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特開2023-86712分散型電極を形成する電気的に接続されたスパインを有するバスケットカテーテル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086712
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】分散型電極を形成する電気的に接続されたスパインを有するバスケットカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022196899
(22)【出願日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】17/548,278
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・トーマス・ビークラー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK17
4C160KK38
4C160KK39
4C160KK63
4C160MM38
(57)【要約】
【課題】医療用プローブを提供すること。
【解決手段】医療用プローブは、シャフトと、バスケットアセンブリと、を含む。シャフトは、患者の器官の腔内に挿入するために構成されている。シャフトの遠位端部に接続されているバスケットアセンブリは、(a)分散型電極を形成するように互いに電気的に接続されている複数の導電性スパインと、(b)スパインに沿って配設されており、(i)腔内の電気的活動を感知することと、(ii)アブレーションを行うことと、(iii)分散型電極が腔内の組織を凹ませることを防止することと、を行うように構成されている、複数のスパイン装着型電極と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用プローブであって、
長手方向軸を画定するシャフトであって、患者の器官の腔内に挿入するために構成されたシャフトと、
前記シャフトの遠位端部に接続されており、前記長手方向軸に沿って延在するバスケットアセンブリと、を備え、前記バスケットが、
分散型電極を形成するように互いに電気的に接続されている複数の導電性スパインと、
前記スパインに沿って配設されており、(i)前記腔内の電気的活動を感知することと、(ii)前記分散型電極が前記腔内の組織を凹ませることを防止することと、を行うように構成されている、複数のスパイン装着型電極と、を備える、医療用プローブ。
【請求項2】
前記スパインが、前記バスケットアセンブリの遠位端部において互いに電気的に接続されている、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項3】
前記スパインが、前記バスケットアセンブリの近位端部において互いに電気的に接続されている、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項4】
前記分散型電極が、アブレーション信号を印加するように構成されている、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項5】
前記スパイン装着型電極は、前記分散型電極が前記組織を凹ませることを防止するように、前記スパインから半径方向外向きに、かつ前記長手方向軸から離れて突出する、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項6】
前記スパイン装着型電極が、前記スパイン上に表面装着されており、前記長手方向軸の外側に、かつ前記スパインの外側に突出する所与の厚さを有する、請求項5に記載の医療用プローブ。
【請求項7】
エンドエフェクタであって、
長手方向軸に沿って近位部分から遠位部分まで延在する管状シャフトと、
前記管状シャフトの前記遠位部分から延在してバスケットを画定する複数のスパインであって、前記複数のスパインが、互いに電気的に接続されており、前記スパインの各々が、導電性である露出部分を有する、複数のスパインと、
前記スパインの各々に配置され、前記スパインの各々から電気的に絶縁された複数のスパイン装着型電極であって、各スパイン装着型電極は、前記電極が前記長手方向軸から離れる方向にオフセットされ、かつより厚くなるように、スカラベ形状の構成を有する、複数のスパイン装着型電極と、を備える、エンドエフェクタ。
【請求項8】
前記管状シャフトから前記バスケットの遠位端部まで延在し、前記スパインに接続されたバスケットアクチュエータを更に備え、それにより、前記長手方向軸に沿った前記アクチュエータの移動が前記バスケットの形状の変化を引き起こす、請求項7に記載のエンドエフェクタ。
【請求項9】
前記管状シャフトの前記遠位部分から延在する灌注部材を更に備える、請求項7に記載のエンドエフェクタ。
【請求項10】
前記スパイン内に配設された前記管状部材から、かつ前記長手方向軸の周りに延在する部材上に配設された基準電極を更に備える、請求項7に記載のエンドエフェクタ。
【請求項11】
医療用プローブを操作するための方法であって、
バスケットアセンブリを作製することであって、
分散型電極を形成するように互いに電気的に接続されている複数の導電性スパインと、
前記導電性スパインの各々に沿って配設されている少なくとも1つのスパイン装着型電極であって、前記導電性スパインから絶縁されている少なくとも1つのスパイン装着型電極と、を備える、バスケットアセンブリを作製することと、
アブレーションエネルギーを、前記分散型電極及び前記少なくとも1つのスパイン装着型電極のうちのいずれか一方又は両方に送達することと、を含む、方法。
【請求項12】
アブレーションエネルギーを、前記少なくとも1つのスパイン装着型電極に前記送達することが、前記分散型電極を戻り電極として構成することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アブレーションエネルギーを、分散型電極に前記送達することが、少なくとも1つのスパイン装着型電極を戻り電極として構成することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記長手方向軸に沿って前記スパインの内側に配設された部材上に装着された中心電極を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記アブレーションエネルギーが、パルス場を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記スパイン装着型電極への前記アブレーションエネルギーが、複数のスパイン装着型電極に順次送達されるパルス場を含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、医療用プローブに関し、具体的には、多電極アブレーションカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓不整脈は一般的に、催不整脈性の電気経路を遮断するために、心筋組織のアブレーションによって治療される。この目的のために、カテーテルが患者の血管系を通して心室に挿入され、カテーテルの遠位端部にある電極又は複数の電極が、好適なエネルギーを用いてアブレーションされる組織と接触される。場合によっては、組織を熱的にアブレーションするために、高電力高周波(radio-frequency、RF)電気エネルギーが電極に印加される。代替的に、パルス場アブレーションとしても知られる不可逆的エレクトロポレーション(irreversible electroporation、IRE)によって組織をアブレーションするために、高電圧パルスが電極に印加されてもよい。
【0003】
一部のアブレーション処置では、バスケットカテーテルが使用され、ここでは複数の電極が、カテーテルの遠位端部にある拡張可能なバスケットアセンブリのスパインに沿って配列される。スパインは外側に屈曲し、バスケット様形状を形成し、体腔内の組織を接触させる。例えば、米国特許出願公開第2020/0289197号は、エレクトロポレーションアブレーション治療のためのデバイス及び方法を記載しており、デバイスは、医療用アブレーション治療のためのカテーテルに結合されたスパインのセットを含む。スパインのセットの各スパインは、そのスパイン上に形成された電極のセットを含んでもよい。スパインのセットは、並進して第1の構成と第2の構成との間を移行するように構成されてもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下に説明される本発明の実施形態は、シャフト及びバスケットアセンブリを含む医療用プローブを提供する。シャフトは、患者の器官の腔内に挿入するために構成されている。シャフトの遠位端部に接続されているバスケットアセンブリは、(a)分散型電極を形成するように互いに電気的に接続される複数の導電性スパインと、(b)スパインに沿って配設されており、(i)腔内の電気的活動を感知することと、(ii)分散型電極が腔内の組織を凹ませることを防止することと、を行うように構成されている、複数のスパイン装着型電極と、を含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、スパインは、バスケットアセンブリの遠位端部において互いに電気的に接続されている。他の実施形態では、スパインは、バスケットアセンブリの近位端部において互いに電気的に接続されている。
【0006】
いくつかの実施形態では、分散型電極は、アブレーション信号を印加するように構成されている。
【0007】
実施形態では、スパイン装着型電極は、分散型電極が組織を凹ませるのを防止するように、スパインから半径方向外向きに突出する。別の実施形態では、スパイン装着型電極は、スパイン上に表面装着されており、スパインの外側に突出する所与の厚さを有する。
【0008】
本発明の別の実施形態に従って、シャフトと、シャフトの遠位端部に接続されたバスケットアセンブリとを含む医療用プローブを、患者の器官の腔内に挿入することを含む方法を、追加的に提供する。バスケットアセンブリは、(i)分散型電極を形成するように互いに電気的に接続された複数の導電性スパインと、(ii)スパインに沿って配設された複数のスパイン装着型電極と、を含む。複数のスパイン装着型電極を使用して、電気的活動が腔内で感知される一方で、分散型電極が腔内の組織を凹ませることが防止される。
【0009】
本発明の別の実施形態によれば、医療プローブを作製する方法が更に提供される。本方法は、分散型電極を形成するように互いに電気的に接続されている複数の導電性スパインと、スパインに沿って配設されており、(i)腔内の電気的活動を感知することと、(ii)分散型電極が腔内の組織を凹ませることを防止することと、を行うように構成されている、複数のスパイン装着型電極と、を含む、バスケットアセンブリを作製することを含む。バスケットアセンブリは、患者の器官の腔内に挿入するために構成されたシャフトに接続されている。
【0010】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態による、バスケットカテーテルを備えるアブレーションシステムを利用する、カテーテルベースの電気生理学的処置の概略図である。
図2】本発明の実施形態による、図1のバスケットカテーテルアセンブリの概略側面図である。
図3】本発明の実施形態による、肺静脈口をアブレーションするために位置決めされた図1のバスケットカテーテルアセンブリの概略図である。
図4】バスケットカテーテルの別の実施例を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概説
多電極心臓カテーテルは、典型的には、複数の電極が配設される遠位端部アセンブリを備える。例えば、バスケットカテーテルは、典型的には、患者の器官の腔内に挿入するためにシャフトの遠位端部に結合された、スパインの拡張可能なフレームを備える。
【0013】
バスケットカテーテルは、バスケットカテーテルのスパイン(ひいてはスパイン上の電極)が同時に複数の場所で組織に接触し、アブレーションできることから、アブレーション処置を迅速かつ効率的に実行するのに有用である。しかしながら、これらのスパイン装着型電極は、処置中に組織内を凹ませる可能性があり、これは局所的な過熱につながる可能性があり、特にRFアブレーションでは、炭化及び/又は他の外傷をもたらすことがある。滑らかで丸みを帯びた外形を有する電極の使用は、これらの効果を軽減するのに役立つが、それ自体が組織損傷の問題を排除しない。
【0014】
本明細書に記載される本発明の実施形態は、アブレーション信号を安全に印加するように構成された分散型電極を有するバスケットカテーテルを提供する。分散型電極は、不関電極(例えば、バックパッチ)に対して単極モードでRF及び/又はIREを送達するように配線されたバスケットスパインから作られる。加えて、電気生理学的(electrophysiological、EP)感知又はアブレーションを行うために、複数のスパイン装着型電極がスパイン上に配設される。スパインは導電性であり、典型的には、スパイン装着型電極の各々の周囲の小領域を除いて、電気的に絶縁されていない(露出されている)。スパインは、互いに電気的に接続され(例えば、バスケットの遠位端部で互いに接触すること、及び/又は接続ワイヤをともに短絡させることによって)、したがって、スパインはともに分散型電極を形成する(例えば、単極モードでのRFアブレーションで使用するためであるが、他の可能な使用法が以下に記載される)。絶縁体は、典型的には、スパイン装着型電極とスパインとの間、又は隣接するスパイン上の電極間のスパークを防止するのにちょうど十分なスパインの短い部分を覆う。スパインが単一の電極として構成されるいくつかの構成では、装着型電極(又は複数の電極)は不関電極であり得る。
【0015】
分散型電極は、炭化などの組織への熱危険性を低減することができるように、アブレーション(RF又はIRE)エネルギーを拡散する。典型的には、スパイン装着型電極はスパインよりも厚く作られており、バスケットアセンブリが、分散型電極が組織内に埋め込まれる(例えば、組織を凹ませる)ことを防止する機械的バリアとして機能するようになる。換言すれば、厚いスパイン装着型電極は、RFアブレーション中にスパイン(分散型電極)が組織に強く押しつけられるのを防ぐ「バンパ」として機能する。同時に、スパイン装着型電極は、肺静脈隔離の不整脈治療処置などにおける、アブレーションの有効性を検証するための電位図を取得するために使用することができる。
【0016】
システムの説明
図1は、本発明の実施形態による、バスケットカテーテル22を備えるアブレーションシステム20を利用する、カテーテルベースの電気生理学的処置の概略絵図である。システム20の要素は、例えば、Biosense Webster Inc.(Irvine,California)製のCARTO(登録商標)システムの構成要素に基づくものであってよい。カテーテル22の遠位端部に接続されたバスケットアセンブリ40のスパインは、バスケットの遠位端部で互いに接触し、したがって、スパインは、図2で更に説明するように、分散型電極60を形成する。
【0017】
一実施形態では、分散型電極60は、RFアブレーションのために使用される。別の実施形態では、分散型電極60は、装着型電極50を使用して行われる電気生理学的マッピングのための基準電極として使用されてもよい。更に別の実施形態では、分散型電極60は、スパイン装着型電極50によるIREアブレーション中に共有基準電極として機能することができる。上記の全ての目的のために、スパインは電気的に短絡され、シャフト25内でコンソール24まで延びる単一のワイヤ(図示せず)に接続されている。それに代わって、各スパインは、個別に配線されてもよく、全てのワイヤは、アブレーションシステム20内でともに電気的に短絡される。スパイン装着型電極50は、個々に配線され、各々を別々に使用することができる。
【0018】
医師30は、患者28の血管系を通って、患者の心臓26の心室にカテーテル22をナビゲートし、次いで、バスケットカテーテルアセンブリ40を展開する。バスケットカテーテルアセンブリ40の近位端部はシャフト25の遠位端部に接続されており、医師30は、これをカテーテル22の近位端部の近くでマニピュレータ32を使用して操縦する。バスケットカテーテルアセンブリ40は、折り畳み構成において管状シース23を通して挿入され、これが、患者28の血管系を通過して、アブレーション処置が実行されることになる心室の中に入る。
【0019】
心室内に挿入されると、バスケットカテーテルアセンブリ40が、管状シースから展開され、室内で拡張される。カテーテル22は、その近位端部において制御コンソール24に接続されている。コンソール24上のディスプレイ27は、アブレーション処置の標的存在位置にバスケットアセンブリ40を位置決めする上で医師30を支援するために、バスケットカテーテルアセンブリ40の存在位置を示すアイコンとともに、心室のマップ31又は他の画像を提示し得る。
【0020】
一実施形態では、バスケットカテーテルアセンブリ40が心臓26内に適切に展開され位置決めされると、医師30は、コンソール24内の電気信号発生器38を作動させて、電気エネルギー(RF波形又は高電圧IREパルスなど)を単極モードで、すなわち、バスケットカテーテルアセンブリ40上のスパイン装着型電極と、別個の外部共通電極、例えば患者の皮膚に適用される導電性バックパッチ41との間で、分散型電極60に印加する。アブレーション処置中、潅注ポンプ34が、食塩水溶液などの潅注流体を、シャフト25を通してバスケットカテーテルアセンブリ40に送達する。この実施形態では、スパイン装着型電極50は、図3で説明したように、電位図を取得するための電気生理学的感知電極として使用することができる。
【0021】
典型的には、カテーテル22は、バスケットカテーテルアセンブリ40の位置(存在位置及び配向)を示す位置信号を出力する、1つ又は2つ以上の位置センサ(図示せず)を備える。例えば、バスケットアセンブリ40は、印加された磁場に応答して電気信号を出力する1つ又は2つ以上の磁気センサを組み込み得る。プロセッサ36は、当該技術分野で知られており、例えば、上述のCartoシステムに実装される手技を使用して、バスケットカテーテルアセンブリ40の存在位置及び配向の座標を見つけるために、信号を受信及び処理する。それに代わって、又はそれに加えて、システム20は、バスケットカテーテルアセンブリ40の座標を見けるために、他の位置感知技術を適用してもよい。例えば、プロセッサ36は、バスケットカテーテルアセンブリ40上の電極と、患者28の胸部に適用される体表面電極39との間のインピーダンスを感知し得、また、同様に当該技術分野で知られている手技を使用して、インピーダンスを存在位置の座標に変換し得る。いずれの場合でも、プロセッサ36は、マップ31上にバスケットカテーテルアセンブリ40の存在位置を表示するために座標を使用する。
【0022】
それに代わって、本明細書に記載されるカテーテル22及びアブレーション技術は、位置感知の恩恵を受けることなく用いられ得る。そのような実施形態では、心臓26内のバスケットカテーテルアセンブリ40の存在位置を確認するために、例えば、蛍光透視法及び/又は他の撮像手技を使用することができる。
【0023】
図1に示されるシステム構成は、本発明の実施形態の動作を理解する際に概念を明確にするための例として提示されるものである。簡潔にするために、図1は、システム20のうちの、バスケットカテーテルアセンブリ40及びバスケットアセンブリを使用するアブレーション処置に特に関連する要素のみを示す。システムの残りの要素は、本発明の原理が、他の構成要素を使用して、他の医療治療システムにおいて実施され得ることは、当業者であれば同様に理解するであろうことは明らかであろう。全てのこのような代替的な実装は、本発明の範囲内であると考えられる。
【0024】
互いに接触して分散型電極を形成するスパインを有するバスケットカテーテル
図2は、本発明の実施形態による、図1のバスケットカテーテルアセンブリ40の概略側面図である。バスケットカテーテルアセンブリ40は、シース23の外側に拡張状態で描かれている。
【0025】
このように、バスケットカテーテルアセンブリ40は、遠位端部52と、近位端部53と、を有し、近位端部は、シャフト25の遠位端部に接続されている。バスケットカテーテルアセンブリは複数のスパイン46を備え、それらの近位端部は近位端部53で接合され、またそれらの遠位端部は遠位端部52で接合される。複数の厚く丸みを帯びたスパイン装着型電極50は、スパイン46の各々の外側に配設される。
【0026】
スパイン46は導電性であり、絶縁されていないので、スパイン46のこれらの部分(図4の引き出し線線によって示される)は、周囲環境(又は生物学的組織及び流体)に露出される。スパイン46には、電極50の各々の周りに小さな絶縁領域55が設けられていることに留意されたい。導電性スパイン46は、バスケットの遠位端部52で互いに接触するので、スパインの露出表面は分散型電極60を形成する。スパイン46が互いに電気的に接続されて分散型電極60を形成するので、分散型電極60は単一の大きな電極と考えることができる。
【0027】
図示された拡張状態では、スパイン46は半径方向外側に曲がる。折り畳み状態(図示せず)では、心臓26内へのバスケットカテーテルアセンブリ40の挿入を容易にするために、スパイン46は直線状であり、シャフト25の長手方向軸に平行に整列される。
【0028】
一実施形態では、スパイン46は、バスケットカテーテルアセンブリ40の安定状態が折り畳み状態であるように作製される。この場合、バスケットカテーテルアセンブリ40がシースから押し出されるとき、それは、シャフト25を通して近位方向にアクチュエータワイヤ又はロッド(図2の48)を引くことによって拡張される。アクチュエータロッド又はプラー48ワイヤを解放することは、バスケットカテーテルアセンブリ40をその元の状態に折り畳まれることを許容する。基準電極56をアクチュエータロッド48上に設けることができ、それにより、遠地組織発生信号をスパイン装着型電極50で収集した信号とともに収集し、ノイズ低減又は除去に使用することができる。
【0029】
別の実施形態では、スパイン46は、バスケットカテーテルアセンブリ40の安定状態が図2の拡張状態であるように作製される。この場合、バスケットカテーテルアセンブリ40は、シースから押し出されたときに拡張状態に開き、プラーワイヤは、バスケットカテーテルアセンブリをシース内に引き戻す前にスパイン46を真っ直ぐにするための可撓性プッシャロッド48と置き換えることができる。
【0030】
図2は、理解を容易にするために概略的に図示されている。スパイン装着型電極50の実際の形状は、図示されたものとは異なることに留意されたい。別の例として、いくつかの実施形態では、スパイン46の潅注出口は、スパイン内を流れる潅注流体が電極50の近傍で流出し、また組織に潅注することを許容する。
【0031】
図1及び図2に示す実施形態では、スパインは、バスケットカテーテルアセンブリの遠位端部で互いに電気的に接触している。別の実施形態では、スパインは、バスケットカテーテルアセンブリの近位端部で互いに電気的に接触している。
【0032】
図3は、本発明の実施形態による、肺静脈口47をアブレーションするために位置決めされた図1のバスケットカテーテルアセンブリ40の概略図である。この例示的な処置では、カテーテルは、下大静脈(inferior vena cava、IVC)を介して右心房(right atrium、RA)に最初に導入され、これは心房中隔の卵円窩内の穿刺を通過して、左心房(left atrium、LA)45に到達する。カテーテルアセンブリ40は、小孔47に対して遠位に押され、分散型電極60は、RFエネルギーを小孔47の組織に伝達する。同時に、スパイン装着型電極50は、電極が大きく、電極60のスパインに対して外側に突出しているため、RF送達スパインが小孔47の組織を凹ませ、RFアブレーション中に組織に機械的又は熱的損傷を引き起こすことを防止する。
【0033】
この実施形態では、バスケットカテーテルアセンブリが組織に対して押圧されるとき、スパイン装着型電極は、スパイン上に表面装着されており、半径方向に最小の所与の厚さを有する(例えば、大部分がスパインの外部にあるように空間的に付勢された方法で取り付けられる)ことによって、分散型電極による組織の凹みを防止する。
【0034】
電極の厚さの大部分がスパインの半径方向外側に突出しているスパイン上に非対称に装着されているバスケットカテーテル上のかさ高い電極は、2021年7月8日に出願された「BIASED ELECTRODES FOR IMPROVED TISSUE CONTACT AND CURRENT DELIVERY」と題する米国特許出願第17/371,008号に記載されており、これは、本出願の譲受人に譲渡され、参照により本明細書に組み込まれている。
【0035】
小孔47の組織に対して押圧されると、スパイン装着型電極50は、電気生理学的信号(例えば、電位図)を取得し、プロセッサ36は、これらの信号を分析して、不整脈惹起性の電気経路が小孔47の全周にわたってアブレーションされ、そこで生じた不整脈がアブレーションによって完全に治療されることを検証する。
【0036】
図4は、管状シャフト23によって画定される長手方向軸A-Aに沿って延在する代替的なエンドエフェクタ40’を示す。この例では、電極50は、スカラベ様の外形を有する。具体的には、電極50には、電極50を通って延在する孔106が設けられている。貫通孔106は、スパイン46が貫通孔106内に挿入され、好適な手技(例えば、接着剤、機械的タブ、又は溶接を介して)によってスパイン46に固定されることを許容し、絶縁材料55は、スパイン装着型電極50が位置するスパイン46の露出表面上に形成される。灌注孔104を有する灌注チューブ100は、アブレーション中に潅注流体が、(電気的に短絡されたスパイン46によって形成される)単一の分散型電極60の周りに分散されることを許容するために提供され得る。中心電極102は、ECG信号のノイズ低減のための基準電極として、又はアブレーション目的のための戻り(又は不関)電極として作用するように提供され得る。
【0037】
本明細書の図面に示すように、(互いに電気的に短絡されたスパイン46によって形成される)分散型電極60は、様々なモードでアブレーションエネルギーを送達する方法で実施することができる。アブレーションモードは、アブレーションエネルギー(RF又はIRE)を分散型電極60及びスパイン装着型電極50のうちの少なくとも1つのいずれか一方又は両方に送達することを許容する。1つのモードでは、アブレーションエネルギー(RF又はIRE)は、スパイン装着型電極50のうちの少なくとも1つに提供され得、スパイン電極50に提供されるアブレーションエネルギーのための戻り電極として作用するように分散型電極60を構成する。別のモードでは、システムは、スパインエネルギーを分散型電極60に送達し、スパイン装着型電極50のうちの少なくとも1つを戻り電極として構成するように構成され得る。更に第3のモードでは、アブレーションエネルギーは、単極モードで分散型電極60又はスパイン装着型電極50のうちの少なくとも1つに提供され得、外部身体電極41は、戻り電極として作用する。
【0038】
要約すると、単一の分散型電極60は、以下のモード、(1)スパイン装着型電極50のうちの1つ又は2つ以上が戻り電極又は不関電極である双極アブレーションモード、(2)中心電極(56又は102)を戻り電極又は不関電極として用いる双極アブレーションモード、又は(3)不関電極が既知の電極パッチ41である単極アブレーションモードで動作することができる。
【0039】
一方、スパイン装着型電極50は、(1)生物学的組織から発する電気信号をマッピング又は収集し、(2)戻り電極として作用する分散型電極60を用いて、双極モードでアブレーションエネルギーを送達し、(3)中心電極(56又は102)を戻り電極として用いて、双極モードでアブレーションエネルギーを送達し、又は(4)不関電極として身体パッチ41を用いて、単極モードでアブレーションエネルギーを送達するために使用することができる。
【0040】
更に、分散型電極60はRFエネルギーを送達することができる一方、スパイン装着型電極はIREエネルギーを送達することができることに留意されたい。これは、分散型電極60がIREエネルギーを送達することができる一方、スパイン装着型電極50がRFエネルギーを送達することができるという点で逆になり得る。
【0041】
スパイン装着型電極50は、電極50の小さなサブセットに、順次又は同時に独立してエネルギーを送達する能力を有するのに対し、分散型電極60は、構造全体にアブレーションエネルギーを同時に送達することしかできない。1つの例示的な方法では、操作者は、エンドエフェクタ40又は40’を標的器官に搬送し、器官をマッピングしてアブレーションのための標的部位を判定し、RFエネルギー(又はIREエネルギー)を分散型電極60に送達し、スパイン装着型電極50を介して得られた組織をマッピングして、アブレーションされた部位が電気的に分離されているかどうかを判定し、更なるアブレーションを必要とする領域のサイズに応じて、スパイン装着型電極の一部を使用して、標的部位を完全に分離することを確実にするために、スパイン装着型電極の小さなサブセットからのIREエネルギー(又はRFエネルギー)が送達することができる。パルス場の印加のための技法は、2020年4月7日付けの米国特許出願第16/842648号(代理人整理番号BIO6265USNP1)に提供されており、これは、米国特許第2021/0307815号として公開され、本出願の付録に組み込まれて提供されている。本明細書に記載されている実施形態は、主に、心臓用途に対処するものであるが、本明細書に記載されている方法及びシステムはまた、他の器官、例えば、膀胱内部又は腎臓外部の腎動脈内部でアブレーションを行う場合など、他のカテーテルベースの用途でも使用することができる。
【0042】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に説明される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部と見なすものとする。
【0043】
〔実施の態様〕
(1) 医療用プローブであって、
長手方向軸を画定するシャフトであって、患者の器官の腔内に挿入するために構成されたシャフトと、
前記シャフトの遠位端部に接続されており、前記長手方向軸に沿って延在するバスケットアセンブリと、を備え、前記バスケットが、
分散型電極を形成するように互いに電気的に接続されている複数の導電性スパインと、
前記スパインに沿って配設されており、(i)前記腔内の電気的活動を感知することと、(ii)前記分散型電極が前記腔内の組織を凹ませることを防止することと、を行うように構成されている、複数のスパイン装着型電極と、を備える、医療用プローブ。
(2) 前記スパインが、前記バスケットアセンブリの遠位端部において互いに電気的に接続されている、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(3) 前記スパインが、前記バスケットアセンブリの近位端部において互いに電気的に接続されている、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(4) 前記分散型電極が、アブレーション信号を印加するように構成されている、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(5) 前記スパイン装着型電極は、前記分散型電極が前記組織を凹ませることを防止するように、前記スパインから半径方向外向きに、かつ前記長手方向軸から離れて突出する、実施態様1に記載の医療用プローブ。
【0044】
(6) 前記スパイン装着型電極が、前記スパイン上に表面装着されており、前記長手方向軸の外側に、かつ前記スパインの外側に突出する所与の厚さを有する、実施態様5に記載の医療用プローブ。
(7) エンドエフェクタであって、
長手方向軸に沿って近位部分から遠位部分まで延在する管状シャフトと、
前記管状シャフトの前記遠位部分から延在してバスケットを画定する複数のスパインであって、前記複数のスパインが、互いに電気的に接続されており、前記スパインの各々が、導電性である露出部分を有する、複数のスパインと、
前記スパインの各々に配置され、前記スパインの各々から電気的に絶縁された複数のスパイン装着型電極であって、各スパイン装着型電極は、前記電極が前記長手方向軸から離れる方向にオフセットされ、かつより厚くなるように、スカラベ形状の構成を有する、複数のスパイン装着型電極と、を備える、エンドエフェクタ。
(8) 前記管状シャフトから前記バスケットの遠位端部まで延在し、前記スパインに接続されたバスケットアクチュエータを更に備え、それにより、前記長手方向軸に沿った前記アクチュエータの移動が前記バスケットの形状の変化を引き起こす、実施態様7に記載のエンドエフェクタ。
(9) 前記管状シャフトの前記遠位部分から延在する灌注部材を更に備える、実施態様7に記載のエンドエフェクタ。
(10) 前記スパイン内に配設された前記管状部材から、かつ前記長手方向軸の周りに延在する部材上に配設された基準電極を更に備える、実施態様7に記載のエンドエフェクタ。
【0045】
(11) 組織をアブレーションする方法であって、
シャフトと、前記シャフトの遠位端部に接続されたバスケットアセンブリと、を備える、医療用プローブを、患者の器官の腔内に挿入することであって、前記バスケットアセンブリが、(i)複数の導電性スパインであって、分散型電極を形成するように、前記スパインの露出部分で互いに電気的に接続されている複数の導電性スパインと、(ii)前記スパインに沿って配設され、前記スパインから電気的に絶縁された複数のスパイン装着型電極と、を備える、挿入することと、
前記分散型電極が前記腔内の組織を凹ませることを防止しつつ、前記スパイン装着型電極を用いて前記腔内の電気的活動を感知することと、を含む、方法。
(12) 前記スパインが、前記バスケットアセンブリの遠位端部において互いに電気的に接続されている、実施態様11に記載の医療方法。
(13) 前記スパインが、前記バスケットアセンブリの近位端部において互いに電気的に接続されている、実施態様11に記載の医療方法。
(14) 前記分散型電極を使用してアブレーション信号を印加することを含む、実施態様11に記載の医療方法。
(15) 前記電極は、前記分散型電極が前記組織を凹ませることを防止するように、前記スパインから半径方向外向きに突出する、実施態様11に記載の医療方法。
【0046】
(16) 前記電極が、前記スパイン上に表面装着されており、前記スパインの外側に突出する所与の厚さを有する、実施態様11に記載の医療方法。
(17) 医療用プローブを操作するための方法であって、
バスケットアセンブリを作製することであって、
分散型電極を形成するように互いに電気的に接続されている複数の導電性スパインと、
前記導電性スパインの各々に沿って配設されている少なくとも1つのスパイン装着型電極であって、前記導電性スパインから絶縁されている少なくとも1つのスパイン装着型電極と、を備える、バスケットアセンブリを作製することと、
アブレーションエネルギーを、前記分散型電極及び前記少なくとも1つのスパイン装着型電極のうちのいずれか一方又は両方に送達することと、を含む、方法。
(18) アブレーションエネルギーを、前記少なくとも1つのスパイン装着型電極に前記送達することが、前記分散型電極を戻り電極として構成することを含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記アブレーションエネルギーを、分散型電極に前記送達することが、少なくとも1つのスパイン装着型電極を戻り電極として構成することを含む、実施態様17に記載の方法。
(20) 前記長手方向軸に沿って前記スパインの内側に配設された部材上に装着された中心電極を更に含む、実施態様17に記載の方法。
【0047】
(21) 前記アブレーションエネルギーが、パルス場を含む、実施態様17に記載の方法。
(22) 前記スパイン装着型電極への前記アブレーションエネルギーが、複数のスパイン装着型電極に順次送達されるパルス場を含む、実施態様17に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】