(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086616
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】高温鋼材の割れ判定方法、高温鋼材の圧延方法及び高温鋼材の割れ判定モデルの生成方法
(51)【国際特許分類】
B21C 51/00 20060101AFI20230615BHJP
B21B 38/00 20060101ALI20230615BHJP
B21B 1/26 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
B21C51/00 P
B21B38/00 F
B21B1/26 B
B21C51/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201278
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健
【テーマコード(参考)】
4E002
【Fターム(参考)】
4E002AD02
4E002CB04
(57)【要約】
【課題】高温鋼材の表面に割れが発生しているか否かを高い精度で判定可能な高温鋼材の割れ判定方法、高温鋼材の圧延方法及び高温鋼材の割れ判定モデルの生成方法が提供される。
【解決手段】高温鋼材の割れ判定方法は、高温鋼材の表面を撮影することにより取得した画像データを入力データ、高温鋼材の割れ情報を出力データとして、機械学習によって学習された割れ判定モデルを用いて、高温鋼材の割れを判定するステップを含む。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温鋼材の表面を撮影することにより取得した画像データを入力データ、前記高温鋼材の割れ情報を出力データとして、機械学習によって学習された割れ判定モデルを用いて、前記高温鋼材の割れを判定するステップを含む、高温鋼材の割れ判定方法。
【請求項2】
前記割れ判定モデルは、前記入力データとして、前記高温鋼材の属性情報から選択した1又は2以上のパラメータを含む、請求項1に記載の高温鋼材の割れ判定方法。
【請求項3】
前記高温鋼材は、熱延ラインの粗圧延機により圧延されるシートバーである、請求項1又は2に記載の高温鋼材の割れ判定方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の高温鋼材の割れ判定方法によって前記高温鋼材に割れがあると判定された場合に、前記割れ情報に基づいて、前記高温鋼材の表面の手入れを行う、又は、前記高温鋼材をその後の製造ラインに搬送されないようにする処置工程を含む、高温鋼材の圧延方法。
【請求項5】
高温鋼材の表面を撮影することにより取得した画像データを入力実績データ、前記高温鋼材の割れ情報を出力実績データとした、複数の学習用データを用いて、機械学習によって、前記高温鋼材の割れを判定する割れ判定モデルを生成するステップを含む、高温鋼材の割れ判定モデルの生成方法。
【請求項6】
高温鋼材の表面を撮影することにより取得した画像データの実績データと、前記高温鋼材の割れ情報の実績データと、を取得するデータ取得ステップと、
前記データ取得ステップで取得した画像データの実績データに対して画像加工処理を施すことにより生成した画像加工データを入力実績データ、前記画像加工データに対応する前記高温鋼材の割れ情報の実績データを出力実績データとした、複数の学習用データを用いて、機械学習によって、前記高温鋼材の割れを判定する割れ判定モデルを生成するステップを含む、高温鋼材の割れ判定モデルの生成方法。
【請求項7】
前記機械学習の手法として、畳み込みニューラルネットワークが用いられる、請求項5又は6に記載の高温鋼材の割れ判定モデルの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高温鋼材の割れ判定方法、高温鋼材の圧延方法及び高温鋼材の割れ判定モデルの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板など金属板は、連続鋳造によって製造される鋳片(スラブ)を直送で又は再加熱を行った後に、熱間圧延を行うことにより製造される。連続鋳造ラインにおいて、鋳型に注入された溶鋼が鋳型内で一次冷却され、表面が凝固した状態で引き抜かれ、さらに2次冷却により内部の凝固が完了した後に、ガス切断機等のカッタにより切断されてスラブとなる。連続鋳造ラインにおいて、凝固過程における曲げ又は曲げ戻しの変形により応力が作用することで、スラブの表面に割れが発生する場合がある。特に、高強度鋼板の素材となるスラブは、合金成分を比較的多く含み、割れが生じやすい。
【0003】
一方、連続鋳造によって製造されたスラブに対して熱間圧延を行う設備としては、熱延ライン及び厚板圧延ラインなどがあり、熱間圧延工程においても鋼材の表面に割れが発生する場合がある。熱延ラインでは、加熱炉により鋼片素材であるスラブが1200℃程度に加熱された後、粗圧延機により熱間圧延されて、おおよそ30~50mm程度の板厚の粗バーと呼ばれる半製品の被圧延材が製造される。次に、被圧延材の先端部がクロップシャーにより切断された後、被圧延材が5~7スタンドの仕上げ圧延機により仕上げ圧延され、板厚0.8~10mm程度の熱延鋼板が製造される。熱延鋼板はランアウトテーブルの冷却装置によって冷却された後、巻取装置によって巻き取られる。熱延ラインにおける熱間圧延工程では、粗圧延機及び仕上げ圧延機により圧延を行う過程で、被圧延材の表面に割れが観察される場合がある。一方、厚板圧延ラインでは、1基又は2基の圧延機により、板厚6~30mm程度の鋼板が製造される。その際、スラブを多パス圧延により減厚する途中で、鋼材の表面に割れが観察される場合もある。
【0004】
このような高温の状態にある鋼材の表面に割れが生じると、熱間圧延工程の途中で板破断が生じ、設備の破損などを伴う操業トラブルの原因となり得る。
【0005】
これに対して、従来、製造ラインの操作室等から高温鋼材を目視により観察し、鋼材の表面に割れがあるかないかを確認することが行われていた。また、特許文献1では、熱延ラインにおける粗圧延機により圧延したシートバーの全面の温度分布を測定し、その代表温度との温度偏差が所定範囲を超えて外れた部分を穴開きとして判定する方法が開示されている。この場合の「穴あき」は、高温鋼材であるシートバーの割れが拡大して、板厚方向に貫通した割れと考えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、熱延ラインで搬送される高温鋼材では、表面における酸化物であるスケールの存在、脱スケールのためのデスケーリング水、圧延ロールの冷却水などによる霧状水滴の存在、鋼材上面の水乗りなどの影響により、割れ判定の精度が低下する場合があった。
【0008】
また、特許文献1による方法でも、鋼材表面の温度分布の測定に際して、スケール、霧状水滴、鋼材への水乗りなどの外乱が生じることがあり得るため、さらなる改善の余地があった。
【0009】
さらに、高温鋼材に発生した割れを十分な精度で検出できない場合に、割れが発生した高温鋼材に対して製造ラインでの製造中に適切な処置を行うことが困難であるという、製造ラインへの影響が生じる。
【0010】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、高温鋼材の表面に割れが発生しているか否かを高い精度で判定可能な高温鋼材の割れ判定方法、高温鋼材の圧延方法及び高温鋼材の割れ判定モデルの生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一実施形態に係る高温鋼材の割れ判定方法は、
高温鋼材の表面を撮影することにより取得した画像データを入力データ、前記高温鋼材の割れ情報を出力データとして、機械学習によって学習された割れ判定モデルを用いて、前記高温鋼材の割れを判定するステップを含む。
【0012】
本開示の一実施形態に係る高温鋼材の圧延方法は、
上記の高温鋼材の割れ判定方法によって前記高温鋼材に割れがあると判定された場合に、前記割れ情報に基づいて、前記高温鋼材の表面の手入れを行う、又は、前記高温鋼材をその後の製造ラインに搬送されないようにする処置工程を含む。
【0013】
本開示の一実施形態に係る高温鋼材の割れ判定モデルの生成方法は、
高温鋼材の表面を撮影することにより取得した画像データを入力実績データ、前記高温鋼材の割れ情報を出力実績データとした、複数の学習用データを用いて、機械学習によって、前記高温鋼材の割れを判定する割れ判定モデルを生成するステップを含む。
【0014】
本開示の一実施形態に係る高温鋼材の割れ判定モデルの生成方法は、
高温鋼材の表面を撮影することにより取得した画像データの実績データと、前記高温鋼材の割れ情報の実績データと、を取得するデータ取得ステップと、
前記データ取得ステップで取得した画像データの実績データに対して画像加工処理を施すことにより生成した画像加工データを入力実績データ、前記画像加工データに対応する前記高温鋼材の割れ情報の実績データを出力実績データとした、複数の学習用データを用いて、機械学習によって、前記高温鋼材の割れを判定する割れ判定モデルを生成するステップを含む。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、高温鋼材の表面に割れが発生しているか否かを高い精度で判定可能な高温鋼材の割れ判定方法、高温鋼材の圧延方法及び高温鋼材の割れ判定モデルの生成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、熱延鋼板を製造するための熱延ラインの構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、粗圧延機について詳細に説明するための図である。
【
図3】
図3は、高温鋼材の画像を取得するための撮像装置を説明する図である。
【
図4】
図4は、シートバーの表面に生じる割れを例示する図である。
【
図5】
図5は、一実施形態における割れ判定モデル生成部を説明するための図である。
【
図6】
図6は、画像加工データを取得する方法について説明する図である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係る割れ判定モデルの生成方法で用いることができる畳み込みニューラルネットワークを説明するための図である。
【
図8】
図8は、一実施形態における割れ判定部の動作を例示する図である。
【
図9】
図9は、別の実施形態における割れ判定モデル生成部を説明するための図である。
【
図10】
図10は、別の実施形態に係る割れ判定モデルの生成方法で用いることができる畳み込みニューラルネットワークを説明するための図である。
【
図11】
図11は、別の実施形態における割れ判定部の動作を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係る高温鋼材の割れ判定方法、高温鋼材の圧延方法及び高温鋼材の割れ判定モデルの生成方法が説明される。
【0018】
<高温鋼材>
本開示における高温鋼材とは、鋼板の表面温度が概ね600℃以上、1250℃以下の範囲にある鋼材を指す。高温鋼材には、連続鋳造により製造されたスラブ、ビレット、ブルームが含まれる。また、高温鋼材は、熱延ラインにおいて、加熱炉から抽出され、粗圧延工程から仕上げ圧延工程に至るまでの鋼材又は鋼帯を含む。さらに、高温鋼材は、厚板圧延ラインにおける粗圧延又は仕上げ圧延工程における鋼材又は鋼板を含むものとする。高温鋼材は、その表面に割れが生じることにより、鋼材の表面と割れによる開口部との温度差に起因して、外観上の色又は輝度の違いが生じることで割れが発生していることを認識できる。
【0019】
本実施形態では、高温鋼材として、熱延ラインにおける粗圧延工程で圧延される鋼材を対象に含む。粗圧延機では加熱されたスラブを複数の圧延パスにより減厚し、仕上げ圧延に供するための粗バーを生成する。本実施形態では、粗圧延における複数の圧延パスの途中段階での鋼材を高温鋼材とすることができ、そのような高温鋼材をシートバーと呼ぶこととする。粗圧延工程におけるシートバーの表面に割れが生じると、仕上げ圧延機により仕上げ圧延が行われる際に、被圧延材が破断して仕上げ圧延設備を破損させるなど、操業トラブルを引き起こすことがあり得るため、高温鋼材の割れの有無を早期に判定する必要がある。
【0020】
以下では、高温鋼材として、熱延ラインの粗圧延機で圧延されるシートバーを対象に、本開示の実施形態を説明する。
【0021】
<熱延ラインの概要>
図1は、熱延鋼板を製造するための熱延ラインの構成を示す模式図である。
図1に示すように、熱延ライン10は、加熱炉1、デスケーリング装置21、幅圧下装置3、粗圧延機4、仕上げ圧延機5、水冷装置6及びコイラー7を備えている。不図示の鋳造スラブは、加熱炉1に装入された後、所定の設定温度(例えば1100~1250℃)まで加熱され、熱間スラブとして加熱炉1から抽出される。加熱炉1から抽出されたスラブは、デスケーリング装置21によって表面に生成した1次スケールが除去された後、幅圧下装置3によって所定の設定幅まで幅圧下される。幅圧下されたスラブは、粗圧延機4において所定厚さまで圧延されることで粗バーとして仕上げ圧延機5に搬送される。粗圧延機4は可逆式圧延機4aを含んでよいし、非可逆式圧延機4bを含んでよい。仕上げ圧延機5では、5から7スタンドの連続式圧延機により製品厚さまで圧延される。仕上げ圧延機5の下流側にはランアウトテーブルと呼ばれる設備に水冷装置6が備えられており、圧延材は、所定の温度まで冷却された後、コイラー7によってコイル状に巻き取られる。
【0022】
図2は、粗圧延機について詳細に説明するための図である。
図2に示す粗圧延機は、3基の圧延機から構成されている。ここで、粗圧延機は、2基以下又は4基以上の圧延機から構成されてよい。加熱炉1から抽出したスラブは加熱炉1内で生じた1次スケールを除去するためのデスケーリング装置21により脱スケールされ、幅圧下装置3により幅圧下が行われた後に、
図2に示す粗圧延機に搬送される。第1の粗圧延機41は、2段式の可逆式圧延機であり、幅圧下が行われた高温鋼材の多パス圧延が行われる。第1の粗圧延機41の上流側及び下流側には、シートバー12の2次スケールを除去するための粗デスケーリング装置13が配置されている。粗デスケーリング装置13は、シートバー12が第1の粗圧延機41により圧延される上流側又は下流側から高圧水を噴射してシートバー12の表面に生成した2次スケールを除去する。ここで、第1の粗圧延機41の上流側で高圧水を噴射するか、下流側で高圧水を噴射するかは任意に選択でき、両方から高圧水を噴射してよい。
【0023】
第1の粗圧延機41で所定の板厚まで減厚されたシートバー12は、第2の粗圧延機42に搬送される。
図2の例では、第2の粗圧延機42は可逆式圧延機であり、シートバー12の多パス圧延が行われる。第2の粗圧延機42の上流側及び下流側にも、シートバー12の2次スケールを除去するための粗デスケーリング装置13が配置されている。さらに、第2の粗圧延機42で所定の板厚まで減厚されたシートバー12は、第3の粗圧延機43に搬送され、非可逆式圧延機である第3の粗圧延機43により単パス圧延が行われる。本実施形態では、第3の粗圧延機43が粗圧延工程を実行する最終の圧延機となっており、第3の粗圧延機43で圧延されたシートバー12は、仕上げ圧延機5まで搬送され、シートバー12の仕上げ圧延が行われる。
【0024】
本実施形態では、粗圧延機4で圧延されるシートバー12を撮影するためのカメラ20が配置される。
図2に示す例では、第1の粗圧延機41の下流側にカメラ20が配置されている。しかし、シートバー12を撮影するカメラ20は、第1の粗圧延機41、第2の粗圧延機42及び第3の粗圧延機43のいずれかの圧延機の近くに設置されてよい。また、カメラ20は、これらの圧延機のいずれかの上流側又は下流側などに設置されてよい。その際、異なる位置に複数のカメラ20が配置されてよい。カメラ20は、粗圧延機4における搬送テーブルの上方に設置して、シートバー12の上面から撮影するように配置するのが好ましい。シートバー12の下面側には搬送ロールがあるため、シートバー12の全面の画像を取得するのが難しい場合があるからである。例えば、粗圧延機4のライン方向を横切るように設置された粗圧延機デッキ上から撮影するようにカメラ20が配置されてよい。
【0025】
カメラ20を配置するライン方向の位置としては、カメラ20の撮影位置をシートバー12の全長が通過するような位置とするのが好ましい。その際、
図2に示すように、第1の粗圧延機41の下流側に粗デスケーリング装置13が配置され、粗デスケーリング装置13から噴射された水がシートバー12の上面に乗り水(水乗り)となることがある。そのため、カメラ20は粗デスケーリング装置13から1.5m以上離れた位置を撮影するように配置するのが好ましい。シートバー12の乗り水が、高温鋼材の割れ判定のための画像に対して外乱となる場合があるからである。ここで、カメラ20によるシートバー12の撮影は、シートバー12が粗圧延機4の下流側に向けて搬送されている状態であっても、上流側に向けて搬送されている状態であっても、いずれでも構わない。シートバー12の全長に対して、撮影した画像が得られればよい。
【0026】
本実施形態では、カメラ20は2次元カメラ(エリアカメラ)を用いる。カメラ20は、カラーカメラであっても、モノクロカメラであってよい。ただし、シートバー12の画像は、板幅方向端部の両方のエッジ部が含まれるようにして、シートバー12の全長を撮像するものが好ましい。
【0027】
図3は、高温鋼材の画像を取得するための撮像装置を説明する図である。
図3に示す高温鋼材の撮像装置は、複数のカメラ20により高温鋼材の画像を取得するものである。高温鋼材を撮影する複数のカメラ20は、ハブ(HUB)を介してVMS(Video Management System)サーバーと接続される。VMSサーバーは撮像制御装置との間で高温鋼材の画像を受け渡す。撮像制御装置は製造ラインの制御用コントローラ(PLC)と接続されている。本実施形態において、PLCは高温鋼材がカメラ20による撮像位置を通過するタイミングで撮像制御装置に対して撮影トリガを送信する。撮像制御装置は、PLCから受信した撮影トリガに基づいて、VMSサーバーに対して画像撮像コマンドを送信し、コマンド要求を実行する。VMSサーバーは、1又は2以上のカメラ20を管理する機能を有する管理サーバーと録画機能を有する録画サーバーから構成される。VMSサーバーは、撮像制御装置から受信した画像撮像コマンドに基づき、VMSサーバーが管理するカメラ20から画像を取得し、撮像制御装置に画像を送信する。このとき撮像制御装置は、PLCから高温鋼材の尾端部がカメラ20による撮像位置を通り抜けるタイミングで撮影停止トリガを受信するように構成し、撮影トリガから撮影停止トリガの間でVMSサーバーから画像を取得するようにしてよい。また、撮像制御装置はVMSサーバーから取得する画像の輝度値などに基づいて、高温鋼材がカメラ20による撮像位置を通り抜けるタイミングを判定し、これにより撮影停止のコマンドをVMSサーバーに送ってよい。
【0028】
本実施形態では、このようにして取得された高温鋼材の画像を、高温鋼材の画像データと呼ぶ。また、撮像制御装置は高温鋼材の搬送方向に対して連続的に撮像した2以上の画像を用いて、それらの重複部分を削除し、高温鋼材の全長(先端部から尾端部まで)を撮像した1枚の画像を生成して、これを高温鋼材の画像データとしてよい。ここで、撮像制御装置は、高温鋼材の画像データについて、必要に応じて画像のトリミング、明暗調整、コントラスト調整などを行ってから後述するデータ取得部に送るようにしてよい。
【0029】
<高温鋼材の割れ情報>
本実施形態における高温鋼材の割れ情報とは、高温鋼材の上面又は下面から観察される、高温鋼材の割れの有無に関する情報をいう。高温鋼材の割れは、き裂だけでなく穴あきを含むものとする。高温鋼材のき裂は、進展している方向が鋼材の長手方向であるものも、幅方向であるものも含む。また、高温鋼材の割れは、表面の一か所に生じているものも、2箇所以上に生じているものも含む。高温鋼材に割れが生じる場合に、鋼材の表面と割れによる開口部との温度差に起因して、外観上の色、輝度などの違いが生じる。その部分の輪郭形状に関する特徴により割れの有無が判定され得る。
【0030】
図4は、シートバー12の表面に生じる割れを例示する図である。シートバー12の先端部に近い位置の表面に、幅方向に長い形状の割れが2箇所生じている。割れが生じている部分の内部に比べて、周囲が暗く見えるのは、正常部におけるシートバー12の表面の温度が比較的低いことと、その部分に一定の2次スケールが生成していることによる。これに対して、割れが生じている部分の内部は、比較的温度が高いシートバー12の内部が露出していることと、その部分における2次スケールの生成量が少ないため、比較的明るい画像となっている。このような高温鋼材の表面に比較的シャープな輪郭形状を示す領域が観察され、その内部と周囲との輝度差が生じていることから高温鋼材の割れを判定することができる。これに対して、シートバー12の表面に冷却水の不均一などに起因する温度ムラが生じている場合には、
図4に示す輝度差よりも比較的広い範囲でなだらかな色調の変化となる。また、シートバー12の表面に水乗りが生じている場合には、細かな斑点状の模様が多数観察されるようになる。
【0031】
<割れ判定モデル生成部>
本実施形態では、高温鋼材の割れを判定する割れ判定モデルを生成する割れ判定モデル生成部を備える。割れ判定モデルは、高温鋼材の表面を撮影することにより取得した画像データを入力実績データ、高温鋼材の割れ情報を出力実績データとした、複数の学習用データを用いた機械学習によって生成される。上記のように、シートバー12の表面に冷却水の不均一又は水乗りがあると
図4の例とは異なる特徴を有する高温鋼材の画像データが得られる。このような画像も含めて機械学習によって学習することによって、冷却水の不均一又は水乗りがあっても割れを精度よく検出できる割れ判定モデルを生成することができる。
【0032】
図5は、割れ判定モデル生成部を説明するための図である。本実施形態の割れ判定モデル生成部は、データベース部と機械学習部を含んで構成される。データベース部は、高温鋼材の表面を撮影した画像データの実績データと、その画像データの実績データ又は画像データの実績データを撮影した位置での観察に基づいて、検査者が判定した高温鋼材の割れの有無に関する割れ情報の実績データを蓄積する。検査者は例えば操業オペレータ又は品質管理担当者であってよい。
【0033】
検査者が高温鋼材の表面にある割れを発見した場合に、高温鋼材の製造ラインの制御用計算機、その上位計算機又は品質管理用の計算機などに対する入力が受け付けられる。このような入力に基づく高温鋼材の割れ情報の実績データは、データ取得部を介して割れ判定モデル生成部に送られる。ただし、高温鋼材の割れが発生する頻度は高くないため、検査者が高温鋼材に割れが発生していると判定した場合のみ、高温鋼材の割れ情報が入力されるようにすればよい。割れ情報についての入力がない場合に、割れの発生がなかったという割れ情報が割り当てられる。また、撮像制御装置が取得した高温鋼材の画像データの実績データがデータ取得部に送られる。ここで、割れ判定モデル生成部が、高温鋼材の画像データの実績データと、割れ情報の実績データと、を取得するステップを、データ取得ステップと称することがある。生成された高温鋼材の割れ情報の実績データは、高温鋼材の画像データの実績データと共に、割れ判定モデル生成部のデータベース部に蓄積される。データベース部において、割れ情報の実績データは、対応する高温鋼材の画像データの実績データと関連付けられて、データセットとして蓄積される。ここで、割れ判定モデル生成部は、データベース部に蓄積されたデータセットに対して画像圧縮などの予備処理を実行する予備処理部を備えてよい。また、割れ判定モデル生成部は、データベース部に蓄積される前の高温鋼材の画像データの実績データに対して、外乱が生じた状態を模擬した画像加工データを得るための画像加工処理を実行する画像加工処理部を備えてよい。また、データ取得部は、検査者の入力を受け付ける計算機及び撮像制御装置と通信可能であって、割れ判定モデル生成部にアクセス可能なコンピュータ等の装置で実現され得る。
【0034】
ここで、検査者による高温鋼材の割れの判定は、高温鋼材の製造中に行われる必要がない。例えば製造中に撮影した画像データの実績データを保存しておき、保存された画像データの実績データを事後に観察することによって高温鋼材の割れがあったことを判定してよい。高温鋼材が搬送されている時点で、検査者が割れの有無を常時判定するのは困難な場合もあり、操業中の目視判定では割れを見逃す場合もあり得るからである。割れの判定対象となる高温鋼材には、例えば製品を識別する製品番号、生産管理を行うためのコイル番号等の識別情報が付されているため、高温鋼材の画像データの実績データと対応付けを行うことができる。
【0035】
割れ判定モデル生成部は、高温鋼材を製造する製造ラインを制御するための制御用計算機に設けることができる。また、割れ判定モデル生成部は、制御用計算機に製造指示を与える上位計算機に設けられてよく、他の機器と通信可能である独立の計算機に設けられてよい。ここで、割れ判定モデル生成部は、データベース部に蓄積されたデータセットを受信可能な装置を用いて、データベース部とは別の装置で構成されてよい。つまり、データベース部は、割れ判定モデル生成部を構成する装置に内蔵されずに、外部に設けられてよい。
【0036】
データベース部には、100個以上のデータセットが蓄積される。好ましくは500個以上、より好ましくは1000個以上である。
【0037】
データベース部に蓄積される実績データについては、必要に応じてデータ取得部によりスクリーニングが行われてよい。高温鋼材を撮影する画像データの実績データには、製造ラインで発生する水蒸気などが外乱となって不鮮明な画像が撮影される場合もあるからであり、信頼性の高いデータを蓄積することにより割れ判定モデルの判定精度が向上するからである。一方、データベース部に蓄積されるデータセットは、一定のデータセット数を上限として、その上限内でデータベース部に蓄積されるデータセットを適宜更新してよい。スクリーニング及び更新によって、さらに高精度な高温鋼材の割れ判定モデルを生成することができる。
【0038】
割れ判定モデル生成部では、データ取得部で取得した高温鋼材の画像データの実績データに対して画像加工処理を行った後に、データベース部にデータセットを蓄積してよい。以下では、画像加工処理が施された高温鋼材の画像データの実績データを画像加工データと呼ぶ。
【0039】
この場合、割れ判定モデル生成部では、画像加工データと、画像加工データに対応付けられた割れ情報の実績データとがデータベース部に蓄積され、割れ判定モデルの学習用データとなる。高温鋼材の画像データの実績データに画像加工処理を施すのは、鋼材の製造ラインにおける霧状水滴、ヒュームなどの外乱が生じた状態を模擬した画像加工データを得るためである。これにより、製造ラインにおいて取得される高温鋼材の画像データが外乱の影響を受けたとしても、精度の高い割れ情報を出力可能な割れ判定モデルを生成できる。
【0040】
画像加工処理の手法としては、適用可能な任意の処理手法を適用できる。その場合、ぼかし処理及び色調補正処理の少なくとも一方による画像加工処理を実行することが好ましい。ぼかし処理は、製造ラインにおける霧状水滴、ヒュームなどによる外乱によって、画像の鮮明度が低下した状態に対応した画像加工データを得るための処理である。また、色調補正処理は、高温鋼材の温度が変化し、割れ部と正常部との色調が変化した状態に対応した画像加工データを得るための処理である。
【0041】
高温鋼材の画像データの実績データと高温鋼材の割れ情報の実績データとの1組のデータセットに対して、高温鋼材の画像データの実績データに対する複数の画像加工処理が実行されてよい。1組のデータセットに対して複数の画像加工データを生成し、それらの画像加工データのそれぞれに対応する割れ情報の実績データを関連付けて、新たなデータセットとして生成することができる。従って、高温鋼材の画像データの実績データと高温鋼材の割れ情報の実績データの1組のデータセットから、画像加工処理の種類及び画像加工処理の条件の違いに応じた複数組のデータセットを生成することができる。これにより、学習用データの収集が容易になり、少数の画像データの実績データから多数の学習用データを取得することができる。
【0042】
本実施形態の画像加工処理に用い得るぼかし処理としては、高温鋼材の画像データの実績データに対して平均化フィルター処理を用いることができる。
図6を参照して、画像データの実績データに対して平均化フィルター処理を行い、画像加工データを取得する方法が説明される。
図6に示す例では、高温鋼材の画像データの実績データが、カラー画像であってRGBに分解された任意の画像データ又はモノクロの画像データであって、画像の各画素に対して輝度値が割り当たられものを示す。輝度値は、例えば0~255の数値情報で表される。平均化フィルターは、例えば縦方向及び横方向の画素数をNとして、縦方向N画素×横方向N画素のように設定される。平均化フィルターは、元の画像データの中で着目する画素を代表点として、代表点を含むN×Nの画素領域に適用し、その範囲に含まれる輝度値の平均値を算出し、算出した平均値を代表点の新たな輝度値に置き換えるものである。このような処理を画像データ内で代表点を変更しながら繰り返し実行することにより元の画像データから画像加工データが取得される。
図6に示す例では平均化フィルターの画素数Nは3に選択されている。画素Aを代表点として、平均化フィルターを適用すると、その範囲の輝度値の平均値が算出され、画素Aの新たな輝度値(本例では94)となる。このようにして、代表点を画像データ内で移動させて処理を行って、画像加工データが生成される。これらの処理により、鋼板の周囲に霧状水滴、ヒュームなどが存在した状態に近い画像加工データが得られる。
【0043】
本実施形態に適用する平均化フィルターの画素数Nは、取得した画像データの縦方向又は横方向の画素数Pに対して、200分の1から20分の1程度とすることが好適である。平均化フィルターの画素数Nが画素数Pの200分の1より小さい場合、画像データに対するぼかし処理の効果が小さく、画像加工データとして霧状水滴、ヒュームなどの影響を反映させにくい場合があるからである。一方、画素数Nが画素数Pの20分の1より大きい場合には、輝度値を平均化する範囲が大きく、画像加工データとして高温鋼材の割れ情報を識別できるほどの鮮明度が失われてしまうおそれがあるからである。ここで、画像データの端部については、画像データの外側の輝度値を0で埋めること(パディング)によって、元画像の端部の情報不足を防ぐようにしてよい。
【0044】
ぼかし処理は、取得した画像データの全ての画素に対して適用してよいし、一部の画素にのみ適用してよい。ぼかし処理は、例えば画像データの右半分のみ、画像データの上半分のみ等、部分的に適用してよい。高温鋼材の製造ラインでは霧状水滴及びヒュームは、鋼材の搬送方向に対して左右のいずれかにのみ発生している場合があるからである。ここで、ぼかし処理には、平均化フィルター処理の他に、ガウシアンフィルター、選択的ガウシアンフィルター、モザイクフィルター、メディアンフィルター、モーションフィルター等、画像加工処理手法として一般的に用いられるフィルター手法を適用してよい。
【0045】
ここで、高温鋼材の画像データの実績データがカラー画像である場合に、1枚の画像データの実績データから分割されるRGBの3種類の画像データのいずれかの画像データにのみ画像加工処理を行ってよいし、すべての画像データに画像加工処理を行ってよい。また、RGBの3つの画像データに対して異なるフィルター処理が実行され、それらを合成したカラー画像が画像加工データとされてよい。高温鋼材の製造ラインにおいて、霧状水滴、ヒュームなどが生じている場合に、光の波長として吸収しやすい波長成分と、そうでない波長成分とがあるからである。そのため、特定の光の波長に対応した画像にのみぼかし処理が実行されてよい。
【0046】
高温鋼材の画像データの実績データに対する色調補正処理としては、明るさ補正処理、コントラスト補正処理、ガンマ補正処理等、高温鋼材の画像データの実績データの色調を変更する画像加工処理を適用できる。明るさ補正処理は画像データの明暗を調整するものである。コントラスト補正処理は画像データ内の明暗の差を調整するものである。また、ガンマ補正処理は、画像データ全体に対して同一の割合で明るさを調整するのでなく、画像データを構成する画素の輝度値に応じてその値を調整するものである。高温鋼材の画像データの実績データに対して色調補正処理を実行することにより、高温鋼材の画像データの実績データを取得した条件とは鋼材温度等の撮像環境が異なる状態を模擬することができるため、汎用性の高い割れ判定モデルを生成できる。
【0047】
色調補正処理に用いる明るさ補正処理は、画像データの中の代表点における画素の輝度値に対して予め設定した補正値を加算して補正後の輝度値とする方法であり、画像データ内の代表点を移動させながら画像加工データを生成する。但し、輝度値が0~255の範囲となるように、補正処理後の輝度値について上限値と下限値を設定するのがよい。本実施形態における明るさ補正処理は、高温鋼材が撮像されている領域の輝度の平均値Bに対して、-0.5B~+0.5Bの範囲で補正値を選択するのが好ましい。補正値が-0.5Bよりも小さい場合、鋼材の画像が暗くなり、割れを判定するための画像が不明瞭になるからである。また、補正値が0.5Bよりも大きい場合には、鋼材の画像が極端に明るくなって、この場合も割れを判定するための画像が不明瞭になるからである。
【0048】
色調補正処理は、取得した画像データの全ての画素に適用してよいし、一部の画素にのみ適用してよい。色調補正処理は、例えば画像データの右半分のみ、画像データの上半分のみ等、部分的に適用してよい。製造ラインにおける高温鋼材には、表面に割れが生じていなくても、長手方向又は幅方向になだらかな温度分布が生じる場合があり、鋼板の色調が位置によって変化する場合があるからである。また、高温鋼材の画像データの実績データがカラー画像である場合に、1枚の画像データの実績データから分割されたRGBの3種類の画像データのいずれかの画像データにのみ画像加工処理を行ってよいし、すべての画像データに対して行ってよい。高温鋼材の温度が変化すると、取得する画像データの色調が変化するため、カラー画像の色調を補正することにより、一つの画像データから複数の温度域に対応した画像加工データを得られ、学習用データの収集が容易になる。
【0049】
機械学習部は、データベース部に蓄積されたデータセットを用いて、高温鋼材の割れを判定する割れ判定モデルを生成する。
【0050】
割れ判定モデルを生成するための機械学習モデルは、実用上十分な割れ情報の予測精度が得られれば、いずれの機械学習モデルでよい。例えば、一般的に用いられるニューラルネットワーク(深層学習を含む)、決定木学習、ランダムフォレスト、サポートベクター回帰等が用いられてよい。また、複数のモデルを組み合わせたアンサンブルモデルが用いられてよい。また、k-近傍法及びロジスティック回帰のような分類モデルが用いられてよい。
【0051】
例えば、高温鋼材の2次元画像は、画像の横方向と縦方向の2次元の座標に対して、画像の輝度値が割り当てられたデータに変換できるため、画像データを1次元の配列データに変換して通常のニューラルネットワークの入力とすることができる。特に、機械学習の手法として深層学習を用いると多重共線性の問題を考慮せず高温鋼材の割れ情報以外の入力も自由に選択し、加えることができるため、割れ情報の判定精度を高めることができる。例えばニューラルネットワークの中間層を3層、ノード数を5個ずつとし、活性化関数としてシグモイド関数を用いたものを用いることができる。
【0052】
本実施形態では、
図7に示すような畳み込みニューラルネットワークを用いた機械学習により割れ判定モデルを生成する。具体的には、高温鋼材の画像データの実績データを入力として畳込み層、プーリング層及び全結合層を備える畳み込みニューラルネットワークが用いられる。これにより高温鋼材の画像データの実績データが有する特徴量を維持しながら画像データを圧縮して1次元の情報とすることができる。
【0053】
高温鋼材の画像データの実績データがカラー画像である場合には、2次元画像データをRGBのチャンネルごとの画像データ(画像の輝度値を0~255の数値情報に変換したデータ)に変換して、3チャンネルの割れ情報として入力層に入力される。ただし、高温鋼材の割れが含まれる画像は、割れと周囲との輝度差によっても判定し得る比較的単純なものもある。そのため、高温鋼材の画像データの実績データをグレースケールの画像に変換し、1チャンネルの画像データが入力されるようにしてよい。また、画像の輝度値も必ずしも0~255の数値情報で表す必要はなく、画像の輝度値を0~15程度の区分まで圧縮してから入力層に入力してよい。さらに、高温鋼材の画像データの実績データはデータ圧縮処理が行われて、横方向及び縦方向の画素数が圧縮されてから入力層に入力されてよい。例えば、入力層に入力される高温鋼材の画像データの実績データは1064×1064の画像データに圧縮されてよい。また、例えば、入力層に入力される高温鋼材の画像データの実績データは224×224の画像データに圧縮されてよい。これらの処理は例えば予備処理部で行われてよい。
【0054】
入力層の下流側に配置される畳込み層は、入力データに対してカーネルと呼ばれるフィルターを用いたフィルタリング処理を施して第1特徴マップを生成する。畳み込みとは、入力データにフィルターを適用して、特徴マップと呼ばれる出力を生成する演算処理をいう。畳込み層に用いるフィルターは、例えば縦方向3ピクセル×横方向3ピクセルのフィルターとし、フィルターの位置を画像内で移動させるストライドを1とすると共に、画像データの周辺を0で埋めるパディングを適用するのが好ましい。また、畳み込み層には、活性化関数として非線形関数を用いるのが好ましく、学習時の勾配消失問題が抑制できるようRelu関数を用いるのがよい。
【0055】
プーリング層は、畳込み層が出力した第1特徴マップを入力として、第1特徴マップの情報を圧縮する。プーリング層には最大プーリング又は平均プーリングを適用することができる。最大プーリングとは、プーリング層の入力となる第1特徴マップを一定の領域(プールサイズ)で区切って、その中の最大値を抽出して新たな特徴マップとして出力する処理である。平均プーリングとは、最大値ではなく平均値を抽出するものである。このようなプーリング層により、入力される高温鋼材の画像データの実績データに関する特徴を維持しながら情報量を圧縮して第2特徴マップが生成される。プーリング層に用いるフィルターの大きさとしては、例えば縦方向3ピクセル×横方向3ピクセルのものを用いることができる。プーリング層は画像が有する特徴量を残しつつ出力データのサイズを縮小することを目的とする。そのため、出力データの周囲を0で埋めるパディングは行われない。
【0056】
全結合層は、プーリング層で生成した第2特徴マップを変換するものであり、第2特徴マップの値を一列に配置して、プーリング層からの出力をまとめるために配置される。全結合層の好ましい形態を例示すると、ノード数16~2048の結合層である。ここで、
図7に示す畳み込みニューラルネットワークの構成においては、畳込み層とプーリング層を複数配置して、入力層から入力される高温鋼材の画像データの実績データの情報をより圧縮するように構成してよい。
【0057】
出力層は、全結合層により伝達されたニューロンの情報が結合され、最終的な高温鋼材の割れ情報として、割れの有無についての情報が出力される。すなわち、高温鋼材の表面に割れについて、「あり」又は「なし」を示す情報が出力される。また、ソフトマックス関数により「割れあり」と判定される確率が出力されてよい。
【0058】
図7に示す実施形態では、上記の畳み込みニューラルネットワークにおいて、上記プーリング層と全結合層の間に第1ドロップアウト層を備えてよい。また、第2ドロップアウト層が全結合層と出力層との間に備えられてよい。第1ドロップアウト層は、上記プーリング層と全結合層との間の接続の一部をランダムに切断するものである。また、第2ドロップアウト層は、全結合層と出力層との間の接続の一部をランダムに切断する。これにより、過学習を防止することができる。
【0059】
さらに、機械学習部は、データベース部に蓄積されたデータセットを訓練データとテストデータに分けて学習を行うことにより割れに関する合否判定情報の推定精度を向上させてよい。例えば訓練データを用いてニューラルネットワークの重み係数の学習を行い、テストデータでの高温鋼材の割れ情報の正解率が高くなるようにニューラルネットワークの構造を適宜変更しながら割れ判定モデルを得てよい。適宜変更されるニューラルネットワークの構造は、例えば畳み込み層及びプーリング層の数、フィルターサイズ等を含む。重み係数の更新には、誤差伝播法を用いることができる。
【0060】
ここで、割れ判定モデルは、例えば6ヶ月毎又は1年毎に再学習により新たなモデルに更新してよい。データベース部に保存される実績データが増えるほど、精度の高い割れ情報の推定が可能となるからであり、最新のデータに基づいて割れ判定モデルを更新することにより、高温鋼材の成分系及び操業条件の変化を反映した割れ判定モデルを生成できる。
【0061】
<高温鋼材の割れ判定方法>
以上のようにして生成した割れ判定モデルを用いて高温鋼材の割れの有無を判定することができる。割れ判定モデルは、下記の高温鋼材の割れ判定方法が実行される前に生成される。
【0062】
本開示の一実施形態に係る高温鋼材の割れ判定方法は、割れ判定部によって実行される。割れ判定部は製造ラインを制御するための制御用計算機に設けることができる。また、割れ判定部は、制御用計算機に製造指示を与える上位計算機に設けられてよく、他の機器と通信可能である独立の計算機に設けてよい。以下、
図8を参照して、割れ判定部の動作が説明される。
【0063】
図8に示す割れ判定部の動作は、製造ラインにおいて割れ判定の対象となる高温鋼材についての画像データを取得した後に実行される。取得した高温鋼材の画像データは、割れ判定部に送られ、上記方法により生成した割れ判定モデルに対する入力データとなる。そして、割れ判定部では、高温鋼材の割れ情報である「割れあり」又は「割れなし」の情報を出力データとして出力する。ここで、割れ判定モデルの出力データとして、「割れあり」となる確率を出力する場合には、予めしきい値を設定し、そのしきい値を基準として「割れあり」、「割れなし」を判定してよい。
【0064】
以上のようにして出力される高温鋼材の割れ情報は、割れ判定部に接続されたモニターなどに表示されるようにしてよい。また、操業オペレータに注意を促すように、操作室内に設置したスピーカーから警報(アラーム)が発せられてよい。割れ判定部が出力する割れ情報の出力表示に基づき、操業オペレータは割れありと判定された高温鋼材を目視により改めて確認することができる。また、高温鋼材の割れがあると判定された場合に、高温鋼材に対する追加の処置工程が設定されてよい。これにより、高温鋼材の製造工程において、高温鋼材の割れに起因する操業トラブル及び設備破損を未然に防止することができる。また、高温鋼材の製品として割れのない鋼材を生産することができ、品質レベルを向上させることができる。
【0065】
また、高温鋼材の圧延方法の一工程として、高温鋼材に対する追加の処置工程が実行され得る。高温鋼材に対する追加の処置工程は、高温鋼材の製造ラインに応じて設定されて良い。例えば、連続鋳造ラインの出側にてスラブの割れの有無を判定する場合には、スラブの表面の手入れを行う工程を追加して良い。また、高温鋼材の割れが大きい場合には、割れが発生したスラブをスクラップとして、その後の製造ラインに搬送されないようにすることもできる。追加の処置工程は、高温鋼材の表面の手入れを行う工程、又は、高温鋼材をその後の製造ラインに搬送されないようにする工程であってよい。すなわち、追加の処置工程としては、新たに製造工程を追加して処置を行うだけでなく、そのスラブの用いた鋼材の生産を行わないという処置を含むものとする。
【0066】
ここで、
図2に示す熱延ライン10においては、粗圧延機4により圧延されるシートバー12を高温鋼材として、カメラ20で撮影したシートバー12の画像データを入力として、割れ判定モデルによりシートバー12の割れ判定を行うことができる。その場合に、割れ判定モデルを用いて判定した結果に基づいて、処置工程を設定することができる。この場合の処置工程は、仕上げ圧延における圧延操業条件の再設定を行うものであってよい。圧延操業条件の再設定とは、割れ判定の対象とする高温鋼材の仕上げ圧延を開始する前に、予め制御用計算機によって設定される圧延操業条件とは異なる操業条件に変更するものである。例えば、割れありと判定された高温鋼材は、予め設定された仕上げ圧延機5の圧下率よりも小さな圧下率で圧延されてよい。また、仕上げ圧延機5のスタンド間張力の設定値が予め設定された値よりも小さな値に再設定されてよい。これにより高温鋼材の仕上げ圧延工程において、鋼板の破断を未然に防止することができる。さらに、処置工程は、割れありと判定された高温鋼材について、仕上げ圧延を実行せずに、熱延ライン10の機側に高温鋼材を払い出す、いわゆるバー降ろしを行って、その鋼材の仕上げ圧延を中止する設定を含んでよい。これにより、割れが生じている高温鋼材について仕上げ圧延を行うことにより生じ得る板破断及び設備破損を未然に防止できる。
図8に示す処置工程設定部は、予め高温鋼材の割れ情報に応じて、再設定すべき処置工程を決定しておき、割れありと判定された高温鋼材に対する操業条件を変更する指示を制御用計算機又は上位計算機に与える。そして、処置工程設定部からの指示を受けた制御用計算機又は上位計算機により、高温鋼材に対する処置工程が実行される。
【0067】
本実施形態に係る高温鋼材の割れ判定方法、高温鋼材の圧延方法及び高温鋼材の割れ判定モデルの生成方法は、上記に説明した工程により、高温鋼材の表面に割れが発生しているか否かを高い精度で判定可能になる。また、精度の高い割れ情報に基づいて、製造ラインにおいて早期に割れの有無を判定し、割れに起因した板破断及び操業トラブル、設備破損を未然に防止することができる。また、処置工程を実行することによって、割れのない鋼材を製造することができる。
【0068】
(別の実施形態)
本開示の別の実施形態として、上記の割れ判定モデルについて、入力データとして高温鋼材の属性情報から選択されたパラメータを含む実施形態が説明される。
【0069】
本実施形態における属性情報のパラメータは、高温鋼材の寸法情報(板厚、板幅、長さ、重量など)、高温鋼材の成分組成情報など、高温鋼材の製造時における割れの発生に影響を与え得る情報を指す。高温鋼材の寸法情報は、高温鋼材の表面と内部との温度差に起因して、表面部に発生する引張応力の大きさに影響を与えるためである。また、高温鋼材の成分組成情報は、高温鋼材に含有する成分系によって割れの発生しやすさが異なるからである。例えば、高温鋼材の成分組成として、C、Si、Mn量などが多く含まれる鋼材は割れが発生しやすい傾向にあり、これらの含有量を高温鋼材の成分組成情報とすることができる。本実施形態では、以上のような高温鋼材の属性情報の中から選択した、少なくとも1つの属性情報を、高温鋼材の割れ判定モデルの入力に含む。
【0070】
ここで、高温鋼材の割れ判定モデルの入力データとして高温鋼材の属性情報を含むのは、高温鋼材に割れが発生しやすいか否かに影響を与えるだけでなく、高温鋼材の製造ラインにおいて設備破損などのリスクの大小にも影響を与えるからである。例えば、合金成分が多く含まれる高温鋼材は変形抵抗が高い場合が多く、仕上げ圧延機を構成する設備に衝突した場合に破損の程度が異なる場合がある。
【0071】
図9は、本実施形態における割れ判定モデル生成部を説明する図である。本実施形態における割れ判定モデル生成部は、上記と同様にデータベース部と機械学習部を含む。データベース部に蓄積される高温鋼材の画像データの実績データと、高温鋼材の割れ情報に関する実績データの取得方法は上記と同様である。一方、高温鋼材の属性情報は、生産ラインを制御するための制御用計算機、制御用計算機に製造指示を与える上位計算機などから取得することができるため、これらから割れ判定モデル生成部のデータベース部に送られる。この場合に割れ判定の対象となる鋼材には、製品を識別する製品番号、生産管理を行うためのコイル番号等が付されており、画像データ、属性情報及び割れ情報が対応付けられたデータセットとしてデータベース部に蓄積される。データベース部に蓄積される実績データについては、必要に応じてデータ取得部によりスクリーニングが行われてよい。データ取得部はスクリーニングを行うスクリーニング処理部を備えてよい。
【0072】
データベース部は、高温鋼材の属性情報として、高温鋼材の寸法情報又は成分組成情報ごとに区分したデータベースを構築してよい。高温鋼材の割れとして許容される程度は高温鋼材の寸法情報又は成分組成情報によって異なる場合があるからである。
【0073】
データベース部には、鋼帯の属性情報として、同一の区分に分類できる製品規格ごとに50個以上のデータセットが蓄積される。好ましくは100個以上、より好ましくは500個以上である。ここで、割れ判定モデル生成部は、画像加工処理部を備えてよいし、予備処理部を備えてよい。
【0074】
本実施形態における機械学習部は、複数の学習用データを用いた機械学習によって、高温鋼材の割れを判定する割れ判定モデルを生成する。学習用データには、データベース部に蓄積されたデータセットが用いられ、高温鋼材の画像データの実績データと、高温鋼材の属性情報から選択された少なくともひとつの属性データを入力実績データ、高温鋼材の割れ情報を出力実績データとする。
【0075】
割れ判定モデルを生成するための機械学習モデルは、実用上十分な割れ情報の予測精度が得られれば、いずれの機械学習モデルでよい。ただし、本実施形態に適用する機械学習手法は、ニューラルネットワーク構造に、畳み込みニューラルネットワークを含むものであることが好ましい。
図10を用いて、本実施形態に好適なニューラルネットワークが説明される。
図10の例において、画像データとして2次元画像データが用いられる。畳み込みニューラルネットワークは高温鋼材の画像データの実績データを入力として畳込み層、プーリング層及び全結合層を備える。高温鋼材の画像データの実績データは、予め画像データのチャンネル数及び解像度を落として、画像データに含まれる情報量を圧縮する予備処理を実行してから、第1入力層に入力されてよい。また、高温鋼材の画像データの実績データは、画像の横方向及び縦方向の画素数を圧縮してから、第1入力層に入力されてよい。そして、畳み込みニューラルネットワークを構成する畳込み層、プーリング層及び全結合層により、高温鋼材の画像データの実績データが有する特徴量を維持しながら画像データを圧縮して1次元の情報とすることができる。そして、全結合層によって1次元の情報に圧縮されたデータは、第2入力層に入力される。第2入力層には、画像データと共に、高温鋼材の属性情報が入力され、通常のニューラルネットワークと同様に中間層及び出力層に接続される。
【0076】
図10に示すニューラルネットワークを構成する畳込み層、プーリング層は、
図7に示すニューラルネットワークと同様の構成をとることができる。具体的には、第1入力層の下流側に配置される畳込み層は、入力データに対してカーネルと呼ばれるフィルターを用いたフィルタリング処理を施して第1特徴マップを生成する。プーリング層は、畳込み層が出力した第1特徴マップを入力として、第1特徴マップの情報を圧縮する。プーリング層には最大プーリング又は平均プーリングを適用することができる。プーリング層により、入力される高温鋼材の画像データの実績データの特徴を維持しながら情報量が削減され、次元圧縮された第2特徴マップが生成される。全結合層は、プーリング層で生成した第2特徴マップを変換するものであり、第2特徴マップの値を一列に配置して、プーリング層からの出力をまとめるために配置される。全結合層の好ましい形態を例示すると、ノード数16~2048の結合層である。ここで、
図10に示す畳み込みニューラルネットワークの構成においては、畳込み層とプーリング層を複数配置して、第1入力層から入力される割れ情報の情報をより圧縮するように構成してよい。
【0077】
このようにして全結合層により1次元の情報に圧縮されたデータは、高温鋼材の属性情報と共に第2入力層に入力される。第2入力層と出力層との間に配置される中間層は、通常のニューラルネットワークを構成する複数のニューロンからなる。中間層は複数の隠れ層で構成され、各々の隠れ層には複数のニューロンが配置されている。中間層内に構成される隠れ層の数は特に限定されないが、隠れ層の数が多すぎると予測精度が低下することもあることから3層以下であることが好ましい。また、各隠れ層に配置されるニューロンの数は、好ましくは第2入力層に入力されるデータ数の1倍~10倍の範囲の数とすることが好ましい。中間層において、あるニューロンから続く隠れ層へのニューロンの伝達は、重み係数による変数の重み付けと共に、活性化関数を介して行われる。活性化関数にはシグモイト関数、ハイパボリックタンジェント関数又はランプ関数を用いることができる。
【0078】
出力層は、中間層により伝達されたニューロンの情報が結合され最終的な高温鋼材の割れ情報として、割れの有無についての情報が出力される。すなわち、高温鋼材の表面に割れについて、「あり」又は「なし」を示す情報が出力される。また、ソフトマックス関数により「割れあり」と判定される確率が出力されてよい。
【0079】
本実施形態は、高温鋼材の割れ判定モデルとして、高温鋼材の画像データと属性情報から選択された少なくともひとつの属性データを含むので、製造ラインにおける高温鋼材の割れ情報をさらに精度よく判定することができる。そのため、高温鋼材の割れに起因した板破断、操業トラブル、設備破損などを未然に防止でき、割れのない鋼材を製造することができる。
【0080】
(実施例)
本実施例では、
図9に示す割れ判定モデル生成部により高温鋼材の割れ判定モデルを生成した。高温鋼材を撮影するカメラ20は、熱延ラインにおける粗圧延機として、
図2に示す第1の粗圧延機41の下流側に設置された。そして、シートバーの上面からシートバーの全長の画像データが取得された。その際、カメラ20ではシートバーの進行方向に対して複数の画像を取得するため、撮像制御装置により画像同士の重なり部をトリミングして、シートバーの全長に対する1枚の画像データを取得した。熱延ラインのシートバーを撮影した画像データは、高温鋼材の属性情報として選択した鋼材の重量と、粗圧延機の操業オペレータが目視により判定した高温鋼材の割れ情報と共に実績データとしてデータベース部に蓄積した。ここで、高温鋼材の割れ情報に関する実績データは、粗圧延機の操業オペレータが「割れあり」と判定した場合に、操作室の入力部から割れ情報が入力され、その他のデータセットには、「割れなし」の情報を自動的に割り当てた。また、カメラ20により撮影した画像は2次元のカラー画像であるが、割れ判定モデル生成部の予備処理部によりグレースケールの画像に変換して、機械学習に用いた。
【0081】
本実施例ではデータセットとして、高温鋼材について「割れあり」とされたデータセットが30個蓄積された段階で、「割れなし」とされたデータセットと共に、機械学習による割れ判定モデルの生成に用いた。機械学習のアルゴリズムとしては、ニューラルネットワークとし、
図10に示すように畳み込みニューラルネットワークを含む構成とした。このとき、畳込み層及びプーリング層は各2層として、プーリング層には最大プーリングを用いた。また、第2入力層には、第1入力層から割れの2次元画像の情報が圧縮された1次元配列データに加えて、鋼板の属性情報から選択された鋼板の板厚、重量が入力されるようにした。また、中間層を3層、ノード数を5個ずつとし、活性化関数にはシグモイド関数が用いられた。
【0082】
このようにして生成した割れ判定モデルを、熱延ラインの上位計算機と通信可能な計算機に搭載して高温鋼材の割れ判定が行われた。
図11は、本実施例に用いた割れ判定部の構成を示す。割れ判定モデルの入力となる属性情報については、判定対象となる高温鋼材の製造番号に基づいて上位計算機から取得した。高温鋼材の画像データは、学習用データの取得に用いたのと同様に、
図2のカメラ20により取得し、撮像制御装置によりシートバーの全長を撮像した画像データに変換したものを割れ判定部の入力に用いた。そして、割れ判定部の割れ判定モデルの出力として、高温鋼材の割れ情報として「割れあり」又は「割れなし」の割れ判定情報が取得された。
【0083】
一方、上記割れ判定モデルを生成した後に、改めて上記と同様に、操業オペレータが目視により割れ判定を行い、5枚のシートバーについて割れが発見されるまで操業を行った。その結果、操業オペレータが目視により「割れあり」と判定した5枚のシートバーについては、本実施例により割れ判定部でも「割れあり」と判定し、それ以外のシートバーについては「割れなし」の判定が出力された。これにより、本実施例による割れ判定と、操業オペレータによる割れ判定とが一致し、高温鋼材の割れ判定を自動化できることが確認された。
【0084】
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行されるプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【符号の説明】
【0085】
1 加熱炉
3 幅圧下装置
4 粗圧延機
5 仕上げ圧延機
6 水冷装置
7 コイラー
10 熱延ライン
12 シートバー
13 粗デスケーリング装置
20 カメラ
21 デスケーリング装置
41 第1の粗圧延機
42 第2の粗圧延機
43 第3の粗圧延機