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特開2023-86773ブリモニジン及びチモロールの固定用量合剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086773
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】ブリモニジン及びチモロールの固定用量合剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/498 20060101AFI20230615BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20230615BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230615BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230615BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230615BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230615BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20230615BHJP
   C07D 403/12 20060101ALN20230615BHJP
   C07D 285/10 20060101ALN20230615BHJP
【FI】
A61K31/498
A61K31/5377
A61K47/02
A61K47/38
A61K47/18
A61K9/08
A61P27/06
C07D403/12
C07D285/10
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023062494
(22)【出願日】2023-04-07
(62)【分割の表示】P 2021040110の分割
【原出願日】2016-03-17
(31)【優先権主張番号】62/135,320
(32)【優先日】2015-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591018268
【氏名又は名称】アラーガン、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ ジム
(72)【発明者】
【氏名】チャン チン-ミン
(72)【発明者】
【氏名】ゴア アヌラダ ヴイ
(72)【発明者】
【氏名】グラハム リチャード エス
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン アール スコット
(72)【発明者】
【氏名】ニアヴァナン セシャ
(72)【発明者】
【氏名】プジャラ チェタン ピー
(72)【発明者】
【氏名】シェン ジエ
(72)【発明者】
【氏名】ワーナー ケヴィン エス
(57)【要約】
【課題】緑内障、高眼圧症、及び眼圧降下の治療のための局所眼科用組成物を提供する。
【解決手段】約0.1%w/vのブリモニジン酒石酸塩及び約0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩を含む局所眼科用組成物により上記課題が達成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.1%w/vのブリモニジン酒石酸塩及び約0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩を含む、組成物。
【請求項2】
前記組成物は、0.1%w/vのブリモニジン酒石酸塩及び0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩を含むものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、0.1%w/vのブリモニジン酒石酸塩、0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩、0.1%w/vの塩化ナトリウム、2.15%w/vのリン酸ナトリウム二塩基性七水和物、0.22%w/vのリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、及び水を含むものである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、0.1%w/vのブリモニジン酒石酸塩、0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩、0.6%w/vのホウ酸、0.38%のホウ酸ナトリウム十水和物、0.5%w/vのカルボキシメチルセルロース、0.32%w/vの塩化ナトリウム、及び水を含むものである、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、さらに、リン酸ナトリウム二塩基性七水和物及びホウ酸ナトリウム十水和物からなる群より選択される少なくとも1種類の緩衝剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、pHが約7である、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、pHが7.0である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、さらに、水酸化ナトリウム及び塩酸の一方または両方を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の1日2回の投与は、少なくとも、0.2%w/vのブリモニジン酒石酸塩及び0.5%w/vのチモロールマレイン酸塩の固定用量を含む第二の組成物の1日2回の投与と同様に有効である、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物の1日2回の投与は、0.2%w/vのブリモニジン酒石酸塩及び0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩の固定用量を含む第二の組成物の1日2回の投与と比べた場合に、1種または複数の有害事象の発生率の低下をもたらす、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記1種または複数の有害事象は、アレルギー性結膜炎、結膜濾胞症、結膜充血、目のそう痒、眼灼熱感、及び眼刺痛からなる群より選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物は、保存剤を含まないものである、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物は、さらに、塩化ベンザルコニウムを含むものである、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記塩化ベンザルコニウムは、約0.001%w/v~約0.05%w/vの濃度で存在する、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物は、局所的点眼用に構成されている、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物は、緑内障及び高眼圧の治療用のものである、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
眼圧を降下するための組成物であって、該組成物は、本質的に、0.1%w/vのブリモニジン酒石酸塩、0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩、0.1%w/vの塩化ナトリウム、2.15%w/vのリン酸ナトリウム二塩基性七水和物、0.22%w/vのリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、及び水からなるものである、前記組成物。
【請求項18】
眼圧を降下するための組成物であって、該組成物は、本質的に、0.1%w/vのブリモニジン酒石酸塩、0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩、0.6%w/vのホウ酸、0.38%のホウ酸ナトリウム十水和物、0.5%w/vのカルボキシメチルセルロース、0.32%w/vの塩化ナトリウム、及び水からなるものである、前記組成物。
【請求項19】
包装材料及び該包装材料に入れられた医薬作用剤を含む製品であって、該包装材料は、該医薬作用剤が眼圧降下用に使用可能であることを示すラベルを含み、かつ該医薬作用剤は、眼圧降下に治療上有効であり、該医薬作用剤は、0.1%のブリモニジン酒石酸塩及び0.68%のチモロールマレイン酸塩を含む、前記製品。
【請求項20】
前記医薬作用剤は、0.1%w/vのブリモニジン酒石酸塩、0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩、0.1%w/vの塩化ナトリウム、2.15%w/vのリン酸ナトリウム二塩基性七水和物、0.22%w/vのリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、及び水を含む、請求項19に記載の製品。
【請求項21】
前記医薬作用剤は、0.1%w/vのブリモニジン酒石酸塩、0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩、0.6%w/vのホウ酸、0.38%のホウ酸ナトリウム十水和物、0.5%w/vのカルボキシメチルセルロース、0.32%w/vの塩化ナトリウム、及び水を含む、請求項19に記載の製品。
【請求項22】
前記医薬作用剤は、単位用量の保存剤を含まない構成で提供される、請求項19~21のいずれか1項に記載の製品。
【請求項23】
前記医薬作用剤は、複数用量の保存剤を含まない構成で提供される、請求項19~21のいずれか1項に記載の製品。
【請求項24】
前記医薬作用剤は、1種または複数の保存剤で保存されている複数用量の構成で提供される、請求項19から21のいずれか1項に記載の製品。
【請求項25】
緑内障または高眼圧の治療方法であって、約0.1%w/vのブリモニジン酒石酸塩及び約0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩を含む単独組成物を有効量で投与することを含む、前記方法。
【請求項26】
前記組成物は、1日2回、目に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物の1日2回の投与は、0.2%w/vのブリモニジン酒石酸塩及び0.5%w/vのチモロールマレイン酸塩を含む第二の単独組成物の1日2回の投与と比べた場合に、1種または複数の有害事象の発生率の低下をもたらす、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記1種または複数の有害事象は、アレルギー性結膜炎、結膜濾胞症、結膜充血、目のそう痒、眼灼熱感、及び眼刺痛からなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ブリモニジン及びチモロールは、緑内障または高眼圧症の患者の眼圧(「IOP」)を降下することが知られている点眼液として処方されてきた薬物である。この薬物は、様々な国で、複数の濃度(ブリモニジン0.1%、0.15%、0.2%、ならびにチモロール0.25%及び0.5%)の単独療法として利用可能である。これらの薬物は、単独療法では適正に制御することができない症状を持つ患者に関して同時に使用されることが知られている。ブリモニジン及びチモロールを配合して固定した合剤製品にすることは、損益比の改善を提供する点でも治療の投与を簡素化する点でも患者に利益をもたらす。
【発明の概要】
【0002】
1つの実施形態において、提供されるのは、緑内障及び高眼圧の治療用組成物であり、本組成物は、約0.1%w/vのブリモニジン酒石酸塩及び約0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩を含み、局所点眼用に構成されている。
【0003】
実施形態によっては、組成物は、0.1%w/vのブリモニジン酒石酸塩及び0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩を含む。組成物は、0.1%w/vのブリモニジン酒石酸塩、0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩、0.1%w/vの塩化ナトリウム、2.15%w/vのリン酸ナトリウム二塩基性七水和物、0.22%w/vのリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、及び水を含む場合がある。組成物はまた、0.1%w/vのブリモニジン酒石酸塩、0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩、0.6%w/vのホウ酸、0.38%のホウ酸ナトリウム十水和物、0.5%w/vのカルボキシメチルセルロース、0.32%w/vの塩化ナトリウム、及び水を含む場合がある。
【0004】
組成物によっては、さらに、リン酸ナトリウム二塩基性七水和物及びホウ酸ナトリウム十水和物からなる群より選択される少なくとも1種類の緩衝剤を含む場合がある。好ましくは、組成物は、pHが約7、またはpH7.0である。組成物は、さらに、水酸化ナトリウム及び塩酸の一方または両方を含む場合がある。
【0005】
実施形態によっては、1日2回の本組成物の投与は、少なくとも、固定用量の0.2%w/vのブリモニジン酒石酸塩及び0.5%w/vのチモロールマレイン酸塩を含む第二組成物の1日2回投与と同じぐらい有効である。実施形態によっては、1日2回の本組成物の投与は、固定用量の0.2%w/vのブリモニジン酒石酸塩及び0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩を含む第二組成物の1日2回投与と比べた場合に、1つまたは複数の有害事象の発生率の低下をもたらす。1つまたは複数の有害事象は、アレルギー性結膜炎、結膜濾胞症、結膜充血、目のそう痒、眼灼熱感、及び眼刺痛からなる群より選択することができる。ある特定の実施形態において、組成物は保存剤を含まない。しかしながら、実施形態によっては、組成物は、さらに、塩化ベンザルコニウムを含む。塩化ベンザルコニウムは、約0.001%w/v~約0.05%w/vの濃度で存在する場合がある。
【0006】
1つの特定の実施形態は、眼圧降下用組成物であり、この組成物は、本質的に、0.1%w/vのブリモニジン酒石酸塩、0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩、0.1%w/vの塩化ナトリウム、2.15%w/vのリン酸ナトリウム二塩基性七水和物、0.22%w/vのリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、及び水からなる。
【0007】
別の特定の実施形態は、眼圧降下用組成物であり、この組成物は、本質的に、0.1%w/vのブリモニジン酒石酸塩、0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩、0.6%w/vのホウ酸、0.38%のホウ酸ナトリウム十水和物、0.5%w/vのカルボキシメチルセルロース、0.32%w/vの塩化ナトリウム、及び水からなる。
【0008】
別の好適な実施形態において、提供されるのは、包装材料及び包装材料に入れられた医薬作用剤を含む製品であり、この包装材料は、この医薬作用剤が眼圧降下用に使用可能であることを示すラベルを含み、かつこの医薬作用剤は、眼圧降下に治療上有効であり、医薬作用剤は、0.1%のブリモニジン酒石酸塩及び0.68%のチモロールマレイン酸塩を含む。
【0009】
実施形態によっては、医薬作用剤は、0.1%w/vのブリモニジン酒石酸塩、0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩、0.1%w/vの塩化ナトリウム、2.15%w/vのリン酸ナトリウム二塩基性七水和物、0.22%w/vのリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、及び水を含む。実施形態によっては、医薬作用剤は、0.1%w/vのブリモニジン酒石酸塩、0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩、0.6%w/vのホウ酸、0.38%のホウ酸ナトリウム十水和物、0.5%w/vのカルボキシメチルセルロース、0.32%w/vの塩化ナトリウム、及び水を含む。医薬作用剤は、単位用量無保存剤構成で提供される場合がある。医薬作用剤は、複数用量無保存剤構成で提供される場合がある。医薬作用剤は、1種または複数の保存剤で保存されている複数用量構成で提供される場合がある。
【0010】
さらに別の実施形態において、提供されるのは、緑内障または高眼圧の治療方法であり、この方法は、約0.1%w/vのブリモニジン酒石酸塩及び約0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩を含む単独組成物を有効量で投与することを含む。
【0011】
実施形態によっては、組成物は、目に1日2回投与される。実施形態によっては、1日2回の組成物投与は、0.2%w/vのブリモニジン酒石酸塩及び0.5%w/vのチモロールマレイン酸塩を含む第二の単独組成物の1日2回投与と比べた場合に、1つまたは複数の有害事象の発生率の低下をもたらす。1つまたは複数の有害事象は、アレルギー性結膜炎、結膜濾胞症、結膜充血、目のそう痒、眼灼熱感、及び眼刺痛からなる群より選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A-C】図1A~Cは、眼組織及び血漿中のブリモニジン濃度を時間の関数として測定した実験結果を示す。
図2A-C】図2A~Cは、眼組織及び血漿中のチモロール濃度を時間の関数として測定した実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態は、緑内障、高眼圧症、及び眼圧降下の治療のための、ブリモニジンとチモロールの併用での局所的眼科使用に関する。ブリモニジン及びチモロールは、眼圧(「IOP」)を降下することが既知の2種の薬物であるが、これらは、併用投与した場合に相乗効果を示すことがわかった。そのような固定合剤の利益の中には、治療有効性及び治療投与の増強がある。
【0014】
ブリモニジンは、以下の式で表されるアルファアドレナリン受容体作動薬である。ブリモニジンの化学名は、5-ブロモ-6-(2-イミダゾリジニリデンアミノ)キノキサリンL-酒石酸塩であり、その構造式を以下に再現する。
【0015】
ブリモニジンは、Gタンパク質共役受容体の活性化を通じてアデニルシクラーゼの活性化を阻害する。これによりcAMPを低下させ、その結果、虹彩毛様体による眼房水産生を低下させる。末梢アルファ2アゴニスト活性は、血管の収縮作用をもたらす(クロニジン薬物療法で見ることができるとおり、中枢アルファ2アゴニスト活性が交感神経の緊張を低下させるのとは対照的である)。この血管収縮は、眼房水流の急性減少を招く。ブリモニジンの長期使用に由来するアルファアドレナリン受容体刺激によるプロスタグランジン放出の増加は、線維柱帯網を通じた眼房水のぶどう膜強膜流出量を増加させ、これは、ブリモニジンの眼房水低下効果と共に、開放隅角緑内障及び高眼圧症の治療でIOPを降下する助けとなる。
【0016】
ブリモニジンは、複数濃度(0.1%、0.15%、0.2%w/vのブリモニジン酒石酸塩)で単独療法として市販されており、Allergan、Inc.からアルファガン(登録商標)(または日本ではアイファガン(登録商標))として販売されている。ブリモニジンは、ブリモニジン酒石酸塩として投与されることが好ましいものの、他の塩の形もあり得る。遊離塩基も使用することができる。
【0017】
チモロールは、非選択的ベータアドレナリン受容体アンタゴニストであり、毛様体上皮のベータ受容体の遮断を通じて眼房水産生を低下させる。しかし、チモロールの眼圧降下作用の正確な薬理機構は、現時点では明確に確立されていない。
【0018】
チモロールの化学名は、(S)-1-(tert-ブチルアミノ)-3-[(4-モルホリン-4-イル-1,2,5-チアジアゾール-3-イル)オキシ]プロパン-2-オールであり、以下に示す化学構造を持つ。
【0019】
チモロールは、0.25%及び0.5%w/vのチモロールをはじめとする複数の濃度で市販されている。そのようなブランドの1つは、チモプトール(登録商標)である。チモロールは、マレイン酸塩を使用して投与することが好適なため、上記の濃度は、0.34%及び0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩として表すこともできる。もちろん、チモロールは、半水和物形をはじめとする他の塩の形で投与することもできる。遊離塩基も使用することができる。
【0020】
なお、一般的用法では、チモロールの濃度は、対イオンを含まない遊離塩基としての組成で示すことが多い。例えば、チモロールの0.5%w/v組成物は、典型的には、対イオンを含まない(すなわち、遊離塩基形の)チモロールの0.5%w/v組成物を示すと受け取られるだろう。これは、等価濃度である0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩に相当する。
【0021】
反対に、一般的用法では、ブリモニジンの濃度は、酒石酸対イオンを明白に言及することなくブリモニジン酒石酸塩としての組成で示す場合がある。例えば、ブリモニジンの0.2%w/v組成物は、典型的には、ブリモニジン酒石酸塩の0.2%w/v組成物を示すと受け取られ、対イオンを含まないブリモニジンとは受け取られない。対イオンを含まない(すなわち、遊離塩基形の)ブリモニジンの等価濃度は、0.132%w/vとなる。同様に、ブリモニジン酒石酸塩の0.1%w/v組成物は、0.066%w/vのブリモニジン遊離塩基に等しい。
【0022】
単独療法では、0.2%、0.15%、または0.1%のブリモニジン酒石酸塩を、1日3回投薬することができ、一方0.68%チモロールマレイン酸塩は1日2回投薬することができる。ある特定の患者、例えば単独療法では眼圧を適切に制御するのに不十分であるような患者などでは、これら2種の薬物を、併用様式で同時に使用することができる。しかしながら、そのような治療様式は、1つ目の薬物を投薬し、数分待ってから2つ目の薬物を投薬しなければならないなど複数の苦労を伴う。同じく、ブリモニジンは1日に3回投薬する必要があるが、チモロールは2回しかないため、患者は、ブリモニジン単独の投薬なのか、偶然にチモロールと一緒の投薬なのかを覚えておくという点でさらに苦労を強いられる可能性がある。研究からも、そのような組み合わせ方の併用療法の結果として有害事象が増加する可能性があることが示されている。
【0023】
本発明の実施形態は、0.1%w/vのブリモニジン酒石酸塩及び0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩を含む固定用量組成物に関する。固定用量組成物では、ブリモニジン及びチモロールは、別々に投与されるのではなく、単独組成物で(例えば、単独のボトルで)投与される。そのような固定用量組成物は、本明細書中記載されるとおり多くの利益をもたらす。
【0024】
ブリモニジン及びチモロールのある特定の固定用量組成物、例えば、限定ではなく、0.1%w/vのブリモニジン酒石酸塩及び0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩を含む組成物などは、投与された場合に、他の薬物組成物と比較して、もたらす副作用が少ない可能性がある。例えば、上記組成物の投与は、0.2%w/vのブリモニジン酒石酸塩、または0.15%w/vのブリモニジン酒石酸塩、または0.1%w/vのブリモニジン酒石酸塩を含む単独療法の投与と比較した場合に、もたらす副作用が少ない可能性がある。さらに、上記組成物の投与は、例えば、0.2%w/vのブリモニジン酒石酸塩及び0.68%w/vのチモロールマレイン酸塩の固定合剤と比較した場合に、もたらす副作用が少ない可能性がある。
【0025】
本明細書中開示される組成物で認可される可能性がある減少した副作用の例として、アレルギー性結膜炎、結膜濾胞症、結膜充血、目のそう痒、眼灼熱感、及び刺痛を挙げることができるが、これらに限定されない。本明細書中開示される組成物は、他の副作用、例えば、無力症、眼瞼炎、角膜びらん、抑うつ、流涙症、眼脂、目の乾き、目への刺激、眼痛、眼瞼浮腫、眼瞼紅斑、眼瞼そう痒、異物感、頭痛、高血圧、口腔乾燥、傾眠、点状表層角膜炎、及び視覚障害などの発生率も低下させる可能性がある。
【0026】
好ましくは、本明細書で開示される組成物は、液剤、特に好ましくは水性液剤として局所的に投与される。実施形態によっては乳剤も可能である。好ましくは、本明細書中開示される組成物は、目及び眼球表面への局所的投与に適合しておりそのような投与用に配合される。
【0027】
配合する際、ある特定の実施形態は、1種または複数の粘度増強剤も含むことができる。粘度増強剤として、ある特定の組成物の粘度を上昇させ及び粘膜付着を向上させることができる粘度増強重合体を挙げることができる。理論に固執するつもりはないが、粘度増強剤の存在は、目の角膜表面上でのブリモニジン及びチモロールの滞留時間を延長させ、それにより眼球吸収の改善を提供する可能性がある。ある特定の粘度増強重合体として、とりわけ、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ジェランガム、ヒアルロナン、ペムレン、ポロキサマー、カルボマー、ポリカルボフィル、キトサン、ゼラチン、ペクチン、及びポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシルプロピルセルロースなどが挙げられる。カルボキシメチルセルロースナトリウムは、製品の粘度を上昇させる例として表1の組成物Bに使用される。
【0028】
ある特定の実施形態は、1種または複数の追加の保存剤も提供することができる。局所的眼使用に適しておりかつ組成物中に存在する他の化合物と適合性のある保存剤であれば、なんでも、本明細書中開示される実施形態に組み込むことができる。そのようなものとして、塩化ベンザルコニウム、チメロサール、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸二ナトリウム、ソルビン酸、Purite(登録商標)(安定化二酸化塩素)、または当業者に既知である他の作用剤を挙げることができるが、これらに限定されない。好適な実施形態において、保存剤は、塩化ベンザルコニウムである。
【0029】
使用可能な塩化ベンザルコニウムの濃度は、約0.001%w/v~約0.05%w/v、より好ましくは約0.005%w/v~約0.02%w/vの可能性がある。チメロサールの適切な濃度は、約0.001%~約0.9%w/vの可能性がある。クロロブタノールは、約0.1%~約0.5%w/vで使用される可能性がある。メチルパラベンは、約0.1%~約0.3%w/vで使用される可能性がある。プロピルパラベンは、約0.01%~約0.2%w/vで使用される可能性がある。フェニルエチルアルコールは、約0.2%~約0.5%w/vで使用される可能性がある。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)は、約0.005%~約0.2%w/vで使用される可能性がある。ソルビン酸は、約0.05%~約0.2%w/vで使用される可能性がある。Purite(登録商標)は、約0.005%~約0.02%w/vで使用される可能性がある。上記の他の保存剤について、適切な代替濃度も、もちろん使用可能である。
【0030】
ある特定の実施形態において、本明細書中開示される組成物は、医薬作用剤を追加の包装材料とともに含む製品として製剤することができる。そのような包装材料は、好ましくは、ラベルを含み、ラベルは、包装材料の外側、内側、または独立した小冊子に置くことができる。このラベルは、組成及びその中に含まれる医薬作用剤についての情報、投薬情報、患者の安全情報、規制情報、医師/処方情報などを含むことができる。
【0031】
本明細書中開示される実施形態は、例えば、単位用量構成で、または複数用量構成で提供することができる。典型的には、単位用量構成は、単回用量の組成物を容器中に含む。実施形態によっては、この容器は、再利用不可の包装、例えば、カプセル、LDPEプラスチックバイアルなどの形をしている場合がある。好ましくは、単位用量構成は、保存剤の添加がなにもない組成物を含む。複数用量構成は、保存剤が含まれる場合も無保存剤の場合もある、すなわちこの構成は、保存剤が含まれるまたは無保存剤である組成物を含有する場合があり、典型的には、複数用量構成物の入った容器から、少なくとも2回、好ましくは複数回、ある用量で吐出させることができる。そのような複数用量構成に使用できる容器は、典型的な点眼薬ボトル、または他の種類のボトルを含むことができる。複数用量無保存剤構成では、眼感染症の危険性及び容器に残っている組成物の劣化の可能性を防ぐため、微生物増殖を防ぐまたは遅らせると思われるある種の機構を容器に持たせることが好ましい。そのような機構として、容器に抗菌コーティングを施すこと、ならびに容器への微生物侵入を防ぐ容器吐出及び穴構成(例えば、フィルター、一方通行穴など)を挙げることができる。
【実施例0032】
実施例1
表1に、0.1%ブリモニジン酒石酸塩及び0.5%チモロール遊離塩基(すなわち0.68%チモロールマレイン酸塩)を含有する固定用量合剤の組成物の2つの実施形態を示す。これらの組成物は、好ましくは、緩衝化、等張性、滅菌、かつ無保存剤の、局所的投与用点眼液である。薬物を送達するためにこれらの組成物に使用される容器密閉システムとして、単位用量LDPEプラスチックバイアルまたは使用中の不純物侵入を防ぐ自己保存特質を有する改良型複数用量点眼薬ボトルが可能である。もちろん、保存剤が含まれる組成物も可能である。
【0033】
表1.ブリモニジン及びチモロールの固定用量合剤の例

【0034】
市販のブリモニジン及びチモロール単独療法製品と比較して、表1に記載する無保存剤実施形態の組成物は、ある特定の患者、例えば、ある特定の保存剤により引き起こされる可能性がある損傷または刺激に対して敏感な眼球表面を持つ患者などでの製品の慢性使用について、より良い安全性特性を提供する。
【0035】
なお、当然ながら、上記の実施形態は、無保存剤組成物に限定されるものではない。局所的眼使用に適している保存剤であれば、なんでも、ブリモニジン/チモロール合剤製品に組み込むことができ、そのような保存剤として、塩化ベンザルコニウム及び上記の他の保存剤が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、塩化ベンザルコニウムの適切な濃度として、約0.005%~約0.02%w/v、例えば、0.005%w/v、0.01%w/v、または0.02%w/vが可能である。チメロサールの適切な濃度として、約0.001%~約0.9%w/vが可能である。クロロブタノールは、約0.1%~約0.5%w/vで使用される可能性がある。メチルパラベンは、約0.1%~約0.3%w/vで使用される可能性がある。プロピルパラベンは、約0.01%~約0.2%w/vで使用される可能性がある。フェニルエチルアルコールは、約0.2%~約0.5%w/vで使用される可能性がある。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)は、約0.005%~約0.2%w/vで使用される可能性がある。ソルビン酸は、約0.05%~約0.2%w/vで使用される可能性がある。
【0036】
実施例2
薬物動態(「PK」)実験を行って、表1に提示した2種の組成物を局所的投薬した後のウサギにおける、ブリモニジン及びチモロールの眼及び全身吸収を評価した。
【0037】
表2は、表1の組成物A及びBを用いたウサギ実験の試験計画を示す。ウサギを、体重に基づいて無作為にグループに振り分け、試験組成物(組成物AまたはB)及び比較物(アイファガン(登録商標)及びチモプトール(登録商標))の単回両側局所的点眼を行った。具体的には、各群は、12匹のメスのウサギからなり、2匹の動物(合計で4つの目)を、各時点で試験した。投薬は、35μLの投薬量を用いた単回両側局所的投薬からなるものであった。試料を、投薬から15、30、60、120、240、480分後の時点で収集し、定量分析して、ブリモニジン及びチモロールの組織濃度及び血漿濃度を求めた。
【0038】
表2.0.1%ブリモニジン酒石酸塩/0.5%チモロール合剤組成物の薬物動態試験

a:2種の点眼薬の投薬間に5分の間隔を設ける
【0039】
ブリモニジン酒石酸塩0.1%/チモロール0.5%合剤組成物を投与した場合、チモロール0.5%単独療法と比較して、目のチモロール曝露が増加したことが観測された。この知見は、当業者にとって自明ではないものである。
【0040】
ウサギPK試験の結果を表3及び表4に、ならびに図1及び図2にまとめる。表3及び図1は、ウサギ眼房水、虹彩毛様体、及び血漿で見つかったブリモニジンの量を示す。なお、順次投薬レジメンの結果は、図1に再現されていない。虹彩毛様体は、ブリモニジン及びチモロールのIOP降下作用ゆえに、それら両方の標的組織であるものの、眼房水は、虹彩毛様体が浸っている液体である。結果として、眼房水での薬物濃度は、虹彩毛様体の実質組織の薬物濃度と高い相関にあることが多い。鼻涙管排出のため、局所的に塗布された点眼薬は、体循環での薬物曝露をもたらし、曝露範囲は血漿での薬物濃度により評価される。この濃度は、薬物と関連した全身副作用と相関することが多い。
【0041】
上記の説明において、「Cmax」は、実験過程で到達したピーク薬物濃度を表す。「AUC」は、薬物濃度時間曲線の曲線下面積を表す。
【0042】
図1Bは、虹彩毛様体において、組成物A及びBが両方とも、0.1%ブリモニジン酒石酸塩単独での投与よりも高い、ブリモニジンのCmax及びAUCの値を達成したことを示す。このことは有望な結果である。なぜなら、虹彩毛様体は、IOPを降下するための標的組織だからである。
【0043】
図1A及び図1Cは、それぞれ、眼房水及び血漿のブリモニジン濃度を示すものであるが、これらの図において、組成物A及びBは両方とも、0.1%ブリモニジン酒石酸塩単独よりも低いCmax及びAUCの値をもたらした。
【0044】
表3に、図1A図1Cに示す実験から得られた薬物動態パラメーターをまとめる。
【0045】
図2A及び図2Bにおいて、組成物A及びBは両方とも、0.5%チモロール単独投与よりも高い、眼房水及び虹彩毛様体での目のチモロール曝露を示した。次に図2Cでは、組成物A及びBの血漿濃度は、0.5%チモロール単独投与と比較して、低下した濃度を示した。これらの低下した血漿濃度は、心血管副作用を有する可能性があるチモロールの全身曝露を減少させる目的において好ましい。
【0046】
表4に、図2A図2Cに示す実験から得られた薬物動態パラメーターをまとめる。

表3.ブリモニジンPK特性
a:2種の点眼薬の投薬間に5分の間隔を設ける
max値は、一元配置分散分析により群間で比較可能である(p>0.05)
【0047】
表4.チモロールPK特性
a:2種の点眼薬の投薬間に5分の間隔を設ける
max値は、群間で比較可能である(一元配置分散分析でp>0.05)
【0048】
特に示されない限り、本明細書及び請求項で使用される、成分の量、分子量などの性質、反応条件などを表す数字は全て、あらゆる場合において「約」という用語により修飾されるものとする。したがって、そうではないと示されない限り、本明細書及び添付の請求項で記載される数値パラメーターは、得ようとする所望の性質に応じて、変化する可能性のある近似値である。少なくとも、及び請求項の範囲への均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメーターは、少なくとも、記載される有効桁数に照らして、及び通常の丸め技法を応用することにより、解釈されるべきである。
【0049】
本発明を記載する文脈で(特に以下の請求項の文脈で)使用される「a」、「an」、「the」(「該」、「前記」)という用語、及び同様な記述は、本明細書中特に示されない限りまたは文脈から明白に反論されない限り、単数及び複数の両方を包含すると解釈されるものとする。本明細書中記載される方法は全て、本明細書中特に示されない限りまたは文脈から明白に反論されない限り、任意の適切な順序で行うことができる。本明細書中提示されるあらゆる例示、または例示的言語(例えば、「such as」(「のような」、「など」))の使用は、本発明をよりわかりやすくするためにすぎず、どの請求項の範囲にも制限をかけるものではない。明細書中の言語に、本発明の実施に必須である特許請求されていない構成要素を何か示すと見なされるべきものはない。
【0050】
本明細書中開示される代替要素または実施形態のグループ分けは、制限として見なされるものではない。各グループメンバーは、個別に言及及び特許請求される場合もあるし、グループの他のメンバーまたは本明細書中見出される他の構成要素との任意の組み合わせで言及及び特許請求される場合もある。1つのグループの1つまたは複数のメンバーは、簡単のため及び/または特許性のため、1つのグループに含まれる場合があり、または1つのグループから削除される場合があることが予想される。そのような包含または削除が起こる場合はどのようなものでも、明細書が、そのグループを修飾されたとおりに含有し、従って、添付の請求項で使用される全てのマーカッシュグループの書面による説明を満たすと見なされる。
【0051】
本発明を実行するために最適な様式であると本発明者らに既知であるものを含めて、ある特定の実施形態が、本明細書中記載される。当然、それら記載される実施形態の改変形態は、上記の説明を読むことで当業者には明らかとなるだろう。本発明者は、当業者がそのような改変形態を適切なものとして採用することを期待し、また本発明者らは、本発明が、本明細書中具体的に記載された以外のやり方で実施されることを意図する。したがって、請求項は、適用法により認められるとおりに、請求項に挙げられる対象物の全ての修飾物及び等価物を含む。その上、上記の構成要素のあらゆる可能な改変物におけるそれらの任意の組み合わせが、本明細書中特に示されない限りまたは文脈から明白に反論されない限り、企図されている。
【0052】
当然ながら、本明細書中開示される実施形態は、請求項の原理を例示するものである。採用可能な他の修飾物は、請求項の範囲内にある。すなわち、限定ではなく例として、代替実施形態を、本明細書の教示に従って利用することができる。したがって、請求項は、示され及び記載されるとおりそのままの実施形態に限定されるのではない。
図1A-C】
図2A-C】
【外国語明細書】