(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086902
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】DNA結合ドメインと切断ドメインとを連結するための組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230615BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230615BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230615BHJP
C12N 9/22 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N5/10
C07K19/00
C12N9/22
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023073331
(22)【出願日】2023-04-27
(62)【分割の表示】P 2020137819の分割
【原出願日】2014-08-28
(31)【優先権主張番号】61/871,219
(32)【優先日】2013-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508241200
【氏名又は名称】サンガモ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド パッション
(72)【発明者】
【氏名】レイ ザン
(57)【要約】
【課題】人工ヌクレアーゼが、結合部位が5bpまたは6bp以外の長さだけ離れている内因性ゲノム配列を切断し得る、標的化された改変を可能にする方法および組成物を提供する。
【解決手段】DNA結合ドメインと切断ドメインとを連結することにより、ヌクレアーゼ、例えば、従来のリンカーと比べて標的部位の間隙(ギャップ)の優先度が変更されたヌクレアーゼを形成するための組成物が、本明細書中に開示される。これらのリンカーを含む融合タンパク質も記載される。本開示は、細胞内において、細胞性クロマチンを目的の領域において標的化切断するためおよび/または目的の所定領域における相同組換えのためにこれらの融合タンパク質およびその組成物を使用する方法も提供する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端およびC末端を有するDNA結合ドメインであって、該DNA結合ドメインは、ヌクレオチド標的部位に結合する、DNA結合ドメイン;
N末端およびC末端を有するFokI切断ドメインであって、該N末端残基QLVKが欠失している、FokI切断ドメイン;ならびに
該DNA結合ドメインのC末端と該切断ドメインのN末端との間のリンカーであって、該リンカーは、PKPAN(配列番号31)、RARPLN(配列番号32)、PMPPLA(配列番号33)またはPPPRP(配列番号34)からなる群より選択される配列を含み、該リンカーが、HTKIH、ZC配列(配列番号35)、およびEXXXR(配列番号9)またはEXXXK(配列番号10)配列を含むジャンクションペプチド配列をさらに含む、リンカー
を含む、融合タンパク質。
【請求項2】
前記ZC配列が、前記リンカーのN末端に存在する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記DNA結合ドメインが、ジンクフィンガータンパク質である、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
請求項1に記載の2つの融合タンパク質を含む二量体。
【請求項5】
前記二量体が、ホモ二量体またはヘテロ二量体である、請求項4に記載の二量体。
【請求項6】
請求項1に記載の少なくとも1つの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項1に記載の融合タンパク質を含む細胞。
【請求項8】
請求項6に記載のポリヌクレオチドを含む細胞。
【請求項9】
細胞内において細胞性クロマチンを目的の領域において標的化切断するためのインビトロ方法であって、該方法は、
細胞性クロマチンが該目的の領域において切断されるような条件下で、該細胞内においてヌクレアーゼ対を発現させる工程を含み、ここで、該ヌクレアーゼは、該目的の領域内の標的部位に結合し、さらに、少なくとも1つのヌクレアーゼは、請求項1に記載の融合タンパク質を構成する、方法。
【請求項10】
両方のヌクレアーゼが、請求項1に記載の融合タンパク質を構成する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ヌクレアーゼの対に対する標的部位が、3~20塩基対離れている、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
ドナーポリヌクレオチドを前記細胞に導入する工程をさらに含み、ここで、該ドナーポリヌクレオチドの全部または一部は、切断後に前記目的の領域に組み込まれる、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
ヌクレアーゼを作製するためのキットであって、該キットは、1つまたはそれを超える容器に含まれる、請求項1に記載の融合タンパク質、任意選択のハードウェア、および該キットを使用するための指示書を含む、キット。
【請求項14】
ヌクレアーゼを作製するためのキットであって、該キットは、1つまたはそれを超える容器に含まれる、請求項6に記載のポリヌクレオチド、任意選択のハードウェア、および該キットを使用するための指示書を含む、キット。
【請求項15】
ドナーポリヌクレオチドをさらに含む、請求項13に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年8月28日に出願された米国仮出願第61/871,219号の利益を請求し、その開示は、その全体が参照として本明細書により援用される。
連邦支援の研究によってなされた発明に対する権利に関する声明
該当なし。
【0002】
技術分野
本開示は、ゲノム編集およびタンパク質工学の分野におけるものである。
【背景技術】
【0003】
背景
人工ヌクレアーゼ、例えば、操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、操作されたcrRNA/tracrRNA(「一本鎖ガイドRNA」)を用いるCRISPR/Casシステムおよび/またはArgonauteシステムに基づくヌクレアーゼ(例えば、T.thermophilusに由来し、「TtAgo」として知られるもの(Swartsら(2014)Nature 507(7491):258-261)は、切断ドメインに作動可能に連結されたDNA結合ドメイン(ヌクレオチドまたはポリペプチド)を含み、ゲノム配列の標的化変更に使用されている。例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼは、外因性配列を挿入するため、1つまたはそれを超える内因性遺伝子を不活性化するため、遺伝子発現パターンが変更された生物(例えば、作物)および細胞株を作出するためなどに使用されている。例えば、米国特許第8,586,526号;同第8,329,986号;同第8,399,218号;同第6,534,261号;同第6,599,692号;同第6,503,717号;同第6,689,558号;同第7,067,317号;同第7,262,054号;同第7,888,121号;同第7,972,854号;同第7,914,796号;同第7,951,925号;同第8,110,379号;同第8,409,861号;米国特許公開20030232410;同20050208489;同20050026157;同20050064474;同20060063231;同20080159996;同201000218264;同20120017290;同20110265198;同20130137104;同20130122591;同20130177983および同20130177960ならびに米国出願番号14/278,903を参照のこと(これらの開示は、すべての目的のために全体として参照により援用される)。例えば、ゲノム配列を切断するためにヌクレアーゼ(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEN)の対が、代表的に使用される。その対の各メンバーは、通常、ヌクレアーゼの1つまたはそれを超える切断ドメイン(またはハーフドメイン)に連結された操作された(天然に存在しない)DNA結合タンパク質を含む。DNA結合タンパク質が、それらの標的部位に結合するとき、それらのDNA結合タンパク質に連結された切断ドメインは、二量体化およびその後のゲノムの切断が生じることができるように、通常、ジンクフィンガーヌクレアーゼまたはTALENの対の間に置かれる。
【0004】
ヌクレアーゼ対の切断活性は、ジンクフィンガーと切断ドメインとをつないでいるリンカー(「ZC」リンカー)の長さ、アミノ酸組成および標的部位(結合部位)間の距離に関係することが示された。例えば、米国特許第8,772,453号;同第7,888,121号および同第8,409,861号;Smithら(2000)Nucleic Acids Res.28:3361-3369;Bibikovaら(2001)Mol.Cell.Biol.21:289-297を参照のこと。ヌクレアーゼ融合タンパク質の対を使用すると、その融合タンパク質に対する結合部位が(各結合部位の近傍端から計測して)5または6ヌクレオチド離れて配置されているとき、現在利用可能なZCリンカーおよび切断ハーフドメインで最適な切断が得られた。例えば、米国特許第7,888,121号を参照のこと。米国特許公開20090305419には、ZCリンカーを使用し、FokI切断ドメインのN末端残基を修飾することによるDNA結合ドメインと切断ドメインとの連結が記載されている。
したがって、人工ヌクレアーゼが、結合部位が5bpまたは6bp以外の長さだけ離れている内因性ゲノム配列を切断し得る、標的化された改変を可能にする方法および組成物がなおも必要とされている。種々の間隔で配列を標的化することができれば、切断できるゲノム標的の数が増加するだろう。また、種々の数の塩基対だけ離れた標的部位間の優先度を変化させられれば、より高い特異性で人工ヌクレアーゼを作用させることができるだろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第8,586,526号明細書
【特許文献2】米国特許第8,329,986号明細書
【特許文献3】米国特許第8,399,218号明細書
【特許文献4】米国特許第6,534,261号明細書
【特許文献5】米国特許第6,599,692号明細書
【特許文献6】米国特許第6,503,717号明細書
【特許文献7】米国特許第6,689,558号明細書
【特許文献8】米国特許第7,067,317号明細書
【特許文献9】米国特許第7,262,054号明細書
【特許文献10】米国特許第7,888,121号明細書
【特許文献11】米国特許第7,972,854号明細書
【特許文献12】米国特許第7,914,796号明細書
【特許文献13】米国特許第7,951,925号明細書
【特許文献14】米国特許第8,110,379号明細書
【特許文献15】米国特許第8,409,861号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第20030232410号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第20050208489号明細書
【特許文献18】米国特許出願公開第20050026157号明細書
【特許文献19】米国特許出願公開第20050064474号明細書
【特許文献20】米国特許出願公開第20060063231号明細書
【特許文献21】米国特許出願公開第20080159996号明細書
【特許文献22】米国特許出願公開第201000218264号明細書
【特許文献23】米国特許出願公開第20120017290号明細書
【特許文献24】米国特許出願公開第20110265198号明細書
【特許文献25】米国特許出願公開第20130137104号明細書
【特許文献26】米国特許出願公開第20130122591号明細書
【特許文献27】米国特許出願公開第20130177983号明細書
【特許文献28】米国特許出願公開第20130177960号明細書
【特許文献29】米国特許第8,772,453号明細書
【特許文献30】米国特許出願公開第20090305419号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Smithら(2000)Nucleic Acids Res.28:3361-3369
【非特許文献2】Bibikovaら(2001)Mol.Cell.Biol.21:289-297
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
要旨
DNA結合ドメインと切断ドメインとを連結することにより、ヌクレアーゼ、例えば、従来のリンカーと比べて標的部位の間隙(ギャップ)の優先度が変更されたヌクレアーゼを形成するための組成物が、本明細書中に開示される。これらのリンカーを含む融合タンパク質も記載される。本開示は、細胞内において、細胞性クロマチンを目的の領域において標的化切断するためおよび/または目的の所定領域における相同組換えのためにこれらの融合タンパク質およびその組成物を使用する方法も提供する。
【0008】
したがって、1つの態様において、DNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガータンパク質またはTAL-エフェクタードメイン)を切断ドメイン(例えば、野生型または操作されたFokI切断ドメイン)に連結するアミノ酸配列が、本明細書中に記載される。ある特定の実施形態において、そのアミノ酸リンカー配列は、DNA結合ドメインのN末端またはC末端の最後の残基と切断ドメインのN末端またはC末端との間に伸びている。他の実施形態において、そのリンカーは、DNA結合ドメインおよび/または切断ドメインの1つまたはそれを超える残基に取って代わり得る。ある特定の実施形態において、そのリンカーは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17残基長またはそれより長い残基長である。他の実施形態において、DNA結合ドメインと切断ドメイン(または切断ハーフドメイン)との間のリンカーは、
図4、7、9、11、12、13、15および16に示されているリンカー(配列番号22~186、194~213、229~250および260~300)のうちのいずれかを含み(これらの図に示されている1つまたはそれを超えるN末端アミノ酸残基有りまたは無しで)、それらとしては、(N)GICPPPRPRTSPP(配列番号194);(T)GTAPIEIPPEVYP(配列番号195);(N)GSYAPMPPLALASP(配列番号196);(P)GIYTAPTSRPTVPP(配列番号197);(N)GSQTPKRFQPTHPSA(配列番号198);(H)LPKPANPFPLD(配列番号199);(H)RDGPRNLPPTSPP(配列番号200);(H)RLPDSPTALAPDTL(配列番号201);(D)PNSPISRARPLNPHP(配列番号202);(Y)GPRPTPRLRCPIDSLIFR(配列番号203);(H)CPASRPIHP(配列番号204);(G)LQSLIPQQLL(配列番号204);(G)LQPTVNHEYNN(配列番号206);(P)ANIHSLSSPPPL(配列番号207);(P)AGLNTPCSPRSRSN(配列番号208);(A)TITDPNP(配列番号209);(P)PHKGLLP(配列番号220);(S)VSLPDTHH(配列番号211);(G)THGATPTHSP(配列番号212);(V)APGESSMTSL(配列番号213)、(LRGS)PISRARPLNPHP(配列番号251)、(LRGS)ISRARPLNPHP(配列番号252)、(LRGS)PSRARPLNPHP(配列番号253)、(LRGS)SRARPLNPHP(配列番号254)、(LRGS)YAPMPPLALASP(配列番号255)、(LRGS)APMPPLALASP(配列番号256)、(LRGS)PMPPLALASP(配列番号257)、(LRGS)MPPLALASP(配列番号258)およびHLPKPANPFPLD(配列番号288)が挙げられるがこれらに限定されず、ここで、丸括弧内に示されているアミノ酸残基は、必要に応じて存在する。ある特定の実施形態において、そのリンカーは、PKPAN(配列番号289)、RARPLN(配列番号290);PMPPLA(配列番号291)またはPPPRP(配列番号292)からなる群より選択される配列を含む。ある特定の実施形態において、本明細書中に記載されるようなリンカーは、それらのN末端にZCリンカー配列をさらに含む。他の実施形態において、そのリンカーは、例えば、配列番号260~287に示されているように、切断ドメイン(FokI)とのジャンクションに改変を含む。
【0009】
なおもさらなる態様において、DNA結合ドメイン、改変されたFokI切断ドメインおよびDNA結合ドメインとFokI切断ドメインとの間のZCリンカーを含む融合タンパク質が、本明細書中に記載される。FokI切断ドメインは、1つまたはそれを超えるアミノ酸残基の付加、欠失および/または置換を含む何らかの方法で改変され得る。ある特定の実施形態において、FokI切断ドメインに対する改変には、FokIのN末端領域(配列番号1の残基158~169)に対する1つまたはそれを超える付加、欠失および/または置換が含まれ、それは、例えば、1、2、3、4つのアミノ酸残基の付加、欠失および/または置換を含む。ある特定の実施形態において、改変されたFokI切断ドメインは、FokIのN末端領域からの1、2、3、4つまたはそれを超えるアミノ酸の欠失(例えば、配列番号1の野生型FokIドメインの残基158、159、160および/または161のうちの1つまたはそれを超える残基の欠失)を含む。他の実施形態において、改変されたFokI切断ドメインは、FokIのN末端領域からの1つまたはそれを超える欠失およびFokIのN末端領域内での1つまたはそれを超える置換(例えば、残基158~161のうちの1つまたはそれを超える残基の欠失および残りの残基のうちの1つまたはそれを超える残基の置換)を含む。他の実施形態において、改変されたFokI切断ドメインは、FokIのN末端領域に1つまたはそれを超える置換を含む。なおもさらなる実施形態において、改変されたFokI切断ドメインは、FokIの最もN末端の残基(配列番号1の残基158)に対するN末端側に1つまたはそれを超えるさらなるアミノ酸残基(例えば、1、2、3、4つまたはそれを超えるアミノ酸残基)を含む。他の実施形態において、改変されたFokI切断ドメインは、FokIの最もN末端の残基(配列番号1の残基158)に対するN末端側に1つもしくはそれを超えるさらなるアミノ酸残基(例えば、1、2、3、4つまたはそれを超えるアミノ酸残基)および/またはFokIのN末端領域内に1つもしくはそれを超える置換を含む。ある特定の実施形態において、融合タンパク質は、
図15または
図16に示されているような改変されたFokI切断ドメインを含む。他の実施形態において、融合タンパク質は、
図15または
図16に示されているような改変されたFokI切断ドメインを含み、米国特許公開番号20090305419に示されているようにN末端内に1つまたはそれを超える改変をさらに含む。
【0010】
別の態様において、少なくとも2つの融合タンパク質を含む二量体が本明細書中に記載され、各融合タンパク質は、DNA結合ドメイン、リンカーおよび切断ドメインを含む。ある特定の実施形態において、少なくとも1つの融合タンパク質は、本明細書中に記載されるようなリンカーを含む。他の実施形態において、両方の融合タンパク質が、本明細書中に記載されるようなリンカーを含む。なおもさらなる実施形態において、その二量体のDNA結合ドメインは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16(またはそれを超える)塩基対、好ましくは、5~8塩基対だけ離れた配列(例えば、二本鎖DNA内)を標的化する。それらの融合タンパク質のいずれもが、野生型切断ドメインまたは操作された切断ドメインを含み得る。
【0011】
別の態様において、DNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガーまたはTALE DNA結合ドメイン)、切断ハーフドメインおよび本明細書中に記載されるようなリンカーを含む融合ポリペプチドが提供される。
【0012】
別の態様において、本明細書中に記載されるような任意のリンカーまたは融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。いくつかの実施形態において、それらのポリヌクレオチドは、RNAである。
【0013】
なおも別の態様において、本明細書中に記載されるような任意のポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)および/またはポリヌクレオチドを含む細胞もまた、提供される。1つの実施形態において、それらの細胞は、各々が本明細書中に開示されるような切断ドメインを含む融合ポリペプチド対を含む。
【0014】
なおも別の態様において、細胞性クロマチンを目的の領域において標的化切断するための方法;細胞内において相同組換えを生じさせる方法;感染を処置する方法;および/または疾患を処置する方法が提供される。それらの方法は、融合ポリペプチド対を発現させることによって細胞内において細胞性クロマチンを目的の所定領域内において切断する工程を含み、その融合ポリペプチドのうちの少なくとも1つは、本明細書中に記載されるようなリンカーを含む。ある特定の実施形態において、一方の融合ポリペプチドは、本明細書中に記載されるようなリンカーを含み、他の実施形態では、両方の融合ポリペプチドが、本明細書中に記載されるようなリンカーを含む。さらに、本明細書中に記載される任意の方法において、融合ポリペプチド対は、ジンクフィンガーヌクレアーゼに対する結合部位が、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16塩基対またはそれさえも超える塩基対だけ離れているとき、標的化された領域を切断する。
【0015】
本明細書中に記載されるようなリンカーを含むポリペプチドは、細胞内において、細胞性クロマチンを目的の領域において標的化切断するための方法および/または目的の所定領域における相同組換えのための方法において使用され得る。細胞には、培養細胞、生物の中の細胞、ならびにそれらの細胞および/またはそれらの子孫が処置後に生物に戻される場合に処置のために生物から取り出された細胞が含まれる。細胞性クロマチンにおける目的の領域は、例えば、ゲノム配列またはその一部であり得る。
【0016】
融合タンパク質は、細胞内において、例えば、その融合タンパク質をその細胞に送達することによって、またはその融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドをその細胞に送達することによって発現され得、ここで、そのポリヌクレオチドは、DNAである場合、転写され、細胞に送達されるRNA分子または細胞に送達されるDNA分子の転写物は、翻訳されることにより、融合タンパク質が生成される。細胞にポリヌクレオチドおよびポリペプチドを送達するための方法は、本開示の他の箇所に提示される。
【0017】
したがって、別の態様において、細胞性クロマチンを目的の領域において切断するための方法は、(a)その目的の領域において第1の配列を選択する工程;(b)第1のDNA結合ドメインを第1の配列に結合するように操作する工程;(c)その細胞内で第1の融合タンパク質を発現させる工程(第1の融合タンパク質は、第1のDNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガーまたはTALE)および切断ハーフドメインを含む);および(d)その細胞内で第2の融合タンパク質を発現させる工程(第2の融合タンパク質は、第2のDNA結合ドメインおよび第2の切断ハーフドメインを含む)を含み得、ここで、それらの融合タンパク質のうちの少なくとも1つは、本明細書中に記載されるようなリンカーを含み、さらに、細胞性クロマチンが目的の領域において切断されるように、第1の融合タンパク質は、第1の配列に結合し、第2の融合タンパク質は、第1の配列から2~50ヌクレオチドに位置する第2の配列に結合する。ある特定の実施形態において、両方の融合タンパク質が、本明細書中に記載されるようなリンカーを含む。
【0018】
他の実施形態において、本開示は、1つまたはそれを超えるヌクレアーゼが、細胞の細胞性クロマチンを標的化し、切断するように、本明細書中に記載されるようなリンカーを含むそれらのヌクレアーゼをその細胞に導入することによって細胞性クロマチンを切断する方法を提供する。そのヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALEヌクレアーゼ(TALEN)、TtAgoもしくはCRISPR/Casヌクレアーゼシステムまたはそれらの組み合わせを含み得る。そのヌクレアーゼは、任意の形態で、例えば、タンパク質の形態で、mRNAの形態で、またはウイルス(AAV、IDLVなど)ベクターもしくは非ウイルスベクター(例えば、プラスミド)上に保持された状態で、細胞に導入され得る。ある特定の実施形態において、上記方法は、(a)目的の領域において第1および第2の配列を選択する工程(ここで、その第1および第2の配列は、2~50ヌクレオチド離れている);(b)第1のDNA結合ドメインを第1の配列に結合するように操作する工程;(c)第2のDNA結合ドメインを第2の配列に結合するように操作する工程;(d)細胞内で第1の融合タンパク質を発現させる工程(第1の融合タンパク質は、第1の操作されたDNA結合ドメイン、本明細書中に記載されるような第1のリンカーおよび第1の切断ハーフドメインを含む);(e)細胞内で第2の融合タンパク質を発現させる工程(第2の融合タンパク質は、第2の操作されたDNA結合ドメイン、第2のリンカーおよび第2の切断ハーフドメインを含む)を含み;ここで、その第1の融合タンパク質は、第1の配列に結合し、第2の融合タンパク質は、第2の配列に結合し、それにより、目的の領域において細胞性クロマチンが切断される。ある特定の実施形態において、第1および第2の融合タンパク質は、本明細書中に記載されるようなリンカーを含む。
【0019】
細胞性クロマチンの領域を変更する方法、例えば、標的化変異を導入する方法もまた提供される。ある特定の実施形態において、細胞性クロマチンを変化させる方法は、細胞性クロマチン内の所定の部位において二本鎖断裂をもたらす1つまたはそれを超える標的化ヌクレアーゼ、およびその断裂の領域内の細胞性クロマチンのヌクレオチド配列に対して相同性を有するドナーポリヌクレオチドを細胞内に導入する工程を含む。細胞のDNA修復プロセスは、二本鎖断裂の存在によって活性化され、ドナーポリヌクレオチドは、その断裂の修復のための鋳型として使用され、その結果、細胞性クロマチンの中にドナーのヌクレオチド配列の全部または一部が導入される。したがって、細胞性クロマチン内の配列を変更することができ、ある特定の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドに存在する配列に変換することができる。
【0020】
標的化された変更としては、点変異(すなわち、単一の塩基対を異なる塩基対に変換すること)、置換(すなわち、複数の塩基対を長さが同一の異なる配列に変換すること)、1つまたはそれを超える塩基対の挿入(insertions or one or more base pairs)、1つまたはそれを超える塩基対の欠失および上述の配列の変更の任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
ドナーポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAであり得、直鎖状または環状であり得、一本鎖または二本鎖であり得る。ドナーポリヌクレオチドは、裸の核酸として、1つもしくはそれを超える送達物質(例えば、リポソーム、ポロキサマー)との複合体として、またはウイルス送達ビヒクル、例えば、アデノウイルスもしくはアデノ随伴ウイルス(AAV)内に含められた状態で、細胞に送達され得る。ドナー配列は、10~1,000ヌクレオチド(またはそれらの間の任意の整数値のヌクレオチド)またはそれより長い長さの範囲であり得る。いくつかの実施形態において、ドナーは、標的化切断部位と相同な領域に隣接する完全長の遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、ドナーは、相同領域を欠き、相同性非依存的機構(すなわち、NHEJ)によって標的遺伝子座にインテグレートされる。他の実施形態において、ドナーは、細胞において使用するため(すなわち、遺伝子修正のため)の相同領域に隣接するより小さい核酸断片を含む。いくつかの実施形態において、ドナーは、機能的な構成要素または構造上の構成要素(例えば、shRNA、RNAi、miRNAなど)をコードする遺伝子を含む。他の実施形態において、ドナーは、目的の遺伝子に結合するおよび/または目的の遺伝子の発現を調節する制御エレメントをコードする配列を含む。他の実施形態において、ドナーは、目的の遺伝子に結合するおよび/または目的の遺伝子の発現を調節する目的の制御タンパク質(例えば、ZFP
TF、TALE TFまたはCRISPR/Cas TF)である。
【0022】
ある特定の実施形態において、相同組換えの頻度は、細胞を細胞周期のG2期で停止することによって、および/または相同組換えに関わる1つもしくはそれを超える分子(タンパク質、RNA)の発現を活性化することによって、および/または非相同末端結合に関わるタンパク質の発現もしくは活性を阻害することによって、高められ得る。
【0023】
ヌクレアーゼ対を使用する本明細書中に記載される任意の方法において、そのヌクレアーゼ対の第1および第2のヌクレアーゼは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20塩基対またはそれを超える塩基対だけ離れた標的部位に結合し得る。さらに、それらの任意の方法において、第2のジンクフィンガー結合ドメインは、第2の配列に結合するように操作され得る。
【0024】
さらに、本明細書中に記載される任意の方法において、融合タンパク質は、単一のポリヌクレオチドによってコードされ得る。
【0025】
上述の任意の方法の場合において、細胞性クロマチンは、染色体、エピソームまたはオルガネラゲノムの中に存在し得る。細胞性クロマチンは、原核細胞および真核細胞、真菌細胞、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞、霊長類細胞およびヒト細胞を含むがこれらに限定されない、任意のタイプの細胞に存在し得る。
【0026】
別の態様において、本明細書中に記載されるようなリンカーまたは本明細書中に記載されるようなリンカーをコードするポリヌクレオチド;補助的な試薬;ならびに必要に応じて指示書および好適な容器を含むキットが、本明細書中に記載される。そのキットは、1つまたはそれを超えるヌクレアーゼまたはそのようなヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドも含み得る。
【0027】
本明細書中に記載されるいずれのタンパク質、方法およびキットにおいても、切断ドメイン(または切断ハーフドメイン)は、タイプIIS切断ドメイン、例えば、FokI由来の切断ハーフドメインを含み得る。
本発明は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
N末端およびC末端を有するDNA結合ドメインであって、該DNA結合ドメインは、ヌクレオチド標的部位に結合する、DNA結合ドメイン;
N末端およびC末端を有するFokI切断ドメイン;ならびに
該DNA結合ドメインのC末端と該切断ドメインのN末端との間のリンカーであって、該リンカーは、PKPAN(配列番号289)、RARPLN(配列番号290);PMPPLA(配列番号291)またはPPPRP(配列番号292)からなる群より選択される配列を含む、リンカー
を含む、融合タンパク質。
(項目2)
前記リンカーが、ZC配列(配列番号2)をさらに含む、項目1に記載の融合タンパク質。
(項目3)
前記ZC配列が、前記リンカーのN末端に存在する、項目2に記載の融合タンパク質。
(項目4)
前記DNA結合ドメインが、ジンクフィンガータンパク質である、項目1~3のいずれかに記載の融合タンパク質。
(項目5)
項目1~4のいずれかに記載の2つの融合タンパク質を含む二量体。
(項目6)
前記二量体が、ホモ二量体またはヘテロ二量体である、項目5に記載の二量体。
(項目7)
項目1~4のいずれかに記載の少なくとも1つの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(項目8)
項目1~4のいずれかに記載の融合タンパク質、項目5もしくは6に記載の二量体または項目7に記載のポリヌクレオチドを含む細胞。
(項目9)
細胞内において細胞性クロマチンを目的の領域において標的化切断するための方法であって、該方法は、
細胞性クロマチンが該目的の領域において切断されるような条件下で、該細胞内においてヌクレアーゼ対を発現させる工程を含み、ここで、該ヌクレアーゼは、該目的の領域内の標的部位に結合し、さらに、少なくとも1つのヌクレアーゼは、項目1~4のいずれかに記載の融合タンパク質を構成する、方法。
(項目10)
両方のヌクレアーゼが、項目1~4のいずれかに記載の融合タンパク質を構成する、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記ジンクフィンガーヌクレアーゼに対する標的部位が、3~20塩基対離れている、項目9または10に記載の方法。
(項目12)
ドナーポリヌクレオチドを前記細胞に導入する工程をさらに含み、ここで、該ドナーポリヌクレオチドの全部または一部は、切断後に前記目的の領域に組み込まれる、項目9~11のいずれかに記載の方法。
(項目13)
ヌクレアーゼを作製するためのキットであって、該キットは、1つまたはそれを超える容器に含まれる、項目1~4のいずれかに記載の融合タンパク質または項目7に記載のポリヌクレオチド、任意選択のハードウェアおよび該キットを使用するための指示書を含む、キット。
(項目14)
ドナーポリヌクレオチドをさらに含む、項目13に記載のキット。
(項目15)
N末端およびC末端を有するDNA結合ドメインであって、該DNA結合ドメインは、ヌクレオチド標的部位に結合する、DNA結合ドメイン;
N末端およびC末端を有するFokI切断ドメインであって、ここで、該N末端は、該N末端への1つまたはそれを超えるアミノ酸残基の付加;該N末端からの1つまたはそれを超えるアミノ酸残基の欠失;および該N末端における1つまたはそれを超えるアミノ酸残基の置換からなる群より選択される1つまたはそれを超えるアミノ酸改変を含む、FokI切断ドメイン;ならびに
該DNA結合ドメインのC末端と該切断ドメインのN末端との間のZCリンカーを含む、融合タンパク質。
(項目16)
前記DNA結合ドメインが、ジンクフィンガータンパク質である、項目1に記載の融合タンパク質。
(項目17)
項目15または項目16に記載の2つの融合タンパク質を含む二量体。
(項目18)
前記二量体が、ホモ二量体またはヘテロ二量体である、項目17に記載の二量体。
(項目19)
項目15または項目16に記載の少なくとも1つの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(項目20)
項目15または項目16に記載の融合タンパク質、項目17もしくは18に記載の二量体または項目19に記載のポリヌクレオチドを含む細胞。
(項目21)
細胞内において細胞性クロマチンを目的の領域において標的化切断するための方法であって、該方法は、
細胞性クロマチンが該目的の領域において切断されるような条件下で、該細胞内においてヌクレアーゼ対を発現させる工程を含み、ここで、該ヌクレアーゼは、該目的の領域内の標的部位に結合し、さらに、少なくとも1つのヌクレアーゼは、項目15または項目16に記載の融合タンパク質を構成する、方法。
(項目22)
両方のヌクレアーゼが、項目15または項目16に記載の融合タンパク質を構成する、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記ジンクフィンガーヌクレアーゼに対する標的部位が、3~20塩基対離れている、項目21または22に記載の方法。
(項目24)
ドナーポリヌクレオチドを前記細胞に導入する工程をさらに含み、ここで、該ドナーポリヌクレオチドの全部または一部は、切断後に前記目的の領域に組み込まれる、項目21~23のいずれかに記載の方法。
(項目25)
ヌクレアーゼを作製するためのキットであって、該キットは、1つまたはそれを超える容器に含まれる、項目15もしくは項目16に記載の融合タンパク質または項目19に記載のポリヌクレオチド、任意選択のハードウェアおよび該キットを使用するための指示書を含む、キット。
(項目26)
ドナーポリヌクレオチドをさらに含む、項目25に記載のキット。
【0028】
これらの態様および他の態様は、概して、開示に照らすと当業者には容易に明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、CCR5における標的部位に結合する例示的なジンクフィンガーヌクレアーゼの配列(配列番号1)を表している。このジンクフィンガーDNA結合ドメインには、二重下線が引かれている。FokI切断ドメイン全体に下線が引かれており、N末端領域には下線が引かれており、太字になっている。「ZC」リンカー(LRGS;配列番号2)は、ジンクフィンガードメインと切断ドメインとの間のプレーンテキストで示されている。
【0030】
【
図2A】
図2のパネルAおよびBは、ライブラリーのデザインおよび選択を表している。
図2Aは、細菌選択アッセイにおいて使用された宿主ZFNを示しており(実施例3、配列番号12~15)、ランダム化されたリンカーライブラリーの位置が示されている。選択のために使用されたジンクフィンガータンパク質ドメインは、CCR5遺伝子に結合する、米国特許第7,951,925号に描写されているような、ZFP8196の認識ヘリックス領域を含んだ。
図2Bは、リンカーの選択のために使用された細菌系の概要を示している概略図である。
【
図2B】
図2のパネルAおよびBは、ライブラリーのデザインおよび選択を表している。
図2Aは、細菌選択アッセイにおいて使用された宿主ZFNを示しており(実施例3、配列番号12~15)、ランダム化されたリンカーライブラリーの位置が示されている。選択のために使用されたジンクフィンガータンパク質ドメインは、CCR5遺伝子に結合する、米国特許第7,951,925号に描写されているような、ZFP8196の認識ヘリックス領域を含んだ。
図2Bは、リンカーの選択のために使用された細菌系の概要を示している概略図である。
【0031】
【
図3】
図3は、細菌選択系の細菌ccdBトキシンプラスミドにおいて使用された標的配列(示されている間隔を標的部位の間に含む)の概要を示している(配列番号16~21)。
【0032】
【
図4】
図4は、示されている標的間隔に対して8~17アミノ酸長のリンカーのライブラリーを使用する細菌選択から得られた例示的なリンカーを表している(配列番号22~186)。「x2」および「x7」は、その配列がそのスクリーニングにおいて見出された回数を示している。
【0033】
【
図5】
図5は、選択後の標的間隔(5~16塩基対)に対するリンカーの長さ(8~17アミノ酸)の分布を示している。
【0034】
【
図6】
図6は、標的配列および間隔を含む、哺乳動物細胞における改変されたCCR5遺伝子座に対する標的部位の概要を表している(配列番号187~192)。
【0035】
【
図7】
図7は、示されているリンカー(配列番号193~201)を使用したときの、標的部位間の8塩基対ギャップでのZFN切断の結果を表している。
【0036】
【
図8】
図8は、示されている標的部位ギャップについて試験されたすべてのリンカーを用いて得られた結果の要旨である。
【0037】
【
図9A】
図9のパネルA~Cは、ZFN活性および二量体ギャップの優先度の結果を示している。
図9Aおよび9Bは、対になった標的部位の間の示されているギャップにおいて、示されているリンカー(配列番号193~213および293~300)を用いて得られたZFN改変(「indels」)の結果を示している。
図9Cは、示されているリンカーの二量体ギャップの優先度を示している。
【
図9B】
図9のパネルA~Cは、ZFN活性および二量体ギャップの優先度の結果を示している。
図9Aおよび9Bは、対になった標的部位の間の示されているギャップにおいて、示されているリンカー(配列番号193~213および293~300)を用いて得られたZFN改変(「indels」)の結果を示している。
図9Cは、示されているリンカーの二量体ギャップの優先度を示している。
【
図9C】
図9のパネルA~Cは、ZFN活性および二量体ギャップの優先度の結果を示している。
図9Aおよび9Bは、対になった標的部位の間の示されているギャップにおいて、示されているリンカー(配列番号193~213および293~300)を用いて得られたZFN改変(「indels」)の結果を示している。
図9Cは、示されているリンカーの二量体ギャップの優先度を示している。
【0038】
【
図10A】
図10のパネルAおよびBは、様々なリンカーを用いて行われた可搬性(portability)研究のデザイン、組み立てスキームおよび結果を示している。
図10Aは、ヌクレオチド配列(配列番号214~221)およびアミノ酸配列(配列番号222~228)を含む、使用されたベクターのデザインを示している。「A」、「B」および「C」と標識された実線のブロックは、ジンクフィンガーモジュールを示している。
図10Bは、得られた結果の要旨を表している。
【
図10B】
図10のパネルAおよびBは、様々なリンカーを用いて行われた可搬性(portability)研究のデザイン、組み立てスキームおよび結果を示している。
図10Aは、ヌクレオチド配列(配列番号214~221)およびアミノ酸配列(配列番号222~228)を含む、使用されたベクターのデザインを示している。「A」、「B」および「C」と標識された実線のブロックは、ジンクフィンガーモジュールを示している。
図10Bは、得られた結果の要旨を表している。
【0039】
【
図11A】
図11のパネルAおよびBは、標的部位間の8または9bpギャップを認識するように選択されたリンカー(配列番号229~233)の活性を示している。
図11Aは、4つの異なるリンカーによって改変された8つのZFN対に対するCel-Iの結果を示しているゲルを表している。この図の下に示された群に従って、レーンに番号をつけている。GFPは、GFP発現ベクターコントロールを示している。レーンの上の「X」は、不完全な実行を示している。
図11Bは、
図11AにおけるCel1ゲルからのパーセントNHEJ活性を示している。
【
図11B】
図11のパネルAおよびBは、標的部位間の8または9bpギャップを認識するように選択されたリンカー(配列番号229~233)の活性を示している。
図11Aは、4つの異なるリンカーによって改変された8つのZFN対に対するCel-Iの結果を示しているゲルを表している。この図の下に示された群に従って、レーンに番号をつけている。GFPは、GFP発現ベクターコントロールを示している。レーンの上の「X」は、不完全な実行を示している。
図11Bは、
図11AにおけるCel1ゲルからのパーセントNHEJ活性を示している。
【0040】
【
図12】
図12は、示されているジンクフィンガードメインおよび切断ドメインベクターにおける示されているリンカー(配列番号234~250)の、Cel1アッセイおよび配列解析によって測定された活性を示している。示されているように、リンカー配列は、ZFP配列の2つ目のヒスチジン残基のすぐC末端側のアミノ酸残基からEL FokI配列のすぐN末端側のアミノ酸残基まで伸びている。矢印は、最も活性な2つの7bpギャップリンカー配列を示している。
【0041】
【
図13】
図13は、示されているジンクフィンガードメインおよび切断ドメインベクターにおける示されているリンカー(配列番号250~258)の活性(%NHEJ)を示している。示されているように、リンカー配列は、ZFP配列の2つ目のヒスチジン残基のすぐC末端側のアミノ酸残基からEL FokI配列のすぐN末端側のアミノ酸残基まで伸びている。
【0042】
【
図14】
図14は、ZFNが、示されているギャップを有するそれらの標的部位に結合した際の、FokI切断ドメインの二量体化(例えば、ヘテロ二量体化)を図示している概略図である。
【0043】
【
図15】
図15は、本明細書中に記載されるようなリンカーを含み、リンカーと切断ドメインとの間に改変されたジャンクション(示されているような対の左および/または右ZFNにおいて)(配列番号260~279)を含むZFNの活性(%NHEJ)を示している。
【0044】
【
図16】
図16は、本明細書中に記載されるようなリンカーを含み、リンカーと切断ドメインとの間に改変されたジャンクション(示されているような対の左および/または右ZFNにおいて)(配列番号280~287)を含む種々のZFNの活性(%NHEJ)を示している。それらの配列のリンカー部分は、ZFP配列の2つ目のヒスチジン残基のすぐC末端側のアミノ酸残基からEL FokI配列のすぐN末端側のアミノ酸残基まで伸びている。両方の従来のジャンクション配列を有するZFN対の活性は、四角で囲まれている。
【発明を実施するための形態】
【0045】
詳細な説明
DNA結合ドメインと切断ドメインとを連結することにより人工ヌクレアーゼを形成するための組成物、および例えば、標的化切断に続く非相同末端結合によって;標的化切断に続く、外因性ポリヌクレオチド(細胞のヌクレオチド配列と相同な1つまたはそれを超える領域を含む)とゲノム配列との間の相同組換えによって;1つまたはそれを超える内因性遺伝子の標的化された不活性化によって、細胞のヌクレオチド配列を標的化変更するためにこれらのヌクレアーゼを使用する方法が、本明細書中に記載される。
【0046】
図4および9に示されるような例示的なリンカーは、ZFN標的部位が5または6塩基対を超える塩基対だけ離れているとき、ZFN対の切断能力を高める。したがって、本明細書中に記載されるある特定のリンカーは、ジンクフィンガー標的部位が5または6塩基対ではない塩基対だけ離れているときに切断活性を高めることによって、標的化されたゲノム変更をもたらす能力を有意に高める。
【0047】
通則
本方法の実施、ならびに本明細書中に開示される組成物の調製および使用は、別段示されない限り、分子生物学、生化学、クロマチンの構造および解析、計算機化学、細胞培養、組換えDNAならびに当該分野の技術範囲内である関連分野における従来の手法を用いる。これらの手法は、文献において十分に説明されている。例えば、Sambrookら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,Second edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989およびThird edition,2001;Ausubelら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,New York,1987および定期的な改訂版;the series METHODS IN ENZYMOLOGY,Academic Press,San Diego;Wolffe,CHROMATIN
STRUCTURE AND FUNCTION,Third edition,Academic Press,San Diego,1998;METHODS IN ENZYMOLOGY,Vol.304,“Chromatin” (P.M.Wassarman and A.P.Wolffe,eds.),Academic Press,San Diego,1999;ならびにMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,Vol.119,“Chromatin Protocols”(P.B.Becker,ed.)Humana Press,Totowa,1999を参照のこと。
【0048】
定義
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は、交換可能に使用され、直鎖状または環状の立体配座であり、一本鎖または二本鎖の形態である、デオキシリボヌクレオチドポリマーまたはリボヌクレオチドポリマーのことを指す。本開示の目的では、これらの用語は、ポリマーの長さに関して限定すると解釈されるべきでない。これらの用語は、天然のヌクレオチドの公知のアナログ、ならびに塩基、糖および/またはリン酸の部分(例えば、ホスホロチオエート骨格)において改変されたヌクレオチドを包含し得る。一般に、特定のヌクレオチドのアナログは、同じ塩基対形成の特異性を有し;すなわち、Aのアナログは、Tと塩基対形成する。
【0049】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、交換可能に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、1つまたはそれを超えるアミノ酸が、対応する天然に存在するアミノ酸の化学的アナログまたは改変された誘導体である、アミノ酸ポリマーにも適用される。
【0050】
「結合する」とは、高分子間の(例えば、タンパク質と核酸との間の)配列特異的な非共有結合性の相互作用のことを指す。その相互作用が全体として配列特異的である限り、結合相互作用の構成要素のすべてが、配列特異的である必要はない(例えば、DNA骨格のリン酸残基との接触)。そのような相互作用は、一般に、10-6M-1またはそれより低い解離定数(Kd)を特徴とする。「親和性」とは、結合の強度のことを指し:高い結合親和性は、より低いKdと相関する。
【0051】
「結合タンパク質」は、別の分子に非共有結合的に結合することができるタンパク質である。結合タンパク質は、例えば、DNA分子(DNA結合タンパク質)、RNA分子(RNA結合タンパク質)および/またはタンパク質分子(タンパク質結合タンパク質)に結合し得る。タンパク質結合タンパク質の場合、それは、それ自体に結合することができ(これにより、ホモ二量体、ホモ三量体などが形成され)、かつ/またはそれは、異なるタンパク質の1つもしくはそれを超える分子に結合することができる。結合タンパク質は、1つより多いタイプの結合活性を有し得る。例えば、ジンクフィンガータンパク質は、DNA結合活性、RNA結合活性およびタンパク質結合活性を有する。
【0052】
「ジンクフィンガーDNA結合タンパク質」(または結合ドメイン)は、構造が亜鉛イオンの配位によって安定化された結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域である1つまたはそれを超えるジンクフィンガーを通じて配列特異的様式でDNAに結合する、タンパク質、またはより大きなタンパク質内のドメインである。ジンクフィンガーDNA結合タンパク質という用語は、ジンクフィンガータンパク質またはZFPと省略されることが多い。
【0053】
「TALE DNA結合ドメイン」または「TALE」は、1つまたはそれを超えるTALE反復ドメイン/単位を含むポリペプチドである。その反復ドメインは、その同種の標的DNA配列へのTALEの結合に関わる。単一の「反復単位」(「リピート」とも称される)は、代表的には、33~35アミノ酸長であり、天然に存在するTALEタンパク質の中の他のTALE反復配列と少なくともいくらかの配列相同性を示す。
【0054】
ジンクフィンガードメインおよびTALE結合ドメインは、例えば、天然に存在するジンクフィンガーまたはTALEタンパク質の認識ヘリックス領域の操作(1つまたはそれを超えるアミノ酸の変更)によって、所定のヌクレオチド配列に結合するように「操作」され得る。ゆえに、操作されたDNA結合タンパク質(ジンクフィンガーまたはTALE)は、天然に存在しないタンパク質である。DNA結合タンパク質を操作するための方法の非限定的な例は、デザインおよび選択である。デザインされたDNA結合タンパク質は、そのデザイン/組成が主に合理的な基準に由来する天然に存在しないタンパク質である。デザインに対する合理的な基準には、置換の規則ならびに既存のZFPおよび/またはTALEのデザインおよび結合データの情報を格納しているデータベース内の情報を処理するためのコンピュータ化されたアルゴリズムの適用が含まれる。例えば、米国特許第8,586,526号;同第6,140,081号;同第6,453,242号;および同第6,534,261号を参照のこと;また、WO98/53058;WO98/53059;WO98/53060;WO02/016536およびWO03/016496も参照のこと。
【0055】
「選択された」ジンクフィンガータンパク質またはTALEは、その生成が主に、実験的なプロセス(例えば、ファージディスプレイ、相互作用トラップまたはハイブリッド選択)に由来する、天然では見られないタンパク質である。例えば、米国特許第5,789,538号;米国特許第5,925,523号;米国特許第6,007,988号;米国特許第6,013,453号;米国特許第6,200,759号;WO95/19431;WO96/06166;WO98/53057;WO98/54311;WO00/27878;WO01/60970 WO01/88197、WO02/099084および米国公開番号20110301073を参照のこと。
【0056】
「TtAgo」は、遺伝子サイレンシングに関わると考えられている原核生物Argonauteタンパク質である。TtAgoは、細菌Thermus thermophilusに由来する。例えば、Swartsら、同書,G.Shengら(2013)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.111,652)を参照のこと。「TtAgoシステム」は、例えば、TtAgo酵素による切断のためのガイドDNAをはじめとした、必要とされる構成要素のすべてである。
【0057】
「切断」とは、DNA分子の共有結合性骨格の破損のことを指す。切断は、種々の方法によって惹起され得、それらの方法としては、ホスホジエステル結合の酵素的または化学的な加水分解が挙げられるがこれらに限定されない。一本鎖切断と二本鎖切断の両方が可能であり、二本鎖切断は、2つの異なる一本鎖切断事象の結果として生じ得る。DNAの切断は、平滑末端または付着末端のいずれかを生成し得る。ある特定の実施形態において、融合ポリペプチドは、標的化された二本鎖DNA切断のために使用される。
【0058】
「切断ハーフドメイン」は、第2のポリペプチド(同一または異なるもの)とともに、切断活性(好ましくは、二本鎖切断活性)を有する複合体を形成するポリペプチド配列である。用語「第1および第2の切断ハーフドメイン」;「+および-切断ハーフドメイン」および「右および左切断ハーフドメイン」は交換可能に使用され、二量体化する切断ハーフドメインの対を指す。
【0059】
「操作された切断ハーフドメイン」は、別の切断ハーフドメイン(例えば、別の操作された切断ハーフドメイン)と偏性ヘテロ二量体を形成するように改変された切断ハーフドメインである。全体として参照により本明細書に援用される、米国特許第8,623,618号;同第7,888,121号;同第7,914,796号;および同第8,034,598号ならびに米国公開番号20110201055も参照のこと。
【0060】
用語「配列」とは、DNAまたはRNAであり得;直鎖状、環状または分枝状であり得、一本鎖または二本鎖であり得る、任意の長さのヌクレオチド配列のことを指す。用語「ドナー配列」とは、ゲノムに挿入されるヌクレオチド配列のことを指す。ドナー配列は、任意の長さ、例えば、2~10,000ヌクレオチド長(またはその間のもしくはそれより大きい任意の整数値)、好ましくは、約100~1,000ヌクレオチド長(またはその間の任意の整数)、より好ましくは、約200~500ヌクレオチド長であり得る。
【0061】
「相同であるが同一でない配列」とは、第2の配列とある程度の配列同一性を共有するが、配列が第2の配列と同一でない、第1の配列のことを指す。例えば、変異遺伝子の野生型配列を含むポリヌクレオチドは、その変異遺伝子の配列と相同であるが同一でない。ある特定の実施形態において、2つの配列の間の相同性の程度は、通常の細胞機構を利用して、それらの間の相同組換えが可能であるのに十分な程度である。2つの相同であるが同一でない配列は、任意の長さであり得、それらの非相同性の程度は、単一ヌクレオチドほど小さい可能性もあるし(例えば、標的化された相同組換えによるゲノムの点変異の修正の場合)、10キロベースまたはそれを超える長さほど大きい可能性もある(例えば、染色体の中の所定の異所部位における遺伝子挿入の場合)。相同であるが同一でない配列を含む2つのポリヌクレオチドは、同じ長さである必要はない。例えば、20~10,000ヌクレオチドまたはヌクレオチド対の外因性ポリヌクレオチド(すなわち、ドナーポリヌクレオチド)が、使用され得る。
【0062】
核酸配列およびアミノ酸配列の同一性を測定するための手法は、当該分野で公知である。代表的には、そのような手法は、ある遺伝子に対するmRNAのヌクレオチド配列を決定することおよび/またはそれによってコードされるアミノ酸配列を決定すること、ならびにこれらの配列を第2のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列と比較することを含む。ゲノム配列もまた、この形式で決定され、比較され得る。一般に、同一性とは、2つのポリヌクレオチド配列または2つのポリペプチド配列のそれぞれのヌクレオチドとヌクレオチドまたはアミノ酸とアミノ酸との厳密な一致のことを指す。2つまたはそれを超える配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、それらの同一性パーセントを測定することによって比較され得る。核酸配列であってもアミノ酸配列であっても、2つの配列の同一性パーセントは、アラインメントされた2つの配列の間の厳密なマッチ数をより短い配列の長さで除算し、それに100を乗算した値である。本明細書中に記載される配列に関して、所望の配列同一性の程度の範囲は、およそ80%~100%およびそれらの間の任意の整数値である。代表的には、配列間の同一性パーセントは、少なくとも70~75%、好ましくは80~82%、より好ましくは85~90%、さらにより好ましくは92%、なおもより好ましくは95%、最も好ましくは98%の配列同一性である。
【0063】
あるいは、ポリヌクレオチド間の配列類似性の程度は、相同領域間で安定した二重鎖の形成を可能にする条件下におけるポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションに続く、一本鎖特異的ヌクレアーゼによる消化および消化されたフラグメントのサイズ測定によって測定され得る。2つの核酸または2つのポリペプチド配列は、上記の方法を使用して測定されるとき、それらの配列が、それらの分子の規定の長さにわたって、少なくとも約70%~75%、好ましくは80%~82%、より好ましくは85%~90%、さらにより好ましくは92%、なおもより好ましくは95%、最も好ましくは98%の配列同一性を示すとき、互いに実質的に相同である。本明細書中で使用されるとき、実質的に相同とは、指定のDNA配列またはポリペプチド配列と完全な同一性を示す配列のことも指す。実質的に相同であるDNA配列は、その特定の系に対して規定された、例えば、ストリンジェントな条件下における、サザンハイブリダイゼーション実験において識別され得る。適切なハイブリダイゼーション条件の規定は、当該分野の技術範囲内である。例えば、Sambrookら、前出;Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach,editors B.D.Hames and S.J.Higgins,(1985)Oxford;Washington,DC;IRL Press)を参照のこと。
【0064】
2つの核酸フラグメントの選択的ハイブリダイゼーションは、以下のとおり測定され得る。2つの核酸分子間の配列同一性の程度は、そのような分子の間のハイブリダイゼーション事象の効率および強度に影響する。部分的に同一の核酸配列は、標的分子に対する完全に同一の配列のハイブリダイゼーションを少なくとも部分的に阻害し得る。完全に同一の配列のハイブリダイゼーションの阻害は、当該分野で周知のハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、サザン(DNA)ブロット、ノーザン(RNA)ブロット、溶液ハイブリダイゼーションなど、Sambrookら、Molecular Cloning:A
Laboratory Manual,Second Edition,(1989)Cold Spring Harbor,N.Y.を参照のこと)を用いて評価され得る。そのようなアッセイは、様々な程度の選択性を用いて、例えば、低ストリンジェンシーから高ストリンジェンシーまで様々な条件を用いて、行うことができる。低ストリンジェンシーの条件を使用する場合、非特異的結合事象の非存在下では、その第2のプローブは標的にハイブリダイズしないような部分的な程度の配列同一性さえも欠く第2のプローブ(例えば、標的分子と約30%未満の配列同一性しか有しないプローブ)を使用して、非特異的結合が存在しないことが評価され得る。
【0065】
ハイブリダイゼーションに基づく検出システムを利用するとき、参照核酸配列に相補的な核酸プローブが選択され、次いで、適切な条件の選択によって、そのプローブと参照配列とが、互いに選択的にハイブリダイズまたは結合して、二重鎖分子を形成する。中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において参照配列に選択的にハイブリダイズすることができる核酸分子は、代表的には、選択された核酸プローブの配列と少なくともおよそ70%の配列同一性を有する少なくとも約10~14ヌクレオチド長の標的核酸配列の検出を可能にする条件下でハイブリダイズする。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、代表的には、選択された核酸プローブの配列と約90~95%より高い配列同一性を有する少なくとも約10~14ヌクレオチド長の標的核酸配列の検出を可能にする。プローブ/参照配列のハイブリダイゼーションにとって有用なハイブリダイゼーション条件は、そのプローブと参照配列とが、特定の程度の配列同一性を有する場合、当該分野で公知であるように決定され得る(例えば、Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach,editors B.D.Hames and S.J.Higgins,(1985)Oxford;Washington,DC;IRL Pressを参照のこと)。
【0066】
ハイブリダイゼーションに対する条件は、当業者に周知である。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーとは、ハイブリダイゼーション条件が、ミスマッチのヌクレオチドを含むハイブリッドの形成を嫌う程度のことを指し、より高いストリンジェンシーは、ミスマッチのハイブリッドに対するより低い寛容と相関する。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する因子は、当業者に周知であり、それらの因子としては、温度、pH、イオン強度および有機溶媒(例えば、ホルムアミドおよびジメチルスルホキシド)の濃度が挙げられるが、これらに限定されない。当業者に公知であるように、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、より高い温度、より低いイオン強度およびより低い溶媒濃度によって高まる。
【0067】
ハイブリダイゼーションに対するストリンジェンシー条件に関して、例えば、以下の因子:配列の長さおよび性質、様々な配列の塩基組成、塩および他のハイブリダイゼーション溶液の構成要素の濃度、ハイブリダイゼーション溶液中のブロッキング剤(例えば、デキストラン硫酸およびポリエチレングリコール)の有無、ハイブリダイゼーション反応の温度および時間パラメータ、ならびに様々な洗浄条件を変動させることによって、特定のストリンジェンシーを確立するために数多くの等価な条件が使用され得ることは、当該分野で周知である。「組換え」とは、2つのポリヌクレオチドの間の遺伝情報の交換のプロセスのことを指す。本開示の目的では、「相同組換え(HR)」とは、例えば、細胞において二本鎖断裂の修復中に生じる、そのような交換の特殊な形のことを指す。このプロセスは、相同なヌクレオチド配列を必要とし、「標的」分子(すなわち、二本鎖断裂を経験した分子)の修復の鋳型となるために「ドナー」分子を使用し、それは、ドナーから標的への遺伝情報の移転につながるので、「非クロスオーバー遺伝子変換」または「ショートトラクト遺伝子変換(short tract gene conversion)」として様々に知られている。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、そのような移転は、断裂された標的とドナーとの間に形成するヘテロ二重鎖DNAのミスマッチの修復、および/またはドナーを使用して、標的の一部になる遺伝情報を再合成する「合成依存的鎖アニーリング(synthesis-dependent strand annealing)」および/または関連プロセスを伴い得る。そのような特殊なHRはしばしば、標的分子の配列を変化させ、その結果、そのドナーポリヌクレオチドの配列の一部または全部が標的ポリヌクレオチドに組み込まれる。
【0068】
「クロマチン」は、細胞ゲノムを構成する核タンパク質構造である。細胞性クロマチンは、核酸、主にDNA、ならびにヒストンおよび非ヒストン染色体タンパク質を含むタンパク質を含む。真核細胞性クロマチンの大部分は、ヌクレオソームの形態で存在し、ここで、ヌクレオソームコアは、ヒストンH2A、H2B、H3およびH4を2つずつ含む八量体と会合したおよそ150塩基対のDNAを含み;リンカーDNA(生物に応じて長さは変動する)が、ヌクレオソームコア間に伸びている。通常、ヒストンH1の分子がリンカーDNAと会合している。本開示の目的では、用語「クロマチン」は、原核生物と真核生物の両方のすべてのタイプの細胞核タンパク質を包含すると意味される。細胞性クロマチンには、染色体クロマチンとエピソームクロマチンの両方が含まれる。
【0069】
「染色体」は、細胞のゲノムの全部または一部を含むクロマチン複合体である。細胞のゲノムは、しばしば、その細胞のゲノムを含むすべての染色体の集合であるその核型によって特徴付けられる。細胞のゲノムは、1本またはそれを超える染色体を含み得る。
【0070】
「エピソーム」は、複製中の核酸、ヌクレオタンパク質複合体、または細胞の染色体の核型の一部でない核酸を含む他の構造である。エピソームの例としては、プラスミドおよびある特定のウイルスゲノムが挙げられる。
【0071】
「接近可能な領域」は、核酸に存在する標的部位が、その標的部位を認識する外因性分子によって結合され得る、細胞性クロマチン内の部位である。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、接近可能な領域は、ヌクレオソーム構造の中に詰め込まれない領域であると考えられている。接近可能な領域の明確な構造は、化学的および酵素的プローブ、例えば、ヌクレアーゼに対する感度によって検出され得ることが多い。
【0072】
「標的部位」または「標的配列」は、結合に対する十分な条件が存在すれば結合分子が結合する核酸の一部を定義する核酸配列である。例えば、配列5’-GAATTC-3’は、EcoRI制限エンドヌクレアーゼに対する標的部位である。
【0073】
「外因性」分子は、通常は細胞に存在しないが、1つまたはそれを超える遺伝的な方法、生化学的な方法または他の方法によって細胞内に導入され得る分子である。「通常は細胞に存在する」は、その細胞の特定の発生段階および環境条件に関して判定される。したがって、例えば、筋肉の胚発生中にだけ存在する分子は、成体の筋細胞に対しては外因性分子である。同様に、熱ショックによって誘導される分子は、熱ショックを受けていない細胞に対しては外因性分子である。外因性分子は、例えば、機能不全の内因性分子の機能性バージョン、正常に機能している内因性分子の機能不全バージョンまたはオルソログ(異なる種に由来する内因性分子の機能性バージョン)を含み得る。
【0074】
外因性分子は、とりわけ、小分子(例えば、コンビナトリアルケミストリープロセスによって生成されるもの)または高分子(例えば、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖、上記分子の改変された任意の誘導体、または上記の1つもしくはそれを超える分子を含む任意の複合体)であり得る。核酸には、DNAおよびRNAが含まれ、一本鎖または二本鎖であり得;直鎖状、分枝状または環状であり得;任意の長さであり得る。核酸には、二重鎖を形成することができるもの、ならびに三重鎖を形成する核酸が含まれる。例えば、米国特許第5,176,996号および同第5,422,251号を参照のこと。タンパク質としては、DNA結合タンパク質、転写因子、クロマチンリモデリング因子、メチル化されたDNA結合タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、脱アセチル化酵素、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイレースおよびヘリカーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
外因性分子は、内因性分子と同じタイプの分子、例えば、外因性タンパク質または外因性核酸であり得る。例えば、外因性核酸は、細胞に導入された感染ウイルスゲノム、プラスミドもしくはエピソーム、または通常はその細胞に存在しない染色体を含み得る。細胞に外因性分子を導入するための方法は、当業者に公知であり、その方法としては、脂質媒介性移入(すなわち、中性脂質およびカチオン性脂質を含むリポソーム)、エレクトロポレーション、直接的な注射、細胞融合、粒子銃(particle bombardment)、リン酸カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介性移入およびウイルスベクター媒介性移入が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
対照的に、「内因性」分子は、特定の環境条件下の特定の発生段階における特定の細胞に通常存在する分子である。例えば、内因性核酸は、染色体、ミトコンドリア、葉緑体もしくは他のオルガネラのゲノム、または天然に存在するエピソーム核酸を含み得る。さらなる内因性分子としては、タンパク質、例えば、転写因子および酵素が挙げられ得る。
【0077】
「融合」分子は、2つまたはそれを超えるサブユニット分子が、好ましくは共有結合的に、連結された分子である。サブユニット分子は、同じ化学タイプの分子であり得るか、または異なる化学タイプの分子であり得る。第1のタイプの融合分子の例としては、融合タンパク質(例えば、ZFP DNA結合ドメインと切断ドメインとの融合物)および融合核酸(例えば、上に記載された融合タンパク質をコードする核酸)が挙げられるが、これらに限定されない。第2のタイプの融合分子の例としては、三重鎖形成核酸とポリペプチドとの融合物および副溝結合剤と核酸との融合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
細胞における融合タンパク質の発現は、その細胞への融合タンパク質の送達またはある細胞への融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの送達によって生じ得、ここで、そのポリヌクレオチドが転写され、その転写物が翻訳されることにより、融合タンパク質が生成される。トランススプライシング、ポリペプチド切断およびポリペプチドライゲーションもまた、細胞におけるタンパク質の発現に関わり得る。細胞にポリヌクレオチドおよびポリペプチドを送達するための方法は、本開示の他の箇所に提示される。
【0079】
「遺伝子」は、本開示の目的では、遺伝子産物をコードするDNA領域(下を参照のこと)、ならびに遺伝子産物の生成を制御するすべてのDNA領域(そのような制御配列が、コード配列および/または転写される配列に隣接するかまたは隣接しないかに関係ない)を含む。したがって、遺伝子には、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳制御配列(例えば、リボソーム結合部位および配列内リボソーム進入部位)、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス付着部位(matrix attachment sites)および遺伝子座調節領域が含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0080】
「遺伝子発現」とは、遺伝子に含まれる情報を遺伝子産物に変換することを指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接的な転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNAまたは他の任意のタイプのRNA)またはmRNAの翻訳によって生成されたタンパク質であり得る。遺伝子産物には、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化および編集などのプロセスによって修飾されたRNA、ならびに例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADP-リボシル化、ミリスチル化(myristilation)およびグリコシル化によって修飾されたタンパク質も含まれる。
【0081】
遺伝子発現の「調節」とは、遺伝子の活性を変化させることを指す。発現の調節は、遺伝子の活性化および遺伝子の抑制を含み得るが、これらに限定されない。遺伝子の不活性化とは、本明細書中に記載されるようなZFPを含まない細胞と比べたときの、遺伝子発現の任意の減少のことを指す。したがって、遺伝子の不活性化は、部分的または完全であり得る。
【0082】
「真核生物」細胞としては、真菌細胞(例えば、酵母)、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞およびヒト細胞(例えば、T細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
「目的の領域」は、細胞性クロマチンの任意の領域(例えば、遺伝子または遺伝子内のもしくは遺伝子に隣接した非コード配列)であり、外因性分子に結合することが望ましい。結合は、標的化されたDNA切断および/または標的化された組換えの目的のためのものであり得る。目的の領域は、例えば、染色体、エピソーム、オルガネラゲノム(例えば、ミトコンドリア、葉緑体)または感染ウイルスゲノムに存在し得る。目的の領域は、遺伝子のコード領域内、コード領域の上流または下流の、転写される非コード領域(例えば、リーダー配列、トレーラー(trailer)配列もしくはイントロン)内または転写されない領域内に存在し得る。目的の領域は、単一ヌクレオチド対ほど小さいこともあるし、最大2,000ヌクレオチド対の長さまたは任意の整数値のヌクレオチド対であることもある。
【0084】
用語「作動的な連結」および「作動的に連結された」(または「作動可能に連結された」)は、2つまたはそれを超える構成要素(例えば、配列エレメント)の並置に対して交換可能に使用され、ここで、それらの構成要素は、両方の構成要素が、正常に機能し、それらの構成要素のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの他の構成要素に対して発揮される機能を媒介できる可能性を許容するように配置されている。例証の目的で、プロモーターなどの転写制御配列は、その転写制御配列が、1つまたはそれを超える転写制御因子の有無に応答してコード配列の転写レベルをコントロールする場合、コード配列に作動的に連結されている。転写制御配列は、通常、コード配列とシスで作動的に連結されるが、コード配列に直接隣接する必要はない。例えば、エンハンサーは、連続していなかったとしても、コード配列に作動的に連結された転写制御配列である。
【0085】
融合ポリペプチドに関して、用語「作動的に連結された」とは、各構成要素が、他の構成要素と連結されていない場合に果たされる機能と同じ機能を他の構成要素と連結した状態で果たすという事実のことを指し得る。例えば、DNA結合ドメインが切断ドメインに融合されている融合ポリペプチドに関して、その融合ポリペプチドにおいて、DNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合することができ、切断ドメインが標的部位の近位(例えば、標的部位のいずれかの側の1~500塩基対またはそれらの間の任意の値)でDNAを切断できる場合、そのDNA結合ドメインと切断ドメインは、作動的に連結された状態である。
【0086】
本開示の方法において、本明細書中に記載されるような1つまたはそれを超える標的化されたヌクレアーゼは、所定の部位の標的配列(例えば、細胞性クロマチン)に二本鎖断裂(DSB)をもたらす。そのDSBは、相同性特異的な(homology-directed)修復機構または相同性特異的でない修復機構によって、欠失および/または挿入をもたらし得る。欠失は、任意の数の塩基対を含み得る。同様に、挿入も、任意の数の塩基対を含み得、それには、例えば、断裂の領域におけるヌクレオチド配列に対して相同性を必要に応じて有する「ドナー」ポリヌクレオチドのインテグレーションが含まれる。ドナー配列は、物理的にインテグレートされ得るか、あるいは、ドナーポリヌクレオチドが、相同組換えを介した断裂修復のための鋳型として使用され、その結果、そのドナーにおけるようなヌクレオチド配列の全部または一部が細胞性クロマチンに導入される。したがって、細胞性クロマチンにおける第1の配列が変更され得、ある特定の実施形態において、ドナーポリヌクレオチドに存在する配列に変換され得る。したがって、用語「置き換える」または「置き換え」の使用は、1つのヌクレオチド配列が別のヌクレオチド配列によって置き換えられること(すなわち、情報を提供する意味のある配列の置き換え)を表していると理解され得、1つのポリヌクレオチドが別のポリヌクレオチドによって物理的または化学的に置き換えられることを必ずしも必要としない。
【0087】
ジンクフィンガータンパク質、TALEN、TtAgoまたはCRIPSR/Casシステムのさらなる対が、細胞内でのさらなる標的部位のさらなる二本鎖切断のために使用され得る。
【0088】
本明細書中に記載される任意の方法において、ジンクフィンガータンパク質、TALEN、TtAgoまたはCRIPSR/Casシステムのさらなる対が、細胞内でのさらなる標的部位のさらなる二本鎖切断のために使用され得る。
【0089】
タンパク質、ポリペプチドまたは核酸の「機能的フラグメント」は、その配列が、完全長のタンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同一でないが、完全長のタンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同じ機能を保持している、タンパク質、ポリペプチドまたは核酸である。機能的フラグメントは、対応する天然の分子と比べてより多い数の残基、より少ない数の残基、もしくは同じ数の残基を有し得、かつ/または1つもしくはそれを超えるアミノ酸もしくはヌクレオチドの置換を含み得る。核酸の機能(例えば、コードする機能、別の核酸にハイブリダイズする能力)を測定するための方法は、当該分野で周知である。同様に、タンパク質の機能を測定するための方法も周知である。例えば、ポリペプチドがDNAに結合する機能は、例えば、フィルター結合、電気泳動移動度シフトまたは免疫沈降アッセイによって測定され得る。DNAの切断は、ゲル電気泳動によってアッセイされ得る。Ausubelら、前出を参照のこと。あるタンパク質が別のタンパク質と相互作用する能力は、例えば、免疫共沈降、ツーハイブリッドアッセイ、または遺伝的と生化学的の両方の相補性によって測定され得る。例えば、Fieldsら(1989)Nature 340:245-246;米国特許第5,585,245号およびPCT WO98/44350を参照のこと。
【0090】
リンカー
DNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガータンパク質、TALEなど)とヌクレアーゼ(例えば、切断ドメインまたは切断ハーフドメイン)とを融合する(連結する)アミノ酸配列が、本明細書中に記載される。
【0091】
現在、ヌクレアーゼ対を使用してゲノム配列を切断する際、DNA結合タンパク質が、6塩基対未満だけ離れた標的部位に結合するときに、最適な切断が得られる。特に、標的部位が5~6塩基対だけ離れているとき、ジンクフィンガーヌクレアーゼ対に対する最適な切断が得られ、グリシンおよびセリンが豊富な可動性の「ZC」リンカーを使用することにより、その対の各ジンクフィンガーが切断ドメインにつなげられる。特に、今まで使用されてきた「ZC」リンカーは、ジンクフィンガー結合ドメインのC末端と切断ドメインのN末端残基(FokIの場合はQ残基)との間におけるアミノ酸配列LRGS(配列番号2)からなる。例えば、米国特許第7,888,121号を参照のこと。さらに、ZCリンカーおよび切断ドメインのN末端領域に対するさらなる修飾を含む融合タンパク質もまた報告されている。米国特許公開番号20090305419を参照のこと。さらに、米国特許第8,772,453号には、DNA結合部位が、5塩基対未満だけ離れた配列を標的化するときに、切断を得るために有用なリンカーが記載されている。
【0092】
本明細書中に記載されるリンカーは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ対の標的部位が0~6塩基対ではない塩基対だけ離れているとき、例えば、7、8、9、10塩基対またはそれを超える塩基対だけ離れた標的部位のとき、切断を可能にする。本明細書中に記載されるリンカー配列は、代表的には、約8~17アミノ酸長であり、DNA結合ドメインのN末端またはC末端を切断ドメインのN末端またはC末端に連結し得る。ある特定の実施形態において、リンカーは、DNA結合ドメインのC末端残基と切断ドメインのN末端残基(例えば、FokIの(Q))との間に伸びている。
【0093】
本明細書中に記載されるようなリンカーの非限定的な例は、
図4、7、9、11、12、13、15および16に示されており(配列番号22~186、194~213、229~250および260~300)(これらの図に示されているC末端アミノ酸残基の1つまたは2つのアミノ酸残基有りまたは無しで)、それらとしては、(N)GICPPPRPRTSPP(配列番号194);(T)GTAPIEIPPEVYP(配列番号195);(N)GSYAPMPPLALASP(配列番号196);(P)GIYTAPTSRPTVPP(配列番号197);(N)GSQTPKRFQPTHPSA(配列番号198);(H)LPKPANPFPLD(配列番号199);(H)RDGPRNLPPTSPP(配列番号200);(H)RLPDSPTALAPDTL(配列番号201);(DPNS)PISRARPLNPHP(配列番号202);(Y)GPRPTPRLRCPIDSLIFR(配列番号203);(H)CPASRPIHP(配列番号204);(G)LQSLIPQQLL(配列番号204);(G)LQPTVNHEYNN(配列番号206);(P)ANIHSLSSPPPL(配列番号207);(P)AGLNTPCSPRSRSN(配列番号208);(A)TITDPNP(配列番号209);(P)PHKGLLP(配列番号220);(S)VSLPDTHH(配列番号211);(G)THGATPTHSP(配列番号212);(V)APGESSMTSL(配列番号213)、(LRGS)PISRARPLNPHP(配列番号251)、(LRGS)ISRARPLNPHP(配列番号252)、(LRGS)PSRARPLNPHP(配列番号253)、(LRGS)SRARPLNPHP(配列番号254)、(LRGS)YAPMPPLALASP(配列番号255)、(LRGS)APMPPLALASP(配列番号256)、(LRGS)PMPPLALASP(配列番号257)、(LRGS)MPPLALASP(配列番号258)HLPKPANPFPLD(配列番号288)が挙げられるがこれらに限定されず、ここで、丸括弧内に示されているアミノ酸残基は、必要に応じて存在する。ある特定の実施形態において、そのリンカーは、PKPAN(配列番号289)、RARPLN(配列番号290);PMPPLA(配列番号291)またはPPPRP(配列番号292)からなる群より選択される配列を含む。ある特定の実施形態において、それらのリンカーは、それらのN末端にZCリンカー(LRGS、配列番号2)をさらに含む。
【0094】
ある特定の実施形態において、リンカーは、
図4に示されているような配列(配列番号22~186)を含む。他の実施形態において、リンカーは、
図7、
図9A(上)、
図12および
図13に示されているような配列(例えば、L8a、L8b、L8c、L8d、L8e、L8g、L8i、L8j、L8a、L8c、L8a3およびL8c3を含むL8リンカー、配列番号194~201)を含む。ある特定の実施形態において、L8リンカーは、切断のために使用される二量体化ヌクレアーゼ対のDNA結合ドメインが、8塩基対離れた標的部位に結合する場合、使用される。他の実施形態において、リンカーは、
図9A(下)、
図12および
図13に示されているような配列(例えば、L7-1、L7-2、L7-6、L7-3、L7-5、L7-4、L7-b、L7-c、L7-b3およびL7-c3を含むL7リンカー、配列番号202~207)を含む。ある特定の実施形態において、L7リンカーは、切断のために使用される二量体化ヌクレアーゼ対のDNA結合ドメインが、7塩基対離れた標的部位に結合する場合、使用される。他の実施形態において、リンカーは、
図9B(上)に示されているような配列(例えば、L6-2、L6-6、L6-7、L6-1、L6-5、L6-3またはL6-4を含むL6リンカー、配列番号207~213)を含む。ある特定の実施形態において、L6リンカーは、切断のために使用される二量体化ヌクレアーゼ対のDNA結合ドメインが、6塩基対離れた標的部位に結合する場合、使用される。なおも他の実施形態において、リンカーは、
図9B(下)に示されているような配列(L5-6、L5-1、L5-7、L5-8、L5-9、L5-2、L5-3、L5-4、L5-5、配列番号293~300)を含む。ある特定の実施形態において、L5リンカーは、切断のために使用される二量体化ヌクレアーゼ対のDNA結合ドメインが、5塩基対離れた標的部位に結合する場合、使用される。
【0095】
本明細書中に記載される融合タンパク質は、選択された切断ドメインのN末端領域に対する変更も含み得る。変更には、切断ドメインの1つまたはそれを超えるN末端残基の置換、付加および/または欠失が含まれ得る。ある特定の実施形態において、切断ドメインは、FokIに由来し、野生型FokIのN末端領域の1つまたはそれを超えるアミノ酸が、置き換えられ、さらなるアミノ酸が、この領域に付加される。例えば、
図2に示されているように、野生型FokI切断ドメインのアミノ酸残基4および5(すなわち、残基KおよびS)が、それぞれ残基EおよびAで置き換えられ、残基AARが、置き換えられた2つ目の残基に対してC末端側に付加される。別の例示的な実施形態(
図3)は、FokI切断ドメインのN末端領域における7残基挿入(KSEAAAR;配列番号6)を含む。
【0096】
DNA結合ドメインと切断ドメインとをつなぐ配列は、DNA結合ドメインがその標的部位に結合する能力または切断ドメインがゲノム配列を二量体化するおよび/もしくは切断する能力を実質的に妨害しない任意のアミノ酸配列を含み得る。野生型FokIにおいて、切断ドメインのN末端領域は、残基389~400(ELEEKKSELRHK;配列番号7)から伸びるアルファへリックス領域を含む。例えば、Wahら(1997)Nature 388:97-100)を参照のこと。ゆえに、ある特定の実施形態において、リンカー配列は、例えば、野生型FokI切断ドメインのELEEKKSELRHK(配列番号7)に対するN末端側に3~5アミノ配列を挿入することによって、この構造モチーフを延長するおよび/または保存するようにデザインされる。
【0097】
したがって、リンカーは、EXXXR(配列番号9)またはEXXXK(配列番号10)などの配列を含み得、ここで、X残基は、アルファヘリックスを形成する任意の残基、すなわち、安定したアルファヘリックスリンカーを形成する、野生型アルファへリックス領域に隣接した、プロリンまたはグリシン以外の任意の残基(例えば、EAAAR(配列番号8))である。例えば、Yanら(2007)Biochemistry 46:8517-24およびMerutka and Stellwagen(1991)Biochemistry 30:4245-8を参照のこと。EXXXR(配列番号9)またはEXXXK(配列番号10)ペプチドをELEEKKSELRHK(配列番号7)ペプチドに隣接して(またはその近傍に)配置することは、FokI切断ドメインにおけるこのアルファヘリックスを延長するようにデザインされる。これにより、より堅固なリンカーが、ZFPとFokI切断ドメインとの間にもたらされ、得られるZFN対が、長い可動性リンカーがZFPとFokIドメインとの間で使用されるときに観察され得る活性および特異性の喪失なしに、ハーフ部位間に6bp超を有する標的を切断することを可能にする(Bibikovaら(2001)Molecular and Cellular
Biology 21:289-297)。さらに、本明細書中に記載されるリンカーは、現在のZFNと比べて、5bpの間隔よりも6bpの間隔に対してより高い優先度を示す。
【0098】
さらに、ある特定の実施形態において、リンカーと切断ドメインおよび/またはDNA結合ドメインとの間のジャンクションは、例えば、本明細書中に記載されるようなリンカーに対してアミノ酸を置換する、付加するおよび/または欠失させるように改変される。ある特定の実施形態において、1、2、3、4つまたはそれを超えるアミノ酸が、欠失されるか、または付加される。他の実施形態において、1、2または3、4つのアミノ酸置換が行われる。本明細書中に記載されるような改変されたリンカーの非限定的な例は、
図15および16に示されている(配列番号260~287)。
【0099】
DNA結合ドメイン、改変されたFokI切断ドメイン、およびDNA結合ドメインとFokI切断ドメインとの間のZCリンカーを含む融合タンパク質もまた、本明細書中に記載される。FokI切断ドメインは、何らかの方法で改変され得る。改変の非限定的な例としては、FokIのN末端領域(配列番号1の残基158~169)に対する付加、欠失および/または置換が挙げられる。ある特定の実施形態において、改変されたFokI切断ドメインは、FokIのN末端領域からの1、2、3、4つまたはそれを超えるアミノ酸の欠失(例えば、配列番号1の野生型FokIドメインの残基158、159、160および/または161のうちの1つまたはそれを超える残基の欠失)を含む。N末端のFokIアミノ酸残基の欠失を有するタンパク質の非限定的な例としては、
図15に示されているようなV1、V3およびV7と命名されたタンパク質が挙げられる。他の実施形態において、改変されたFokI切断ドメインは、FokIのN末端領域からの1つまたはそれを超える欠失および1つまたはそれを超える置換(例えば、残基158~161のうちの1つまたはそれを超える残基の欠失および1つまたはそれを超える残りの残基の置換)を含む。N末端のFokIアミノ酸残基に欠失および置換を有するタンパク質の非限定的な例としては、
図15に示されているようなV2、V4、V5、V6およびV8と命名されたタンパク質が挙げられる。他の実施形態において、改変されたFokI切断ドメインは、FokIのN末端領域に1つまたはそれを超える置換を含む。FokIのN末端のアミノ酸残基に置換を有するタンパク質の非限定的な例としては、
図15に示されているようなV9~V16と命名されたタンパク質が挙げられる。なおもさらなる実施形態において、改変されたFokI切断ドメインは、FokIの最もN末端の残基(配列番号1の残基158)に対してN末端側に1つまたはそれを超えるさらなるアミノ酸残基(例えば、1、2、3、4つまたはそれを超えるアミノ酸残基)を含む。N末端のFokIアミノ酸残基に対して付加を有するタンパク質の非限定的な例としては、
図15に示されているようなV17~V24と命名されたタンパク質が挙げられる。他の実施形態において、改変されたFokI切断ドメインは、FokIの最もN末端の残基(配列番号1の残基158)に対してN末端側に1つまたはそれを超えるさらなるアミノ酸残基(例えば、1、2、3、4つまたはそれを超えるアミノ酸残基)およびFokIのN末端領域内に1つまたはそれを超える置換を含む。付加を有するタンパク質の非限定的な例としては、
図15または
図16に示されているタンパク質および米国特許公開番号20090305419に記載されているようなN末端のFokIアミノ酸残基内の置換が挙げられる。ある特定の実施形態において、融合タンパク質は、
図15または
図16に示されているような改変されたFokI切断ドメインを含む。
【0100】
代表的には、本発明のリンカーは、リンカーアミノ酸配列を介して融合されたリンカーおよびDNA結合ドメインをコードする組換え核酸を作製することによって作製される。必要に応じて、それらのリンカーは、ペプチド合成を用いても作製され得、次いで、ポリペプチドDNA結合ドメインに連結され得る。
【0101】
ヌクレアーゼ
本明細書中に記載されるリンカー配列を有益に使用することにより、DNA結合ドメイン、例えば、ジンクフィンガータンパク質、TALE、ホーミングエンドヌクレアーゼ、CRISPR/Casおよび/またはTtagoガイドRNAが、ヌクレアーゼ切断ドメインまたはハーフドメインに連結され、それにより、特異的に標的化された天然に存在しないヌクレアーゼが形成される。
【0102】
A.DNA結合ドメイン
任意のDNA結合ドメインが、本明細書中に開示される方法において使用され得る。ある特定の実施形態において、DNA結合ドメインは、ジンクフィンガータンパク質を含む。好ましくは、そのジンクフィンガータンパク質は、最適な標的部位に結合するように操作されているという点において、天然に存在しない。例えば、Beerliら(2002)Nature Biotechnol.20:135-141;Paboら(2001)Ann.Rev.Biochem.70:313-340;Isalanら(2001)Nature Biotechnol.19:656-660;Segalら(2001)Curr.Opin.Biotechnol.12:632-637;Chooら(2000)Curr.Opin.Struct.Biol.10:411-416を参照のこと。操作されたジンクフィンガー結合ドメインは、天然に存在するジンクフィンガータンパク質と比べて、新しい結合特異性を有し得る。操作する方法としては、合理的なデザインおよび様々なタイプの選択が挙げられるが、これらに限定されない。合理的なデザインとしては、例えば、トリプレット(またはクワドルプレット)ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースを使用することが挙げられ、ここで、トリプレットヌクレオチド配列またはクワドルプレットヌクレオチド配列の各々は、特定のトリプレット配列またはクワドルプレット配列に結合するジンクフィンガーの1つまたはそれを超えるアミノ酸配列に会合される。例えば、共同所有の米国特許第6,453,242号および同第6,534,261号(全体として参照により本明細書に援用される)を参照のこと。
【0103】
ファージディスプレイおよびツーハイブリッドシステムをはじめとした例示的な選択方法は、米国特許第5,789,538号;同第5,925,523号;同第6,007,988号;同第6,013,453号;同第6,410,248号;同第6,140,466号;同第6,200,759号;および同第6,242,568号;ならびにWO98/37186;WO98/53057;WO00/27878;WO01/88197および英国特許第2,338,237号に開示されている。さらに、ジンクフィンガー結合ドメインに対する結合特異性の増強は、例えば、共同所有のWO02/077227に記載されている。
【0104】
標的部位の選択;ZFP、および融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)のデザインおよび構築のための方法は、当業者に公知であり、米国特許出願公開番号20050064474および同20060188987に詳細に記載されており、それらは全体として参照により本明細書に援用される。
【0105】
さらに、これらのおよび他の参考文献に開示されているように、ジンクフィンガードメインおよび/またはマルチフィンガー(multi-fingered)ジンクフィンガータンパク質は、例えば、5アミノ酸長またはそれを超えるリンカーを含む、任意の好適なリンカー配列を使用して互いに連結され得る。6アミノ酸長またはそれを超える例示的なリンカー配列については、米国特許第6,479,626号;同第6,903,185号;および同第7,153,949号も参照のこと。本明細書中に記載されるタンパク質は、そのタンパク質の個々のジンクフィンガーの間に任意の組み合わせの好適なリンカーを含み得る。
【0106】
ある特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物および方法は、ドナー分子への結合および/または細胞のゲノム内の目的の領域への結合のためにメガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)DNA結合ドメインを使用する。天然に存在するメガヌクレアーゼは、15~40塩基対の切断部位を認識し、通常、4つのファミリー:LAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、His-CystボックスファミリーおよびHNHファミリーに分類される。例示的なホーミングエンドヌクレアーゼとしては、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevIIおよびI-TevIIIが挙げられる。それらの認識配列は、公知である。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfortら(1997)Nucleic Acids Res.25:3379-3388;Dujonら(1989)Gene 82:115-118;Perlerら(1994)Nucleic Acids Res.22,1125-1127;Jasin(1996)Trends Genet.12:224-228;Gimbleら(1996)J.Mol.Biol.263:163-180;Argastら(1998)J.Mol.Biol.280:345-353およびNew England Biolabsのカタログも参照のこと。さらに、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合特異性は、非天然の標的部位に結合するように操作され得る。例えば、Chevalierら(2002)Molec.Cell 10:895-905;Epinatら(2003)Nucleic Acids Res.31:2952-2962;Ashworthら(2006)Nature 441:656-659;Paquesら(2007)Current Gene Therapy
7:49-66;米国特許公開番号20070117128を参照のこと。ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、そのヌクレアーゼに照らして全体として変化し得る(すなわち、そのヌクレアーゼは、同種の切断ドメインを含む)か、または異種の切断ドメインに融合され得る。
【0107】
他の実施形態において、本明細書中に記載される方法および組成物において使用される1つまたはそれを超えるヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、天然に存在するまたは操作された(天然に存在しない)TALエフェクターDNA結合ドメインを含む。例えば、米国特許第8,586,526号(全体として参照により本明細書に援用される)を参照のこと。Xanthomonas属の植物病原菌は、重要な作物植物において多くの疾患の原因となることが知られている。Xanthomonasの病原性は、25を超える異なるエフェクタータンパク質を植物細胞に注入する、保存されたタイプIII分泌(T3S)システムに依存する。これらの注入されるタンパク質には、植物転写活性化因子を模倣して植物トランスクリプトームを操作する、転写活性化因子様(TAL)エフェクターがある(Kayら(2007)Science 318:648-651を参照のこと)。これらのタンパク質は、DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインを含む。最もよく特徴づけられたTALエフェクターの1つは、Xanthomonas campestgris pv.Vesicatoria由来のAvrBs3である(Bonasら(1989)Mol Gen Genet 218:127-136およびWO2010079430を参照のこと)。TALエフェクターは、タンデムリピートの集中ドメイン(centralized domain)を含み、各リピートは、これらのタンパク質のDNA結合特異性にとって重要なおよそ34アミノ酸を含む。さらに、それらは、核局在化配列および酸性転写活性化ドメインを含む(概説として、Schornack Sら(2006)J Plant Physiol 163(3):256-272を参照のこと)。さらに、植物病原菌Ralstonia solanacearumでは、brg11およびhpx17と命名された2つの遺伝子が、R.solanacearum次亜種1株GMI1000および次亜種4株RS1000においてXanthomonasのAvrBs3ファミリーに相同であると見出された(Heuerら(2007)Appl and Envir Micro 73(13):4379-4384を参照のこと)。これらの遺伝子は、ヌクレオチド配列において互いと98.9%同一であるが、hpx17の反復ドメインにおける1,575bpの欠失が異なる。しかしながら、両方の遺伝子産物が、XanthomonasのAvrBs3ファミリータンパク質と40%未満の配列同一性を有する。例えば、米国特許第8,586,526号(全体として参照により本明細書に援用される)を参照のこと。
【0108】
これらのTALエフェクターの特異性は、タンデムリピートに見られる配列に依存する。そのリピート配列は、およそ102bpを含み、そのリピートは、代表的には、互いに91~100%相同である(Bonasら、同書)。それらのリピートの多型は、通常、12および13位に存在し、その結果12および13位における超可変二残基(hypervariable diresidues)(RVD)の同一性と、TALエフェクターの標的配列における連続したヌクレオチドの同一性との間に1対1の対応が存在するとみられる(Moscou and Bogdanove,(2009)Science 326:1501およびBochら(2009)Science 326:1509-1512を参照のこと)。実験的には、これらのTALエフェクターのDNA認識のための天然のコードが決定され、12および13位におけるHD配列が、シトシン(C)への結合をもたらし、NGが、Tに結合し、NIが、A、C、GまたはTに結合し、NNが、AまたはGに結合し、INGが、Tに結合する。これらのDNA結合リピートが、新しいリピートの組み合わせおよび数を有するタンパク質に組み立てられることにより、新しい配列と相互作用することおよび植物細胞において非内因性レポーター遺伝子の発現を活性化することができる人工転写因子が形成された(Bochら、同書)。操作されたTALタンパク質をFokI切断ハーフドメインに連結することにより、TALエフェクタードメインヌクレアーゼ融合物(TALEN)が得られた。例えば、米国特許第8,586,526号;Christianら((2010)<Genetics epub 10.1534/genetics.110.120717)を参照のこと。ある特定の実施形態において、TALEドメインは、米国特許第8,586,526号に記載されているようなNキャップおよび/またはCキャップを含む。なおもさらなる実施形態において、ヌクレアーゼは、コンパクトTALEN(cTALEN)を含む。これらは、TALE DNA結合ドメインをTevIヌクレアーゼドメインと連結する一本鎖融合タンパク質である。その融合タンパク質は、TALE DNA結合ドメインがTevIヌクレアーゼドメインに対して配置される場所に依存して、TALE領域によって局在化されるニッカーゼとして作用し得るか、または二本鎖断裂をもたらし得る(Beurdeleyら(2013)Nat Comm:1-8 DOI:10.1038/ncomms2782を参照のこと)。任意のTALENを、さらなるTALEN(例えば、1つまたはそれを超えるメガ-TALを有する1つまたはそれを超えるTALEN(cTALENまたはFokI-TALEN))と組み合わせて使用してよい。
【0109】
ある特定の実施形態において、DNA結合ドメインは、CRISPR/Casヌクレアーゼシステムの一部である。例えば、米国特許第8,697,359号および米国特許出願番号14/278,903を参照のこと。そのシステムのRNA構成要素をコードするCRISPR(規則的に間隔が入ったクラスター化された短いパリンドロームリピート)遺伝子座およびタンパク質をコードするcas(CRISPR関連)遺伝子座(Jansenら、2002.Mol.Microbiol.43:1565-1575;Makarovaら、2002.Nucleic Acids Res.30:482-496;Makarovaら、2006.Biol.Direct 1:7;Haftら、2005.PLoSComput.Biol.1:e60)が、CRISPR/Casヌクレアーゼシステムの遺伝子配列を構成する。微生物宿主におけるCRISPR遺伝子座は、CRISPR関連(Cas)遺伝子の組み合わせならびにCRISPR媒介性の核酸切断の特異性をプログラムすることができる非コードRNAエレメントを含む。
【0110】
タイプII CRISPRは、最もよく特徴づけられたシステムの1つであり、標的化されたDNA二本鎖断裂を4つの逐次工程で行う。第1に、2つの非コードRNAであるプレcrRNAアレイおよびtracrRNAが、CRISPR遺伝子座から転写される。第2に、tracrRNAが、プレcrRNAのリピート領域にハイブリダイズし、プレcrRNAから、個々のスペーサー配列を含む成熟crRNAへのプロセシングを媒介する。第3に、成熟crRNA:tracrRNA複合体が、crRNA上のスペーサーと、標的認識に対するさらなる必要条件であるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の隣の標的DNA上のプロトスペーサーとの間のワトソン-クリック塩基対形成によってCas9を標的DNAに向かわせる。最後に、Cas9は、標的DNAの切断を媒介して、プロトスペーサー内で二本鎖断裂をもたらす。CRISPR/Casシステムの活性は、3つの工程:(i)「適応」と呼ばれるプロセスにおける、将来の攻撃を防ぐための、CRISPRアレイへの異質DNA配列の挿入、(ii)関連するタンパク質の発現、ならびにそのアレイの発現およびプロセシングに続く、(iii)その異質核酸のRNA媒介性干渉を含む。したがって、細菌細胞では、いくつかのいわゆる「Cas」タンパク質が、CRISPR/Casシステムの天然の機能に関わり、異質DNAの挿入などのような機能において役割を果たす。
【0111】
ある特定の実施形態において、Casタンパク質は、天然に存在するCasタンパク質の「機能性誘導体」であり得る。天然配列ポリペプチドの「機能性誘導体」は、天然配列ポリペプチドと共通の定性的な生物学的特性を有する化合物である。「機能性誘導体」としては、天然配列のフラグメントならびに天然配列ポリペプチドの誘導体およびそれらのフラグメントが挙げられるが、これらに限定されないが、ただし、それらは、対応する天然配列ポリペプチドと共通の生物学的活性を有する。本明細書中で企図される生物学的活性は、機能性誘導体がDNA基質をフラグメントに加水分解する能力である。用語「誘導体」は、ポリペプチドのアミノ酸配列バリアント、共有結合修飾物およびそれらの融合物のいずれも包含する。Casポリペプチドまたはそのフラグメントの好適な誘導体としては、Casタンパク質またはそのフラグメントの変異体、融合物、共有結合修飾物が挙げられるがこれらに限定されない。Casタンパク質またはそのフラグメントを含むCasタンパク質、ならびにCasタンパク質またはそのフラグメントの誘導体は、細胞から入手可能であり得るか、または化学的にもしくはこれらの2つの手順の組み合わせによって合成され得る。その細胞は、Casタンパク質を天然に産生する細胞、またはCasタンパク質を天然に産生し、かつ内因性Casタンパク質をより高い発現レベルで産生するように遺伝的に操作された細胞、もしくは外から導入された核酸から(その核酸は内因性Casと同じまたは異なるCasをコードする)Casタンパク質を産生するように遺伝的に操作された細胞であり得る。場合によっては、その細胞は、Casタンパク質を天然に産生せず、Casタンパク質を産生するように遺伝的に操作されている。
【0112】
いくつかの実施形態において、DNA結合ドメインは、TtAgoシステムの一部である(Swartsら、同書;Shengら、同書を参照のこと)。真核生物では、遺伝子サイレンシングは、Argonaute(Ago)ファミリーのタンパク質によって媒介される。このパラダイムでは、Agoは、小さい(19~31nt)RNAに結合される。このタンパク質-RNAサイレンシング複合体は、その小さいRNAと標的との間のワトソン-クリック塩基対形成によって標的RNAを認識し、その標的RNAをエンドヌクレアーゼ的に切断する(Vogel(2014)Science 344:972-973)。対照的に、原核生物Agoタンパク質は、小さい一本鎖DNAフラグメントに結合し、おそらく、外来DNA(ウイルスのDNAであることが多い)を検出し、除去するように機能する(Yuanら、(2005)Mol.Cell 19,405;Olovnikovら(2013)Mol.Cell 51,594;Swartsら、同書)。例示的な原核生物Agoタンパク質としては、Aquifex aeolicus、Rhodobacter sphaeroidesおよびThermus thermophilusに由来するものが挙げられる。
【0113】
最もよく特徴づけられた原核生物Agoタンパク質の1つは、T.thermophilusに由来するものである(TtAgo;Swartsら、同書)。TtAgoは、5’リン酸基を用いて15ntまたは13~25ntの一本鎖DNAフラグメントと会合する。TtAgoが結合するこの「ガイドDNA」は、そのタンパク質-DNA複合体が、サードパーティDNA分子におけるワトソン-クリック相補DNA配列に結合するように指向させるように働く。いったん、これらのガイドDNAにおける配列情報が標的DNAの識別を可能にしたら、TtAgo-ガイドDNA複合体は、標的DNAを切断する。また、そのような機構は、その標的DNAに結合したままでTtAgo-ガイドDNA複合体の構造によって支持される(G.Shengら、同書)。Rhodobacter sphaeroides由来のAgo(RsAgo)は、類似の特性を有する(Olivnikovら、同書)。
【0114】
任意のDNA配列の外因性ガイドDNAを、TtAgoタンパク質上に載せることができる(Swartsら、同書)。TtAgo切断の特異性は、ガイドDNAによって指向されるので、研究者指定の外因性ガイドDNAと形成されたTtAgo-DNA複合体は、TtAgo標的DNA切断を、研究者指定の相補的な標的DNAに向ける。このようにして、DNAにおいて標的化された二本鎖断裂が生じ得る。TtAgo-ガイドDNAシステム(または他の生物に由来するオルソロガスなAgo-ガイドDNAシステム)を使用することにより、細胞内でゲノムDNAの標的化切断が可能になる。そのような切断は、一本鎖または二本鎖であり得る。哺乳動物ゲノムDNAを切断する場合、哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化されたバージョンのTtAgoを使用することが好ましいだろう。さらに、TtAgoタンパク質が細胞透過性ペプチドに融合される場合、インビトロで形成されたTtAgo-DNA複合体で細胞を処理することが好ましいだろう。さらに、突然変異誘発を介して変更された、37℃において改善された活性を有するバージョンのTtAgoタンパク質を使用することが好ましいだろう。Ago-RNA媒介性DNA切断は、DNA断裂を活用するための当該分野における標準的な手法を用いて、遺伝子ノックアウト、標的化された遺伝子付加、遺伝子修正、標的化された遺伝子欠失を含む一連の(panopoly)結果をもたらすために使用されるだろう。
【0115】
B.切断ドメイン
本明細書中に記載されるヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALEN、CRISPR/Casヌクレアーゼ)は、あるヌクレアーゼ(切断ドメイン、切断ハーフドメイン)も含む。本明細書中に開示される融合タンパク質の切断ドメイン部分は、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得ることができる。切断ドメインが由来し得る例示的なエンドヌクレアーゼとしては、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、2002-2003 Catalogue,New England Biolabs,Beverly,MA;およびBelfortら(1997)Nucleic Acids Res.25:3379-3388を参照のこと。DNAを切断するさらなる酵素は、公知である(例えば、S1ヌクレアーゼ;マングビーンヌクレアーゼ;膵臓DNase I;小球菌ヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ;Linnら(eds.)Nucleases,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1993も参照のこと)。1つまたはそれを超えるこれらの酵素(またはそれらの機能的フラグメント)は、切断ドメインおよび切断ハーフドメインの起源として使用され得る。
【0116】
同様に、切断ハーフドメインは、切断活性のために二量体化を必要とする、上に示されたような任意のヌクレアーゼまたはその一部に由来し得る。通常、融合タンパク質が切断ハーフドメインを含む場合、2つの融合タンパク質が、切断のために必要である。あるいは、2つの切断ハーフドメインを含む単一のタンパク質が使用され得る。2つの切断ハーフドメインは、同じエンドヌクレアーゼ(またはその機能的フラグメント)に由来し得るか、または各切断ハーフドメインは、異なるエンドヌクレアーゼ(またはその機能的フラグメント)に由来し得る。
【0117】
さらに、上記2つの融合タンパク質に対する標的部位は、好ましくは、それらの2つの融合タンパク質がそれらのそれぞれの標的部位に結合すると、切断ハーフドメインが、例えば二量体化することによって、機能的切断ドメインの形成を可能にするような互いに対する空間的配向で切断ハーフドメインが配置されるように、互いに対して配置される。したがって、ある特定の実施形態において、標的部位の近傍端は、5~8ヌクレオチドまたは15~18ヌクレオチドだけ離れている。しかしながら、任意の整数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対が、2つの標的部位の間に介在し得る(例えば、2~50ヌクレオチド対またはそれを超えるヌクレオチド対)。通常、切断部位は、それらの標的部位の間にある。
【0118】
上で述べたように、切断ドメインは、DNA結合ドメインに対して異種であり得、例えば、ジンクフィンガーDNA結合ドメインおよびヌクレアーゼ由来の切断ドメイン、またはTALEN DNA結合ドメインおよび切断ドメイン、またはメガヌクレアーゼDNA結合ドメインおよび異なるヌクレアーゼ由来の切断ドメイン、またはCRISPR/Casシステム由来のDNA結合ドメインおよび異なるヌクレアーゼ由来の切断ドメインである。異種の切断ドメインは、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得ることができる。切断ドメインが由来し得る例示的なエンドヌクレアーゼとしては、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられるが、これらに限定されない。DNAを切断するさらなる酵素は、公知である(例えば、S1ヌクレアーゼ;マングビーンヌクレアーゼ;膵臓DNase I;小球菌ヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ。1つまたはそれを超えるこれらの酵素(またはそれらの機能的フラグメント)は、切断ドメインおよび切断ハーフドメインの起源として使用され得る。
【0119】
同様に、切断ハーフドメインは、切断活性のために二量体化を必要とする、上に示されたような任意のヌクレアーゼまたはその一部に由来し得る。通常、融合タンパク質が切断ハーフドメインを含む場合、2つの融合タンパク質が、切断のために必要である。あるいは、2つの切断ハーフドメインを含む単一のタンパク質が使用され得る。2つの切断ハーフドメインは、同じエンドヌクレアーゼ(またはその機能的フラグメント)に由来し得るか、または各切断ハーフドメインは、異なるエンドヌクレアーゼ(またはその機能的フラグメント)に由来し得る。さらに、2つの融合タンパク質に対する標的部位は、好ましくは、それらの2つの融合タンパク質がそれらのそれぞれの標的部位に結合すると、切断ハーフドメインが、例えば二量体化することによって、機能的切断ドメインの形成を可能にするような互いに対する空間的配向で切断ハーフドメインが配置されるように、互いに対して配置される。したがって、ある特定の実施形態において、標的部位の近傍端は、5~8ヌクレオチドまたは15~18ヌクレオチドだけ離れている。しかしながら、任意の整数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対が、2つの標的部位の間に介在し得る(例えば、2~50ヌクレオチド対またはそれを超えるヌクレオチド対)。通常、切断部位は、それらの標的部位の間にある。
【0120】
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は、多くの種に存在し、(認識部位において)DNAへの配列特異的結合が可能であり、結合部位においてまたは結合部位の近傍においてDNAを切断することが可能である。ある特定の制限酵素(例えば、タイプIIS)は、認識部位から除去される部位でDNAを切断し、分離可能な結合ドメインおよび切断ドメインを有する。例えば、タイプIIS酵素FokIは、一方の鎖におけるその認識部位から9ヌクレオチドにおいておよび他方の鎖の認識部位から13ヌクレオチドにおいてDNAの二本鎖切断を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号;同第5,436,150号および同第5,487,994号;ならびにLiら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4275-4279;Liら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2764-2768;Kimら(1994a)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:883-887;Kimら(1994b)J.Biol.Chem.269:31,978-31,982を参照のこと。したがって、1つの実施形態において、融合タンパク質は、少なくとも1つのタイプIIS制限酵素に由来する切断ドメイン(または切断ハーフドメイン)および操作されていてもよいし操作されていなくてもよい1つまたはそれを超えるジンクフィンガー結合ドメインを含む。
【0121】
切断ドメインが結合ドメインから分離可能である例示的なタイプIIS制限酵素は、FokIである。この特定の酵素は、二量体として活性である。Bitinaiteら(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:10,570-10,575。したがって、本開示の目的では、開示される融合タンパク質において使用されるFokI酵素の部分は、切断ハーフドメインであるとみなされる。したがって、ジンクフィンガー-FokI融合物を使用した、細胞配列の標的化された二本鎖切断および/または標的化された置き換えのために、2つの融合タンパク質(各々がFokI切断ハーフドメインを含む)を使用して触媒的に活性な切断ドメインを再構成し得る。あるいは、ジンクフィンガー結合ドメインおよび2つのFokI切断ハーフドメインを含む単一のポリペプチド分子もまた使用され得る。ジンクフィンガー-FokI融合物を使用した、標的化された切断および標的化された配列変更に対するパラメータは、本開示の他の箇所に提供される。
【0122】
切断ドメインまたは切断ハーフドメインは、切断活性を保持するタンパク質の任意の部分であり得るか、または多量体化(例えば、二量体化)して機能的な切断ドメインを形成する能力を保持するタンパク質の任意の部分であり得る。
【0123】
例示的なタイプIIS制限酵素は、国際公開WO07/014275(全体として本明細書に援用される)に記載されている。さらなる制限酵素は、分離可能な結合ドメインおよび切断ドメインも含み、これらは、本開示によって企図される。例えば、Robertsら(2003)Nucleic Acids Res.31:418-420を参照のこと。
【0124】
ある特定の実施形態において、切断ドメインは、例えば、米国特許第8,623,618号;同第8,409,861号;同第8,034,598号;同第7,914,796号;および同第7,888,121号(これらのすべての開示は、全体として参照により本明細書に援用される)に記載されているように、ホモ二量体化を最小にするかまたは防ぐ1つまたはそれを超える操作された切断ハーフドメイン(二量体化ドメイン変異体とも称される)を含む。FokIの446、447、479、483、484、486、487、490、491、496、498、499、500、531、534、537および538位におけるアミノ酸残基はすべて、FokI切断ハーフドメインの二量体化に影響を及ぼすための標的である。
【0125】
偏向ヘテロ二量体を形成するFokIの例示的な操作された切断ハーフドメインとしては、第1の切断ハーフドメインがFokIの490および538位におけるアミノ酸残基に変異を含み、第2の切断ハーフドメインがアミノ酸残基486および499に変異を含む対が挙げられる。
【0126】
したがって、1つの実施形態において、490における変異は、Glu(E)をLys(K)で置き換え;538における変異は、Iso(I)をLys(K)で置き換え;486における変異は、Gln(Q)をGlu(E)で置き換え;499位における変異は、Iso(I)をLys(K)で置き換える。詳細には、1つの切断ハーフドメインにおいて490位(E→K)および538位(I→K)を変異させて、「E490K:I538K」と命名された操作された切断ハーフドメインを生成することによって、および別の切断ハーフドメインにおいて486位(Q→E)および499位(I→L)を変異させて、「Q486E:I499L」と命名された操作された切断ハーフドメインを生成することによって、本明細書中に記載される操作された切断ハーフドメインを調製した。本明細書中に記載される操作された切断ハーフドメインは、異所の切断が最小限であるかまたは無効にされている偏向ヘテロ二量体変異体である。例えば、米国特許第7,888,121号を参照のこと(この開示は、すべての目的のために全体として参照により援用される)。
【0127】
1つより多い変異、例えば、「E490K:I538K」と命名された操作された切断ハーフドメインを生成する、1つの切断ハーフドメインにおける490位(E→K)および538位(I→K)における変異、および「Q486E:I499L」と命名された操作された切断ハーフドメインを生成する、別の切断ハーフドメインにおける486位(Q→E)および499位(I→L)を変異させることによる変異;486位における野生型Gln(Q)残基をGlu(E)残基で、499位における野生型Iso(I)残基をLeu(L)残基で、および496位における野生型Asn(N)残基をAsp(D)またはGlu(E)残基で置き換える変異(それぞれ「ELD」および「ELE」ドメインとも称される)を有する切断ドメインが、使用され得;操作された切断ハーフドメインは、490位、538位および537位(野生型FokIに対してナンバリングされたもの)に変異、例えば、490位における野生型Glu(E)残基をLys(K)残基で、538位における野生型Iso(I)残基をLys(K)残基で、および537位における野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換える変異(それぞれ「KKK」および「KKR」ドメインとも称される)を含み;および/または操作された切断ハーフドメインは、490位および537位(野生型FokIに対してナンバリングされたもの)に変異、例えば、490位における野生型Glu(E)残基をLys(K)残基で置き換える変異および537位における野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換える変異(それぞれ「KIK」および「KIR」ドメインとも称される)を含む。例えば、米国特許第7,914,796号;同第8,034,598号および同第8,623,618号を参照のこと(これらの開示は、すべての目的のために全体として参照により援用される)。他の実施形態において、操作された切断ハーフドメインは、「Sharkey」および/または「Sharkey’」変異を含む(Guoら(2010)J.Mol.Biol.400(1):96-107を参照のこと)。
【0128】
あるいは、ヌクレアーゼは、インビボにおいて、いわゆる「スプリット酵素」技術(例えば、米国特許公開番号20090068164を参照のこと)を用いて、核酸標的部位において組み立てられ得る。そのようなスプリット酵素の構成要素は、別個の発現構築物上で発現され得るか、または1つのオープンリーディングフレーム内で連結され得、ここで、個々の構成要素は、例えば、自己切断型の2AペプチドまたはIRES配列によって、分断されている。構成要素は、個々のジンクフィンガー結合ドメインまたはメガヌクレアーゼ核酸結合ドメインのドメインであり得る。
【0129】
ヌクレアーゼは、例えば、米国特許第8,563,314号に記載されているような酵母に基づく染色体システムにおいて、使用前に活性についてスクリーニングされ得る。
【0130】
Cas9関連CRISPR/Casシステムは、2つのRNA非コード構成要素:tracrRNA、および同一のダイレクトリピート(DR)によって空間が空けられたヌクレアーゼガイド配列(スペーサー)を含むプレcrRNAアレイを含む。CRISPR/Casシステムを使用してゲノム操作を達成するためには、これらのRNAの両方の機能が存在しなければならない(Congら(2013)Sciencexpress 1/10.1126/science 1231143を参照のこと)。いくつかの実施形態において、tracrRNAおよびプレcrRNAは、別個の発現構築物によって供給されるか、または別個のRNAとして供給される。他の実施形態では、キメラRNAが構築され、ここで、操作された成熟crRNA(標的特異性を付与する)が、tracrRNA(Cas9との相互作用をもたらす)に融合されて、キメラcr-RNA-tracrRNAハイブリッド(単一ガイドRNAとも呼ばれる)が形成される(Jinek 同書およびCong,同書を参照のこと)。
【0131】
標的部位
上で詳細に説明されたように、本明細書中に記載されるようなリンカーを含む融合タンパク質のDNA結合ドメインは、任意の最適な配列に結合するように操作され得る。操作されたDNA結合ドメインは、天然に存在するDNA結合ドメインと比べて、新しい結合特異性を有し得る。
【0132】
好適な標的遺伝子の非限定的な例は、ベータ(β)グロビン遺伝子(HBB)、ガンマ(δ)グロビン遺伝子(HBG1)、B細胞リンパ腫/白血病11A(BCL11A)遺伝子、Kruppel様因子1(KLF1)遺伝子、CCR5遺伝子、CXCR4遺伝子、PPP1R12C(AAVS1)遺伝子、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子、アルブミン遺伝子、第VIII因子遺伝子、第IX因子遺伝子、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)遺伝子、Hungtingin(Htt)遺伝子、ロドプシン(RHO)遺伝子、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)遺伝子、サーファクタントタンパク質B遺伝子(SFTPB)、T細胞レセプターアルファ(TRAC)遺伝子、T細胞レセプターベータ(TRBC)遺伝子、プログラム細胞死1(PD1)遺伝子、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)遺伝子、ヒト白血球抗原(HLA)A遺伝子、HLA B遺伝子、HLA C遺伝子、HLA-DPA遺伝子、HLA-DQ遺伝子、HLA-DRA遺伝子、LMP7遺伝子、抗原プロセシング関連トランスポーター(TAP)1遺伝子、TAP2遺伝子、タパシン遺伝子(TAPBP)、クラスII主要組織適合遺伝子複合体トランス活性化因子(CIITA)遺伝子、ジストロフィン遺伝子(DMD)、糖質コルチコイドレセプター遺伝子(GR)、IL2RG遺伝子、Rag-1遺伝子、RFX5遺伝子、FAD2遺伝子、FAD3遺伝子、ZP15遺伝子、KASII遺伝子、MDH遺伝子および/またはEPSPS遺伝子。
【0133】
ある特定の実施形態において、ヌクレアーゼは、「セーフハーバー(safe harbor)」遺伝子座、例えば、ヒト細胞におけるAAVS1、HPRT、アルブミンおよびCCR5遺伝子ならびにマウス細胞におけるRosa26(例えば、米国特許第7,888,121号;同第7,972,854号;同第7,914,796号;同第7,951,925号;同第8,110,379号;同第8,409,861号;同第8,586,526号;米国特許公開20030232410;同20050208489;同20050026157;同20060063231;同20080159996;同201000218264;同20120017290;同20110265198;同20130137104;同20130122591;同20130177983および同20130177960を参照のこと)、および植物におけるZp15遺伝子座(米国特許第8,329,986号を参照のこと)を標的化する。
【0134】
ドナー
ある特定の実施形態において、本開示は、幹細胞のゲノムのヌクレアーゼ媒介性改変に関する。上で述べたように、外因性配列(「ドナー配列」または「ドナー」または「トランスジーン」とも呼ばれる)の挿入は、例えば、指定の領域の欠失のためおよび/もしくは変異遺伝子の修正のため、または野生型遺伝子の発現の増大のためである。そのドナー配列は、通常、それが配置されるゲノム配列と同一でないことは容易に明らかであるだろう。ドナー配列は、目的の位置における効率的なHDRを可能にするために相同な2つの領域に隣接した非相同配列を含み得るか、または非相同性特異的修復機構(non-homology directed repair mechanisms)によってインテグレートされ得る。さらに、ドナー配列は、細胞性クロマチンにおける目的の領域と相同でない配列を含むベクター分子を構成し得る。ドナー分子は、細胞性クロマチンと相同ないくつかの不連続な領域を含み得る。さらに、目的の領域に通常存在しない配列を標的化挿入するために、前記配列は、ドナー核酸分子に存在し得、目的の領域における配列に相同な領域に隣接し得る。
【0135】
ヌクレアーゼと同様に、ドナーは、任意の形態で導入され得る。ある特定の実施形態において、ドナーは、mRNAの形態で導入されることにより、改変された細胞における残留ウイルスを排除する。他の実施形態において、ドナーは、DNAおよび/またはウイルスベクターを用いて当該分野で公知の方法によって導入され得る。例えば、米国特許公開番号20100047805および同20110207221を参照のこと。ドナーは、環状または直鎖状の形態で細胞に導入され得る。直鎖状の形態で導入される場合、ドナー配列の末端は、当業者に公知の方法によって(例えば、エキソヌクレアーゼ分解から)保護され得る。例えば、1つまたはそれを超えるジデオキシヌクレオチド残基が、直鎖状分子の3’末端に付加され、かつ/または自己相補的オリゴヌクレオチドが、一方または両方の末端にライゲートされる。例えば、Changら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA84:4959-4963;Nehlsら(1996)Science272:886-889を参照のこと。外因性ポリヌクレオチドを分解から保護するためのさらなる方法としては、末端のアミノ基の付加、ならびに改変されたインターヌクレオチド結合、例えば、ホスホロチオエート、ホスホルアミデートおよびO-メチルリボースまたはデオキシリボース残基の使用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
ある特定の実施形態において、ドナーは、1kb長より長い配列(例えば、トランスジーンとも称されるコード配列)、例えば、2~200kb、2~10kb(またはそれらの間の任意の値)の配列を含む。ドナーは、少なくとも1つのヌクレアーゼ標的部位も含み得る。ある特定の実施形態において、ドナーは、例えば、ZFN、TALEN、TtAgoまたはCRISPR/Casヌクレアーゼの対に対する少なくとも2つの標的部位を含む。代表的には、ヌクレアーゼ標的部位は、トランスジーンの切断の場合、トランスジーン配列の外側、例えば、トランスジーン配列に対して5’および/または3’に存在する。ヌクレアーゼ切断部位は、任意のヌクレアーゼに対するものであり得る。ある特定の実施形態において、二本鎖ドナーに含まれるヌクレアーゼ標的部位は、切断されたドナーが相同性非依存的方法によってインテグレートされる内因性標的を切断するために使用されるヌクレアーゼと同じヌクレアーゼに対するものである。
【0137】
ドナーは、その発現が、インテグレーション部位における内因性プロモーター、すなわち、ドナーが挿入される内因性遺伝子の発現を駆動するプロモーターによって駆動されるように、挿入され得る。しかしながら、ドナーは、プロモーターおよび/またはエンハンサー、例えば、構成的プロモーターまたは誘導性もしくは組織特異的プロモーターを含み得ることが明らかだろう。そのドナー分子は、内因性遺伝子のすべてもしくはいくつかが発現されるように、または内因性遺伝子が全く発現されないように、その内因性遺伝子に挿入され得る。さらに、発現にとって必要でないが、外因性配列は、転写制御配列または翻訳制御配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、インスレーター、配列内リボソーム進入部位、2Aペプチドをコードする配列および/またはポリアデニル化シグナルも含み得る。
【0138】
本明細書中に記載されるドナー配列上に保持されるトランスジーンは、PCRなどの当該分野で公知の標準的な手法を用いて、プラスミド、細胞または他の起源から単離され得る。使用するためのドナーは、環状スーパーコイル状態、環状リラックス状態、直鎖状などをはじめとした様々なタイプのトポロジーを含み得る。あるいは、それらは、標準的なオリゴヌクレオチド合成法を用いて化学的に合成されてもよい。さらに、ドナーは、メチル化されてもよいし、メチル化を欠いてもよい。ドナーは、細菌人工染色体または酵母人工染色体(BACまたはYAC)の形態であり得る。
【0139】
本明細書中に記載されるドナーポリヌクレオチドは、1つまたはそれを超える非天然の塩基および/または骨格を含み得る。特に、メチル化されたシトシンによるドナー分子の挿入は、本明細書中に記載される方法を用いて行われることにより、目的の領域において転写静止状態が達成され得る。
【0140】
外因性(ドナー)ポリヌクレオチドは、目的の任意の配列(外因性配列)を含み得る。例示的な外因性配列としては、任意のポリペプチドコード配列(例えば、cDNA)、プロモーター配列、エンハンサー配列、エピトープタグ、マーカー遺伝子、切断酵素認識部位および様々なタイプの発現構築物が挙げられるが、これらに限定されない。マーカー遺伝子としては、抗生物質耐性(例えば、アンピシリン耐性、ネオマイシン耐性、G418耐性、ピューロマイシン耐性)を媒介するタンパク質をコードする配列、有色または蛍光または発光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、高感度緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ)をコードする配列、ならびに細胞増殖の増大および/または遺伝子の増幅を媒介するタンパク質(例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素)が挙げられるが、これらに限定されない。エピトープタグとしては、例えば、1コピーまたはそれを超えるコピーのFLAG、His、myc、Tap、HAまたは任意の検出可能なアミノ酸配列が挙げられる。
【0141】
いくつかの実施形態において、ドナーは、細胞における発現が望まれる任意のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、そのポリペプチドとしては、抗体、抗原、酵素、レセプター(細胞表面または核)、ホルモン、リンフォカイン、サイトカイン、レポーターポリペプチド、成長因子、および上記のいずれかの機能的フラグメントが挙げられるがこれらに限定されない。それらのコード配列は、例えば、cDNAであり得る。
【0142】
ある特定の実施形態において、外因性配列は、標的化されたインテグレーションを起こした細胞の選択を可能にするマーカー遺伝子(上に記載されたもの)、およびさらなる機能性をコードする連結された配列を含み得る。マーカー遺伝子の非限定的な例としては、GFP、薬物選択マーカーなどが挙げられる。
【0143】
ある特定の実施形態において、トランスジーンには、例えば、変異した内因性配列に取って代わる野生型遺伝子が含まれ得る。例えば、野生型(または他の機能的な)遺伝子配列が、幹細胞のゲノムに挿入され得、その遺伝子の内因性コピーが変異される。トランスジーンは、内因性遺伝子座に挿入され得るか、または代わりに、セーフハーバー遺伝子座に標的化され得る。
【0144】
本明細書の教示に従うそのような発現カセットの構築では、分子生物学の分野で周知の方法を利用する(例えば、AusubelまたはManiatisを参照のこと)。トランスジェニック動物を作出するために発現カセットを使用する前に、発現カセットを好適な細胞株(例えば、初代細胞、形質転換された細胞または不死化細胞株)に導入することによって、選択された調節エレメントに関連するストレス誘導因子に対するその発現カセットの応答性が試験され得る。
【0145】
さらに、発現にとって必要でないが、外因性配列は、転写制御配列または翻訳制御配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、インスレーター、配列内リボソーム進入部位、2Aペプチドをコードする配列および/またはポリアデニル化シグナルも含み得る。さらに、目的の遺伝子の調節エレメントは、レポーター遺伝子に作動可能に連結されて、キメラ遺伝子(例えば、レポーター発現カセット)が形成され得る。例示的なスプライス受容部位配列は、当業者に公知であり、それらとしては、単なる例として、CTGACCTCTTCTCTTCCTCCCACAG(配列番号302)(ヒトHBB遺伝子由来)およびTTTCTCTCCACAG(配列番号303)(ヒト免疫グロブリン-ガンマ遺伝子由来)が挙げられる。
【0146】
非コード核酸配列の標的化された挿入もまた、達成され得る。アンチセンスRNA、RNAi、shRNAおよびマイクロRNA(miRNA)をコードする配列もまた、標的化された挿入のために使用され得る。
【0147】
さらなる実施形態において、ドナー核酸は、さらなるヌクレアーゼデザインのための特異的な標的部位である非コード配列を含み得る。続いて、さらなるヌクレアーゼは、元のドナー分子が切断され、目的の別のドナー分子の挿入によって改変されるように、細胞において発現され得る。このようにして、ドナー分子の反復インテグレーションがもたらされ得、目的の特定の遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座において形質のスタッキングが可能になる。
【0148】
送達
ヌクレアーゼ、これらのヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチド、ならびに本明細書中に記載されるタンパク質および/またはポリヌクレオチドを含む組成物は、任意の好適な手段によって送達され得る。ある特定の実施形態において、ヌクレアーゼおよび/またはドナーは、インビボにおいて送達される。他の実施形態において、ヌクレアーゼおよび/またはドナーは、患者へのエキソビボ送達において有用な改変された細胞を提供するために、単離された細胞(例えば、自己または異種の幹細胞)に送達される。
【0149】
本明細書中に記載されるようなヌクレアーゼを送達する方法は、例えば、米国特許第7,888,121号;同第6,453,242号;同第6,503,717号;同第6,534,261号;同第6,599,692号;同第6,607,882号;同第6,689,558号;同第6,824,978号;同第6,933,113号;同第6,979,539号;同第7,013,219号;および同第7,163,824号に記載されている(それらの開示のすべてが、全体として参照により本明細書に援用される)。
【0150】
本明細書中に記載されるようなヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物は、1つまたはそれを超えるそれらの構成要素をコードする配列を含む、裸のDNAおよび/またはRNA(例えば、mRNA)ならびにベクターをはじめとした任意の核酸送達機構を用いても送達され得る。任意のベクター系を使用してよく、それらとしては、プラスミドベクター、DNAミニサークル、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター;ヘルペスウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターなど、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。米国特許第6,534,261号;同第6,607,882号;同第6,824,978号;同第6,933,113号;同第6,979,539号;同第7,013,219号;および同第7,163,824号ならびに米国特許出願番号14/271,008もまた参照のこと(これらは全体として参照により本明細書に援用される)。さらに、これらのシステムのいずれもが、処置のために必要な1つまたはそれを超える配列を含み得ることが明らかだろう。したがって、1つまたはそれを超えるヌクレアーゼおよびドナー構築物が、細胞に導入されるとき、ヌクレアーゼおよび/またはドナーポリヌクレオチドは、同じ送達系または異なる送達機構で運ばれ得る。複数の系が使用されるとき、各送達機構は、1つまたは複数のヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物をコードする配列(例えば、1つもしくはそれを超えるヌクレアーゼをコードするmRNAおよび/または1つもしくはそれを超えるドナー構築物を運ぶmRNAもしくはAAV)を含み得る。
【0151】
ウイルスに基づくおよびウイルスに基づかない従来の遺伝子導入方法が、ヌクレアーゼをコードする核酸およびドナー構築物を細胞(例えば、哺乳動物細胞)および標的組織に導入するために使用され得る。非ウイルスベクター送達系としては、DNAプラスミド、DNAミニサークル、裸の核酸、およびリポソームまたはポロキサマーなどの送達ビヒクルと複合体化された核酸が挙げられる。ウイルスベクター送達系としては、細胞への送達後にエピソームゲノムまたはインテグレートされたゲノムのいずれかを有する、DNAウイルスおよびRNAウイルスが挙げられる。
【0152】
核酸の非ウイルス性送達の方法には、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃(biolistics)、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ナノ粒子、ポリカチオンまたは脂質:核酸結合体、裸のDNA、裸のRNA、キャップされたRNA、人工ビリオン、および作用物質によって増強されるDNAの取り込みが含まれる。例えば、Sonitron 2000システム(Rich-Mar)を使用するソノポレーション(Sonoporation)もまた、核酸を送達するために使用され得る。
【0153】
さらなる例示的な核酸送達系としては、Amaxa Biosystems(Cologne,Germany)、Maxcyte,Inc.(Rockville,Maryland)、BTX Molecular Delivery Systems(Holliston,MA)およびCopernicus Therapeutics Inc(例えば、米国特許第6,008,336号を参照のこと)によって提供されるものが挙げられる。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号;同第4,946,787号;および同第4,897,355号に記載されており、リポフェクション試薬は、市販されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的なレセプター認識リポフェクションに適したカチオン性脂質および中性脂質としては、Felgner、WO91/17424、WO91/16024の脂質が挙げられる。
【0154】
操作されたCRISPR/Casシステムをコードする核酸を送達するためにRNAウイルスまたはDNAウイルスに基づくシステムの使用では、ウイルスを体内の特定の細胞に標的化し、ウイルスのペイロードを核に輸送するために、高度に発展したプロセスを利用する。ウイルスベクターは、被験体に直接投与され得るか(インビボ)、またはインビトロで細胞を処理するために使用され得、改変された細胞が、被験体に投与される(エキソビボ)。CRISPR/Casシステムを送達するための、ウイルスに基づく従来のシステムとしては、遺伝子導入のための、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクターおよび単純ヘルペスウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。宿主ゲノムへのインテグレーションは、レトロウイルス、レンチウイルスおよびアデノ随伴ウイルス遺伝子導入法を用いたとき可能であり、しばしば、挿入されたトランスジーンが長期間にわたって発現される。さらに、多くの異なる細胞型および標的組織において、高い形質導入効率が観察されている。
【0155】
レトロウイルスの指向性は、外来エンベロープタンパク質を組み込むことによって変化させることができ、標的細胞の潜在的な標的集団が拡大される。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に形質導入することまたは感染することができ、代表的には、高ウイルス価をもたらすことができる、レトロウイルスベクターである。レトロウイルス遺伝子導入システムの選択は、標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、最大6~10kbの外来配列に対するパッケージング能を有するシス作用性の末端反復配列を含む。それらのベクターの複製およびパッケージングにとっては、最小のシス作用性LTRで十分であり、それらのベクターを用いることにより、治療用遺伝子が標的細胞にインテグレートされ、それにより、持続的なトランスジーンの発現が提供される。広く使用されているレトロウイルスベクターとしては、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)およびそれらの組み合わせに基づくベクターが挙げられる。
【0156】
一過性の発現が好ましい用途では、アデノウイルスに基づくシステムが使用され得る。アデノウイルスに基づくベクターは、多くの細胞型において非常に高い形質導入効率が可能であり、細胞分裂を必要としない。そのようなベクターを用いると、高力価および高レベルの発現が得られる。このベクターは、比較的単純な系で大量に生成され得る。アデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターもまた、例えば、核酸およびペプチドをインビトロで生成する際に、ならびにインビボおよびエキソビボ遺伝子治療手順のために、細胞に標的核酸を形質導入するために使用される(例えば、Westら、Virology 160:38-47(1987);米国特許第4,797,368号;WO93/24641;Kotin,Human Gene Therapy 5:793-801(1994);Muzyczka,J.Clin.Invest.94:1351(1994)を参照のこと。組換えAAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号;Tratschinら、Mol.Cell.Biol.5:3251-3260(1985);Tratschinら、Mol.Cell.Biol.4:2072-2081(1984);Hermonat & Muzyczka,PNAS 81:6466-6470(1984);およびSamulskiら、J.Virol.63:03822-3828(1989)をはじめとしたいくつかの刊行物に記載されている。AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6およびAAV8、AAV 8.2、AAV9およびAAV
rh10を含む任意のAAV血清型、ならびに偽型AAV、例えば、AAV2/8、AAV2/5およびAAV2/6を使用することができる。
【0157】
少なくとも6つのウイルスベクターアプローチが、臨床試験における遺伝子導入のために現在利用可能であり、それらは、形質導入物質を作製するために、ヘルパー細胞株に挿入された遺伝子による欠損ベクターの補完を必要とするアプローチを用いる。
【0158】
pLASNおよびMFG-Sは、臨床試験において使用されたレトロウイルスベクターの例である(Dunbarら、Blood 85:3048-305(1995);Kohnら、Nat.Med.1:1017-102(1995);Malechら、PNAS 94:22 12133-12138(1997))。PA317/pLASNは、遺伝子治療治験において使用された最初の治療用ベクターだった(Blaeseら、Science 270:475-480(1995))。50%またはそれを超える形質導入効率が、MFG-Sパッケージベクターにおいて観察された(Ellemら、Immunol Immunother.44(1):10-20(1997);Dranoffら、Hum.Gene Ther.1:111-2(1997)。
【0159】
組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)は、欠損性および非病原性パルボウイルスアデノ随伴タイプ2ウイルスに基づく有望な代替の遺伝子送達系である。すべてのベクターが、AAV145塩基対(bp)末端逆位配列だけをトランスジーン発現カセットに隣接して保持するプラスミドに由来する。効率的な遺伝子導入、および形質導入された細胞のゲノムへのインテグレーションに起因する安定したトランスジーン送達は、このベクター系にとって重要な特徴である(Wagnerら、Lancet 351:9117
1702-3(1998),Kearnsら、Gene Ther.9:748-55(1996))。AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAV9およびAAVrh10を含む他のAAV血清型ならびにそれらのすべてのバリアントもまた、本発明に従って使用され得る。
【0160】
複製欠損性組換えアデノウイルスベクター(Ad)は、高力価で産生され得、いくつかの異なる細胞型に容易に感染し得る。ほとんどのアデノウイルスベクターは、トランスジーンがAd E1a、E1bおよび/またはE3遺伝子に取って代わるように操作され;続いて、その複製欠損ベクターは、欠失した遺伝子機能をトランスで供給するヒト293細胞において増やされる。Adベクターは、インビボにおいて、分化した非分裂細胞、例えば、肝臓、腎臓および筋肉に見られる細胞をはじめとした多様なタイプの組織に形質導入することができる。従来のAdベクターは、大きな運搬能を有する。臨床試験においてAdベクターを使用した例は、筋肉内注射による抗腫瘍免疫化のためのポリヌクレオチド治療に関わるものだった(Stermanら、Hum.Gene Ther.7:1083-9(1998))。臨床試験において遺伝子導入のためにアデノウイルスベクターを使用したさらなる例としては、Roseneckerら、Infection 24:1
5-10(1996);Stermanら、Hum.Gene Ther.9:7 1083-1089(1998);Welshら、Hum.Gene Ther.2:205-18(1995);Alvarezら、Hum.Gene Ther.5:597-613(1997);Topfら、Gene Ther.5:507-513(1998);Stermanら、Hum.Gene Ther.7:1083-1089(1998)が挙げられる。
【0161】
宿主細胞に感染することができるウイルス粒子を形成するために、パッケージング細胞が使用される。そのような細胞としては、アデノウイルスをパッケージングする293細胞、およびレトロウイルスをパッケージングするψ2細胞またはPA317細胞が挙げられる。遺伝子治療において使用されるウイルスベクターは、通常、ウイルス粒子内に核酸ベクターをパッケージングする生成細胞株によって生成される。それらのベクターは、代表的には、パッケージングおよびその後の宿主へのインテグレーション(妥当な場合)のために必要な最小のウイルス配列を含み、他のウイルス配列は、発現されるタンパク質をコードする発現カセットによって置き換えられる。欠損したウイルス機能は、パッケージング細胞株によってトランスで供給される。例えば、遺伝子治療において使用されるAAVベクターは、代表的には、パッケージングおよび宿主ゲノムへのインテグレーションに必要とされる、AAVゲノム由来の末端逆位配列(ITR)を有するだけである。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子、すなわち、repおよびcapをコードするがITR配列を欠くヘルパープラスミドを含む細胞株においてパッケージングされる。また、その細胞株は、ヘルパーとしてのアデノウイルスに感染する。そのヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製およびヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。そのヘルパープラスミドは、ITR配列を欠くことに起因して、かなりの量でパッケージングされることはない。アデノウイルスによる汚染は、例えば、AAVよりもアデノウイルスが感受性である熱処理によって、減少させることができる。
【0162】
多くの遺伝子治療の用途では、遺伝子治療ベクターが、特定の組織タイプに高い特異性の程度で送達されることが望ましい。したがって、ウイルスベクターは、ウイルスの外表面上のウイルスコートタンパク質との融合タンパク質としてリガンドを発現することによって、所与の細胞型に対して特異性を有するように改変され得る。そのリガンドは、目的の細胞型上に存在すると知られているレセプターに対して親和性を有するように選択される。例えば、Hanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:9747-9751(1995)は、モロニーマウス白血病ウイルスが、gp70に融合されたヒトヘレグリンを発現するように改変され得ること、およびその組換えウイルスが、ヒト上皮成長因子レセプターを発現するある特定のヒト乳癌細胞に感染することを報告した。この原理は、他のウイルス-標的細胞対にまで拡大され得、ここで、その標的細胞は、レセプターを発現し、そのウイルスは、細胞表面レセプターに対するリガンドを含む融合タンパク質を発現する。例えば、繊維状ファージは、実質的に任意の選択された細胞レセプターに対して特異的な結合親和性を有する抗体フラグメント(例えば、FABまたはFv)をディスプレイするように操作され得る。上記の説明は、主にウイルスベクターに適用されるものであるが、同じ原理が、非ウイルスベクターにも適用できる。そのようなベクターは、特定の標的細胞による取り込みを好む特定の取り込み配列を含むように操作され得る。
【0163】
遺伝子治療ベクターは、個々の被験体への、代表的には、下記に記載されるような、全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下または頭蓋内注入)または局所的適用による投与によって、インビボにおいて送達され得る。あるいは、ベクターは、エキソビボにおいて細胞、例えば、個々の患者から外植された細胞(例えば、リンパ球、骨髄穿刺液、組織生検材料)またはユニバーサルドナーの造血幹細胞に送達され、それに続き、通常、ベクターを組み込んだ細胞について選択した後、それらの細胞を患者に再移植し得る。
【0164】
また、ヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物を含むベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソームなど)は、インビボにおける細胞の形質導入のために、生物に直接投与され得る。あるいは、裸のDNAが、投与され得る。投与は、ある分子を血液細胞または組織細胞との最終的な接触に導くために通常使用される任意の経路による投与であり、それには、注射、注入、局所的適用およびエレクトロポレーションが含まれるがこれらに限定されない。そのような核酸を投与する好適な方法は、当業者にとって利用可能であり、周知であり、特定の組成物を投与するために1つより多い経路を使用することができるが、特定の経路が、別の経路よりも速効性かつ効果的な反応を提供できることが多い。
【0165】
本明細書中に記載されるポリヌクレオチドの導入に適したベクターには、インテグレートしないレンチウイルスベクター(IDLV)が含まれる。例えば、Oryら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA93:11382-11388;Dullら(1998)J.Virol.72:8463-8471;Zufferyら(1998)J.Virol.72:9873-9880;Follenziら(2000)Nature Genetics 25:217-222;米国特許公開番号2009/054985を参照のこと。
【0166】
薬学的に許容され得るキャリアは、投与される特定の組成物、ならびにその組成物を投与するために使用される特定の方法によって部分的に決定される。したがって、下記に記載されるような、利用可能な薬学的組成物の多種多様の好適な製剤が存在する(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th
ed.,1989を参照のこと)。
【0167】
ヌクレアーゼをコードする配列およびドナー構築物は、同じ系または異なる系を使用して送達され得ることは明らかだろう。例えば、ドナーポリヌクレオチドは、AAVによって運ばれ得るのに対し、1つまたはそれを超えるヌクレアーゼは、mRNAによって運ばれ得る。さらに、異なる系が、同じ経路または異なる経路(筋肉内注射、尾静脈注射、他の静脈内注射、腹腔内投与および/または筋肉内注射)によって、投与され得る。それらのベクターは、同時にまたは任意の連続した順序で送達され得る。
【0168】
エキソビボ投与とインビボ投与の両方のための製剤としては、液体の形態の懸濁液または乳化液が挙げられる。活性成分は、薬学的に許容され得、かつその活性成分と適合性である賦形剤と混合されることが多い。好適な賦形剤としては、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどおよびそれらの組み合わせが挙げられる。さらに、組成物は、少量の助剤(例えば、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、安定化剤、または薬学的組成物の有効性を高める他の試薬)を含み得る。
【0169】
キット
本明細書中に記載される任意のリンカーを含むキットおよび/または上記方法のいずれかを実施するためのキットもまた提供される。それらのキットは、代表的には、本明細書中に記載されるようなリンカー配列(または本明細書中に記載されるようなリンカーをコードするポリヌクレオチド)を含む。そのキットは、リンカーだけを供給してもよいし、最適なDNA結合ドメインおよび/またはヌクレアーゼが容易に挿入され得るベクターを提供してもよい。それらのキットは、細胞、細胞を形質転換するための緩衝液、細胞用の培養液および/またはアッセイを行うための緩衝液も含み得る。代表的には、それらのキットは、そのキットの他の構成要素に付着されたまたはその他の方法で伴う任意の材料(例えば、指示書、包装または広告リーフレット)を含むラベルも含む。
【0170】
用途
開示されるリンカーは、切断ドメインを有する操作されたDNA結合ドメインと連結して、DNAを切断するためのヌクレアーゼを形成するために都合よく使用される。本明細書中に記載されるようなリンカーは、切断のために使用されるヌクレアーゼ対の標的部位が、様々な間隔であるとき、例えば、標的部位が5または6塩基対ではない塩基対だけ離れている(例えば、7、8、9塩基対またはそれを超える塩基対だけ離れている)とき、DNAの切断を可能にする。切断は、ゲノム配列(例えば、細胞性クロマチンにおける目的の領域)を相同であるが同一でない配列で置き換えるため(すなわち、標的化された組換え);ゲノム内の1つまたはそれを超える部位においてDNAを切断し、次いで、その切断部位を非相同末端結合(NHEJ)によってつなげることによってゲノム配列を欠失させるため;相同組換えを促進する細胞性因子についてスクリーニングするため;および/または野生型配列を変異体配列で置き換えるため、もしくは一方の対立遺伝子を異なる対立遺伝子に変換するための、細胞性クロマチンにおける目的の領域(例えば、ゲノム内の、例えば、変異体または野生型の遺伝子内の、所望のまたは所定の部位)での切断であり得る。そのような方法は、例えば、米国特許第7,888,121号(全体として参照により本明細書に援用される)に詳細に記載されている。
【0171】
したがって、開示されるリンカーは、特異的に標的化された切断が望ましい任意の方法のために任意のヌクレアーゼにおいて使用され得、および/または任意のゲノム配列を相同であるが同一でない配列で置き換えるために使用され得る。例えば、変異体ゲノム配列が、その野生型対応物によって置き換えられることにより、例えば、遺伝性疾患、遺伝性障害、癌および自己免疫疾患を処置するための方法が提供され得る。同様に、ある遺伝子の一方の対立遺伝子が、本明細書中に開示される標的化された組換えの方法を用いて、異なる対立遺伝子によって置き換えられ得る。実際に、特定のゲノム配列に依存する任意の病態が、任意の様式で、本明細書中に開示される方法および組成物を用いて、癒され得るか、または軽減され得る。
【0172】
例示的な遺伝性疾患としては、軟骨形成不全、色覚異常、酸性マルターゼ欠損症、アデノシンデアミナーゼ欠損症(OMIM No.102700)、副腎脳白質ジストロフィー、アイカルディ症候群、アルファ-1抗トリプシン欠損症、アルファ-サラセミア、アルツハイマー(Alsheimer’s)病、アンドロゲン不感性症候群、アペール症候群、不整脈源性右室、異形成、毛細血管拡張性運動失調、バース症候群、ベータ-サラセミア、青色ゴムまり様母斑症候群、カナバン病、慢性肉芽腫症(CGD)、猫鳴き症候群、嚢胞性線維症、ダーカム病、外胚葉異形成、ファンコニー貧血、進行性骨化性線維異形成症、脆弱X症候群、ガラクトース血症(galactosemis)、ゴーシェ病、全身性ガングリオシドーシス(例えば、GM1)、ヘモクロマトーシス,ベータ-グロビンの6つ目のコドンにおけるヘモグロビンC変異(HbC)、血友病、ハンチントン病、ハーラー症候群、低ホスファターゼ血症、クラインフェルター(Klinefleter)症候群、クラッベ病、ランガー・ギーディオン症候群、白血球接着不全(LAD,OMIM No.116920)、白質萎縮症、QT延長症候群、マルファン症候群、メビウス症候群、ムコ多糖症(MPS)、爪膝蓋骨症候群、腎性尿崩症、神経線維腫症、ニーマン(Neimann)・ピック病、骨形成不全症、パーキンソン病、ポルフィリン症、プラダー・ウィリー症候群、早老症、プロテウス症候群、網膜芽細胞腫、レット症候群、ルビンシュタイン・テイビ症候群、サンフィリポ症候群、重症複合免疫不全(SCID)、シュバックマン症候群、鎌状赤血球症(鎌状赤血球貧血)、スミス・マゲニス症候群、スティックラー症候群、テイ・サックス病、血小板減少橈骨欠損(TAR)症候群、トレチャー・コリンズ症候群、トリソミー、結節性硬化症、ターナー症候群、尿素サイクル異常症、フォンヒッペル・リンダウ病、ワールデンブルグ症候群、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、ウィスコット・オールドリッチ症候群、X連鎖リンパ球増殖症候群(XLP,OMIM No.308240)およびX連鎖SCIDが挙げられるが、これらに限定されない。
【0173】
標的化されたDNA切断および/または相同組換えによって処置され得るさらなる例示的な疾患としては、後天性免疫不全、リソソーム蓄積症(例えば、ゴーシェ病、GM1、ファブリー病およびテイ・サックス病)、ムコ多糖症(mucopolysaccahidosis)(例えば、ハンター病、ハーラー病)、異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球症、HbC、α-サラセミア、β-サラセミア)および血友病が挙げられる。
【0174】
感染性のまたはインテグレートされたウイルスゲノムの標的化切断は、宿主におけるウイルス感染症を処置するために使用することができる。さらに、ウイルスに対するレセプターをコードする遺伝子の標的化切断は、そのようなレセプターの発現を阻止し、それにより、宿主生物におけるウイルス感染および/またはウイルス拡散を防ぐために使用することができる。ウイルスレセプター(例えば、HIVに対するCCR5およびCXCR4レセプター)をコードする遺伝子の標的化された突然変異誘発は、それらのレセプターをウイルスに結合できなくして、それにより、新たな感染を防ぎ、既存の感染の拡大を阻止するために使用することができる。国際特許公開WO2007/139982を参照のこと。標的化され得るウイルスまたはウイルスレセプターの非限定的な例としては、単純ヘルペスウイルス(HSV)(例えば、HSV-1およびHSV-2)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)およびサイトメガロウイルス(CMV)、HHV6およびHHV7が挙げられる。肝炎ファミリーのウイルスとしては、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、デルタ肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)およびG型肝炎ウイルス(HGV)が挙げられる。他のウイルスまたはそれらのレセプターも標的化され得、それらとしては、ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルスなど);カリシウイルス科;トガウイルス科(例えば、風疹ウイルス、デングウイルスなど);フラビウイルス科;コロナウイルス科;レオウイルス科;ビルナウイルス科;ラブドウイルス科(Rhabodoviridae)(例えば、狂犬病ウイルスなど);フィロウイルス科;パラミクソウイルス科(例えば、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルスなど);オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルスA、BおよびC型など);ブニヤウイルス科;アレナウイルス科;レトロウイルス科;レンチウイルス(例えば、HTLV-I;HTLV-II;HIV-1(HTLV-III、LAV、ARV、hTLRなどとしても知られる)HIV-II);サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、インフルエンザウイルスおよびダニ媒介性脳炎ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。これらのおよび他のウイルスの説明については、例えば、Virology,3rd Edition(W.K.Joklik ed.1988);Fundamental Virology,2nd Edition(B.N.Fields and D.M.Knipe,eds.1991)を参照のこと。HIVに対するレセプターとしては、例えば、CCR-5およびCXCR-4が挙げられる。
【0175】
開示されるリンカーを含むヌクレアーゼは、1つまたはそれを超えるゲノム配列の不活性化(部分的または完全)のためにも使用され得る。不活性化は、例えば、単一の切断事象によって、切断後の非相同末端結合によって、2つの部位における切断の後にそれらの2つの切断部位の間の配列を欠失させるようにつなぐことによって、コード領域内へのミスセンスコドンもしくは非センスコドンの標的化された組換えによって、遺伝子もしくは制御領域を破壊するような、その遺伝子内もしくはその制御領域内への無関係な配列(すなわち、「スタッファー」配列)の標的化された組換えによって、またはイントロンへのスプライス受容配列の組換えを標的化して転写物のミススプライシングを引き起こすことによって、達成され得る。
【0176】
ヌクレアーゼによって媒介される内因性遺伝子の不活性化(例えば、ノックアウト)は、例えば、アポトーシスまたはタンパク質産生(例えば、フコシル化などの翻訳後修飾)に関わる遺伝子が欠損した細胞株を作製するために使用され得る。ZFNによって媒介される不活性化は、トランスジェニック生物(例えば、植物、げっ歯類およびウサギ)を作出するためにも使用され得る。
【0177】
さらに、ヌクレアーゼは、対をなす2つのハーフ部位の間のDNA配列に対して特異性を有するとみられないので、本明細書中に記載されるようなリンカーを有するヌクレアーゼは、得られる一本鎖オーバーハングが任意の所望の配列を有するようにDNAを切断するようにデザインされ得る。特に、本明細書中に記載されるようなリンカーは、開始時の配列に対して、これらの一本鎖オーバーハングのサイズと位置の両方に影響するようにデザインされ得る。したがって、本明細書中に記載されるようなリンカーは、ヌクレアーゼ対の1つまたはそれを超えるヌクレアーゼに組み込まれたとき、切断後に、より均一な末端をもたらし得る。したがって、本明細書中に記載されるリンカーは、ヌクレアーゼで切断されたDNAをより効率的にクローニングするためにも使用され得、これは、バイオテクノロジーおよび基礎科学の多くの領域において広く適用できる。
【0178】
したがって、本明細書中に記載されるリンカーは、遺伝子改変の用途におけるヌクレアーゼ媒介性切断の改善に対して広範な有用性を提供する。本明細書中に記載されるようなリンカーは、部位特異的突然変異誘発、または標準的なクローニング、合成生物学のための大きなゲノムの構築、大きな配列の新しいタイプのRFLP解析における多くの用途において使用されるサブクローニングによって、任意の既存のヌクレアーゼに容易に組み込まれ得るか、または極端に大きいDNA配列が関わる新しいタイプのクローニングを可能にさえし得る。堅固なリンカーを有するヌクレアーゼの潜在的な特性は、DNAコンピューティングなどの用途においても理想的であり得る。
【0179】
以下の実施例は、ヌクレアーゼが1つまたはそれを超えるZFNを含む本開示の例示的な実施形態に関する。これは、単に例示の目的のためであること、ならびに他のヌクレアーゼ、例えば、TALEN、操作されたDNA結合ドメインを有するホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)、および/または操作されたホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)DNA結合ドメインの天然に存在するものと異種切断ドメインとの融合物、ならびに操作された一本鎖ガイドRNAを使用するTtAgoおよびCRISPR/Casなどのヌクレアーゼシステムを使用することができることが、認識されるだろう。
【実施例0180】
実施例1:堅固なリンカーを有するZFNのデザインおよび構築
ヒトCCR5遺伝子座を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ構築物を、米国特許第7,951,925号に開示されているように調製した。「野生型構築物」は、「ZC」リンカーを含んだ。
【0181】
さらに、MELAS(ミトコンドリアミオパシー、脳症、乳酸アシドーシスおよび脳卒中)を引き起こす変異を含むヒトミトコンドリア内の配列を標的とするZFN対を、米国特許公開番号20090305419に記載されているように、L7aまたはL6aリンカーを含むように調製した。
【0182】
実施例2:ZFN活性
A.CCR5を標的とするZFN
CCR5を標的とするZFN SBS#8266をコードする構築物を、まず、米国特許第8,563,314号に記載されているような酵母Mel-Iレポーターシステムにおいて試験した。特に、3、4、5、6、7または8bp離れたSBS#8266標的部位の逆方向反復を有する酵母株を使用することにより、構築物を特徴づけた。
【0183】
野生型ZFN(標準的なLRGSQLVKSELEEKKS(配列番号301)リンカーを有する)は、5bpおよび6bpのハーフ部位間隔で強い活性を示した。さらに、L6aリンカー配列を有する構築物(
図2)は、6p間隔において活性を示し、L7aリンカー配列は、7bpおよび8bp間隔で有意な活性を示した。
【0184】
MELASを標的とするZFNのインビトロにおけるDNA結合および切断活性もアッセイしたところ、堅固なL7aリンカーを含むZFN対は、それらの標的を切断した。
【0185】
最後に、L7aリンカーを含むCCR5 ZFNを、ハーフ部位間に様々な数の塩基対を含む細胞株において、内因性ヒトCCR5遺伝子座におけるNHEJ活性について試験した。結果を表1に示す。
【表1】
【0186】
予想どおり、野生型ZFNは、5または6bp離れたハーフ部位においてのみ高い活性を示した。しかしながら、堅固なL7aリンカーを含む、CCR5を標的とするZFNは、7bp間隔で高い活性を示し、8bp間隔で注目すべき活性を示した。7bp間隔でのL7a構築物の効率が、5bp間隔での野生型ZFNの効率と非常に似ていることに注意するべきである(野生型細胞株またはハーフ部位間に5bpの異なる配列を有する細胞株において)。
【0187】
さらに、リンカーの組み合わせも、CCR5を標的とするZFN対において試験した。簡潔には、CCR5 ZFN結合部位間に4~8塩基対(bp)のギャップを有するようにK562細胞を操作した。異なるリンカーの組み合わせ(Wt/L7a)を有する2つのCCR5 ZFNを、Amaxa ShuttleによってこれらのK562細胞にトランスフェクトした。サンプルをトランスフェクションの3日後に回収し、CELl-Iアッセイ解析に供した。本質的には製造者の指示書(Trangenomic SURVEYOR(商標))に従って、CEL-Iミスマッチアッセイを行った。
【0188】
結果から、Wt/WtリンカーZFNは、5bpギャップの標的配列で最も高い活性を有し;L7a/L7aリンカーZFNは、7bpギャップの配列で最も高い活性を有し、Wt/L7aまたはL7a/Wtリンカーの組み合わせを有するZFNは、6bpギャップの配列で最も高い活性を有したことが示される。
【0189】
B.ROSAを標的とするZFN
6bpギャップを有する標的部位を使用し、Amaxa Shuttleによって、mROSAを標的とするZFNの組み合わせ(例えば、米国特許公開番号2007/0134796を参照のこと)でNeuro2A細胞をトランスフェクトした。それらの対の一方のZFNは、野生型リンカー(「ZC」)を含み、他方は、野生型リンカーまたは本明細書中に記載されるようなL7aリンカーを含んだ。上に記載されたように、サンプルをトランスフェクションの3日後に回収し、CEL-I解析に供した。
【0190】
下記の表2に示されるように、ZFN対における野生型(WT)/L7aリンカーは、6bpギャップで活性である。
【表2】
【0191】
C.ラットIgM
6bpギャップを有する標的部位を使用し、Amaxa Shuttleによって、ラットIgMを標的とするZFNの組み合わせ(例えば、米国公開番号20100218264を参照のこと)でラットC6細胞をトランスフェクトした。それらの対の一方のZFNは、野生型リンカー(「ZC」)を含み、他方は、野生型リンカーまたはL7aリンカーを含んだ。上記および米国特許公開番号2007/0134796に記載されているように、サンプルをトランスフェクションの9日後に回収し、CEL-I解析に供した。
【0192】
ZCリンカーを含むZFN対を含む細胞が、1.93%のNHEJを示したのに対して、L7aリンカーを含むZFN対を含む細胞は、2.43%のNHEJを示した。さらに、L7aを含むリンカーZFN対を使用して、ラットES細胞に注入した(米国公開番号20100218264に記載されているように)ところ、これらのES細胞は、ホモ接合のIgM遺伝子ノックアウトラット子孫の作出に成功した。
【0193】
実施例3:さらなるリンカーのデザイン
さらなるリンカーを、Barbasら(2010)J.Mol.Biol.400:96-107から改変された細菌選択系から作製した。簡潔には、ZFNをコードするプラスミド(ZFNの発現がアラビノース誘導性プロモーターによって駆動される)、およびT7プロモーターから細菌ccdBトキシンを発現し、ZFN標的部位を含むプラスミドで細菌を形質転換した。
図2を参照のこと。この系は、約10
8という複雑度および高ストリンジェンシーオプション(生存に必要な>100切断事象)を有する非常に大きなライブラリーを検索する能力を可能にした。
【0194】
発現されたZFNは、pToxを切断して、pToxの分解をもたらし;次いで、細胞死滅のためにccdBトキシンのスイッチをオンにし;生存したもの(ZFNによって切断されたpTox)を増幅し、リンカーをコードする遺伝子を、次のサイクルのために新しいプラスミドに再クローニングした。
図2Aおよび2Bを参照のこと。それらのZFNは、完全にランダム化された8~17アミノ酸長のリンカーをジンクフィンガータンパク質ドメインと切断(FokI)ドメインとの間に含んだ。
図2Aを参照のこと。
【0195】
操作された切断ドメインならびにカノニカル(C2H2)および非カノニカルなフィンガー構造(米国特許公開番号20080182332を参照のこと)が使用され得;この研究の場合、野生型FokIドメイン(ホモ二量体を形成する)およびCCHCフィンガー構造を使用した。5~16塩基対のZFN標的配列間のギャップにおいてリンカーを選択した。
【0196】
非常に過剰量の不活性なpZFNから活性なpZFNを選択するために、以下の工程を行った:(i)高複雑度DNAライブラリーを構築し(
図2Aを参照のこと)、(ii)プラスミドDNAライブラリーを、pTox_8196-bsを有する細胞に形質転換し;(iii)2時間にわたってZFNを発現させ;(iv)一晩にわたってccdBを誘導し;(v)プラスミドをミニプレップし、リンカーDNAを新しいpZFNにサブクローニングし;(ii)~(v)をさらに7サイクル繰り返した。
【0197】
上記選択から得られた例示的な機能性リンカーを
図4に示す。示されているギャップにおいて切断されたリンカーの長さの分布の要旨を
図5に示す。
【0198】
実施例4:活性の検証および可搬性研究
ヘテロ二量体標的部位(米国特許第7,951,925号に記載されているような8166および8266ZFN)間のギャップを5~16塩基対(例えば、5、6、7、8、15または16bp)の新しいギャップで置き換えるようにCCR5遺伝子座において操作された6つのバリアントK562細胞株において、選択された候補(リンカーを有するZFN)を内因性標的の改変についてスクリーニングした。リンカーカセット(約80/選択=合計480)を、CCHC構造を有するCCR5 ZFN発現ベクターにおいてL0リンカーの代わりに使用し、構築物を適切なK562細胞にトランスフェクトした。
図6を参照のこと。上記および米国特許公開番号2007/0134796に記載されているように、Cel1アッセイを使用して活性を評価した。
【0199】
図8は、示されている標的ギャップを有する選択されたリンカーを用いて得られた結果の要旨を示している。
図9Aおよび9Bは、標的部位間の5~8塩基対ギャップに対して最も活性なリンカーを示している。「Indels」とは、ZFN媒介性改変の後(例えば、切断およびNHEJ修復の後)の、標的配列内の通常は小さい挿入または欠失のことを指す。種々のギャップ間隔での活性についてもリンカーを試験した。
図9Cは、示されているリンカーに対するギャップの優先度を示している。
【0200】
可搬性研究に向けて、すべての試験セットに対して一貫した高いデザインスコアを保証するために、大きな標的遺伝子をクローニングするためおよびこの大きな標的遺伝子を用いて試験するために、4つのL8リンカーを選択した。ベクターデザインの概略図を
図10Aに示す。合計92個のZFNに対するL0(5、6bpギャップ)、L7a(7bpギャップ)およびL8(8bpギャップ)リンカーの各々に対して、32個のZFNセットを作製した。L8リンカーについては
図7を参照のこと。上におよび米国特許公開番号2007/0134796に記載されているように、Cel-1アッセイによって活性を検証した。
【0201】
図10Bは、可搬性研究の結果の要旨を示しており、試験された多くのZFNが活性だったことを証明している。選択されたリンカーの活性だった数および改変のレベルは、5または6(L0)または7bp間隔(L7a)において、以前に使用されたリンカーに匹敵した。
【0202】
L8cリンカーもさらに改変した。異なる標的を選択し、8対のC2H2 ZFNを使用して、それらの特異的な標的に対する8bp(A、B、C、Dと呼ばれる)および9bp(E、F、GおよびHと呼ばれる)ギャップに対する活性について選択した。ZFN対におけるリンカーを、4つの異なるリンカータイプ(L8n、L8o、L8mおよびL8pと呼ばれる)で変化させ、それらの対を、標的部位に対する活性について選択した(ここで、ZFN結合部位間のギャップは、8または9bp離れていた)。さらに、比較のために、元のL8cリンカーをそれらの対において使用することにより、wt Fok1ヌクレアーゼドメインまたは強化された偏向ヘテロ二量体Fok1ヌクレアーゼドメイン(eHiFi)をつないだ。GFP発現ベクターをトランスフェクションコントロールとして使用した。元のL8cリンカーおよび4つの改変されたリンカーのペプチド配列を下に示す(リンカー配列には下線が引かれている):
群1:L8c[ZFP]HAQRC-NGSYAPMPPLALASPELEEKKSEL[wt FokI](配列番号229)
群2:L8c[ZFP]HAQRC-NGSYAPMPPLALASPELEEKKSEL[eHiFi FokI](配列番号229)
群3:L8n[ZFP]HTKIH-NGSYAPMPPLALASPELEEKKSEL[eHiFi FokI](配列番号230)
群4:L8o[ZFP]HTKIH-GGSYAPMPPLALASPELEEKKSEL[eHiFi FokI](配列番号231)
群5:L8m[ZFP]HTKIH--GSYAPMPPLALASPELEEKKSEL[eHiFi FokI](配列番号232)
群6:L8p[ZFP]HTKIHLRGSYAPMPPLALASPELEEKKSEL[eHiFi FokI](配列番号233)
【0203】
結果(
図11Aおよび11Bを参照のこと)は、L8cタイプリンカーが、CCHCとC2H2の両方のZFPバックグラウンドにおいて十分に機能することを証明した。さらに、L8pリンカーは、8bpギャップと9bpギャップの両方で十分に機能した。
【0204】
実施例5:さらなるリンカー研究
「L7a」リンカーは、C2H2とCCHCの両方のZFP構成において7bpギャップ部位を標的にするためにZFP-FokIリンカーとして現在使用されている。
図9Aおよび9Bに示されているリンカーが、CCHC ZFP構成の中に同定されたので、7bpギャップ部位を標的にするZFPのC2H2構成においてさらなる研究を行った。
【0205】
図9Aに示されているような4つのリンカーペプチド配列(L7-1、L7-3、L8aおよびL8c)を、これらの研究のためにまず選択し、それらは、以下のように括弧内に示されているような1つまたはそれを超える任意選択のの残基を伴うおよび伴わないこれらのリンカーを含む:(H)LPKPANPFPLD(配列番号199);(D)PNSPISRARPLNPHP(配列番号202);(N)GICPPPRPRTSPP(配列番号194);および(N)GSYAPMPPLALASP(配列番号196)。
【0206】
7bpギャップ部位を標的にするZFP対を使用して、上記リンカーを試験した。このZFN対を、CCHCまたはC2H2構成の状況において、様々なリンカー配列を用いて操作し、野生型(「wt」)ドメインまたは強化された偏向ヘテロ二量体FokI(「eHiFi」)ドメインに融合した。例示的なeHiFiドメインについては、例えば、米国特許第8,623,618号;同第7,888,121号;同第7,914,796号;および同第8,034,598号ならびに米国公開番号20110201055を参照のこと。これらのZFN対をK562細胞において試験し、それらのヌクレアーゼ切断活性をCel1アッセイおよびMiSeqシーケンシングによって計測した。
【0207】
図12に示されているような結果から、(1)これらのリンカーが、野生型の構成とeHiFi FokIの構成の両方において有効であること(群1および群2の比較);(2)これらのリンカーが、C3HとC2H2の両方の構成の状況において有効であること(群2および群3の比較);および(3)各リンカー(群3に示されている)における1つのアミノ酸残基の除去(N末端から)により、C末端残基を有するリンカーと比べて、およびほとんどの場合、現在使用されているL7aリンカー(
図12におけるサンプル#17)と比べて、有意に高い活性がもたらされることが証明された。
【0208】
続いて、最も活性な2つの7bpリンカー配列(矢印で示されている「L7c3」および「L8c3」)を、ZFP末端のC末端が従来の「HTKIHLRGS」ペプチド配列を有するように改変し、それにより、他のすべてのC2H2 ZFNと同じプロセスを用いてZFNの組み立てが可能になる。
【0209】
改変されたリンカーが、7bpギャップ部位に対して従来の「L7a」リンカーと同じまたはそれより高い活性を有することを保証するために、「L7c3」と「L8c3」の両方に対して4つのリンカーバリアントをデザインし、2つのZFN対に操作した(
図13を参照のこと)。これらのZFNをヒトCD34細胞において試験し、それらのNHEJ活性をMiSeq解析によって計測した。
【0210】
図13に示されているように、試験されたすべてのバリアントが活性であったが、それらの多くは、従来の「L7a」を有するZFNよりも高い活性を示し、「L7c5」および「L7e4」バリアントで見られたような最も高い活性を含んでいた。
【0211】
実施例6:ZFP-FokIジャンクション配列を変更することによるZFN活性の最適化
ZFPとFokIヌクレアーゼドメインとの間の従来のジャンクション配列は、「---HTKIHLRGSQLVKSELEEK---」(配列番号259)である。ZFN活性は、2つのZFP結合部位間のギャップの長さおよびその結合部位に対するZFPの親和性をはじめとした多くの因子によって影響され得るので、本発明者らは、ZFN対の切断効率が、その長さおよび/またはジャンクション部位の組成を変更することによって調節されて、その2つのFokI切断ドメイン間のヘテロ二量体相互作用が最適化され得るかを試験した。
図14を参照のこと。C2H2またはC3H構造のZFNを使用することができる。
【0212】
特に、一連の24個のジャンクションバリアントをデザインし、6bpギャップ部位に対するZFN標的対に操作した。
図15を参照のこと。いくつかのジャンクションバリアントは、従来のものと同じ長さを有するが、アミノ酸残基が異なる(置換されている)。さらに、これらのバリアントは、さらなるアミノ酸を含むか、またはいくつかのアミノ酸が除去されている(
図15に示されているように)。
【0213】
これらのZFNを、以下の方法でK562細胞において試験した:(1)24個の左ZFNバリアントを、従来のリンカーを含む右ZFNと対にし、(b)24個の右ZFNバリアントを、従来のリンカーを含む左ZFNと対にし、(c)24個の左ZFNバリアントを、右ZFNバリアントの各々と対にした。ZFNのNHEJ活性をMiSeqによって計測した。
【0214】
図15に示されているように、ZFN活性は、様々なジャンクションリンカーを含むZFNを対にすることによって、影響を受けた。著しいことに、改変されたジャンクション領域の多くは、従来のジャンクション配列の両方を含むZFN対と比較したとき、有意により高いNHEJ活性を示した。
【0215】
異なる部位を標的にするZFN対を使用して、選択されたジャンクション配列を試験した。ジャンクションバリアントを有する2つのZFN対を、ヒトHepG2細胞にトランスフェクトし、それらのNHEJ活性をMiSeqによって計測した。
図16に示されているようなデータから、ZFN活性が、ZFP-FokIジャンクション配列を調節することによってさらに改善され得ることが再度証明された。
【0216】
本明細書中で言及されたすべての特許、特許出願および刊行物は、全体として参照により本明細書に援用される。
【0217】
開示は、理解を明確にするという目的のために例証および例示という意図でいくらか詳細に提供されてきたが、本開示の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更および改変が実施され得ることは、当業者には明らかだろう。したがって、前述の記載および例は、限定と解釈されるべきでない。