(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086710
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】顕微鏡イメージングを制御する方法と対応する顕微鏡制御装置および顕微鏡
(51)【国際特許分類】
G02B 21/36 20060101AFI20230615BHJP
G02B 21/00 20060101ALI20230615BHJP
G02B 7/28 20210101ALI20230615BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20230615BHJP
H04N 23/67 20230101ALI20230615BHJP
【FI】
G02B21/36
G02B21/00
G02B7/28 J
G03B13/36
H04N23/67
H04N23/67 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022196847
(22)【出願日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】21213830
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マルクス シェヒター
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ヘスラー
【テーマコード(参考)】
2H011
2H052
2H151
5C122
【Fターム(参考)】
2H011AA06
2H011BA02
2H052AA07
2H052AA08
2H052AA09
2H052AB24
2H052AB25
2H052AC04
2H052AC26
2H052AC34
2H052AD03
2H052AD09
2H052AD16
2H052AD32
2H052AD34
2H052AF14
2H151BB03
2H151BB10
5C122DA12
5C122DA25
5C122EA37
5C122EA59
5C122FA09
5C122FD01
5C122FD06
5C122GA34
5C122HA13
5C122HA88
(57)【要約】 (修正有)
【課題】顕微鏡イメージングを制御する改良された方法と、これに対応する顕微鏡イメージングを制御する顕微鏡制御装置と、それをを含む対応する顕微鏡と、を提供する。
【解決手段】顕微鏡の顕微鏡イメージングを制御する方法であって、方法は、フォーカシング要求を受信しかつイメージングされる試料に関する試料情報を受信するように構成された顕微鏡制御装置を提供するステップS1を含み、顕微鏡制御装置は、試料情報を受信した後に、フォーカシング要求を受信するステップS2に応答して、試料の顕微鏡イメージング用の顕微鏡のフォーカシングを制御するために、受信した試料情報に依存して、予め定義されたフォーカシング設定を起動するステップS3を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡(700)の顕微鏡イメージングを制御する(S0)方法であって、前記方法は、
フォーカシング要求を受信しかつイメージングされる試料(720)に関する試料情報を受信するように構成された顕微鏡制御装置(760)を提供するステップを含み、
前記顕微鏡制御装置(760)は、試料情報を受信した(S1)後にフォーカシング要求を受信した(S2)ことに応答して、前記試料(720)の顕微鏡イメージング用の前記顕微鏡(700)のフォーカシングを制御するために、受信した試料情報に依存して、予め定義されたフォーカシング設定を起動する(S3)、
方法。
【請求項2】
前記試料情報は、3次元の試料空間における1つ以上の試料特性および/または前記試料を担持する試料キャリアの種類および/または前記試料を担持する前記試料キャリアの材料および/または試料染色に関するものである、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記予め定義されたフォーカシング設定を起動する(S3)ために、ユーザ入力によるさらなる情報を前記顕微鏡制御装置によって受信する必要がない、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記予め定義されたフォーカシング設定は、前記試料の定義されたx-y位置における1つ以上の焦点の自動決定を含む、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の焦点のうちの1つ以上は、ユーザによって上書き可能である、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の焦点は、予め定義され起動されたフォーカシング設定に依存するオートフォーカシング法によって決定される、
請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
前記オートフォーカシング法は、各像が異なる焦点位置で捕捉される、前記試料の像スタックを評価する三角測量オートフォーカシング法および像ベースのオートフォーカシング法のうちの少なくとも1つを含む、
請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記像ベースのオートフォーカシング法は、焦点位置の第1の範囲にわたって第1の焦点ステップサイズを使用して各像を異なる焦点位置で捕捉して前記試料の第1の像スタックを生成し、焦点位置の第2の範囲にわたって第2の焦点ステップサイズを使用して前記試料の第2の像スタックを生成するステップを含み、前記第2の焦点ステップサイズは、前記第1の焦点ステップサイズより小さい、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記予め定義されたフォーカシング設定は、経時的な焦点のドリフトに関して補正される、
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記焦点のドリフトは、
前記試料のそれぞれ異なるx-y位置における所定数の像取得位置の後、
像取得の所定数の時点の後、
所定の時間間隔の後、
および請求項4から7までのいずれか1項記載の状況において、予め定義された焦点の数に対して2つ以上の焦点が存在する場合、
のうちの少なくとも1つの場合に補正される、
請求項9記載の方法。
【請求項11】
イメージングされる試料に関する試料情報は、少なくとも2つの異なる試料仕様であってそれぞれがユーザによって選択可能な予め定義された試料仕様において、予めカテゴリ分類されている、
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記予め定義された試料仕様は、
前記試料が前記試料を担持する試料キャリアに付着している(S11)、
前記試料が前記試料を担持する試料キャリアから分離している(S12)、
前記試料が焦点方向へ変化しながら伸びている(S12)、
前記試料が運動しうる(S13)、
前記試料が経時的に変化する表面トポロジを有する(S13)、
のうちの少なくとも1つを有する、
請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記試料が前記試料を担持する前記試料キャリアに付着している(S11)場合、三角測量オートフォーカシング法に基づくオートフォーカシング制御は、試料イメージングに使用される焦点を決定しかつ/または維持するために使用される、
請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記試料が前記試料を担持する前記試料キャリアから分離している(S12)場合、または、前記試料が焦点方向へ変化しながら伸びている場合に、1つ以上の焦点のフォーカスマップが定義される、
請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記フォーカスマップは、予め定義されている数もしくは選択可能な数の焦点および/または焦点の密度で定義される、
請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記フォーカスマップは、各像が異なる焦点位置で捕捉される、前記試料の像スタックを評価する像ベースのオートフォーカシング法によって決定される、
請求項14または15記載の方法。
【請求項17】
前記フォーカスマップを決定した後および前記試料のイメージング中に、三角測量オートフォーカシング法に基づくオートフォーカシング制御を使用して、焦点を維持する、
請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記試料が運動しうる(S13)場合、各像が異なる焦点位置で捕捉され、前記試料の像スタックを評価する像ベースのオートフォーカシング法に基づくオートフォーカシング制御は、前記試料をイメージングするために使用される、
請求項12記載の方法。
【請求項19】
前記顕微鏡制御装置は、予め定義され起動されたフォーカシング設定から独立して選択可能であるそれぞれ異なる顕微鏡イメージングモードを起動可能にする(S0;S4)ように構成されている、
請求項1から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
顕微鏡制御装置(760)であって、
前記顕微鏡制御装置(760)は、1つ以上のプロセッサを備え、顕微鏡(700)の顕微鏡イメージングを制御するように構成されており、前記顕微鏡制御装置(760)は、イメージングされる試料についての試料情報を受信しかつフォーカシング要求を受信するように構成されており、
前記顕微鏡制御装置(760)は、前記フォーカシング要求を受信したことに応答して、前記試料(720)の顕微鏡イメージング用の前記顕微鏡のフォーカシングを制御するために、受信した前記試料情報に依存して、予め定義されたフォーカシング設定を起動するようにさらに構成されている、
顕微鏡制御装置(760)。
【請求項21】
前記顕微鏡制御装置(760)は、請求項1から19までのいずれか1項記載の方法を実行するように構成されている、
請求項20記載の顕微鏡制御装置(760)。
【請求項22】
前記顕微鏡制御装置(760)は、ユーザ入力を受信するように構成された制御ウィジェットを含むグラフィカルユーザインタフェース(200,300)を備え、前記制御ウィジェットは、ユーザが前記フォーカシング要求を受信するための少なくとも1つのフォーカシング制御ウィジェット(310)と、ユーザが前記試料情報を受信するための少なくとも1つの試料情報ウィジェット(212,214,216,218;222,224,226,228,229;232,234,236,238)と、を含む、
請求項20または21記載の顕微鏡制御装置(760)。
【請求項23】
試料(720)の顕微鏡イメージングのための顕微鏡(700)であって、
前記顕微鏡(700)は、オートフォーカシング制御部(745)と、請求項20から22までのいずれか1項記載の顕微鏡制御装置(760)と、を備え、
前記オートフォーカシング制御部(745)は、前記顕微鏡制御装置(760)に動作可能に結合されている、
顕微鏡(700)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡の顕微鏡イメージングを制御する方法と、顕微鏡の顕微鏡イメージングを制御する顕微鏡制御装置と、当該顕微鏡制御装置を含む顕微鏡と、に関するものである。より詳細には、顕微鏡イメージングは取得された像の焦点が合っていることを保証するためにフォーカシング制御を必要とする。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡イメージングにおいて、ユーザは、試料をイメージングするために適切な顕微鏡イメージングパラメータを定義し、試料のフォーカシングを維持するための高度な専門知識を必要とする。顕微鏡イメージングパラメータは、顕微鏡イメージングモード(例えば、広視野または共焦点)およびイメージングされる試料の種類によって異なる。加えて、試料を検査している間に、経時的に焦点および/または試料そのものがドリフトする可能性がある。そのため、近年では、顕微鏡イメージングには専門的な知識がしばしば必要とされている。
【0003】
顕微鏡検査では、三角測量オートフォーカシングの基本方式に基づくオートフォーカシング法が広く用いられており、例えば、独国特許出願公告第102010030430号明細書、米国特許第5136149号明細書および独国特許出願公開第19537376号明細書にて記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、顕微鏡イメージングを制御する改良された方法と、これに対応する顕微鏡イメージングを制御する顕微鏡制御装置と、当該顕微鏡制御装置を含む対応する顕微鏡と、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1による顕微鏡の顕微鏡イメージングを制御する方法によって解決される。本方法は、フォーカシング要求を受信し、イメージングされる試料に関する試料情報を受信するように構成された顕微鏡制御装置を提供するステップを含む。顕微鏡制御装置は、試料情報を受信した後にフォーカシング要求を受信したことに応答して、試料の顕微鏡イメージング用の顕微鏡のフォーカシングを制御するために、受信した試料情報に依存して、予め定義されたフォーカシング設定を起動する。顕微鏡制御装置は、フォーカシング要求およびイメージングされる試料に関する試料情報を受信するように適応化されたグラフィカルユーザインタフェース(GUI)または他の任意のインタフェースを含みうる。顕微鏡制御装置においては、対応する要求または試料情報を、ユーザが直接に受信しうるか、または例えば、ユーザによってトリガされるなどして他のデバイスが間接的に受信しうる。例えば、イメージングされる試料に関する試料情報は、顕微鏡に実装された自動試料検出部から受信されうる。この場合、フォーカシング要求の受信に応答して、顕微鏡制御装置は、自動試料検出部から試料情報を要求し、かつ/または受信することになる。このコンテキストでは、顕微鏡制御装置は、フォーカシング要求を受信する前、受信すると同時に、または受信後に試料情報を受信しうることに留意されたい。次に、顕微鏡制御装置は、受信した試料情報に依存して、予め定義されたフォーカシング設定を起動する。フォーカシング要求は、通常、ユーザによって入力され、直接にまたは間接的に、顕微鏡制御装置によって受信されうる。
【0006】
「予め定義された焦点設定の起動」とは、さらなるユーザ入力を必要とすることなく取得された像の焦点が合うように、イメージングされる試料に対して適応化された、予め定義されたフォーカシング設定が、顕微鏡のフォーカシング装置に適用されることを意味する。この予め定義されたフォーカシング設定の起動は、本発明の一態様でもあり、かつ予め定義されたフォーカシング設定、つまり顕微鏡イメージング中にイメージングされる試料に対して適応化された顕微鏡フォーカシング装置の構成要素のすべてのパラメータの設定を実現し制御するために、顕微鏡のこうしたフォーカシング装置に動作可能に結合された顕微鏡制御装置によって実行される。
【0007】
どのようなフォーカシングストラテジ(例えば像取得中にフォーカスマップを作成するかまたは焦点補正を実施するか)およびどのようなフォーカシング機構(例えば像ベースまたは反射ベース)を使用するか、かつ/または像ベースのオートフォーカシング法に対してどのような捕捉範囲を定義すべきか、かつ/またはフォーカスマップ生成に対して試料上または試料内のどこに、いくつの焦点を設定すべきか、かつ/または焦点ドリフトをどのように補正するか、などの決定をユーザに求める代わりに、予め定義されたフォーカシング設定を起動することによって、顕微鏡制御装置が決定を開始する。したがって、本発明の実施形態は、顕微鏡のフォーカシングの概念に関する先験的な知識を持たないユーザであっても、イメージングされる試料の種類を定義するだけで、焦点面周辺の焦点の合った状態にあるかつ/またはzスタックの顕微鏡像を取得し、ひいては、必要なすべてのフォーカシング設定が顕微鏡制御装置によって自動的になされることを可能にする。しかしながら、このプロセスはユーザが設定メニューに入力することによって設定を上書きする可能性および/またはユーザが自身の知識およびニーズに従って予め定義されたフォーカシング設定をさらに調整する可能性を排除することを意味するものではない。
【0008】
一実施形態においては、顕微鏡制御装置によって受信される試料情報は、3次元の試料空間における1つ以上の試料特性および/または試料を担持する試料キャリアの種類および/または試料を担持する試料キャリアの材料および/または通常は蛍光顕微鏡検査で使用される試料染色に関する。3次元の試料空間における試料特性は、とりわけ焦点方向への、一定のまたは変化しながらの試料の伸び、試料キャリアに取り付けられまたはそこから分離した試料、試料キャリアに付着した試料、とりわけ焦点方向へ運動しうる試料、または経時的に変化する表面トポロジを有する試料に、特に関する。試料を担持する試料キャリアの種類は、特にスライド、ペトリ皿、ウェルプレート、マルチチャンバ、ラボオンチップなどに関連している。また、屈折率に関しては、試料キャリアの材料も影響を及ぼし、典型的な材料は、ガラスまたはPMMAなどのプラスチックである。試料特性については、試料が生きているか固定されているかを識別することも有用でありうる。試料染色の知識は、像を取得する所望の発光波長を選択する際に重要となりうる。
【0009】
一実施形態では、予め定義されたフォーカシング設定を起動するために、さらなる情報、特にユーザ入力によるさらなる情報を、顕微鏡制御装置によって受信する必要がない。例えば、ユーザがフォーカシングを起動し、顕微鏡制御装置が、対応するフォーカシング要求を受信したことに応答して、ユーザ入力および/または自動試料検出部から受信された試料情報によって規定される、定義された試料タイプと一致する予め定義されたフォーカシング設定を起動する。予め定義されたフォーカシング設定を起動するために、ユーザからのさらなる情報は必要ない。これにより、顕微鏡のユーザフレンドリな操作性が飛躍的に向上し、経験の浅いユーザでも顕微鏡を操作できるようになる。
【0010】
一実施形態では、予め定義されたフォーカシング設定は、試料の定義されたx-y位置における1つ以上の焦点の自動的なシステムベースの決定を含む。
【0011】
試料キャリアの底部に直接に付着している、または一定の表面トポロジを有する付着試料の場合、焦点は1つのみで十分でありうる。焦点は一定に維持されなければならず、定義されたx-yの範囲にわたってフォーカシングを維持する必要がある。
【0012】
定義されたx-yの範囲にわたる1つ以上のこのような焦点を含むフォーカスマップは、典型的には、分離試料の場合に適用される。
【0013】
動的試料の場合、試料が運動するため、焦点、特にそのz値が、特定の時点で像が撮影される試料のx-y位置に依存するフォーカスマップを定義することがほぼ不可能であり、このため、焦点を事前に決定することができない。さまざまな試料タイプに応じたフォーカシング設定の定義法については、詳細な説明の項でより詳細に記載する。
【0014】
別の実施形態では、1つ以上の焦点のうちの1つ以上が、特定の試料のイメージング中に培った自身の知識または経験および自身のニーズに従って、ユーザによって上書き可能である。
【0015】
さらなる実施形態においては、1つ以上の焦点が、予め定義され起動されたフォーカシング設定に依存するオートフォーカシング法によって決定される。一実施形態においては、オートフォーカシング法は、各像が異なる焦点位置で捕捉される、試料の像スタックを評価する三角測量オートフォーカシング法および像ベースのオートフォーカシング法のうちの少なくとも1つを含む。オートフォーカシング法については、詳細な説明の項でより詳細に説明する。
【0016】
一実施形態では、像ベースのオートフォーカシング法は、焦点位置の第1の範囲にわたって第1の焦点ステップサイズを使用して各像を異なる焦点位置で捕捉して試料の第1の像スタックを生成し、焦点位置の第2の範囲にわたって第2の焦点ステップサイズを使用して試料の第2の像スタックを生成するステップを含み、第2の焦点ステップサイズは第1の焦点ステップサイズよりも小さい。第1の範囲にわたって第1の「粗い」焦点ステップサイズを適用することで、短時間で第1の「粗い」フォーカスレベルが得られる。これを起点にして、第1の「粗い」フォーカスレベルの周囲に、より小さい第2の焦点ステップサイズをより小さい第2の範囲にわたって適用することで、最適なフォーカスレベルを高精度に決定することができる。
【0017】
一実施形態では、予め定義されたフォーカシング設定が経時的な焦点のドリフトに関して補正される。特に、焦点のドリフトは、試料のそれぞれ異なるx-y位置における所定数の像取得位置の後、所定数の像取得の時点の後、所定の時間間隔の後、および予め定義された焦点の数に対して2つ以上の焦点が存在する場合、のうちの少なくとも1つの場合において補正される。ドリフト補正については、詳細な説明の項でさらなる詳細を記載する。
【0018】
一実施形態では、イメージングされる試料に関する試料情報は、少なくとも2つの異なる試料仕様であって特にユーザによって選択可能な予め定義された試料仕様において、予めカテゴリ分類されている。これにより、イメージングされる試料の試料情報を定義する際のユーザの利便性が向上する。
【0019】
予め定義された試料仕様、特に3次元の試料空間における試料特性に関しては、試料を担持する試料キャリアに付着している(「付着」試料)、試料を担持する試料キャリアから分離している、かつ/または試料が焦点方向へ変化しながら伸びている(「分離」試料)、試料が特に焦点方向へ運動しうるものである、かつ/または試料が経時的に変化する表面トポロジを有する(「動的」試料)、のうちの少なくとも1つを有しうる。
【0020】
さらなる実施形態では、試料が「付着」している場合、三角測量オートフォーカシング法に基づくオートフォーカシング制御が、試料イメージングに使用されるフォーカスレベルを決定しかつ/または維持するために使用される。
【0021】
別の実施形態では、試料が「分離」している場合、1つ以上の焦点のフォーカスマップが定義される。一実施形態では、フォーカスマップは、関心領域(「ROI」)内の予め定義された数もしくは選択可能な数の焦点および/または焦点の密度で定義される。
【0022】
さらに、フォーカスマップは、各像が異なる焦点位置で捕捉される、試料の像スタックを評価する像ベースのオートフォーカシング法によって決定されうる。このような像ベースのオートフォーカシング法は、試料のイメージング中に再適用されることもある。フォーカスマップを決定した後や、試料のイメージング中に、三角測量オートフォーカシング法に基づくオートフォーカシング制御が時間節約方式で焦点を維持するために使用されうる。さらなる詳細については、詳細な説明の項に記載する。
【0023】
別の実施形態では、試料が「動的」である場合、各像が異なる焦点位置で捕捉され、試料の像スタックを評価する像ベースのオートフォーカシング法に基づくオートフォーカシング制御が、所与の時点での試料のイメージングにとって最適な焦点を見つけるために使用される。
【0024】
別の実施形態では、顕微鏡制御装置が、予め定義され起動されたフォーカシング設定から独立して選択可能であるそれぞれ異なる顕微鏡イメージングモードを起動可能にするように構成されている。このような顕微鏡イメージングモードは、広視野、共焦点または光シート顕微鏡を有しうる。蛍光顕微鏡イメージングの場合、2つの異なる顕微鏡イメージングモードは、広視野顕微鏡検査および共焦点顕微鏡検査でありうる。本実施形態で特に有用なのは、予め定義されたフォーカシング設定が変更なしにまたは顕微鏡制御装置によって自動的に適応化されるので、ある顕微鏡イメージングモードから別の顕微鏡イメージングモードへの変更の際に、ユーザが異なるフォーカシング設定を指定する必要がないことである。
【0025】
本発明の別の態様においては、顕微鏡制御装置が提供される。当該顕微鏡制御装置は、1つ以上のプロセッサを備え、顕微鏡の顕微鏡イメージングを制御するように適応化されており、顕微鏡制御装置は、イメージングされる試料についての試料情報を受信しかつフォーカシング要求を受信するように構成されており、前記顕微鏡制御装置は、フォーカシング要求を受信したことに応答して、試料の顕微鏡イメージング用の顕微鏡のフォーカシングを制御するために、受信した試料情報に依存して、予め定義されたフォーカシング設定を起動するようにさらに構成されている。
【0026】
一実施形態では、顕微鏡制御装置は本発明による方法を実行するように構成されている。
【0027】
一実施形態では、顕微鏡制御装置は、ユーザ入力を受信するように構成された制御ウィジェットを含むグラフィカルユーザインタフェースを備え、前記制御ウィジェットは、ユーザがフォーカシング要求を受信するための少なくとも1つのフォーカシング制御ウィジェットと、ユーザが試料情報を受信するための少なくとも1つの試料情報ウィジェットと、を含む。
【0028】
本発明の別の態様においては、試料の顕微鏡イメージングのための顕微鏡が提供される。当該顕微鏡は、フォーカシング装置と顕微鏡制御装置とを備え、フォーカシング装置は顕微鏡制御装置に動作可能に結合されている。
【0029】
方法および方法の実施形態の記載は、本発明および対応する実施形態の他の態様による顕微鏡制御装置ならびに顕微鏡の記載を示していることにも留意されたい。
【0030】
各実施形態の上記の特徴は、全体的または部分的に組み合わせて、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の概念の範囲に依然として属する他の実施形態を実現できることに留意されたい。
【0031】
本明細書で使用されるように、用語「および/または(かつ/または)」は、関連する記載項目のうちの1つまたは複数の項目のあらゆるすべての組み合わせを含んでおり、「/」として略記されることがある。
【0032】
さらなる実施形態およびその利点につき、以下の図に関連して以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】顕微鏡の顕微鏡イメージングを制御するためのフローチャートである。
【
図2】イメージングされる試料の試料情報を受信するために構成されたグラフィカルユーザインタフェースを示す図である。
【
図3】フォーカシング要求を受信するために構成されたグラフィカルユーザインタフェースを示す図である。
【
図4】第1の試料仕様に対応するグラフィカルユーザインタフェースを示す図である。
【
図5】第2の試料仕様に対応するグラフィカルユーザインタフェースを示す図である。
【
図6】第3の試料仕様に対応するグラフィカルユーザインタフェースを示す図である。
【
図7】試料を顕微鏡イメージングするための顕微鏡の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
各図は包括的に記載しており、同じ参照番号は同一または少なくとも機能的に同一の要素を示している。
【0035】
図1は、本発明の実施形態に従って適応化されうるフローチャートである。顕微鏡イメージングは、それぞれ異なる顕微鏡イメージングモードで実施することができ、本発明は異なる顕微鏡イメージングモードを起動しうる顕微鏡を用いることで非常に有利であることが判明している。顕微鏡イメージングモードは、明視野もしくは透過光を含む広視野イメージングモードおよび共焦点イメージングモード、または光シートイメージングモードを有しうる。本発明の実施形態において、異なる顕微鏡イメージングモード、特に広視野イメージングモードおよび共焦点イメージングモードを、同じ顕微鏡、とりわけ種々異なる試料タイプの試料をイメージングする蛍光顕微鏡で選択することが可能である。
【0036】
第1のステップでは、ステップS0にて、ユーザが顕微鏡イメージングを開始する。蛍光イメージングの場合、ユーザは蛍光チャネル、すなわち観察すべき染色試料の発光波長を選択しうる。ユーザは、顕微鏡イメージングモードも選択しうる。
【0037】
次のステップS1では、イメージングされる試料の試料情報を、ユーザまたは自動試料検出部のいずれかが入力する必要がある。
図1の実施形態では、3つの異なる種類の試料情報S11,S12,S13が存在すること、または入力された試料情報を3つの異なる種類の試料に割り当てることができること、または3つの異なる種類の予め定義された試料仕様のうちの1つを選択できることが想定されている。
図2に関連してさらに詳細に記載するように、試料仕様の数は好ましくは2つ以上とすることが可能であることに留意されたい。
【0038】
次のステップS2では、顕微鏡制御装置は、ユーザによって直接にもしくは間接に、または必要な試料情報が完全に受信されたことの直接的な結果として、フォーカシング要求を受信する。
【0039】
次のステップS3では、受信された試料情報S11またはS12またはS13に依存して、予め定義されたフォーカシング設定を起動する。さまざまな使用可能な設定につき、以下の図に関連して以下に記載する。
【0040】
一実施形態では、ステップS1およびS2は共にユーザ入力によって実行される。S2でユーザがフォーカシング要求を送信してフォーカシングを起動すると、S1でユーザが定義した試料タイプに一致する予め定義されたフォーカシング設定が起動される。
【0041】
イメージングされる試料の種類を定義するようにユーザ(または自動試料検出部)への促しが行われて、必要な試料情報を受信する前にフォーカシング要求が送信され、その後予め定義されたフォーカシング設定が選択されるよう、ステップS1とステップS2とを入れ替えてもよいことに留意されたい。
【0042】
一実施形態では、ステップS4において、ユーザは試料の顕微鏡イメージング用の顕微鏡イメージングモードを選択しうる。さらに、ステップS5で、ユーザは、zスタックイメージングを適用すること、すなわち各像を異なる焦点位置で捕捉しながら試料の複数の像を生成して焦点方向で実質的に平行な像スタックを取得し、そこから3次元像を生成できることを指定しうる。
【0043】
ステップS4およびS5は、受信された試料情報に依存する予め定義されたフォーカシング設定を選択するプロセスに影響を及ぼさないことに留意されたい。一方で、本発明の実施形態において、便宜上、ユーザは予め定義されたフォーカシング設定の特定の設定を上書きすることができる。
【0044】
一実施形態において、試料情報は、3次元の試料空間における1つ以上の試料特性および/または試料を担持する試料キャリアの種類および/または材料および/または蛍光顕微鏡検査用の試料染色に関連するものである。ユーザの利便性を向上させるために、多数の試料特性/仕様のうちの1つおよび/または種々の試料キャリアのうちの1つが、グラフィカルユーザインタフェースを通じてユーザによって選択可能である。本実施形態については、
図2に関連してより詳細に記載する。
【0045】
ステップS1にて受信された試料情報に依存して、予め定義されたフォーカシング設定がステップS3で起動された後、ユーザ入力によるさらなる情報を受信する必要はないため、ユーザには、イメージングされる試料に関するユーザの基本的な知識以外に、顕微鏡検査のユーザとしての豊富な使用経験は必要ない。
【0046】
図2は、グラフィカルユーザインタフェース200の概略図であり、より詳細には、本発明の実施形態による顕微鏡イメージング用の顕微鏡で使用されるグラフィカルユーザインタフェースのメニューの一部である。グラフィカルユーザインタフェースのこの部分は、主に予め定義されたフォーカシング設定を選択するために必要な試料情報の入力に関するものである。この実施形態において、試料情報は、試料キャリアの種類および/または試料キャリアの材料/キャリアタイプ、予め定義された試料仕様/特性で予めカテゴリ分類されている3次元の試料空間における特定の試料特性および蛍光顕微鏡検査の場合の試料染色特性から構成されている。
【0047】
図2に示されているグラフィカルユーザインタフェース200は、3つのメニューバー210、220および230を有する。第1のメニューバー210および第2のメニューバー220は、ユーザが、イメージングされる試料と一致するキャリアタイプおよび試料特性を選択することを助ける。メニューバー210は、例示的にスライド212、ペトリ皿214、ウェルプレート216およびマルチチャンバ218でありうる、多数のさまざまな種類のキャリアタイプから構成されている。ユーザはまた、キャリアタイプのそれぞれに割り当てられたメニューポイント217を選択して、試料キャリアの材料を指定することができる。キャリアタイプおよび材料の選択により、ソフトウェアは、フォーカシング設定に使用される適切な焦点の分布または焦点設定用の適切な試料範囲の選択を決定することができる。
【0048】
メニューバー220により、ユーザは、予め定義された異なる試料仕様/特性を、本実施形態においては例示的に「付着」222、「分離」224、「動的」226、加えて「固定されている」228および「生きている」229の中から選択することが可能になる。
【0049】
仕様「付着」222は、例えばカバースリップまたはウェルプレートの底面上の2次元細胞培養物のような、実質的にトポロジがないかまたは焦点方向へ実質的に一定に伸びている、実質的に平坦な試料であることが特徴である。通常、「付着」試料は、試料キャリアに直接に取り付けられている。
【0050】
「分離」試料224は、例えばカバースリップなしでスライドに載置された組織のような、焦点方向へ変化しながら伸びているかつ/または試料キャリアの底部から分離している試料であることが特徴である。両方の影響により、試料表面にわたって焦点が変化する。本明細書で使用する定義では、「分離」試料は経時的には運動しない。
【0051】
対照的に、「動的」試料226は、経時的に運動し、特に経時的に試料キャリア底部に近づいたり試料キャリア底部から遠ざかったりしうる試料、または試料表面のトポロジが経時的に変化する試料であることが特徴である。
【0052】
3つの試料仕様222,224,226に加えて、ユーザは、試料が「固定されている」228かまたは「生きている」229かを選択しうる。この仕様は、ソフトウェアによって使用され、適切な場合に別のフォーカシング設定に切り替えられうる。例えば、ユーザが生きている試料229に対して「分離」試料特徴224を選択した場合、ソフトウェアは、「分離」試料224を設定する代わりに、「動的」試料226の特徴に対する予め定義されたフォーカシング設定を適用しうる。
【0053】
メニューバー230は、ユーザが試料染色の種類を選択することを可能にする。ユーザは、特に試料染色タイプ232,234,236,238のうちの1つを選択することによって、染料を選択しうる。これにより、ユーザは、関心のある試料の詳細を表す特定の蛍光チャネルまたは発光波長を選択する。例えば、細胞核または細胞壁は、異なる蛍光チャネルまたは発光波長でイメージングされうる。
【0054】
図3は、グラフィカルユーザインタフェース300の実施形態を示す概略図であり、より詳細には、フォーカシングの起動に関連するグラフィカルユーザインタフェースの一部である。
図3のグラフィカルユーザインタフェース300には、ユーザが選択可能なフォーカシングを要求するためのメニューポイントまたはウィジェット310である「F」が設けられている。
図2の実施形態による試料の定義が完了していない場合、フォーカシング要求310の選択に応答して、ユーザは試料の定義を行うように促されることとなる。メニューポイント310を選択することは、
図1のステップS2によってフォーカシング要求を送信することに対応する。
【0055】
蛍光顕微鏡の実施形態では、ユーザは、顕微鏡イメージングモード、例えば広視野イメージングまたは共焦点イメージングのいずれかをさらに選択しうるかまたは既に選択している。さらに、ユーザは
図3のグラフィカルユーザインタフェース300のメニューポイント「3Dイメージング」320を選択して、3次元イメージングを選択しうる。メニューポイント320を選んだとき、最適な焦点レベル周辺の焦点方向におけるzスタック像が取得され、これらの像はさらに処理されて3次元像を生成する。
図1のステップS5は、ユーザが
図3のメニューポイント320を選択することに対応する。
【0056】
図2~
図6に描かれているが、本明細書に記載されていない任意のメニューポイントまたはウィジェットは、広くは像取得に関連するものであるとしても、本明細書に記載する本発明には関連しない場合がある。
【0057】
図4は、グラフィカルユーザインタフェース400の実施形態を示す概略図であり、より詳細には、選択された試料仕様「付着」222(
図2参照)による、予め定義されたフォーカシング設定に関連するグラフィカルユーザインタフェースの一部である。既に上述したように、ユーザは、自身の経験およびニーズに従って、予め定義されたフォーカシング設定を上書きまたは調整することができる。図示されている例では、ユーザは、グラフィカルユーザインタフェース400のウィジェット410を選択することにより、任意選択的に「付着」型フォーカスメニューを開くことができる。図示されている例では、ユーザは、ドリフト補正に関連するデフォルト設定を編集することができる。ドリフト補正のオプションをより詳細に論じる前に、「付着」試料の場合の予め定義されたフォーカシング設定について説明する。
【0058】
「付着」試料の場合の予め定義されたフォーカシング設定(以下「付着型フォーカシング設定」という)は、以下のとおりである。「付着」試料は焦点方向でトポロジを変化させないので、試料のx-y位置における単一焦点が例えば三角測量オートフォーカシング法によって決定され、この焦点が、試料全体または試料のさまざまな部分のイメージング用のフォーカスレベルとして使用されうる。三角測量オートフォーカシング法は、例えば、独国特許出願公告第102010030430号明細書に記載されているごとく、試料の顕微鏡像の焦点が合うように付着試料の焦点を見つけ保持することができる。このような三角測量オートフォーカシング法およびデバイスの設計、構造、動作および機能の詳細については、独国特許出願公告第102010030430号明細書を明示的に参照されたい。このような三角測量オートフォーカシングデバイスのオートフォーカシング検出器は、焦点方向において、選択された(最適な)焦点/レベルからの試料のあらゆる偏差を検出することができる。フィードバック制御により、顕微鏡対物レンズに対する試料/試料キャリアの距離の変更に対応することによって、(最適な)焦点/レベルからのあらゆる偏差を反転させることができる。表記の簡素化のために、このような三角測量オートフォーカシング制御を以下では「AFC」と略記する。
【0059】
ウィジェット410をクリック/選択することによって付着型フォーカスメニューを開くことにより、ユーザはドリフト補正に関連するデフォルト設定を編集することができる。焦点のドリフトは、温度変化、移動もしくは振動のような外部影響によるものまたは試料キャリアの運動によるもののいずれかによって発生しうる。顕微鏡イメージングでは、通常、実験に応じて、予め定義された時間間隔(例えば、0.1秒~5分までの時間間隔が考えられる)の後に像取得が繰り返される。像取得の時間間隔は、デフォルトで予め定義されているか、ユーザによって定義されているかのいずれかである。ドリフト補正はn番目の時点ごとに実施されうる。デフォルトではnは1とすることができるが、他の設定も可能である。メニューポイント420を選択することによって、ユーザは、イメージング中のドリフト補正の頻度を減らすために、nの数を増大させることもできる。さらに、ドリフトは、像取得の位置ごとに(n=1)または像取得の第2の位置ごとにというように、通常はn番目の位置ごとに補正されうる。本実施例では、デフォルト値は位置ごとにドリフト補正することになっているが、この値はメニューポイント430によりユーザが編集することができる。
【0060】
ドリフトは、AFCデバイスなどのフォーカス保持デバイスによって効果的に補正することができる。このデバイスは高速であり、かつ生きている試料を傷つけたり、白化させたりするような可能性のある光を試料に照射することがない。ドリフト補正については、(z方向が焦点方向に対応する)参照zレベルを定義する必要があり、これは、典型的には試料のフォーカスレベルである。試料の3次元イメージング像のzスタックを取得するとき、zスタックの上下のzリミットは定義されたフォーカスレベルを基準とする。像取得の間、AFCは予め定義されたフォーカスレベルを調整してドリフトを補正する。zスタックの上下のzリミットがフォーカスレベルを基準とするため、ドリフト補正されたzスタックが取得されうる。
【0061】
図5は、グラフィカルユーザインタフェース500の実施形態の概略図であり、より詳細には、「分離」試料の場合の、予め定義されたフォーカシング設定(以下「分離型フォーカシング設定」という)に関連するグラフィカルユーザインタフェースの一部である。既に上述したように、ユーザは、自身の経験またはニーズに従って、フォーカシング設定を上書きまたは調整することができる。図示されている例では、ユーザは、グラフィカルユーザインタフェース500の「分離」型メニューポイント510を選択することにより、分離型フォーカスメニューを任意選択的に開くことができる。メニューポイント510を選択することによって生じるユーザオプションについて論じる前に、「分離」試料用の予め定義された分離型フォーカシング設定について説明する。
【0062】
上述したとおり、「分離」試料は、焦点方向へ変化しながら伸びていて、かつ/または試料キャリアの底部から分離しており、このため、焦点方向におけるトポロジの変化を想定しなくてはならない。一実施形態では、このような試料に対してフォーカスマップが生成され、フォーカスマップは試料のx-y領域にわたって1つ以上の焦点を含み、これにより、フォーカスマップは特に高密度の焦点を用いて試料トポロジを近似しようとする。フォーカスマップの焦点は、像ベースのオートフォーカシング法によって決定されうる。このオートフォーカシング法は、各画像を異なる焦点位置で捕捉して、試料の像スタックを評価する。画像のそれぞれについてのメトリック値を計算するメトリックが像スタックの像のそれぞれに適用され、それぞれ異なるメトリック値が対応する像の異なる像鮮明性または暈けに関連付けられている。オートフォーカシングに適したこのようなメトリックは、かなりの数が存在し、勾配法、ウェーブレット分解法、コントラスト法、自己相関法などに基づくメトリックがある。このような像ベースのオートフォーカシング法によって、試料の所与のx-y位置における最適な焦点が決定されうる。
【0063】
時間と処理電力とを節約するために、像ベースのオートフォーカシング法はAFCと組み合わせることもでき、これにより、AFCが発見した焦点を開始点として決定することによって適切な開始点または間隔の定義が可能となり、開始点周辺のz領域で、像ベースのオートフォーカシング用に像スタックが取得される。
【0064】
付加的にまたは代替的に、像ベースのオートフォーカシング法は、焦点位置の第1の範囲にわたって第1の焦点ステップサイズを使用して各像を異なる焦点位置で捕捉して試料の第1の像スタックを生成し、焦点位置の第2の範囲にわたって第2の焦点ステップサイズを使用して試料の第2の像スタックを生成するステップを含み、第2の焦点ステップサイズは第1の焦点ステップサイズよりも小さい。この実施形態では、第1の「粗い」焦点測定サイクルが実行されて第1の「粗い」焦点/レベルが決定され、次に、より高い精度で最適な焦点/レベルを得るために、当該第1の焦点/レベルのz領域において、より小さいステップサイズである第2の焦点測定サイクルが実行される。第2の範囲は、第1の範囲よりも小さいほうが好ましい。
【0065】
予め定義された分離型フォーカシング設定は、上述のような像ベースのオートフォーカシング法によって、所定数のフォーカスマップまたは焦点の密度を決定する。この方法も、上述のようなAFCと組み合わされうる。グラフィカルユーザインタフェース500のメニューポイント510を選択して、ユーザはデフォルト設定を編集することができる。例えば、ユーザは、「低」520、「中」522、「高」524および「非常に高い」526などを、異なるフォーカスマップ密度の中から選択しうる。
【0066】
さらに、ユーザは、ドリフト補正に関連するデフォルト設定を変更しうる。ここでも、デフォルトで、ドリフト補正は像取得の時点ごとに実施される。この設定は、メニューポイント530を適宜選択することによって、ドリフト補正がn番目の時点ごとに実施されるように変更することができる。加えて、この例では、ドリフト補正は(デフォルトにより)フォーカスマップの焦点ごと、または(メニューポイント532のユーザ選択によって)第2番目、第3番目ごとのように、または通常はn番目の焦点でのみ実施されうる。特にドリフトが少ない場合においては、n>1を選択すると像取得の時間を節約することができる。
【0067】
さらに、
図5に示されているグラフィカルユーザインタフェース500のメニューポイント540を選択することにより、ユーザは、
図2に示されているグラフィカルユーザインタフェース200のメニューバー230で選択された染料に従って、分離型フォーカシング設定に使用する発光波長を選択することができる。
【0068】
最後に、メニューバー550は、フォーカスマップ作成に使用されるすべての焦点をそのx-y位置を用いて示している。単一の焦点のすべて、例えば第2の焦点552が、ユーザによって上書き可能である。
【0069】
図5のグラフィカルユーザインタフェース500によって提供される別のオプションは、実験の開始時に自動的にフォーカスマップを作成するか(デフォルトで「実験の開始時:On Experiment Start」)、またはユーザの要求に応じて(「今すぐ開始:Now」)フォーカスマップを作成するかのいずれかである。
【0070】
図6は、グラフィカルユーザインタフェース600の実施形態の概略図であり、より詳細には、「動的」試料の場合の、予め定義されたフォーカシング設定(以下「動的フォーカシング設定」という)に関連するグラフィカルユーザインタフェースの一部である。既に上述したように、ユーザは、自身の経験またはニーズに従って、フォーカシング設定を上書きまたは調整することができる。図示されている例では、ユーザは、グラフィカルユーザインタフェース600の「動的」メニューポイント610を選択することにより、動的フォーカスメニューを任意選択的に開くことができる。メニューポイント610を選択することによって生じるユーザオプションについて論じる前に、予め定義された動的フォーカシング設定について説明する。
【0071】
上述したように、「動的」試料は、特に焦点方向へ運動しうるものおよび/または試料のトポロジが経時的に変化するものである。したがって、最適な焦点を像取得の任意の時点で決定できなければならない。焦点決定は、像ベースのオートフォーカシング法、特にこのような高速の方法によって実施される。像ベースのオートフォーカシング法については、分離型フォーカシング設定に関連して上述したとおりである。
【0072】
メニューポイント610を選択することにより、ユーザは、動的フォーカシング設定のデフォルト設定を編集することができる。例えば、ユーザは、選択された蛍光チャネルを変更するため、すなわち、別の蛍光発光波長に切り替えて試料を観察するために、メニューポイント620を選択することができる。さらに、メニューポイント630を選択することにより、ユーザはデフォルト設定を変更することができ、これに従って像ベースのオートフォーカシング法が像取得の時点ごとに実行される。「ソフトウェアオートフォーカシング」は、実装された高速像ベースのオートフォーカシング法を指定する。試料の運動度が低い場合、nを1より大きくし、n番目の時点ごとにのみソフトウェアオートフォーカシングを実行するのが効果的である。
【0073】
メニューポイント640を選択することにより、実装されたソフトウェアオートフォーカシングは、像取得のためにユーザによって選択された関心領域(ROI)ごとの予め定義された位置で実行されることになる。対照的に、メニューポイント650を選択して、nの値(本例ではn=4)を選択することにより、ソフトウェアオートフォーカシングが各ROIのn番目の位置ごとに実行されうる。
【0074】
図7は、本発明の実施形態による試料を顕微鏡イメージングするための顕微鏡700の概略図である。
図7は、2つの検出ユニット、すなわち、第1の検出ユニット780aおよび第2の検出ユニット780bを有する蛍光顕微鏡700を示している。切り替え可能または変位可能なミラー782(双方向矢印で図示されている)、または任意の他の切り替え手段によって、観察光は、第1の検出ユニット780aまたは第2の検出ユニット780bのいずれかにおいて選択的に結合されうる。
図7に図示されている位置では、観察光はミラー782を介して右側の第2の検出ユニット780bに結合されている。ミラー782が図示されている位置から移動して782’の箇所に位置すると、光路は偏向されることなく直進するので、点線の光線として図示されている観察光は、第1の検出ユニット780aに結合される。照明および検出ビーム路内の光学レンズは、具体的には示されていない。
【0075】
第1の検出ユニット780aは、
図7に示されている例では、像面が784aで示されている広視野検出ユニットである。具体的に示されていないレンズを使用することによって、観察光は、第1の検出ユニット780a内の検出器装置786aにコリメートされて照射される。検出器装置786aは、観察光を異なる検出チャネルに分割するように構成されうる。第1の検出ユニット780aにおいて使用可能な検出器装置786aに関しては、欧州特許第3721279号明細書、特にその明細書中の
図3に示されている検出ユニット10および対応する説明に関連して参照され、その開示は本明細書に組み込まれる。第1の検出ユニット780aにおける広視野検出用照明ユニットは簡略化した方式で790aとして示されている。その光は、ダイクロイックミラー791aおよびバリアフィルタ705を用いるなどして、顕微鏡照明の技術分野においては既知である任意の方式で、蛍光顕微鏡700の照明ビーム路に結合されうる。
【0076】
第2の検出ユニット780bは、
図7に示されている例では、像面が784bで示されている共焦点検出ユニットである。共焦点検出ユニット780bを用いた共焦点検出のために、点光源790bが設けられうる。点光源790bは、特に、レーザー光を集光させることのできる(単一の)ピンホール開口、または光が点状方式で出射するライトガイドもしくは光ファイバの端部であってよい。点光源790bは、試料720の中間像面784bおよび対物面721で共役とされ、ダイクロイックミラー791bおよび具体的には示されていない照明光学系を介して、照明光は、テレセントリック平面またはこれと共役である平面に配置されうるX/Yスキャナ795bを使用して、走査方式で対物面721の一点に集光されうる。これにより、一般的に公知であるように、試料面721で試料720を走査することができる。ピンホールは797bで示されている。繰り返しになるが、さらなる詳細については、欧州特許第3721279号明細書、特にその明細書中の
図3に示されている検出ユニット20および対応する説明に関連して具体的に参照され、その開示は本明細書に組み込まれる。同じことが、観察光を異なる検出チャネルに分割するように構成されうる検出器装置786bにも当てはまる。また、第2の検出ユニット780bにおいて使用可能な検出器装置786bについても、欧州特許第3721279号明細書への具体的な参照がなされる。
【0077】
顕微鏡700では、(少なくとも)2つの異なる顕微鏡動作モードまたは顕微鏡イメージングモード、すなわち広視野イメージングおよび共焦点イメージングのいずれかをユーザが選択することができる。もちろん、本明細書に記載されたフォーカシングの概念は、広視野イメージングのみのような1つの顕微鏡イメージングモードのみが設けられた顕微鏡に適用することも可能である。2つ以上のイメージングモードが設けられたこのような顕微鏡では、それぞれの動作モードにおける動作概念は、互いに実質的に異なる。これらの動作モードで得られる像に影響を与える設定は、上で説明したような、例えば、広視野光源(エリアセンサまたは「カメラ」)の照明設定に対する走査光源用の照明設定およびそれぞれの照明ビーム路の構成要素、エリア検出器用の検出設定に対する、それぞれの検出ビーム経路の構成要素を含む線検出器または点検出器などの構成要素の検出設定およびフォーカシング設定などを含む。これらの構成要素のそれぞれは、通常、調整可能であれば像結果に影響を及ぼす可能性があるので、個別に慎重に調整しなければならない。本発明の実施形態によれば、少なくともフォーカシング設定は、ユーザとさらなる相互作用をすることなく、試料のタイプに依存して自動的に決定される。
【0078】
したがって、特に、動作モードのうちのいずれかに不慣れなユーザにとって、または運動する試料を観察する場合など、よりストレスがかかる観察状況においては、本発明の実施形態は、少なからぬ障害を乗り越え、試料の観察や検査の実際のタスクにおける注意散漫に陥りやすい状態を低減させる。前述したように、本発明の実施形態は、本明細書に記載があっても、広視野動作および共焦点動作に限定されるものではない。
【0079】
蛍光顕微鏡700を動作させるための従来の概念では、ユーザは、動作モードのそれぞれにおける像取得中に焦点を決定し保持する技術的背景および達成される結果がどういうものであるかについての詳細な知識を依然として有していなければならない。前述したように、ユーザは、従来の装置においては、一般的な種々の動作と相互作用の概念との間で、概念的にかつ精神的に「切り替え」が要求されることがある。この問題は、上記で説明したように、顕微鏡の試料タイプに基づく焦点制御がとりわけ選択可能な種々の顕微鏡動作モードにおいて実現される、本発明の実施形態によって克服される。
【0080】
図7はまた、顕微鏡制御装置760に動作可能に結合されたオートフォーカシング制御部745を含むフォーカシング装置を示す図である。図示されている例では、AFCは、例えば、米国特許第5136149号明細書または独国特許出願公告第102010030430号明細書に記載のように実装されている。AFCのより詳細な記載については、これらの文書への参照が明示的になされる。基礎となる三角測量オートフォーカシングの基本方式によれば、オートフォーカシング測定ビーム732は、オートフォーカシング光源730によって生成され、顕微鏡対物レンズ750を通過するために偏向素子736によって偏向され、試料720へ向けられる。反射ビーム734は、顕微鏡対物レンズ750を通過して偏向素子736に戻り、オートフォーカシング検出器740の検出面上で反射されたビームの位置に関する位置感応性を有するオートフォーカシング検出器740へ向けられる。したがって、この検出器740の出力信号は、オートフォーカシング検出器740の検出面上の予め定義された位置に関する反射ビーム734の位置に相関している。反射ビーム734の位置は、顕微鏡対物レンズ750に対して試料720の距離が変化した場合に変化する。この距離の変動は、上記で説明したように、試料のトポロジが焦点方向へ変化することによって、または試料が焦点方向へ運動することによって、または焦点がドリフトすることによって引き起こされうる。
【0081】
オートフォーカシング検出器740は、オートフォーカシング制御部745に動作可能に接続されており、顕微鏡対物レンズ750および/または対物面721を含む顕微鏡ステージを焦点(z)(対物面721の隣に小さな矢印で図示)方向へ移動させて、焦点外運動/ドリフトを平衡化することにより、顕微鏡対物レンズ750に対する試料720(または基準面)の距離を一定に維持する。
【0082】
本実施形態においては、AFC制御の例のみを図示している。他の付加的なまたは代替的なオートフォーカシング法、特に像ベースのオートフォーカシング法は、上述したように本発明の実施形態に従って実施することができ、また実施すべきである。このような像ベースのオートフォーカシング法はまた、他のオートフォーカシング制御部を有する可能性を制限されることなく、オートフォーカシング制御部745によって制御することができ、本明細書では、オートフォーカシング制御部745の一般的な概念によって例示される。オートフォーカシング制御部745に動作可能に結合された顕微鏡制御装置760は、本実施形態によれば、1つ以上のプロセッサを有し、顕微鏡700の顕微鏡イメージングを制御するように適応化されており、イメージングされる試料720に関する試料情報を受信し、フォーカシング要求を受信するようにさらに構成されており、フォーカシング要求を受信したことに応答して、試料の顕微鏡イメージング用の顕微鏡700のフォーカシングを制御するために受信された試料情報に依存して、予め定義されたフォーカシング設定を起動するようにさらに構成されている。
【符号の説明】
【0083】
S0,S1,S11,S12,S13,S2,S3,S4,S5 方法のステップ
200 グラフィカルユーザインタフェース
210,220,230 メニューバー
212,214,216,217,218 メニューポイント、ウィジェット
222,224,226,228,229 メニューポイント、ウィジェット
232,234,236,238 メニューポイント、ウィジェット
300 グラフィカルユーザインタフェース
310,320 メニューポイント、ウィジェット
400 グラフィカルユーザインタフェース
410,420,430 メニューポイント、ウィジェット
500 グラフィカルユーザインタフェース
510,520,522,524,526 メニューポイント、ウィジェット
530,532,540,550,552 メニューポイント、ウィジェット
600 グラフィカルユーザインタフェース
610,620,630,640,650 メニューポイント、ウィジェット
700 顕微鏡
705 バリアフィルタ
720 試料
721 対物面
730 オートフォーカシング光源
732 オートフォーカシング測定ビーム
734 反射ビーム
736 偏向素子
740 オートフォーカシング検出器
745 オートフォーカシング制御部
750 顕微鏡対物レンズ
760 顕微鏡制御装置
780a 第1の検出ユニット
780b 第2の検出ユニット
782 ミラー
782’ ミラー
784a 像面
784b 中間像面
786a 検出器装置
786b 検出器装置
790a 照明ユニット
790b 点光源
791a ダイクロイックミラー
791b ダイクロイックミラー
795b スキャナ
797b ピンホール
【外国語明細書】