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特開2023-86706ガラスセラミックカバープレート、その製造方法、並びにその使用、および前記カバープレートを含むデジタル表示装置
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  • 特開-ガラスセラミックカバープレート、その製造方法、並びにその使用、および前記カバープレートを含むデジタル表示装置 図1
  • 特開-ガラスセラミックカバープレート、その製造方法、並びにその使用、および前記カバープレートを含むデジタル表示装置 図2
  • 特開-ガラスセラミックカバープレート、その製造方法、並びにその使用、および前記カバープレートを含むデジタル表示装置 図3
  • 特開-ガラスセラミックカバープレート、その製造方法、並びにその使用、および前記カバープレートを含むデジタル表示装置 図4
  • 特開-ガラスセラミックカバープレート、その製造方法、並びにその使用、および前記カバープレートを含むデジタル表示装置 図5
  • 特開-ガラスセラミックカバープレート、その製造方法、並びにその使用、および前記カバープレートを含むデジタル表示装置 図6
  • 特開-ガラスセラミックカバープレート、その製造方法、並びにその使用、および前記カバープレートを含むデジタル表示装置 図7
  • 特開-ガラスセラミックカバープレート、その製造方法、並びにその使用、および前記カバープレートを含むデジタル表示装置 図8
  • 特開-ガラスセラミックカバープレート、その製造方法、並びにその使用、および前記カバープレートを含むデジタル表示装置 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086706
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】ガラスセラミックカバープレート、その製造方法、並びにその使用、および前記カバープレートを含むデジタル表示装置
(51)【国際特許分類】
   C03C 21/00 20060101AFI20230615BHJP
   C03C 10/14 20060101ALI20230615BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
C03C21/00 101
C03C10/14
G09F9/00 313
G09F9/00 366A
G09F9/00 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022196814
(22)【出願日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】10 2021 132 738.5
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】10 2022 114 184.5
(32)【優先日】2022-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(71)【出願人】
【識別番号】522480388
【氏名又は名称】ショット テクニカル グラス ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT Technical Glass Solutions GmbH
【住所又は居所原語表記】Otto-Schott-Str. 13, 07745 Jena, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】リューディガー ディートリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ベアント リューディンガー
(72)【発明者】
【氏名】マイケ シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン アルケンパー
(72)【発明者】
【氏名】ラース ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス プファイファー
(72)【発明者】
【氏名】ユリアン コッホ
【テーマコード(参考)】
4G059
4G062
5G435
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AA06
4G059AB17
4G059AC16
4G059HB03
4G059HB13
4G059HB14
4G059HB15
4G059HB23
4G062AA01
4G062AA11
4G062BB06
4G062CC09
4G062DA06
4G062DA07
4G062DB04
4G062DC01
4G062DC02
4G062DC03
4G062DD01
4G062DE01
4G062DE02
4G062DE03
4G062DF01
4G062EA03
4G062EB01
4G062EB02
4G062EB03
4G062EC01
4G062EC02
4G062EC03
4G062ED01
4G062ED02
4G062ED03
4G062EE01
4G062EE02
4G062EE03
4G062EF01
4G062EF02
4G062EF03
4G062EG01
4G062EG02
4G062EG03
4G062FA01
4G062FA10
4G062FB01
4G062FB02
4G062FB03
4G062FC01
4G062FC02
4G062FC03
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4G062FE01
4G062FE02
4G062FE03
4G062FF01
4G062FG01
4G062FH01
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4G062FK01
4G062FL01
4G062GA01
4G062GA10
4G062GB01
4G062GC01
4G062GD01
4G062GE01
4G062HH01
4G062HH03
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4G062HH09
4G062HH12
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM01
4G062MM12
4G062NN33
4G062QQ02
5G435AA07
5G435EE49
5G435GG43
5G435HH05
5G435LL07
5G435LL10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】堅牢な製造方法を用いて良好な光学的品質で製造可能である、電子表示装置用のカバープレートを提供する。
【解決手段】シリカ系ガラスセラミックを含むカバープレートであって、厚さ0.4mm~0.85mmを有し、380nm~780nmの範囲で80%を上回る光透過率を有し、化学強化されており、少なくとも250MPaのCS、および/または少なくとも160MPaのCS30、前記カバープレートの厚さの少なくとも0.2倍のDoCLを有し、少なくとも1つのシリカ系結晶相を含み、前記シリカ系結晶相は少なくとも1つの表面近傍層において、有利には強化プロセス後に平均して、中心部における結晶相の単位格子の体積よりも少なくとも1体積%大きい単位格子の体積を有する、前記カバープレートによって解決される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ系ガラスセラミックを含む、厚さ0.4mm~0.85mmを有するカバープレートであって、前記カバープレートは、有利には厚さ0.4mm~0.85mmについて、殊に有利には厚さ0.7mmで特定される、380nm~780nmの範囲で80%を上回る、好ましくは85%を上回る光透過率τvisを有し、且つ化学強化されており、少なくとも250MPa且つ有利には最高1500MPaのCS、および/または少なくとも160MPa且つ有利には最高525MPaのCS30、および/または前記カバープレートに対して、前記カバープレートの厚さの少なくとも0.2倍且つ有利には前記カバープレートの厚さの0.5倍未満のDoCLを有し、前記シリカ系ガラスセラミックは少なくとも1つのシリカ系結晶相を含み、前記シリカ系結晶相は少なくとも1つの表面近傍層において、殊に前記カバープレートの側面の一方から直角に特定して20μm~70μmの層において、有利には強化プロセス後に平均して、中心部における、殊に前記シリカ系ガラスセラミック内で応力が最小値をとる領域における結晶相の単位格子の体積よりも少なくとも1体積%、好ましくは少なくとも2体積%大きい単位格子の体積を有する、前記カバープレート。
【請求項2】
前記結晶相が少なくとも前記表面近傍層において、中心部、殊に前記シリカ系ガラスセラミック内の応力が最小値をとる領域におけるよりも高い割合で酸化ナトリウムNa2Oおよび/または酸化カリウムK2Oを含む、請求項1に記載のカバープレート。
【請求項3】
前記カバープレートのガラスセラミックは、50体積%を上回る結晶相、有利には70体積%を上回る結晶相、且つ好ましくは最高95体積%の結晶相を含む、請求項1または2に記載のカバープレート。
【請求項4】
4未満、好ましくは3未満の彩度C*を特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のカバープレート。
【請求項5】
カバープレートの厚さ0.7mmに対して0.01%~1%のヘイズを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のカバープレート。
【請求項6】
前記ガラスセラミックがリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックとして形成されており、且つ前記結晶相がキータイト混晶として形成されている、請求項1から5までのいずれか1項に記載のカバープレート。
【請求項7】
前記ガラスセラミックが以下の成分:
SiO2 55~75、好ましくは62~72
Al23 18~27、好ましくは18~23
Li2O 2.8~5、好ましくは3~5
を、酸化物基準の質量%で含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載のカバープレート。
【請求項8】
前記ガラスセラミックが、以下の成分:
SiO2 55~75、好ましくは62~72
Al23 18~27
Li2O 2.8~5、好ましくは3~5
Na2O 0~4、好ましくは0~2
2O 0~4、好ましくは0~2
MgO 0~8、好ましくは0~4
CaO 0~4、好ましくは0~2
SrO 0~4、好ましくは0~2
BaO 0~4、好ましくは0~2
ZnO 0~6、好ましくは0~2
TiO2 0~4、好ましくは0~3
ZrO2 0~5、好ましくは1.2~4
23 0~2、好ましくは0~0.1
Fe23 0.0001~0.1、好ましくは0.0001~0.02
SnO2 0~2、好ましくは0.05~1.6
を、酸化物基準の質量%で含み、ここで、有利にはTiO2とZrO2との成分の合計について、
0<Σ(TiO2+ZrO2)<9.5%、好ましくは1.2<Σ(TiO2+ZrO2)<9.5%
が該当する、請求項1から7までのいずれか1項に記載のカバープレート。
【請求項9】
成分SnO2、ZrO2およびTiO2について、
0≦SnO2/(ZrO2+TiO2)<0.8、好ましくは0.01≦SnO2/(ZrO2+TiO2)<0.7
が該当することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載のカバープレート。
【請求項10】
セットドロップ試験において特定される鋭利衝撃強さが少なくとも120cm~200cmまでの落下高さであることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載のカバープレート。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載のカバープレートの製造方法であって、以下の段階:
・ 溶融プロセスおよび引き続く熱間成形によりシリカグリーンガラスを製造する段階、
・ 前記シリカグリーンガラスの熱処理段階であって、少なくとも1つの核形成段階が温度範囲690℃~850℃で5分~8時間まで、好ましくは30分~2時間までの時間行われ、少なくとも1つのセラミック化段階が温度範囲780℃~1100℃で3分~60時間まで、好ましくは3分~8時間までの時間行われる、前記熱処理段階、
・ 100質量%~0質量%のKNO3、および0質量%~100質量%のNaNO3、および0質量%~5質量%のLiNO3の組成を有する交換浴中で、前記交換浴の温度370℃~500℃で、且つ2時間~50時間の時間、少なくとも1回のイオン交換を実施する段階
を含む、前記方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において製造されたか、または製造可能である、有利には請求項1から10までのいずれか1項に記載のカバープレート。
【請求項13】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の、および/または請求項12に記載のカバープレートの、電子機器における、殊に電子表示装置における、殊にモバイル電子表示装置における、例えばモバイルタッチパネルおよび/またはモバイルデジタル表示装置、例えばスマートフォンまたはスマートウォッチにおける使用。
【請求項14】
請求項1から10、または12のいずれか1項に記載の少なくとも1つのカバープレートを含む表示装置、殊にデジタル表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、ガラスセラミックカバープレート、その製造方法、並びにその使用、並びに前記カバープレートを含むデジタル表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置において用いられるカバープレートは既に長らく先行技術である。このようなカバープレートは、「カバー」または「カバーガラス」と称されることも多い。多くの場合、そのようなカバープレートは、例えばスマートウォッチ内で、またはスマートフォン内で、前記プレートの後ろに配置される電子部品および表示装置を保護するために配置されており、強化されていない状態に比してカバープレートの機械的耐性を高めるために化学強化ガラスを含む。さらにガラスセラミックプレートが使用されることも公知であり、その際、有利には、強化されていないガラスよりも既に本質的に機械的耐性のあるガラスセラミックが用いられる。
【0003】
ガラスセラミックの正確な構成に応じて、これを強化可能に形成することもできる。ここでは原理的に2つの機構が考えられる。例えば、ガラスセラミックは、結晶成分の他に、「残留ガラス相」としても示され得るガラス状成分も含む。従って、ガラスセラミックが化学強化されると、ガラス相自体においてイオン交換が生じることがあり、その点では結晶成分を有さないガラスの場合と非常に類似して進行する。しかし、化学強化の際のイオン交換がガラスセラミックに含まれる結晶相において生じる場合もあり、且つ有利ですらある。
【0004】
例えばG.H. Beall et al., 「Ion-Exchange in Glass-Ceramics」, Frontiers in Materials 2016, 3, Article 41は、ガラスセラミックの強化に際する様々な機構についての概要を提供している。
【0005】
米国特許出願公開第2020/0346969号明細書(US2020/0346969 A1)は、化学強化された、三次元成形された結晶化ガラスを記載している。前記ガラスセラミックは結晶質相としてキータイトを含む。その核形成は好ましくは純粋に核形成剤としてのZrO2を介して行われる。
【0006】
米国特許出願公開第2021/0292225号明細書(US2021/0292225 A1)は、化学強化ガラスプレート、カバープレート、およびそのようなカバープレートを含む電子素子を記載している。その化学強化ガラスは、部分的に結晶化されたガラスとして存在することもでき、且つ結晶相として例えばキータイトを含み得る。この場合、核形成は有利には核形成剤ZrO2およびSnO2を介して生じる。
【0007】
結晶質相としてキータイトを含むガラスセラミックは、既に本質的に高い強度を有することができ、良好に化学強化可能であるが、多くの場合、明らかな曇りを有するので、そのようなガラスセラミックを用いた表示装置用のカバープレートは可能ではあっても製造が困難である。
【0008】
従って、堅牢な製造方法を用いて良好な光学的品質で製造可能である、電子表示装置用のカバープレートとして用いるための化学強化可能なガラスセラミックが必要とされている。そのようなガラスセラミックのための、もしくはそのようなガラスセラミックを含むカバープレートのための相応の製造方法も必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0346969号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2021/0292225号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】G.H. Beall et al., 「Ion-Exchange in Glass-Ceramics」, Frontiers in Materials 2016, 3, Article 41
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、従来技術の上記の欠点を少なくとも部分的に低減する、シリカ系ガラスセラミックを含むカバープレートを提供することである。さらなる態様は、そのようなカバープレートの製造方法、並びにその使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の課題は、独立請求項の対象によって解決される。特定の構成および好ましい構成は従属請求項において、並びに本開示の明細書および図面において明らかになる。
【0013】
従って、本発明は、シリカ系ガラスセラミックを含む、厚さ0.4mm~0.85mmを有するカバープレートであって、有利にはカバープレートの厚さ0.4mm~0.85mmで特定される、殊に有利にはカバープレートの厚さ0.7mmで特定される380nm~780nmの範囲で80%を上回る、有利には85%を上回る光透過率τvisを有する、前記カバープレートに関する。前記カバープレートは化学強化されている。前記カバープレートは、少なくとも250MPa且つ有利には最高1500MPaのCS(圧縮応力)、および/または少なくとも160MPa且つ有利には最高525MPaのCS30(カバープレートの2つの側面(または「表面」)の一方から特定して深さ30μmでの圧縮応力、および/またはカバープレートの厚さの少なくとも0.1倍且つ有利にはカバープレートの厚さの半分未満のDoCL(強化層の厚さ)を有する。前記シリカ系ガラスセラミックは、少なくとも1つのシリカ系結晶相を含み、前記結晶相は少なくとも1つの表面近傍層において、殊にカバープレートの側面の一方から直角に特定して深さ20μm~70μmの層において、有利には強化プロセス後に平均して、中心部における結晶相よりも少なくとも1体積%、好ましくは少なくとも2体積%大きい単位格子の体積を有する。カバープレートの中心部とは、カバープレートの両方の側面の一方から直角に特定して70μmより下の層におけるカバープレートの組織と理解される。換言すれば、カバープレートの中心部はその「バルク」として理解することもできる。一般に、カバープレートの中心部に最小の応力が存在する。
【0014】
単位格子体積の特定は、薄膜X線回折測定を介して行われる。平面の試料表面上へのX線の入射角Ω(例えばΩ=0.5°~Ω=5°)に応じて、約2μm~20μmの深さの情報が得られる。測定されたX線回折反射の位置から、一般に普及している方法を介して、格子定数および単位格子体積を計算でき、この計算を通じて、殊に回折X線の光路に沿った平均値が提供される。表面を目標通りに削り取り、引き続き再度測定することによって、もはやイオン交換されていない領域まで、単位格子体積を特定することができる。ガラスセラミック中の圧縮応力もしくは引張応力による格子定数の比較的小さな変化は、結晶構造中でのイオン交換による格子常数の大きな変化に対して無視できる。
【0015】
本開示の意味において、DIN 5033に準拠して測定された380~780nmでの光透過率が、透過率もしくは光透過率、またはτvisとして示される。これは、4mm厚の研磨されたガラスセラミック試料について観察者角度2°で標準光源Cを用いて測定された、CIE表色系によるY値と同一である。この光は色温度6800Kを有する白色光に相応するので、平均的な昼光を示す。
【0016】
上述のようなカバープレートの構成は多くの利点を有する。
【0017】
前記カバープレートはシリカ系ガラスセラミックを含むので、化学的に既に非常に耐性のある部材である。シリカ系ガラスセラミックとは、本開示の範囲では、SiO2を含む、且つ有利には構成要素としてSiO4 4-四面体を含む結晶相、つまり、いわゆる結晶性シリカを含むガラスセラミックと理解される。シリカ系ガラスセラミックは、本質的に既に良好な機械的耐性を備えている。さらに、前記カバープレートは化学強化されており、つまり、少なくとも250MPa且つ有利には最高1500MPaのCS(圧縮応力)、および/または少なくとも160MPa且つ有利には最高525MPaのCS30、および/または前記カバープレートの厚さの少なくとも0.1倍且つ有利には前記カバープレートの厚さの半分未満のDoCLを有する。このようにして、機械的な使用試験、例えば、装置に組み込まれた状態でのカバープレートの挙動に関するいわゆる「セットドロップ試験」に関するカバープレートの有利な特性が達成可能であるので、充分に薄く、ひいては軽いカバープレートを使用することが可能である。従って、前記カバープレートは厚さ0.4mm~0.85mmを有する。これもさらに有利であり、なぜなら、このようにして波長範囲80nm~780nmで80%を上回る、有利には85%を上回る高い光透過率τvisが達成されるからである。有利には、光透過率値は比較のためにカバープレートの厚さ0.7mmで特定される。それらがこの条件を満たすかどうか比較するために、薄いプレートを積層して相応の厚さを達成することができ、より厚いプレートは薄くすることができる。一般に、この光透過率値はカバープレートの厚さ0.4mm~0.85mmについて達成される。
【0018】
前記カバープレートに含まれるシリカ系ガラスセラミックは、少なくとも1つのシリカ系結晶相を含み、前記結晶相は少なくとも1つの表面近傍層において、殊にカバープレートの側面の一方から直角に特定して20μm~70μmの厚さにおいて、有利には強化プロセス後に平均して、中心部における結晶相の単位格子の体積よりも少なくとも1体積%、好ましくは少なくとも2体積%大きい単位格子の体積を有する。換言すれば、前記シリカ系ガラスセラミックは結晶相を含み、それは、化学強化されていない状態では強化可能な結晶相として存在し、且つ、実施態様によるカバープレートの化学強化状態においては、上述のように拡大された単位格子の体積を有する形態で化学強化されている。その際、化学強化された状態における結晶相の単位格子の拡大は、カバープレートの厚さ全体にわたって存在するのではなく、むしろ特定の領域内のみ、つまりカバープレートの表面近傍領域のみに存在する。従って、厚さが長さおよび幅よりも少なくとも一桁大きいという意味でプレート状に形成されているカバープレートは、2つの側面(または「側」)を有し、その寸法は長さと幅とによって特定され、そこから垂直にカバープレートの中心部へと内向きに、表面近傍層が特定される。この表面近傍層は、カバープレートの両方の側面上で形成される。それは有利には深さ20μm~70μmの層である。ここで、結晶相の単位格子の体積は、カバープレートの中心部における同じ結晶相の単位格子の体積とは異なる。有利には、表面近傍層における単位格子が中心部における単位格子に対して拡大されている結晶相は、シリカ系結晶相である。
【0019】
従って、結晶相の単位格子の拡大は少なくとも表面近傍領域において生じる。正確な強化プロトコルに応じて、イオン交換領域は300μmまでの深さであることができる。カバープレート内の考慮される層の正確な深さに応じて、異なる割合のイオン交換された結晶相がもたらされることが判明した。換言すれば、これは、実施形態によるカバープレートの場合、厚さの推移があることを意味する。例えば、カバープレートの表面で、且つ有利には表面近傍層の領域まで、有利には20μmから70μmまで、相応のEDXプロファイルにおいて示され得るとおり、最小限に至るまでほぼ完全な交換が生じる。例えば12時間の強化時間での長い強化プロトコルの場合、約300μmの深さまでのイオン交換が検出可能である。ここでDoCLは145μmであり、従ってカバープレートにおいて、圧縮応力曲線は、材料が引張応力を蓄積できる能力に従って構成される。本発明者らは、イオン交換されている、物理的な測定技術を用いて特定されたDoCLが存在する結晶もしくは微結晶もしくは結晶相より下方の領域においては、結晶相の割合は少ないので圧縮応力に寄与せず、従って強化が存在し、なぜなら、カバープレートの両方の側面上での表面近傍領域における結晶相の体積の増加が、カバープレートの内側にある中心部に圧縮応力をもたらすからであると考えている。
【0020】
換言すれば、ここで強化は、ガラス相内での交換ではなく、結晶相内での交換を介して達成される。その際、さらに、結晶相内で生じるそのようなイオン交換による化学強化の場合、非常に効率的な強化が生じることが判明した。意外なことに、これは同じ化学組成であるが結晶化されていないガラス材料についてのイオン交換よりもさらに良好である。同量のイオンが交換されるのだが、実施態様によるカバープレートにおいて形成される強化はより良好である。換言すれば、シリカ系ガラスセラミックを含む、実施態様によるカバープレートにおいては、同じ量の交換されたイオンがより高い強化をみちびく。従って、前記強化プロセスは、形成される強化に関して効率的である。これは、例えば図面の図9においても明らかであり、そこでは1つの実施態様によるカバープレートの強化プロファイルが、同じ化学組成の材料を含むがセラミック化されていないカバープレートについての強化プロファイルと互いに対比されている。ここで、強化プロファイル5は、1つの実施態様によるカバープレートに相応し、強化プロファイル6は、同じ化学組成の材料を含むがガラス状に形成され且つセラミック化されていないカバープレートに相応する。
【0021】
従って、交換の程度が同じ場合、つまり、交換浴から交換されたイオンが本質的に同量である場合、より効率的な強化が達成される。従って、結晶質相中への交換の場合、ガラス材料中への交換の場合よりも効率的に圧縮応力が構築され得る。同時に、このようにして、ガラスセラミック中でそのように生じた強化は、同じ組成の化学強化されたガラスの場合よりも大きな熱的および時間的安定性を有することも指摘される。例えば、結晶相中へのイオン交換によってガラスセラミック中にもたらされた強化は、ガラス材料中にもたらされた化学強化のように急速には緩和しないことがあり得る。さらには、ガラスセラミック材料中に蓄えられ得る強化は、同じ化学組成のガラス材料中よりも高いことが判明している(これについても、本開示の図面の図9参照)。
【0022】
本開示の実施態様によるカバープレートと関連する有利な特性は、同じ強化プロセスの場合、つまり、例えば同じ強化時間の場合に、ガラスセラミックからなるかまたはそれを含むカバープレートにおいて、同じ化学組成のガラスからなるかまたはそれを含むカバープレートの場合よりも大きな圧縮応力が生じ得ることに基づく。従って、同じ強化プロセスの場合、実施態様によるカバープレート中での最大の引張応力は、相応するガラスセラミックと同じ化学組成を有するガラスからなるかまたはそれを含むカバープレートの場合よりも高い。ここで、それぞれ、強化プロセスを実施する前のガラスもしくはガラスセラミックの組成を意味する。
【0023】
例えば、引張応力の最大値は、ガラスからなるかまたはそれを含むカバープレートと同じ化学組成を有し且つ同じ強化プロセスを実施された、1つの実施態様によるカバープレートの場合、相応のガラスからなるかまたはそれを含むカバープレートにおける最大の引張応力(CT)よりも1.6倍大きいことが判明した。
【0024】
1つの実施態様によるカバープレート、および比較としてガラスセラミックと同じ化学組成のガラスからなるカバープレートについて、最大の引張応力(内部引張応力CT)として以下の値が得られた:
【表1】
【0025】
ガラスセラミックのカバープレートの、ガラスのカバープレートに対するCT値の比の値は1.48である(両方のカバープレートが同じ強化プロセスに供された)。
【0026】
一般に、この比の値は1.3~1.6、殊に1.5までであることができる。
【0027】
CT値におけるこの特徴的な違いは、例えば、図9に示されるような強化プロファイルの図面からも得られる。
【0028】
本開示によるカバープレートにおいて達成可能であり且つ達成されるこの特に良好な強化は、まさに結晶質相への強化、つまりイオン交換に起因する。これは一方では、結晶の単位格子の拡大をみちびき、従ってそれが実施態様による有利なカバープレートの特別な特徴である。さらに、これは例えば実施態様によるカバープレートの場合、いわゆるセットドロップ試験において特に良好な結果が得られることもみちびく。
【0029】
カバープレートの1つの実施態様によれば、結晶相は少なくとも表面近傍層において、つまり換言すれば強化プロセス後に、中心部よりも高い割合の酸化ナトリウムNa2Oおよび/または酸化カリウムK2Oを含む。本発明者らは、表面近傍領域において、結晶相の酸化ナトリウムNa2Oおよび/または酸化カリウムK2Oの含有率は、中心部での結晶相の相応の含有率に対して絶対的に少なくとも1モル%、有利には絶対的に少なくとも2モル%、および殊に有利には絶対的に7モル%まで高められていると考えている。
【0030】
その際、実施態様に応じて、ナトリウムイオンNa+が特に重要であることがある。なぜなら、それはカリウムイオンよりも小さく、従ってより容易に交換されることができ、ひいてはより高い交換深さ、例えばカバープレートの厚さの約0.1~0.4倍を達成できるからである。従って、例えば70μm以上の交換深さが容易に可能である。カバープレートの表面で達成される強化の値は、約600MPa以下、例えば約500MPaである。
【0031】
上述のとおり、カリウムイオンはナトリウムイオンよりも大きいので、カリウムイオンのカバープレート中への拡散は困難になる。ここでは、小さな交換深さが達成されるのだが、カリウム交換によって達成される強化は、ナトリウム交換によるものより高くもある。このようにして、カバープレートの表面での圧縮応力値は1500MPaまで、例えば1100MPaであることができる。
【0032】
1つの実施態様によれば、カバープレートのガラスセラミックは、50体積%を上回る結晶相、有利には70体積%を上回る結晶相、且つ特に好ましくは最高95体積%の結晶相を含む。従って、それは、わずかな残分のみのガラス材料(いわゆる残留ガラス相)を含むガラスセラミックである。このようにして、特に効率的な強化が達成可能であることが判明した。この理由はまだ完全には理解されていないのだが、もしかすると、カバープレートのガラスセラミック中に存在する大きな体積の結晶相が、特に良好な強化を引き起こすことに起因するのかもしれない。換言すれば、イオン交換のためにより多くの結晶もしくは微結晶が使用可能であるほど、より高い強化が達成され得る。従って、上述のとおり、結晶質相中への交換が非常に効率的であることが判明した。本発明者らは、同じ交換率であっても、同じ化学組成のガラス材料に比して、より高く且つより安定でもあるのでより良好な化学強化が得られると考えている。95体積%またはそれ以上までの高い結晶相含有率の場合でも結晶質相または結晶相への良好な強化性は意外であり、なぜなら、今まで、交換の機構はガラス相を通じても起きると考えられていたからであり、なぜならここでは、固い格子サイトを有する結晶構造中よりもイオンは可動性であるはずだからである。しかし、ガラスセラミック材料の高い結晶性にもかかわらず、この実施態様によれば、有利なことに特に良好且つ効率的な強化が可能である。また、高い結晶相含有率にもかかわらず、カバープレートのガラスセラミックの、ひいてはカバープレート自体の全体的な、なおも非常に良好な透過性がもたらされる。
【0033】
上記の結晶相含有率は、正確にどの相が存在するかにはかかわらず、ガラスセラミックの結晶の全体の含有率に関する。好ましい実施態様によれば、ガラスセラミックはキータイトもしくはキータイト混晶を主結晶相として含み、それは一般にガラスセラミックに含まれる結晶相の50体積%より多くが特定の、つまりキータイトの場合はキータイト結晶構造を有する主結晶相として存在すると理解される。有利には、ガラスセラミックに含まれる結晶相の98.5体積%まで、またはさらには100体積%が、キータイト結晶構造を有して、つまりキータイトまたはキータイト混晶として存在し得る。ただし、ガラスセラミックが二次相、例えば結晶で存在する核形成剤を含むことも可能である。
【0034】
さらなる実施態様によれば、前記カバープレートは、4未満、好ましくは3未満の彩度C*を特徴とする。換言すれば、前記カバープレートは非常にわずかな色かぶりしか有さないので、前記カバープレートを通じてその背後にあるディスプレイを、妨げになる色の歪みなく見ることも可能である。彩度C*またはCab *はクロマとしても示され、彩度a*、b*から以下のとおり計算される:
【数1】
【0035】
なおもさらなる実施態様によれば、前記カバープレートは、カバープレートの厚さ0.7mmに対して0.01%~1%のヘイズを特徴とする。ヘイズとは、曇りと理解される。換言すれば、前記カバープレートはわずかな曇りのみで形成される。
【0036】
低い色度および/または低い曇りを達成するために、ガラスセラミックのTiO2含有率を限定することが有利であることがある。TiO2はシリカ系ガラスセラミック、例えばいわゆるリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックの公知の成分であり、殊に効率的な核形成に役立ち得る。ただし、この成分は、それ自体は着色しない場合であっても、曇りによって、得られるガラスセラミックの着色に寄与し得ることが判明している。従って、前記ガラスセラミックは、1つの実施態様によれば、TiO2、有利には最高4質量%のTiO2、特に好ましくは最高3質量%のTiO2を含む。
【0037】
有利には、1つの実施態様によれば、カバープレートに含まれるガラスセラミックはリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックとして形成され、且つその結晶相はキータイト混晶として形成される。リチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックは、ガラスセラミックの製造に関して明らかな利点をもたらす材料としてよく知られている。従って結晶質相(または結晶相)としてキータイト混晶を含むガラスセラミックを形成することはさらに有利であり、なぜなら、リチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックの系における全ての結晶相が強化可能に構成されるわけではないことが判明しているからである。ただし、まさにキータイトもしくはキータイト混晶は明らかに、イオン交換、特にナトリウムに対するリチウム、および/またはカリウムに対するナトリウムおよび/またはリチウムが交換されるイオン交換がしやすい結晶構造を有する。ただし、公知のキータイト混晶のガラスセラミック、特に既に固有の高い強度を有するものの欠点は、これらのガラスセラミックが強い曇りを有することが多いことである。ただし、意外なことに、わずかな曇りと、わずかのみの着色と、さらに高い光透過率を同時に有するキータイト混晶ガラスセラミックを含むカバープレートが可能であることが判明した。本発明者らはこの理由をまだ完全には理解していない。
【0038】
ただし、リチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックおよび結晶相のキータイト混晶についてはまさに、表面近傍層中のキータイト混晶が510Å3を上回る、好ましくは515Å3を上回る単位格子の体積を有する場合に、カバープレートの有利な特性が生じることが判明している。本発明者らは、そのような構成の混晶は、結晶相の光学特性および残留ガラス相の光学特性が、この両方の相の間での屈折率の違いがほとんどない形で互いに最適に合わせられている組成を有すると考えている。これは、曇りの作用を軽減する。
【0039】
一般に特定の実施態様に限定されることなく、1つの実施態様によれば、前記ガラスセラミックは以下の成分:
SiO2 55~75、好ましくは62~72
Al23 18~27、好ましくは18~23
Li2O 2.8~5、好ましくは3~5
を、酸化物基準の質量%で含み得る。
【0040】
これは、ガラスとして充分に良好に溶解可能であり、即座に且つ無秩序に結晶化する傾向はないシリカ系ガラスセラミックである。この一般的な組成範囲において殊に、例えば溶融条件およびセラミック化条件に関してよく知られている公知のリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックが製造可能である。前記ガラスセラミックのリチウム含有率がさらに有利であり、なぜなら、そのようにしてリチウムに対するナトリウムおよび/またはカリウムの交換が可能であるからである。
【0041】
さらなる実施態様によれば、前記ガラスセラミックはMgOを含み、好ましい上限は8質量%である。特に好ましくは、前記ガラスセラミックは4質量%以下のMgOを含む。MgOは、キータイト混晶の形成を促進するので、好ましい成分である。これは、特定の含有率のMgOがセラミック化温度の低下をみちびくことを意味する。しかしながら、MgOの含有率が高すぎる場合、望ましくない二次相、例えばスピネルおよび/またはチタン酸マグネシウムが形成されることがある。これは、得られるガラスセラミック材料の透過性に、殊にその散乱に関して悪影響する。従って、前記ガラスセラミックのMgO含有率は、有利には上述の限界に限定される。
【0042】
1つの実施態様によれば、前記ガラスセラミックはさらにZnOを有利には最高6質量%、殊に有利には2質量%以下含む。そのような含有率のZnOは有利であることができ、なぜなら、ZnOはガラスの粘度を下げるので、ガラスセラミックのグリーンガラスをより容易に溶融可能であるからである。ただし、多すぎる含有率でのZnOは、異相、例えば亜鉛スピネルの形成、ひいては散乱の増加をみちびく。
【0043】
他のアルカリ土類金属酸化物、例えばCaO、BaOも、溶融特性に良い影響を及ぼすことができる。しかしながら、そのような成分RO(アルカリ土類金属の酸化物、並びにZnOを含む)の量は、より大きな散乱、ひいては透過率の低下をみちびき得るような異相の形成を回避するために一般には制限されるべきである。さらに、殊に重アルカリ土類の酸化物、例えばBaO、SrOを使用して、残留ガラス相の屈折率を結晶相に適合させて、透過率を最適化することができる。
【0044】
1つの実施態様によるガラスセラミックの特別な成分はSnO2である。SnO2は溶融物中で例えば清澄剤として作用し、次いでガラスセラミック自体の中では核形成剤として作用することができる。従って、1つの実施態様によれば、好ましくは前記カバープレートのガラスセラミックはSnO2を、さらに有利には最高2質量%含む。少なくとも0.05質量%、且つ有利には最高1.6質量%のSnO2含有率が特に好ましい。より高い含有率のSnO2は、強い失透傾向をみちびき、ガラスセラミックの生産性を悪化させる。
【0045】
ZrO2およびTiO2の成分も、実施態様によるガラスセラミック中で核形成剤として作用することができる。核形成、殊にガラスセラミックの核形成剤の含有率およびその相互の比は、良好な光透過率とわずかな曇りを有する、わずかしか着色されていないシリカ系ガラスセラミックの形成のために重要であり得ることが判明している。従って、前記ガラスセラミックは、1つの実施態様によれば、TiO2、有利には最高4質量%のTiO2、特に好ましくは最高3質量%のTiO2を含む。
【0046】
さらに、ZrO2も、1つの実施態様によるガラスセラミック中で非常に効率的な核形成剤である。従って1つの実施態様によれば、前記ガラスセラミックはZrO2を有利には最高5質量%、殊に有利には最高4質量%、および特に好ましくは少なくとも1.2質量%含む。
【0047】
前記ガラスセラミックはさらに、Fe23を特に0.1質量%まで含み得る。Fe23は、実施態様によるガラスセラミック中で不可避の不純物の形態で存在することが多いが、同時に、核形成のために有益であるので、特定の含有率のFe23も有益であることがある。ただし、できるだけ色的に中性のガラスセラミックを得るために、Fe23の含有率は制限されるべきであり、有利には0.02質量%以下である。殊に、0.0001質量%~0.1質量%、好ましくは0.0001~0.02質量%の含有率が可能である。換言すれば、一般に、1つの実施態様によるカバープレートのガラスセラミックのFe23含有率は0.02質量%未満である。
【0048】
重要な成分であるTiO2とZrO2との比について、1つの実施態様によれば以下の関係が該当する:
0<Σ(TiO2+ZrO2)<9.5%未満、好ましくは1.2<Σ(TiO2+ZrO2)<9.5%。
【0049】
TiO2とZrO2との両方の核形成成分の互いのそのような比で、曇りに関する特に良好な値、およびわずかな着色が達成され得ることが判明している。
【0050】
これは、核形成剤の互いの比にさらなる核形成成分SnO2も取り入れられる場合に一般になおも良好に達成され得る。好ましい実施態様によれば一般に以下が該当する:
0≦SnO2/(ZrO2+TiO2)<0.8、好ましくは0.01≦SnO2/(ZrO2+TiO2)<0.7。
【0051】
殊に、1つの実施態様によるガラスセラミックは以下の成分:
SiO2 55~75、好ましくは62~72
Al23 18~27
Li2O 2.8~5、好ましくは3~5
Na2O 0~4、好ましくは0~2
2O 0~4、好ましくは0~2
MgO 0~8、好ましくは0~4
CaO 0~4、好ましくは0~2
SrO 0~4、好ましくは0~2
BaO 0~4、好ましくは0~2
ZnO 0~6、好ましくは0~2
TiO2 0~4、好ましくは0~3
ZrO2 0~5、好ましくは1.2~4
23 0~2、好ましくは0~0.1
Fe23 0.0001~0.1、好ましくは0.0001~0.02
SnO2 0~2、好ましくは0.05~1.6
を、酸化物基準の質量%で含むことができ、ここで、有利にはTiO2とZrO2との成分の合計について、
0<Σ(TiO2+ZrO2)<9.5%未満、好ましくは1.2<Σ(TiO2+ZrO2)<9.5%
が該当する。
【0052】
1つの実施態様によれば、カバープレートのガラスセラミックは微結晶サイズ120nm以下を有する結晶相を含む。有利には、ガラスセラミックに含まれる微結晶は最高90nm以下である。
【0053】
カバープレートのガラスセラミックがAs23および/またはSb23不含である実施態様が特に好ましい。これらの成分「不含」とは、本開示の範囲においては、これらの成分が不可避の不純物の形態または痕跡量でのみ、質量に対して最高500ppm、好ましくは質量に対して最高100ppmの含有率で存在すると理解される。
【0054】
さらなる実施態様によれば、カバープレートは、セットドロップ試験において特定される少なくとも120cm~200cmまでの落下高さの鋭利衝撃強さを特徴とする。
【0055】
いわゆる「鋭利衝撃」強さとは、本開示の範囲においては、試験されるべきプレートを含有するスマートフォンのダミーが、落下装置を用いて、多数の小さな尖った物体(例えばアスファルト上の砂粒、コンクリートまたはサンドペーパー)が試験されるプレートに突き刺さり得るように粗い表面上に落下することと理解される。換言すれば、これは、1つ以上の鋭い物体での、例えば非常に小さな曲率半径を有するか、もしくは突起の一部の角度が100°未満である粒子による影響である。
【0056】
その際、結晶質相の化学強化を有するキータイト型のガラスセラミックカバープレートは、平均で約165cmの落下高さを達成し、つまり、セラミック化されておらず化学強化が慣例的にガラス相において構築され且つ平均値で77cmの落下高さを有するガラス型の約2倍の高さを達成する。同種のガラスが不利にセラミック化する場合(β高温石英混晶)、結晶相においてもガラス相においても化学強化が充分に形成されることができないので、落下高さは20cmで不十分である。
【0057】
本開示は方法にも関する。カバープレート、殊に1つの実施態様によるカバープレートの製造方法は、以下の段階:
・ 溶融プロセスおよび引き続く熱間成形によりシリカグリーンガラスを製造する段階、
・ 前記シリカグリーンガラスの熱処理段階であって、少なくとも1つの核形成段階が温度範囲690℃~850℃で5分~8時間まで、好ましくは30分~2時間までの時間行われ、少なくとも1つのセラミック化段階が温度範囲780℃~1100℃で3分~60時間まで、好ましくは3分~8時間までの時間行われる、前記熱処理段階、
・ 100質量%~0質量%のKNO3、および0質量%~100質量%のNaNO3、および0質量%~5質量%のLiNO3の組成を有する交換浴中で、前記交換浴の温度370℃~500℃で、且つ2時間~50時間の時間、少なくとも1回のイオン交換を実施する段階
を含む。
【0058】
一般に、1つまたは複数のさらなる交換段階を、例えばさらなる段階において90質量%のKNO3および10質量%のNaNO3~100質量%までのKNO3、または95質量%のNaNO3および5質量%のLiNO3~99質量%までのNaNO3および1質量%のLiNO3の組成を有する交換浴を用いて、温度370℃~500℃で、且つ1時間~10時間までの時間、実施することが可能である。
【0059】
化学強化の特性値CS0(カバープレートの表面での圧縮応力)、CS30(深さ30μmでの圧縮応力もしくは一般に応力)、並びにDoCL(圧縮応力層の深さ、交換深さと称されることもある)の測定は、適した測定装置、例えば測定装置SLP-1000およびFSM6000を用いて特定することができる。ただし、DoCLはイオン交換の深さと同一ではない。
【0060】
従って、本開示は一般に、1つの実施態様による方法において製造されたかまたは製造可能であるカバープレートにも関する。
【0061】
さらに、本開示は、1つの実施態様によるカバープレート、および/または1つの実施態様による方法において製造されたカバープレートの、電子機器における、殊に電子表示装置における、殊にモバイル電子表示装置における、例えばモバイルタッチパネルおよび/またはモバイルデジタル表示装置、例えばスマートフォンまたはスマートウォッチ、および一般にタッチパネルにおける使用に関する。さらに、本開示は、実施態様によるカバープレートおよび/または実施態様による方法において製造されたカバープレートを含む表示装置、殊にデジタル表示装置、例えばタッチパネルまたはスマートウォッチまたはスマートフォンにも関する。
【0062】
交換浴とは、溶融塩と理解され、この溶融塩がガラスまたはガラス物品のためのイオン交換手順において用いられる。本開示の範囲において、交換浴およびイオン交換浴との用語は同義的に使用される。
【0063】
通常、交換浴のために、工業用純度の塩が使用される。これは、例えば交換浴のための出発物質として硝酸ナトリウムだけが使用されているにも関わらず、さらに特定の不純物も交換浴に含まれていることを意味する。この場合、交換浴は、塩、例えば硝酸ナトリウム、または塩の混合物、例えばナトリウム塩とカリウム塩との混合物の溶融物である。ここで、交換浴の組成は、場合により存在する不純物は考慮に入れずに、交換浴の公称の組成に関する形で記載される。従って、本開示の範囲において、100%の硝酸ナトリウム溶融物に言及される場合、これは原料として硝酸ナトリウムのみが使用されたことを意味する。しかしながら、交換浴の硝酸ナトリウムの実際の含有率はここからずれていることがあり、且つこれは通常でもあり、なぜなら、殊に工業原料は特定の割合の不純物を有するからである。しかしながら、これは通常、交換浴の総質量に対して5質量%未満、殊に1質量%未満である。
【0064】
相応して、異なる塩の混合物を有する交換浴の場合、これらの塩の公称の含有率は出発物質の工業的に起因する不純物を考慮に入れずに記載される。従って90質量%のKNO3および10質量%のNaNO3を有する交換浴もわずかな不純物を有し得るが、それは原料に起因し、通常は交換浴の総質量に対して5質量%未満、殊に1質量%未満であるはずである。
【0065】
さらに、交換浴の組成はイオン交換の過程においても変化し、なぜなら継続的なイオン交換によって殊にリチウムイオンがガラスもしくはガラス物品から交換浴中に移動するからである。ただし、エージングによる交換浴の組成のそのような変化も、明確に記載されない限り、ここでは考慮に入れられていない。むしろ、本開示の範囲においては、交換浴の組成を記載する場合は公称の元の組成に合わせられる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】本開示の実施態様によるカバープレート1を示す図である。
図2】本開示の実施態様によるカバープレート1を示す図である。
図3】セットドロップ試験の実施に関する図である。
図4】セットドロップ試験の実施に関する図である。
図5】セットドロップ試験の実施に関する図である。
図6】セットドロップ試験の実施に関する図である。
図7】ガラスセラミックカバープレートのEDX測定の評価を示す図である。
図8】カバープレートのセットドロップ強度の比較を示す図である。
図9】カバープレートの例示的な強化プロファイルを対比する図である。
【実施例0067】
以下で実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【0068】
本発明によるガラスセラミック材料の組成を表1に示す。
【0069】
表1に記載された材料を、ガラス工業において通常の原料を使用して、温度約1600~1680℃で溶融し、清澄した。その際、前記混合物の溶融をまず焼結石英ガラス製のるつぼ内で行い、次いで石英ガラス製の内部るつぼを備えたPt/Rhるつぼに注ぎ、約1550℃の温度で30分間、攪拌することによって均質化した。1640℃で2時間放置した後、約140mm×100mm×30mmの大きさの注型物を注型し、冷却炉内で約620℃~680℃で緩和し、室温に冷却した。その注型物から、ガラス状態での特性を測定するための、およびセラミック化のための試験試料を作製した。
【0070】
セラミック化のために、通常、表1に記載される2段階のプログラムを使用した。この場合、出発ガラスを室温からまずTgを上回る核形成温度に加熱し、そこで核形成のために充分な時間、保持する。引き続き、試料をセラミック化温度に加熱し、そこでも保持する。3段階またはより多くの段階のプログラムも使用され得る(表1の例2)。さらに、保持時間を遅い加熱速度によって置き換えることができる。セラミック化された試料で、XRDを用いて結晶相およびその含有率、並びに可視範囲での透過率τvis(0.7mm厚を有する試料で)、並びにLab系での彩度(標準光源C)を特定した。
【0071】
表1に記載される結晶相含有率は、Panalytical X’Pert Pro Diffraktometer(Almelo、オランダ)でX線回折測定を用いて特定された。X線として、Niフィルタを介して、生成されたCuKα線(λ=1.5060Å)を使用した。粉末試料および固体試料での標準的なX線回折測定を、Bragg-Brentano配置(θ-2θ)下で実施した。X線回折パターンは10°から100°(2θ角)で測定された。相対的な結晶質相の割合の定量化、並びに微結晶サイズの特定を、リートベルト解析を介して行った。該測定は、中心領域の体積割合が明らかに支配的である粉砕された試料材料で行われた。従って、測定された相の割合は、ガラスセラミックの中心部での相の分布に相応する。「V」が付された試料は比較例に相応する。番号のみが付けられている例は、実施態様の例である。
【0072】
【表2-1】
【0073】
【表2-2】
【0074】
【表2-3】
【0075】
強化試験のために、厚さ0.7mmを有するセラミック化されたガラスセラミックプレートを種々の塩浴中で強化した。表2は本発明によるガラスセラミックの強化の際の結晶学的データの変化を示す。
【0076】
【表3】
【0077】
前記試料はセラミック化後にキータイト混晶を主結晶相として含有する(96%のキータイト混晶、3%のZrTiO4)。強化後(温度420~440℃で7.5~18時間)に、全ての試料は選択された塩浴には関わらず、表面近傍層内で、強化されていない試料に対して1%を上回る単位格子の拡大を示した。100%のKNO3中で強化された試料は、表面近傍層内で2つの異なるキータイト混晶構造の形成さえも示し、その両方は強化されていないキータイトに対して拡大された単位格子体積を有する。さらに、全ての試料はDoCL値102μm(100%のKNO3)~154μm(80%のKNO3/20%のNaNO3)を有して強度の増加を示した。CS30についての値は195MPa~360MPaであった。
【0078】
例9による組成を有する試料を同様に製造し、表1の例9に記載されるようにセラミック化し、強化した。それは主結晶相としてネフェリン((Na,K)[AlSiO4])並びに痕跡量のルチルを含有する。XRD測定から、ネフェリン(六法晶構造)について以下の結晶学的データ: a=10.026(5)Å、c=8.372(5)Å、単位格子の体積V=728.8(10)Å3が得られた。強化後(100%のKNO3、500℃で8時間)、カルシライト(ネフェリン混晶系のカリウム置換された端成分、KAlSiO4): a=5.170(5)Å、c=8.730(5)Åが得られた。直接的に比較するために、ここで、両者の構造の単位格子の大きさが異なることに基づき、a軸の格子定数を2倍にしなければならない(従って、単位格子内に同数の式単位がある)。従って、カルシライトについて単位格子体積V=808.3(10)Å3が得られ、それは約10%の拡大に相応する。
【0079】
異なるカバープレートについて、強化条件、ひいては達成される強化パラメータを下記の表に示す。
【0080】
【表4】
【0081】
ここで、CTは内部張力を表し、MPaで記載される。
【0082】
図面の説明
図1は、本開示の実施態様によるカバープレート1の縮尺通りではない模式的な図を示す。カバープレート1は、ここではその厚さd(図1には示されていない)が、カバープレート1の長さlおよび幅bよりも少なくとも一桁小さいという意味で、プレート状または板状に形成されている。カバープレート1は、図1に例示的に描かれるとおり、平坦もしくは平面であってもよいし、または反っているかまたは曲げられたプレートであってもよい。一般に、カバープレートが縁領域においてのみ小さな曲率を有する実施態様も考えられる。長さと幅との両方の寸法が、カバープレート1の両主面または側面(「表面」と称することもある)を決定する。
【0083】
図2は、この開示の実施態様によるカバープレート1の縮尺通りではない模式的な断面図を示す。カバープレート1は、2つの側面10、12を有し(この側面はカバープレート1の「表面」または「主面」として示されることもある)、前記側面10はここでは上面として、前記側面12は下面として形成されている。さらに、カバープレート1の厚さdが示されている。カバープレート1は、両方の側面10、12の間に配置された層101を有し、それは本開示の範囲では「表面近傍層」としても示される。表面近傍層101は、カバープレート1の両方の側面上に形成され、且つ同様に形成されることができ、つまり例えば測定精度の範囲内で同じ厚さを有する。しかし、両方の側面の1つ、例えば側面10に属する表面近傍層101の厚さが、側面12に属する表面近傍層とは異なる厚さを有することも可能であり且つ好ましいことすらある。これは例えば、カバープレート1の化学強化が、不均等な交換が生じるように行われた場合に該当し得る。
【0084】
両方の表面近傍層101の間に中心部102がある。表面近傍層101と中心部102との間に、イオン交換が行われたが例えば圧縮応力には寄与しないさらなる領域(ただし図2には示されていない)が引き続いていることもある。中心部は一般に、カバープレート1の応力が最小の領域である。それに対し、表面近傍層101は、より高い応力を有し、殊にそれらは圧縮応力下にあることができる。カバープレート1は一般に、シリカ系ガラスセラミックを含み、ここでカバープレート1は一般に0.4mm~0.85mmの厚さdを有する。カバープレート1の光透過率τvisは、有利には厚さ0.4mm~0.85mm、殊に有利には厚さ0.7mmについて特定して、380nm~780nmの範囲において80%を上回り、好ましくは85%を上回る。カバープレート1は化学強化によって、少なくとも一方の表面近傍層101もしくは両方の表面近傍層101において、殊にカバープレート1の側面10、11から直角に特定して20μm~70μmの層において、カバープレート1にもしくはこれに含まれるガラスセラミックに含まれる結晶相が、有利には強化プロセス後に平均して、中心部102における結晶相よりも少なくとも1体積%、好ましくは少なくとも2体積%大きい単位格子の体積を有することがみちびかれる。有利には、カバープレート1のガラスセラミックに含まれている結晶相はシリカ系結晶相であることができる。化学強化によって、カバープレート1は、少なくとも250MPa且つ有利には最高1500MPaのCS、および/または少なくとも160MPa且つ有利には最高525MPaのCS30、および/またはカバープレート1に対して、前記カバープレート1の厚さdの少なくとも0.2倍且つ有利には前記カバープレート1の厚さdの0.5倍未満のDoCLを有する。
【0085】
図3~6はセットドロップ強度を特定するためのいわゆるセットドロップ試験の実施に関する。
【0086】
ここで、セットドロップ試験は有利には以下のように実施される:
【0087】
カバープレートを試料収容部に固定し、累積した落下高さから、定義された下地に落下させる。全体構造の概要を図3に示す。図5においてセットドロップ試験において使用されたカバープレートは長さ99mmおよび幅59mmを有し、図4に示されるとおり、試料収容部で試料ダミーと磁気的に固定される。ただし、本開示において述べられる実験については、図4の試料の図解とは異なって、49.5mm×49.5mmのカバープレートのフォーマットが使用され、ここで図3~6における試験実施の原理的な構成はこれによって影響されない。
【0088】
まず、両面接着テープを用いてプラスチック板をモバイル端末、例えばスマートフォン用のホルダの形状および重量を有する金属ハウジングに貼り付ける。この場合、例えば厚さ4.35mm~4.6mmを有するプラスチック板が適している(図5参照)。その貼り付けは好ましくは厚さ約100μmを有する両面接着テープを用いて行われる。次いで、前記プラスチック板の上に両面接着テープ、有利には厚さ295μmを有する両面接着テープ、殊に商標tesa(登録商標)、製品番号05338の両面接着テープを用いて、試験されるべきプレート状のガラス物品に、前記ハウジングもしくはホルダの上端と前記ガラス物品の上端との間で350μm~450μmの間隔が保たれるように貼り付ける。カバープレートはハウジングの枠よりも高く、且つカバープレートとアルミニウムハウジングとの間で直接的な接触があってはならない。モバイル端末へのカバープレートの取り付けを模倣し、且つ現実のモバイル端末、ここでは殊にスマートフォンについての1種の「ダミー」である、そのように得られた177.5gの重量を有する「セット」を、引き続き、DIN A4の大きさの面、いわゆる衝突面の上に、ガラスの側で、ある初速度で垂直方向に、つまり落下方向にゼロから下向きに落下させる。その際、前記衝突面は以下のように製造される: 相応の粒度、例えば粒度60(#60)を有するサンドペーパーを、両面接着テープ、例えば厚さ100μmの接着テープを用いて底板上に貼り付ける。接着テープとして、透明な両面のTesa(10m/15mm)、製品番号05338を利用した。粒度は、本開示の範囲において、欧州研磨材製造業連合(Federation of European Producers of Abrasives (FEPA))の規格に従って定義され、これについての例はDIN ISO 6344、殊にDIN ISO 6344-2:2000-04、下地上の研磨材-粒度分析-パート2: マクロ粒子の粒径分布の特定P12~P220(ISO 6344-2: 1998)も参照のこと。本願で開示される値の場合、アルミニウム下地である底板の重量は約3kgに達する。
【0089】
底板は固くなければならず、好ましくはアルミニウムから、または代替的に鋼から形成される。サンドペーパーは接着テープで完全に取り付けられ、気泡なく貼り付けられなければならない。衝突面は5回の落下試験のためのみ使用してよく、5回の落下試験後に交換されるべきである。試料、つまり得られたセットを試験装置に入れ、2D水準器(円形気泡管)を用いて、前記セットが水平になるように調整し、ここでカバープレートは床に、つまり衝突面の方向に向いている(図6参照)。最初の落下高さは25cmであり、その後、高さ30cmからの落下を行う。まだ破壊が起きない場合、今度はガラスの破壊が起きるまで落下高さを10cmずつ高める。破壊高さ、破壊の起点、並びに破壊の外観を記録する。試験は10~15個の試料で実施され、平均値をとる。
【0090】
図7はガラスセラミックカバープレートの2つの異なる試料でのEDX測定の評価を示す。ここで、カバープレートのガラスセラミック材料は同じ組成であったが、異なる強化プロトコルに供された。
【0091】
上の図では、シリカ系ガラスセラミックを、80質量%のKNO3および20質量%のNaNO3の組成の交換浴中、440℃で18時間化学強化した。EDX評価によれば、試料表面での酸化ナトリウム含有率は約8モル%であることがわかる。中心部または「バルク」102の領域については、約1モル%のNaOの含有率が想定され得る。これは図7(上)においてもそのように示されている。カバープレート中のガラスセラミック含分の上記の強化によって、少なくとも表面近傍領域101においてNa2Oの含有率は明らかに高められることができ、場合によっては絶対的に7モル%まで、または図2からの表面近傍領域101の厚さにわたって有利には平均して絶対的に6モル%まで高められることができる。
【0092】
上記で既に述べたとおり、より大きなカリウムイオンに関しては酸化カリウム含有率のそのような増加が起きることはより困難である。ここでは、ガラスセラミックおよび/または強化プロトコルの正確な構成に応じて、最高点で約30μmの交換深さが達成され、本発明者らは最適なプロセスおよび材料の場合、より大きな交換深さも可能であるはずと考えている。カリウムの交換は実行がより困難ではあるのだが、同時により効率的であるので、例えば1500MPaまで、例えば1200MPaまたは1100MPaのCS0値が可能であると考えられる。図7の下の領域に例示的に示される他の強化プロトコルの場合、交換浴中での非常に高いカリウム濃度で作業された。ここでは交換浴の組成は99.5質量%のKNO3および0.5質量%のみのNaNO3であった。交換浴の温度は420℃であり、強化時間は7.5時間であった。ここで、図7の下の部分の図面からわかるとおり、交換浴中に非常に少ない含有率のNaNO3しか含有されていないにもかかわらず、カバープレートの表面近傍領域101においてNa2O含有率の増加、特に最高点で少なくとも5モル%への増加が生じる。ただし、K2O含有率も明らかに増加し、最高点で辛うじて約3モル%までである。これに対し、中心部102においては、明らかにより少ない含有率のK2OおよびNa2Oが存在し、なぜならここでは相応に交換されなかったからである。
【0093】
領域101と中心部102との間に移行領域があり、ここでは交換が生じ、且つ少なくとも部分的に単位格子体積の拡大も生じたことが示唆される。この「中間領域」は、イオン交換は生じたが、必ずしも圧縮応力の増加が生じる必要はない領域である。
【0094】
最後に図8は、同じ化学組成を有するが異なる結晶相含有率もしくは異なるセラミック化を有する、異なるカバープレートのセットドロップ強度の比較を示す。応力曲線において、102は、カバープレートにおいて応力が最小の領域である中心部を示す。ここで2は、化学強化されたグリーンガラスについて得られた落下高さの結果を示す。3は、結晶相、この場合は高温石英混晶を含み、結晶相中への強化ができないガラスセラミックについての結果を示す。セットドロップ試験において達成された強度は全く不十分である。最後に、4は、ここでは結晶相としてキータイトを含む1つの実施態様によるカバープレートについての結果を示す。セットドロップ試験の結果は以下の表にもまとめる。落下高さはそれぞれcmで記載される。
【0095】
【表5】
【0096】
図9では、カバープレートの例示的な強化プロファイルが互いに対比されており、つまり、1つの実施態様によるカバープレートの強化プロファイルが、同じ化学組成の材料を含むがセラミック化されていないカバープレートについての強化プロファイルと対比されている。ここで、強化プロファイル5は、1つの実施態様によるカバープレートに相応し、強化プロファイル6は、同じ化学組成の材料を含むがガラス状に形成され且つセラミック化されていないカバープレートに相応する。102は、応力が最小値をとる領域である中心部を示す。
【符号の説明】
【0097】
1 カバープレート
10、12 カバープレートの側面
101 カバープレートの表面近傍層
102 中心部
d カバープレートの厚さ
l カバープレートの長さ
b カバープレートの幅
2、3、4 異なる試料集団についてのセットドロップ試験の結果
5 実施態様による強化プロファイル
6 比較例の強化プロファイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】