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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086614
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】空缶プレス機
(51)【国際特許分類】
   B30B 9/32 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
B30B9/32 101P
B30B9/32 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201276
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000230445
【氏名又は名称】日本リフト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 忠彦
(57)【要約】
【課題】プレス室の大きさを適切に設定することで、大形の空缶のプレス処理が可能であって、コンパクトで構造が簡単な空缶プレス機を実現する。
【解決手段】空缶プレス機1は、空缶の入るプレス室11を有する筐体10と、プレス室11の一面を構成して筐体内側を摺動するプレス体20と、プレス体20を移動させる油圧シリンダ30と、プレス室11の開口11aを開閉する開閉扉12と、プレス体20の移動範囲を規定する2個のリミットスイッチLS1,LS2と、油圧シリンダ30に作動油を供給するパワーユニット40と、を備える。また、プレス体20によるプレス処理完了まで下部排出口11bを閉鎖するシャッタ14を設けておくことで、小形から大形に至る多様な空缶のプレス処理が可能となる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空缶の入るプレス室を有する筐体と、
前記プレス室の一面を構成して前記筐体内側を摺動するプレス体と、
前記プレス体を移動させる油圧シリンダと、
前記プレス室の空缶の入り口となる開口を開閉する開閉扉と、
前記プレス体の移動範囲を規定する検知手段と、
前記油圧シリンダに作動油を供給するパワーユニットと、を備え、
前記プレス室は前記開口とは別に下部排出口を有する、空缶プレス機。
【請求項2】
前記プレス体は空缶を押圧するプレス面と、前記筐体の内面に対し摺動する摺動面とを有する、請求項1に記載の空缶プレス機。
【請求項3】
前記プレス室の前記下部排出口に至る前記プレス室の底面が傾斜底面となっており、かつ前記下部排出口に連結されるか、若しくは前記下部排出口の下側に配置される排出部材は、傾斜排出面を有し、前記プレス体によってプレス処理したプレス処理済み空缶が、前記傾斜底面及び前記傾斜排出面を自重で落下する、請求項1又は2に記載の空缶プレス機。
【請求項4】
前記プレス体によるプレス処理完了まで前記下部排出口を閉鎖するシャッタが設けられている、請求項1乃至3に記載の空缶プレス機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空缶プレス機に係り、とくに一斗缶等の比較的大形の空缶をプレス処理するのに好適な空缶プレス機に関する。
【背景技術】
【0002】
ビール、ジュース等の容器であるアルミ缶、スチール缶等の空缶をプレス処理するための空缶プレス機は従来から種々提案されており、例えば下記特許文献1に提案されたものが知られている。
【0003】
また、一斗缶のように大形形状の空缶をプレスする空缶プレス機として、例えば下記特許文献2に提案されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-95547号公報
【特許文献2】特開2005-88043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構造は、一斗缶のような大形の空缶のプレス処理には適さない構造である。また、特許文献2の構造では、一斗缶のような大形の空缶のプレス処理に対応可能であるが、装置が複雑、大型化し、かつ大形の空缶のみ対応であって、小形空缶のプレス処理には不向きである。
【0006】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、大形の空缶のプレス処理をも可能した、コンパクトで構造が簡単な空缶プレス機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は空缶プレス機である。この空缶プレス機は、空缶の入るプレス室を有する筐体と、前記プレス室の一面を構成して前記筐体内側を摺動するプレス体と、前記プレス体を移動させる油圧シリンダと、前記プレス室の空缶の入り口となる開口を開閉する開閉扉と、前記プレス体の移動範囲を規定する検知手段と、前記油圧シリンダに作動油を供給するパワーユニットと、を備え、前記プレス室は前記開口とは別に下部排出口を有する。
【0008】
前記プレス体は空缶を押圧するプレス面と、前記筐体の内面に対し摺動する摺動面とを有するとよい。
【0009】
前記プレス室の前記下部排出口に至る前記プレス室の底面が傾斜底面となっており、かつ前記下部排出口に連結されるか、若しくは前記下部排出口の下側に配置される排出部材は、傾斜排出面を有し、前記プレス体によってプレス処理したプレス処理済み空缶が、前記傾斜底面及び前記傾斜排出面を自重で落下する構成とするとよい。
【0010】
前記プレス体によるプレス処理完了まで前記下部排出口を閉鎖するシャッタが設けられているとよい。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プレス室の大きさを適切に設定することで、大形の空缶をもプレス処理が可能であって、コンパクトで構造が簡単な空缶プレス機を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る空缶プレス機の実施の形態であって、プレス室の開閉扉を閉じた状態の前方よりみた斜視図。
図2】同じくプレス室の開閉扉を閉じた状態の右側方よりみた斜視図。
図3】同じくプレス室の開閉扉を開いた状態の前方よりみた斜視図。
図4】同じくプレス室の開閉扉を開いた状態であって、空缶をプレス室に入れる様子の左側方よりみた斜視図。
図5】実施の形態の一部を断面とした側面図。
図6】同じく前方よりみた内部構造の一部を鎖線で示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0015】
図1乃至図6において、空缶プレス機1は、空缶5(例えば、一斗缶)の入るプレス室11を有する筐体10と、プレス室11の一面を構成して筐体内側を摺動するプレス体20と、プレス体20を移動させる複動油圧シリンダ30と、プレス室11の開口11aを開閉する開閉扉12と、複動油圧シリンダ30に作動油を供給するパワーユニット40と、を備える。複動油圧シリンダ30は筐体10の上部分の内側に配置され、パワーユニット40は筐体10の下部分の内側に設置される。
【0016】
プレス室11は、筐体前面において斜め上向の開口11aを有しており、プレス体20が上方位置(引き込み位置)にあるときのプレス室11の内法は、プレス対象の空缶5の最大寸法のもの、例えば一斗缶が入る形状、寸法である。開閉扉12は、開口11aの上辺に対してヒンジ15を介して開閉自在に取り付けられる。開閉扉12には手動開閉のための把手13が取り付けられている。
【0017】
図5に示すように、プレス室11の下部にはプレス処理したプレス処理済み空缶5A(図4)を排出するための下部排出口11bが設けられている。プレス室11の内側又は外側には下部排出口11bを開閉するシャッタ14が設けられている。シャッタ14はプレス体20によるプレス処理完了まで下部排出口11bを閉鎖する。一斗缶のような下部排出口11bよりも大きな空缶の場合にはシャッタ14は不要であるが、ジュース缶のような下部排出口11bより小さい空缶の場合にはプレス処理完了まで下部排出口11bをシャッタ14で閉じておく必要がある。
【0018】
図5及び図6(パワーユニットの図示省略)に示すように、筐体10の内側を摺動するプレス体20は、有底角筒状であって、プレス室11内に入れられた空缶5を押圧するプレス面21と、プレス面21に接続して筐体10の内側を摺動する摺動面22とを有する。プレス面21はプレス室11の傾斜底面11cに対向して移動する一面(傾斜底面11cと平行な傾斜面)を構成するものであり、プレス面21の裏面には補強用角材23が固着されている。筐体10の内側面に摺動ガイド筒17が密着固定されていて、プレス体20の摺動面22が摺動ガイド筒17の内面に対し摺動するため、空缶5Aのプレス動作(押しつぶし動作)中に複動油圧シリンダ30のピストンロッドに過大な力が働くのを防止できる。
【0019】
複動油圧シリンダ30の上端部は筐体10の内側上部に固定のブラケット25にピン26で枢着(回転自在に取り付け)され、下端部はプレス面21の裏面に固定のブラケット27にピン28で枢着される。複動油圧シリンダ30は、筐体10内の下部に設置されたパワーユニット40から作動油の供給を受けて、伸縮動作を行うことができる。つまり、プレス面21を上昇限位置(引き込み位置)から下降限位置(押し出し位置)に向けて移動させる動作と、逆に下降限位置(押し出し位置)から上昇限位置(引き込み位置)に復帰させる動作とを行わせることができる。パワーユニット40は、商用電源AC100Vの供給を受けて作動する電動モータと、電動モータで回転駆動されて作動油を複動油圧シリンダ30に供給するポンプと、オイルタンク等とを有する周知の構造である。
【0020】
図5のように、プレス室11内のプレス体20の位置を検知する検知手段として第1及び第2リミットスイッチLS1,LS2が設けられている。第1リミットスイッチLS1は、プレス室11の上部位置に配置されてプレス体20が上昇限位置(引き込み位置)に復帰していることを検知する。第1リミットスイッチLS1の上昇限位置復帰検知によって、複動油圧シリンダ30は縮動動作を停止する。つまり、複動油圧シリンダ30の縮動動作が停止するようにパワーユニット40が制御される。第2リミットスイッチLS2は、プレス面21に対向するプレス室11の底面11c近傍に配置されてプレス体20が下降限位置(押し出し位置)に到達したことを検知する。第2リミットスイッチLS2の下降限位置到達検知によって、複動油圧シリンダ30は伸動動作を停止する。つまり、複動油圧シリンダ30の伸動動作が停止するようにパワーユニット40が制御される。
【0021】
図5に示すように、プレス室11の下部排出口11bに至るプレス室11の底面は、傾斜底面11cとなっている。傾斜底面11cはプレス体20によってプレス処理したプレス処理済み空缶5Aが自重で落下する傾斜面であって、例えば水平面に対して略45度傾斜している。筐体10の下部分の内側には、下部排出口11bの下側に配置される排出部材50が配置、固定されている。排出部材50は、傾斜排出面50aを有し、プレス体20によってプレス処理したプレス処理済み空缶5Aが、傾斜底面11c及び傾斜排出面50aを自重で落下する構成である。傾斜排出面50aは、例えば水平面に対して略45度傾斜している。なお、図5に示すように、下部排出口11bの真下に対応する部分の傾斜排出面50aを緩斜面50bとしてプレス処理済み空缶5Aの落下速度を低下させるようにしてもよい。また、傾斜排出面50aをプレス室11の傾斜底面11cに連結、接続して、連続する傾斜面を構成することも可能である。
【0022】
筐体10の側面の開閉扉12の脇の位置にスイッチボックス60が取り付けられており、スイッチボックス60の正面にはメインスイッチ61とプレス開始スイッチ62とが設けられている。メインスイッチ61をオンにすると、パワーユニット40へのAC100Vの供給がオンになって、空缶プレス機1が動作可能な状態となる。プレス開始スイッチ62は開閉扉12が閉じている条件下でオンにすると、複動油圧シリンダ30に作動油が供給されてプレス体20の下降により空缶5のプレス動作(押しつぶし動作)が実行される。
【0023】
以上の実施の形態の構成において、図1及び図2の空缶プレス機1の開閉扉12が閉じた状態で、メインスイッチ61をオンにして、空缶プレス機1を動作可能な状態にする。次いで、図3のように開閉扉12を開け、図4のようにプレス室11内に空缶5を入れて開閉扉12を閉める。
【0024】
その後、プレス開始スイッチ62をオンにし、パワーユニット40を作動させて複動油圧シリンダ30が伸長するように作動油を供給する。複動油圧シリンダ30が伸長することで、プレス体20のプレス面21がプレス室11の傾斜底面11cに向けて下降して空缶5をプレス処理する。プレス体20の下降限位置は第2リミットスイッチLS2で検知され、複動油圧シリンダ30は停止する。
【0025】
プレス処理後は、プレス室11の下部排出口11bを閉じていたシャッタ14が開き、プレス処理したプレス処理済み空缶5Aが、傾斜底面11cを自重で落下し、下部排出口11bを通過し、さらに傾斜排出面50aを自重で落下して図4のように空缶プレス機1の外部に自動排出される。また、複動油圧シリンダ30は、プレス体20の上昇限位置が第1リミットスイッチLS1で検知されるまで縮動し、上昇限位置にて停止する。
【0026】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0027】
(1) 筐体10に設けられるプレス室11の大きさを適切に設定することで、小形から大形に至る空缶をプレス処理可能であって、コンパクトで簡単な構造の空缶プレス機1を実現できる。
【0028】
(2) プレス室11の一面を構成して筐体10の内側を摺動するプレス体20は、空缶を押圧するプレス面21と、筐体10の内面に密着固定された摺動ガイド筒17内面に対し摺動する摺動面22とを有するため、複動油圧シリンダ30のプレス動作時にピストンロッドに過大な力が加わることが無い。筐体10を摺動ガイド筒17で補強した構造体でプレス体20をガイドするため、別にプレス体のガイド機構を設ける必要がなく、構造の簡素化及び小型化を図ることができる。
【0029】
(3) プレス室11の下部排出口11bに至る底面が傾斜底面11cとなっており、かつ下部排出口11bに連結されるか、若しくは下部排出口11bの下側に配置される排出部材50は、傾斜排出面50aを有しているので、プレス体20によってプレス処理したプレス処理済み空缶5A(図4)が、傾斜底面11c及び傾斜排出面50aを自重で落下する。このため、プレス処理済み空缶5Aを排出するための特別な付加機構は不要であり、構造の簡素化を図り得る。
【0030】
(4) プレス体20によるプレス処理完了までプレス室11の下部排出口11bを閉鎖するシャッタ14がプレス室11に設けられているため、下部排出口11bの開口寸法よりも小さい空缶のプレス処理も可能であり、多用途に使用可能な空缶プレス機1を実現できる。
【0031】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0032】
上記実施の形態では、プレス動作開始のためにプレス開始スイッチ62を設けたが、プレス開始スイッチ62を省略して、プレス室11内に空缶有り、かつ開閉扉12が閉じられている条件下で、プレス動作を開始する設定としてもよい。
【0033】
パワーユニット40はAC100V利用としたが、これに限定されず、筐体内に蓄電池を設けて蓄電池を電源として利用する構成も可能である。
【0034】
複動油圧シリンダ30の代わりに単動油圧シリンダを用い、プレス体20の復帰動作をバネ等の復帰手段で行う構成も可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 空缶プレス機
5 空缶
5A プレス処理済み空缶
10 筐体
11 プレス室
11a 開口
11b 下部排出口
11c 傾斜底面
12 開閉扉
14 シャッタ
20 プレス体
21 プレス面
22 摺動面
30 複動油圧シリンダ
40 パワーユニット
50 排出部材
50a 傾斜排出面
図1
図2
図3
図4
図5
図6