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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086654
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】防音パネル
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/00 20060101AFI20230615BHJP
   E04G 21/32 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
E04G5/00 301E
E04G21/32 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100391
(22)【出願日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2021201212
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520124383
【氏名又は名称】株式会社CSPホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 直希
(57)【要約】
【課題】開閉しやすい防音パネルを提供すること。
【解決手段】工事現場において建築物の周りに配置される足場の側面に設けられ、足場の側面を覆う防音パネル20は、上下方向に延びる縦枠32を有する枠体30と、枠体30の内側を覆うパネル体40と、縦枠30に沿って設けられた案内レール50と、を備える。パネル体40は、上側パネル41と下側パネル42の2枚で構成され、上下方向に並べて配置されている。上側パネル41が案内レール50に従って上下方向にスライド移動可能に構成されることにより、パネル体40が開閉可能に構成されている。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事現場において工事対象物の周りに配置される足場の側面に設けられ、足場の側面を覆う防音パネルであって、
少なくとも上下方向に延びる縦枠を有する枠体と、
前記枠体の内側を覆うパネル体と、
前記縦枠に沿って設けられた案内レールと、を備え、
前記パネル体が、複数枚で構成され、上下方向に並べて配置されており、
前記パネル体のうち少なくとも一枚が前記案内レールに従って上下方向にスライド移動可能に構成されていることにより、前記パネル体が開閉可能に構成されている防音パネル。
【請求項2】
前記パネル体のうち上側パネルが、前記案内レールに従って上下方向にスライド移動可能に構成されており、
前記パネル体のうち下側パネルが、前記枠体に固定されている請求項1に記載の防音パネル。
【請求項3】
前記上側パネルは、前記下側パネルよりも前記工事対象物の側に配置されており、
前記パネル体の閉鎖時において、前記上側パネルの下端部と前記下側パネルの上端部とが重なっている請求項2に記載の防音パネル。
【請求項4】
前記パネル体の閉鎖時において、前記パネル体のうち上側パネルと下側パネルとの前記重なっている部分の隙間に、当該隙間を塞ぐシール部材を備える請求項3に記載の防音パネル。
【請求項5】
前記パネル体のうちスライド移動可能な部分は、前記案内レールに対して点接触又は線接触している請求項1~4のうちいずれか1項に記載の防音パネル。
【請求項6】
前記枠体は、上下方向に延びる一対の縦枠と、左右方向に延びる一対の横枠と、を有する四角形状の枠体であり、
前記枠体を補強する枠体補強部材を備え、
前記枠体補強部材は、一対の前記縦枠の間、又は一対の前記横枠の間、又は前記縦枠と前記横枠との間を繋いで、前記枠体を補強する請求項1~4のうちいずれか1項に記載の防音パネル。
【請求項7】
上下方向にスライド移動可能に構成されている前記パネル体には、パネル補強部材が左右方向に延びるようにして設けられており、
前記防音パネルは、横長に形成されており、
前記枠体補強部材は、一対の前記横枠の間を繋ぐように上下方向に延びており、
前記パネル補強部材には、前記枠体補強部材との交差部分において、前記枠体補強部材の一部又は全部が配置される凹部が形成されている、請求項6に記載の防音パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築現場や解体現場などに設置される防音パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築現場や解体現場などの工事現場では、足場を設置して工事を行う。その際、工事現場から生じる粉塵や騒音が極力外に漏れないように、足場側面をシートや防音パネルで覆うことが一般的である。
【0003】
ところで、台風などが通過する場合、足場側面に設置された防音パネル等は、横から強風による荷重を受ける。特に、ビルなどの高所の現場においてはその影響が顕著である。このため、強風が予想される場合、防音パネル等を一時的に撤去するなど、強風対策のための作業が必要となっていた。
【0004】
そこで、特許文献1では、側面部を覆う防音パネル(特許文献1では防護パネル)を開閉可能に構成している。これにより、開放された防音パネルの隙間から風を通過させることができ、風による荷重を低減することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-110108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の防音パネルでは、レールに沿って水平方向にスライド移動させることにより、防音パネルを開閉させている。しかしながら、作業現場から生じた塵埃等は、側面の防音パネルに当たって落下し、足下のレールに溜りやすくなっている。そして、レールに塵埃等が溜まった場合、スライド移動が困難となる。特に、解体現場の場合、細かいコンクリート粉などの塵埃が多量に生じる場合があり、その傾向が顕著となる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、開閉しやすい防音パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための防音パネルは、工事現場において工事対象物の周りに配置される足場の側面に設けられ、足場の側面を覆う防音パネルであって、少なくとも上下方向に延びる縦枠を有する枠体と、前記枠体の内側を覆うパネル体と、前記縦枠に沿って設けられた案内レールと、を備え、前記パネル体が、複数枚で構成され、上下方向に並べて配置されており、前記パネル体のうち少なくとも一枚が前記案内レールに従って上下方向にスライド移動可能に構成されていることにより、前記パネル体が開閉可能に構成されている。
【0009】
これにより、強風が予想される場合、パネル体を開放して、風を通過させることができる。したがって、強風の場合において、防音パネルを一旦解体して取り外す手間を省くことが可能となる。
【0010】
また、案内レールは、縦枠に沿って上下方向に延びるように設けられているため、案内レールに塵埃等が溜まりにくくなっている。よって、パネル体の一部を案内レールに従って上下方向にスライドさせるように構成することにより、塵埃等が生じやすい現場においても、スライド移動が困難になることを好適に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】足場を模式的に示す斜視図。
図2】工事現場における防音パネルの設置態様を模式的に示す斜視図。
図3】表側からみた防音パネルを示す正面図。
図4】裏側からみた防音パネルを示す背面図。
図5】裏側からみた上側パネルを示す背面図。
図6】(a)は、防音パネルのA-A線断面、(b)は、防音パネルのB-B線断面図。
図7】上側補強部材を示す側面図。
図8】下側補強部材を示す側面図。
図9】(a)は、ロック機構を示す正面図、(b)は、ロック機構を示す側面図。
図10】ロック解除時におけるロック機構を示す側面図。
図11】(a)は、比較例におけるパネル体を模式的に示す側面図、(b)は、本実施形態におけるパネル体を模式的に示す側面図。
図12】変形例における防音パネルを示す断面図。
図13】第2実施形態における防音パネルを示す背面図。
図14】補強部材の配置を示す横断面。
図15】補強部材の配置を示す縦断面。
図16】防音パネルの裏側を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明にかかる「防音パネル」を具体化した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1に示すように、建設現場や、解体現場、土木工事現場などの工事現場において、建築物10の周りには、仮設の足場11が設置される。工事対象物である建築物10は、建設現場や土木工事現場の場合には、建築対象であり、解体現場の場合には、解体対象である。
【0014】
この足場11は、周知の構成を有しており、例えば、複数の縦支柱12と、縦支柱12の間に固定される水平足場配管13と、水平足場配管13に取り付けられる足場板14等を備える。
【0015】
図2に示すように、防音パネル20は、足場11の側面に設けられ、足場11の側面を覆うものである。より詳しくは、防音パネル20は、足場11に対して、建築物10とは反対側の側面に設けられており、足場11の側面を覆って、工事現場から生じる細かいコンクリート粉などの塵埃や、騒音が外部に漏れることを抑制するものである。また、防音パネル20は、塵埃以外の物体(工具など)の落下や、作業員が転落することを抑制する役割も有する。なお、図2では、防音パネル20を模式的に示しており、詳細な構成や図については後述する。
【0016】
ところで、従来において、防音パネルは、塵埃や騒音が外部に漏れることを抑制する役割が期待されているため、風なども当然通過させない。このため、強風が吹いたとき、風荷重が防音パネルに加わり、風にあおられやすくなっている。また、足場は、建築物の高さに応じて、複数階に亘って設けられる場合もあり、この場合、強風にあおられて倒壊する虞もある。このため、従来においては、強風が予想される天候の場合(例えば、台風などの場合)、防音パネルや足場を一旦解体して撤去しており、大変な手間が生じていた。そこで、本実施形態では、次のように防音パネル20を構成した。以下、詳しく説明する。なお、図3は、外側から見たとき(いわゆる表側)における防音パネル20の正面図であり、図4は、建築物10の側(足場11の側)見たとき(いわゆる裏側)における防音パネル20の背面図である。
【0017】
図3及び図4に示すように、防音パネル20は、長方形状に形成された枠体30と、枠体30の内側を覆うパネル体40と、枠体30に装着される案内レール50(図6参照)と、を備える。
【0018】
まず、枠体30について説明する。図3に示すように、枠体30は、一対の縦枠31と、一対の横枠32を備え、横枠32のほうが縦枠31よりも長い長方形状となっている。防音パネル20は、通常、縦枠31が上下方向に沿い、かつ、横枠32が左右方向(水平方向)に沿うように配置される。つまり、縦枠31が左右両辺に配置され、横枠32が上辺及び底辺に配置される。
【0019】
図4及び図6に示すように、縦枠31には、縦枠31に沿って(つまり、上下方向に沿って)延びる案内レール50が設けられている。案内レール50は、図6に示すように、断面が略U字形状に構成されており、本実施形態では、縦枠31に一体形成されている。この案内レール50は、縦枠31において、建築物10の側の側面に設けられている。つまり、案内レール50は、縦枠31の左右方向端部から建築物10の側(奥行方向内側)に突出するように形成されており、奥行方向における建築物10の側の先端部が、左右方向内側に屈曲するように形成されている。
【0020】
なお、本実施形態において、奥行方向とは、防音パネル20に垂直となる方向であり、建築物10の側が、奥行方向の内側に相当し、建築物10とは反対側が、奥行方向の外側に相当する。また、パネル体40は、左右対称に設けられているため、図6では、左右方向のうち一方側のみ図示をしている。
【0021】
次にパネル体40について説明する。図3及び図4に示すように、パネル体40は、複数枚で構成され、上下方向に並べて配置されている。本実施形態のパネル体40は、上側パネル41と下側パネル42を備えている。下側パネル42は、塵埃などを通さないように長方形状の一枚板により構成されており、枠体30の下半分をほぼ覆うように、枠体30の下部に固定されている。
【0022】
その際、図6(b)に示すように、下側パネル42は、奥行方向において、枠体30の外側(建築物10とは反対側)にリベットなどの固定部材により固定される。また、本実施形態では、下側パネル42の左右方向端部における奥行方向外側及び左右方向側面を覆い、奥行方向への移動及び左右方向の移動を規制するケーシング枠33が、縦枠31に一体形成されている。また、図3に示すように、下側の横枠32には、下側パネル42の下側端部における奥行方向外側及び下面を覆い、奥行方向への移動及び下方向の移動を規制するケーシング枠34が、一体形成されている。
【0023】
また、パネル体40は、上側パネル41よりも上側において、上辺の横枠32と、上側パネル41との隙間を埋めるため、細長い補助パネル43を備える。補助パネル43は、下側パネル42と同様に、奥行方向において、枠体30の外側にリベットなどの固定部材により固定される。また、下側パネル42と同様、図6(a)に示すように、補助パネル43は、奥行方向において、補助パネル43の左右方向端部における奥行方向外側及び左右方向側面を覆い、奥行方向への移動及び左右方向の移動を規制するケーシング枠35が、縦枠31に一体形成されている。また、図4に示すように、上側の横枠32には、補助パネル43の下側端部における奥行方向外側及び上面を覆い、奥行方向への移動及び上方向の移動を規制するケーシング枠36が、一体形成されている。
【0024】
図3及び図4に示すように、上側パネル41は、下側パネル42と同様に、塵埃などを通さないように長方形状の一枚板により構成されており、枠体30の上半分をほぼ覆うことが可能な大きさで構成されている。この上側パネル41は、縦枠31に沿って(つまり、上下方向に沿って)スライド移動可能なように、枠体30に取り付けられている。スライド移動させるための構成については後述する。なお、閉鎖時において、上側パネル41の下端部は、下側パネル42の上端部と奥行方向において重なるようにその形状が定められている。
【0025】
図5に示すように、上側パネル41の上方には、左右方向に沿って真っすぐに延びる上側補強部材44が設けられている。図6(a)等に示すように、上側補強部材44は、リベットなどの固定部材により、上側パネル41の奥行方向の内側(裏側)に固定されている。また、図7に示すように、上側補強部材44は、金属材料により、断面がL字形状に形成されており、その下端部が、奥行方向の内側(建築物10の側)に突出するように形成されている。
【0026】
同様に、図5に示すように、上側パネル41の下方には、左右方向に沿って真っすぐに延びる下側補強部材45が設けられている。下側補強部材45は、リベットなどの固定部材により、上側パネル41の奥行方向の内側(裏側)に固定されている。また、図8に示すように、下側補強部材45は、金属材料により、断面がL字形状に形成されており、その上端部が、奥行方向の内側(建築物10の側)に突出するように形成されている。この上側補強部材44及び下側補強部材45により上側パネル41を補強し、反りなどを抑制している。
【0027】
また、図4図6に示すように、上側パネル41において、奥行方向の内側(建築物10の側)には、スライド移動を規制するためのロック機構46が設けられている。このロック機構46は、上側補強部材44の左右両端に固定されている。より詳しくは、上側補強部材44の左右両端において、奥行方向において建築物10の側に突出する下端部の下面にボルト44aを介して固定されている。
【0028】
図9に示すように、ロック機構46は、L字に屈曲形成された棒状のかんぬき46aを備えている。かんぬき46aは、左右方向に移動可能に構成されている。かんぬき46aを左右方向外側に移動させることにより、図6(a)に示す通り、その先端を案内レール50に設けられた貫通孔50aに挿通させることができる。これにより、上側パネル41を枠体30に係止させて、スライド移動を規制することができる。
【0029】
また、かんぬき46aを左右方向内側に移動させることにより、その先端を貫通孔50aから引き抜くことができる。これにより、係止を解除して、上側パネル41をスライド移動させることができる。
【0030】
なお、図10に示すように、かんぬき46aを左右方向内側に移動させた状態で、かんぬき46aを矢印方向に回動させることにより、左右方向内側に設けられた係止板46bにかんぬき46aを係止させ、左右方向の移動を規制することができる。これにより、上側パネル41のスライド移動中に、かんぬき46aが左右方向外側に移動して、その先端が案内レール50に接触することを防止できる。また、ロック機構46の構成は、かんぬき構造に限らず、スライド移動の規制及び規制解除ができる構成ならば、任意に変更してもよい。
【0031】
次に、上側パネル41をスライド移動させるための構成について説明する。図5に示すように、上側パネル41の左右両辺には、インナレール47が設けられている。インナレール47は、縦枠31に設けられる案内レール50に収容され、上下方向に移動可能に構成されている。つまり、案内レール50が、インナレール47に対するアウタレールに相当する。詳しく説明すると、図5に示すように、インナレール47は、上下方向に延びるように形成され、図6(a)に示すように、断面が略U字形状とされている。また、案内レール50の内側に収容されるように、奥行方向においてインナレール47の外側寸法L1は、案内レール50の内側寸法とほぼ同じか、わずかに短く構成されている。そして、インナレール47は、案内レール50に対して上下方向にスライド移動可能に構成されている。
【0032】
図6(a)に示すように、インナレール47は、上側パネル41の左右方向端部に固定されている。その際、インナレール47の奥行方向両側の側壁47b,47cのうち、建築物10とは反対側(枠体30の側)の側壁47bの内側面に、上側パネル41の外側面が当接するように固定される。そして、インナレール47の底部47a(左右方向外側における端部)は、上側パネル41の左右方向端部よりも外側に配置されることとなる。なお、インナレール47の底部47aにおいて、かんぬき46aに対向する箇所には、貫通孔47dが設けられており、かんぬき46aの先端が左右方向に移動可能となるように構成されている。
【0033】
また、上側パネル41は、インナレール47を介して、案内レール50に対して線接触するように構成されている。具体的には、インナレール47において、案内レール50に対向する外側面には、上下方向に延びる複数の凸部48が設けられている。より詳しくは、図6(a)に示すように、インナレール47において、底部47aの外面(左右方向における外側面)には、左右方向の外側(案内レール50の底部の側)に突出する凸部48aが、奥行方向の両端に設けられている。
【0034】
また、インナレール47において、奥行方向において外側(建築物10とは反対側)の側壁47bの外面には、奥行方向において外側に向かって突出する凸部48bが2つ設けられている。この凸部48bは、左右方向において所定距離離れた位置に設けられている。また、インナレール47において、奥行方向において内側(建築物10の側)の側壁47cの外面には、奥行方向において内側に向かって突出する凸部48cが設けられている。これらの凸部48a~48cは、案内レール50にそれぞれ対向するように設けられている。上側パネル41は、インナレール47の各凸部48a~48cを介して、案内レール50に対して線接触する。
【0035】
本実施形態における効果について説明する。
【0036】
パネル体40のうち上側パネル41が案内レール50に従って上下方向にスライド移動可能に構成されていることにより、防音パネル20は、開閉可能に構成されている。これにより、強風が予想される場合、上側パネル41を開放して、風を通過させることができる。したがって、強風の場合において、防音パネル20を一旦解体して取り外す手間を省くことが可能となる。
【0037】
ところで、パネル体40は、枠体30の内側を覆っているため、コンクリート片などの塵埃等が、パネル体40に当たって落下し、パネル体40の足下にたまりやすい。しかしながら、案内レール50は、縦枠31に沿って上下方向に延びるように設けられているため、案内レール50に塵埃等が溜まりにくくなっている。よって、上側パネル41を案内レール50に従って上下方向にスライドさせる本実施形態の防音パネル20においては、塵埃等が生じやすい現場においても、好適にスライド移動させることができる。
【0038】
コンクリート片などの塵埃等は、パネル体40に当たって落下し、パネル体40の足下にたまりやすい。このため、下側パネル42を開放可能に構成すると、下側パネル42を開放したときに、足下に溜まった塵埃等が外部に飛散する可能性がある。また、パネル体40の足下にコンクリート片などの塊や工具などの物体がもたれかかり下側パネル42を開放しにくい場合も考えられる。そこで、本実施形態では、上側パネル41をスライド移動可能に構成した。これにより、足下に溜まった塵埃等が外部に飛散することを抑制することができる。また、パネル体40の足下に物体がもたれかかっている場合でも、防音パネル20を容易に開放することができる。
【0039】
パネル体40を上下方向にスライド移動させるように構成する場合、スライド移動させる際に、上側パネル41と下側パネル42とが干渉しないように、奥行方向にずらす必要がある。ここで、図11(a)のように、下側パネル42が、上側パネル41よりも建築物10の側(奥行方向の内側)に配置される場合、下側パネル42の上辺に、工事現場からの塵埃等が溜まる虞があり、この場合、上側パネル41を開放した際に、外部に飛散する可能性がある。また、閉鎖時において、下側パネル42と上側パネル41との隙間は、防音パネル20の内側において上側に開口し、防音パネル20の外側において下側に開口していることとなるため、下側パネル42と上側パネル41との隙間から、矢印に示すように、塵埃等が外部に飛散する虞もある。
【0040】
そこで、本実施形態では、図11(b)に示すように、上側パネル41を、下側パネル42に比較して建築物10の側(奥行方向の内側)に配置した。これにより、下側パネル42は、上側パネル41よりも外側(建築物10とは反対側)にあることから、上側パネル41の足下に塵埃等を落下させ(矢印参照)、下側パネル42の上部に塵埃等が溜まることを防止できる。また、下側パネル42と上側パネル41との隙間から、塵埃等が外部に飛散することを防止できる。
【0041】
また、上側パネル41は、インナレール47を介して、案内レール50に線接触している。これにより、仮に案内レール50に、塵埃などが付着しても、面接触している場合に比較して、スライド移動させやすくなっている。
【0042】
(変形例)
・上記実施形態において、図12に示すように、上側パネル41と下側パネル42との間の隙間に、当該隙間を塞ぐシール部材99を備えてもよい。シール部材99は、下側パネル42の上端部における内側に、下側パネル42が延びる方向である幅方向(左右方向)へ延びるようにして固定されている。シール部材99は、上側パネル41の外側に常に当接しており、パネル体40の閉鎖時には、上側パネル41の下端部に当接された状態となる。これにより、上側パネル41と下側パネル42との間の隙間から音や塵埃等が外部に漏れることを抑制できる。なお、下側パネル42にシール部材99を固定したのは、下側パネル42の内側には、塵埃等が付着して凹凸が形成されている可能性があり、上側パネル41に固定すると、シール部材99が下側パネル42に形成された凹凸に擦れ、破損しやすいからである。
【0043】
また、例えば、上側補強部材44及び下側補強部材45を上側パネル41の外側(建築物10とは反対側)に固定し、上側補強部材44及び下側補強部材45の奥行方向の突出部分によって、隙間を塞ぐように構成してもよい。この場合、上側パネル41を閉鎖したとき、上側パネル41と下側パネル42との間に、下側補強部材45の突出部分が配置されるようにすることが好ましい。また、上側パネル41を閉鎖したとき、上側パネル41と補助パネル43との間に、上側補強部材44の突出部分が配置されるようにすることが好ましい。なお、隙間に収まるように、突出部分の奥行方向の長さを上側パネル41と下側パネル42の離間距離に応じて調整することは言うまでもない。このように構成することにより、上側補強部材44及び下側補強部材45の奥行方向の突出部分によって、上側パネル41と下側パネル42との隙間、及び上側パネル41と補助パネル43との隙間を好適に塞ぐことができる。
【0044】
・上記実施形態において、上側パネル41を、インナレール47を介して、案内レール50に線接触させたが、上側パネル41と、案内レール50とを、点接触又は線接触させるように構成するならば、構成を任意に変更してもよい。例えば、インナレール47の外周面に凸部48を設ける代わりに、案内レール50の内周面に、凸部を設けてもよい。また、凸部48を、上下方向に沿って延びるように形成したが、その代わりに、複数の突起部を上下方向に沿って直線上に配置するように構成してもよい。なお、本明細書において、点接触というのは、完全な点のみを指すものではなく、案内レール50とインナレール47の対向面同士が広く面接触するものとせず局所的に接触することを意味する。線接触についても同様である。
【0045】
・上記実施形態において、上側パネル41を、インナレール47を介して、案内レール50に対してスライド移動するように構成したが、インナレール47を設けなくてもよい。例えば、上側パネル41の左右両辺を案内レール50によってスライドさせるような構成にしてもよい。
【0046】
・上記実施形態において、上側パネル41及び下側パネル42をともにスライド移動可能に構成してもよい。
【0047】
・上記実施形態において、補助パネル43を省略してもよい。また、パネル体40を、3枚以上の枚数で構成してもよい。例えば、パネル体40を、上中下の3枚のパネルで構成して、真ん中のパネルをスライド移動可能に構成してもよい。この場合、真ん中のパネルを上側にスライド移動可能に構成してもよい。このようにすれば、防音パネル20の足元に塵埃等が溜まっていても、影響なく、上側に真ん中のパネルを開放することができる。また、この場合、閉鎖時において、案内レール50は、真ん中のパネルよりも外側に位置することとなるので、案内レール50に塵埃等が付着する可能性が低く、塵埃等の影響なく、上側に真ん中のパネルを開放することができる。
【0048】
・上記実施形態において、下側パネル42を、上側パネル41よりも建築物10の側に配置されるように構成してもよい。また、下側パネル42をスライド移動可能に構成してもよい。
【0049】
・上記実施形態において、枠体30は、長方形状としたが、正方形状としてもよい。また、枠体30を上下方向に長い長方形状としてもよい。
【0050】
・上記実施形態において、枠体30において、上辺の横枠32と、下辺の横枠32とを繋ぐように、上下方向に延びる柱部材が設けられていてもよい。例えば、枠体30の左右方向中央に、上下方向に延びるように形成された柱部材が設けられていてもよい。この柱部材は、枠体30を補強するためのものである。なお、柱部材を設ける場合、パネル体40は、左右に分割すればよく、ロック機構46等も、分割されたパネル体40の左右両側に設ければよい。
【0051】
(第2実施形態)
上記実施形態において、枠体30を補強する枠体補強部材を備えてもよい。以下、枠体補強部材について記載した第2実施形態について図13図16を参照して説明する。第2実施形態では、第1実施形態の防音パネル20を基準として説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0052】
枠体30は、第1実施形態で説明した通り、上下方向に延びる一対の縦枠31と、左右方向に延びる一対の横枠32と、を有し、横長の四角形状に形成されている。このため、上側パネル41をスライド移動させ、防音パネル20を開放すると、開放部分においては、枠体30だけで形状を維持する必要があり、枠体30の強度によっては補強する必要がある。
【0053】
そこで、第2実施形態では、図13に示すような枠体補強部材100を備えた。図13は、第2実施形態の防音パネル20を、建築物10の側から見たときの様子を示す背面図である。枠体補強部材100は、その両端が横枠32にそれぞれ固定され、上下方向に延びる棒状に形成されている。これにより、枠体補強部材100は、一対の横枠32の間を繋いで、枠体30を補強している。
【0054】
また、第2実施形態において枠体補強部材100は、2つ設けられている。そして、図13において、右側の縦枠31から右側の枠体補強部材100aまでの距離、右側の枠体補強部材100aから左側の枠体補強部材100bまでの距離、左側の枠体補強部材100bから左側の縦枠31までの距離が、ほぼ等間隔となるように2つの枠体補強部材100a,100bが配置されている。
【0055】
また、図14図16に示すように、枠体補強部材100が、パネル補強部材である上側補強部材44及び下側補強部材45と干渉しないように、上側補強部材44及び下側補強部材45には、枠体補強部材100との交差部分において、それぞれ凹部144,145が設けられている。凹部144,145は、奥行方向において内側に開口するように設けられており、当該凹部144,145内に、枠体補強部材100の一部又は全部が配置されている。
【0056】
枠体補強部材100は、上下方向に沿って棒状に形成されている。このため、上側パネル41をスライド移動させても、凹部144,145によって、上側補強部材44及び下側補強部材45が枠体補強部材100と干渉することがない。
【0057】
また、枠体補強部材100は、奥行方向において、案内レール50の間に配置され、案内レール50から、はみ出さないような太さとなっている。すなわち、図15に示すように、枠体補強部材100は、奥行方向において、上側パネル41(及び下側パネル42)よりも内側に配置され、上側パネル41に干渉しないように平行に配置されている。また、枠体補強部材100は、奥行方向において、案内レール50の内側端部150よりも外側に配置され、案内レール50の内側端部150よりも内側にはみ出さないように構成されている。つまり、防音パネル20を重ねたとき、枠体補強部材100が他の防音パネル20と干渉しないようにしている。なお、図15は、図14のC-C線断面図である。
【0058】
上記第2実施形態のように枠体補強部材100を設けたことにより、上側パネル41をスライド移動させて開放させた状態においても枠体30が歪むことを防止できる。
【0059】
また、パネル補強部材としての上側補強部材44及び下側補強部材45を備えることで、上下方向にスライドさせる上側パネル41の強度を高めることができる。また、枠体30は横長に形成されているが、横枠32の間を繋ぐように枠体補強部材100を設けているため、枠体30全体の強度が高くなる。
【0060】
ここで、防音パネル20の厚みが増すことは取扱いの面でも設置環境の面でも望ましくない。一方で、特に枠体補強部材100は防音パネル20全体の強度という意味で重要な要素である。そこで、上側補強部材44及び下側補強部材45に、凹部144,145を形成し、凹部144,145に枠体補強部材100の一部又は全部を配置することで、防音パネル20全体の強度を落とすことなく、防音パネル20の厚みが増すことを抑制できる。
【0061】
(上記第2実施形態の変形例)
・上記第2実施形態において、枠体補強部材100は、左右一対の縦枠31の間を繋ぐように設けられていてもよい。すなわち、枠体補強部材100は、両端が縦枠31にそれぞれ固定され、左右方向に延びる棒状に形成されていてもよい。
【0062】
また、枠体補強部材100は、縦枠31と横枠32との間を繋ぐように設けられていてもよい。すなわち、枠体補強部材100は、一端が縦枠31に固定され、他端が横枠32に固定され、斜め方向に延びる棒状に形成されていてもよい。
【0063】
また、枠体補強部材100は、筋交い状に設けられていてもよい。すなわち、枠体30の対角線に沿って棒状に形成されていてもよい。
【0064】
・上記第2実施形態において、枠体補強部材100は、棒状に形成されていたが、上側パネル41をスライド移動させたときにおいて、防音パネル20の開口部分を塞がない形状であるならば、その形状を任意に変更してもよい。例えば、細長い薄板状に設けられていてもよい。
【0065】
・上記第2実施形態において、枠体補強部材100と、上側補強部材44及び下側補強部材45とが干渉しないのであれば、凹部144,145を設けなくてもよい。
【0066】
・上記第2実施形態において、枠体補強部材100の本数、配置場所は、任意に変更してもよい。
【符号の説明】
【0067】
10…建築物、11…足場、20…防音パネル、30…枠体、40…パネル体、41…上側パネル、42…下側パネル、46…ロック機構、47…インナレール、50…案内レール。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2023-05-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事現場において工事対象物の周りに配置される足場の側面に設けられ、足場の側面を覆う防音パネルであって、
少なくとも上下方向に延びる縦枠を有する枠体と、
前記枠体の内側を覆うパネル体と、
前記縦枠に沿って設けられた案内レールと、を備え、
前記パネル体が、複数枚で構成され、上下方向に並べて配置されており、
前記パネル体のうち少なくとも一枚が前記案内レールに従って上下方向にスライド移動可能に構成されていることにより、前記パネル体が開閉可能に構成されており、
前記パネル体のうち上側パネルが、前記案内レールに従って上下方向にスライド移動可能に構成されており、
前記パネル体のうち下側パネルが、前記枠体に固定されている防音パネル。
【請求項2】
前記上側パネルは、前記下側パネルよりも前記工事対象物の側に配置されており、
前記パネル体の閉鎖時において、前記上側パネルの下端部と前記下側パネルの上端部とが重なっている請求項に記載の防音パネル。
【請求項3】
前記パネル体の閉鎖時において、前記パネル体のうち上側パネルと下側パネルとの前記重なっている部分の隙間に、当該隙間を塞ぐシール部材を備える請求項に記載の防音パネル。
【請求項4】
前記パネル体のうちスライド移動可能な部分は、前記案内レールに対して点接触又は線接触している請求項1~のうちいずれか1項に記載の防音パネル。
【請求項5】
前記枠体は、上下方向に延びる一対の縦枠と、左右方向に延びる一対の横枠と、を有する四角形状の枠体であり、
前記枠体を補強する枠体補強部材を備え、
前記枠体補強部材は、一対の前記縦枠の間、又は一対の前記横枠の間、又は前記縦枠と前記横枠との間を繋いで、前記枠体を補強する請求項1~のうちいずれか1項に記載の防音パネル。
【請求項6】
上下方向にスライド移動可能に構成されている前記パネル体には、パネル補強部材が左右方向に延びるようにして設けられており、
前記防音パネルは、横長に形成されており、
前記枠体補強部材は、一対の前記横枠の間を繋ぐように上下方向に延びており、
前記パネル補強部材には、前記枠体補強部材との交差部分において、前記枠体補強部材の一部又は全部が配置される凹部が形成されている、請求項に記載の防音パネル。
【請求項7】
工事現場において工事対象物の周りに配置される足場の側面に設けられ、足場の側面を覆う防音パネルであって、
少なくとも上下方向に延びる縦枠を有する枠体と、
前記枠体の内側を覆うパネル体と、
前記縦枠に沿って設けられた案内レールと、を備え、
前記パネル体が、複数枚で構成され、上下方向に並べて配置されており、
前記パネル体のうち少なくとも一枚が前記案内レールに従って上下方向にスライド移動可能に構成されていることにより、前記パネル体が開閉可能に構成されており、
前記枠体は、上下方向に延びる一対の縦枠と、左右方向に延びる一対の横枠と、を有する四角形状の枠体であり、
前記枠体を補強する枠体補強部材を備え、
前記枠体補強部材は、一対の前記縦枠の間、又は一対の前記横枠の間、又は前記縦枠と前記横枠との間を繋いで、前記枠体を補強するものであり、
上下方向にスライド移動可能に構成されている前記パネル体には、パネル補強部材が左右方向に延びるようにして設けられており、
前記防音パネルは、横長に形成されており、
前記枠体補強部材は、一対の前記横枠の間を繋ぐように上下方向に延びており、
前記パネル補強部材には、前記枠体補強部材との交差部分において、前記枠体補強部材の一部又は全部が配置される凹部が形成されている、防音パネル。