(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086640
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】農作物の生育要因制御による屋内有機農法
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20230615BHJP
A01G 31/00 20180101ALI20230615BHJP
【FI】
A01G7/00 601Z
A01G31/00 612
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021215609
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】518440899
【氏名又は名称】パテントフレア株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 学
【テーマコード(参考)】
2B022
2B314
【Fターム(参考)】
2B022AA01
2B022DA01
2B022DA11
2B022DA17
2B314MA09
2B314PB54
2B314PD54
2B314PD59
2B314PD69
(57)【要約】
【課題】農作物は、自然環境(天候や病害虫)の影響を受け、収獲量が安定しない、農薬や化学肥料の使用による環境への悪影響などの課題があり、より効率的な農作物生産技術(方法)が求められていた。
【解決手段】農作物の生育環境を管理するための、設備を備えた建物内で栽培を行う。
「作物の生育阻害要因制御」の設備として、密閉型の温室建物で、換気空調設備を設置水質浄化装置を通過する水耕栽培設備。
「作物の生育促進要因供給」の設備として、24時間効率良く光合成が行えるように照明、暖房、二酸化炭素供給装置。
これらの設備によって、自然環境(天候や病害虫)の影響と農薬や化学肥料使用に伴う課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
「植物の生育阻害要因抑制による生育促進法」
(1)「温室栽培」条件
農作物を植物園の温室のような建物の中で、生育環境を管理しながら、栽培、生育を行う屋内栽培システム。
(農作物とは、穀物、野菜、花卉、木材用苗木などである。)
(植物園の温室とは、屋外と同等の太陽光(熱)を、建物内に取り入れるため、ガラスやアクリルなどの透明な建材(材料)で、屋根や壁面が作られている建物である。)
(2)「空調設備」条件
当該建物には、換気空調設備が設置され、この設備を通してのみ外気との換気(空気の入れ替え)、及び建物内空気循環を行い、それ以外は外気と接することのない密閉型の建物である。
建物内の作業員の出入りについては、半導体製造工場や感染症治療病室同様の厳重管理を行う。
(換気空調設備とは、空気清浄機で使われる技術(フィルター式、静電気式、プラズマクラスター式など)を用いて建物内外の換気、及び建物内空気循環を行う設備である。)
(半導体製造工場や感染症治療病室同様の厳重管理とは、外部のものが作業員と一緒に中に入らないように、靴の履き替え、白衣着用、風、静電気、紫外線などを使用した空間を通過したり、建物内外の圧力を変えて建物内の空気は外へ流れるが、外の空気は建物内に流入しないようにする措置である。)
(3)「水耕栽培」条件
建物内での栽培は、土を使わず水耕栽培で行う。
細長い水路のような水耕レーンを設置し、使用する水は水質浄化装置を通過させる。
(4)「自動収獲」条件
水耕レーンの横に平行して自動刈り取り(収獲)装置用レーンを設置する。
自動刈り取り装置が、モノレールのように移動しながら、作物を刈り取る仕組みである。
(1)から(4)の条件を備えた建物内で、栽培、生育を行うことで外部から建物内への病原性微生物、害虫、及び雑草の種子の侵入を抑制し、農薬を使わず効率的に作物を栽培、生育する方法。
(1)から(4)の条件を備えた建物で、屋外環境よりも大幅に作物の生育阻害要因を抑制することによる生育促進栽培方法。
【請求項2】
「植物の生育促進要因供給による生育促進法」
(1)「光エネルギー供給」条件
当該建物内で、天候が良い日中は十分な太陽光が供給されるが、夜間や天候の悪い日でも照明を使って24時間光合成に必要な光を供給する。
(2)「熱エネルギー供給」条件
植物は、気温が低いと生育が停滞する傾向がある。
当該建物内で、太陽光によって十分な温度が得られない場合は、温水循環など幅射熱暖房を使って24時間生育に必要な温度を供給する。
(3)「二酸化炭素供給」条件
植物のはたらきである光合成は、二酸化炭素を分解して酸素を排出、残った炭素で有機化合物を合成するため、二酸化炭素を多く吸収すると合成される有機化合物の量も増加して生育が促進される。
この環境を作るため、屋外の大気中よりも、二酸化炭素濃度が高くなるように建物内に二酸化炭素を供給する。
(1)から(3)の条件を備えた建物内で栽培、生育を行うことで、作物の光合成の効率を高め、化学肥料を削減し、栽培、生育する方法。
(1)から(3)の条件を備えた建物内で屋外環境と比べて、作物の生育促進要因を多く供給することによる生育促進栽培方法。
【請求項3】
請求項1、請求項2に記載の方法を使用した設備。
【請求項4】
請求項3に記載の設備を使用した役務、事業。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物の水耕栽培、ハウス栽培の応用技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水耕栽培の技術
【0003】
ハウス栽培の技術
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
農作物は、自然環境(天候や病害虫)の影響を受け収獲量が安定しないという課題、又農薬、化学肥料の使用による環境への悪影響という課題があった。
これらの課題に対し、より効率的な農作物生産技術(方法)が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
農作物(植物)の成長メカニズムである光合成を効率的に行わせることによって、課題の解決を図る。
植物は、動物のように他の有機化合物を食物として摂取することなく、光、水、二酸化炭素、リンなどの無機物を取り込み、糖質、脂質、たんぱく質などの有機化合物を合成する。
この作用を光合成という。光合成の仕組みは、葉緑素のはたらきで、「光エネルギーを用いて二酸化炭素を酸素と炭素に分解する」という化学反応を行う。
この内、酸素を体外へ排出し炭素を体内に残す。
又、根から水を吸い上げ、「光エネルギーを用いて水を酸素と水素に分解する」という化学反応を行う。
この内、酸素を体外へ排出し水素を体内に残す。
(水は、電気分解によって水素と酸素に分解することができるが、葉緑素は光分解によって二酸化炭素を炭素と酸素に、水を水素と酸素に分解する生体内化学反応を行うことができる。電気エネルギー同様光エネルギーにも正荷と負荷があるため、この反応が可能となる。)
このようにして、葉緑素内で大量の炭素を水素結合して気体であった炭素から微小な固体の有機化合物を合成する。この有機化合物が、葉緑素(葉)から植物全体の各細胞へ送られ、糖質、脂質、たんぱく質など各部位の成分が作られる。これが光合成の仕組みである。
このような、植物の成長メカニズムを促進するため、建物内で作物の生育環境制御、収獲自動化などの設備を設けて栽培を行う。
「作物の生育阻害要因抑制」を図る設備
(1)屋外と同等の太陽光を取り入れられるように、ガラスやアクリルなどの透明な建材(材料)で、屋根、壁面が作られた植物園の温室のような建物の中で栽培する。
(2)建物には、外気との換気(空気の入れ替え)及び建物内の空気循環のための換気空調設備を設置し、この設備以外では外気と接することがない密閉型の建物とする。
(3)栽培は、土を使わない水耕栽培で行い、使用する水は、水質浄化装置を通過させる。
(4)水耕栽培エリアと平行して、自動刈り取り装置用のレーンを設置し、収獲作業を自動化する。
「作物の生育促進要因供給」を図る設備
(1)夜間など十分な光エネルギーの不足状況に対して、照明設備で24時間光合成が可能な環境を作る。
(2)気温が低いと生育活動が低下する作物が多いため、暖房設備で24時間生育に必要な温度環境を作る。
(3)二酸化炭素が生育に必要な有機化合物の素であるため、二酸化炭素供給設備で、屋外環境よりも二酸化炭素濃度を高くすることで、有機化合物合成促進環境を作る。
上記「作物の生育阻害要因抑制」及び「作物の生育促進要因供給」を図る設備を備えた建物内で、農作物の栽培、生育を行うことによって、自然環境(天候や病害虫)の影響を受けず収獲量を安定化させ、農薬、化学肥料による環境への悪影響の課題も解決する。