(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086891
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】管接続部材撤去装置
(51)【国際特許分類】
F16L 55/00 20060101AFI20230615BHJP
F16L 41/12 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
F16L55/00 C
F16L41/12
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073129
(22)【出願日】2023-04-27
(62)【分割の表示】P 2019097057の分割
【原出願日】2019-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】澤田 実
(57)【要約】
【課題】ベース部材と分岐管部の首部との間を確実に且つ簡便に密封することができる管接続部材撤去装置を提供する。
【解決手段】既設の流路構成部材1の本管部1Aから一体に分岐される分岐管部2の首部2Aに固定される分割構造のベース部材9と、ベース部材9に密封状に組み付けられるケース部材21と、を備える作業用ケース30により分岐管部2に取付けられた管接続部材U1を密封状に囲い、作業用ケース30内で管接続部材U1を不断流状態で撤去する管接続部材撤去装置であって、ベース部材9に、分岐管部2の首部2Aを密封する密封部11が設けられるとともに、密封部11よりも分岐管部2の外径側に、ベース部材9とケース部材21との間を密封する環状の密封リング24が配設される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の流路構成部材の本管部から一体に分岐される分岐管部の首部に固定される分割構造のベース部材と、前記ベース部材に密封状に組み付けられるケース部材と、を備える作業用ケースにより前記分岐管部に取付けられた管接続部材を密封状に囲い、該作業用ケース内で前記管接続部材を不断流状態で撤去する管接続部材撤去装置であって、
前記ベース部材に、前記分岐管部の首部を密封する密封部が設けられるとともに、前記密封部よりも前記分岐管部の外径側に、前記ベース部材と前記ケース部材との間を密封する環状の密封リングが配設されることを特徴とする管接続部材撤去装置。
【請求項2】
前記密封部は、前記ベース部材の前記作業用ケース側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の管接続部材撤去装置。
【請求項3】
前記ベース部材に、前記密封部としてのシールリングを押圧する押輪が装着可能となっていることを特徴とする請求項1または2に記載の管接続部材撤去装置。
【請求項4】
前記首部は、該首部の軸方向に沿って延び前記シールリングに当接する直線部を有していることを特徴とする請求項3に記載の管接続部材撤去装置。
【請求項5】
前記分岐管部と前記管接続部材との脱着をガイドするガイドボルトと、該ガイドボルトに螺合するナットとの回転を防止する回転防止座金が配置されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の管接続部材撤去装置。
【請求項6】
前記分岐管部と前記管接続部材との脱着をガイドするガイドボルトと、前記ベース部材との間には、前記ガイドボルトの落下を防止する落下防止手段が配置されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の管接続部材撤去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路構成部材に接続された管接続部材を不断流状態で撤去するための撤去装置および管接続部材撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば既設の水道管等の流路構成部材から分岐する分岐管部にフランジ部を介して接続された管接続部材(例えば、弁体や人孔蓋等)を撤去する際に、管接続部材を囲うように作業用ケースを密封状に取付け、作業用ケース内で不断流状態で管接続部材を撤去することが一般的に行われている。
【0003】
このような管接続部材の撤去作業に用いられる撤去装置は、作業用ケースが既設管の分岐管部のフランジよりも大径を成す二つ割りのベース部材と、ベース部材上に組み付けられる筒状のケース部材と、から構成されており、ベース部材を分岐管部の首部に取付けた後、ケース部材をベース部材上に組み付けることで、分岐管部のフランジに干渉させることなく、作業用ケースを組み立てることができるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-249386号公報(第3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にあっては、ベース部材の内周面にパッキンが取付けられており、二つ割りのベース部材を分岐管部の首部に配置し、ベース部材同士を締結する締結力によってパッキンをベース部材と分岐管部の首部との間で押し潰して、ベース部材を分岐管部の首部に密封状に取付ける構造であるため、ベース部材やパッキンの高い製造精度や取付け精度が要求され、且つパッキンの状況を視認し難く、ベース部材と分岐管部の首部との間を確実に密封する作業が煩雑であった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、ベース部材と分岐管部の首部との間を確実に且つ簡便に密封することができる管接続部材撤去装置および管接続部材撤去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の管接続部材撤去装置は、
流路構成部材の本管部から分岐される分岐管部の首部に固定される分割構造のベース部材と、前記ベース部材に組み付けられるケース部材と、を備える作業用ケースにより前記分岐管部に取付けられた管接続部材を密封状に囲い、該作業用ケース内で前記管接続部材を不断流状態で撤去する管接続部材撤去装置であって、
前記ベース部材に、前記分岐管部の軸方向一方側と内径側とに開放する密封部材用の切欠き凹部が前記分岐管部の首部の周囲を囲うように形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、ベース部材を分岐管部の首部の外周面に設置した状態で、切欠き凹部を分岐管部の軸方向一方側から視認しながら該切欠き凹部内で所定の密封部材を用いてベース部材と分岐管部の首部との間を密封処理できるので、ベース部材と分岐管部の首部との間を確実に且つ簡便に密封することができる。
【0008】
前記切欠き凹部は、前記ベース部材の前記作業用ケース側に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、作業用ケース側から切欠き凹部にアクセスしやすいので、密封処理を簡便に行うことができる。
【0009】
前記切欠き凹部は、前記ベース部材の板厚の半分以上にわたり形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、ベース部材と分岐管部の首部との間の密封領域を大きく確保することができる。
【0010】
前記ベース部材に、密封部材としてのシールリングを前記切欠き凹部に押圧する押輪が装着可能となっていることを特徴としている。
この特徴によれば、シールリングと押輪を用いた簡単な構成でベース部材と首部との間の密封処理を行うことができる。
【0011】
前記切欠き凹部は、軸方向一方側の端面から内径側に向けて深くなるように延びる傾斜面を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、シールリングを切欠き凹部と押輪との間で狭圧したときに、シールリングが傾斜面により分岐管部の首部側に弾性変形するようにガイドされるのでシール性を高めることができる。
【0012】
前記首部は、該首部の軸方向に沿って延び前記シールリングに当接する直線部を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、シールリングが分岐管部の直線部に安定して当接するのでシール性を高めることができる。
【0013】
前記分岐管部と前記管接続部材との脱着をガイドするガイドボルトと、前記ベース部材との間には、前記ガイドボルトの落下を防止する落下防止手段が配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、作業時にガイドボルトが落下することを防止できる。
【0014】
本発明の管接続部材撤去方法は、
流路構成部材の本管部から分岐される分岐管部の首部に固定される分割構造のベース部材と、前記ベース部材に組み付けられるケース部材と、を備える作業用ケースにより前記分岐管部に取付けられた管接続部材を密封状に囲い、該作業用ケース内で前記管接続部材を不断流状態で撤去する管接続部材撤去方法であって、
分割された前記ベース部材を前記分岐管部の首部を囲うように設置した状態で、前記作業用ケース側から前記ベース部材の内周面と前記分岐管部の首部の外周面との間を密封する密封処理を行うことを特徴としている。
この特徴によれば、ベース部材を分岐管部の首部の外周面に設置した状態で、ベース部材と分岐管部の首部との間を作業用ケース側から視認しながら所定の密封部材を用いてベース部材と分岐管部の首部との間を密封処理できるので、ベース部材と分岐管部の首部との間を確実に且つ簡便に密封することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例1における管接続部材が接続された既設流体管を示す図である。
【
図2】
図1の状態からボルト・ナットの向きを変更した状態を示す図である。
【
図3】(a)は既設流体管にベース部材を取付けた状態を示す図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図4】分岐管部の首部とベース部材との間を密封した状態を示す図である。
【
図5】(a)は切欠き凹部及び押輪の変形例1を示す図、(b)は切欠き凹部及び押輪の変形例2を示す図である。
【
図6】(a)は
図3の状態からボルト・ナットをガイドボルトに交換した状態を示す図、(b)は回転防止座金及びロックナットの構造を示す図である。
【
図7】ガイドボルトへの交換が完了した状態を示す図である。
【
図8】(a)はベース部材に押え筒を取付けた状態を示す図、(b)は押え筒を取付けた既設流体管を上方から見た図である。
【
図9】実施例1における落下防止手段によりガイドボルトを支持した状態を示す図である。
【
図10】作業用ケース内で管接続部材を撤去する状態を示す図である。
【
図11】(a)は本発明の実施例2における落下防止手段を備える押え筒を上方から見た図、(b)は(a)のB-B断面図であり、押え筒をベース部材に取付けた状態を示す図である。
【
図12】本発明の実施例3においてボルト・ナットをガイドボルトに交換する途中の状態を示す図である。
【
図13】(a)~(c)は本発明の実施例3における特殊ナットの取付手順を示す図である。
【
図14】実施例3における落下防止手段によりガイドボルトを支持した状態を示す図である。
【
図15】(a)は本発明の実施例4における落下防止手段を示す図、(b)は落下防止手段によりガイドボルトを支持した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る管接続部材撤去装置および管接続部材撤去方法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0017】
実施例1に係る管接続部材撤去装置および管接続部材撤去方法につき、
図1から
図10を参照して説明する。
【0018】
図1に示されるように、流路構成部材としての既設流体管1(以下、単に流体管1と称する)は、水平方向に延びる本管部1Aと、この本管部1Aに連通して垂直上方に分岐する分岐管部2と、を備えた所謂T字管である。分岐管部2は、本管部1Aから垂直上方に延びる首部2Aと、首部2Aの上端部に設けられる分岐管フランジ部3(フランジ部)と、が形成されている。ここで、本管部1A若しくは首部2Aが傾斜して配設されていても構わない。
【0019】
また、本実施例では、高圧の管路で設計されることが多く、分岐管部2は、その管径に比べ垂直方向に短く形成されており、例えば、土被りの小さいスペースでも使用できるようになっている。また、首部2Aは、本管部1Aから垂直上方に直線状に延びる直線部2aと、直線部2aから分岐管フランジ部3に向けて拡径するように傾斜するテーパ部2bと、を備えており、後述するボルト交換作業用のスペースが分岐管フランジ部3のテーパ部2b側の下方に確保されている。尚、本実施例1では、直線部2aとテーパ部2b(いわゆるネックフランジ)とが溶接ビード部2cを境に接続されている形態を例示するが、鋳造などで形成されていてもよい。
【0020】
分岐管フランジ部3には、環状のパッキン7を介在させることで、既設の管接続ユニットU1(管接続部材)が密封状に接続されている。この管接続ユニットU1は、分岐管フランジ部3に対し既設のボルト・ナット10で締結されたフランジ部4aを下部に備える人孔蓋4と、該人孔蓋4の上部に取付けられる補修弁6と、から構成されている。尚、通常、補修弁6の上方に既設の空気弁等の管接続部材が接続されているが、
図1では、補修弁6を閉塞することで、これらの管接続部材は既に撤去された状態である。この場合、例えばフランジ短管などが管接続部材として用いられてもよい。更に尚、本実施例1では流体管内の流体は上水であるが、本実施例1の上水に限らず、例えば工業用水や農業用水、下水の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0021】
流体管1は、本実施例では鋼製である。尚、本発明に係る流体管は、ダクタイル鋳鉄製であって、断面視略円形状に形成され、内周面がエポキシ樹脂層で被覆されていてもよく、その他鋳鉄、ステンレス等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール製、ポリエチレン製若しくはポリオレフィン製等であってもよい。さらに尚、流体管の内周面はエポキシ樹脂層に限らず、例えばモルタル等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。
【0022】
以降、本実施例1における管接続部材撤去装置(以降、単に「撤去装置」と記載することもある)を用いて、分岐管フランジ部3から管接続ユニットU1を不断流状態で撤去する態様について説明する。
【0023】
図2に示されるように、最初に、分岐管フランジ部3及びフランジ部4aの下方(分岐管フランジ部3側)にボルト頭部が配置されているボルト・ナット10を、分岐管フランジ部3及びフランジ部4aの上方(フランジ部4a側)にボルト頭部が配置されるように新規のボルト・ナット10’に1本ないし所定本ずつ交換する。このとき、万力などの図示しない治具により分岐管フランジ部3及びフランジ部4aを狭持するとよい。これにより、後述する環状ベース部材9を流体管1に取付けても、ボルト・ナット10’を上方から取外すことができるようになり、分岐管フランジ部3と本管部1Aとの間のスペースが狭い流体管1であっても、ボルト・ナット10が取外すことができなくなる虞を回避できる。尚、本実施例1では、既設のボルト・ナット10から新規のボルト・ナット10’に交換する形態を例示したが、既設のボルト・ナット10の向きを変更するようにしてもよい。
【0024】
次いで
図3(a)に示されるように、流体管1に環状ベース部材9(ベース部材)を取付ける。
図3(a)(b)に示されるように、環状ベース部材9は、分割部材9A,9Bから成る二つ割りの分割構造を成し、分割部材9A,9Bを組み立てたときに分岐管部2の首部2Aの直線部2aの周囲を囲うように形成される環状板部91(上面視環状)と、環状板部91の下方に延設され流体管1の本管部1Aに載置されるように形成された基礎部94と、を備えている。
【0025】
分割部材9A,9Bの互いに対向する周方向両端部には、接合部93a,93bがそれぞれ形成されており、首部2Aを径方向から挟むように分割部材9A,9Bを配置し、接合部93a,93b同士をボルト・ナットN1で締結することにより、流体管1に環状ベース部材9が設置される。また接合部93a,93b同士をボルト・ナットN1で締結した後、接合部93a,93b同士を溶接することにより、分割部材9A,9B間を密封する。尚、環状ベース部材9を流体管1や分岐部2に溶接して固定してもよい。
【0026】
基礎部94は、平面視において軸方向に延び、軸方向視において本管部1Aの外周面に沿って湾曲形成される脚部94a,94a(
図10参照)と、脚部94a,94aと環状板部91とを連結する複数のリブ部94bと、を備えている。尚、環状ベース部材9は、少なくとも環状板部91を有していればよく、基礎部94に替えて例えば環状板部91を支持するコンクリート基礎を設けてもよく、また、コンクリートで環状板部91を構成してもよく、既設流体管の周囲の地盤の状況、既設流体管の上に設置する作業用ケースの大きさに応じて、掘削した地面に鉄板、材木を敷いてもよいし、好適な深さ位置まで掘削した地面を使用してもよいし、流体管1の管体を利用してもよい。さらに尚、環状ベース部材9は、二つ割りに限られず、三つ以上の複数の分割部材から構成されていてもよい。
【0027】
環状板部91の内径側には、首部2Aの直線部2aの周囲を囲うように形成される環状の切欠き凹部92が内径側及び上方側(本実施例での分岐部2の軸方向一方側)に開放して形成されている。この切欠き凹部92は、環状板部91の上面から略垂直下方に延びる垂直面92aと、垂直面92aの下端から内径側に略水平方向に延びる平坦面92cと、平坦面92cの内径側端部から内径側に向かって深くなるように傾斜する傾斜面92dと、を備えている。また、平坦面92cには、後述する押輪20を取付けるためのネジ孔92eが周方向に沿って複数形成されている。また、環状板部91の外径側には、後述する押え筒21を取付けるためのネジ孔92fが形成されている。
【0028】
切欠き凹部92の深さは、環状板部91の板厚とほぼ同等となっている。尚、切欠き凹部92の深さは、適宜変更することができ、好ましくは、環状板部91の板厚の半分以上にわたって切欠き凹部が形成されていればよい。また、切欠き凹部92は、内径側及び分岐管部2の軸方向一方側に開放していれば、その加工方法について限定されるものはなく、例えば、環状板部91を切欠き加工で形成してもよいし、鋳造加工により形成してもよいし、環状板部91の上面から立ち上がる環状の壁部を設け、壁部と該壁部よりも内径側の環状板部91の上面とで形成してもよい。
【0029】
次に、
図4に示されるように、切欠き凹部92の傾斜面92dと首部2Aの直線部2aの外周面との間に、弾性部材からなり自然状態で断面視略円形状のシールリング11(密封部材)を配置するとともに、切欠き凹部92の平坦面92cに環状の押輪20をボルトN2により取付ける。この押輪20は、複数の円弧状板部材から成る分割構造を成し、ボルトN2をネジ孔92eに締結することにより、シールリング11が押輪20と傾斜面92dとの間で上下に押し潰され、これにより環状ベース部材9と首部2Aとの間が密封される。より具体的には、シールリング11は首部2Aの直線部2aに当接しているので、テーパ部2bに当接する場合に比べて安定し、シール性が向上する。ここで、ボルトN2の頭部は後述する変形例1のように上方に突出しないようにしてもよい。
【0030】
また、シールリング11が押輪20と傾斜面92dとの間で上下に押し潰されたときにシールリング11が傾斜面92dにより首部2A側に弾性変形するようにガイドされるのでシール性を高めることができる。また、シールリング11は自然状態で断面視略円形状を成すので、シールリング11が押輪20と傾斜面92dとの間で上下に押し潰されたときに均等に弾性変形させることができる。
【0031】
また、押輪20の板厚は、垂直面92aと略同一寸法であるため、押輪20を環状板部91に取付けた状態にあっては、押輪20が環状板部91の上面よりも上方に突出せず、切欠き凹部92内に収まる。尚、シールリング11は断面視略円形状を成すが、これに限られず、断面形状は適宜変更でき、例えば、楕円やいわゆるK形やA形等の断面形状としてもよい。また、シールリング11は周方向に連続して無端状を成すことに限られず、例えばシールリングは有端状に形成されていてもよく、その端部同士を接着することで、押輪20を環状板部91に取付けた状態において周方向に連続するように加工してもよい。
【0032】
ここで、切欠き凹部及び押輪の変形例について説明する。切欠き凹部及び押輪の変形例1として、
図5(a)に示されるように、切欠き凹部920は、平坦面92cの内径側端部から略垂直下方に延びる垂直面920dと、垂直面920dの下端から内径側に略水平方向に延びる水平面920eと、が形成されている。
【0033】
本変形例1の押輪200は、平板部200aと、平板部200aの内径側端部から下方に突出する突出部200bと、を備え、断面視略L字形状を成している。押輪200を環状板部91にボルトN2により取付けると、シールリング11が垂直面920dと水平面920eと突出部200bにより挟圧され、環状ベース部材9と首部2Aの直線部2aとの間が密封される。このように、必ずしも切欠き凹部は傾斜面が形成されていなくてもよい。また、押輪200の平板部200aには、ボルトN2の頭部を収容する収容凹部200cが形成されているので、ボルトN2の頭部が押輪200及び環状板部91の上面よりも上方に突出しないようにできる。尚、ボルトN2を皿ネジにする等して押輪200及び環状板部91の上面よりも上方に突出しないようにしてもよい。
【0034】
また、切欠き凹部及び押輪の変形例2として、
図5(b)に示されるように、本変形例2の切欠き凹部92’は、実施例1のネジ孔92eを有さない点を除き、切欠き凹部92と同一形状を成す。また、環状板部91の切欠き凹部92’よりも外径側の上面には、上方に立ち上がる環状の立上片95が形成されており、立上片95には、径方向に貫通するネジ孔95aが周方向に沿って複数形成されている(ここでは1つのみ図示)。ネジ孔95aには、ボルトN3が螺合されており、ボルトN3の内径側端部は先細りしている。また、本変形例2の押輪201は、環状の平板部201aと、平板部201aから上方に立ち上がる立上片201bと、を備え、立上片201bには、ボルトN3の内径側端部が当接可能なテーパ面201cが形成されている。
【0035】
ボルトN3を外径側に退避させた状態で、切欠き凹部92’の平坦面92cに押輪201を配置し、ボルトN3を内径側に進行させることにより、ボルトN3の内径側端部が立上片201bのテーパ面201cに接触し、押輪201がシールリング11を傾斜面92dに向けて押し潰す方向に移動するようになっている。このように、ボルトN3を外径側から操作することで押輪201と傾斜面92dとの間でシールリング11を狭持することができるので、分岐管軸方向に短く形成された分岐管部2であっても、テーパ部2bや分岐管フランジ部3に干渉させることなく押輪201の操作を行いやすい。
【0036】
実施例1に戻って、次いで
図6(a)に示されるように、ボルト・ナット10’をガイドボルト12に交換する。具体的には、1本ないし所定本ずつボルト・ナット10’を取外し、ガイドボルト12を挿入する。このとき、万力などの図示しない治具により分岐管フランジ部3及びフランジ部4aを狭持した状態で行ってもよい。その後、ガイドボルト12を支持した状態で、その下方から回転防止座金13を挿通しロックナット14を螺合させる。
【0037】
図6(b)に示されるように、回転防止座金13は、分岐管フランジ部3の下面に当接可能な下面視矩形状の板部13aと、板部13aの一辺から上方に立ち上がる第1片部13bと、板部13aの一辺と隣接する両辺から下方に延設される第2片部13c,13cと、を備えている。ガイドボルト12の下方からロックナット14を緊締し、回転防止座金13の板部13aが分岐管フランジ部3の下面に当接したときに、ガイドボルト12の下端と環状板部91の上面との間が所定の距離となるように調整する。
【0038】
そして、
図7に示されるように、ガイドボルト12の上方からナット15を緊締し、このナット15とロックナット14とにより、分岐管フランジ部3、フランジ部4a、及び回転防止座金13を上下方向に狭持する。このとき、回転防止座金13の第1片部13bが分岐管フランジ部3の外周面に当接するとともに、ロックナット14が第2片部13c,13cの間に回転が規制された状態で配置される。これにより、回転防止座金13及びロックナット14が意図せずに回転して緩むことを防止できる。
【0039】
次に、
図8(a)に示されるように、環状板部91の上面にボルトN4を用いて押え筒21を固定する。この押え筒21は、分岐管部2の周辺を囲う筒状体であり、その下端部には外側から操作することで径方向に進退可能な押えコマ22(落下防止手段)が、前述したガイドボルト12に対応するように周方向に離間して複数設けられている。また、押え筒21の上端部には外側から操作することで径方向に進退可能な固定ピン23が周方向に離間して複数設けられている。また、押え筒21の下端面には、環状のOリング24が配設されており、Oリング24が環状板部91と押え筒21との間で狭圧されることで環状板部91と押え筒21とが密封状に接続される。尚、
図8(b)では説明の便宜上、分岐管フランジ部3及び管接続ユニットU1の図示を省略している。
【0040】
その後、
図9に示されるように、複数の押えコマ22を順次内径側に移動させ、押えコマ22の先端部材22aをガイドボルト12の下端と環状板部91の上面との間に圧入する。先端部材22aの上面は、内径側に向けて低くなるように傾斜する傾斜面22bが形成されているので、先端部材22aをガイドボルト12の下端と環状板部91の上面との間に圧入しやすい。
【0041】
また、固定ピン23を内径側に移動させ、固定ピン23の先端部をフランジ部4aの外周側上縁に係止させる。固定ピン23は、内径側の先端部が先細りするテーパ形状を成すボルトであり、押え筒21の上端部に形成されたネジ孔21aに螺合されており、固定ピン23を回転させることにより径方向に進退させることができるようになっている。
【0042】
次いで、
図10に示されるように、押え筒21の上部に下部作業用ケース25、作業弁装置26、上部作業用ケース27、挿入機取付用蓋28の順に密封状に組み立てて作業用ケース30を構成し、挿入機取付用蓋28に挿入機29を密封状に取付ける。すなわち、作業用ケース30は、環状ベース部材9と、環状ベース部材9上に組み付けられる押え筒21、下部作業用ケース25、作業弁装置26、上部作業用ケース27、挿入機取付用蓋28により構成されており、押え筒21、下部作業用ケース25、作業弁装置26、上部作業用ケース27はケース部材として機能している。尚、作業用ケース30は、本実施例1の形態に限られず、少なくとも管接続部材を密封状に囲繞可能に構成されるものであれば、分割構造の態様等は適宜に設定される。
【0043】
次に、補修弁6に接続された吊り金具16をケース部材に開閉可能に設けられた窓を利用して、挿入機29と連結する。そして、ガイドボルト12からナット15を取外して密封し、作業用ケース30内に注水して流体管1内の圧力を略同圧にする。前述のように、押えコマ22の先端部材22aがガイドボルト12の下端と環状板部91の上面との間に圧入されているので、
図9の状態からガイドボルト12からナット15を取外してもガイドボルト12が落下することを防止できる。
【0044】
その後、固定ピン23を外径方向に後退させ、固定ピン23による人孔蓋4の係止固定を解除するととともに、挿入機29を操作して補修弁6及び人孔蓋4(管接続ユニットU1)を引き上げ、作業弁装置26の弁体(図示略)を閉塞する。これにより、分岐管部2から管接続ユニットU1を不断流状態で撤去する作業が完了する。尚、ここでは図示しないが、上記した撤去作業に続けて、新規管接続ユニットを分岐管部2に接続する際には、上記作業と反対の手順で新規管接続ユニットを分岐管部2に接続する。尚、ガイドボルト12により管接続ユニットU1の引き上げ方向や新規管接続ユニットの接続方向がガイドされるので、分岐管部2に対する管接続部材の撤去及び付け替え作業を正確に行うことができる。
【0045】
また、管接続ユニットU1を分岐管部2から不断流状態で撤去するとともに、新規管接続ユニットを分岐管部2に不断流状態で接続する作業を行った後、作業用ケース30を流体管1から取外す。尚、押え筒21、下部作業用ケース25、作業弁装置26、上部作業用ケース27、挿入機取付用蓋28を取外して、環状ベース部材9は流体管1に残存させていても構わない。
【0046】
以上説明したように、本実施例1の管接続部材撤去装置は、環状ベース部材9の環状板部91に、分岐管部2の上方側(軸方向一方側)と内径側とに開放するシールリング11用の切欠き凹部92が分岐管部2の首部2Aの周囲を囲うように形成されている。これによれば、環状板部91を分岐管部2の首部2Aの外周面に環状に設置した状態で、切欠き凹部92を分岐管部2の上方側から視認しながら切欠き凹部92内でシールリング11を用いて環状板部91と分岐管部2の首部2Aとの間を密封処理できるので、環状板部91の製造精度や取付け精度に関わらず、環状板部91と分岐管部2の首部2Aとの間を確実に且つ簡便に密封することができる。
【0047】
また、切欠き凹部92は、環状板部91の作業用ケース30側に形成されており、流体管1の本管部1A側から切欠き凹部92に密封処理を行うことに比べて、作業用ケース30側から切欠き凹部92にアクセスしやすいので、密封処理を簡便に行うことができる。特に、本実施例1のように一般的な分岐管部に比べ短い分岐管部2に接続される管接続ユニットU1を不断流状態で撤去する際に有用である。さらに、管接続ユニットU1を撤去する作業時には、作業用ケース30内の流体の圧力がシールリング11を押し潰す方向に作用するので、密封性が向上する。
【0048】
また、切欠き凹部92は、環状板部91の板厚の半分以上にわたり形成されている。具体的には、切欠き凹部92の深さは、環状板部91の板厚とほぼ同等となっているので、環状板部91と押輪20との間でシールリング11が上下に押し潰されたときに、シールリング11が分岐管部2の首部2Aに接触する領域(密封領域)を大きく確保することができる。
【0049】
また、環状板部91に、密封部材としてシールリング11を切欠き凹部92に押圧する押輪20が装着可能となっており、シールリング11を切欠き凹部92と押輪20とで狭圧する簡単な構成で環状板部91と首部2Aとの間の密封処理を行うことができる。
【0050】
また、切欠き凹部92は、環状板部91の上面から内径側に向けて深くなるように延びる傾斜面92dを有しているため、シールリング11を切欠き凹部92と押輪20との間で狭圧したときに、シールリング11が傾斜面92dにより分岐管部2の首部2A側に弾性変形するようにガイドされるのでシール性を高めることができる。尚、傾斜面92dは、切欠き凹部92内の少なくとも一部に形成されていればよい。
【0051】
また、シールリング11は、首部2Aの軸方向に沿って延びる直線部2aに当接しているため、シールリング11がテーパ部2bや、直線部2aとテーパ部2bとの溶接ビード部2c等を避けて、分岐管部2の直線部2aに安定して当接するのでシール性を高めることができる。
【0052】
また、分岐管部2と管接続との脱着をガイドするガイドボルト12と、環状板部91との間には、ガイドボルト12の落下を防止する押えコマ22が配置されているので、ガイドボルト12からナット15を取外してもガイドボルト12が落下することを防止できる。
【0053】
また、本実施例1の管接続部材撤去方法は、分割された環状板部91を分岐管部2の首部2Aを囲うように環状に設置した状態で、作業用ケース30側から環状板部91の内周面と分岐管部2の首部2Aの外周面との間を密封する密封処理を行う。これによれば、環状板部91を分岐管部2の首部2Aの外周面に設置した状態で、環状板部91と分岐管部2の首部2Aとの間を作業用ケース30側から視認しながらシールリング11を用いて環状板部91と分岐管部2の首部2Aとの間を密封処理できるので、環状板部91と分岐管部2の首部2Aとの間を確実に且つ簡便に密封することができる。
【0054】
尚、本実施例1では、切欠き凹部92が環状板部91の上方側(作業用ケース30側)に開放するように形成されていたが、これに限られず、環状板部91の下方側(作業用ケース30とは反対側)に開放するように形成されていてもよい。
【0055】
また、本実施例1では、分割部材9A,9Bをボルト・ナットN1で締結することで分岐管部2の首部2Aの周囲を囲うように環状ベース部材9を設置する形態を例示したが、例えば、環状ベース部材9にセットボルトを設け、該セットボルトを流体管1に食い込ませることにより設置してもよい。また、環状ベース部材9が流体管1に密封状に設置される場合には、環状ベース部材9を流体管1に固定しなくてもよい。また、分割部材9A,9Bの接合部93a,93bをボルト・ナットN1で締結した後、接合部93a,93bを溶接して密封することに限られず、接合部93a,93bを硬化性樹脂やパッキンなどで密封してもよい。
【0056】
また、本実施例1では、密封部材としてシールリング11を用いる形態を例示したが、切欠き凹部92と分岐管部2の首部2Aとの間を溶接や硬化性樹脂などで密封してもよい。さらに、切欠き凹部92は必ずしも形成されることに限られず、環状ベース部材を平坦な板状に形成し、該環状ベース部材と分岐管部2の首部2Aとの間を首部2Aの軸方向一方側から、あるいは両方側から溶接または硬化性樹脂などで密封してもよい。
【0057】
また、本実施例1では、管接続部材としての管接続ユニットU1が人孔蓋4と補修弁6とで構成されている形態を例示したが、管接続部材は、弁蓋や補修弁などであってもよく適宜変更することができる。
また、押え筒210の下方側には、内径方向に突出する環状の突出部210eが形成されており、突出部210eは複数のガイドボルト12の下端をまとめて支持するようになっている。これによれば、ガイドボルト12からナット15を取外してもガイドボルト12が落下することを防止できる。すなわち、突出部210eは実施例2における落下防止手段として機能している。また、突出部210eは環状に形成されているため、複数のガイドボルト12と周方向に位置合わせする必要が無く、簡便に支持することができる。尚、押え筒210は、3分割以上の分割構造であってもよい。また、円弧状部材同士が溶接や硬化性樹脂などで密封されてもよい。