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特開2023-86735不揮発性/揮発性油及び親油性染料を含む組成物、方法及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086735
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】不揮発性/揮発性油及び親油性染料を含む組成物、方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20230615BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20230615BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20230615BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20230615BHJP
   A61K 8/40 20060101ALI20230615BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20230615BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20230615BHJP
   A61K 8/892 20060101ALI20230615BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/31
A61K8/891
A61K8/46
A61K8/40
A61K8/49
A61K8/41
A61K8/892
A61Q5/12
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023051877
(22)【出願日】2023-03-28
(62)【分割の表示】P 2021518129の分割
【原出願日】2018-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】シャオイン・ジョウ
(72)【発明者】
【氏名】モナ・ジェン
(72)【発明者】
【氏名】アミット・ジャヤスワル
(72)【発明者】
【氏名】シュホン・ユアン
(72)【発明者】
【氏名】チュンイェ・リウ
(57)【要約】
【課題】1つ又は複数の適用を行うことにより、ケラチン繊維を帯電させたり重さを感じさせたりすることなく、ケラチン繊維をコンディショニングし、毛先の色を甦らせ、ケラチン繊維に高い審美性(特に、より高い光沢)を付与し、それと同時に、良好な使用品質(組成物の毛髪上への延ばし易さ、皮膚に汚れを残さないこと)を維持しながら、必要に応じて毛髪のカール形状を良好に保持することもできる組成物を提供する。
【解決手段】化粧用組成物であって、i)グリセロールと、1種又は複数種の同一又は異なる4~30個の炭素原子を含む飽和又は不飽和脂肪酸と、のエステルから選択される1種又は複数種の不揮発性油を、組成物の総質量に対し少なくとも5質量%と、ii)1種又は複数種の揮発性油を、組成物の総質量に対し少なくとも10質量%と、iii)1種又は複数種の親油性染料とを含む、組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧用組成物であって:
i)グリセロールと、1種又は複数種の同一又は異なる4~30個の炭素原子を含む飽和又は不飽和脂肪酸と、のエステルから選択される1種又は複数種の不揮発性油を、前記組成物の総質量に対し少なくとも5質量%と;
ii)1種又は複数種の揮発性油を、前記組成物の総質量に対し少なくとも10質量%と;
iii)1種又は複数種の親油性染料と;
を含む組成物。
【請求項2】
前記不揮発性油i)は、グリセロールと、1種又は複数種の同一又は異なる4~24個の炭素原子を含む飽和又は不飽和脂肪酸と、のエステルから選択され;より好ましくは、グリセロールと、6~24個の炭素原子を含む1種又は複数種の脂肪酸と、のエステルから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記不揮発性油i)は、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、オリーブ油、マカデミア種子油、ヒマシ油、ヒマワリ油、大豆油、ゴマ油、杏仁油、コリアンダー種子油、メドウフォーム(limnanthes alba)種子油、ニゲラサチバ(nigella sativa)種子油、ペンタクレスラマクロロバ(Pentaclethra macroloba)種子油、バオバブ(adansonia digitata)種子油、オオミテングヤシ(mauritia flexuosa)油、ゴウダソウ(lunaria annua)油、グンバイナズナ油、クフェア(cuphea)油、及びこれらの混合物から選択され;より好ましくは、前記不揮発性油i)は、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記不揮発性油i)は、前記組成物の総質量に対し5~45質量%、好ましくは7~40質量%、より好ましくは10~35質量%を占めることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記揮発性油ii)は、炭化水素系揮発性油、揮発性シリコーン油、及びこれらの混合物から選択され;好ましくは、C~C16イソアルカン、直鎖C~C16アルカン、一般式(I):
【化1】
(式中、Rは、2~4個の炭素原子を含むアルキル基を表し、その1個又は複数個の水素原子がフッ素又は塩素原子に置き換わっていてもよい)の揮発性直鎖アルキルトリシロキサン油;一般式(I)の前記揮発性直鎖アルキルトリシロキサン油とは異なる揮発性直鎖又は環状シリコーン油;及びこれらの混合物から選択され;より好ましくは、イソドデカン又はデカメチルシクロペンタシロキサンから選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記揮発性油ii)は、前記組成物の総質量に対し、10~98質量%、好ましくは20~95質量%、より好ましくは30~90質量%、更に良好には50~90質量%を占めることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
不揮発性油i)の含有量対前記揮発性油ii)の含有量の質量比は、0.01~10の間にあり、好ましくは0.01~2の間(境界値を含む);より好ましくは0.05~1の間(境界値を含む);更に良好には0.1~0.9の間(境界値を含む)にあることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記親油性染料iii)は、天然又は合成親油性染料から選択され;好ましくは、DC Red 17、DC Red 21、DC Red 27、DC Green 6、DC Yellow 11、DC Violet 2、DC Orange 5、スーダンレッド、スーダンブラウン、キノリンイエロー、アナトー、クルクミン、カロテン、キサントフィル、親油性緑色染料、及びこれらの混合物から選択され;より好ましくは、D&C Violet 2(C.I.60725)、ベータカロテン(C.I.75130)、Green 6(C.I.61565)、アスタキサンチン、及びこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記親油性染料iii)は、前記組成物の総質量に対し、0.0001~10質量%、好ましくは0.001~5質量%、より好ましくは0.001~1質量%を占めることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
1種又は複数種の不揮発性シリコーン油を更に含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記不揮発性シリコーン油は、不揮発性フェニル化シリコーン油、不揮発性非フェニル化シリコーン油、及びこれらの混合物から選択され;好ましくは、不揮発性非フェニル化シリコーン油から選択され;より好ましくは、不揮発性ポリアルキルシロキサン、例えば、トリメチルシリル又はジメチルシラノール末端基を含む不揮発性ポリジメチルシロキサンから選択されることを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記不揮発性シリコーン油は、前記組成物の総質量に対し、0.1~30質量%、好ましくは1~25質量%、より好ましくは5~20質量%を占めることを特徴とする、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
無水であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
ケラチン繊維、特に毛髪等のヒトのケラチン繊維をコンディショニングするための方法であって、前記ケラチン繊維に請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物を適用するステップを少なくとも含む、方法。
【請求項15】
染色されたケラチン繊維、特に染色された毛髪等の染色されたヒトのケラチン繊維をコンディショニングするための、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ケラチン繊維、特に毛髪等のヒトのケラチン繊維をコンディショニングするための、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項17】
染色されたケラチン繊維、特に染色された毛髪等の染色されたヒトのケラチン繊維をコンディショニングするための、請求項16に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種又は複数種の特定の不揮発性油、1種又は複数種の揮発性油、及び1種又は複数種の親油性染料を含む組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、ケラチン繊維、特に、毛髪等のヒトのケラチン繊維をコンディショニングするための方法であって、上記ケラチン繊維に本発明による組成物を適用するステップを少なくとも含む、方法に関する。
【0003】
本発明はまた、本発明による組成物の、ケラチン繊維、特に毛髪等のヒトのケラチン繊維をコンディショニングするための使用にも関する。
【背景技術】
【0004】
毛髪は、光や天候等の、大気中の外部作用物質(external atmospheric agent)並びに/又はブラッシング、コーミング、染毛、脱色、パーマネントウェーブ処理、及び/若しくは直毛化等の機械的若しくは化学的処理の作用を受けて傷んだり弱くなったりするのが通常である。
【0005】
したがって、これらの欠点を克服することを目的として、これらの処理を行った後に、光沢、柔軟性、しなやかさ、軽さ(lightness)、自然な手触り、及びもつれにくい性質を付与するように毛髪をコンディショニングすることができるケア組成物を取り込ませる(implementation)ことを含む、ヘアケア手法を用いることが一般的である。
【0006】
しかし、これらのヘアケア組成物は必ずしも完全に満足できるものではなく、特に毛髪の光沢、毛先の色の回復(refreshing)、及び毛髪のカール形状の保持(definition)(縮れを生じさせない)に関しては依然として改善の余地がある。特に毛髪の色は、くすみが残ったままとなる可能性や、時間が経過するにつれて、その生き生きとした感じを失う可能性がある。
【0007】
更に、先行技術の毛髪用組成物は、通常、使用品質(組成物の延ばし易さ、皮膚に汚れを残さないこと)に関して、又は様々な外部作用物質(例えば、シャンプー、光、汚染物質)の残留という観点から、満足できるものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、1つ又は複数の適用を行うことにより、ケラチン繊維を帯電させたり重さを感じさせたりすることなく、ケラチン繊維をコンディショニングし、毛先の色を甦らせ、ケラチン繊維に高い審美性(特に、より高い光沢)を付与し、それと同時に、良好な使用品質(組成物の毛髪上への延ばし易さ、皮膚に汚れを残さないこと)を維持しながら、必要に応じて毛髪のカール形状を良好に保持することもできる組成物を発展させることが真に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的は本発明により達成される。その主題の1つは、化粧用組成物であって:
i)グリセロールと、1種又は複数種の同一又は異なる4~30個の炭素原子を含む飽和又は不飽和脂肪酸と、のエステルから選択される1種又は複数種の不揮発性油を、組成物の総質量に対し少なくとも5質量%と;
ii)1種又は複数種の揮発性油を、組成物の総質量に対し少なくとも10質量%と;
iii)1種又は複数種の親油性染料と;
を含む、組成物にある。
【0010】
本発明による組成物を用いることにより、所望の特性、特に、ケラチン繊維の健全性、品質、及び審美性に関し所望の特性を得ることが可能になる。
【0011】
具体的には、本発明による組成物で処理された毛髪は、活力に満ち、光沢があり、くすみがない。
【0012】
更に、本発明による組成物は、ケラチン繊維を良好にコンディショニングしながら、毛髪のカールを充分に保持し(縮れさせることなく)、毛髪を帯電させたり重さを感じさせたりすることがなく、それと同時に、良好な使用品質(組成物の毛髪上への延ばし易さ、皮膚にも手にも汚れを残さないこと)を維持することが可能である。
【0013】
本発明の他の特徴及び利点は以下の記載及び実施例を読むことによって一層明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書においては、特段の指定がない限り、次に従う:
- 数値範囲の境界値(limit)は、特に、「~の間(of between...and...)」及び「~の範囲(ranging from...to...)」という表現においては、同範囲に包含される。
- 本明細書において使用される「少なくとも1つの」という表現は、「1つ又は複数の(one or more)」という表現と均等であり、その代替として使用することができる。
- 「油」という語は、常温(25℃)及び大気圧(760mmHg、即ち、1,013×10Pa)下に液体である脂肪質物質を意味することを意図している。油は揮発性であっても不揮発性であってもよい。
- 「揮発性油」という語は、皮膚又はケラチン繊維と接触すると、常温及び大気圧下において1時間未満で揮発することが可能な油を意味することを意図している。本発明の揮発性油は常温(25℃)で液体であり、常温(25℃)及び大気圧下において、特に0.13Pa~40000Pa(10-3~300mmHg)の範囲、特に、1.3Pa~13000Pa(0.01~100mmHg)の範囲、より詳細には1.3Pa~1300Pa(0.01~10mmHg)の範囲の、ゼロではない蒸気圧を示す、揮発性化粧用油である。
- 「不揮発性油」という語は、常温(25℃)及び大気圧下で少なくとも数時間、皮膚又はケラチン繊維上に残留し、特に、蒸気圧が10-3mmHg(0.13Pa)未満である油を意味することを意図している。
- 「シリコーン」とは、少なくとも数個の-Si-O-単位を含むポリマー又はオリゴマーを意味する。
- 「不揮発性シリコーン油」とは、上に定義したシリコーンのうち、常温(25℃)及び大気圧下に液体であり、常温(25℃)及び大気圧下で少なくとも数時間、皮膚又はケラチン繊維上に残留し、特に、蒸気圧が10-3mmHg(0.13Pa)未満であるものを意味する。
- 「炭化水素系油」という語は、主として炭素及び水素原子を含み、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、及びカルボキシル基から選択される1つ又は複数の官能基を含み得る油を意味する。通常、この油は、粘度が0.5~100000mPa・s、好ましくは50~50000mPa・s、より好ましくは100~30000mPa・sである。
- 以下に示す粘度は、25℃における温度であり、粘度計Rheomat(登録商標)RM 180を用いて剪断速度1s-1で測定した値である。
【0015】
不揮発性油i)
本発明によれば、本発明の組成物は、i)グリセロールと、1種又は複数種の同一又は異なる4~30個の炭素原子を含む飽和又は不飽和脂肪酸と、のエステルから選択される不揮発性油を、組成物の総質量に対し少なくとも5質量%含む。
【0016】
本発明によれば、この同一又は異なる飽和又は不飽和脂肪酸は、1つ又は複数のヒドロキシ基で置換されていてもよい。
【0017】
本発明に使用することができる、グリセロールと1種又は複数種の4~30個の炭素原子を含む飽和又は不飽和の脂肪酸とのエステルの例として、ヘプタン酸若しくはオクタン酸トリグリセリド、又はコムギ胚芽油、オリーブ油、アーモンド油、パーム油、菜種油、綿実油、アルファルファ油、ケシ油、カボチャ種子油、ブラックカラント油、ツキミソウ油、キビ油、オオムギ油、キヌア油、ライムギ(rye)油、コリアンダー種子油、メドウフォーム(limnanthes alba)種子油、ニゲラサチバ(nigella sativa)種子油、ペンタクレスラマクロロバ(Pentaclethra macroloba)種子油、バオバブ(adansonia digitata)種子油、オオミテングヤシ(mauritia flexuosa)油、ゴウダソウ(lunaria annua)油、グンバイナズナ(pennycress)油、クフェア(cuphea)油、紅花油、ククイ油、クダモノトケイソウ種子油、モスカータバラ(musk rose)油、ヒマワリ油、トウモロコシ(maize)油、大豆油、マロウカボチャ(marrow)油、ブドウ種子油、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、杏仁油、マカデミア種子油、ヒマシ油、アボカド油、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、例えば、Stearineries Dubois社から販売されているもの、若しくはMiglyol 810、812、及び818の名称でDynamit Nobel社から販売されているもの、ホホバ油、又はシヤ脂油を挙げることができる。
【0018】
好ましくは、不揮発性油i)は、グリセロールと、1種又は複数種の同一又は異なる4~24個の炭素原子を含む飽和又は不飽和脂肪酸と、のエステルから;より好ましくは、グリセロールと、1種又は複数種の6~24個の炭素原子を含む脂肪酸と、のエステルから選択される。
【0019】
本発明の好ましい実施形態によれば、不揮発性油i)は、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、オリーブ油、マカデミア種子油、ヒマシ油、ヒマワリ油、大豆油、ゴマ油、杏仁油、コリアンダー種子油、メドウフォーム(limnanthes alba)種子油、ニゲラサチバ(nigella sativa)種子油、ペンタクレスラマクロロバ(Pentaclethra macroloba)種子油、バオバブ(adansonia digitata)種子油、オオミテングヤシ(mauritia flexuosa)油、ゴウダソウ(lunaria annua)油、グンバイナズナ油、クフェア(cuphea)油、及びこれらの混合物から選択され;より好ましくは、不揮発性油i)は、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルから選択される。
【0020】
好ましくは、本発明による組成物中の不揮発性油i)は、組成物の総質量に対し5~45質量%;より好ましくは7~40質量%;更に好ましくは10~35質量%を占める。
【0021】
好ましくは、本発明による組成物中の、グリセロールと、1種又は複数種の同一又は異なる4~30個の炭素原子を含む飽和又は不飽和脂肪酸と、のエステルは、組成物の総質量に対し5~45質量%;より好ましくは7~40質量%;更に好ましくは10~35質量%を占める。
【0022】
好ましくは、本発明による組成物中にトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルが存在する場合、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルは、組成物の総質量に対し、5~45質量%;より好ましくは7~40質量%;更に好ましくは10~35質量%を占める。
【0023】
揮発性油ii)
本発明によれば、組成物は、1種又は複数種の揮発性油ii)を、組成物の総質量に対し少なくとも10質量%含む。
【0024】
好ましくは、揮発性油ii)は、炭化水素系揮発性油、揮発性シリコーン油、及びこれらの混合物から選択される。
【0025】
本発明において使用することができる揮発性炭化水素系揮発性油の例として、8~16個の炭素原子を含む炭化水素系油、特に、石油由来のC~C16イソアルカン(イソパラフィンとしても知られる)、例えば、イソドデカン(2,2,4,4,6-ペンタメチルヘプタンとしても知られる)、イソデカン、及びイソヘキサデカン、並びに、例えばIsopar又はPermethylの商品名で販売されている油、分岐C~C16エステル及びネオペンタン酸イソヘキシル、並びにこれらの混合物から選択される揮発性炭化水素系油を挙げることができる。他の揮発性炭化水素系油、例えば、石油留分、特に、Shell社からShell Soltの名称で販売されているものも使用することができ;揮発性直鎖アルカン、例えば、Cognis社からの特許出願DE第102008012457号明細書に記載されているもの。
【0026】
好ましくは、炭化水素系揮発性油は、イソドデカン又はイソヘキサデカン等のC~C16イソアルカン;ウンデカン/トリデカン混合物等の直鎖C~C16アルカン;及びこれらの混合物から選択される。
【0027】
本発明に使用することができる揮発性シリコーン油の例として、次に示すものを挙げることができる:
- 一般式(I):
【化1】
(式中、Rは、2~4個の炭素原子を含むアルキル基を表し、その1個又は複数個の水素原子はフッ素又は塩素原子に置き換わっていてもよい)の揮発性直鎖アルキルトリシロキサン油。
【0028】
一般式(I)の油の中でも、Rがそれぞれ、ブチル基、プロピル基、又はエチル基である式(I)の油に相当する:
3-ブチル-1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン、
3-プロピル-1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン、及び
3-エチル-1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン、
を挙げることができる。
【0029】
- 上に述べたものなどの一般式(I)の揮発性直鎖アルキルトリシロキサン油とは異なる揮発性直鎖又は環状シリコーン油、特に、25℃における粘度が≦8センチストークス(8×10-6/s)であり、特に2~7個のケイ素原子を含むもの(これらのシリコーンは、1~10個の炭素原子を含むアルキル基又はアルコキシ基を任意選択的に含む)。本発明に使用することができる揮発性シリコーン油として、特に、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルヘキシルトリシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、及びドデカメチルペンタシロキサンを挙げることができる。
【0030】
好ましくは、揮発性シリコーン油は、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルヘキシルトリシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、及びこれらの混合物から選択され;より好ましくは、デカメチルシクロペンタシロキサンである。
【0031】
本発明の好ましい実施形態によれば、揮発性油ii)は、C~C16イソアルカン、直鎖C~C16アルカン、上に記載したものなどの一般式(I)の揮発性直鎖アルキルトリシロキサン油、上に記載したものなどの一般式(I)の揮発性直鎖アルキルトリシロキサン油とは異なる揮発性直鎖又は環状シリコーン油、及びこれらの混合物から選択され;より好ましくは、イソドデカン又はデカメチルシクロペンタシロキサンから選択される。
【0032】
好ましくは、本発明による組成物中の揮発性油ii)は、組成物の総質量に対し10~98質量%;より好ましくは20~95質量%;更に好ましくは30~90質量%、より良好には50~90質量%を占める。
【0033】
好ましくは、炭化水素系揮発性油が本発明による組成物中に存在する場合、炭化水素系揮発性油は、本発明による組成物の総質量に対し10~98質量%;より好ましくは20~95質量%;更に好ましくは30~90質量%、より良好には50~90質量%を占める。
【0034】
好ましくは、イソドデカンが本発明による組成物中に存在する場合、イソドデカンは、本発明による組成物の総質量に対し10~98質量%;より好ましくは20~95質量%;更に好ましくは30~90質量%、より良好には50~90質量%を占める。
【0035】
好ましくは、揮発性シリコーン油が本発明による組成物中に存在する場合、揮発性シリコーン油は、本発明による組成物の総質量に対し10~98質量%;より好ましくは20~95質量%;更に好ましくは30~90質量%、より良好には50~90質量%を占める。
【0036】
好ましくは、デカメチルシクロペンタシロキサンが本発明による組成物中に存在する場合、デカメチルシクロペンタシロキサンは、本発明による組成物の総質量に対し10~98質量%;より好ましくは20~95質量%;更に好ましくは30~90質量%、より良好には50~90質量%を占める。
【0037】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、不揮発性油i)の含有量対揮発性油ii)の含有量の質量比が0.01~10の間にあり、より好ましくは0.01~2の間(境界値を含む)にあり;更に好ましくは0.05~1の間(境界値を含む)にあり;より良好には0.1~0.9の間(境界値を含む)にある。
【0038】
親油性染料iii)
本発明によれば、組成物は、1種又は複数種の親油性染料iii)を含む。
【0039】
好ましくは、親油性染料iii)は、天然又は合成の親油性染料から選択される。
【0040】
本発明の好ましい実施形態によれば、親油性染料iii)は、DC Red 17、DC Red 21、DC Red 27、DC Green 6、DC Yellow 11、DC Violet 2、DC Orange 5、スーダンレッド、スーダンブラウン、キノリンイエロー、アナトー、クルクミン、カロテン、キサントフィル、親油性緑色染料、及びこれらの混合物から選択される。
【0041】
カロテンの中でも、特に、α-カロテン、β-カロテン、リコペンを挙げることができる。
【0042】
カロテンの中でも、より詳細には、β-カロテン(CI 40800、CI 75130、フードオレンジ5、又はナチュラルイエロー26)が使用されるであろう。β-カロテン分子は単結合及び二重結合が交互に連なる8個のイソプレン単位から構成される鎖であり、次に示す式を有する。
【化2】
【0043】
β-カロテンは、一部の果物及び野菜:ペッパー、人参、ほうれん草、レタス、トマト、サツマイモ、ブロッコリー、カンタロープ、カボチャ(squash)、アンズに含まれる。β-カロテンは、抽出、合成、又はバイオテクノロジー的手法のいずれかにより得ることができる。天然β-カロテンは、主としてレッドパームオイル及びアルファルファから得られ、ニンジン油からも得られる。
【0044】
特に好ましい形態によれば、β-カロテンは、油中分散液形態、例えば、LCW-Sensient Cosmetic Technologiesにより製造され、409185 CAROTENE-DISPERSION NATURAL 30% L-OS E-160Aの商品名で販売されている製品等の、β-カロテンのヒマワリ油中30%分散液の形態で、又はDSM Nutritional Products,Inc社から30% Beta Carotene FS(Fluid Suspension)の商品名で販売されている製品等の、トウモロコシ油中30%分散液の形態で使用されるであろう。
【0045】
キサントフィルの中でも、特に:
アスタキサンチン
アンテラキサンチン
シトラナキサンチン
クリプトキサンチン
カンタキサンチン
ジアトモキサンチン(diatomoxanthine)
フラボキサンチン
フコキサンチン
ルテイン
ロドキサンチン
ルビキサンチン
シホナキサンチン(siphonaxanthine)
ビオラキサンチン
ゼアキサンチン
を挙げることができる。
【0046】
キサントフィルの中でも、より具体的には、式:
【化3】
のアスタキサンチンが使用されるであろう。
【0047】
アスタキサンチンは、通常、ヘマトコッカス藻(Haematococcus pluvialis)から抽出される。これはテルペン類に属し、植物性化学物質(phytochemical)の一部である。甲殻類(カニ、エビ、ロブスター、ザリガニ、ロブスター)、サケ、タイ、及び一部の鳥類の羽に存在する。これは、β-カロテンから一連のヒドロキシル化及び酸化が起こった最終形態(ultimate term)と見なすことができる。
【0048】
特に好ましい形態によれば、アスタキサンチンは、油中分散液の形態で、例えば、ナンキョクオキアミ(Euphausia Superba)由来のアスタキサンチンのトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル混合物中5%分散液等、例えば、Commercial ASTAX-Sの名称でITANO REFRIGERATED FOOD社から販売されている製品、又は海藻であるヘマトコッカス藻(HAEMATOCOCCUS PLUVIALIS)から抽出されたアスタキサンチンのトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル混合物中4.5~7%分散液、例えば、商品名ASTA TROL-XとしてFUJI COLORから販売されている製品若しくはCYANOTECH社からBIOASTIN 5% OLEORESINの商品名で販売されている製品として使用されるであろう。
【0049】
ヘマトコッカス藻(HAEMATOCOCCUS PLUVIALIS)から抽出されたアスタキサンチンのトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル混合物中分散液、例えば、Athena Co LTDから市販されている製品であるAM Asta-SOD;Oryza Oil&Fat Chemical Coから市販されている製品であるAstaxanthin-5C及びAstaxanthin-PC1も挙げることができる。
【0050】
「緑色染料」とは、400~500nmの間の波長及び600~700nmの間の波長の放射光を吸収することができる任意の化粧用又は皮膚科用有機染料を意味する。
【0051】
本発明に従い使用することができる親油性緑色染料の中でも、式:
【化4】
のキニザリン(Ceres Green BB、D&C Green No.6、CI 61565、1,4-ジ-p-トルイドアントラキノン(toluidoanthraquinone)、Green No.202、キニザリングリーンSS)、例えば、LCW-Sensient Cosmetic TechnologiesからD&C Green 6 K7016の商品名で販売されている製品を挙げることができる。
【0052】
親油性緑色染料の中でも、より好ましくは、クロロフィルも挙げることができる。クロロフィルは、2価の陽イオンの錯体としての環状の4個のピロール環及びフィトール等の長鎖アルコールから構成される。その化学構造に応じて区別可能なクロロフィルの幾つかの形態が存在する。クロロフィルはあらゆる植物中に存在し、高等植物及び藻類にはクロロフィルbが含まれる。他に2種の変形体(variant)が、褐藻類及び一部のラン藻類にそれぞれクロロフィルc及びdとして存在する。クロロフィル中に存在する2価の陽イオンは、通常、ナトリウム又はカリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、並びに銅及び鉄等の遷移金属、又はこれらの混合物から選択される。
【0053】
クロロフィルは、銅錯体の形態で、より詳細には、ヒマワリ油又はブドウ種子油等の油中分散液の形態で、例えば、LCW-Sensient Cosmetic Technologiesから市販されている製品であるCHLOROPHYLLE LIPOSOLUBLE W 7208、503509 COPPER CHLOROPHYLL 15% L-OS、及びCHLOROPHYLLE LIPOSOLUBLE W 7208を使用することが好ましい。
【0054】
本発明の特定の一形態によれば、親油性染料はカプセル化形態で使用することができる。
【0055】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、D&C Violet 2(C.I.60725)、ベータカロテン(C.I.75130)、Green 6(C.I.61565)、アスタキサンチン、及びこれらの混合物から選択される親油性染料iii)を含む。
【0056】
好ましくは、本発明による組成物中の親油性染料iii)は、組成物の総質量に対し0.0001~10質量%、より好ましくは0.001~5質量%、更に好ましくは0.001~1質量%を占める。
【0057】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明による組成物は、ベータカロテン(C.I.75130)及びD&C Violet 2(C.I.60725)の混合物を含み;好ましくは、総含有量が、組成物の総質量に対し0.001~0.1質量%を占める。
【0058】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明による組成物は、アスタキサンチン及びD&C Violet 2(C.I.60725)の混合物を含み;好ましくは、総含有量が、組成物の総質量に対し0.001~0.1質量%を占める。
【0059】
本発明の他の特定の実施形態によれば、本発明による組成物は、Green 6(C.I.61565)、アスタキサンチン、及びD&C Violet 2(C.I.60725)の混合物を含み;好ましくは、総含有量が、組成物の総質量に対し0.001~0.1質量%を占める。
【0060】
不揮発性シリコーン油
本発明によれば、組成物は、更に1種又は複数種の不揮発性シリコーン油を任意選択的に含むことができる。
【0061】
好ましくは、不揮発性シリコーン油は、不揮発性非フェニル化シリコーン油、不揮発性フェニル化シリコーン油、及びこれらの混合物から選択される。
【0062】
「非フェニル化シリコーン油」という語は、フェニル置換基を一切有しないシリコーン油を指す。
【0063】
このような不揮発性非フェニル化シリコーン油の代表例としては、ポリジメチルシロキサン;アルキルジメチコン;ビニルメチルメチコン;に加えて、脂肪族基並びに/又はヒドロキシル基、チオール基、及び/若しくはアミン基等の官能基で修飾されたシリコーンを挙げることができる。
【0064】
「ジメチコン(dimethicone)」(INCI名)は、ポリジメチルシロキサン(化学名)に相当することに留意されたい。
【0065】
不揮発性非フェニル化シリコーン油は、好ましくは、不揮発性ジメチコン油から選択される。
【0066】
特にこれらの油は、次に示す不揮発性油から選択することができる:
- ポリジメチルシロキサン(PDMS)、
- シリコーン鎖に懸垂している及び/又は末端に位置する脂肪族基、特に、アルキル基又はアルコキシ基(これらの基は、それぞれ2~24個の炭素原子を含む)を含むPDMS(一例として、Evonik GoldschmidtからAbil Wax 9801の商品参照記号で販売されているセチルジメチコンを挙げることができる)、
- 脂肪族基、又はヒドロキシル基、チオール基、及び/若しくはアミン基等の官能基を含むPDMS、
- ヒドロキシル基、チオール基、及び/又はアミン基等の官能基で置換されたポリアルキルメチルシロキサン、
- 脂肪酸、脂肪アルコール、又はポリオキシアルキレン、及びこれらの混合物で変性されたポリシロキサン。
【0067】
好ましくは、これらの不揮発性非フェニル化シリコーン油は、ポリジメチルシロキサン;アルキルジメチコン;に加えて、脂肪族基、特に、C~C24アルキル基、並びに/又はヒドロキシル基、チオール基、及び/若しくはアミン基等の官能基を含むPDMSから選択される。
【0068】
非フェニル化シリコーン油は、特に、式(S-I):
【化5】
(式中:
、R、R、及びRは、一緒に又は別々に、1~6個の炭素原子を含むアルキル基であり、
及びRは、一緒に又は別々に、1~6個の炭素原子を含むアルキル基、ビニル基、アミン基、又はヒドロキシル基であり、
Xは、1~6個の炭素原子を含むアルキル基、ヒドロキシル基、又はアミン基であり、
n及びpは、流体化合物が得られるように、特に、25℃における粘度が9センチストークス(cSt)(9×10-6/s)~800000cStとなるように選択される整数である)のシリコーンから選択することができる。
【0069】
本発明により使用することができる不揮発性非フェニル化シリコーン油として、次に示すものを挙げることができる:
- 置換基R~R及びXがメチル基を表し、p及びnが、25℃における粘度が500000cStとなるようなもの、例えば、SE30の名称でGeneral Electric社から販売されている製品、AK 500000の名称でWacker社から販売されている製品、Mirasil DM 500000の名称でBluestar社から販売されている製品、及びDow Corning 200 Fluid 500000cStの名称でDow Corning社から販売されている製品、
- 置換基R~R及びXがメチル基を表し、p及びnが、25℃における粘度が60000cStとなるようなもの、例えば、Dow Corning社からDow Corning 200 Fluid 60000 CSの名称で販売されている製品及びWacker社からWacker Belsil DM 60000の名称で販売されている製品、
- 置換基R~R及びXがメチル基を表し、p及びnが、25℃における粘度が100cSt又は350cStとなるようなもの、例えば、それぞれ、Belsil DM 100及びDow Corning 200 Fluid 350 CSの名称でDow Corning社から販売されているもの、
- 置換基R~Rがメチル基を表し、X基がヒドロキシル基を表し、n及びpが、粘度が700cStとなるようなもの、例えば、Momentive社からBaysilone Fluid T0.7の名称で販売されている製品。
【0070】
「フェニル化シリコーン油」という表現は、少なくとも1個のフェニル置換基を有するシリコーン油を表す。
【0071】
不揮発性フェニル化シリコーン油は、少なくとも1個のジメチコン断片を有するものからも、又はそれを有しないものからも選択することができる。
【0072】
本発明によるジメチコン断片は、次に示す単位に相当する:
-Si(CH-O-。
【0073】
したがって、不揮発性フェニル化シリコーン油は、次に示すものから選択することができる:
a)次式(S-II):
【化6】
(式中、R基は、1価又は2価であり、互いに独立に、メチル又はフェニルを表し、但し、少なくとも1個のR基はフェニルを表す)に相当する、ジメチコン断片を任意選択的に有するフェニル化シリコーン油。
【0074】
好ましくは、この式中、フェニル化シリコーン油は、少なくとも3個、例えば、少なくとも4個、少なくとも5個、又は少なくとも6個のフェニル基を含む。
【0075】
b)次式(S-III):
【化7】
(式中、R基は、互いに独立に、メチル又はフェニルを表し、但し、少なくとも1個のR基はフェニルを表す)に相当する、ジメチコン断片を任意選択的に有するフェニル化シリコーン油。
【0076】
好ましくは、この式中、式(S-III)の化合物は、少なくとも3個、例えば、少なくとも4個、又は少なくとも5個のフェニル基を含む。
【0077】
上に述べた異なるフェニルオルガノポリシロキサン化合物の混合物も使用することができる。
【0078】
その例として、トリフェニル-、テトラフェニル-、又はペンタフェニル-オルガノポリシロキサンの混合物を挙げることができる。
【0079】
式(S-III)の化合物の中でも、より具体的には、式(S-III)中、少なくとも4個又は少なくとも5個のR基がフェニル基を表し、残りの基がメチルを表すものに相当する、ジメチコン断片を有しないフェニル化シリコーン油を挙げることができる。
【0080】
この種の不揮発性フェニル化シリコーン油は、好ましくは、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン又はテトラメチルテトラフェニルトリシロキサンである。これらは特に、Dow CorningからPH-1555 HRI又はDow Corning 555 Cosmetic Fluidの参照記号で販売されている(化学名:1,3,5-トリメチル-1,1,3,5,5-ペンタフェニルトリシロキサン;INCI名:トリメチルペンタフェニルトリシロキサン(trimethylpentaphenyltrisiloxane))である。或いはDow Corning 554 Cosmetic Fluidの参照記号でDow Corningから販売されているテトラメチルテトラフェニルトリシロキサンも使用することができる。
【0081】
これらは、具体的には、次式(S-IV)及び(S-IV’):
【化8】
(式中、Meはメチルを表し、Phはフェニルを表す)に相当する。
【0082】
c)次式(S-V):
【化9】
(式中、Meはメチルを表し、yは1~1000の間にあり、Xは:
-CH-CH(CH)(Ph)
を表す)に相当する、少なくとも1個のジメチコン断片を有するフェニル化シリコーン油。
【0083】
d)次式(S-VI):
【化10】
(式中:
- R~R10は、互いに独立に、飽和又は不飽和の直鎖、環状、又は分岐C~C30炭化水素系基であり、
- m、n、p、及びqは、互いに独立に、0~900の間の整数であり、但し、m+n+qの総和は0ではない)に相当するフェニル化シリコーン油及びこれらの混合物。
【0084】
好ましくは、m+n+qの総和は1~100の間にある。有利には、m+n+p+qの総和は1~900の間にあり、好ましくは1~800の間にある。
【0085】
好ましくは、qは0である。
【0086】
より詳細には、R~R10は、互いに独立に、飽和又は不飽和、好ましくは飽和の直鎖若しくは分岐C~C30炭化水素系基を表し、特に、好ましくは飽和のC~C20、特にC~C18炭化水素系基、又は単環式若しくは多環式C~C14、特にC10~C13アリール基、又はそのアルキル部が好ましくはC~Cアルキルであるアラルキル基を表す。
【0087】
好ましくは、R~R10は、それぞれ、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、デシル、ドデシル、又はオクタデシル基を表すか、或いは、フェニル、トリル、ベンジル、又はフェネチル基を表すことができる。R~R10は、特に、同一であってもよく、これに加えて、メチル基であってもよい。
【0088】
式(S-VI)の特定の実施形態によれば、次に示すものを挙げることができる:
i)次式(S-VII):
【化11】
(式中:
- R~Rは、互いに独立に、飽和又は不飽和の、直鎖、環状、若しくは分岐のC~C30炭化水素系基、好ましくはC~C14のアリール基、又はそのアルキル部がC~Cアルキルであるアラルキル基を表し、
- m、n、及びpは、互いに独立に、0~100の間の整数であり、但し、n+mの総和は1~100の間にある)に相当する、少なくとも1個のジメチコン断片を任意選択的に有するフェニル化シリコーン油、及びこれらの混合物。
【0089】
好ましくは、R~Rは、互いに独立に、C~C20、特にC~C18炭化水素系基、好ましくはアルキル基を表すか、又は単環式(好ましくはC)若しくは多環式の、C~C14、特にC10~C13アリール基を表すか、又はアラルキル基(好ましくは、アリール部はCアリールであり;アルキル部はC~Cアルキルである)を表す。
【0090】
好ましくは、R~Rは、それぞれ、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、デシル、ドデシル、又はオクタデシル基を表すか、或いはフェニル、トリル、ベンジル又はフェネチル基を表すことができる。
【0091】
~Rは、特に、同一であってもよく、これに加えて、メチル基であってもよい。好ましくは、式(S-VII)には、m=1若しくは2若しくは3及び/又はn=0及び/又はp=0若しくは1を適用することができる。
【0092】
特定の一実施形態によれば、不揮発性フェニル化シリコーン油は、少なくとも1個のジメチコン断片を有する不揮発性フェニル化シリコーン油から選択される。
【0093】
好ましくは、この種の油は、次に示す、式(S-VII)の化合物に相当する:
A)m=0であり、n及びpは、互いに独立に、1~100の間の整数である。
【0094】
好ましくは、R~Rはメチル基である。
【0095】
この実施形態によれば、シリコーン油は、好ましくは、ジフェニルジメチコン、例えば、信越化学工業株式会社(Shin Etsu)からのKF-54(400cSt)、信越化学工業株式会社(Shin Etsu)からのKF54HV(5000cSt)、信越化学工業株式会社(Shin Etsu)からのKF-50-300CS(300cSt)、信越化学工業株式会社(Shin Etsu)からのKF-53(175cSt)、又は信越化学工業株式会社(Shin Etsu)からのKF-50-100CS(100cSt)から選択される。
【0096】
B)pは1~100の間にあり、n+mの総和は1~100の間にあり、n=0である。
【0097】
少なくとも1個のジメチコン断片を任意選択的に有するこれらのフェニル化シリコーン油は、より詳細には、次式(S-VIII):
【化12】
(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、OR’は、-OSiMe基を表し、pは0であるか又は1~1000の間にあり、mは1~1000の間にある)に相当する。特に、m及びpは、化合物(S-VIII)が不揮発性油となるようなものである。
【0098】
少なくとも1個のジメチコン断片を有する不揮発性フェニル化シリコーンの第1の実施形態によれば、pは1~1000の間にあり、mは、より詳細には、化合物(S-VIII)が不揮発性油となるものである。トリメチルシロキシフェニルジメチコン、特に、例えば、Belsil PDM 1000の参照記号でWacker社から販売されているものを使用することができる。
【0099】
ジメチコン断片を有しない不揮発性フェニル化シリコーンの第2の実施形態によれば、pは0であり、mは1~1000の間にあり、特に、化合物(S-VIII)が不揮発性油となるものである。
【0100】
フェニルトリメチルシロキシトリシロキサン、特に、例えば、Dow Corning 556 Cosmetic Grade Fluid(DC556)の参照記号で販売されているものを使用することができる。
【0101】
ii)次式(S-IX):
【化13】
(式中:
- Rは、互いに独立に、飽和又は不飽和の、直鎖、環状、又は分岐C~C30炭化水素系基であり、好ましくは、Rは、C~C30アルキル基、好ましくはC~C14のアリール基、又はそのアルキル部がC~Cアルキルであるアラルキル基であり、
- m及びnは、互いに独立に、0~100の間の整数であり、但し、n+mの総和は1~100である)に相当する、ジメチコン断片を有しない不揮発性フェニル化シリコーン油、及びこれらの混合物。
【0102】
好ましくは、Rは、互いに独立に、飽和又は不飽和、好ましくは飽和の、直鎖又は分岐C~C30炭化水素系基、特に、好ましくは飽和のC~C20、特にC~C18、より詳細にはC~C10の炭化水素系基を表すか、単環式若しくは多環式C~C14、特にC10~C13アリール基を表すか、又は好ましくはアリール部がCアリールでありアルキル部がC~Cアルキルであるアラルキル基を表す。
【0103】
好ましくは、R基は、それぞれ、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、デシル、ドデシル、又はオクタデシル基を表すか、或いはフェニル、トリル、ベンジル、又はフェネチル基を表すことができる。
【0104】
R基は、特に、同一であってもよく、これに加えて、メチル基であってもよい。
【0105】
好ましくは、式(S-IX)には、m=1若しくは2若しくは3及び/又はn=0及び/又はp=0若しくは1を適用することができる。
【0106】
好ましい一実施形態によれば、式(S-IX)中、nは、0~100の間の整数であり、mは、1~100の間の整数であり、但し、n+mの総和は1~100の間にある。好ましくは、Rはメチル基である。
【0107】
一実施形態によれば、不揮発性フェニル化シリコーン油は、好ましくは、フェニルトリメチコン(n=0の場合)、例えば、Dow CorningからのDC556(22.5cSt)から選択されるか、又はジフェニルシロキシフェニルトリメチコン油(m及びnが1~100の間にある場合)、例えば、信越化学工業株式会社(Shin Etsu)からのKF56 A、若しくはRhone-PoulencからのSilbione 70663V30 Oil(28cSt)から選択される。括弧内の値は25℃における粘度を表す。
【0108】
e)次式:
【化14】
(式中:
、R、R、及びR、は、同一であっても異なっていてもよく、1~6個の炭素原子を含むアルキル基であり、
及びRは、同一であっても異なっていてもよく、1~6個の炭素原子を含むアルキル基であるか又はアリール基(好ましくはC~C14)であり、但し、R及びRの少なくとも1個はフェニル基であり、
Xは、1~6個の炭素原子を含むアルキル基、ヒドロキシル基、又はビニル基であり、
n及びpは、油の質量平均分子量が200000g/mol未満、好ましくは150000g/mol未満、より好ましくは100000g/mol未満となるように選択される、1以上の整数である)に相当する、少なくとも1個のジメチコン断片を任意選択的に有するフェニル化シリコーン油、及びこれらの混合物。
【0109】
f)並びにこれらの混合物。
【0110】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、1種又は複数種の不揮発性シリコーン油を更に含み;より好ましくは、不揮発性シリコーン油は、不揮発性フェニル化シリコーン油、不揮発性非フェニル化シリコーン油、及びこれらの混合物から選択され;更に好ましくは、不揮発性非フェニル化シリコーン油から選択され;より良好には、不揮発性ポリアルキルシロキサン、例えば、トリメチルシリル又はジメチルシラノール末端基を含む不揮発性ポリジメチルシロキサンから選択される。
【0111】
この実施形態によれば、不揮発性シリコーン油は、組成物の総質量に対し、好ましくは0.1~30質量%、より好ましくは1~25質量%、更に好ましくは5~20質量%を占める。
【0112】
好ましくは、不揮発性シリコーン油が本発明に従い存在する場合、不揮発性シリコーン油は、組成物の総質量に対し0.1~30質量%、より好ましくは1~25質量%、更に好ましくは5~20質量%を占める。
【0113】
好ましくは、ポリアルキルシロキサンが本発明に従い存在する場合、ポリアルキルシロキサンは、組成物の総質量に対し0.1~30質量%、より好ましくは1~25質量%、更に好ましくは5~20質量%を占める。
【0114】
組成物は、化粧的に許容される媒体を含むことができる。本発明の組成物に使用することができる化粧的に許容される媒体は、水、1種又は複数種の有機溶媒、又はこれらの混合物を含むことができる。
【0115】
有機溶媒の一例として、特に、25℃で、特に1.013×10Paにおいて液体であり、特に水溶性であるもの、例えばC~Cアルコール、特に、C~Cの脂肪族又は芳香族1価アルコール、C~Cポリオール、及びC~Cポリオールのエーテルを使用することができ、したがって、これらは単独で又は水との混合物として使用することができる。有利には、有機溶媒は、エタノール、イソプロパノール及びこれらの混合物から選択することができる。
【0116】
好ましくは、本発明による組成物は無水である。
【0117】
「無水組成物」という語は、組成物の総質量に対し、水を2質量%未満、好ましくは水を1質量%未満、より好ましくは水を0.5質量%未満含む組成物を意味し、より良好には、水を含まない組成物を意味する。この種の組成物において、水が存在する場合、これは組成物の調製時に添加されたものではなく、混合した原料中に残存していた水が持ち込まれたものである。
【0118】
好ましくは、組成物のpHは1.5~11の間にあり、より好ましくは3~9の間にあり、更に好ましくは4~8の間にあり、より良好には4~7.5の間にある。
【0119】
これらの組成物のpHは、アルカリ性化剤又は酸性化剤を用いることにより所望の値に調整することができる。アルカリ性化剤の中でも、例えば、アンモニア、アルカノールアミン、又は無機若しくは有機水酸化物を挙げることができる。酸性化剤の中でも、例えば、無機若しくは有機酸、例えば、塩酸、オルトリン酸、カルボン酸、例えば、酢酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、スルホン酸を挙げることができる。
【0120】
本発明による組成物はまた、化粧品添加剤、例えば、増粘剤、防腐剤、香料、カチオン性、アニオン性、及び/又は非イオン性界面活性剤、両性及び/又はカチオン性ポリマー、真珠光沢剤も含むことができる。
【0121】
これらの添加剤は、本発明による組成物中に、組成物の総質量に対し0~20質量%の範囲の量で存在することができる。
【0122】
当業者であれば、これらの任意選択的な添加剤及びその量を、本発明による組成物の特性に悪影響を及ぼすことがないよう慎重に選択するであろう。
【0123】
本発明による組成物はコンディショニングオイルの形態とすることもできる。
【0124】
好ましくは、本発明による組成物は、染色されたケラチン繊維、特に、染色された毛髪等の染色されたヒトのケラチン繊維上で使用される。
【0125】
組成物の使用は、湿った又は乾燥した毛髪上で、濯ぐ又は濯がない方式で行うことができる。
【0126】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、組成物は:
i)トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルを、組成物の総質量に対し少なくとも5質量%と;
ii)イソドデカン又はデカメチルシクロペンタシロキサンを、組成物の総質量に対し少なくとも10質量%と;
iii)D&C Violet 2(C.I.60725)、ベータカロテン(C.I.75130)、Green 6(C.I.61565)、アスタキサンチン、及びこれらの混合物から選択される1種又は複数種の親油性染料と;
iv)任意選択的な1種又は複数種の不揮発性ポリアルキルシロキサンと;
を含む。
【0127】
本発明の主題はまた、ケラチン繊維、特に、毛髪等のヒトのケラチン繊維をコンディショニングするための方法であって、上記ケラチン繊維に上に記載した本発明による組成物を適用するステップを少なくとも含む、方法にもある。
【0128】
好ましくは、本発明による方法は、染色されたケラチン繊維、特に、染色された毛髪等の染色されたヒトのケラチン繊維をコンディショニングするための方法である。
【0129】
本発明の特定の実施形態によれば、上に記載した本発明による組成物を上記ケラチン繊維に適用するステップを行った後、本発明による組成物を上記ケラチン繊維上に少なくとも60分間、より好ましくは少なくとも4時間放置する。換言すれば、上記ケラチン繊維上の組成物は、それを適用した後、少なくとも60分間;より好ましくは、それを適用した後、少なくとも4時間は洗い流されない。
【0130】
本発明の他の特定の実施形態によれば、上に記載した本発明による組成物を上記ケラチン繊維上に適用するステップを実施した後に、ケラチン繊維を濯ぐステップを実施することができる。
【0131】
本発明はまた、上に記載した本発明による組成物の、ケラチン繊維、特に毛髪等のヒトのケラチン繊維をコンディショニングするための使用にも関する。
【0132】
好ましくは、上に記載した本発明による組成物は、染色されたケラチン繊維、特に、染色された毛髪等の染色されたヒトのケラチン繊維をコンディショニングするために使用される。
【0133】
以下に示す実施例は、本発明を例示することを目的として提供するものであり、その範囲を制限するものと解釈すべきではない。
【実施例0134】
以下に示す成分を含む、本発明による組成物A及びBを調製した。量は全て、各組成物の総質量に対する活性物質の質量百分率で表す。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
組成物A及びBそれぞれ0.4グラムを、アジア人の脱色されて傷んだ毛髪(SA20)の毛束1グラムに適用した。
【0138】
毛束を2本の指の間に挟み、根元から毛先に向けて15秒間で約6回、優しく揉み込んだ。
【0139】
本発明による組成物A又はBの一方で処理した毛束は、未処理の毛束よりももつれが解けやすく、色の取り込みが良く、光沢が高く、滑らかであり、且つ縮れが少ないことが認められる。
【0140】
このことに加えて、本発明による組成物A又はBの一方で処理された毛束は、手にも皮膚にも汚れを残さなかった。
【外国語明細書】