(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008668
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】牽引装置
(51)【国際特許分類】
B61B 13/00 20060101AFI20230112BHJP
B62B 5/00 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
B61B13/00 A
B62B5/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112400
(22)【出願日】2021-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】501055145
【氏名又は名称】株式会社ZMP
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100086807
【弁理士】
【氏名又は名称】柿本 恭成
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】羽富 桂亮
(72)【発明者】
【氏名】石川 一洋
(72)【発明者】
【氏名】仲 剛
(72)【発明者】
【氏名】ヤルシャウスカス アルマンダス
(72)【発明者】
【氏名】堀越 浩司
(72)【発明者】
【氏名】井上 真
(72)【発明者】
【氏名】グエン ヴァン ホア
(72)【発明者】
【氏名】悦喜 良平
【テーマコード(参考)】
3D050
3D101
【Fターム(参考)】
3D050AA01
3D050BB02
3D050DD03
3D050EE08
3D050EE15
3D050KK02
3D101BA02
3D101BB16
3D101BB43
(57)【要約】
【課題】 キャスター付台車をより安定して牽引することが可能な牽引装置を提供する。
【解決手段】 移動体11に装着されて移動体11の後方でキャスター14付の台車13を牽引する牽引装置10であり、台車13を連結及び開放可能な連結ユニット22と、連結ユニット22に連結して設けられ、前後に転動自在な固定輪53aを有する固定輪ユニット23と、を備え、連結ユニット22は、台車係止部43と、台車係止部43を昇降する昇降駆動部44と、を有し、連結ユニット22が台車13を上向きに押圧して連結可能であり、固定輪ユニット23が連結ユニット22から下向きの荷重が伝達されるベース部52と、ベース部52に左右に揺動自在に支持され、前後に延びる揺動軸線L2の左右に複数の固定輪53aが同軸に配置された固定輪対53と、を有し、連結ユニット22からの下向きの荷重により複数の固定輪53aが路面に圧接する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に装着され該移動体の後方でキャスター付台車を牽引する牽引装置であって、
前記台車を連結及び開放可能な連結ユニットと、
前記連結ユニットに連結して設けられ前後に転動自在な固定輪を有する固定輪ユニットと、を備え、
前記連結ユニットは、台車係止部と該台車係止部を昇降する昇降駆動部とを有し、前記台車係止部は、前記台車を上向きに押圧して係止可能であり、
前記固定輪ユニットは、前記連結ユニットから下向きの荷重が伝達されるベース部と、前記ベース部に左右に揺動自在に支持され前後に延びる揺動軸線の左右に複数の前記固定輪を同軸に配置した固定輪対と、を有し、
前記連結ユニットからの下向きの荷重により前記複数の固定輪が路面に圧接される、牽引装置。
【請求項2】
前記固定輪ユニットは、前後に延びる支持アームにより前記連結ユニットに連結され、該連結ユニットに連結された前記台車と前記路面との間に配置される、請求項1に記載の牽引装置。
【請求項3】
前記ベース部は、前記支持アームに固定された固定ベースと、前記固定ベースに前記揺動軸線を中心に左右に揺動自在に支持され前記揺動軸線よりも下方に前記固定輪対を支持する揺動ベースと、前記揺動ベースを中立位置に保つ揺動付勢手段と、を備える、請求項2に記載の牽引装置。
【請求項4】
前記台車の全輪がキャスターからなる、請求項1乃至3の何れかに記載の牽引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動体に装着されてキャスター付台車を牽引するための牽引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体に装着されてキャスター付台車を牽引するための牽引装置として例えば下記特許文献1などが知られている。特許文献1では、搬送車におけるカゴ台車の連結構造が提案され、カゴ台車の車台の下側に潜り込むフレームの前後に、揺動自在な突き当てレバーとストッパ部材とが設けられ、カゴ台車を突き当てレバーとストッパ部との間に挟みこんで、搬送車で牽引する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1の牽引装置では、後側が固定輪でなければ、旋回時などにカゴ台車に遠心力が生じると、カゴ台車が搬送車の走行軌跡から外側に大きくずれてしまい、カゴ台車を安定して牽引することができないなどの課題がある。
【0005】
そこで本発明では、キャスター付台車をより安定して牽引することが可能な牽引装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、移動体に装着されて移動体の後方でキャスター付台車を牽引する牽引装置であって、台車を連結及び開放可能な連結ユニットと、連結ユニットに連結して設けられ前後に転動自在な固定輪を有する固定輪ユニットと、を備え、連結ユニットは、台車係止部と台車係止部を昇降する昇降駆動部とを有し、台車係止部は、台車を上向きに押圧して係止可能であり、固定輪ユニットは、連結ユニットから下向きの荷重が伝達されるベース部と、ベース部に左右に揺動自在に支持され、前後に延びる揺動軸線の左右に複数の固定輪が同軸に配置された固定輪対と、を有し、連結ユニットからの下向きの荷重により複数の固定輪が路面に圧接されるものである。
【0007】
前記固定輪ユニットは、前後に延びる支持アームにより連結ユニットに連結され、連結ユニットに連結された台車と路面との間に配置可能である。
【0008】
前記ベース部は、支持アームに固定された固定ベースと、固定ベースに揺動軸線を中心に左右に揺動自在に支持され、揺動軸線よりも下方に固定輪対を支持する揺動ベースと、揺動ベースを中立位置に保つ揺動付勢手段と、を有していてよい。キャスター付台車の全輪はキャスターからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の牽引装置は、台車と連結する連結ユニットが台車を上向きに押圧して台車と係止可能で、この連結ユニットから下向きの荷重が伝達されるベース部に、前後に転動自在な固定輪が支持され、連結ユニットからの下向きの荷重により路面に圧接されるので、移動体により牽引されたキャスター付台車に遠心力が作用しても、路面に圧接される固定輪により遠心力に対する摩擦力を得ることができる。
【0010】
固定輪ユニットでは、前後に転動自在な複数の固定輪が前後に延びる揺動軸線の左右に同軸に配置されて固定輪対として一体に支持されて左右に揺動するので、連結ユニットから台車に生じた遠心力が固定輪ユニットに伝達されると、ベース部に外向きの力が作用して固定輪対を揺動自在に支持する支点に外向きの力として負荷される。これにより複数の固定輪のうち揺動軸線より外側に配置された固定輪の路面に対する接圧が増加して、遠心力に対する摩擦力が増加する。
【0011】
よって、移動体によりキャスター付台車を牽引する際、台車に遠心力が生じても、台車が移動体の走行軌跡から大きく外側にずれるのを防止することができ、キャスター付台車を安定して牽引することができる。
【0012】
固定輪ユニットが前後に延びる支持アームにより連結ユニットに連結されて台車と床面との間に配置可能であれば、連結ユニットに連結された台車の下で複数の固定輪を路面に接地させることができ、キャスター付台車を安定して牽引できる。
【0013】
ベース部が、支持アームに固定された固定ベースと、固定ベースに揺動軸線を中心に左右に揺動自在に支持され揺動軸線よりも下方に固定輪対を支持する揺動ベースと、揺動ベースを中立位置に保つ揺動付勢手段と、を有していれば、台車に遠心力が作用している状態では、揺動軸線より外側に配置された固定輪の路面に対する接圧を増加することができ、台車に遠心力が作用しない状態では、複数の固定輪の路面に対する接圧を略均等に復元でき、より安定に牽引し易くできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る牽引装置を移動体に装着した状態の側面図である。
【
図2】
図1の牽引装置を移動体に装着した斜視図で、(a)は連結ユニットを突出させた状態を、(b)は連結ユニットを収納させた状態を示す。
【
図3】(a)は上記牽引装置の斜視図、(b)は側面図である。
【
図4】上記牽引装置により台車を牽引した状態の平面図で、(a)は連結ユニットが揺動していない状態を、(b)は連結ユニットが揺動した状態を示す。
【
図5】上記牽引装置における揺動連結部の上部を示す斜視図で、(a)は連結ユニットが揺動していない状態を、(b)は連結ユニットが揺動した状態を示す。
【
図6】上記牽引装置における揺動連結部に設けられたカム機構の分解斜視図である。
【
図8】上記牽引装置の対角間付勢手段を説明する側面図である。
【
図9】上記牽引装置における連結ユニットに設けられたリンク機構部のロック部と固定輪ユニットの支持アームのロック部とを示す斜視図である。
【
図10】
図9に示すリンク機構部のロック部の動作説明図であり、(a)は連結ユニットを最も突出させたロック状態、(b)はロック状態を解除した状態、(c)は連結ユニットを収縮させた状態を示す。
【
図11】(a)は上記牽引装置の連結ユニット及び固定輪ユニットの斜視図、(b)は固定輪ユニットの固定ベースを透過した内部の斜視図である。
【
図12】上記牽引装置における連結ユニットと固定輪ユニットとの連結部分を示す側面図で、(a)は支持アームをロックした状態、(b)は支持アームのロックを解除した状態を示す。
【
図13】上記牽引装置における固定輪ユニットの正面図で、(a)は直進時、(b)は旋回時を示す。
【
図14】上記牽引装置により台車を牽引する際の動作説明図であり、予め設定された台車の配置位置付近を示す配置図である。
【
図15】(a)~(d)は上記牽引装置により台車を牽引する際の動作を説明する図で、連結ユニットの動作を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図を用いて詳細に説明する。
本実施形態の牽引装置10は、
図1及び
図2に示すように、移動体11に装着され、移動体11の後部でキャスター14付の台車13を牽引する装置である。移動体は、有人で操作するものであっても勿論構わないが、以下に示す実施形態の移動体11は路面15を無人で自動走行可能で、台車13を運搬するために設定されたルートに沿って、或いは遠隔操作などにより、無人で移動可能であればよく、前進、後退、加速、減速、転蛇、旋回等が自動制御されて無人走行が実行可能に構成されている。
【0016】
本実施形態の無人移動体11は、本体部11aの後部にハンドル11bが設けられた手押し台車の形状を有し、本体部11aに駆動機構や制御機構等が設けられて自動走行可能な構造を備える。一方、牽引対象は、カゴ台車、スリムカート等のように車輪としてキャスター14を有する台車13である。本実施形態では路面15に接地する全車輪がキャスター14からなる台車13である。
【0017】
牽引装置10は、
図3(a)(b)に示すように、無人移動体11の後部に固定された支持ユニット21と、支持ユニット21により無人移動体11の後方に突出するように支持され、台車13を連結及び開放可能な連結ユニット22と、連結ユニット22に連結された固定輪ユニット23と、を備えている。
【0018】
支持ユニット21は、無人移動体11の後部に装着された装着部24と、装着部24に対して連結ユニット22を突出及び収縮可能に支持したリンク機構部25と、を備え、装着部24には、
図4(a)(b)に示すように、牽引装置10により台車13を牽引した状態で移動体11に対して台車13が揺動自在となるように、移動体11とリンク機構部25との間を互いに相対回動可能に連結する揺動連結部26が設けられている。
【0019】
揺動連結部26は、
図3(a)(b)及び
図5(a)(b)に示すように、サポート27を介して無人移動体11の本体部11a及びハンドル11bに固定して設けられた上下の軸支持部28と、上下の軸支持部28に回動自在に支持されて鉛直方向に沿って配置された連結軸29と、を有する。軸支持部28には連結軸29を相対回動可能に遊嵌する連結筒部31が設けられ、連結軸29が貫通配置されている。連結軸29は中空のパイプ材からなり、上端にはリンク機構部25が接続されている。
【0020】
揺動連結部26には、揺動自在に支持されたリンク機構部25を自動で所定の揺動位置に配置するためのカム機構32が設けられている。カム機構32は、
図5(a)(b)及び
図6に示すように、上側の軸支持部28の連結筒部31の端部に設けられた円筒カム33と、連結軸29の外周面から径方向に突出して長孔34により軸方向に変位可能に配置されたカムフォロアー35と、連結軸29の内部に配置されてカムフォロアー35を円筒カム33に圧接させるように付勢するカム付勢手段36と、を有する。
【0021】
上記カム機構32では、
図6及び
図7に示すように、円筒カム33が所定位置、具体的には移動体11の前後方向の中心軸L1に沿う最前位置Paが上端となるようにカム面が設けられている。ここでは
図5(b)のように揺動すると、カム面に当接するカムフォロアー35が最前位置Paからずれるため、カム付勢手段36により付勢されたカムフォロアー35が最前位置Paにカム面に沿って移動することで、連結軸29が回動する。これにより
図5(a)のようにリンク機構部25が自動で所定の揺動位置に、具体的には台車13の前後方向の中心軸L1に沿う位置に配置される。
【0022】
リンク機構部25は、
図3(a)(b)に示すように、装着部24と連結ユニット22とが上アーム37a及び下アーム37bにより連結された平行リンク機構により構成されている。このリンク機構部25は、装着部24に対して連結ユニット22を昇降させることで突出及び収縮させることができ、これにより
図2(a)(b)に示すように連結ユニット22が無人移動体11に対して突出及び収納可能にされている。
【0023】
またリンク機構部25には、平行リンク機構の対角間を付勢する対角間付勢手段38が設けられている。対角間付勢手段38は、
図8のように、連結ユニット22を上昇させてリンク機構部25を収縮させる方向に付勢している。対角間付勢手段38は連結ユニット22及び固定輪ユニット23の重量に応じた適度の付勢力に設定されており、
図8のように連結ユニット22及び固定輪ユニット23を最も上昇させた位置と最も下降させた位置との中間位置に保持可能な付勢力となっている。そのためリンク機構部25を完全に展開して突出させた状態で、連結ユニット22に台車13を連結しないときには、
図3(b)等に示すように、固定輪53aが路面15から離間して浮いた状態で配置される。
【0024】
さらにリンク機構部25には、リンク機構部25を最も収縮させた状態と最も突出させた状態とで、装着部24及び連結ユニット22と上アーム及び下アームとが連結した各節では回動を規制してリンク機構部25の動作を阻止するロック部41が設けられている。本実施形態では、
図9及び
図10(a)~(c)に示すように、連結ユニット22に上下にスライド可能に設けられたロックレバー42と、上アーム37aの支点近傍に設けられてロックレバー42と係脱可能な複数の係止部43と、を有する。
【0025】
リンク機構部25を展開させて、
図10(a)のようにロックレバー42を上アーム37aの一方の係止部43に係止した状態では、
図2(a)に示すように、連結ユニット22が突出した状態で配置される。一方の係止部43とロックレバー42との間には、固定輪53aが路面15に接する位置と路面15から離間する位置との間で昇降可能なクリアランスが設けられている。
図10(b)のようにロックレバー42を解除した状態では、リンク機構部25を収縮させることができ、
図10(c)のように、リンク機構部25を収縮させた状態で、ロックレバー42を他方の係止部43に係止すると、
図2(b)に示すように、連結ユニット22が最も収縮した収納状態で配置される。
【0026】
連結ユニット22は、
図11に示すように、台車13と係脱可能な台車係止部43と、台車係止部43を昇降する昇降駆動部44と、台車係止部43と台車13との相対位置を検出する相対位置検出部45と、を有する。台車係止部43は、底部及び側部を有する側面視略L字状の係止部本体46と、底部に設けられ台車13の一部を前後方向にチャックして係止する前後方向係止部47と、側部に設けられ台車13の一部を上下方向にチャックして係止する上下方向係止部48を有する。昇降駆動部44は、台車係止部43を昇降駆動するリニアアクチュエータなどである。
【0027】
相対位置検出部45は、台車係止部43に対する台車13の前後の位置と上下の位置とを検出するもので、本実施形態では無人移動体11が後退する際に台車係止部43の側部が台車13の一部と前後に近接又は接触したことを検知するセンサと、台車係止部43が上昇する際に底部が台車13の一部と上下に近接又は接触したことを検知するセンサと、を有する。
台車13との前後の近接又は接触を検知した検出信号は図示しない制御部に伝達され、無人移動体11の後退を停止するとともに前後方向係止部47を駆動する。また台車13との前後の近接又は接触を検知した検出信号は、昇降駆動部44により台車係止部43を上昇する際に図示しない制御部に伝達され、昇降駆動部44による台車係止部43の上昇を停止するとともに上下方向係止部48を駆動する。このような連結ユニット22では、昇降駆動部44により台車係止部43を上向きに加圧し、台車係止部43により台車13を上向きに強く押圧した状態で安定に係止される。
【0028】
固定輪ユニット23は、
図11(a)(b)に示すように、連結ユニット22に連結されて後方に延びる支持アーム51と、支持アーム51により連結ユニット22に連結され連結ユニット22からの下向きの荷重が伝達されるベース部52と、ベース部52に左右に揺動自在に支持され前後方向に転動自在な複数の固定輪53aが左右に並べて同軸に配置された固定輪対53と、を有する。支持アーム51は、固定輪対53を台車13と路面15との間に配置可能に連結ユニット22から延びたアームである。本実施形態ではキャスター付台車13をより安定して牽引するために、固定輪ユニット23が連結ユニット22に連結された台車13の重心付近に配置されるよう構成されるのがよい。
【0029】
本実施形態では、支持アーム51は連結ユニット22に対して前後に展開及び収縮可能に連結されている。
図9に示すように、支持アーム51と連結ユニット22との連結部分には、支持アーム51の動作を阻止するロック部54がリンク機構部25の動作を阻止するロック部41と連結して設けられている。ロック部54は、
図12(a)(b)に示すように、支持アーム51の支点近傍に揺動可能に設けられたアームロックレバー55と、支持アーム51に設けられてアームロックレバー55の爪55aと係脱可能な複数のアーム係止部56と、を有する。
【0030】
図12(a)のように、アームロックレバー55の爪55aを一方のアーム係止部56に係止した状態では、支持アーム51が展開した所定位置で保持される。
図12(b)のように、アームロックレバー55の爪55aをアーム係止部56から離脱すれば、アームロックレバー55が揺動可能となる。この実施形態ではアームロックレバー55の爪55aを他方のアーム係止部56に係止することで、支持アーム51を上下方向に配置して収縮した状態で保持可能である。アームロックレバー55は、
図9に示されるように、リンク機構部25の動作を規制するロックレバー42とワイヤー55b等で連結されていて、ロックレバー42を操作することでアームロックレバー55も動作する。
【0031】
ベース部52は、上記支持アーム51により連結ユニット22に連結されていて、連結ユニット22の台車係止部43が台車13を上向きに強く押圧して係止することで生じる反力が支持アーム51を介して伝達されるように構成されている。ベース部52は、支持アーム51に固定された固定ベース52aと、固定ベース52aに対して左右に揺動自在に支持され揺動支点よりも下方に固定輪対53を支持する揺動ベース52bと、揺動ベース52bを中立位置に保つように固定ベース52aと揺動ベース52との間に介在させた略V字状の板バネからなる揺動付勢手段57と、を有する。
【0032】
固定輪対53は、
図13(a)に示すように、前後に転動自在な複数の固定輪53aが同軸に配置されて揺動ベース52bにそれぞれ固定されることで一体化している。複数の固定輪53aは、揺動支点58を通り前後方向に延びる仮想の揺動軸線L2を中心に左右対称に並べて配置されている。そのため固定ベース52aに対して揺動ベース52bが揺動すると、固定輪対53全体が揺動軸線62を中心に揺動する。固定ベース52aに対する揺動ベース52b及び固定輪対53の揺動や倒れは、揺動付勢手段57によって中立位置に復元される。
【0033】
このような固定輪ユニット23では、連結ユニット22から支持アーム51を介してベース部52に伝達される下向きの荷重により固定輪対53の各固定輪53aが路面15に圧接される。連結ユニット22に台車13が連結されて平坦な路面15を直進する間、支持アームからの荷重により各固定輪53aは均等な接圧で路面15に接して転動する。牽引中の旋回時などでキャスター付台車13に遠心力が生じると、
図13(b)に示すように、支持アーム51を介してベース部52の固定ベース52aに遠心力による外向きの力が伝達される。この固定ベース52aに負荷された外向きの力は揺動ベース52bの揺動支点58に負荷される。すると揺動ベース52bに支持された固定輪対53は路面15に接地しているため、固定輪対53の揺動支点58側が外向きに倒れる方向に揺動しようとし、揺動支点58及び揺動軸線L2より外側に配置された固定輪53aでは、固定ベース52aから接地面までの高さを増加しようとする。
【0034】
ところが連結ユニット22の台車係止部43と路面15との間の間隔は直進時でも旋回時などでも変わらないため、固定ベース52aから接地面までの高さは増加せず、その分外側に配置された固定輪53aの路面15に対する接圧が増加することになり、所謂、自己倍力作用を得ることができる。これにより台車13に生じる遠心力に応じて、固定輪対53により得られる外向きの摩擦力を増加することができる。
【0035】
また本実施形態の固定輪ユニット23には、
図11に示すように、他の物体が当接又は近接することで、無人移動体11の走行を停止するための非常停止レバー61が備えられている。非常停止レバー61は、固定輪ユニット23の全幅に、固定輪対53の全固定輪53aより後方に配置されている。このような非常停止レバー61により、他の物体との当接又は近接の検知信号は、例えば無人移動体11のECU等に伝達されて、無人移動体11の走行を停止することができる。
【0036】
次に、このような牽引装置10を用いて台車13を牽引する動作について、予め設定された所定位置に配置された台車13を牽引する例を用いて説明する。
まず
図2(b)のように台車13の後部に収縮状態で配置された牽引装置10のリンク機構部25及び支持アーム51を展開し、それぞれロックレバー42及びアームロックレバー55によりロックして、
図2(a)のように無人移動体11から後方に突出させた状態で牽引装置10を準備する。この状態で、無人移動体11が所定の軌道を走行し、
図14のように、台車13を牽引する所定位置まで走行し、ランドマーク62の位置を認識して停止する。この位置から無人移動体11が旋回して90度向きを変え、その後、直線的に後退して連結動作を開始する。
【0037】
連結動作を開始する段階では、
図15(a)のように、リンク機構部25の対角間付勢手段38の付勢力で固定輪ユニット23が路面15から浮上している。また
図14に示すように、支持ユニット21のカム機構32により連結ユニット22が無人移動体11の中心軸L1上に配置されている。この状態で無人移動体11が後退すると、
図15(b)のように、連結ユニット22の相対位置検出部45により台車係止部43と台車13とが前後方向に近接又は当接したことが検出され、無人移動体11の後退が停止する。
【0038】
また
図15(c)のように、昇降駆動部44の駆動で台車係止部43が上昇し、連結ユニット22の相対位置検出部45により台車係止部43と台車13とが上下に近接又は接触したことが検出され、昇降駆動部44による上昇が停止する。このとき台車係止部43により台車を上向きに強く押圧し、この状態で昇降駆動部44を保持する。この状態で前後方向係止部47及び上下方向係止部48により台車13の一部を台車係止部43により係止する。これにより
図15(d)のように、牽引装置10の連結ユニット22に台車13が連結され、さらに連結ユニット22の台車係止部43により台車13の一部を上向きに押圧した反力により、対角間付勢手段57の付勢力に抗して支持アーム51が押し下げられ、固定輪ユニット23の固定輪対53を路面15に圧接する。
【0039】
この状態で移動体11が適宜走行制御されて走行することで、台車13を牽引する。牽引状態では、支持ユニット21の揺動連結部26により移動体11に対して連結ユニット22が左右に揺動可能であり、また複数の固定輪53aが路面15に圧接した状態で転動可能である。そのため
図4(a)(b)のように、移動体11により台車13を直進及び旋回させることで、台車13を追従させることができ、台車13を出発時点から目的地点まで運搬することができる。
【0040】
運搬後は、目的地点で
図15(d)から(a)のように牽引時とは逆の動作を行うことで、連結ユニット22から台車13を開放する。すると支持アーム51に支持された固定輪53aが路面15から離間し、連結ユニット22がカム機構32により移動体11の中心軸L1上の位置に復帰する。その後、次の台車13を牽引する場合には、次の台車13の出発地点まで走行し、次の台車13を牽引することができる。
【0041】
牽引装置10の使用を終了する場合は、
図9に示すように連結ユニット22のハンドルを把持して連結ユニット22のロックレバー42を握る操作で、リンク機構部25の上アーム37aとロックレバー42の係止部43との係止を解除するとともに、アームロックレバー55の爪55aと支持アーム51のアーム係止部56との係止を解除する。その状態で連結ユニット22のハンドルを引き上げる。すると、
図8に示すように支持ユニット21のリンク機構部25が収縮して連結ユニット22が上昇する。また支持アーム51が自重により固定輪対53側から下降して収縮する。このとき対角間付勢手段38により付勢されているため、容易に連結ユニット22を上昇させて収縮できる。
【0042】
連結ユニット22を上端まで引き上げることで、
図2(b)に示すように、牽引装置10を最も収縮させる。この状態でロックレバー42の操作を解除すると、リンク機構部25の上アーム37aとロックレバー42の係止部43とを係止するとともに、アームロックレバー55の爪55aと支持アーム51のアーム係止部56とを係止する。従って、牽引装置10を収納状態にして移動体11の後部に配置することができるので、作業者が牽引装置10を収納状態にする際、ワンアクションで行える。
【0043】
以上のような牽引装置10の作用効果について説明する。本実施形態の牽引装置10によれば、台車13を連結及び開放可能な連結ユニット22に前後方向に転動自在な固定輪53aが連結して設けられ、台車13と連結した連結状態で固定輪53aが路面15に接地するので、移動体11がキャスター14付の台車13を牽引して走行する際、連結ユニット22により連結した台車13の左右方向の移動を固定輪53aにより規制することができ、安定に牽引することが可能である。連結ユニット22は移動体11に対して左右に揺動可能に支持されているので、移動体11で牽引してカーブを走行する際、固定輪53aにより移動方向が規制されたキャスター14付の台車13を滑らかに移動体11に追従させることができる。
【0044】
一方、台車13を開放した開放状態では、固定輪53aが路面15から離間するとともに連結ユニット22が無人移動体11に対して自動で予め設定された所定の揺動位置である中心軸線L1上に配置される。そのため台車13を目的地点まで搬送後、連結ユニット22を開放すれば、連結ユニット22が中心軸線L1上に自動で復帰する。これにより、開放状態では連結ユニットを常に無人移動体11に対して同じ位置に配置することができるため、無人移動体11の自動走行で次に搬送する台車13の適切な位置に連結ユニット22を容易に連結できる。
【0045】
本実施形態の牽引装置10では、支持ユニット21が移動体11との間に互いに相対回動可能に連結した揺動連結部26と、揺動連結部26に設けたカム機構32と、を有するので、連結ユニット22を中心軸線L1上に自動で配置する動作を容易に実現できる。
【0046】
揺動連結部26が、鉛直方向に沿って配置された連結軸29と、連結軸29に遊嵌した連結筒部31と、を有し、カム機構32が、連結筒部31に設けられた円筒カム33と、連結軸29から径方向に突出して軸方向に変位可能に配置されて円筒カム33部側に付勢されたたカムフォロアー35と、を備えているため、連結ユニット22を中心軸線L1上に自動で配置する構造を、駆動装置を用いることなく簡易な構造でコンパクトに設けることができる。
【0047】
支持ユニット21が、無人移動体11に装着された装着部24と、装着部24に対して連結ユニット22を突出及び収縮可能に支持したリンク機構部25と、リンク機構部25を収縮した状態でリンク機構部25の動作を阻止するロック部41と、を有すると、無人移動体11により台車13を牽引しないときは、牽引装置10をコンパクトに収縮した状態で無人移動体11の後部に配置でき、無人移動体11の他の用途における使用を阻害しない。
【0048】
リンク機構部25が装着部24に対して連結ユニット22を上昇させて収縮する平行リンク機構であり、連結ユニット22を上昇させる方向に平行リンク機構の対角間を付勢する対角間付勢手段38が設けられていると、牽引装置の不使用時には、平面視で支持ユニット21をよりコンパクトに配置できることに加え、対角間付勢手段38により連結ユニット22を上昇させる方向に付勢されているため、より少ない力で支持ユニット21を収縮させることができる。
【0049】
その際、対角間付勢手段38の付勢力により固定輪53aが開放状態で路面15から離間して配置されるように構成されているので、駆動装置を用いることなく開放状態に固定輪53aを路面15から離間させるとともに連結状態で固定輪53aを路面15に接地させることが可能である。そのため連結ユニット22の支持ユニット21の構造を簡易な構成で実現することが可能である。
【0050】
本実施形態の牽引装置10では、連結ユニット22が台車係止部43と、台車係止部43を昇降する昇降駆動部44と、台車係止部43と台車13との相対位置を検出する相対位置検出部45と、を有し、台車係止部43が上昇することで台車13を上向きに押圧して係止可能で、その反力が連結ユニット22を介して固定輪53aに負荷されることで、固定輪53aが路面15に接地される。従って、連結状態では台車13の荷重を利用して固定輪53aを路面15に圧接するため、大荷重の台車13であっても、前後に転動自在な固定輪53aを十分な接圧で路面15に接触させることができ、牽引時における台車13の左右方向への移動を十分に規制することが可能で、キャスター14付の台車13を安定して牽引することができる。
【0051】
相対位置検出部45は、台車13の一部に対する台車係止部43の前後の近接位置と上下の近接位置とを検出し、台車係止部43が台車13の一部を前後方向に係止する前後方向係止部47と、上下方向に係止する上下方向係止部48を有していると、移動体11が後方へ走行することで連結ユニット22を台車13に接近させるとともに、昇降駆動部44により台車係止部43を上昇させることで、台車係止部43により台車13を前後方向及び上下方向に容易に係止して連結することが可能である。また台車係止部43による係止を解除して、昇降駆動部44を下降するとともに無人移動体11を前進させれば、容易に台車13から牽引装置10を離脱させることができる。よって牽引装置10による台車13の連結動作及び開放動作を容易に実現できる。
【0052】
本実施形態の固定輪ユニット23では、前後に転動自在な複数の固定輪53aが前後に延びる揺動軸線L2の左右に同軸に配置されて固定輪対53として一体に支持されて左右に揺動するように構成される。そのため連結ユニット22から台車13に生じた遠心力が固定輪ユニット23に伝達されると、ベース部52に外向きの力が作用して固定輪対53を揺動自在に支持する揺動支点58に外向きの力として負荷される。これにより複数の固定輪53aのうち揺動軸線L2より外側に配置された固定輪53aの路面15に対する接圧が増加して、遠心力に対する摩擦力が増加する。従って、そのため無人移動体11により台車13を牽引する際、旋回時などに台車13に遠心力が生じても、台車13が移動体11の走行軌跡から大きく外側にずれるのを防止でき、より台車13を安定して牽引することが可能である。
【0053】
本実施形態の牽引装置10では、固定輪ユニット23が前後に延びる支持アーム51によって連結ユニット22に連結され、台車13と床面との間に配置可能なので、連結ユニット22に連結された台車13の下で複数の固定輪53を路面15に接地させることができ、キャスター付台車13を安定して牽引できる。
【0054】
ベース部52が、支持アーム51に固定された固定ベース52aと、固定ベース52aに対して左右に揺動自在に支持され揺動支点よりも下方に固定輪対53を支持する揺動ベース52bと、揺動ベース52bを揺動中間位置に保つ揺動付勢手段57と、を有していると、台車13に遠心力が作用している状態では、揺動軸線L2より外側に配置された固定輪53aの路面15に対する接圧を増加でき、台車13に遠心力が作用しない状態では、複数の固定輪53aの路面15に対する接圧を略均等に復元しやすい。
【0055】
なお、上記実施形態は本発明の範囲内において適宜変更可能である。
例えば上記実施形態では、連結ユニット22が台車13と連結されていない状態では、固定輪53aが路面15から離間して配置される装置の例を用いて説明したが、特に限定されるものではなく、固定輪53aが常に路面15に接地した状態で使用される牽引装置であっても、全く同様に本発明を適用することができる。
支持ユニット21がリンク機構部25により展開及び収縮可能に構成した例を説明したが、展開及び収縮することなく移動体11に常時突出した状態で接地されるものであってもよい。
【0056】
上記実施形態では、台車13として、接地する全車輪がキャスター14からなるものについて説明したが、本発明の牽引装置10は一部の車輪、例えば一対の前輪又は一対の後輪が固定輪からなる台車であっても牽引可能である。その際、牽引時に牽引装置10の固定輪53bが台車の固定輪から進行方向に離れた位置に配置される場合、旋回時などに牽引装置10の固定輪53aが進もうとする軌跡と、台車13の固定輪が進む軌跡とにずれが生じ、牽引装置10の固定輪53aの摩擦力が走行の阻害要因となり易い。このような場合には、例えば連結ユニット22により台車13を押し上げる力、即ち、昇降駆動部44により台車13を押し上げる力を無くして、固定輪53aを路面15から離間させた状態で牽引するのがよい。
【符号の説明】
【0057】
10 牽引装置
11 無人移動体
11a 本体部
13 台車
14 キャスター
15 路面
21 支持ユニット
22 連結ユニット
23 固定輪ユニット
24 装着部
25 リンク機構部
26 揺動連結部
27 サポート
28 軸支持部
29 連結軸
31 連結筒部
32 カム機構
33 円筒カム
34 長孔
35 カムフォロアー
36 カム付勢手段
37a 上アーム
37b 下アーム
38 対角間付勢手段
41 ロック部
42 ロックレバー
43 台車係止部
44 昇降駆動部
45 相対位置検出部
46 係止部本体
47 前後方向係止部
48 上下方向係止部
51 支持アーム
52 ベース部
52a 固定ベース
52b 揺動ベース
53a 固定輪
53 固定輪対
54 ロック部
55 アームロックレバー
55a 爪
56 アーム係止部
57 揺動付勢手段
58 揺動支点
61 非常停止レバー
L1 無人移動体の中心軸
L2 揺動ベースの揺動軸線