(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086637
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】対向する2紙片の任意の縁辺を剥離不能に接着する構造とそれを用いた折り畳み情報通信体。
(51)【国際特許分類】
B29C 65/50 20060101AFI20230615BHJP
B29C 65/40 20060101ALI20230615BHJP
B65D 27/00 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
B29C65/50
B29C65/40
B65D27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021215199
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000105280
【氏名又は名称】ケイディケイ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 義和
(72)【発明者】
【氏名】土屋 雅人
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AD06
4F211AD08
4F211AH54
4F211TA04
4F211TC17
4F211TD11
4F211TN03
4F211TN43
4F211TQ01
(57)【要約】
【課題】フィルムシートの被覆を前提とした2枚の用紙の縁辺の貼り合わせで、接着剤層の形成や接着の工程が省略できると共に接着部分の接着力が従来よりも強く容易に剥がれることがない、対向する2紙片の任意の縁辺を剥離不能に接着する構造と、それを用いた折り畳み情報通信体を提供する。
【解決手段】
対向する2紙片の対向する両縁辺に貫通孔を形成しておいて、前記2紙片の両外側にフィルムシート及び/又は疑似接着フィルムシートを被覆して、前記2紙片の縁辺に形成された貫通孔を通して両紙片に被覆されたフィルムシート及び/又は疑似接着フィルムシートの感熱接着剤層を、それぞれ対向する紙片側へ押し出して2紙片を剥離不能に接着することを特徴とした対向する2紙片の任意の縁辺を剥離不能に接着する構造により解決される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2紙片の任意の対向する両縁辺に貫通孔を形成しておいて、前記2紙片の両外側にフィルムシート及び/又は疑似接着フィルムシートを被覆して、前記2紙片の縁辺に形成された貫通孔を通して両紙片の外側から被覆されたフィルムシート及び/又は疑似接着フィルムシートをそれぞれ対向する紙片側へ押し出して、前記フィルムシート及び/又は疑似接着フィルムシートに形成された感熱接着剤層で対向する縁辺同士を剥離不能に接着することを特徴とした対向する2紙片の任意の縁辺を剥離不能に接着する構造。
【請求項2】
対向する2紙片が1紙片の折り畳みにより構成されたことを特徴とした請求項1に記載の対向する2紙片の任意の縁辺を剥離不能に接着する構造。
【請求項3】
対向する任意の縁辺に形成される貫通孔がお互いに重なり合うことを特徴とした請求項1又は2に記載の対向する2紙片の任意の縁辺を剥離不能に接着する構造。
【請求項4】
対向する任意の縁辺に形成される貫通孔がお互いに重ならないことを特徴とした請求項1又は2に記載の対向する2紙片の任意の縁辺を剥離不能に接着する構造。
【請求項5】
対向する任意の縁辺に形成される貫通孔が一部重なり合うことを特徴とした請求項1又は2に記載の対向する2紙片の任意の縁辺を剥離不能に接着する構造。
【請求項6】
貫通孔の重なりが請求項3乃至5の状態が混在することを特徴とした請求項1又は2に記載の対向する2紙片の任意の縁辺を剥離不能に接着する構造。
【請求項7】
折り線を介して連接した複数の紙片を折り畳み及び/又は切り重ね剥離可能に接着した折り畳み情報通信体であって、剥離展開後に少なくとも1紙片が請求項1乃至6に記載の対向する2紙片の任意の縁辺を剥離不能に接着する構造により、製本状態及び/又は袋体状態で他の紙片と任意の縁辺で剥離不能に接着されていることを特徴とした2紙片の任意の縁辺を剥離不能に接着する構造を用いた折り畳み情報通信体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば対向する2枚の用紙の縁辺を剥離不能に接着して袋状に形成したり、対向する2枚の用紙の任意の縁辺を剥離不能に接着したりして製本状態に形成するための接着構造と、それを用いた折り畳み封書や葉書等の折り畳み情報通信体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来2枚の用紙の縁辺を貼り合わせて袋体にしたり、2枚の用紙の一箇所の縁辺を貼り合わせて製本状態にしたりする接着構造は、単に接着剤層を形成しておいて貼り合わせるものであった。しかし接着剤層による接着態様にしても接着剤の塗工や折り合わせ後の接着等の工程が増えコストが掛かる。また最近葉書や封書等で使用されるようになった、複数の紙片を折り畳んで剥離可能に接着する折り畳み情報通信体において、前記接着剤層による接着態様を使用して、その形態にバリエーションを持たせたいところ、前記工程の追加が必要なため実施されることがなかった。
【0003】
そこで前記折り畳み情報通信体等で前記接着剤層による接着態様を使用せず、製本状態等に形成する技術が特開2013-99912号公報に開示されている。このものはフィルムシートを被覆することが必須の折り畳み情報通信体の製本態様の形成に関する物で、製本部分に接着剤層を使用するのではなく被覆されたフィルムシートの感熱接着剤層を利用するもので、これにより接着剤層の形成工程を省略することができる。
【0004】
【先行技術文献】
【0005】
【特許文献】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記引用文献の接着構造では、例えば製本型の折り畳み情報通信体を製造する場合に、2枚の用紙の任意の縁辺に沿って貫通孔を設け、その穴を覆うようにフィルムシートを被覆することで、被覆されたフィルムシートと逆側に位置するもう一枚の対向面に、前記貫通孔を通して押し出されるフィルムシートが感熱接着剤層を介して接着され、その結果2枚の用紙が前記任意の縁辺に沿って接着され製本されるというものである。
【0007】
引用文献の接着構造はフィルム被覆を前提とした情報通信体の製造では、極めて至便な接着構造であり幅広い活用が期待できる。しかし例えば使用される用紙がマットやコート等の塗工紙の場合、表面の塗工成分が接着剤の接着性を阻害し十分発揮できない。さらに貫通孔を形成する用紙の厚みがあるので、その孔を通して対向面側へ押し込まれるフィルムシートの対向面との接触面積も狭くなる。従って前記引用文献の構造では十分な接着力を得ることができず2枚の紙片が剥離してしまう可能性がある。従って前記接着力の強化策が必要となる。
【0008】
本発明は前記問題に鑑み、フィルムシートの被覆を前提とした2枚の用紙の縁辺の貼り合わせで、接着剤層の形成や接着の工程が省略できると共に接着部分の接着力が従来よりも強く容易に剥がれることがない、対向する2紙片の任意の縁辺を剥離不能に接着する構造と、それを用いた折り畳み情報通信体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の対向する2紙片の任意の縁辺を剥離不能に接着する構造は、対向する2紙片の任意の対向する両縁辺に貫通孔を形成しておいて、前記2紙片の両外側にフィルムシート及び/又は疑似接着フィルムシートを被覆して、前記2紙片の縁辺に形成された貫通孔を通して両紙片の外側から被覆されたフィルムシート及び/又は疑似接着フィルムシートをそれぞれ対向する紙片側へ押し出して、前記フィルムシート及び/又は疑似接着フィルムシートに形成された感熱接着剤層で対向する縁辺同士を剥離不能に接着することを特徴としている。
【0010】
両紙片の任意の縁辺に対向する状態で設けられる貫通孔の形状や大きさや数に特別な制限はない。円形、方形、ひし形、楕円、長楕円或いは縁辺に沿って長窓等目的に合わせて形状及び数量を選択すればよい。また貫通孔が必ずしも全周に枠を有する必要もなく縁辺の外側から湾状に入り込む形状でも構わない。
【0011】
2枚の紙片の対向する貫通孔の配置は、お互いの貫通孔が位置を揃えて対向する状態でも、或いは全く交差することなくお互いの用紙面に隠れてしまうようにしても、さらに一部重なり合うように配置してもよい。また一部は位置を揃えて対向するが一部は全く対向しない等前記各種配列の混合形態でも構わない。
【0012】
本発明に使用するフィルムシートの構成は、例えば二軸延伸ポリプロピレンの一方の面に公知の感熱接着剤層を形成したサーマルラミネートに対応したプリントラミネート用のフィルムを好適に使用することができる。また折り畳み情報通信体の製造に必須の、前記二軸延伸ポリプロピレンの感熱接着剤層を形成した側と逆側の面に疑似接着層を形成した疑似接着フィルムシートは、紙片の対向面同士の剥離可能な疑似接着と2枚の用紙の任意の縁辺における剥離不能な接着に共用できるため極めて至便である。
【0013】
また上記目的を達成するために、本発明の対向する2紙片の任意の縁辺を剥離不能に接着する構造を有する折り畳み情報通信体は、折り線を介して連接した複数の紙片を折り畳み及び/又は切り重ね剥離可能に接着した折り畳み情報通信体であって、剥離展開後に少なくとも1紙片が請求項1乃至6に記載の対向する2紙片の任意の縁辺を剥離不能に接着する構造により、製本状態及び/又は袋体状態で他の紙片と対向する任意の縁辺で剥離不能に接着されていることを特徴としている。
【0014】
なお折り畳み情報通信体とは、例えば折り線を介して連接された複数の紙片を折り畳み或いは切り重ね、対向面間を疑似接着フィルムシートを介して剥離可能に接着したもので、受取人は前記対向面間を剥離して内部の情報を透明或いは半透明な疑似接着フィルムシートを透して確認することができるものである。
【0015】
本発明の2紙片の任意の縁辺を剥離不能に接着する構造を有する折り畳み情報通信体は、単純に平面に剥離展開できるだけではなく、一部を製本状態に或いは袋体を内包することが可能で、受取人に対して今までの折り畳み情報通信体以上の訴求効果を与えることが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の対向する2紙片の任意の縁辺を剥離不能に接着する構造によれば、フィルムシートを被覆する2枚の用紙の任意の縁辺の剥離不能な接着に関して、新たに接着剤層を形成する必要がない。またそれを使用した折り畳み情報通信体は、情報通信体の製造に必須な要素となる疑似接着フィルムシートを使用するため、対向面間の疑似接着と任意の縁辺の剥離不能な接着の両方に共有でき、折り畳み情報通信体の構造も新たな接着剤層を必要としないためシンプルになり経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(A)は袋体Pの表面図、(B)は裏面図である。
【
図3】
図2におけるII-II線断面図であり、貫通孔Hで対向するフィルムシートF同士により第一紙片1と第二紙片2が剥離不能に接着する様子を示す断面図である。
【
図4】
図2に示す貫通孔Hの配置の変形例で、(A)は両貫通孔Hが全く重ならない接着補強の断面図、(B)は一部重なり合う接着補強の断面図である。
【
図5】(A)は袋体シートS1の表面図、(B)は裏面図である。
【
図6】(A)は
図5(A)におけるIII-III線断面図、(B)は折り合わされ対向する貫通孔Hに被覆されたフィルムシートFに、加熱・加圧処理による力が働く様子を示す断面図である。
【
図8】(A)は折り畳み情報通信体Jの表面図、(B)は裏面図である。
【
図9】(A)は
図8(A)におけるIV-IV線断面図、(B)は開封状況を示す断面図である。
【
図10】(A)は折り畳み情報通信体シートS2の表面図、(B)は裏面図である。
【
図11】(A)及び(B)は完成した折り畳み情報通信体Jの開封状況を違う角度から眺めた斜視図である。
【
図12】(A)はフィルムシートFの拡大断面図、(B)は疑似接着フィルムシートGの拡大断面図である。
【
図13】(A)は枠を有しない貫通孔Hを示す平面図、(B)は(A)の変形例の平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明を、図面に沿って分かりやすく説明する。
なお以下の実施例に使用するフィルムシートFは
図12(A)に示すように、厚さ10~20μmの二軸延伸ポリプロピレンを基材101として、一方の面に厚さ10~20μmの公知の感熱接着剤層102を形成したもので、サーマルラミネートに対応した構成となっている。また疑似接着フィルムシートGは、前記フィルムシートFの基材101の感熱接着剤層102を形成した側と逆側に極薄の疑似接着層103を形成したサーマルラミネートに対応した構成のものを好適に使用することができる。
以下の実施例中では図面の複雑化を防ぐため、フィルムシートF及び疑似接着フィルムシートG共に1層で示す。
【実施例0019】
[2紙片の任意の縁辺を剥離不能に接着する構造]
図1(A)、(B)及びその斜視図の
図7は例えば薬や書類等を入れるのに使用する袋体Pである。このような袋体はフィルムシートにより被覆されることが望まれる。それにより外力による破れ等の破損事故や雨水等による破損も防ぐことができるからである。
この袋体Pは
図5(A)及び(B)に示す袋体シートS1から製造される。前記袋体シートS1は、第一紙片1及び第二紙片2が折り線3を介して横方向に連接されており、それぞれの紙片の上側縁辺を除いた外側縁辺に円形状の貫通孔Hが設けられている。そして両紙片の表面には斜線で表示されるサーマルタイプのフィルムシートFが前記貫通孔Hを含めて全体を覆うように被覆されている。なお前記折り線3には折りミシンや折り筋等の折り手段が形成されていても構わない。
【0020】
図6(A)は
図5(A)におけるIII-III線断面図である。フィルムシートFが貫通孔Hを覆うように袋体シートS1に被覆された状態であるが、フィルムシートFはサーマルラミネートタイプで、前記感熱接着剤層102により袋体シートS1の表面に剥離不能に接着している。従って貫通孔Hでは感熱接着剤層102が貫通孔H内で慮出した状態となっている。
【0021】
そして既述の状態の袋体シートS1を折り線3から第一紙片1と第二紙片2の裏面同士が対向するように二つ折りすると、
図6(B)に示すように両紙片の上側を除く縁辺に形成された貫通孔H同士が対向することになる。そしてこの状態で貫通孔H部分を被覆しているフィルムシートFの両外側から矢印で示すように加熱・加圧処理を施せば、
図2及び
図3に示すように貫通孔Hの内側へ両フィルムシートFが入り込み、対向するフィルムシートFの露出している感熱接着剤層102によりお互いが剥離不能に接着するのである。
【0022】
なお前記実施例は折り合わせた際に貫通孔H同士が対向する構成であるが、例えば
図4(A)に示すようにお互いの貫通孔Hの配置が完全にずれた状態でも構わず、また同図(B)に示すようにお互いの貫通孔Hの配置が完全にずれることなく一部分で重なり合うような配置でも、或いはそれらの配置が混在する配置でも構わない。何れにしても両側から接着することになるので、一方の紙片に貫通孔Hを設けて接着する場合に比較してより強力に接着されることになる。
【0023】
また本実施例では1紙片を折り畳み対向する2紙片としているが、個別の2紙片を重ね合わせて、物品の出し入れ口となる1縁辺を除いた3縁辺を、上記構造の貫通孔Hにより接着しても同様の袋体を作製することができる。この場合、例えば対向する2紙片の3縁辺に重なり合う貫通孔Hを設け、新たに前記2紙片と重なり合う貫通孔Hを有する第三の紙片を間に挟み、両外側の紙片に被覆されたフィルムシートFの感熱接着剤層102で、第三の紙片をサンドイッチ状態で接着すれば、内部に仕切りを有する袋体Pが完成する。前記仕切りの数に制限はないが、貫通孔Hの厚みによりフィルムシートFの感熱接着剤層102同士の接着が阻害されることがない範囲でのこととなる。
そして第二紙片12及び第三紙片13の表面側は貫通孔Hを除き略全面に渡り斜線で表示される疑似接着フィルムシートGが被覆されている。また第一紙片11及び第二紙片12の裏面側は貫通孔Hを覆うように略全面に斜線で表示される疑似接着フィルムシートGが被覆され、また第三紙片13の裏面側にも貫通孔Hを覆うように略全面に斜線で表示されるフィルムシートFが被覆されている。なお前記フィルムシートFは第三紙片13裏面側の全面を覆う必要はなく幅を狭くしても構わない。要は貫通孔HがフィルムシートFに覆われていればよいのである。そして折り線14には折り畳み情報通信体シートS2と被覆されている疑似接着フィルムシートGを共に貫通する状態で破断ミシンが形成され、ここから第一紙片11と第二紙片12が分離できるようになっている。また折り線14には折りミシンや折り筋等の折り手段が形成されていても構わない。