装置10および地盤変位計測方法では、地盤変位を計測した後に地盤内から光ファイバーケーブルセンサ50を回収できる。そのため、高精度の変位計側が期待できる高価な光ファイバーケーブルセンサ50とパッカー装置を用いる場合でも、地盤変位の計測に要するコストを抑えることができる。つまり、OFDR方式の変位計測方法のように、高価な光ファイバーケーブルセンサ50とパッカー装置を用いた変位計測方法に適用して、地盤変位を精度良く計測できる。
【0023】
本実施形態の変位計測装置10では、ガイド管20の外面に上下左右の四つの平面21が形成されている。この構成では、計測孔90にガイド管20を挿入するときに、ガイド管20が軸回りに回転し難いため、各光ファイバーケーブルセンサ50を計測孔90の所定位置に正しく挿入できる。
【0024】
本実施形態の変位計測装置10では、平板40に形成された窪み部43に光ファイバーケーブルセンサ50が嵌め込まれているため、ガイド管20内に光ファイバーケーブルセンサ50を安定させることができる。また、図5に示すように、パッカー30を膨張させたときに、光ファイバーケーブルセンサ50がパッカー30の外面に接すると、地盤変位の計測精度を高めることができる。
本実施形態の変位計測装置10では、パッカー30の上下左右の側方にそれぞれ平板40が配置され、各平板40にそれぞれ光ファイバーケーブルセンサ50が設けられている。さらに、上下の光ファイバーケーブルセンサ50,50を左右方向において同じ位置に配置し、左右の光ファイバーケーブルセンサ50,50を上下方向において同じ位置に配置している。このようにすると、水平方向および鉛直方向の地盤変位を精度良く計測できる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
本実施形態では、図1に示すように、トンネル1の拡幅部3から切羽2の前方に向けて斜め上向きに計測孔90が形成されているが、トンネル1に拡幅部3を形成することなく、トンネル1の内壁面から計測孔90を形成してもよい。
図6は、本発明の他の実施形態に係る変位計測装置10において、パッカー30を膨張させた状態を示した軸断面図である。
例えば、本実施形態の変位計測装置10では、図3に示すように、平板40の内面42に光ファイバーケーブルセンサ50が固定されているが、図6に示すように、平板40の外面41に窪み部43を形成し、その窪み部43に光ファイバーケーブルセンサ50を嵌め込んでもよい。
本実施形態の変位計測装置10では、図3に示すように、ガイド管20内に上下左右の四本の光ファイバーケーブルセンサ50が設けられているが、光ファイバーケーブルセンサ50の数や配置は限定されるものではない。
本実施形態の変位計測装置10では、光ファイバーケーブルセンサ50が平板40に固定されているが、平板40を設けることなく、光ファイバーケーブルセンサ50のみをガイド管20の外面と計測孔90の内面との間に配置してもよい。
本実施形態の地盤変位計測方法では、地盤に鋼管91を挿入することで計測孔90を形成しているが、地盤を掘削した孔を計測孔90としてもよい。
鋼管91、ガイド管20、パッカー30および平板40の形状や材質は限定されるものではなく、施工条件に応じて適宜に設定することができる。
なお、本実施形態の変位計測装置10のように、鋼管91よりもガイド管20が柔らかい材質である場合には、鋼管91の変位に追従してガイド管20が変位し易いため、地盤変位を精度良く計測できる。
図7は、本発明の他の実施形態に係る変位計測装置10において、ガイド管20の軸断面が長方形である構成の軸断面図である。
本実施形態の変位計測装置10では、ガイド管20の軸断面が正方形に形成されているが、図7に示すように、ガイド管20の軸断面を左右方向の辺よりも上下方向の辺が大きい長方形に形成してもよい。図7に示す変位計測装置10では、ガイド管20の長辺側となる左右両側に光ファイバーケーブルセンサ50および平板40が配置されている。このようにすると、平板40を安定させることができる。
なお、ガイド管20の軸断面を上下方向の辺よりも左右方向の辺が大きい長方形に形成し、ガイド管20の長辺側となる上下両側に光ファイバーケーブルセンサ50および平板40を配置してもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 トンネル
2 切羽
3 拡幅部
4 充填材
10 変位計測装置
20 ガイド管
21 平面
22 内面
30 パッカー
31 外面
40 平板
41 外面
42 内面
43 窪み部
50 光ファイバーケーブルセンサ
80 測定装置
90 計測孔
91 鋼管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7