(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086899
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】運転状態推定装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
G08G1/16 F
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073288
(22)【出願日】2023-04-27
(62)【分割の表示】P 2021108721の分割
【原出願日】2017-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康悟
(57)【要約】
【課題】精度良く運転者の運転状態を推定することができる運転状態推定装置を提供する。
【解決手段】運転情報取得部2で、車両の現在位置における運転情報を取得する。一方、運転状態推定部4で、現在位置が特異地点に該当するか判定し、無線通信部3で、現在位置が特異地点に該当すると判定された場合は第1運転行動パターン11aを取得し、現在位置が特異地点に該当しないと判定された場合は第2運転行動パターン11bを取得する。そして、運転状態推定部4で、第1運転行動パターン11a又は第2運転行動パターン11bと、現在位置における運転情報と、を比較して運転者の運転状態を推定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の現在位置における運転情報を取得する第1取得手段と、
前記現在位置が特異地点に該当するか判定する判定手段と、
前記現在位置が前記特異地点に該当すると判定された場合は第1運転情報を取得し、前記現在位置が前記特異地点に該当しないと判定された場合は第2運転情報を取得する第2取得手段と、
前記第1運転情報又は前記第2運転情報と、前記現在位置における運転情報と、を比較して運転者の運転状態を推定する推定手段と、
を備えることを特徴とする運転状態推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の運転者の運転状態を推定する運転状態推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の移動体の事故を低減するために、居眠り運転や漫然運転等の運転者の運転状態を推定し、運転者に対して所定の情報を報知する技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、運転特性取得部が、運転者の過去の運転履歴に基づく運転特性情報を取得し、運転状況取得部が、現在の運転状況に関する運転状況情報を取得し、状態レベル推定部が、運転特性情報および運転状況情報に基づいて運転者の状態を推定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法の場合、過去の運転行動と現在の運転行動を比較することによって運転者の状態を推定する。この場合、普段とは走行することが少ない地点、例えば峠道などを走行すると、過去の運転行動の範囲から外れてしまうため判定ができない。また、過去の運転行動を平均化して比較したとすると、上記峠道などの普段とは走行することが少ない地点は、ハンドルを頻繁に切る、ブレーキを踏む機会が多くなるなど普段とは異なる運転操作をするため平均から大きく外れる場合があり、通常の運転をしているにもかかわらず、運転者の状態を誤認してしまう可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、例えば、精度良く運転者の運転状態を推定することができる運転状態推定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、移動体の現在位置における運転情報を取得する第1取得手段と、前記現在位置が特異地点に該当するか判定する判定手段と、前記現在位置が前記特異地点に該当すると判定された場合は第1運転情報を取得し、前記現在位置が前記特異地点に該当しないと判定された場合は第2運転情報を取得する第2取得手段と、前記第1運転情報又は前記第2運転情報と、前記現在位置における運転情報と、を比較して運転者の運転状態を推定する推定手段と、を備えることを特徴としている。
【0008】
請求項9に記載の発明は、移動体の運転者の運転状態を推定する運転状態推定装置の運転状態推定方法であって、前記移動体の現在位置における運転情報を取得する第1取得工程と、前記現在位置が特異地点に該当するか判定する判定工程と、前記現在位置が前記特異地点に該当すると判定された場合は第1運転情報を取得し、前記現在位置が前記特異地点に該当しないと判定された場合は第2運転情報を取得する第2取得工程と、前記第1運転情報又は前記第2運転情報と、前記現在位置における運転情報と、を比較して運転者の運転状態を推定する推定工程と、を含むことを特徴としている。
【0009】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の運転状態推定方法を、コンピュータにより実行させることを特徴としている。
【0010】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の運転状態推定生成プログラムを格納したことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施例にかかる運転状態推定装置のブロック図である。
【
図2】
図1に示された運転状態推定部における推定方法の具体例である。
【
図3】
図1に示された運転部の動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態にかかる運転状態推定装置を説明する。本発明の一実施形態にかかる運転状態推定装置は、第1取得手段で、移動体の現在位置における運転情報を取得する。一方、判定手段で、現在位置が特異地点に該当するか判定し、第2取得手段で、現在位置が特異地点に該当すると判定された場合は第1運転情報を取得し、現在位置が特異地点に該当しないと判定された場合は第2運転情報を取得する。そして、推定手段で、第1運転情報又は第2運転情報と、現在位置における運転情報と、を比較して運転者の運転状態を推定する。このようにすることにより、例えば急カーブや特殊な細街路、峠道などの道路形状や、見通しの悪い交差する地点など、道路環境が著しく悪い特異地点とそれ以外の地点とを分けて運転状態を推定することができ、通常の運転操作と異なるような地点であっても第1運転情報に基づいて推定することで誤認識を少なくすることができる。したがって、走行する場面を選ばず、精度良く運転状態を推定することができる。
【0013】
また、推定手段は、運転状態として運転者の運転操作のタイミングに余裕があるか否かを推定してもよい。このようにすることにより、運転者の運転操作のタイミングの遅れ等により、居眠り運転や漫然運転等を推定することができる。
【0014】
また、第1運転情報及び第2運転情報は、位置情報を含んでいてもよい。このようにすることにより、過去の走行履歴として第1運転情報及び第2運転情報を活用することができる。
【0015】
また、推定手段は、移動体の現在の走行位置と一致する位置情報を有する第1運転情報又は第2運転情報を比較してもよい。このようにすることにより、過去に当該位置を走行した運転情報と現在の運転情報とを直接比較することができ、より高精度に運転者の運転状態を推定することができる。
【0016】
また、第1運転情報及び第2運転情報は、道路環境や道路形状に基づいてパターン化されていてもよい。このようにすることにより、過去に走行したことが無い地点についても、当該地点に類似するパターンにより比較することが可能となる。
【0017】
また、推定手段は、移動体の現在の走行位置と道路環境や道路形状が類似するパターンの第1運転情報又は第2運転情報を比較してもよい。このようにすることにより、過去に走行したことがいない地点についても、現在の運転情報と比較することができ、運転状態を推定することができる。
【0018】
また、第1運転情報及び第2運転情報には、時刻情報が含まれ、推定手段は、現在時刻に対応する第1運転情報又は第2運転情報と比較して運転者の運転状態を推定してもよい。このようにすることにより、夜間や昼間といった時間帯に応じた運転情報を選択して比較することができる。したがって、より高精度に運転状態を推定することができる。
【0019】
また、運転状態を運転者に報知する報知手段を備えてもよい。このようにすることにより、例えば居眠り運転や漫然運転等の危険やその兆候を運転者に通知し、休憩等を促すことができる。
【0020】
また、本発明の一実施形態にかかる運転状態推定方法は、第1取得工程で、移動体の現在位置における運転情報を取得する。一方、判定工程で、現在位置が特異地点に該当するか判定し、第2取得工程で、現在位置が特異地点に該当すると判定された場合は第1運転情報を取得し、現在位置が特異地点に該当しないと判定された場合は第2運転情報を取得する。そして、推定工程で、第1運転情報又は第2運転情報と、現在位置における運転情報と、を比較して運転者の運転状態を推定する。このようにすることにより、例えば急カーブや特殊な細街路、峠道などの道路形状や、見通しの悪い交差する地点など、道路環境が著しく悪い特異地点とそれ以外の地点とを分けて運転状態を推定することができ、通常の運転操作と異なるような地点であっても第1運転情報に基づいて推定することで誤認識を少なくすることができる。したがって、走行する場面を選ばず、精度良く運転状態を推定することができる。
【0021】
また、上述した運転状態推定方法をコンピュータにより実行させる運転状態推定プログラムとしてもよい。このようにすることにより、コンピュータを用いて、例えば急カーブや特殊な細街路、峠道などの道路形状や、見通しの悪い交差する地点など、道路環境が著しく悪い特異地点とそれ以外の地点とを分けで運転状態を推定することができ、通常の運転操作を異なるような場面であっても誤認識を少なくすることができる。したがって、走行する場面を選ばず、精度良く運転状態を推定することができる。
【0022】
また、上述した運転状態推定プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよい。このようにすることにより、当該プログラムを機器に組み込む以外に単体でも流通させることができ、バージョンアップ等も容易に行える。
【実施例0023】
本発明の一実施例にかかる運転状態推定装置を
図1乃至
図3を参照して説明する。運転状態推定装置1は、
図1に示したように、運転情報取得部2と、無線通信部3と、運転状態推定部4と、現在位置取得部5と、報知部6と、を備えている。
図1に示した運転状態推定装置1は、車両等の移動体に設置されている。
【0024】
第1取得部としての運転情報取得部2は、例えば走行速度やブレーキやアクセル或いはハンドル等の操作タイミング、ペダルの踏み量、ハンドルの舵角、或いは加減速や横方向の加速度等の情報を車両に設置された各種センサ等からデータを取得するインターフェース(I/F)である。取得されたデータは現在位置における運転情報として運転状態推定部4に出力される。
【0025】
第2取得手段としての無線通信部3は、後述するサーバ11とインターネット等のネットワークNを介して無線により通信するための電子回路やアンテナ等を備えている。無線通信部3は、サーバ11から第1運転行動パターン11a又は第2運転行動パターン11bを受信(取得)して運転状態推定部4に出力する。また、無線通信部3は、運転情報取得部2が取得した現在における運転情報を運転状態推定部4からの制御によりサーバ11に送信する。
【0026】
運転状態推定部4は、運転情報取得部2が取得した現在位置における運転情報と、無線通信部3が取得した第1運転行動パターン11a又は第2運転行動パターン11bと、を比較して運転者の運転状態を推定する。運転状態の推定方法の詳細は後述する。また、運転情報取得部2が取得した現在位置における運転情報を走行履歴として無線通信部3にサーバ11へ送信させる。運転状態推定部4は、例えばECU(Electronic Control Unit)等として車両内に設置されてもよいし、ナビゲーション装置等の車載機器に搭載されているCPU(Central Processing Unit)が機能するようにしてもよい。
【0027】
現在位置取得部5は、例えばGPS(Global Positioning System)受信機等により運転状態推定装置1が設置されている車両の現在位置を取得する。
【0028】
報知手段としての報知部6は、運転状態推定部4の推定結果に基づいて、必要に応じて運転者等に運転状態を報知する。報知部6は、例えば文字やアイコン等の表示により報知する液晶ディスプレイや警告灯等の表示手段や、警告音等の音により報知するスピーカ等により構成される。或いは運転席に埋め込まれた振動子を振動させること等により報知してもよい。
【0029】
また、報知部6が報知する対象としては運転者に限らない。例えば離れた場所にいる家族や、トラック、バス等の業務用車両であれば管理者等に通信回線等を介して報知するようにしてもよい。
【0030】
サーバ11は、第1運転行動パターン11a及び第2運転行動パターン11bが格納されている(記憶されている)。サーバ11は、運転状態推定装置1からの要求に応じて第1運転行動パターン11a又は第2運転行動パターン11bを送信する。
【0031】
第1運転行動パターン11aは、運転者の特異地点における運転行動パターンである。第2運転行動パターン11bは、運転者の特異地点以外の地点における運転行動パターンである。運転行動パターンとは、例えば、走行速度やブレーキやアクセル或いはハンドル等の操作タイミング、ペダルの踏み量、ハンドルの舵角、或いは加減速や横方向の加速度などの運転操作にかかる行動をパターン化したものである。特異地点とは、例えば、急カーブや特殊な細街路(電柱やガードレールが道にはみ出しすれ違いが困難など)或いは峠道などの道路形状や、見通しの悪い交差する地点などの道路環境が著しく悪い地点をいう。
【0032】
第1運転行動パターン11a及び第2運転行動パターン11bは、運転者毎に生成され、記憶されている。
【0033】
サーバ11には、運転状態推定装置1の運転情報取得手段が取得した運転情報が、現在位置取得部5が取得した現在位置と関連付けて走行履歴として蓄積されている。第1運転行動パターン11aは、蓄積した運転情報のうち特異地点にかかる運転情報を、道路環境や道路形状に基づいてパターン化したものである。例えば急カーブ、細街路、峠道、交差点等としてパターン化されている。なお、パターンの作成はサーバ11で行うに限らず、他の演算サーバ等で行ってもよい。また、現在位置が走行履歴にある場合は、その履歴の運転情報自体を第1運転行動パターン11aとしてもよい。この場合、第1運転行動パターン11aには位置情報を含むこととなる。当該位置の走行履歴が複数ある場合は例えば平均化してもよい。
【0034】
第2運転行動パターン11bも第1運転行動パターン11aと同様に、蓄積された運転情報のうち特異地点以外の地点にかかる運転情報を、道路環境や道路形状に基づいてパターン化したものである。なお、第2運転行動パターン11bも現在位置が走行履歴にある場合は、その履歴の運転情報自体を第2運転行動パターン11bとしてもよい。この場合、第2運転行動パターン11bには位置情報を含むこととなる。
【0035】
なお、第1運転行動パターン11a及び第2運転行動パターン11bは、走行履歴の蓄積に伴って適宜更新してもよい。その際には、過去数年分など期間を区切って運転行動パターンの更新に適用してもよい。また、第1運転行動パターン11a及び第2運転行動パターン11bは、サーバ11ではなく運転状態推定装置1が有していてもよい。
【0036】
次に、上述した構成の運転状態推定装置1の運転状態推定部4における運転状態の推定方法について説明する。運転状態推定部4では、現在位置取得部5が取得した現在位置が特異地点に該当するか否かを判定する。そして、特異地点に該当すると判定された場合は、第1運転行動パターン11aを無線通信部3にサーバ11から取得させ、当該第1運転行動パターン11aと現在の運転情報とを比較し、運転状態として余裕がある状態か否かを判定する。一方、特異地点に該当しないと判定された場合は、第2運転行動パターン11bを無線通信部3にサーバ11から取得させ、当該第2運転行動パターン11bと現在の運転情報とを比較し、運転状態として余裕がある状態か否かを判定する。即ち、運転状態推定部4は、判定手段としても機能する。
【0037】
なお、特異地点であるか否かは、例えば予め地図情報等に特異地点を示す情報を付加して、運転状態推定部4が参照することで判定してもよいし、別途特異地点のデータベース等を運転状態推定部4が参照してもよい。また、これらの地図情報やデータベース等は、運転状態推定装置1が有してもよいし、ナビゲーション装置等の他の車載機器が有したり、サーバ11等の外部の機器からネットワーク等を介して取得するようにしてもよい。
【0038】
現在位置が走行履歴にある場合は、上述したように、その履歴の運転情報自体を第1運転行動パターン11a又は第2運転行動パターン11bとして、現在位置における運転情報と比較する。現在位置が走行履歴にない場合は、パターン化された第1運転行動パターン11a又は第2運転行動パターン11bと現在位置における運転情報とを比較する。この際、例えば現在位置が峠道であった場合は峠道のパターンと比較する。即ち、現在位置と道路環境や道路形状が類似するパターンの第1運転行動パターン11a(第1運転情報)又は第2運転行動パターン11b(第2運転情報)を比較する。
【0039】
図2に余裕の有無の具体例として左折時を示す。左折する際は巡航走行からプリ行動を経てブレーキを踏み、左折して、加速するのが一連のシーケンスとなる。
図2の横方向は時間軸であり、余裕あり、余裕なしにおける縦方向はG(加速度)の大きさを示す。
【0040】
まず、余裕がある運転の場合は、(1)曲がる前から例えばアクセルペダルから足を離すとか、エンジンブレーキをかけるなどとして、巡航速度から徐々に速度を落とすといったプリ行動が行われる。そして(2)左折直前のブレーキでは、それまでに十分に速度が落ちているため、比較的緩やかな減速G(ブレーキ)となる(
図2のα1)。そして(3)速度が十分に落ちているため、余裕のあるなめらかなハンドルの切りとなり、(4)速度が十分に落ちているため、旋回中の横方向加速度(αy1)も比較的大きくはなく、さらに(5)ハンドルの戻しも余裕のある滑らかなものとなる。
【0041】
一方、余裕がない運転の場合は、(6)ブレーキのタイミングが左折の直前で行われ、余裕がある場合と比べてt1遅れている。従って、ブレーキは急減速となり、減速Gが大きくなる(
図2のα2)。そして、(7)左折の手前までには、十分に速度を落とせなくなり、ブレーキを踏んだままカーブに差しかかってしまい(
図2のt2)、旋回中の横方向加速度(αy2)も大きい値となる。さらに(8)速度が下がりきっていないため、ハンドルの戻しが急になったり、もしくは、ハンドルを切りすぎて、逆にあわてて戻す行為も見られるなど、不安定な時間帯が存在する(
図2のt3)。従って、加速がスムーズに行われない。
【0042】
このように、現在の運転情報として、ブレーキやアクセル或いはハンドル等の操作タイミング、ペダルの踏み量、ハンドルの舵角、或いは加減速や横方向の加速度等の値を、第1運転行動パターン11a又は第2運転行動パターン11bと比較することによって、現在の運転者の運転状態が余裕のある状態か否かを判定することができる。
【0043】
例えば、
図2のt1、t2、t3の長さがそれぞれ閾値以上である場合は余裕がないと判定する。この場合、閾値はt1、t2、t3にそれぞれ個別に設定してもよい。また、t1、t2、t3の全てが閾値時間以上であるに限らず、いずれか1つ以上が閾値時間以上で余裕なしと判定してもよい。
【0044】
余裕のある運転状態の判定にあたっては、操作タイミング、ペダルの踏み量、ハンドルの舵角、或いは加減速や横方向の加速度等の運転情報に含まれる値のうち、例えば上述したt1、t2、t3のように操作タイミングのみ等全ての項目を比較しなくてもよい。
【0045】
この判定結果は、その都度余裕の有無を報知部6から報知するに限らず、複数回余裕がないと判定された場合に報知してもよい。これは、例えば
図2の余裕がない運転に該当したとしても、それが必ずしも運転者が要因とは限らず、他の要因による可能性もあるためである。そこで報知する場合として、連続して複数回余裕なしとなった場合でもよいし、所定時間内や所定距離内における頻度が所定の閾値以上であった場合でもよい。
【0046】
次に、上述した運転状態推定部4の動作(運転状態推定方法)のフローチャートを
図3に示す。まず、運転情報取得部2に現在の運転情報を取得させ(ステップS1)、運転情報を取得した現在位置が特異地点に該当するか否かを現在位置取得部5が取得した現在位置情報に基づいて判定する(ステップS2)。
【0047】
次に、ステップS2で特異地点に該当すると判定された場合(YESの場合)は、第1運転行動パターン11aをサーバ11から無線通信部3に取得させ(ステップS3)、一方、ステップS2で特異地点に該当しないと判定された場合(NOの場合)は、第2運転行動パターン11bをサーバ11から無線通信部3に取得させる(ステップS4)。
【0048】
次に、ステップS1で取得した現在の運転情報とステップS3で取得した第1運転行動パターン11a又はステップS4で取得した第2運転行動パターン11bとを比較して、余裕がない運転か否かを判定する(ステップS5)。
【0049】
次に、所定回余裕がない運転と判定された場合(ステップS6:YES)は、報知部6から運転者に報知をさせる(ステップS7)。所定回のカウントは運転状態推定部4内部にカウンタ等を設けてカウントすればよい。一方、所定回余裕がない運転と判定されない場合(ステップS6:NO)は、ステップS1に戻る。所定回は上述したように1回ではなく、連続した複数回若しくは所定期間や所定距離内の頻度等であってもよい。
【0050】
次に、ステップS7で報知をさせた後運転終了か否かを判定して運転終了の場合(ステップS8:YES)はフローチャートを終了し、運転終了でない場合(ステップS8:NO)はステップS1に戻る。運転終了か否かは例えばイグニッションスイッチのOFF等で判定すればよい。
【0051】
即ち、ステップS1が第1取得手段、ステップS2が判定手段、ステップS3、S4が第2取得手段、ステップS5が推定手段として機能している。
【0052】
本実施例によれば、運転情報取得部2で、車両の現在位置における運転情報を取得する。一方、運転状態推定部4で、現在位置が特異地点に該当するか判定し、無線通信部3で、現在位置が特異地点に該当すると判定された場合は第1運転行動パターン11aを取得し、現在位置が特異地点に該当しないと判定された場合は第2運転行動パターン11bを取得する。そして、運転状態推定部4で、第1運転行動パターン11a又は第2運転行動パターン11bと、現在位置における運転情報と、を比較して運転者の運転状態を推定する。このようにすることにより、例えば急カーブや特殊な細街路、峠道などの道路形状や、見通しの悪い交差する地点など、道路環境が著しく悪い特異地点とそれ以外の地点とを分けて運転状態を推定することができ、通常の運転操作を異なるような場面であっても第1運転行動パターン11aに基づいて推定することで誤認識を少なくすることができる。したがって、走行する場面を選ばず、精度良く運転状態を推定することができる。
【0053】
また、運転状態推定部4は、運転状態として運転者の運転操作のタイミングに余裕があるか否かを推定している。このようにすることにより、運転者の運転操作のタイミングの遅れ等により、居眠り運転や漫然運転等を推定することができる。
【0054】
また、第1運転行動パターン11a及び第2運転行動パターン11bは、位置情報を含んでいる。このようにすることにより、過去の走行履歴として第1運転行動パターン11a及び第2運転行動パターン11bを活用することができる。
【0055】
また、運転状態推定部4は、移動体の現在の走行位置と一致する位置情報を有する第1運転行動パターン11a又は第2運転行動パターン11bを比較してもよい。このようにすることにより、過去に当該位置を走行した運転情報にかかる運転行動パターンと現在の運転情報とを直接比較することができ、より高精度に運転状態を推定することができる。
【0056】
また、第1運転行動パターン11a及び第2運転行動パターン11bは、道路環境や道路形状に基づいてパターン化されていてもよい。このようにすることにより、過去に走行したことが無い地点についても、当該地点に類似するパターンにより比較することが可能となる。
【0057】
また、運転状態を運転者に報知する報知部6を備えている。このようにすることにより、例えば居眠り運転や漫然運転等の危険やその兆候を運転者に通知し、休憩等を促すことができる。
【0058】
なお、蓄積する運転情報に時刻情報を含み、第1運転行動パターン11a及び第2運転行動パターン11bが、時刻に基づいて例えば朝、昼、夜等の複数種類が作成されていてもよい。即ち、第1運転行動パターン11a及び第2運転行動パターン11bには、時刻情報が含まれ、運転状態推定部4は、現在時刻に対応する第1運転行動パターン11a及び第2運転行動パターン11bを比較して運転者の運転状態を推定してもよい。このようにすることにより、夜間や昼間といった時間帯に応じた運転情報を選択して比較することができる。したがって、より高精度に運転状態を推定することができる。
【0059】
また、上述した実施例は、運転状態が余裕がないと判定した場合は報知するのみであったが、例えば、走行履歴がある場合は、運転状態が余裕がないと判定した以降、その履歴に基づいて、例えば、走行速度やブレーキタイミング等を音声や表示等でガイダンスをしてもよい。
【0060】
また、上述した実施例は、運転行動パターンはサーバから取得することとしたが、運転状態推定装置や、ナビゲーション装置が備える記憶部に運転行動パターンを記憶しておき、その記憶部から取得するようにしても良い。
【0061】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の運転状態推定装置の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。