(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086626
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 21/28 20060101AFI20230615BHJP
H01Q 5/40 20150101ALI20230615BHJP
H01Q 21/24 20060101ALI20230615BHJP
H01Q 1/52 20060101ALI20230615BHJP
H01P 1/00 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
H01Q21/28
H01Q5/40
H01Q21/24
H01Q1/52
H01P1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201294
(22)【出願日】2021-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000217653
【氏名又は名称】電気興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100193389
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 智利
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 啓介
【テーマコード(参考)】
5J011
5J021
5J046
【Fターム(参考)】
5J011CA11
5J021AA02
5J021AA04
5J021AA11
5J021AA13
5J021AB03
5J021HA05
5J021HA06
5J021JA03
5J021JA05
5J021JA07
5J046AA02
5J046AA07
5J046AB07
5J046UA02
5J046UA03
(57)【要約】
【課題】複数のアンテナを基体の二つの面に有するアンテナにおいて、物理的距離が近く、非常に低いレベルでのアンテナ間結合(回り込み)が問題となる場合においても、結合の低減量を十分確保することを目的とする。
【解決手段】アンテナ装置は、基体、第一のアンテナ、および、第二のアンテナ、を備える。第一のアンテナは基体の一方の側に配置され、第二のアンテナは基体の他方の側に配置される。第一のアンテナは、略同一平面上に電磁結合低減部を有する。 電磁結合低減部は、第一のアンテナが送信または受信する電波の偏波方向とは異なる方向に配置される。電磁結合低減部は、略格子状に配置された電磁バンドギャップ体を有する。電磁バンドギャップ体は、金属部およびビアを有し、ビアは金属部を接地導体に接続しており、電磁結合低減部は第一のアンテナおよび第二のアンテナ間の電磁結合を低減する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体、第一のアンテナ、および、第二のアンテナ、を備え、
前記第一のアンテナは前記基体の一方の側に配置され、
前記第二のアンテナは前記基体の他方の側に配置され、
前記第一のアンテナは、略同一平面上に電磁結合低減部を有し、
前記電磁結合低減部は、前記第一のアンテナが送信または受信する電波の偏波方向とは異なる方向に配置され、
前記電磁結合低減部は、略格子状に配置された電磁バンドギャップ体を有し、
前記電磁バンドギャップ体は、金属部およびビアを有し、
前記ビアは金属部を接地導体に接続しており、
前記電磁結合低減部は、前記第一のアンテナおよび前記第二のアンテナ間の電磁結合を低減することを特徴するアンテナ装置。
【請求項2】
前記金属部が略多角形であり、多角形の一辺の方向が前記第一のアンテナおよび前記第二のアンテナの偏波方向に略一致することを特徴する、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記金属部が略長方形であり、長方形の一辺の方向が前記第一のアンテナおよび前記第二のアンテナの偏波方向に略一致することを特徴する、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記電磁バンドギャップ体の配置方向が、前記第一のアンテナおよび前記第二のアンテナの偏波方向に略一致することを特徴する、請求項1ないし3のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記電磁バンドギャップ体の配置間隔が、前記第一のアンテナおよび前記第二のアンテナの偏波の波長λに対して0.05以上0.3λ以下であることを特徴する、請求項1ないし4のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第一のアンテナおよび前記第二のアンテナの両方が前記電磁結合低減部を有することを特徴する、請求項1ないし5のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第一のアンテナおよび前記第二のアンテナが偏波共用アンテナであることを特徴する、請求項1ないし6のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記第一のアンテナおよび前記第二のアンテナが略長方形であり、偏波方向が前記略長方形の辺の方向に対応し、前記電磁結合低減部は前記略長方形の四隅方向に設けられていることを特徴する、請求項1ないし7のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記第一のアンテナおよび前記第二のアンテナが、それぞれ、互いに異なる周波数である第一周波数および第二周波数に対応した第一周波数帯用アンテナおよび第二周波数帯用アンテナを有する、周波数共用アンテナであることを特徴する、請求項1ないし8のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記第一周波数帯用アンテナを有する第一周波数帯対応層と、前記第二周波数帯用アンテナを有する第二周波数帯対応層を有し、
前記第一周波数帯対応層は前記第一周波数帯用アンテナに対応する第一周波数用電磁結合低減部を有し、
前記第二周波数帯対応層は前記第二周波数帯用アンテナに対応する第二周波数用電磁結合低減部を有することを特徴する、請求項9に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記第一のアンテナにおける、前記第一周波数帯用アンテナおよび前記第二周波数帯用アンテナのオフセット方向と、前記第二のアンテナにおける、前記第一周波数帯用アンテナおよび前記第二周波数帯用アンテナのオフセット方向とが、略直交することを特徴とする、請求項9または10のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項12】
前記第一周波数帯用アンテナおよび前記第二周波数帯用アンテナのオフセット量が、低周波側の波長の10分の1以下であることを特徴する、請求項9ないし11のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項13】
前記第一のアンテナおよび前記第二のアンテナの一方がドナーアンテナであり、他方がサービスアンテナであることを特徴する、請求項1ないし12のいずれかに記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナを有し、アンテナ間の結合を低減したアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のアンテナを有するアンテナ装置が知られている。
例えば、ドナーアンテナとサービスアンテナを有するレピータ装置では、基地局アンテナとの送受信はドナーアンテナを有するドナーユニットにより行う。そして、直接、基地局からの電波が届かないエリアをサービスアンテナによりエリア化している。
ドナーアンテナとサービスアンテナを、基体の両面に配置することができれば、レピータ装置を小型することができる。しかし、ドナーアンテナとサービスアンテナ間の結合が大きいと、例えばドナーからの信号やドナーへの信号まで増幅してしまうなど、レピータ装置内での干渉問題が発生する。特に、ドナーアンテナとサービスアンテナで同一方向の偏波を使用するMIMOなどでは、この影響が大きい。なお、ドナー・サービスが分離しているレピータ装置では、ドナーアンテナとサービスアンテナを物理的に離すことで、結合を低減することができる。
一方、アンテナ結合低減のためEBG(Electro magnetic Band Gap)が用いられることがあり、同一面内に配置したアンテナ間の結合が低減されている。
特許文献1には、既存のE B G 構造を設計変更することなく、所定の周波数帯域の電磁ノイズの伝搬を抑制する、構造体および配線基板が記載されている(特許文献1の段落0009)。
特許文献2には、第1と第2の放射器の間に配置される第1の電磁バンドギャップ
を備え、第1の電磁バンドギャップは、パッチと接地電極とビアとを備える、アンテナ装置が記載されている(特許文献2の請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/195739号公報
【特許文献2】特開2018-164149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のアンテナを有するレピータ装置では、アンテナを基体の両面に配置できれば小型化できるが、アンテナ同士が近接するため、アンテナ同士の結合を低減することが必要となる。
特許文献1に記載の構造は、多層基板の内層信号線路間の電磁ノイズ低減のために利用されるものであり、目的も構成も異なる。
特許文献2に記載の構造は、同一面内に配置したアンテナ間の結合を低減するものであり、アンテナを基体の両面に配置する構造では、-10dB程度しか結合を低減できない。また、同一面内の場合、改善しても-30dB程度の結合が発生するが、レピータ装置では、―70dB以下などの、非常に低い結合値が求められる。
そこで、本発明は、複数のアンテナを基体の二つの面に有するアンテナにおいて、物理的距離が近く、非常に低いレベルでのアンテナ間結合(回り込み)が問題となる場合においても、結合の低減量を十分確保することを目的とする。
本発明のその他の目的は、発明を実施するための形態においても説明される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係るアンテナ装置は、
基体、第一のアンテナ、および、第二のアンテナ、を備え、
第一のアンテナは基体の一方の側に配置され、
第二のアンテナは基体の他方の側に配置され、
第一のアンテナは、略同一平面上に電磁結合低減部を有し、
電磁結合低減部は、第一のアンテナが送信または受信する電波の偏波方向とは異なる方向に配置され、
電磁結合低減部は、略格子状に配置された電磁バンドギャップ体を有し、
電磁バンドギャップ体は、金属部およびビアを有し、
ビアは金属部を接地導体に接続しており、
電磁結合低減部は、第一のアンテナおよび第二のアンテナ間の電磁結合を低減することを特徴するアンテナ装置である。
本発明の請求項2に係るアンテナ装置は、
金属部が略多角形であり、多角形の一辺の方向が第一のアンテナおよび第二のアンテナの偏波方向に略一致することを特徴する、請求項1に記載のアンテナ装置である。
本発明の請求項3に係るアンテナ装置は、
金属部が略長方形であり、長方形の一辺の方向が第一のアンテナおよび第二のアンテナの偏波方向に略一致することを特徴する、請求項1に記載のアンテナ装置である。
本発明の請求項4に係るアンテナ装置は、
電磁バンドギャップ体の配置方向が、第一のアンテナおよび第二のアンテナの偏波方向に略一致することを特徴する、請求項1ないし3のいずれかに記載のアンテナ装置である。
本発明の請求項5に係るアンテナ装置は、
電磁バンドギャップ体の配置間隔が、第一のアンテナおよび第二のアンテナの偏波の波長λに対して0.05以上0.3λ以下であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載のアンテナ装置である。
本発明の請求項6に係るアンテナ装置は、
第一のアンテナおよび第二のアンテナの両方が電磁結合低減部を有することを特徴する、請求項1ないし5のいずれかに記載のアンテナ装置である。
本発明の請求項7に係るアンテナ装置は、
第一のアンテナおよび第二のアンテナが偏波共用アンテナであることを特徴する、請求項1ないし6のいずれかに記載のアンテナ装置である。
本発明の請求項8に係るアンテナ装置は、
第一のアンテナおよび第二のアンテナが略長方形であり、偏波方向が略長方形の辺の方向に対応し、電磁結合低減部は略長方形の四隅方向に設けられていることを特徴する、請求項1ないし7のいずれかに記載のアンテナ装置である。
本発明の請求項9に係るアンテナ装置は、
第一のアンテナおよび第二のアンテナが、それぞれ、互いに異なる周波数である第一周波数および第二周波数に対応した第一周波数帯用アンテナおよび第二周波数帯用アンテナを有する、周波数共用アンテナであることを特徴する、請求項1ないし8のいずれかに記載のアンテナ装置である。
本発明の請求項10に係るアンテナ装置は、
第一周波数帯用アンテナを有する第一周波数帯対応層と、第二周波数帯用アンテナを有する第二周波数帯対応層を有し、
第一周波数帯対応層は第一周波数帯用アンテナに対応する第一周波数用電磁結合低減部を有し、
第二周波数帯対応層は第二周波数帯用アンテナに対応する第二周波数用電磁結合低減部を有することを特徴する、請求項9に記載のアンテナ装置である。
本発明の請求項11に係るアンテナ装置は、
第一のアンテナにおける、第一周波数帯用アンテナおよび第二周波数帯用アンテナのオフセット方向と、第二のアンテナにおける、第一周波数帯用アンテナおよび第二周波数帯用アンテナのオフセット方向とが、略直交することを特徴とする、請求項9または10のいずれかに記載のアンテナ装置である。
本発明の請求項12に係るアンテナ装置は、
第一周波数帯用アンテナおよび第二周波数帯用アンテナのオフセット量が、低周波側の波長の10分の1以下であることを特徴する、請求項9ないし11のいずれかに記載のアンテナ装置である。
本発明の請求項13に係るアンテナ装置は、
第一のアンテナおよび第二のアンテナの一方がドナーアンテナであり、他方がサービスアンテナであることを特徴する、請求項1ないし12のいずれかに記載のアンテナ装置である。
本発明は、以上の構成により、第一、第二のアンテナを近接して配置することで小型化を実現しつつ、第一、第二のアンテナ間の電磁波の回り込みを低減できる。
本発明のその他の効果は、発明を実施するための形態においても説明される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一実施例におけるアンテナ装置の構成例を示す。
【
図2】本発明の一実施例におけるアンテナ装置の構成例を示す。
【
図3】本発明の一実施例におけるアンテナ装置の構成例を示す。
【
図4】本発明の一実施例におけるアンテナ装置の構成例を示す。
【
図5】比較例におけるアンテナ装置の構成例を示す。
【
図8】本発明の一実施例におけるアンテナ装置の構成例を示す。
【
図9】本発明の一実施例におけるアンテナ装置の構成例を示す。
【
図10】本発明の一実施例におけるアンテナ装置の構成例を示す。
【
図11】本発明の一実施例におけるアンテナ装置の構成例を示す。
【
図12】本発明の一実施例におけるアンテナ装置の構成例を示す。
【
図13】本発明の一実施例におけるアンテナ装置の構成例を示す。
【
図14】本発明の一実施例におけるアンテナ装置の構成例を示す。
【
図15】本発明の一実施例におけるアンテナ装置の構成例を示す。
【
図16】本発明の一実施例におけるアンテナ装置の構成例を示す。
【
図17】本発明の一実施例におけるアンテナ装置の構成例を示す。
【
図18】本発明の一実施例におけるアンテナ装置の構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1および
図2は、本発明の一実施例におけるアンテナ装置100の構成例を示す。
図1に示されるように、アンテナ装置100は、基体110、第一のアンテナ200、および、第二のアンテナ300を備える。
【0008】
本実施例で、基体110は、略直方体状であるが、第一のアンテナ200と第二のアンテナ300を所定方向に固定するものであれば、例えば、2枚の板状体を接続したものなど、他の構成であってもよい。
第一のアンテナ200は基体110の一方の側に配置され、第二のアンテナ300は基体110の他方の側に配置される。本実施例では、基体110の両面に2つのアンテナが配置されている。
【0009】
第一のアンテナ200は、アンテナと略同一平面上に電磁結合低減部400を有する。
電磁結合低減部400は、アンテナから見て、第一のアンテナ200が送信または受信する電波の偏波方向とは異なる方向に配置されている。本実施例では、アンテナから見て、図における縦方向および横方向には、電磁結合低減部400が存在しない。
つまり、アンテナの送受信する偏波方向について、十字型のクロスダイポールの場合、十字方向には電磁結合低減部が存在せず、十字方向とは異なる四隅方向に電磁結合低減部400が配置されている。
【0010】
電磁結合低減部400は、略格子状に配置された電磁バンドギャップ体410を有する。
本実施例では、3×3の格子であるが、
図3に示されるように、アンテナ側の1格子が欠けた構成とすることもできる。「略格子状」とは、完全に格子状ではなくとも、本構成のように、おおよそ格子を構成するものを含む。
【0011】
図4に示されるように、電磁バンドギャップ体410は、金属部411およびビア412を有する。ビア412は金属部411を接地導体403に接続している。
なお、
図4は1つの電磁バンドギャップ体410を中心に抜粋したものであり、実際には、金属体411と接地導体403の間にはアンテナを構成する層が存在し、また、金属体411も複数配置されている。
上記の電磁結合低減部400は、第一のアンテナ200および第二のアンテナ300間の電磁結合を低減する。
【0012】
図5および
図6は、比較例として、電磁結合低減部400を有しない例を示す。
本比較では、基体110は金属である。
図中のx方向の偏波をHとし、y方向の偏波をVとする。
アンテナは、略十字状であり、H偏波およびV偏波に対応する。そして、D-Vpolは第一アンテナのV偏波を示し、D-Hpolは第一アンテナのH偏波を示す。同様に、S-Vpolは第二アンテナのV偏波を示し、S-Hpolは第二アンテナのH偏波を示す。そして、D-Vpol-S-Vpolは、D-VpolとS-Vpolの結合を示し、他も同様である。結合量は、正規化された周波数で示されている。
【0013】
図6に示されるように、本構成では、正規化周波数1付近で示される、必要周波数帯において、-63dB程度であり、-70dBの電磁結合低減は得られていない。
電磁波を解析したところ、アンテナ面に対して垂直方向、つまりz方向の電界成分の回り込みの影響が大きいことが分かった。
従来は、特許文献2のように、結合を低減したいアンテナの間に、EBGを配置することが一般的であるが、本構成では、これと異なる位置に設けることで、アンテナの出力そのものへの影響は抑えつつ、アンテナ間の効率よく結合を低減する。
【0014】
図7は、本構成による、電磁結合低減部400を有する例での結果を示す。
正規化周波数1付近で示される、必要周波数帯において、全て-70dB以下が得られている。
本実施例では、3×3の格子としている。
【0015】
移動通信で用いられる無線中継器(レピータ)のように、小形化のため、第一のアンテナ200と第二のアンテナ300を近接して配置するアンテナの構成が考えられる。本実施例では、背中合わせで配置した、偏波共用アンテナなどのアンテナの周囲に、3×3配列のEBG構造を4角に配置することで、約15dBの結合低減を実現できる。
【0016】
図8は、本発明の一実施例におけるアンテナ装置100の構成例を示す。
本実施例におけるアンテナ装置100は、金属部411が略多角形であり、本実施例では、十字型である。
そして、多角形の一辺の方向が第一のアンテナ200および第二のアンテナ300の偏波方向に略一致する。
【0017】
なお、「多角形の一辺」とは、アンテナとして機能する長さ方向の辺を意味し、例えば本構成のように中央で他の辺と交差する十字型などでは、十字型の一辺の長さを意味する。また、直線状の一辺を含む構成であれば、他の部位に曲線部など直線状以外の形状が含まれていてもよい。
本構成により、第一のアンテナ200および第二のアンテナ300の偏波を効率よく抑えることができ、アンテナ間の結合を低減することができる。
【0018】
図9は、本発明の一実施例におけるアンテナ装置100の構成例を示す。
本実施例におけるアンテナ装置100は、図に示されるように電磁バンドギャップ体410を構成する金属部411が略長方形であり、本実施例では、正方形である。
本構成により、長方形の一辺の方向が第一のアンテナ200および第二のアンテナ300の偏波方向に略一致する。
第一のアンテナ200および第二のアンテナ300の偏波方向に略一致する一辺の長さは、波長λに対して0.02λ以上0.5λ以下であることが望ましく、0.1λ以上0.4λ以下がさらに好ましい。
【0019】
アンテナ装置100は、電磁バンドギャップ体410の配置方向が、第一のアンテナ200および第二のアンテナ300の偏波方向と必ずしも一致する必要はなく、
図10に示されるように、45度など異なる方向でもよい。
本構成によれば、第一のアンテナ素子201の送受信する電波に対し、電磁バンドギャップ体410による影響を減らすことができる。
他方、略一致する場合には、電磁結合の低減効果をさらに高くすることができるうえ、加工方向が例えば縦横の二方向で統一できるなど、製造上も有利である場合が多い。
【0020】
図2に示される例では、アンテナ装置100は、電磁バンドギャップ体410の配置方向が、第一のアンテナ200および第二のアンテナ300の偏波方向に略一致する。ここで、電磁バンドギャップ体410の配置方向とは、最も近接する電磁バンドギャップ体410の方向を意味する。
電磁バンドギャップ体410の配置間隔は、0.05λ以上0.3λ以内が好ましい。
【0021】
図11は、本発明の一実施例におけるアンテナ装置100の構成例を示す。
本実施例におけるアンテナ装置100は、第一のアンテナ200および第二のアンテナ300の両方が電磁結合低減部400を有する。第一のアンテナ200の図は既述の例と同様であり、
図11に示されるように第二のアンテナ300もまた、電磁結合低減部400を有する。
本構成により、電磁結合を一層低減することができる。また、第一のアンテナ200および第二のアンテナ300の構成を同様とすることもでき、コストも削減できるうえ、安定性も向上させることが可能となる。
【0022】
一実施例において、アンテナ装置100は、第一のアンテナ200および第二のアンテナ300が偏波共用アンテナである。
本構成により、MIMO(Multi Input Multi Output)に対応できる
【0023】
一実施例において、アンテナ装置100は、第一のアンテナ200および第二のアンテナ300が略長方形であり、偏波方向が長方形の辺の方向に対応し、電磁結合低減部400は長方形の四隅方向に設けられている。
本構成により、アンテナ自体の入出力性能はなるだけ維持したまま、不要な電磁結合を効率よく低減することができる。また、アンテナのスペースを有効に活用することができる。
【0024】
図12は、本発明の一実施例におけるアンテナ装置100の構成例を示す。
本実施例におけるアンテナ装置100は、第一のアンテナ200および第二のアンテナ300が、異なる周波数に対応した別周波数帯用アンテナを有した周波数共用アンテナである。本実施例では、第一のアンテナ200は、互いに異なる周波数である第一周波数および第二周波数に対応した第一周波数帯用アンテナ211および第二周波数帯用アンテナ221を有する。また、第二のアンテナ300は、互いに異なる周波数である第一周波数および第二周波数に対応した第一周波数帯用アンテナ311および第二周波数帯用アンテナ321を有する。
【0025】
本実施例では、第一周波数用アンテナ211と第二周波数用アンテナ221が、それぞれオフセット量だけアンテナ中央からオフセットされている。
ここで、アンテナ中央とは、第一周波数用アンテナ211の中心と第二周波数用アンテナ221の中心との中間点を示すが、厳密に一致する必要はない。また、アンテナの基体110の中央からオフセットする構成でもよい。
当然ながら、第一周波数用アンテナ211と第二周波数用アンテナ221のオフセット量は、同じでも良く、異なる量でも良い。
【0026】
図13、
図14、および、
図15は、本発明の一実施例におけるアンテナ装置100の構成例を示す。
本実施例におけるアンテナ装置100は、第一のアンテナ200および第二のアンテナ300のそれぞれが、異なる周波数である第一の周波数および第二の周波数に対応した周波数共用アンテナである。
【0027】
具体的には、
図13に示されるように、アンテナ装置100は、第一周波数帯用アンテナ211を有する第一周波数帯対応層210と、第二周波数帯用アンテナ221を有する第二周波数帯対応層220を有する。第一周波数帯用アンテナ211と第二周波数帯用アンテナ221が第一のアンテナ200を構成する。同様に、第二のアンテナ300は、第一周波数帯用アンテナ311と第二周波数帯用アンテナ321を有する。
図14に示されるように、第一周波数帯対応層210は第一周波数帯用アンテナ211に対応する第一周波数用電磁結合低減部401を有する。また、
図15に示されるように、第二周波数帯対応層220は第二周波数帯用アンテナ221に対応する第二周波数用電磁結合低減部402を有する。
なお、
図14に示される第二周波数帯用アンテナ221は、実際には第二周波数帯対応層220に形成されており、位置関係の理解を容易とするために本図に示したものである。
【0028】
本実施例では、4つの電磁結合低減部400を備えた第一の周波数用のアンテナと、4つの電磁結合低減部400を備えた第二の周波数用のアンテナが、積層されている。そして、第一の周波数用のアンテナと第二の周波数用のアンテナが、それぞれオフセット量だけアンテナ中央からオフセットされている。
当然ながら、第一の周波数用のアンテナと第二の周波数用のアンテナのオフセット量は、同じでも良く、異なる量でも良い。
本実施例では、2つのアンテナが、アンテナ中央から略反対方向にオフセットしている。これにより、電磁気学的なバランスが良くなるが、装置の構成に合わせて、アンテナ中央から略反対方向以外の、例えば、互いに90度異なる方向など、異なる方向にオフセットしてもよい。また、一方がアンテナ中央であり、他方だけがオフセットしてもよい。
【0029】
図16、および、
図17は、本発明の一実施例におけるアンテナ装置100の構成例を示す。
本実施例におけるアンテナ装置100は、第一のアンテナ200における、第一周波数帯用アンテナ211および第二周波数帯用アンテナ221のオフセット方向と、第二のアンテナ300における、第一周波数帯用アンテナ311および第二周波数帯用アンテナ321のオフセット方向とが、略直交する。
【0030】
具体的には、第一のアンテナ200においては、第一周波数帯用アンテナ素子211と第二周波数帯用アンテナ221はx方向にオフセットしている。これに対して、第二のアンテナ300においては、第一周波数帯用アンテナ素子311と第二周波数帯用アンテナ321はy方向にオフセットしており、第一のアンテナ200におけるオフセット方向と直交している。
なお、両図に示される第一周波数帯用アンテナ221および311は、実際には、それぞれ、第一周波数帯対応層210および310に形成されており、位置関係の理解を容易とするために本図に示したものである。
本構成により、アンテナ特性がより大きく改善される。
【0031】
一実施例において、オフセット量が、低周波側の波長の10分の1以下である。
異なる周波数帯用のアンテナを用いる場合、オフセットが必要となるが、そのオフセット量を低周波側の波長の10分の1以下に抑えることにより、電磁結合を有効に低減できることが分かった。これは、電磁結合低減部400から見た、2つのアンテナの双方の位置がほぼ同様となるため、電磁結合を低減する効果が同じように活かされるためと考えられる。
【0032】
図18は、本発明の一実施例におけるアンテナ装置100の構成例を示す。
本実施例におけるアンテナ装置100は、第一のアンテナ200および第二のアンテナ300の一方がドナーアンテナであり、他方がサービスアンテナである。つまり、レピータ装置として機能するものである。
ドナーアンテナは、基地局5アンテナと通信信号の送受信を行う。また、サービスアンテナは、携帯端末6などの端末6と通信信号の送受信を行う。これにより、直接、基地局5からの電波が届かないエリアをエリア化する。
【0033】
本構成では、EBG構造によりアンテナ間の結合を低減しながら、ドナーアンテナとサービスアンテナを基体110の両面に配置することができるため、レピータ装置を小型することができる。
例えば、移動通信の宅内不感地の改善に用いられる、小電力レピータにおいて、小型化のためにドナー/サービスの双方で偏波共用アンテナを配置するなど、第一アンテナと第二のアンテナ300を近接して配置しても、レピータシステムなどアンテナ装置100内での回り込みの低減量を十分に確保できる。
このように、本構成によれば、物理的距離が近く、アンテナ間結合、つまり回り込みが問題となる場合においても、結合の低減量を十分確保することができる。
【0034】
本発明は以上の実施例に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々な実施例を含むことは言うでもない。
【符号の説明】
【0035】
100 アンテナ装置
110 基体
200 第一のアンテナ
201 第一のアンテナ素子
210 第一周波数帯対応層
211 第一周波数帯用アンテナ
220 第二周波数帯対応層
221 第二周波数帯用アンテナ
300 第二のアンテナ
301 第二のアンテナ素子
311 第一周波数帯用アンテナ
320 第二周波数帯対応層
321 第二周波数帯用アンテナ
400 電磁結合低減部
401 第一周波数用電磁結合低減部
402 第二周波数用電磁結合低減部
403 接地導体
410 電磁バンドギャップ体
411 金属部
412 ビア
5 基地局
6 端末