(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086860
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】キノリン‐4(1H)-オン誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 215/233 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
C07D215/233
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072752
(22)【出願日】2023-04-26
(62)【分割の表示】P 2019559680の分割
【原出願日】2018-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2017238004
(32)【優先日】2017-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522039429
【氏名又は名称】株式会社MMAG
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】森川 明紀
(72)【発明者】
【氏名】黒田 寛和
(72)【発明者】
【氏名】山本 一美
(72)【発明者】
【氏名】中西 希
(57)【要約】
【課題】一般的な工業設備の下で目的とするキノロン誘導体を高純度で製造・単離する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、ハロゲン化アルミニウムを用いて、ケトン、およびアントラニル酸誘導体を反応させ、塩基性条件下でハロゲン化アルミニウムを除くことを含む、キノロン誘導体を製造する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウム:
【化1】
[式中、Zはハロゲン原子を表す。]を用いて、
一般式(2):
【化2】
[式中、
R
1およびR
2は、互いに独立して、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
1-4アルキル基、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
2-4アルケニル基、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
2-4アルキニル基、
置換されてもよいC
3-8環状脂肪族炭化水素基、
置換されてもよい芳香族炭化水素基、もしくは
置換されてもよい複素環基を表すか、
または、R
1とR
2は一緒になって基-(CH
2)
p-(ここで、pは2-6を表す)を表し、
ここで、前記直鎖または分岐鎖C
1-4アルキル基、前記直鎖または分岐鎖C
2-4アルケニル基、および前記直鎖または分岐鎖C
2-4アルキニル基における置換基の各々は、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基であり、
前記C
3-8環状脂肪族炭化水素基における置換基は、直鎖または分岐鎖C
1-4アルキル基、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基であり、
前記芳香族炭化水素基における置換基は、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
1-4アルキル基、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
1-4アルコキシ基、およびハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
1-4アルコキシ基により置換されてもよいフェノキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基であり、
前記複素環基における置換基は、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
1-4アルキル基、およびハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基である。]
で示されるケトン、および
一般式(6):
【化3】
[式中、
R
5は、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
1-4アルキル基、または
置換されてもよいC
3-8環状脂肪族炭化水素基を表し、
R
6は、水素原子、ハロゲン原子、または-B-R
7を表し、
ここで、
Bは、
酸素原子、硫黄原子、N(R
8)、N(R
8)-CO、またはCO-N(R
8)を表し、
R
7およびR
8は、互いに独立して、
水素原子、
置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
1-4アルキル基、
置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
2-4アルケニル基、
置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
2-4アルキニル基、
置換されてもよいC
3-8環状脂肪族炭化水素基、
置換されてもよい芳香族炭化水素基、または、
置換されてもよい複素環基を表し、
ここで、前記直鎖または分岐鎖C
1-4アルキル基、前記直鎖または分岐鎖C
2-4アルケニル基、および前記直鎖または分岐鎖C
2-4アルキニル基における置換基の各々は、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基であり、
前記C
3-8環状脂肪族炭化水素基における置換基は、直鎖または分岐鎖C
1-4アルキル基、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基であり、
前記芳香族炭化水素基および前記複素環基における置換基の各々は、
ハロゲン原子、
ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
1-4アルキル基、
ハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
1-4アルキル基、
ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
2-4アルケニル基、
ハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
2-4アルケニル基、
ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
2-4アルキニル基、
ハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
2-4アルキニル基、
ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
1-4アルコキシ基、
ハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
1-4アルコキシ基、
ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
2-4アルケニルオキシ基、
ハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
2-4アルケニルオキシ基、
ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
2-4アルキニルオキシ基、
ハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
2-4アルキニルオキシ基、および
ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
1-4アルコキシ基により置換されてもよいフェノキシ基
からなる群から選択される少なくとも一つの基であり、
X
2は、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
1-4アルキル基、または
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
1-4アルコキシ基を表し、
ここで、前記直鎖または分岐鎖C
1-4アルキル基、および前記直鎖または分岐鎖C
1-4アルコキシ基における置換基の各々は、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基である。]
で示されるアントラニル酸誘導体
を反応させ、塩基性条件下でハロゲン化アルミニウムを除くことを含む、一般式(7)で示されるキノロン誘導体:
【化4】
[式中、R
1、R
2、R
6、X
2は前記と同義である。]を製造する方法。
【請求項2】
一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムと一般式(2)で示されるケトンとを予め混合する工程を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムと一般式(2)で示されるケトンとの混合物に、一般式(4)で示されるスルフィド:
【化5】
[式中、R
3およびR
4は、互いに独立して、置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
1-4アルキル基、または、R
3とR
4は一緒になって基-(CH
2)
q-(qは3-7である)を表し、lは1もしくは2を表す。]
をさらに加える工程を含んでなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
Zはハロゲン原子を表し、
R1およびR2は、互いに独立して、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルキル基、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C2-4アルケニル基、または
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C2-4アルキニル基を表し、
ここで、前記直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基、前記直鎖または分岐鎖C2-4アルケニル基、および前記直鎖または分岐鎖C2-4アルキニル基における置換基の各々は、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基であり、
R3とR4は一緒になって基-(CH2)q-(qは3-7である)を表し、lは1または2を表し、
R5は、直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルキル基、または、C3-8環状脂肪族炭化水素基を表し、
R6は、水素原子、ハロゲン原子、または-B-R7を表し、
ここで、Bは、酸素原子、硫黄原子、N(R8)、N(R8)-CO、またはCO-N(R8)を表し、
R7およびR8は、互いに独立して、ハロゲン原子、またはハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルコキシ基により置換されてもよい芳香族炭化水素基を表し、
X2は、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルキル基、またはハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルコキシ基を表す、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムが、塩化アルミニウムである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
一般式(2)で示されるケトンが、3-ペンタノンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
一般式(6)で示されるアントラニル酸誘導体が、下記一般式(8)を表す、
【化6】
[式中、R
5、X
2は前記と同義であり、
R
9、R
10、R
11、R
12、およびR
13は互いに独立して、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
1-4アルキル基、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
2-4アルケニル基、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
2-4アルキニル基、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
1-4アルコキシ基、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
2-4アルケニルオキシ基、または、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
2-4アルキニルオキシ基を表し、
ここで、R
9、R
10、R
11、R
12、およびR
13における置換基の各々は、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基である。]
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
一般式(4)で示されるスルフィドが、テトラヒドロチオフェン-1、1-ジオキシドである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
塩基性条件下でのハロゲン化アルミニウムの除去が、苛性水溶液およびアルコールを用いた塩基性条件下での濾過により行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
一般式(7)で示されるキノロン誘導体が、下記一般式(9)を表す、
【化7】
[式中、R
1、R
2、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、およびX
2は前記と同義である。]
請求項1~9に記載の方法。
【請求項11】
製造される一般式(7)で示されるキノロン誘導体が、2-エチル-3、7-ジメチル-6-(4-(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン-4(1H)-オンである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本特許出願は、2017年12月12日に出願された日本国特許出願2017-238004号に基づく優先権の主張を伴うものであり、かかる先の特許出願における全開示内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、医農薬中間体として有用なキノリン-4(1H)-オン骨格を有する誘導体(以下、キノロン誘導体と記す)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、医農薬原体および医農薬中間体として、様々なキノロン誘導体が数多く報告されている。キノロン誘導体は、例えば、キノリン誘導体の製造における合成中間体として用いることが広く知られている。特許文献1では、医薬分野におけるキノリン誘導体が、抗マラリア活性化合物として開示されており、非特許文献1ではキノリン誘導体が抗腫瘍活性を持つ化合物として開示されている。
【0004】
また、農薬分野においては、特許文献2ではキノリン誘導体が農園芸用殺虫剤として開示されており、特許文献3ではキノリン誘導体が農園芸用殺菌剤として開示されている。
【0005】
いずれの文献に開示されているキノリン誘導体の製造法においても、キノロン誘導体は重要な合成中間体として記載されており、特許文献2、3、および非特許文献1、2で開示されているキノロン誘導体の製造法としては、前駆体であるアニリン誘導体とβ‐ケトエステルまたはマロン酸化合物を、酸性条件下、および/または芳香族系溶媒中で加熱することにより当該キノロン誘導体を製造している。しかしながら、これら製造方法においては、200℃以上の極めて高い温度、および/または多量の酸の存在下での反応を必要とする。そのため、一般的な工業設備条件に適した製造方法ではない。さらには、原料であるアニリン誘導体の安定性や反応点の位置選択性などに問題があり、高収率、高選択的に目的とするキノロン誘導体を製造することができない。
【0006】
特許文献4において、特許文献3記載のキノロン誘導体の製造法として、アニリン誘導体の代わりにアントラニル酸誘導体を、β‐ケトエステルの代わりにケトンを原料とし、キシレン還流下、塩化アルミニウムを使用する反応点の位置選択性の問題を解決した製造法が開示されている。ここで、この製造方法においては、一般的に各種溶剤に対して難溶であるキノロン誘導体を塩酸酸性条件下で塩化アルミニウムと分離し濾過により単離している。しかしながら、工業的に使用される濾過設備の材質は一般的に金属であり、腐食性の問題から上記製造方法で工業的に目的物を得ることは困難である。さらに、上記製造方法は、比較的高価である主原料であるケトンを、アントラニル酸誘導体1モルに対して約4.5モル倍量と大過剰に使用しており、工業的に適した製造方法とは言い難い。また、上記製造方法は、反応後の後処理における加熱洗浄において、アルコール溶剤をアントラニル酸誘導体1モルに対して約1000mLと多量に使用しており、容量の増大および溶剤の過剰使用の点から、工業的にも環境的にも不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2012/167237号公報
【特許文献2】WO2006/013896号公報
【特許文献3】特開2007-077156号公報
【特許文献4】WO2010/007964号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ORGANIC LETTERS、15(9)巻、2124-2127頁、「Synthesis of Intervenolin、 an Antitumor Natural Quinolone with Unusual Substituents」
【非特許文献2】Organic Syntheses、29巻、70頁、「2-Methyl-4-hydroxyquinoline」
【発明の概要】
【0009】
本発明は、一般的な工業設備要件の下で目的とするキノロン誘導体を高純度で製造・単離する方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明者らは、鋭意研究の結果、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムを用いて、一般式(2)で示されるケトンおよび一般式(6)で示されるアントラニル酸誘導体を反応させた後に、塩基性条件下において塩化アルミニウムを分離することにより、一般的な工業設備要件の下で、目的とするキノロン誘導体を高純度で製造・単離させうることを見出した。さらに、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムおよび一般式(2)で示されるケトンを予め混合させること、必要に応じ、さらに一般式(4)で示されるスルフィドを混合させることにより、一般式(6)で示されるアントラニル酸誘導体を出発原料とする、一般式(7)で示されるキノロン誘導体を高収率、高選択的に製造・単離でき、原料を削減できることを見出した。さらに、使用されるアルコールをエタノール以上の高級アルコールとすることで、その使用量を削減しうることを見出した。
【0011】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] 一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウム:
【化1】
[式中、Zはハロゲン原子を表す。]を用いて、
一般式(2):
【化2】
[式中、
R
1およびR
2は、互いに独立して、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
1-4アルキル基、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
2-4アルケニル基、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
2-4アルキニル基、
置換されてもよいC
3-8環状脂肪族炭化水素基、
置換されてもよい芳香族炭化水素基、もしくは
置換されてもよい複素環基を表すか、
または、R
1とR
2は一緒になって基-(CH
2)
p-(ここで、pは2-6を表す)を表し、
ここで、前記直鎖または分岐鎖C
1-4アルキル基、前記直鎖または分岐鎖C
2-4アルケニル基、および前記直鎖または分岐鎖C
2-4アルキニル基における置換基の各々は、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基であり、
前記C
3-8環状脂肪族炭化水素基における置換基は、直鎖または分岐鎖C
1-4アルキル基、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基であり、
前記芳香族炭化水素基における置換基は、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
1-4アルキル基、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
1-4アルコキシ基、およびハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
1-4アルコキシ基により置換されてもよいフェノキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基であり、
前記複素環基における置換基は、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
1-4アルキル基、およびハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基である。]
で示されるケトン、および
一般式(6):
【化3】
[式中、
R
5は、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
1-4アルキル基、または
置換されてもよいC
3-8環状脂肪族炭化水素基を表し、
R
6は、水素原子、ハロゲン原子、または-B-R
7を表し、
ここで、
Bは、
酸素原子、硫黄原子、N(R
8)、N(R
8)-CO、またはCO-N(R
8)を表し、
R
7およびR
8は、互いに独立して、
水素原子、
置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
1-4アルキル基、
置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
2-4アルケニル基、
置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
2-4アルキニル基、
置換されてもよいC
3-8環状脂肪族炭化水素基、
置換されてもよい芳香族炭化水素基、または、
置換されてもよい複素環基を表し、
ここで、前記直鎖または分岐鎖C
1-4アルキル基、前記直鎖または分岐鎖C
2-4アルケニル基、および前記直鎖または分岐鎖C
2-4アルキニル基における置換基の各々は、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基であり、
前記C
3-8環状脂肪族炭化水素基における置換基は、直鎖または分岐鎖C
1-4アルキル基、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基であり、
前記芳香族炭化水素基および前記複素環基における置換基の各々は、
ハロゲン原子、
ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
1-4アルキル基、
ハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
1-4アルキル基、
ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
2-4アルケニル基、
ハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
2-4アルケニル基、
ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
2-4アルキニル基、
ハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
2-4アルキニル基、
ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
1-4アルコキシ基、
ハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
1-4アルコキシ基、
ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
2-4アルケニルオキシ基、
ハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
2-4アルケニルオキシ基、
ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
2-4アルキニルオキシ基、
ハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
2-4アルキニルオキシ基、および
ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C
1-4アルコキシ基により置換されてもよいフェノキシ基
からなる群から選択される少なくとも一つの基であり、
X
2は、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
1-4アルキル基、または
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
1-4アルコキシ基を表し、
ここで、前記直鎖または分岐鎖C
1-4アルキル基、および前記直鎖または分岐鎖C
1-4アルコキシ基における置換基の各々は、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基である。]
で示されるアントラニル酸誘導体
を反応させ、塩基性条件下でハロゲン化アルミニウムを除くことを含む、一般式(7)で示されるキノロン誘導体:
【化4】
[式中、R
1、R
2、R
6、X
2は前記と同義である。]
を製造する方法。
[2] 一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムと一般式(2)で示されるケトンとを予め混合する工程を含んでなる、[1]に記載の方法。
[3] 一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムと一般式(2)で示されるケトンとの混合物に、一般式(4)で示されるスルフィド:
【化5】
[式中、R
3およびR
4は、互いに独立して、置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
1-4アルキル基、または、R
3とR
4は一緒になって基-(CH
2)
q-(qは3-7である)を表し、lは1もしくは2を表す。]
をさらに加える工程を含んでなる、[1]または[2]に記載の方法。
[4] Zはハロゲン原子を表し、
R
1およびR
2は、互いに独立して、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
1-4アルキル基、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
2-4アルケニル基、または
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
2-4アルキニル基を表し、
ここで、前記直鎖または分岐鎖C
1-4アルキル基、前記直鎖または分岐鎖C
2-4アルケニル基、および前記直鎖または分岐鎖C
2-4アルキニル基における置換基の各々は、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基であり、
R
3とR
4は一緒になって基-(CH
2)
q-(qは3-7である)を表し、lは1または2を表し、
R
5は、直鎖もしくは分岐鎖C
1-4アルキル基、またはC
3-8環状脂肪族炭化水素基を表し、
R
6は、水素原子、ハロゲン原子、または-B-R
7を表し、
ここで、Bは、酸素原子、硫黄原子、N(R
8)、N(R
8)-CO、またはCO-N(R
8)を表し、
R
7およびR
8は、互いに独立して、ハロゲン原子、またはハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
1-4アルコキシ基により置換されてもよい芳香族炭化水素基を表し、
X
2は、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
1-4アルキル基、またはハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
1-4アルコキシ基を表す、[3]に記載の方法。
[5] 一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムが、塩化アルミニウムである、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 一般式(2)で示されるケトンが、3-ペンタノンである、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7] 一般式(6)で示されるアントラニル酸誘導体が、下記一般式(8)を表す、
【化6】
[式中、R
5、X
2は前記と同義であり、
R
9、R
10、R
11、R
12、およびR
13は互いに独立して、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
1-4アルキル基、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
2-4アルケニル基、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
2-4アルキニル基、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
1-4アルコキシ基、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
2-4アルケニルオキシ基、または、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C
2-4アルキニルオキシ基を表し、
ここで、R
9、R
10、R
11、R
12、およびR
13における置換基の各々は、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよいC
1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基である。]
[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8] 一般式(4)で示されるスルフィドが、テトラヒドロチオフェン-1、1-ジオキシドである、[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9] 塩基性条件下でのハロゲン化アルミニウムの除去が、苛性水溶液およびアルコールを用いた塩基性条件下での濾過により行われる、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10] 一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウム、および一般式(2)で示されるケトンを予め混合させる工程において、一般式(3)で示されるハロゲン化アルミニウム混合物:
【化7】
[式中、Z、R
1、R
2は上記記載と同義であり、kは1以上の数を表す。]が調製される、[2]に記載の方法。
[11] 一般式(3)で示されるハロゲン化アルミニウム混合物に、さらに一般式(4)で示されるスルフィドを加え、
一般式(5)で示されるハロゲン化アルミニウム混合物:
【化8】
[式中、Z、R
1、R
2、R
3、R
4、k、lは上記記載と同義であり、mは0以上の数を表す。]を調製する工程を含んでなる、[10]に記載の方法。
[12] 一般式(7)で示されるキノロン誘導体が、下記一般式(9)を表す、
【化9】
[式中、R
1、R
2、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、およびX
2は前記と同義である。]
[1]~[7]に記載の方法。
[13] 製造される一般式(7)で示されるキノロン誘導体が、2-エチル-3、7-ジメチル-6-(4-(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン-4(1H)-オンである、[1]~[12]のいずれかに記載の方法。
【0012】
一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムを用いて、一般式(2)で示されるケトンおよび一般式(6)で示されるアントラニル酸誘導体の反応後に、塩基性条件下において塩化アルミニウムを分離することにより一般的な工業設備要件の下で目的とするキノロン誘導体を高純度で製造・単離できる。さらに、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウム、および一般式(2)で示されるケトンを予め混合させること、必要に応じ、さらに一般式(4)で示されるスルフィドを混合させることにより、一般式(7)で示されるキノロン誘導体を高収率、高選択的に製造・単離でき、原料を削減できる。さらに、使用されるアルコールをエタノール以上の高級アルコールとすることで、その使用量を削減できる。
【発明の具体的説明】
【0013】
本発明において、キノリン-4(1H)-オン(キノロン)は4-ヒドロキシキノリンと互変異性の関係にあり、本明細書中で同義な物質としてみなすものとする。
一般式中の置換基または基の定義は、本発明による化合物の一般的定義を提供する。前記および後記の一般式において挙げられる好適な置換基および/または基の範囲は、以下に具体的に説明される。
【0014】
Zはハロゲン原子を表す。本明細書において「ハロゲン原子」とは、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素が挙げられ、好ましくはフッ素、塩素または臭素であり、最も好ましくは塩素である。
【0015】
本明細書において「環状脂肪族炭化水素基」とは、飽和または不飽和の環状脂肪族炭化水素基を表し、シクロアルキル基等の環状アルキル、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、ビシクロアルキル基等が挙げられる。その炭化数は特に限定されないが、3~10が挙げられ、好ましくは、3~8であり、より好ましくは、3~6である。
上記環状脂肪族炭化水素基の具体例として、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、デカニル基等が挙げられ、好ましくは、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基である。
【0016】
本明細書において「芳香族炭化水素基」は、その炭素数は特に限定されないが、3~15が挙げられ、好ましくは6~10である。芳香族炭化水素基は、芳香環(例えば、炭素数4~7の芳香環)が1個および2個以上結合(縮合も含む)している基であってもよい。
上記芳香族炭化水素基の具体例として、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基等が挙げられ、好ましくは、フェニル基、ナフチル基である。
【0017】
本明細書において「複素環基」とは、それぞれ個別にS、OまたはNから選ばれる1個またはそれより多いへテロ原子を有する、不飽和結合を含んでも良い1つ以上の環状構造を有する3~10員数の環状置換基、または1つ以上の環状構造を有する3~10員数の芳香環が挙げられ、好ましくはヘテロ原子としてS、OまたはNを一個含んでなる5または6員複素飽和または芳香環、ヘテロ原子としてNを二個含んでなる5または6員複素飽和または芳香環、ヘテロ原子としてOまたはSと、Nを一個含んでなる5または6員複素飽和または芳香環である。
上記複素環基の具体例として、(2-または3-)チエニル基等のチエニル基、(2-または3-)フリル基等のフリル基、(1-、2-または3-)ピロリル基等のピロリル基、(1-または2-)イミダゾリル基等のイミダゾリル基、(1-、3-、4-または5-)ピラゾリル基等のピラゾリル基、(3-、4-または5-)イソチアゾリル基等のイソチアゾリル基、(3-、4-または5-)イソキサゾリル基等のイソキサゾリル基、(2-、4-または5-)チアゾリル基等のチアゾリル基、(2-、4-または5-)オキサゾリル基等のオキサゾリル基、(2-、3-または4-)ピリジル基等のピリジル基、または(2-、4-、5-または6-)ピリミジニル基等のピリミジニル基が挙げられ、好ましくは、ピリジル基、チエニル基である。
【0018】
R1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、およびX2が表す直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基は、直鎖または分岐鎖のいずれであってもよいC1-4アルキル基を表し、好ましくは直鎖または分岐鎖C1-3アルキル基である。
R1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、およびX2が表す直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、i-プロピル基、またはn-ブチル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、またはi-プロピル基である。
【0019】
R1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、およびX2が表す直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基は、置換されてもよく、その置換基として、ハロゲン原子、直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基、置換されてもよい芳香族炭化水素基、および置換されてもよい複素環基からなる群から選択される少なくとも一つの基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基である。ここで、ハロゲン原子が2つ以上存在する場合、同一であっても異なっていてもよい。また、上記芳香族炭化水素基および上記複素環基の置換基としては、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基、およびハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基により置換されてもよいアルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基である。
R1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、およびX2が表す、置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基の具体例としては、上述の非置換の直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基の具体例に加え、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ-n-プロピル基、ヘプタフルオロ-i-プロピル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基、(1-または2-)クロロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、メトキシメチル基、2-トリフルオロメトキシエチル基、ベンジル基、(4-(4-(トリフルオロメトキシ))フェノキシ)ベンジル基、ピリジルメチル基等が挙げられ、好ましくは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ-n-プロピル基、ヘプタフルオロ-i-プロピル基、(4-(4-(トリフルオロメトキシ))フェノキシ)ベンジル基、またはピリジルメチル基であり、より好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0020】
R1、R2、R7、およびR8が表す直鎖または分岐鎖C2-4アルケニル基は、直鎖または分岐鎖のいずれであってもよい、C2-4アルケニル基を表し、好ましくは直鎖または分岐鎖C2-3アルケニル基である。
R1、R2、R7、およびR8が表す直鎖または分岐鎖C2-4アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基等が挙げられ、好ましくは、ビニル基である。
【0021】
R1、R2、R7、およびR8が表す直鎖または分岐鎖C2-4アルケニル基は置換されてもよく、その置換基としては、ハロゲン原子、直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基、置換されてもよい芳香族炭化水素基、置換されてもよい複素環基からなる群から選択される少なくとも一つの基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基、および置換されてもよい芳香族炭化水素基からなる群から選択される少なくとも一つの基である。ここで、ハロゲン原子が2つ以上存在する場合、同一であっても異なっていてもよい。また、上記芳香族炭化水素基および上記複素環基の置換基としては、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基、およびハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基により置換されてもよいアルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基からなる群から選択される少なくとも一つの基である。
R1、R2、R7、およびR8が表す、置換されてもよい直鎖または分岐鎖C2-4アルケニル基の具体例としては、上述の非置換の直鎖または分岐鎖C2-4アルケニル基の具体例に加え、1,2,2-トリフルオロビニル、3,3-ジフルオロ-2-プロペン-1-イル、3,3-ジクロロ-2-プロペン-1-イル、1-フェニルエテニル基、2-フェニルエテニル基等が挙げられ、好ましくは、3,3-ジクロロ-2-プロペン-1-イルである。
【0022】
R1、R2、R7、およびR8が表す直鎖または分岐鎖C2-4アルキニル基は、直鎖または分岐鎖のいずれであってもよい、C2-4アルキニル基を表し、好ましくは直鎖または分岐鎖C2-3アルキニル基である。
R1、R2、R7、およびR8が表す直鎖または分岐鎖C2-4アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基等が挙げられ、好ましくは、1-プロピニル基である。
【0023】
R1、R2、R7、およびR8が表す直鎖または分岐鎖C2-4アルキニル基は置換されてもよく、その置換基としては、ハロゲン原子、直鎖または分岐鎖C2-4アルコキシ基、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基、置換されてもよい芳香族炭化水素基、置換されてもよい複素環基からなる群から選択される少なくとも一つの基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基、および置換されてもよい芳香族炭化水素基からなる群から選択される少なくとも一つの基である。ここで、ハロゲン原子が2つ以上存在する場合、同一であっても異なっていてもよい。また、上記芳香族炭化水素基および上記複素環基の置換基としては、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基、およびハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基により置換されてもよいアルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基からなる群から選択される少なくとも一つの基である。
R1、R2、R7、およびR8が表す、置換されてもよい直鎖または分岐鎖C2-4アルキニル基の具体例としては、上述の非置換の直鎖または分岐鎖C2-4アルキニル基の具体例に加え、フェニルエチニル基、(2-ピリジル)エチニル基、(3-ピリジル)エチニル、(4-ピリジル)エチニル基等が挙げられ、好ましくは、フェニルエチニル基である。
【0024】
R1、R2、R5、R7、およびR8が表すC3-8環状脂肪族炭化水素基は、炭素数は3~8であれば特に限定されないが、炭素数が3~6であることが好ましい。
R1、R2、R5、R7、およびR8が表わすC3-8環状脂肪族炭化水素基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ビシクロヘプチル基、シクロオクチル基、ビシクロオクチル基等が挙げられ、好ましくは、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、またはシクロヘキシル基である。
【0025】
R1、R2、R5、R7、およびR8が表すC3-8環状脂肪族炭化水素基は、置換されてもよく、その置換基としては、直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基である。ここで、ハロゲン原子が2つ以上存在する場合、同一であっても異なっていてもよい。
R1、R2、R5、R7、およびR8が表す、置換されてもよいC3-8環状脂肪族炭化水素基の具体例としては、上述の非置換のC3-8環状脂肪族炭化水素基の具体例に加え、メチルシクロプロピル基、エチルシクロプロピル基、プロピルシクロプロピル基、メチルシクロへキシル基、エチルシクロへキシル基、メトキシシクロヘキシル基、トリフルオロメトキシシクロヘキシル基等が挙げられ、好ましくは、メトキシシクロヘキシル基、またはトリフルオロメトキシシクロヘキシル基である。
【0026】
R1およびR2が表す芳香族炭化水素基は、置換されてもよく、その置換基としてはハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基、およびハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基により置換されてもよいフェノキシ基(すなわち、フェノキシ基は直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基により置換されてもよく、該C1-4アルコキシ基はハロゲン原子により置換されてもよい)からなる群から選択される少なくとも一つの基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基、およびハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基により置換されてもよいフェノキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基である。ここで、ハロゲン原子が2つ以上存在する場合、同一であっても異なっていてもよい。
R1およびR2が表す、置換されてもよい芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、4-メチルフェニル基等のメチルフェニル基、2-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基などのクロロフェニル基、3,4-ジクロロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、3,4-ジフルオロフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、4-ブロモフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、4-(トリフルオロメトキシ)フェニル基、4-トルイル基等のトルイル基、(4-(4-(トリフルオロメトキシ))フェノキシ)フェニル基、4-メトキシフェニル基、4-ブロモ-2-クロロフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、好ましくは、フェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、4-(トリフルオロメトキシ)フェニル基、または(4-(4-(トリフルオロメトキシ))フェノキシ)フェニル基である。
【0027】
R1およびR2が表す複素環基は、置換されてもよく、その置換基としてはハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4のアルキル基から選択される少なくとも一つの基である。ここで、ハロゲン原子が2つ以上存在する場合、同一であっても異なっていてもよい。
R1およびR2が表す、置換されてもよい複素環基の具体例としては、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジル基、フリル基、チエニル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、チアジアゾリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基、トリフルオロメチルピリジル基、トリフルオロメチルチエニル基、トリフルオロメチルイソキサゾリル基等が挙げられ、好ましくは、トリフルオロメチルピリジル基である。
【0028】
R1およびR2が一緒になって表す、基-(CH2)p-(pは2-6である)としては、基-(CH2)2-、基-(CH2)3-、基-(CH2)4-、基-(CH2)5-、基-(CH2)6-等が挙げられ、好ましくは、基-(CH2)3-、または基-(CH2)4である。
【0029】
X2が表す直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基は、直鎖または分岐鎖のいずれであってもよいC1-4アルコキシ基を表し、好ましくは、直鎖または分岐鎖C1-3アルコキシ基である。
X2が表す直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i-プロピルオキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基等が挙げられ、好ましくは、メトキシ基である。
【0030】
X2が表す直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基は、置換されてもよく、その置換基としては、ハロゲン原子、直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基、置換されてもよい芳香族炭化水素基、および置換されてもよい複素環基から選択される少なくとも一つの基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基である。ここで、ハロゲン原子が2つ以上存在する場合、同一であっても異なっていてもよい。また、上記芳香族炭化水素基および上記複素環基の置換基としては、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基により置換されてもよいアルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子、またはハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基からなる群から選択される少なくとも一つの基である。
X2が表す置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基の具体例としては、上述の非置換の直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基の具体例に加え、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基等が挙げられ、好ましくは、トリフルオロメトキシ基である。
【0031】
R3およびR4が一緒になって表す基-(CH2)q-(qは3-7である)としては、基-(CH2)4-、基-(CH2)5-、基-(CH2)6-等が挙げられ、好ましくは、基-(CH2)4-、または、基-(CH2)5-である。
【0032】
kは1以上の数を表し、好ましくは、1~6である。
lは1または2を表し、好ましくは、2である。
mは0以上の数を表し、好ましくは、0~2である。
【0033】
R6は、水素原子、ハロゲン原子、または-B-R7を表す。
【0034】
Bは、酸素原子、硫黄原子、N(R8)、N(R8)-CO、またはCO-N(R8)を表す。
【0035】
R7およびR8が表す芳香族炭化水素基は置換されてもよく、その置換基としては、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルキル基、ハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルコキシ基により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルキル基、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C2-4アルケニル基、ハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルコキシ基により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C2-4アルケニル基、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C2-4アルキニル基、ハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルコキシ基により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C2-4アルキニル基、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルコキシ基、ハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルコキシ基により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルコキシ基、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C2-4アルケニルオキシ基、ハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルコキシ基により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C2-4アルケニルオキシ基、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C2-4アルキニルオキシ基、ハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルコキシ基により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C2-4アルキニルオキシ基、および、ハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルコキシ基により置換されてもよいフェノキシ基(例えば、4-(トリフルオロメトキシ)フェノキシ基)から選択される少なくとも一つの基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルキル基、およびハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基である。ここで、ハロゲン原子が2つ以上存在する場合、同一であっても異なっていてもよい。
【0036】
R7およびR8が表す、置換されてもよい芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、4-メチルフェニル基等のメチルフェニル基、2-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基等のクロロフェニル基、3,4-ジクロロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、3,4-ジフルオロフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、4-ブロモフェニル基、4-(トリフルオロメトキシ)フェニル基等のトリフルオロメトキシフェニル基、4-トルイル基等のトルイル基、4-トリフルオロメチルフェニル基等のトリフルオロメチルフェニル基、4-メトキシフェニル基等のメトキシフェニル基、2-クロロ-4-トリフルオロメチルフェニル基、3-クロロ-4-トリフルオロメチルフェニル基、4-ブロモ-2-クロロフェニル基、4-(4-(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)フェニル基、ビフェニル-4-イル基、4-(1-ブトキシ)フェニル基、ナフチル基、アントラシル基、フェナントリル基が挙げられ、好ましくは、4-(トリフルオロメチル)フェニル基、または4-(トリフルオロメトキシ)フェニル基である。
【0037】
R7およびR8が表す複素環基は、置換されてもよく、その置換基としては、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルキル基、ハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルコキシ基により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルキル基、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C2-4アルケニル基、ハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルコキシ基により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C2-4アルケニル基、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C2-4アルキニル基、ハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルコキシ基により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C2-4アルキニル基、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルコキシ基、ハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルコキシ基により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルコキシ基、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C2-4アルケニルオキシ基、ハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルコキシ基により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C2-4アルケニルオキシ基、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C2-4アルキニルオキシ基、および、ハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルコキシ基により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C2-4アルキニルオキシ基、および、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基により置換されてもよいフェノキシ基から選択される少なくとも一つの基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルキル基、ハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基である。ここで、ハロゲン原子が2つ以上存在する場合、同一であっても異なっていてもよい。
【0038】
R7およびR8が表す、置換されてもよい複素環基の具体例としては、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジル基、フリル基、チエニル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、チアジアゾリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基、トリフルオロメチルピリジル基、トリフルオロメチルチエニル基等が挙げられ、好ましくは、ピリジル基、チエニル基、トリフルオロメチルピリジル基、またはトリフルオロメチルチエニル基である。
【0039】
本明細書において「C1-4アルコキシ基」は、直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基を意味する。
ここで、R1、R2、R7、およびR8におけるC1-4アルコキシ基および直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基は、直鎖または分岐鎖のいずれであってもよいC1-4アルコキシ基を表し、好ましくは、直鎖または分岐鎖C1-3アルコキシ基である。
R1、R2、R7、およびR8におけるC1-4アルコキシ基および直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i-プロピルオキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基等が挙げられ、好ましくは、メトキシ基である。
【0040】
R9、R10、R11、R12、およびR13が表す直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基は、直鎖または分岐鎖のいずれであってもよい、C1-4アルキル基を表し、好ましくは直鎖または分岐鎖C1-3アルキル基である。
R9、R10、R11、R12、およびR13が表す直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、またはi-プロピル基である。
【0041】
R9、R10、R11、R12、およびR13が表す直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基は、置換されてもよく、その置換基としては、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子である。ここで、ハロゲン原子が2つ以上存在する場合、同一であっても異なっていてもよい。
R9、R10、R11、R12、およびR13が表す、置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基の具体例としては、上述の非置換の直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基の具体例に加え、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、クロロジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ-n-プロピル基、ヘプタフルオロ-i-プロピル基、2,2,2-トリフルオロ-1-トリフルオロメチル-1-メトキシエチル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基、(1-または2-)クロロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、メトキシメチル基、2-トリフルオロメトキシエチル基等が挙げられ、好ましくは、ジフルオロメチル基、クロロジフルオロメチル基、またはトリフルオロメチル基である。
【0042】
R9、R10、R11、R12、およびR13が表す直鎖または分岐鎖C2-4アルケニル基は、直鎖または分岐鎖のいずれであってもよい、C2-4アルケニル基を表し、好ましくは直鎖または分岐鎖C2-3アルケニル基である。
R9、R10、R11、R12、およびR13が表す直鎖または分岐鎖C2-4アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-プロペニル基等が挙げられ、好ましくは、ビニル基、または1-プロペニル基である。
【0043】
R9、R10、R11、R12、およびR13が表す直鎖または分岐鎖C2-4アルケニル基は置換されてもよく、その置換基としては、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子である。ここで、ハロゲン原子が2つ以上存在する場合、同一であっても異なっていてもよい。
R9、R10、R11、R12、およびR13が表す、置換されてもよい直鎖または分岐鎖C2-4アルケニル基の具体例としては、上述の非置換の直鎖または分岐鎖C2-4アルケニル基の具体例に加え、3,3-ジクロロ-2-プロペニル基、3,3-ジフルオロ-2-プロペニル基、1,2,2-トリフルオロビニル基、1-トリフルオロメチル-1-プロペニル基等が挙げられ、好ましくは、3,3-ジクロロ-2-プロペニル基である。
【0044】
R9、R10、R11、R12、およびR13が表す直鎖または分岐鎖C2-4アルキニル基は、直鎖または分岐鎖のいずれであってもよい、C2-4アルキニル基を表し、好ましくは直鎖または分岐鎖C2-3アルキニル基である。
R9、R10、R11、R12、およびR13が表す直鎖または分岐鎖C2-4アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基等が挙げられ、好ましくは、1-プロピニル基である。
【0045】
R9、R10、R11、R12、およびR13が表す直鎖または分岐鎖C2-4アルキニル基は、置換されてもよく、その置換基としては、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子である。ここで、ハロゲン原子が2つ以上存在する場合、同一であっても異なっていてもよい。
R9、R10、R11、R12、およびR13が表す、置換されてもよい直鎖または分岐鎖C2-4アルキニル基の具体例としては、上述の非置換の直鎖または分岐鎖C2-4アルキニル基の具体例に加え、2-フルオロエチニル基、3,3,3-トリフルオロ-1-プロピニル基等が挙げられ、好ましくは、2-フルオロエチニル基である。
【0046】
R9、R10、R11、R12、およびR13が表す直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基は、直鎖または分岐鎖のいずれであってもよいC1-4アルコキシ基を表し、好ましくは、直鎖または分岐鎖C1-3アルコキシ基である。
R9、R10、R11、R12、およびR13が表す直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、i-プロピルオキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基等が挙げられ、好ましくは、メトキシ基、またはエトキシ基である。
【0047】
R9、R10、R11、R12、およびR13が表す直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基は、置換されてもよく、その置換基としては、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子である。ここで、ハロゲン原子が2つ以上存在する場合、同一であっても異なっていてもよい。
R9、R10、R11、R12、およびR13が表す、置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基の具体例としては、上述の非置換の直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基の具体例に加え、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、クロロジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ、2,2,3,3,3-トリフルオロ-n-プロピルオキシ基等が挙げられ、好ましくは、トリフルオロメトキシ基である。
【0048】
R9、R10、R11、R12、およびR13が表す直鎖または分岐鎖C2-4アルケニルオキシ基は、直鎖または分岐鎖のいずれであってもよい、C2-4アルケニルオキシ基を表し、好ましくは、直鎖または分岐鎖C2-3アルケニルオキシ基である。
R9、R10、R11、R12、およびR13が表す直鎖または分岐鎖C2-4アルケニルオキシ基の具体例としては、ビニルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、2-プロペニルオキシ基、1-メチル-1-プロペニルオキシ基等が挙げられ、好ましくは、2-プロペニルオキシ基である。
【0049】
R9、R10、R11、R12、およびR13が表すC2-4アルケニルオキシ基は、置換されてもよく、その置換基としては、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子である。ここで、ハロゲン原子が2つ以上存在する場合、同一であっても異なっていてもよい。
R9、R10、R11、R12、およびR13が表す、置換されてもよい直鎖または分岐鎖C2-4アルケニルオキシ基の具体例としては、上述の非置換の直鎖または分岐鎖C2-4アルケニルオキシ基の具体例に加え、3,3-ジクロロ-2-プロペニルオキシ基、3,3-ジフルオロ-2-プロペニルオキシ基、1,2,2-トリフルオロビニルオキシ基、1-トリフルオロメチル-1-プロペニルオキシ基等が挙げられ、好ましくは、3,3-ジクロロ-2-プロペニルオキシ基である。
【0050】
R9、R10、R11、R12、およびR13が表す直鎖または分岐鎖C2-4アルキニルオキシ基は、直鎖または分岐鎖のいずれであってもよい、C2-4アルキニルオキシ基を表し、好ましくは、直鎖または分岐鎖C2-3アルキニルオキシ基である。
R9、R10、R11、R12、およびR13が表す直鎖または分岐鎖C2-4アルキニルオキシ基の具体例としてはエチニルオキシ基、1-プロピニルオキシ基、2-プロピニルオキシ基等が挙げられ、好ましくは、2-プロピニルオキシ基である。
【0051】
R9、R10、R11、R12、およびR13が表す直鎖または分岐鎖C2-4アルキニルオキシ基は、置換されてもよく、その置換基としては、ハロゲン原子、およびハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子である。ここで、ハロゲン原子が2つ以上存在する場合、同一であっても異なっていてもよい。
R9、R10、R11、R12、およびR13が表す、置換されてもよい直鎖または分岐鎖C2-4アルキニルオキシ基の具体例としては、上述の非置換の直鎖または分岐鎖C2-4アルキニルオキシ基の具体例に加え、2-フルオロエチニルオキシ基、3,3,3-トリフルオロ-1-プロピニルオキシ基等が挙げられ、好ましくは、3,3,3-トリフルオロ-1-プロピニルオキシ基である。
【0052】
一般式(2)、一般式(7)、および一般式(9)におけるR1は、好ましくは、直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基、芳香族炭化水素基であり、より好ましくは、直鎖または分岐鎖C1-3アルキル基であり、さらに好ましくは、メチル基、エチル基である。
【0053】
一般式(2)、一般式(7)、および一般式(9)におけるR2は、好ましくは、直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基、置換されてもよい芳香族炭化水素基であり、より好ましくは、直鎖または分岐鎖C1-3アルキル基、4-(トリフルオロメトキシ)フェノキシ基により置換されてもよい芳香族炭化水素基であり、さらに好ましくは、メチル基、4-(4-(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)フェニル基である。
【0054】
一般式(4)におけるR3とR4は、好ましくは、一緒になって基-(CH2)q-(qは3-7である)であり、lは1または2であり、または、ともにメチル基であり、lは1または2であり、より好ましくは、一緒になって基-(CH2)q-(qは4-6である)であり、lは1または2であり、または、ともにメチル基であり、lは1または2であり、さらに好ましくは、一緒になって基-(CH2)4-、または基-(CH2)5-であり、lは2であり、または、ともにメチル基であり、lは2である。
【0055】
一般式(6)および一般式(8)におけるR5は、好ましくは、直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基、C3-6環状脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは、直鎖または分岐鎖C1-3アルキル基、C4-6環状脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、またはi-プロピル基である。
【0056】
一般式(6)および一般式(7)におけるR6は、好ましくは、ハロゲン原子、-B-R7である。ここで、Bは、好ましくは、酸素原子、または硫黄原子である。
【0057】
一般式(6)および一般式(7)におけるR7は、好ましくは、置換されてもよい芳香族炭化水素基であり、より好ましくは、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基により置換されてもよい芳香族炭化水素基、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基により置換されてもよい芳香族炭化水素基、またはハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルコキシ基により置換されてもよいフェノキシ基(例えば、4-(トリフルオロメトキシ)フェノキシ基)により置換されてもよい芳香族炭化水素基であり、さらに好ましくは、4-(トリフルオロメチル)フェニル基、4-(トリフルオロメトキシ)フェニル基、または4-(4-(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)フェニル基である。
【0058】
一般式(6)および一般式(7)におけるR8は、好ましくは、水素原子、置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基であり、より好ましくは、水素原子である。
【0059】
一般式(6)、一般式(8)、および一般式(9)におけるX2は、好ましくは、置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基、置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルコキシ基であり、より好ましくは、置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-3アルキル基であり、さらに好ましくは、メチル基、またはトリフルオロメチル基である。
【0060】
一般式(8)および一般式(9)におけるR9は、好ましくは、水素原子、直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基であり、より好ましくは、水素原子である。
【0061】
一般式(8)および一般式(9)におけるR10は、好ましくは、水素原子、または直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルキル基であり、より好ましくは、水素原子である。
【0062】
一般式(8)および一般式(9)におけるR11は、好ましくは、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基、またはハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルコキシ基であり、より好ましくは、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-3アルキル基、またはハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-3アルコキシ基であり、さらに好ましくは、トリフルオロメチル基、またはトリフルオロメトキシ基である。
【0063】
一般式(8)および一般式(9)におけるR12は、好ましくは、水素原子、または直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルキル基であり、より好ましくは、水素原子である。
【0064】
一般式(8)および一般式(9)におけるR13は、好ましくは、水素原子、または直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルキル基であり、より好ましくは、水素原子である。
【0065】
置換基Z、R1~R8およびX2の組み合わせに係る好ましい実施態様によれば、
Zはハロゲン原子を表し、
R1およびR2は、互いに独立して、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルキル基、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C2-4アルケニル基、または、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C2-4アルキニル基を表し、
ここで、前記直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基、前記直鎖または分岐鎖C2-4アルケニル基、および前記直鎖または分岐鎖C2-4アルキニル基における置換基の各々は、ハロゲン原子、またはハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルコキシ基であり、
R3とR4は一緒になって基-(CH2)q-(qは3-7である)を表し、lは1または2を表し、
R5は、直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基を表し、
R6は、水素原子、ハロゲン原子、または-B-R7を表し、
ここで、Bは、酸素原子、硫黄原子、N(R8)、N(R8)-CO、またはCO-N(R8)を表し、
R7およびR8は、互いに独立して、ハロゲン原子、またはハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルコキシ基により置換されてもよい芳香族炭化水素基を表し、
X2は、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルキル基、またはハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルコキシ基を表す。
【0066】
置換基Z、R1~R8およびX2の組み合わせに係る別の好ましい実施態様によれば、
Zはハロゲン原子を表し、
R1およびR2は、互いに独立して、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルキル基を表し、
ここで、前記直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基における置換基は、ハロゲン原子、またはハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルコキシ基であり、
R3とR4は一緒になって基-(CH2)q-(qは4-6である)を表し、lは1または2を表し、
R5は、直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基を表し、
R6は、-B-R7を表し、
ここで、Bは、酸素原子、硫黄原子、N(R8)、N(R8)-CO、またはCO-N(R8)を表し、
R7およびR8は、互いに独立して、ハロゲン原子、またはハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルコキシ基により置換されてもよい芳香族炭化水素基を表し、
X2は、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルキル基、またはハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルコキシ基を表す。
【0067】
置換基Z、R1~R8およびX2の組み合わせに係るさらに好ましい実施態様によれば、Zはフッ素、塩素、または臭素を表し、R1およびR2は互いに独立して、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、一緒になって基-(CH2)3-、または一緒になって基-(CH2)4-を表し、R3およびR4は一緒になって基-(CH2)4-を表し、lは2を表し、R5はメチル基、エチル基、n-プロピル基、またはi-プロピル基を表し、R6は、O-R7を表し、R7は、4-(トリフルオロメトキシ)フェニル基、または4-トリフルオロメチルフェニル基を表し、X2は、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、トリフルオロメチル基、またはトリフルオロメトキシ基を表す。
【0068】
置換基Z、R1~R5、R9~R13およびX2の組み合わせに係る好ましい実施態様によれば、
Zはハロゲン原子を表し、
R1およびR2は、互いに独立して、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルキル基、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C2-4アルケニル基、または、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C2-4アルキニル基を表し、
ここで、前記直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基、前記直鎖または分岐鎖C2-4アルケニル基、および前記直鎖または分岐鎖C2-4アルキニル基における置換基の各々は、ハロゲン原子、またはハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルコキシ基であり、
R3とR4は一緒になって基-(CH2)q-(qは3-7である)を表し、lは1または2を表し、
R5は、直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基を表し、
R9、R10、R11、R12、およびR13は、互いに独立して、
水素原子、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルキル基、または、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルコキシ基を表し、
ここで、前記直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基、および前記置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルコキシ基における置換基の各々は、ハロゲン原子、またはハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルコキシ基であり、
X2は、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルキル基、またはハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルコキシ基により置換されてもよいC1-4アルキル基を表す。
【0069】
置換基Z、R1~R5、R9~R13およびX2の組み合わせに係る別の好ましい実施態様によれば、
Zはハロゲン原子を表し、
R1およびR2は、互いに独立して、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルキル基を表し、
ここで、前記直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基における置換基は、ハロゲン原子、またはハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルコキシ基であり、
R3とR4は一緒になって基-(CH2)q-(qは4-6である)を表し、lは1または2を表し、
R5は、直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基を表し、
R9、R10、R11、R12、およびR13は、互いに独立して、
水素原子、または、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルキル基、または、
置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルコキシ基を表し、
ここで、前記置換されてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルキル基、および前記置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルコキシ基における置換基の各々は、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルキル基、またはハロゲン原子により置換されてもよいC1-4アルコキシ基であり、
X2は、ハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルキル基、またはハロゲン原子により置換されてもよい直鎖もしくは分岐鎖C1-4アルコキシ基を表す。
【0070】
置換基Z、R1~R5、R9~R13およびX2の組み合わせに係るさらに好ましい実施態様によれば、Zは塩素を表し、R1およびR2は互いに独立して、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、または一緒になって基-(CH2)3-、一緒になって基-(CH2)4-を表し、R3およびR4は一緒になって基-(CH2)4-を表し、lは2を表し、R5はメチル基、エチル基、n-プロピル基、またはi-プロピル基を表し、R9、R10、R11、R12、およびR13は、互いに独立して、水素原子、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基またはトリフルオロメトキシ基を表し、X2は、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、トリフルオロメチル基、またはトリフルオロメトキシ基を表す。
【0071】
本発明による製造方法
本発明による製造方法には、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウム、および、必要に応じて、一般式(4)で示されるスルフィドを用いて、一般式(2)で示されるケトン、および一般式(6)で示されるアントラニル酸誘導体を反応させることにより、一般式(7)で示されるキノロン誘導体を得る反応工程が含まれる。なお、上記反応工程は環化反応工程である。さらに、本発明による製造方法では、反応終了後に、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムを除き、一般式(7)で示されるキノロン誘導体を得る後処理工程を含むことが好ましい。
【0072】
本発明による製造方法では、一般式(2)で示されるケトンと一般式(6)で示されるアントラニル酸誘導体とを反応させて一般式(7)で示されるキノロン誘導体を得る反応工程において、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されないが、予め、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムならびに一般式(2)で示されるケトン、および、必要に応じて、一般式(4)で示されるスルフィドとを混合させることが好ましい。さらに、その後一般式(6)で示されるアントラニル酸誘導体と反応させることが好ましい。また、上記混合時の温度は、特に限定されないが、0~40℃が挙げられ、好ましくは、10℃~30℃である。また、その混合時間は、特に限定されないが、0.1~2時間が挙げられ、好ましくは、0.5~1時間である。ここで、予め一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムと、一般式(2)で示されるケトンとを混合させることにより、一般式(3)で示されるハロゲン化アルミニウム混合物が得られても良い。また、予め一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウム、一般式(2)で示されるケトン、および一般式(4)で示されるスルフィドとを混合させることにより、一般式(5)で示されるハロゲン化アルミニウム混合物が得られても良い。
上述のように、予め、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウム、ならびに一般式(2)で示されるケトン、および、必要に応じて、一般式(4)で示されるスルフィドとを混合させることにより、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムの反応性を適切に制御し、副生成物を抑制し、収率を顕著に向上させることが可能である。
したがって、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウム、および一般式(2)で示されるケトンを予め混合させること、必要に応じ、さらに一般式(4)で示されるスルフィドを混合させることにより、一般式(7)で示されるキノロン誘導体を高収率、高選択的に製造・単離でき、原料を削減できる。
また、本発明において、収率を向上させるために、各化合物の添加順序、および/または各原料の使用量の組み合わせを特定することが好ましい。
【0073】
また、本発明の製造方法によれば、反応工程において、予め、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムと、過剰量の一般式(2)で示されるケトンとを混合させることが好ましく、その反応性を適切に制御し、副反応を抑制し、望む反応を高選択的に行う点で有利である。予め一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムと過剰量の一般式(2)で示されるケトンとを混合することにより、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムが一般式(2)で示されるケトンと一般式(6)で示されるアントラニル酸誘導体との環化反応を極めて強く活性化する一方、その強すぎる反応性により引き起こされる様々な副反応を防止でき、また、望む反応の収率の低下を防止できるという点で有利である。
【0074】
さらに、本発明において、比較的高価な主原料である一般式(2)で示されるケトンの過剰量の一部を、環化反応そのものには不活性な一般式(4)で示されるスルフィドで置き換えることがより好ましく、より安価で工業的に適した製造方法となる点で有利である。
【0075】
本発明による製造方法によれば、反応工程における各化合物の添加順序としては、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されないが、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウム、溶媒、一般式(2)で示されるケトン、必要に応じて一般式(4)で示されるスルフィド、一般式(6)で示されるアントラニル酸誘導体の順に添加させることが好ましい。この際、その効果を妨げない限りにおいて、以下に示すように、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムを一定量以下使用した場合、または、一般式(2)で示されるケトン、および、必要に応じて、一般式(4)で示されるスルフィドを一定量以上に制限した場合、一般式(6)で示されるアントラニル酸誘導体が加熱反応中に急激に分解されて収率が顕著に低下することを防止する点で好ましい。
【0076】
本発明の製造方法の別の一つの態様によれば、反応工程の途中において、別途混合した一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムと一般式(2)で示されるケトンとの混合物、または、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウム、一般式(2)で示されるケトンおよび一般式(4)で示されるスルフィドの混合物を追加することも、収率を向上させる点で好ましい。
また、添加順序を変えて、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウム、溶媒、一般式(6)で示されるアントラニル酸誘導体、一般式(2)で示されるケトン、必要に応じて一般式(4)で示されるスルフィドの順に添加し反応させてもよい。当該順序であれば、一般式(6)で示されるアントラニル酸誘導体は急激に加水分解し、対応するアントラニル酸となり、反応速度を著しく低下させる場合であっても収率に与える影響は小さい。これは、前記加水分解されたアントラニル酸もまた一般式(2)で示されるケトンと反応し、目的物である一般式(7)で示されるキノロン誘導体を与えるためである。また、当該添加順序での反応では、一般式(6)で示されるアントラニル酸誘導体が置換基としてアルコキシ基、またはハロアルコキシ基を有しないことが好ましい。かかる置換基を有しないことは、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムの作用による、脱アルキル、または脱ハロアルキルの副反応を回避し、収率を著しく低下させることを防止する上で有利である。
【0077】
一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムの具体例としては、フッ化アルミニウム、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム等が挙げられる。好ましくは塩化アルミニウム、臭化アルミニウムである。
【0078】
一般式(2)で示されるケトンの具体例としては、アセトン、2-ブタノン、3-メチル-2-ブタノン、3,3-ジメチル-2-ブタノン、3-ペンタノン、2-メチル-3-ペンタノン、2,2-ジメチル-3-ペンタノン、2、4-ジメチル-3-ペンタノン、アセトフェノン、プロピオフェノン、1-フェニル-2-プロパノン、1-フェニル-2-ブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、1-(4-(4-(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)フェニル)アセトン等が挙げられる。好ましくは、2-ブタノン、3-ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンである。
【0079】
一般式(4)で示されるスルフィドの具体例としては、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド等が挙げられる。好ましくはテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシドである。
【0080】
一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムの使用量は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、一般式(6)で示されるアントラニル酸誘導体に対して、例えば、1.0~2.5倍モルが挙げられ、好ましくは1.2~2.0倍モルである。
【0081】
一般式(2)で示されるケトンの使用量は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムに対して、例えば、0.5倍モル以上が挙げられ、好ましくは0.8~3.0倍モルである。ここで、前記一般式(2)で示されるケトンの使用量は、予め一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムと一般式(2)で示されるケトンを混合する場合には、例えば、0.5倍モル以上が挙げられ、好ましくは0.8~3.0倍モルであり、予め一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウム、一般式(2)で示されるケトン、および一般式(4)で示されるスルフィドを混合する場合には、例えば、0.5倍モル以上が挙げられ、好ましくは0.8~3.0倍モルである。また、前記一般式(2)で示されるケトンの使用量は、一般式(3)で示されるハロゲン化アルミニウム混合物で環化反応を行う場合には、例えば、0.5倍モル以上が挙げられ、好ましくは0.8~3.0倍モルであり、一般式(5)で示されるハロゲン化アルミニウム混合物で環化反応を行う場合には、例えば、1.0倍モル以上が挙げられ、好ましくは0.8~3.0倍モルである。
【0082】
一般式(4)で示されるスルフィドの使用量は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムに対して、例えば、0~2.0倍モルが挙げられ、好ましくは0.5~1.5倍モルである。
【0083】
一般式(5)で示されるハロゲン化アルミニウム混合物で環化反応を行う場合には、k、l、mの表す数値の組合せは、lとmの積の数値とkの数値の和が2.0以上となる組み合わせが挙げられ、好ましくは2.0~6.0である。kの数値がlとmの積の数値以上である組み合わせがさらに好ましい。
【0084】
反応工程において一般式(3)で示されるハロゲン化アルミニウム混合物の追加を行う場合には、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムと一般式(2)で示されるケトンとを別途混合することで得られた混合物を用いることが好ましい。追加の混合物中の一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムの使用量については、先に使用しているハロゲン化アルミニウムの量と合わせて、一般式(6)で示されるアントラニル酸誘導体に対して、例えば、1.5~2.5倍モルが挙げられ、好ましくは1.7~2.3倍モルである。追加する混合物は必要に応じて複数回に分けて追加しても構わない。
【0085】
また、反応工程においてケトンの追加を行う場合、追加の混合物中の一般式(2)で示されるケトンの使用量は、先に使用しているケトンの量と合わせて、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムの総量に対して、例えば、0.8倍モル以上が挙げられ、好ましくは0.9~4.0倍モルである。ここで、前記一般式(2)で示されるケトンの使用量は、予め一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムと一般式(2)で示されるケトンを混合する場合には、先に使用しているケトンの量と合わせて、例えば、0.8倍モル以上が挙げられ、好ましくは0.9~4.0倍モルであり、予め一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウム、一般式(2)で示されるケトン、および一般式(4)で示されるスルフィドを混合する場合には、先に使用しているケトンの量と合わせて、例えば、0.8倍モル以上が挙げられ、好ましくは0.9~4.0倍モルである。また、前記一般式(2)で示されるケトンの使用量は、一般式(3)で示されるハロゲン化アルミニウム混合物で環化反応を行う場合には、先に使用しているケトンの量と合わせて、例えば、0.8倍モル以上が挙げられ、好ましくは0.9~4.0倍モルであり、一般式(5)で示されるハロゲン化アルミニウム混合物で環化反応を行う場合には、先に使用しているケトンの量と合わせて、例えば、0.8倍モル以上が挙げられ、好ましくは0.9~4.0倍モルである。追加するケトンは必要に応じて複数回に分けて追加しても構わない。
【0086】
また、反応工程においてスルフィドの追加を行う場合、追加の混合物中の一般式(4)で示されるスルフィドの使用量は、先に使用しているスルフィドの量と合わせて、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムの総量に対して、例えば、0.5倍モル以上が挙げられ、好ましくは0.5~1.5倍モルである。追加するスルフィドは必要に応じて複数回に分けて追加しても構わない。
【0087】
本発明による製造方法によれば、反応工程は溶媒の存在下または非存在下において実施することができる。使用される溶媒は、反応を阻害しないものであればよく、特に制限されない。これらの溶媒は、単一系、もしくは組み合わせて混合溶媒系として用いてもよいが、溶媒の回収・再利用の観点から単一系が好ましい。本発明の製造方法に用いられる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル等の芳香族炭化水素類、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類等、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類が挙げられる。好ましくは、トルエン、キシレン、メシチレンである。
【0088】
前記溶媒の使用量は、一般式(6)で示されるアントラニル酸誘導体1モルに対して、例えば、1000~5000mLが挙げられ、好ましくは1500~3000mL、より好ましくは1800~2200mLである。
【0089】
本発明の製造方法における反応工程は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムを用いて、一般式(2)で示されるケトンと一般式(6)で示されるアントラニル酸誘導体を液相で接触させることが好ましく、例えば、一般式(2)で示されるケトン、一般式(6)で示されるアントラニル酸誘導体および溶媒を混合して、加熱還流する等の方法によって、常圧下、加圧下または減圧下で環化反応が行われる。その接触時の反応温度は、使用溶媒の還流温度が挙げられ、好ましくは、100~200℃、より好ましくは、130℃~160℃である。また、上記接触時間は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、1~40時間が挙げられ、好ましくは、6~30時間である。また、上記接触は1回であっても、複数回であってもよい。
【0090】
本発明の製造方法においては、反応の副生成物として、一般式(6)で示されるアントラニル酸誘導体に対して1.0倍モルに相当する量の水、およびアルコールであるR5-OHが副生する。これら副生する水、およびアルコールは、一般式(3)および一般式(5)で示されるハロゲン化アルミニウム混合物を失活させ、反応を阻害するため、反応の進行に合わせて溶媒とともに適宜留去することが好ましい。
【0091】
留去する溶液の量は、特に制限はないが、一般式(6)で示されるアントラニル酸誘導体1モルに対して、例えば、反応に使用する溶媒の量と留去する溶液の量の差が100~1000mLとなる量が挙げられ、好ましくは300~700mLとなる量である。
【0092】
一般式(7)で示されるキノロン誘導体は、反応工程終了後、洗浄、抽出、沈析、濾過、遠心分離等、またはそれらの組み合わせの後処理工程により、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムを除くことにより単離することができる。反応後の一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムは、pH3以下の強酸性またはpH11以上の強塩基性の水に易溶であり、後処理工程は強酸性または強塩基性の水が存在する条件下で操作することができるが、強塩基性の水が存在する条件下で操作することが好ましい。一般式(7)で示されるキノロン誘導体が反応溶媒、および/または抽出溶媒に可溶な場合には、抽出操作後、溶媒を留去することで、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムを含まない一般式(7)で示されるキノロン誘導体を固体結晶として得ることができる。一方、一般式(7)で示されるキノロン誘導体が、反応溶媒およびその他有機溶剤に難溶である場合には、塩酸または苛性水溶液の共存下、補助溶媒としてアルコールを使用して洗浄、沈析、濾過等をすることで、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムを含まない一般式(7)で示されるキノロン誘導体を固体結晶として得ることができる。例えば、塩酸または苛性水溶液の共存下(好ましくは苛性水溶液の共存下)、補助溶媒としてアルコールを使用し洗浄した後、抽出し、洗浄し、沈析し、濾過をすることで、一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムを含まない一般式(7)で示されるキノロン誘導体を固体結晶として得ることができる。
【0093】
前記後処理工程により一般式(7)で示されるキノロン誘導体を単離する方法として、酸性条件下で行う方法が挙げられ、一例として以下に記載する。
反応工程で得られた反応液中に水または希塩酸水を添加、または反応液を水または希塩酸水中に添加した後、アルコールを添加し、加熱洗浄した後、室温以下まで冷却し、一般式(7)で示されるキノロン誘導体の結晶を濾別する。さらに、結晶は必要に応じてアルコール水溶液で洗浄してもよい。
ここで、上記加熱洗浄時の温度は、例えば、40~100℃、好ましくは、60~80℃である。上記加熱洗浄時の時間は、例えば、0.1~3.0時間、好ましくは、0.5~1.5時間である。
また、加熱洗浄に用いるアルコールは、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、経済性の観点からメタノールが好ましい。また、その使用量としては、濾液への目的物の溶解を防ぎ収率を低下させないために、一般式(6)で示されるアントラニル酸誘導体1モルに対して、500~1500mLが挙げられ、好ましくは750~1000mLである。
【0094】
前記後処理工程により一般式(7)で示されるキノロン誘導体を単離する方法として、塩基性条件下で行う方法が挙げられ、一例を以下に記載する。塩基性条件下で行うことにより、一般的な工業設備要件の下で、一般式(7)で示されるキノロン誘導体を単離できる点で有利である。
反応工程で得られた反応液中に苛性水溶液を添加、または反応液を苛性水溶液に添加し、アルコールを添加して、加熱洗浄した後、水を添加しさらに加熱洗浄する。その後、0~40℃まで冷却し、静置し、一般式(7)で示されるキノロン誘導体の結晶を含む上層の有機層と一般式(1)で示されるハロゲン化アルミニウムを含む下層の水層とに分離させ、水層を除去する。有機層にアルコールを添加し、加熱還流等の加熱洗浄をした後、水を添加しさらに加熱還流等の加熱洗浄を行う。0~40℃まで冷却し、結晶を濾別する。さらに、前記結晶は必要に応じてアルコール水溶液で洗浄することができる。
ここで、上記加熱洗浄時の温度は、例えば、40~100℃、好ましくは、60℃~90℃である。上記加熱洗浄時の時間は、例えば、0.1~3時間、好ましくは、0.5~1.5時間である。また、上記加熱洗浄は1回であっても、複数回であってもよい。
【0095】
使用される苛性水溶液は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等を含有する水溶液であって、具体的には、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化マグネシウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液等が挙げられ、好ましくは、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液である。前記苛性水溶液における、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等の濃度は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、好ましくは10%以上であり、より好ましくは20%~50%である。また、上記苛性水溶液の使用量は、後処理時の反応液のpHを11以上に保てるのであれば特に制限はないが、例えば、一般式(6)で示されるアントラニル酸誘導体に対して、含有されるアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等が1.0~20.0モル倍量となる量が挙げられ、好ましくは5.0~15.0モル倍量となる量である。
【0096】
また、使用されるアルコールは、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、その使用量を削減するために、好ましくはエタノール以上の高級アルコールであり、より好ましくは炭素数2~5の第一級アルコールであり、経済性の観点から、さらに好ましくはエタノールである。エタノール以上の高級アルコールを用いることは、例えば塩化アルミニウムを使用した反応において、塩化アルミニウムを含む苛性水溶液中にアルコールを混合させた場合に、濃塩酸以外には難溶なアルミニウム結晶の析出を防止する点で好ましい。かかるアルミニウム結晶が目的物中に混入することで著しく純度を低下させるとともに、濾過設備に固着することにより設備面で深刻な不具合を生じるためである。
【0097】
また、加熱洗浄に用いるアルコールの使用量としては、水層および濾液への目的物の溶解を防ぎ収率を低下させないために、一般式(6)で示されるアントラニル酸誘導体1モルに対して、好ましくは総量で100~1000mLであり、より好ましくは100~600mLである。また、その使用方法として500mLを2回に分けて250mLずつ使用する方法がさらに好ましい。
上述の様に、使用されるアルコールをエタノール以上の高級アルコールとすることで、酸性条件下での後処理工程に比して、その使用量を削減できる。
【0098】
したがって、本発明の製造方法の別の一つの態様によれば、上記濾過操作により一般式(7)で示されるキノロン誘導体を単離する方法であって、好ましくは、工業的に一般的な金属製の濾過器等の製造設備を使用できるように、塩基性条件下でエタノールを用いる方法である。
【0099】
本発明の製造方法により製造され、単離されたキノロン誘導体は、必要に応じて、再結晶による方法によって精製することにより、さらに高純度な単離生成物として得られる。
これらのキノロン誘導体は医農薬中間体として有用である。
また、本発明の製造方法により、キノロン誘導体を一回の製造で工業的に製造できる点で有利である。
【0100】
本発明の別の態様によれば、本発明の製造方法により製造される一般式(7)で示されるキノロン誘導体が提供される。
上記のキノロン誘導体の態様は本発明の製造方法に関する記載に準じて実施することができる。
【実施例0101】
以下、実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術範囲はこれらの例示に限定されるものではない。なお、特に記載しない限り、本発明で用いられる全部のパーセンテージや比率は質量による。また、特に記載しない限り、本明細書に記載の単位や測定方法はJIS規格による。
【0102】
以下の実施例、参考例において、使用されたアントラニル酸誘導体、および得られたキノロン誘導体の含量は、それぞれの標準品、および内部標準物質を用いた高速液体クロマトグラフィーによる分析によって算出された値である。ここで前記の各誘導体の標準品とは、特許文献4に記載の方法によって調製した各誘導体を、再結晶、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の方法によって精製した物質である。
【0103】
2-アミノ-4-メチル-5-(4-(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)安息香酸イソプロピル標準品の物性値を以下に示す。
融点:71-72℃
1H-NMR(CDCl3):7.49(1H、s)、7.12(2H、dd、J=9.3、0.9)、 6.85―6.80(2H、m)、6.56(1H、s)、5.63(1H、broad)、5.18(1H、hep、J=6.3)、2.09(3H、s)、1.31(6H、d、J=6.3)
【0104】
2-エチル-3、7-ジメチル-6-(4-(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノロン標準品の物性値を以下に示す。
融点:281-283℃
1H-NMR(DMSO):11.36(1H、s)、7.44(2H、s)、7.38(2H、dd、J=9.3、J=0.9)、7.08-7.03(2H、m)、 2.69(2H、q、J=7.5)、2.30(3H、s)、1.97(3H、s)、1.22(3H、t、J=7.5)
【0105】
実施例1
<塩基性条件下での後処理>
【化10】
攪拌機、温度計、還流脱水装置を備えた容量2000mLの4径フラスコに、塩化アルミニウム54.00gおよびキシレン163.97gを加え、10℃まで冷却した。3-ペンタノン34.82gを、20℃以下を保持しつつ滴下し、10~20℃で1時間撹拌した後、テトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド48.68gおよびキシレン93.32gの混合溶液を加え、次いで2-アミノ-4-メチル-5-(4-(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)安息香酸イソプロピル105.54g(含量94.5%)およびキシレン209.04gの混合溶液を加えた。その後、6時間加熱還流した(135~138℃)。加熱還流中、合計270mLの還流液を抜き出し除去した。一旦室温まで冷却し、別途混合した、塩化アルミニウム8.98g、キシレン47.84gおよび3-ペンタノン17.40gの混合溶液を反応液中に添加し、再度8時間加熱還流した(136~140℃)。加熱還流中、合計188mLの還流液を抜き出し除去した。反応終了後、室温まで冷却し、25%水酸化ナトリウム水溶液433.38gおよびエタノール67.5mLを加え、70~75℃で30分間加熱した後、水327.26gを滴下し、さらに70~75℃で30分間加熱した。室温まで冷却、静置し、塩化アルミニウムを含む下層である水層と、固体の2-エチル-3,7-ジメチル-6-(4-(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノロンを含む上層である有機層に分離させた後、下層を分液除去した。有機層にエタノール67.5mLを添加し、30分間加熱還流した(84~85℃)後、水540mLを滴下し、さらに30分間加熱還流した。室温まで冷却した後、同温で30分間熟成させた。結晶を濾別し、60%(v/v)エタノール水溶液216mLで洗浄した後、乾燥し、2-エチル-3,7-ジメチル-6-(4-(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノロン90.81g(粗収率89.13%、含量99.3%)を得た。
融点:281-283℃
1H-NMR(DMSO):11.36(1H、s)、7.44(2H、s)、7.38(2H、dd、J=9.3、J=0.9)、7.08-7.03(2H、m)、 2.69(2H、q、J=7.5)、2.30(3H、s)、1.97(3H、s)、1.22(3H、t、J=7.5)
【0106】
参考例1
<酸性条件下での後処理>
攪拌機、温度計、還流脱水装置を備えた5000mLの4径フラスコに、塩化アルミニウム149.99gおよびキシレン625mLを加え、10℃まで冷却した。3-ペンタノン290.69gを、20℃以下を保持しつつ滴下した後、2-アミノ-4-メチル-5-(4-(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)安息香酸イソプロピル300g(含量92.3%)、およびキシレン1300mLの混合溶液を加えた。その後、6時間加熱還流した(133~137℃)。加熱還流中、合計440mLの還流液を抜き出し除去した。一旦80℃まで冷却し、別途混合した、塩化アルミニウム50.00g、キシレン250mLおよび3-ペンタノン96.90gの混合溶液を反応液中に添加し、再度8時間加熱還流した(135~140℃)。加熱還流中、合計100mLの還流液を抜き出し除去した。反応終了後、80℃以下まで冷却し、5%塩酸水溶液375mLを滴下し結晶を析出させた後、メタノール750mLを滴下し結晶を完溶させた。さらに水375mLを滴下し、結晶を析出させた。1時間加熱還流した後(70~74℃)、20℃まで冷却し、同温で1時間熟成させた。結晶を濾別し、80%(v/v)メタノール水溶液750mL、水350mLの順で洗浄した後、乾燥し、2-エチル-3,7-ジメチル-6-(4-(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノロン250.84g(粗収率88.63%、含量99.0%)を得た。
融点:281-283℃
1H-NMR(DMSO):11.36(1H、s)、7.44(2H、s)、7.38(2H、dd、J=9.3、J=0.9)、7.08-7.03(2H、m)、 2.69(2H、q、J=7.5)、2.30(3H、s)、1.97(3H、s)、1.22(3H、t、J=7.5)
【0107】
実施例2
攪拌機、温度計、還流脱水装置を備えた500mLの4径フラスコに、2-アミノ-4-メチル-5-(4-(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)安息香酸イソプロピル58.69g(含量94.6%)、キシレン258.05g、3-ペンタノン19.18gおよびテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド26.59gを加え、撹拌して均一な溶液とした後、塩化アルミニウム30.04gを加えた。その後、6時間加熱還流した(135~138℃)。加熱還流中、合計150mLの還流液を抜き出し除去した。一旦室温まで冷却し、キシレン25.49g、3-ペンタノン9.60g、塩化アルミニウム5.06gを順に反応液中に添加し、再度6時間加熱還流した(136~140℃)。加熱還流中、合計104mLの還流液を抜き出し除去した。反応終了後、室温まで冷却し、25%水酸化ナトリウム水溶液242.51gおよびエタノール37.5mLを加え、70~75℃で30分間加熱した後、水120gを滴下し、さらに70~75℃で30分間加熱した。室温まで冷却、静置し、塩化アルミニウムを含む下層である水層と、固体の2-エチル-3,7-ジメチル-6-(4-(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノロンを含む上層である有機層に分離させた後、下層を分液除去した。有機層にエタノール37.5mLを添加し、70~80℃で30分間加熱した後、水300mLを滴下し、さらに70~80℃で30分間加熱した。室温まで冷却した後、同温で30分間熟成させた。結晶を濾別し、60%(v/v)エタノール水溶液120mLで洗浄した後、乾燥し、2-エチル-3,7-ジメチル-6-(4-(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノロン45.87g(粗収率80.86%、含量99.0%)を得た。
融点:281-283℃
1H-NMR(DMSO):11.36(1H、s)、7.44(2H、s)、7.38(2H、dd、J=9.3、J=0.9)、7.08-7.03(2H、m)、 2.69(2H、q、J=7.5)、2.30(3H、s)、1.97(3H、s)、1.22(3H、t、J=7.5)