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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086680
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】ポリマー膜
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20230615BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
C03C27/12 D
B32B27/30 102
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182950
(22)【出願日】2022-11-15
(31)【優先権主張番号】110146367
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】202111505148.7
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】591057290
【氏名又は名称】長春石油化學股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ ▲彦▼禎
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 子榮
(72)【発明者】
【氏名】王 晨帆
【テーマコード(参考)】
4F100
4G061
【Fターム(参考)】
4F100AK23
4F100AK23A
4F100AK23B
4F100AK23C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA21A
4F100BA21B
4F100CA04
4F100CA04A
4F100CA04B
4F100CA04C
4F100JA05
4F100JA07B
4F100JA13B
4F100JK07
4F100JK07A
4F100JK07B
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4G061AA04
4G061AA11
4G061BA01
4G061BA02
4G061CB18
4G061CD18
(57)【要約】
【課題】本発明はポリマー膜を得ることにある。
【解決手段】本発明はポリマー膜に関し、それは少なくとも1つの第1層及び第2層を含み、第1層及び第2層は各々がポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含み、ポリマー膜は-20℃~20℃において第1損失正接ピーク値を有し、且つ20℃~50℃において第2損失正接ピーク値を有しており、ポリマー膜は第1損失正接ピーク値と第2損失正接ピーク値との間に損失正接ボトム値を有し、それは0.15~0.45であり、且つポリマー膜の10℃における損失正接は0.5未満である。本発明のポリマー膜は、特定の環境温度下、及び/又は一定時間を経た後にも良好な遮音性能を維持し得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー膜であって、少なくとも1つの第1層及び第2層を含み、前記第1層及び前記第2層は各々がポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含み、
前記ポリマー膜は-20℃~20℃において第1損失正接ピーク値を有し、且つ20℃~50℃において第2損失正接ピーク値を有し、
前記ポリマー膜は前記第1損失正接ピーク値と前記第2損失正接ピーク値との間に損失正接ボトム値を有し、それは0.15~0.45であり、
前記ポリマー膜の10℃における損失正接は0.5未満である、ポリマー膜。
【請求項2】
前記第1損失正接ピーク値は前記第2損失正接ピーク値よりも大きい、請求項1に記載のポリマー膜。
【請求項3】
前記第1損失正接ピーク値と前記第2損失正接ピーク値の比の値は1.7~3.0である、請求項1又は2に記載のポリマー膜。
【請求項4】
前記第1損失正接ピーク値は0.80~1.50である、請求項1又は2に記載のポリマー膜。
【請求項5】
前記第2損失正接ピーク値は0.30~0.90である、請求項1又は2に記載のポリマー膜。
【請求項6】
前記第1層の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、前記可塑剤は50~90重量部であり、且つ、
前記第2層の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、前記可塑剤は30~60重量部である、請求項1又は2に記載のポリマー膜。
【請求項7】
前記第1層の前記ポリビニルアセタール樹脂はポリビニルアルコールとアルデヒド類のアセタール化反応により得たものであり、且つ前記ポリビニルアルコールの合成固形分は12%より大きい、請求項1又は2に記載のポリマー膜。
【請求項8】
前記第1層の前記ポリビニルアセタール樹脂の仮比重は0.200~0.250である、請求項1又は2に記載のポリマー膜。
【請求項9】
前記第1層の前記ポリビニルアセタール樹脂の重合度は1800~4000である、請求項1又は2に記載のポリマー膜。
【請求項10】
前記第1層の前記ポリビニルアセタール樹脂は、
アセチル化度が12mol%より大きい場合、重合度は3000~4000であり、水酸基含有比率は26mol%より大きい、
アセチル化度が8mol%~12mol%である場合、重合度は2000~3200であり、水酸基含有比率は26mol%より小さい、
アセチル化度が4mol%より大きく8mol%より小さい場合、重合度は1800~3200であり、水酸基含有比率は26mol%より小さい、という条件のうちの1つを満たしている、請求項1又は2に記載のポリマー膜。
【請求項11】
3層構造であり、前記3層構造のうち、上下の2層は第2層であり、中間に第1層が挟まれている、請求項1又は2に記載のポリマー膜。
【請求項12】
合わせガラス用の中間膜とされ、その厚みは0.5~2mmである、請求項1又は2に記載のポリマー膜。
【請求項13】
調製後28日目に、ISO 16940の機械インピーダンス法に基づき10℃において得られる損失係数は0.15より大きい、請求項1又は2に記載のポリマー膜。
【請求項14】
調製後28日目に、ISO 16940の機械インピーダンス法に基づき20℃において得られる損失係数は0.25より大きい、請求項1又は2に記載のポリマー膜。
【請求項15】
調製後28日目に、ISO 16940の機械インピーダンス法に基づき30℃において得られる損失係数は0.15より大きい、請求項1又は2に記載のポリマー膜。
【請求項16】
10℃における損失係数の経時変化量は0%より大きく、前記経時変化量は以下の公式により計算され、
(調製後28日目の損失係数-調製後1日目の損失係数)/調製後1日目の損失係数*100%、
そのうち、前記損失係数はISO 16940の機械インピーダンス法に基づき10℃において測定して得る、請求項1又は2に記載のポリマー膜。
【請求項17】
20℃における損失係数の経時変化量は0%より大きく、前記経時変化量は以下の公式により計算され、
(調製後28日目の損失係数-調製後1日目の損失係数)/調製後1日目の損失係数*100%、
そのうち、前記損失係数はISO 16940の機械インピーダンス法に基づき20℃において測定して得る、請求項1又は2に記載のポリマー膜。
【請求項18】
30℃における損失係数の経時変化量は-10%より大きく、前記経時変化量は以下の公式により計算され、
(調製後28日目の損失係数-調製後1日目の損失係数)/調製後1日目の損失係数*100%、
そのうち、前記損失係数はISO 16940の機械インピーダンス法に基づき30℃において測定して得る、請求項1又は2に記載のポリマー膜。
【請求項19】
厚みは0.8mmであり、且つ前記第2層/第1層/第2層の厚みは0.335mm/0.13mm/0.335mmである、請求項11に記載のポリマー膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主にポリマー膜体に関し、特に合わせガラスの中間膜に適用されるポリマー膜に関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは一種の安全ガラスであり、割れてもつながったままでいることができるものである。合わせガラスは、2層以上のガラスの間に膜が含まれており、その膜には一般的にポリビニルブチラール樹脂(PVB)又はエチレン酢酸ビニル(EVA)材料によって製造されたポリマー膜が用いられている。ガラスが割れたとしても、膜がガラス層の接着を維持させることができ、且つその高い強度によりガラスの破片が大きく鋭利になるのを防ぐことができる。衝撃力がガラスを貫通しきるほどではない場合には、特有の「蜘蛛の巣」状のクラック形態が生じる。
【0003】
上述の安全特性以外にも、合わせガラスは遮音にも適用され、安全性と騒音低減能力を併せ持つ合わせガラスは自動車や建築物に用いるのに適している。同じ厚みの単板ガラスと比べ、合わせガラスはより優れた音波減衰効果を有する。この用途では、合わせガラス中の膜に多層膜構造を採用し、多層膜構造の材質上の違いが音波の伝播していくエネルギーを効果的に低減せしめることで、膜の遮音効果をより改善することもできる。
【0004】
具体的には、上述の膜の遮音効果は材質特性と関係している。例えば粘弾性(viscoelasticity)であるが、それは粘性と弾性を合わせたものや、粘性流体と弾性流体の流動性を合わせたものをいう。ポリマー膜構造の粘弾性質をコントロールし、音が透過過程で媒質の干渉を受けるようにして、音波を材料の分子運動の貯蔵エネルギーや消費エネルギーに変換することにより、音量を低減する効果を達成することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の概要は、本発明を簡潔に要約し、読者に本発明への基本的な理解を得させることを目的としている。発明の概要は、本発明を完全に記述するものではなく、本発明の実施例の重要又は主要構成要素の指摘や本発明の範囲の画定を意図するものでもない。
【0006】
本発明者は、従来のポリマー膜には遮音に関する特性上の疑問が存在することに気づいた。まず、ポリマー膜の遮音性能は温度に伴って変化する。多層膜の各層間の粘弾性質の差が顕著ではない場合、異なる温度下での遮音性能が低下するため、特定の温度下で良好な遮音効果をいかに維持するかが重要な課題となる。別の面として、ポリマー膜の多くは可塑剤を含んでおり、それがポリマー膜内で経時的に移行することや平衡に達することが遮音性能に及ぼす影響も慎重に考慮する必要がある。そのため、長期間の放置後に遮音性能が低下する状態の発生をいかに回避するかが本分野で早急に解決を要する問題となっている。これに鑑み、本発明は、特定の環境温度下、特に低温環境下において、及び/又は一定時間を経た後にも良好な遮音性能を維持し得るポリマー膜を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
具体的には、本発明の1つの態様としてポリマー膜を提供するが、それは少なくとも1つの第1層及び第2層を含み、第1層及び第2層は各々がポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含み、ポリマー膜は-20℃~20℃において第1損失正接ピーク値を有し、且つ20℃~50℃において第2損失正接ピーク値を有しており、また、ポリマー膜は第1損失正接ピーク値と第2損失正接ピーク値との間に損失正接ボトム値を有し、それは0.15~0.45であり、且つポリマー膜の10℃における損失正接は0.5未満である。
【0008】
本発明の実施例によれば、第1損失正接ピーク値は第2損失正接ピーク値よりも大きく、好適には、第1損失正接ピーク値と第2損失正接ピーク値の比の値は1.7~3.0である。
【0009】
本発明の実施例によれば、第1損失正接ピーク値は0.80~1.50である。
【0010】
本発明の実施例によれば、第2損失正接ピーク値は0.30~0.90である。
【0011】
本発明の実施例によれば、第1層のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、可塑剤は50~90重量部であり、第2層のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、可塑剤は30~60重量部である。
【0012】
本発明の実施例によれば、第1層のポリビニルアセタール樹脂はポリビニルアルコール(Polyvinyl Alcohol,PVA)とアルデヒド類のアセタール化反応により得たものであり、且つポリビニルアルコールの合成固形分は12%より大きい。
【0013】
本発明の実施例によれば、第1層のポリビニルアセタール樹脂の仮比重は0.200~0.250である。
【0014】
本発明の実施例によれば、第1層のポリビニルアセタール樹脂の重合度は1800~4000である。
【0015】
本発明の実施例によれば、第1層のポリビニルアセタール樹脂は以下に挙げる条件の1つを満たしている。アセチル化度が12mol%より大きい場合、重合度は3000~4000であり、水酸基含有比率は26mol%より大きい。アセチル化度が8mol%~12mol%である場合、重合度は2000~3200であり、水酸基含有比率は26mol%より小さい。アセチル化度が4mol%より大きく8mol%より小さい場合、重合度は1800~3200であり、水酸基含有比率は26mol%より小さい。
【0016】
本発明の実施例によれば、ポリマー膜は3層構造であり、3層構造のうち、上下の2層は第2層であり、中間に第1層が挟まれている。
【0017】
本発明の実施例によれば、ポリマー膜を調製後28日目に、ISO 16940の機械インピーダンス法(Measurement of Mechanical Impedance)に基づき10℃において得られる損失係数は0.15より大きい。
【0018】
本発明の実施例によれば、ポリマー膜を調製後28日目に、ISO 16940の機械インピーダンス法に基づき20℃において得られる損失係数は0.25より大きい。
【0019】
本発明の実施例によれば、ポリマー膜を調製後28日目に、ISO 16940の機械インピーダンス法に基づき30℃において得られる損失係数は0.15より大きい。
【0020】
本発明の実施例によれば、ポリマー膜の10℃における損失係数の経時変化量は0%より大きい。経時変化量は以下の公式により計算する。(調製後28日目の損失係数-調製後1日目の損失係数)/調製後1日目の損失係数*100%。そのうち、損失係数はISO 16940の機械インピーダンス法に基づき10℃において測定して得る。
【0021】
本発明の実施例によれば、ポリマー膜の20℃における損失係数の経時変化量は0%より大きい。経時変化量は以下の公式により計算する。(調製後28日目の損失係数-調製後1日目の損失係数)/調製後1日目の損失係数*100%。そのうち、損失係数はISO 16940の機械インピーダンス法に基づき20℃において測定して得る。
【0022】
本発明の実施例によれば、ポリマー膜の30℃における損失係数の経時変化量は-10%より大きい。経時変化量は以下の公式により計算する。(調製後28日目の損失係数-調製後1日目の損失係数)/調製後1日目の損失係数*100%。そのうち、損失係数はISO 16940の機械インピーダンス法に基づき30℃において測定して得る。
【0023】
本発明の実施例によれば、ポリマー膜は合わせガラス用の中間膜とされ、厚みは0.5~2mmである。
【0024】
本発明の実施例によれば、ポリマー膜の厚みは0.8mmであり、且つ第2層/第1層/第2層の厚みは0.335mm/0.13mm/0.335mmである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の特長は次の通りである。上述の特徴の画定に基づき、本発明が提供するポリマー膜は、特定の環境温度下、及び/又は一定時間を経た後にも良好な遮音性能を維持し得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の上述及び他の目的、特徴、優位点並びに実施例をより明解にするため、図面について以下の通り説明する。
【0027】
図1】本発明の実施例に基づくポリマー膜の損失正接と温度の相対変化のグラフである。
図2】本発明の異なる実施例に基づくポリマー膜の積層断面図である。
図3】本発明の異なる実施例に基づくポリマー膜の積層断面図である。
図4】本発明の異なる実施例に基づくポリマー膜の積層断面図である。
図5】本発明の実施例に基づくポリマー膜の製造フローチャートである。
【0028】
なお、図における各種特徴や構成要素の比率については実際の比率ではなく、本発明に関する具体的な特徴や構成要素を最適な方式で示すため、慣例の作業方式を基にした作図方式により描いている。また、別々の図において、同一又は類似の構成要素符合は、類似の構成要素や部材を指している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明をより詳細且つ不備なく叙述するため、以下に本発明の実施形態及び具体的な実施例について説明した記述を提出するが、それらは本発明を実施又は応用する具体的な実施例の唯一の形態ではない。本明細書及び添付する特許請求の範囲において、別途文脈に記載がない限り、「1つ」及び「当該」という用語は複数であると解釈し得る。また、本明細書及び添付する特許請求の範囲において、別途に記載がない限り、「ある物の上に設置される」とは、直接又は間接的にある物の表面と貼り付けられるか、その他の形態で接触すると見なすことができ、表面の画定は明細書の内容の前後/段落の含意及び本明細書が属する分野における通常の知識により判断されるものとする。
【0030】
本発明を画定する数値の範囲やパラメータはいずれもおおよその数値ではあるが、具体的な実施例における関連数値は可能な限り精確に示している。しかしながら、如何なる数値であれ、個別の試験方法に起因する標準偏差を含むことは本質的に不可避である。これにおいて、「約」は一般的に、実際の数値が特定の数値又は範囲の±10%、5%、1%又は0.5%以内であることを指す。或いは、「約」という用語は、本発明が属する分野の当業者によって考慮・判断される場合、実際の数値が平均値の許容可能な標準誤差内にあることを意味する。従って、反対の説明がない限り、本明細書及び添付する特許請求の範囲が開示する数値のパラメータはいずれも近似値であり、必要に応じて変化すると見なし得る。少なくとも、それらの数値のパラメータ、指し示される有効な桁数と通常の桁上げ法方法を適用することによって得た数値であると解釈されるべきである。
【実施例0031】
発明はポリマー膜を提供するが、それは少なくとも1つの第1層及び第2層を含み、第1層及び第2層は各々がポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む。具体的に、本明細書に記載のポリビニルアセタール樹脂とは、ポリビニルアルコールとアルデヒドとが縮合されて成る樹脂組成物をいう。上述のポリビニルアルコールはポリビニルエステルを鹸化することにより得ることができ、ポリビニルアルコールの鹸化度は通常、70mole%~99.9mole%の範囲内であり、例えば、70mole%、75mole%、80mole%、85mole%、90mole%、95mole%、99mole%又は99.9mole%である。上述のアルデヒドには通常は炭素数1~10のアルデヒドを使用することができ、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘキサアルデヒド、n-オクタアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド及びベンズアルデヒドなどであり、好適には、アルデヒドはプロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-ヘキサアルデヒド又はn-バレルアルデヒドであり、より好適には、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド又はイソブチルアルデヒドである。本発明の実施例によれば、ポリビニルアセタールは、ポリビニルブチラール(Polyvinyl Butyral,PVB)である。
【0032】
また、可塑剤は通常、ポリビニルアセタール樹脂と併用されて、材料の粘弾性質に影響する。具体的には、可塑剤は非限定的に、一塩基酸エステル、多塩基酸エステル、有機リン酸及び有機亜リン酸からなる群から選択される。可塑剤はより具体的には、トリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノアート)(triethylene glycol bis(2-ethylhexanoate),3GO)、テトラエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノアート)、トリエチレングリコールビス(2-エチルブタノエート)、テトラエチレングリコールビス(2-エチルブタノエート)、トリエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、アジピン酸ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]、ポリアジペート、プロピレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、ポリプロピレングリコールジベンゾエート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジベンゾエート、イソデシルベンゾエート、2-エチルヘキシルベンゾエート、フタル酸ジイソノニル、ジブトキシエチルテレフタレート、ひまし油、リシノール酸メチル、大豆油、及びエポキシ化大豆油からなる群から選択される。
【0033】
ポリマー膜は-20℃~20℃において第1損失正接ピーク値を有し、且つ20℃~50℃において第2損失正接ピーク値を有する。一方、第1損失正接ピーク値と第2損失正接ピーク値との間は損失正接ボトム値を有し、それは0.15~0.45であり、且つポリマー膜の10℃における損失正接は0.5未満である。少なくとも1つの実施例によれば、第1損失正接ピーク値は第2損失正接ピーク値よりも大きい。本明細書に記載の損失正接とは、tanδ値(又はロスファクター、ダンピングファクター、損失角正接と呼ばれる)をいい、材料の粘弾性質中のダンピング特性を表現するのに用いられ、また、材料の損失弾性率(loss modulus,G’’)と貯蔵弾性率(storage modulus,G’)の比と対等である。さらに、損失正接値の温度に対するピーク値はガラス転移点(glass transition temperature,Tg)となる。そのため、本明細書中、第1損失正接ピークが出現する温度を第1ガラス転移温度と呼ぶこともでき、第2損失正接ピークが出現する温度を第2ガラス転移温度と呼ぶこともできる。通常の場合、損失正接値は材料の粘性の大きさと正の相関関係にある。ガラス転移温度が低ければ低いほど材料が軟らかいことがおおよそ推測できる。本発明は同時に仮比重、重合度と官能基の割合を調整することによって材料の粘弾性質をコントロールする。
【0034】
一例として、図1は、本発明の好ましい実施例に基づくポリマー膜が呈する損失正接(tanδ)と温度(℃)の相対変化のグラフを示している。図1ではポリマー膜の損失正接が温度に対して変化する態様が示されており、-20℃~20℃において第1損失正接ピーク値L1が生じ、20℃~50℃において第2損失正接ピーク値L2が生じている。さらに図1を参照すると、損失正接ボトム値L3は第1損失正接ピーク値L1と第2損失正接ピーク値L2の間に生じており、その値は0.15~0.45であることのほかにも、ポリマー膜の10℃における損失正接が0.5未満であることが分かる。
【0035】
本発明の少なくとも1つの好ましい実施例によれば、ポリマー膜の損失正接ボトム値は0.18~0.43であり、例えば、0.18、0.21、0.25、0.28、0.32、0.35、0.39又は0.43である。本発明の少なくとも1つの好ましい実施例によれば、ポリマー膜の10℃における損失正接は0.10~0.49であり、好適には0.25~0.47であり、例えば、0.25、0.32、0.37、0.42又は0.47である。
【0036】
ポリマー膜の第1損失正接ピーク値を生じる温度は-20℃~20℃であり、好適には-10℃~10℃であり、より好適には-5℃~5℃である。本発明の少なくとも1つの好ましい実施例によれば、その温度は-2.5℃~1.6℃であり、例えば、-2.5℃、-1.5℃、-0.5℃、1.4℃又は1.6℃である。一方、ポリマー膜の第2損失正接ピーク値を生じる温度は20℃~50℃であり、好適には25℃~45℃であり、より好適には30℃~40℃である。本発明の少なくとも1つの好ましい実施例によれば、その温度は31.8℃~33.6℃であり、例えば、31.8℃、32.4℃、33.2℃、33.5℃又は33.6℃である。
【0037】
ポリマー膜の第1損失正接ピーク値と第2損失正接ピーク値の比の値は1.7~3.0であり、例えば、1.85、1.94、2.12、2.37又は2.96である。本発明の少なくとも1つの好ましい実施例よれば、第1損失正接ピーク値は0.80~1.50であり、例えば、0.952、1.022、1.182、1.252又は1.482である。一方、第2損失正接ピーク値は0.30~0.90であり、例えば、0.501、0.517、0.526、0.529又は0.558である。
【0038】
ポリマー膜のうち、第1層のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、可塑剤は50~90重量部であり、好適には60~90重量部、より好適には60~70重量部である。本発明の少なくとも1つの好ましい実施例によれば、可塑剤は60重量部である。一方、第2層のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、可塑剤は30~60重量部であり、好適には35~55重量部であり、より好適には40~50重量部である。本発明の少なくとも1つの好ましい実施例によれば、可塑剤は40重量部である。
【0039】
ポリマー膜のうち、第1層のポリビニルアセタール樹脂はポリビニルアルコール(Polyvinyl Alcohol,PVA)とアルデヒド類のアセタール化反応により得たものであり、且つポリビニルアルコールの合成固形分は12%より大きい。本発明の少なくとも1つの好ましい実施例によれば、ポリビニルアルコールの合成固形分は12.1%、12.7%、13.5%、13.9%又は14.8%である。これに応じ、第1層のポリビニルアセタール樹脂の仮比重は0.200~0.250である。本発明の少なくとも1つの好ましい実施例によれば、第1層のポリビニルアセタール樹脂の仮比重は0.206、0.218、0.223、0.231又は0.245である。発明者は、第1層の調製において仮比重を増加させることにより密度を向上させるなら、可塑剤が多めに吸着して軟化(表面積が大きくなる)し、遮音効果の向上を達成できることに気づいた。
【0040】
さらに、第1層のポリビニルアセタール樹脂の重合度は1800~4000であり、重合度は例えば、1800、2000、2500、3000、3500又は4000であるが、これらに限定されない。本発明の少なくとも1つの好ましい実施例によれば、第1層のポリビニルアセタール樹脂は以下に挙げる条件の1つを満たしている。アセチル化度が12mol%より大きい場合、重合度は3000~4000であり、水酸基含有比率は26mol%より大きい。アセチル化度が8mol%~12mol%である場合、重合度は2000~3200であり、水酸基含有比率は26mol%より小さい。アセチル化度が4mol%より大きく8mol%より小さい場合、重合度は1800~3200であり、水酸基含有比率は26mol%より小さい。本発明の少なくとも1つの好ましい実施例によれば、アセチル化度が15.5mol%である場合、重合度は3600であり、水酸基含有比率は26.4mol%である。アセチル化度が8.5mol%である場合、重合度は2400であり、水酸基含有比率は23.8mol%である。アセチル化度がそれぞれ4.8、6.7及び7.9mol%である場合、重合度はそれぞれ2800、2200及び1900であり、水酸基含有比率はそれぞれ25.6、25.2及び25.4である。
【0041】
本明細書で使用するポリビニルアセタール樹脂の水酸基含有比率とは、水酸基と結合したエチレン量を主鎖のエチレンの総量で割って求めたモル分率を百分率で表したものである。ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度とは、アセタール基と結合したエチレン量を主鎖のエチレンの総量で割って求めたモル分率を百分率で表したものである。ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度とは、主鎖のエチレンの総量から水酸基と結合したエチレン量及びアセタール基と結合したエチレン量を引いて得た値を主鎖のエチレンの総量で割って求めたモル分率を百分率で表したものである。
【0042】
上述の水酸基含有比率、アセタール化度及びアセチル化度は、JIS K6728の「ポリビニルブチラール試験方法」に基づき測定した結果を算出したものである。上述の仮比重は、JIS K6720に基づき測定したものである。
【0043】
本明細書で使用する重合度は、ポリマーの分子サイズを評価する指標である。繰り返し単位の数、即ち、ポリマーの高分子鎖が含む繰り返し単位の数の平均値を基準とする。
【0044】
ポリマー膜の構造態様
【0045】
図2図4は、本発明の異なる実施例に基づくポリマー膜が呈する積層断面図である。異なる実施例のポリマー膜どうしは構造上の違いを有する。
【0046】
図2は、本発明の実施例に基づくポリマー膜100Aの積層断面図である。図2を参照されたい。ポリマー膜100Aは3層構造であり、その上下層はどちらも第2層102であり、第2層102の間は第1層101である。本発明の幾つかの実施例によれば、ポリマー膜100Aは合わせガラスの中間膜であり、2つのガラス板の間に設置し得る。そのうち、第1層101は中間層とされ、第2層102は保護層とされる。少なくとも1つの実施例によれば、保護層は一般的な樹脂層でよく、材質は相対的に硬い。中間層は遮音樹脂層でよく、材質は相対的に軟らかい。本発明者は、一般的な樹脂層(保護層)と遮音樹脂層(中間層)の2種類の材質の粘弾性質(tanδ値)の差が大きいほど、同じ温度下で中間層材料が保護層材料よりも軟らかいことを示しているため、中間層が可塑剤を吸収しやすくなり、異なる温度下でより大きな粘弾性の差を持つようになって、優れた遮音性能を具備し得ることに気づいた。一方、厚みについては、ポリマー膜100Aの厚みは0.5~2mmであり、例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9又は2.0mmであり、好適には、ポリマー膜100Aの厚みは0.8mmである。そのうち、第1層101の厚みは0.11~0.15mmであり、好適には0.13mmであり、第2層102の厚みは0.320~0.350mmであり、好適には0.335mmである。
【0047】
図3は、本発明の実施例に基づくポリマー膜100Bの積層断面図であり、それは上述の実施例のポリマー膜100Aと類似しているが、異なる点として、本実施例が提供するポリマー膜100Bは2層構造であり、第1層101と第2層102が積層されて成るものである。
【0048】
図4は、本発明の実施例に基づくポリマー膜100Cの積層断面図であり、それは上述の実施例のポリマー膜100Aと類似しているが、異なる点として、本実施例が提供するポリマー膜100Cは第1層101を増設しており、上方/下方の第2層102のうち任意の一方に貼り合わされる。上述の実施例以外にも、本分野の当業者は、本発明の理念から逸脱しないという条件において、必要に応じ、ポリマー膜100Cに第1層101や第2層102を交互にして増設し、例えば4層構造、5層構造、6層構造又は6層以上の構造などにすることも可能である。
【0049】
ポリマー膜の製造工程
【0050】
図5は、本発明の実施例に基づくポリマー膜の製造フローチャートである。図5を参照されたい。本発明が提供するポリマー膜の製造工程は、工程S100~S106を少なくとも含む。具体的に、工程S100では、第1PVB樹脂と可塑剤を混練して第1樹脂組成物を形成するが、ここで、混練時の操作温度と回転数については慣用の方法や必要に応じて調整することができ、本案は細かな条件について限定しない。工程S102では、第2PVB樹脂と可塑剤を混練して第2樹脂組成物を形成するが、ここで、混練時の操作温度と回転数については慣用の方法や必要に応じて調整することができ、本案は細かな条件について限定しない。工程S104では、第1樹脂組成物及び第2樹脂組成物をそれぞれ第1層及び第2層に調製するが、ここで、調製方法については、例えば押出成形や熱プレス成形など、慣用の薄膜調整方法を用いて実施することができる。工程S106では、第1層と第2層を結合してポリマー膜を形成するが、ここで、調製方法については、押出成形や熱プレス成形など、慣用の薄膜調整方法を用いることができる。本発明の幾つかの実施例によれば、第1樹脂組成物及び第2樹脂組成物は、共押出によりポリマー膜を直接形成することができる。上記工程により調製されて成るポリマー膜を測定対象膜とし、以下の様々な特性測定を行うことができる。
【0051】
粘弾性質の測定
【0052】
本明細書で粘弾性質の測定に用いた方法には、少なくとも以下の工程が含まれる。先ず、測定対象膜を直径8mmの円形にカットし、測定対象膜を恒温恒湿器に24時間放置し、その温度と相対湿度はそれぞれ23℃と55%を維持するようにコントロールした。次に、測定対象膜を回転レオメータ(Discovery Hybrid Rheometer II,DHR)(TA Instrument製)に入れ、振とう法により粘弾性質の分析を行った。分析条件は以下の通りである。測定温度は100℃から-10℃まで下げ、且つその降温速度は3℃/minとし、振とう数は1Hzに設定し、測定対象膜を1%のひずみに維持し、治具圧力は1Nに設定した。上述の方法により、分析結果から測定対象膜の損失正接とガラス転移温度を得た。
【0053】
損失係数の測定
【0054】
本明細書で用いる損失係数の測定方法は、ISO 16940の機械インピーダンス法(Measurement of Mechanical Impedance)を参考にして行った。具体的に、その方法には少なくとも以下の工程が含まれる。先ず、測定対象膜を長さ300mm、幅25mm、厚さ2mmの清潔で透明な2枚のフロートガラスの間に挟み、予備圧着してから本圧着して、合わせガラスを得た。ここで、予備圧着条件は、熱プレス機を用いて150℃下で3分間の予備圧着とし、本圧着条件は、135℃、圧力13barの条件下で120分間の圧着とした。続いて、合わせガラスの調製完了後の1日目又は28日目に測定を行う前に、それを恒温恒湿器に2時間放置し、温度と相対湿度はそれぞれ10℃/20℃/30℃と55%を維持するようにコントロールした。さらに、合わせガラスの中央を振とう機(vibration shaker)に固定し、それぞれ10℃/20℃/30℃の環境温度下で振とうを行った。さらに、インピーダンスヘッド(impedance head)で振とうの力と振動数を測定して、分析システムにより実験データを制振減衰係数(damping loss factor、損失係数とも呼ぶ)に変換した。なお、上述の損失係数は、ハーフパワー法(half-power method)に基づき計算した第1振動モードである。通常の場合、損失係数の数値が高いほど遮音効果が高いことを表すと考えられる。
【0055】
本発明の少なくとも1つの実施例によれば、ポリマー膜は合わせガラス用の中間膜とされ、その厚みは0.5~2mmであり、ポリマー膜の調製完了後28日目に、ISO 16940のMIM機械インピーダンス法に基づき10℃において測定して得られる損失係数は0.15より大きい。また、調製完了後28日目に、ISO 16940のMIM機械インピーダンス法に基づき20℃において測定して得られる損失係数は0.25より大きい。同時に、調製完了後28日目に、ISO 16940のMIM機械インピーダンス法に基づき30℃において測定して得られる損失係数は0.15より大きい。
【0056】
また、本明細書に記載の「損失係数の経時変化量」とは、合わせガラスの調製完了後28日目の、1日目の損失係数に対する変化百分率をいう。具体的に、損失係数の経時変化量は、以下の公式により計算する。
【0057】
【数1】
【0058】
損失係数の経時変化量により、遮音効果の経時変化を評価する。本発明の幾つかの実施例によれば、ポリマー膜の10℃における損失係数の経時変化量は0%より大きいか、又は20℃における損失係数の経時変化量は0%より大きいか、又は30℃における損失係数の経時変化量は-10%より大きい。本案の発明者は、一般的に、3層構造のポリマー膜が30℃の環境温度にある場合、環境温度がポリマー膜の第1層と第2層のガラス転移温度に近いためにポリマー膜の軟化が生じ、可塑剤の移行が不安定になってしまうため、必然的に、遮音効果が経時的に減少してしまうが、本発明は、30℃における遮音効果の低下量を低減し得ることに気づいた。
【0059】
通常の場合、ポリマー膜の放置時間が長いほど、可塑剤に移行の状態が生じるようになり、このとき、材質の軟らかい層(例えば、ポリマー膜中の第1層)がより多くの可塑剤を吸着するようになり、遮音効果の向上を促進させることができる。しかし、本発明者は、損失正接について、ポリマー膜の第1層のガラス転移温度と第2層のガラス転移温度との間の損失正接ボトム値が低すぎる場合には、ポリマー膜の第1層と第2層の両者の可塑剤に対する相容性の差が大きすぎることを表しており、可塑剤が移行し続けて経時的に不安定な状態となり、遮音効果が低下してしまう一方で、損失正接ボトム値が高すぎる場合には、第1層のガラス転移温度と第2層のガラス転移温度が近すぎることを表しており、第1層と第2層との間の粘弾性質の差が小さくなりすぎて、音波が媒質を通過する際、媒質との間に顕著な差がないために、ポリマー膜全体の遮音効果を低下させてしまうことに気づいた。従って、損失正接ボトム値は、遮音効果に経時的な低下を生じさせず、低温での遮音性能を向上させることもできる、適切な範囲内になければならない。また、ポリマー膜の10℃における損失正接が特定の数値よりも小さいとき、それが良好な遮音効果を有することをより一層表すことができる。
【0060】
実施例1~12
【0061】
本発明は、上述の内容に基づき実施例1~5のポリマー膜を提供する。各実施例は異なるパラメータで調製することにより異なる特性を生じるように調整し、さらにポリマー膜の損失係数特性について分析を行った。
【0062】
なお、実施例1~5はいずれも3層構造を採用しており、本発明が提供する第2層は上下の保護層に設け、本発明が提供する第1層は中間層とした。
【0063】
実施例1~5のポリマー膜の調製方法について以下に簡単に説明する。
【0064】
先ず、混練機で100重量部の第1PVB樹脂と60重量部の可塑剤(トリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノアート))を十分に混錬し、中間層用樹脂組成物を得た。また混練機で100重量部の第2PVB樹脂と40重量部の可塑剤(トリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノアート))を十分に混錬し、保護層用樹脂組成物を得た。第1PVB樹脂を調製するときには、PVA樹脂合成時の固形分と酸の添加量を高めることで、第1PVB樹脂の粒径を効果的に低下させ、仮比重を増加させることができる。
【0065】
次に、中間層用樹脂組成物と保護層用樹脂組成物を共押出(T-die共押出機)することにより、3層構造を有する中間膜(厚さ:0.8mm)を得た。その構造は、保護層(厚さ:0.335mm)/中間層(厚さ:0.13mm)/保護層(厚さ:0.335mm)とした。
【0066】
比較例1~4
【0067】
ここでは、実施例1~5と類似するが異なる調製方法により比較例1~4のポリマー膜を提供する。実施例1~5と同じ点として、比較例1~4はいずれも同じ重量比で混錬することで中間層と保護層の樹脂組成物を得た。また、比較例1~4もすべて3層構造を採用しており、上下層にはそれぞれ保護層を設け、上下保護層の間に中間層を設けた。
【0068】
実施例1~5と比較例1~4の成分パラメータの画定は表1に示す通りである。
【0069】
【表1】
【0070】
実施例1~5と比較例1~4の損失正接パラメータ及び特性分析結果は表2に示す通りである。
【0071】
【表2】
【0072】
表1に示す通り、実施例1~5の中間層のポリビニルアルコールの合成固形分は12%より大きい。これに応じ、ポリビニルアセタール樹脂の仮比重は0.200~0.250の間である。さらに、実施例1~5の中間層のポリビニルアセタール樹脂の重合度は1800~4000内であり、且ついずれも以下に挙げる条件のうちいずれか1つを満たしている。アセチル化度が12mol%より大きい場合、重合度は3000~4000の範囲内であり、水酸基含有比率は26mol%より大きい。アセチル化度が8mol%~12mol%である場合、重合度は2000~3200の範囲内であり、水酸基含有比率は26mol%より小さい。アセチル化度が4mol%より大きく8mol%より小さい場合、重合度は1800~3200の範囲内であり、水酸基含有比率は26mol%より小さい。これに対して、比較例1~4の中間層はいずれも上述の条件のうち少なくとも1つを満たしていない。
【0073】
表2に示す通り、実施例1~5のポリマー膜は、-20℃~20℃において第1損失正接ピーク値が生じている。好適なのは、-2.5~1.6℃の間において第1損失正接ピーク値が生じることである。実施例1~5のポリマー膜は、20℃~50℃において第2損失正接ピーク値も生じており、同時に第1損失正接ピーク値と第2損失正接ピーク値の比の値は1.7~3.0の間である。一方、実施例1~5のポリマー膜の第1損失正接ピーク値と第2損失正接ピーク値との間の損失正接ボトム値は0.15~0.45であり、且つ10℃における損失正接は0.5未満である。
【0074】
一方で、比較例1のポリマー膜の10℃における損失正接及び損失正接ボトム値はいずれも上述の範囲内になかった。特定の理論に限定されるものではないが、その特性の分析結果は、ポリマー膜の調製完了後28日目にISO 16940のMIM機械インピーダンス法に基づき10℃と20℃において測定して得られる損失係数がどれも好ましくないことを示しており、10℃と20℃の環境温度下におけるその遮音効果は理想的ではないことが分かる。比較例2、4のポリマー膜の10℃における損失正接は上述の範囲内になかった。特定の理論に限定されるものではないが、その特性の分析結果は、ポリマー膜の調製完了後28日目にISO 16940のMIM機械インピーダンス法に基づき10℃において測定して得られる損失係数が好ましくないことを示しており、10℃の環境温度下におけるその遮音効果は理想的ではないことが分かる。比較例3のポリマー膜の損失正接ボトム値は上述の範囲内になかった。その特性の分析結果は、ポリマー膜の調製完了後1日目から28日目において、ISO 16940のMIM機械インピーダンス法に基づき20℃と30℃において測定して得られる損失係数の経時変化量がどれも好ましくないことを示しており、20℃と30℃の環境温度下におけるその遮音効果は時間とともに低下することが分かる。
【0075】
要約すると、本発明はポリマー膜を提供し、それは特に合わせガラスの中間膜に適用される。本発明の異なる実施例によれば、ポリマー膜は、上述のパラメータの画定及び調整の下で、特定の環境温度下、及び/又は一定時間を経た後にも良好な遮音性能を維持し得る。
【0076】
以上で本発明について詳細に説明したが、上述は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の実施範囲を限定するものではない。本発明の特許請求の範囲に基づく同等変化や修飾はいずれも本発明の特許請求の範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0077】
100A~100C ポリマー膜
101 第1層
102 第2層
L1 第1損失正接ピーク値
L2 第2損失正接ピーク値
L3 損失正接ボトム値
S100~S106 工程
図1
図2
図3
図4
図5