(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086934
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
A01B 33/12 20060101AFI20230615BHJP
A01B 35/04 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
A01B33/12 B
A01B35/04 D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073899
(22)【出願日】2023-04-28
(62)【分割の表示】P 2021106481の分割
【原出願日】2015-09-04
(31)【優先権主張番号】P 2015159703
(32)【優先日】2015-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】岡本 孝志
(72)【発明者】
【氏名】阿部 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤原 昇
(72)【発明者】
【氏名】小澤 英樹
(72)【発明者】
【氏名】中谷 公紀
(72)【発明者】
【氏名】滝口 貴智
(72)【発明者】
【氏名】藤原 伸明
(57)【要約】
【課題】安定したアシスト動作が可能な作業機を提供すること。
【解決手段】作業機は、フレームに固定された第2の支点とエプロンに固定された第3の支点との間に設けられ、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させることによって前記エプロンを跳ね上げる方向に力を作用させる、ガススプリングを含むアシスト機構を具備し、前記アシスト機構は、前記ガススプリングがその中に位置する同一軸上で移動可能な第1の筒状部材と第2の筒状部材とを有し、前記第1の筒状部材には前記第2の支点と前記ガススプリングの一端とが接続され、前記第2の筒状部材には前記ガススプリングの他端が接続され、前記エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームの後方に設けられ、前記フレームに固定された第1の支点を中心にして下降及び跳ね上げ回動可能であり、その重心が前記第1の支点よりも後方にあるエプロンと、
前記エプロンの前方に配置された耕うんロータと、
前記フレームに固定された第2の支点と前記エプロンに固定された第3の支点との間に設けられ、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させることによって前記エプロンを跳ね上げる方向に力を作用させる、ガススプリングを含むアシスト機構と、
を具備し、
前記アシスト機構は、前記ガススプリングがその中に位置する同一軸上で移動可能な第1の筒状部材と第2の筒状部材とを有し、
前記第1の筒状部材には前記第2の支点と前記ガススプリングの一端とが接続され、前記第2の筒状部材には前記ガススプリングの他端が接続され、
前記エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少する、作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業機に関する。特に、走行機体の後部に装着され、耕うんロータを回転させながら走行機体の前進走行に伴って進行して圃場を耕うんするロータリ作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなロータリ作業機は走行機体と接続されるフレームと、フレームの後方に設けられ、フレームに固定された支点(第1の支点)を中心にして下降及び跳ね上げ回動可能なエプロンを有している。エプロンの前面部分(耕うんロータに面した側)や耕うんロータに付着した土を掻き落としたり、耕うんロータに設けられた耕うん爪を取り替えたりする場合には、エプロンを跳ね上げた状態に保持する。
【0003】
しかしながら、エプロンはそれなりの重量があり、その重心が支点(第1の支点)よりも後方にあることから、作業者にとってエプロンを跳ね上げる作業は重労働である。
【0004】
特許文献1に記載されているように、エプロンを跳ね上げる作業を容易にするために、ガススプリングの弾性力を利用して跳ね上げる力を補助するエプロン跳ね上げアシスト機構(補助機構)が提案されている。この特許文献1記載のアシスト機構(補助機構)は、ロータリ作業機の作業機本体の幅方向端部に設けられた側部カバーとエプロンの幅方向端部との間に設けられたガススプリングを有し、ガススプリングのロッド側端部は側部カバーに設けられた案内孔に沿って上下方向に移動可能に支持されている。特許文献2,3記載のアシスト機構(補助機構)は、耕うんロータの上方を覆うシールドカバーの上方にアシスト機構(補助機構)を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-278757号公報
【特許文献2】特開2010-63367号公報
【特許文献3】特開2014-97042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のアシスト機構(補助機構)は、エプロンの幅方向端部に設けられているため、作業中にガススプリングが畦や側壁等の障害物に接触して損傷する恐れがある。
【0007】
また、特許文献2記載のアシスト機構(補助機構)は、ガススプリングのピストンロッドが露出しており、特許文献3記載のアシスト機構(補助機構)は、ガススプリングを横にしたままで用いるため、いずれもガススプリングから窒素ガスが漏洩する可能性があり、耐久性をさらに向上する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態による作業機は、走行機体の後部に装着され、耕うんロータを回転させながら走行機体の前進走行に伴って進行して圃場を耕うんする作業機において、作業機は走行機体と接続されるフレーム(主フレームやシールドカバーを含む概念である。以下同じ。)と、フレームの後方に設けられ、フレームに固定された第1の支点を中心にして下降及び跳ね上げ回動可能であり、その重心が支点よりも後方にあるエプロンと、フレームに固定された第2の支点とエプロンに固定された第3の支点との間に設けられ、第2の支点と第3の支点との距離を変化させる力を作用させることによってエプロンを跳ね上げる方向に力を作用させる、ガススプリングを含むアシスト機構とを具備し、ガススプリングは、シリンダーと、シリンダーの内部に挿入されたピストンと、ピストンから延長されるピストンロッドと、ピストンロッドを安定させるためのロッドガイドと、シリンダーとピストンとで区画されるシリンダー内部を移動可能なフリーピストンとを有し、シリンダー内部のうちフリーピストンとピストンとの間及びピストンとロッドガイドとの間にはそれぞれオイルが充填され、アシスト機構は、さらに、同一軸上で移動可能な第1の筒状部材と第2の筒状部材とを有し、第1の筒状部材には第2の支点とガススプリングの一端とが接続され、第2の筒状部材には第3の支点とガススプリングの他端とが接続されることを特徴とする。
【0009】
上記作業機において、アシスト機構は、さらに、同一軸上で移動可能な第1の筒状部材と第2の筒状部材とを有し、第1の筒状部材には第2の支点とガススプリングの一端とが接続され、第2の筒状部材には第3の支点とガススプリングの他端とが接続されることが望ましい。また、第1の筒状部材又は第2の筒状部材のエプロン側の一端に、下方に向けた開口が存在してもよい。さらに、第1の筒状部材と第2の筒状部材との間に樹脂カラーを介在させてもよい。
【0010】
上記作業機において、ガススプリングは、エプロンが下降した地点において、収縮するよう構成することが望ましい。
【0011】
上記作業機において、アシスト機構は、エプロンが下降した地点において、第2の支点と第3の支点との距離を変化させる力を作用させないようにするロック機構を有することが望ましい。ロック機構は第2の筒状部材に設けられた回動可能な制止レバーを有し、制止レバーが第2の筒状部材の一端を閉じることによって第2の筒状部材から第1の筒状部材が突出することを防止し、制止レバーが第2の筒状部材の一端を開くことによって第2の筒状部材から第1の筒状部材が突出することを許容するよう構成してもよい。また、ロック機構は、制止レバーを第2の筒状部材の一端を閉じる方向に回動させる手段と、制止レバーを第2の筒状部材の一端を開く位置に一時的に固定する手段とを有してもよい。
【0012】
上記作業機において、アシスト機構は複数のガススプリングを含んでもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の作業機によれば、安定したアシスト動作が可能であり、ガススプリングの劣化も防止した作業機を提供することができる。また、エプロンが下降状態にあるときに、いきなりエプロンが跳ね上がらないようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例に係る作業機の背面図である。
【
図2】本発明の実施例に係る作業機の耕うん時の側面図である。
【
図3】本発明の実施例に係る作業機のエプロン跳ね上げ時の側面図である。
【
図4】本発明の実施例に係る作業機の跳ね上げアシスト機構の背面図である。
【
図5】本発明の実施例に係る作業機の跳ね上げアシスト機構の耕うん時の側面図である。
【
図6】本発明の実施例に係る作業機の跳ね上げアシスト機構のエプロン跳ね上げ時の側面図である。
【
図7】本発明の実施例に係る作業機の跳ね上げアシスト機構の効果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の作業機の実施例について説明する。但し、本発明の作業機は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、説明の便宜上、上方(上部)又は下方(下部)という語句を用いて説明するが、上方(上部)又は下方(下部)はそれぞれ作業機の作業状態における向きを示す。また、同様に、前方(前側)又は後方(後側)という語句を用いて説明するが、前方(前側)は作業機に対する作業機を牽引する走行機体の方向を示し、後方(後側)は走行機体に対する作業機の方向を示す。
【0016】
〈実施例〉
図1から
図6を用いて、本発明の実施例に係る作業機の全体構成及び跳ね上げアシスト機構(補助機構)の構成について説明する。本発明の実施例に係る作業機は、耕うん作業機や代かき機のように、例えばトラクタなどの走行機体の後部に連結され、作業爪を回転させることで土壌を耕し又は撹拌する作業機である。実施例では、作業機の一例として耕うん作業機を用いて本発明の構成を説明するが、本発明に係る作業機は代かき機であってもよく、耕うん作業機又は代かき機以外の作業機であってもよい。
【0017】
[作業機100の構成]
図1は、本発明の実施例に係る作業機の背面図である。
図2は、本発明の実施例に係る作業機の耕うん時の側面図である。
図3は、本発明の実施例に係る作業機のエプロン跳ね上げ時の側面図である。実施例に係る作業機100は、フレーム(主フレーム110とシールドカバー120とを含む)、耕うんロータ102、エプロン130等から構成されている。
【0018】
主フレーム110は、トラクタ等の走行機体と接続される。主フレーム110は円筒形であり、内部に動力伝達軸を有する。トラクタ等の走行機体から回転動力を得て、これを進行方向左右へと回転軸の向きを代える。主フレーム110内の動力伝達軸は作業機100側部のチェーンケース105に接続され、このチェーンケース105内のチェーン伝達機構によって、耕うんロータ102の回転軸104に動力が伝達される。
【0019】
耕うんロータ102は回転軸104と、この回転軸104に設けられた多数の耕うん爪103とから構成される。
図1に示されているように、多数の耕うん爪103は進行方向右又は左に曲げられており、個々の耕うん爪103が土を掘り起こす領域(幅)は隣接する爪103との間で重なりあいがある。この耕うんロータ102は進行方向前方から後方に向かって土をかき上げるよう回転する。その結果エプロン130の内側には土が付着する。
【0020】
エプロン130は、シールドカバー120に固定された支点140を中心にして下降及び跳ね上げ回動可能である。エプロン130の重心は前記支点よりも後方にある。したがって、エプロン130は自重により下降しようとする。エプロン130の先端にはステンレスの整地板131が溶接されている。整地板131はエプロン130の内側から外側に向かってループを描くように構成されている。この整地板131が耕うんロータ102によって掘り起こされた圃場を平坦にする。整地板131の両端には可動式の延長整地板132が設けられている。延長整地板132を開くことによって整地板131とともに広い幅範囲を整地することが可能になる。主フレーム110に設けられた台座とエプロン130との間にコンプレッションロッド142が備えられている。コンプレッションロッド142は、エプロン130が下降状態にあるときに、エプロン130及び整地板131を圃場に一定の圧力で押さえつける働きをする。コンプレッションロッド142が作用する力の大きさは、作業者の操作によって調整可能である。エプロン130の内側には土が付着する場合があるため、ゴムシートでエプロン内側が覆われている。また、シールドカバーの内側もゴムシートで覆われている。
【0021】
実施例においては、上記構成に加えて、さらに、エプロン跳ね上げアシスト機構(補助機構)141が備えられている。エプロン跳ね上げアシスト機構(補助機構)141は、主フレーム110に設けられた台座111による支点151と、エプロン130に設けられた台座134による支点152との間に設けられ、支点151と支点152の距離を変化させる力を作用させる。具体的には、この両者の距離を縮めることによってエプロン130を跳ね上げる方向に力を作用させる。このエプロン跳ね上げアシスト機構141にはロック機構153が備えられている。このロック機構153はエプロン130が下降した状態(
図2)において、支点151と支点152との距離を縮める方向の力を作用させないようにする。
【0022】
[跳ね上げアシスト機構の構成]
図4は本発明の実施例に係る作業機の跳ね上げアシスト機構141の背面図である。
図5は本発明の実施例に係る作業機の跳ね上げアシスト機構141の耕うん時の側面図である。
図6は本発明の実施例に係る作業機の跳ね上げアシスト機構141のエプロン跳ね上げ時の側面図である。実施例に係る作業機の跳ね上げアシスト機構141は、内側筒状部材210、外側筒状部材220と、その中に位置するガススプリング250等から構成されている。
【0023】
[ガススプリングの構成]
ガススプリング250は、内側に空間を包摂する円筒形のシリンダー251と、シリンダー251の内部に挿入されたピストン256と、このピストン256から延長されるピストンロッド252と、フリーピストン257とから構成されている。ピストンロッド252の先端にはブラケット253が、シリンダー251の先端にはブラケット254が設けられている。ピストンロッド252とシリンダー251の他端近傍には、ピストンロッド252を安定させるためのロッドガイド258が設けられている。フリーピストン257は、シリンダー251とピストン256とで区画されるシリンダー内部を移動可能である。フリーピストンとシリンダー251の内壁との間には可塑性樹脂からなるOリングがはめ込まれている。フリーピストン257とシリンダー先端との間の第1部屋261(
図5、
図6においてはフリーピストン257の右側の部屋)には窒素が充填されている。この窒素の体積が変化することによって、ガススプリング250はスプリングのように伸び縮みし、ブラケット253、254の間隔が小さい場合はこれを大きくする方向で力を作用させる。ガススプリング250内部のピストン256とフリーピストン257との間の第2部屋260(
図5、
図6においてはフリーピストン257の左側の部屋)及びピストン256とロッドガイド258との間の第3部屋280(
図5、
図6においてはピストン256の左側の部屋)にはオイルが充填されている。このオイルが窒素のガススプリング250外への漏洩を防ぐ。ピストン256には、ガススプリング250の伸長方向に沿ってオリフィス(孔)259が形成されている。第2部屋260と第3部屋280に充填されたオイルは、ピストン256に形成されたオリフィス259を介して相互に移動する。具体的には、ピストンロッド252がシリンダー251の外側に向かって伸長するに従って、第3部屋280内のオイルがオリフィス259を介して第2部屋260に移動し、ピストン256とフリーピストン257との間隔が広くなる。
【0024】
[内側及び外側筒状部材の組み合わせの構成]
跳ね上げアシスト機構141は、ガススプリング250の伸長方向の力を圧縮方向の力に変換するため、内側筒状部材210と外側筒状部材220とを組み合わせている。内側筒状部材210と外側筒状部材220とは、同一軸上で移動可能である。両者の間には図示しない樹脂製の筒状のカラー(樹脂カラー)が設けられており、内側筒状部材210と外側筒状部材220との摺動による異音の発生を防止している。ガススプリング250のブラケット254は外側筒状部材220とピン271によって接続されている。ピン271は内側筒状部材210に設けられた長形穴内部において前後に動く。ガススプリング250のブラケット253は内側筒状部材210とピン270によって接続されている。支点151は内側筒状部材の一端に設けられ、支点152は外側筒状部材に設けられている。この結果、ガススプリング250が伸長する方向に力を作用させると、これとは逆に、アシスト機構は支点151と支点152の間隔が圧縮する方向に力を作用させる。この結果、エプロン130を跳ね上げる方向に回動させる。
【0025】
上記構成を前提にすれば、アシスト機構141内部のガススプリング250は、地平と略平行(若干の傾きはあるにせよ)に配置され、垂直に配置されるわけではない。一般的なガススプリングにおいては、ピストンロッドをシリンダーよりも下方に配置することが、ガスの漏洩とガススプリングの劣化の防止の観点から望ましいが、実施例によれば、上記したガススプリングを使用しているため、ガススプリングが地平と略平行であってもガスの漏洩とガススプリングの劣化を抑制することができる。
【0026】
[ロック機構の構成]
エプロン跳ね上げアシスト機構141にはロック機構153が備えられている。このロック機構153はエプロン130が下降した状態において、支点151と支点152との距離を縮める方向の力を作用させないようにする。この結果、耕うん時にアシスト機構141が働いてエプロンが跳ね上がらない。ロック機構153は
図4に示すとおり、外側筒状部材220に固定されており、支点231を中心として回動するロックバー230とこれから延長されるレバー240と、このロックバー230の回動を規制する回動規制板233とから構成されている。
【0027】
レバー240を下に倒すと、ロックバー230が外側筒状部材220の一端を閉じるので内側筒状部材210が飛び出してくるのを規制する。その結果、アシスト機構は支点151と支点152の間隔が圧縮する方向に力を作用させなくなる。レバー240を上に倒すと、ロックバー230が外側筒状部材220の一端を開くので内側筒状部材210が飛び出してくる。その結果、アシスト機構は支点151と支点152の間隔が圧縮する方向に力を作用させる。このようにして耕うん時にはレバー240を下に倒してアシスト機構の動作をロックすることができる。
【0028】
[アシスト操作力とエプロン角度との関係]
図7は、アシスト操作力とエプロン角度の関係を示すグラフである(出願人が製造販売する耕うん作業機を用いて実測した結果である。)。アシスト機構が作用しない場合には、エプロン角度(最も下降した状態を0°とし、これから回動するにつれて回動角度をエプロン角度と定義した。)が10°を超えたあたりから、ほぼ一定の荷重がかかることが理解される。他方で、アシスト機構が作用する場合には、エプロン角度0°近傍から、ほぼ線形に荷重が低減していく。そして、エプロン角度が約60°の点で荷重がゼロになる。つまり、作業者からみれば、だんだんと軽くなっていく。上記実施例の各支点の位置関係からこのような荷重の傾向が観測される。上記説明したガススプリング250は圧縮状態の力のほうが、伸長状態の力よりも大きいが、支点152が支点151に近づくにつれ、所定の回転角度に対する支点152の移動距離が大きくなるため、「てこの原理」により、逆の特性(エプロン角度が大きくなるほどアシスト機構が作用する力1が大きくなる。)を奏する。
【0029】
[変形例1]
上記実施例においては、ガススプリングとして、フリーピストンを有するものを用いたが、フリーピストンを用いない従来型のガススプリングを用いることも可能である。この場合は、通常の状態であるところの、エプロンが下降した状態においてピストンロッドはシリンダーよりも下方に位置することが望ましい。フリーピストンを用いない従来型のガススプリングであっても、ピストンロッドがシリンダーよりも下方に位置することによって内部のオイルがピストン側に移動し、窒素ガスの漏洩を防止するからである。
【0030】
[変形例2]
上記実施例においては、ガススプリングは1本のみの例を示したが、ガススプリングは複数本用いてもよい。このようにして十分なアシスト力を得ることが可能となる。特に、重量のあるエプロンを有する大型の耕うん作業機や代かき機等においては、ガススプリングは複数本用いることが望ましい。この場合、アシスト機構を作業機の幅方向に複数個間隔を開けて配置してもよい。
【0031】
[変形例3]
上記実施例においては、1つのアシスト機構のなかにガススプリングは1本のみである例を示したが、1つのアシスト機構のなかにガススプリングを複数本用いてもよい。このようにして十分なアシスト力を得ることが可能となる。また、筒状部材は円筒でなく、断面が楕円の楕円筒状、断面が長方形の角型筒状であってもかまわない。
【0032】
[変形例4]
上記実施例においては、自動ロック機構は、制止レバーを上下させるだけの構成であったが、制止レバーを第2の筒状部材の一端を閉じる方向に回動させるよう付勢するスプリングと、制止レバーを第2の筒状部材の一端を開く位置に一時的に固定するガイド形状(例えばガイドに段差を設けるなど)としてもよい。このような構成により、付勢スプリングによって、エプロンが最も降下した位置で自動的にロックがかかる。また、制止レバーを第2の筒状部材の一端を開く位置に一時的に固定するガイド形状とすることによって、エプロンが最も降下した位置でロックを外し、ロックを外した状態でエプロンを跳ね上げることができる。
【0033】
[実施例による作用効果]
以上の構成により、以下の様な作用効果を奏する。
【0034】
第1に、本発明の実施例によれば、アシスト機構はエプロンの幅方向端部に設けられていないので、作業中にガススプリングが畦や側壁等の障害物に接触して損傷することがない。アシスト機構は、フレームに固定された第2の支点とエプロンに固定された第3の支点との間に設けられているところ、フレームは構造部材であり既に強度が十分なので、耐久性を向上させることができる。
【0035】
第2に、本発明の実施例の構成を前提にすれば、ガススプリングがほぼ地平と略平行に配置されざるをえず、一般的なガススプリング(フリーピストンが存在しないもの)ではガスの漏洩可能性が高くなりがちである。本発明の実施例によれば、ガススプリング内部にフリーピストンを有し、フリーピストンとピストンとの間の部屋及びピストンとロッドガイドとの間の部屋にはそれぞれオイルが充填されている。この結果、フリーピストンの先に充填されている窒素等のガスがガススプリングから漏れだす可能性が低くなり、ガススプリングの劣化が防止され、ガススプリングの寿命が大幅に向上する。これは、作業機のメンテナンスコストの低減にも寄与する。
【0036】
第3に、本発明の実施例によれば、エプロンが下降した状態(すなわち、耕うん時の状態である。エプロンが跳ね上がった状態の時間よりもはるかに長い時間においてこの状態が維持される。)において、ガススプリングのピストンロッドが、シリンダーよりも下方に位置する。その結果、ガススプリングのピストンロッドが、シリンダーよりも上方に位置する場合と比較して、窒素等のガスがガススプリングから漏れだす可能性が低くなり、ガススプリングの劣化が防止され、ガススプリングの寿命が大幅に向上する。これは、作業機のメンテナンスコストの低減にも寄与する。
【0037】
第4に、本発明の実施例によれば、アシスト機構が作用する力によって、エプロンを跳ね上げるのに要する力が小さくなる。さらに、その力が所定角度範囲内において、徐々に小さくなるようアシスト機構を調整しているため、耕うん状態においてエプロンが下降した状態から、作業者が誤ってエプロンを跳ね上げることがなくなり、相当程度の力をもって(ただし、アシスト機構が存在しないときに要する力よりは小さい)一旦エプロンをある程度の角度まで跳ね上げれば、その後はますます軽い力で跳ね上げることが可能となる。つまり、エプロンの跳ね上げに要する力を減らすとともに、回転角度が上昇するに従って跳ね上げに要する力が減少していく。
【0038】
第5に、本発明の実施例において、同一軸上で移動可能な第1の筒状部材と第2の筒状部材とを有し、第1の筒状部材には第2の支点と前記ガススプリングの一端とが接続され、第2の筒状部材には第3の支点と前記ガススプリングの他端とが接続される位置から、伸長時に力が加わるガススプリングを圧縮時に力が加わる二重筒構成としている。この結果、ガススプリングのピストンロッドが筒状部材に覆われ、表面が汚れることがなくなり、ガススプリングの寿命が大幅に向上する。これは、作業機のメンテナンスコストの低減にも寄与する。
【0039】
第6に、本発明の実施例においては、耕うん時には、内側筒状部材と外側筒状部材とが、ガススプリングのピストンロッドを二重に覆い隠す状態となる。つまり、周辺環境に応じて劣化が見られるピストンロッドを保護している。
【0040】
第7に、本発明の実施例において、内側筒状部材の一端(エプロン側)には、下方に向けた開口(小さな穴)が存在する。この小さな開口によって内側筒状部材の中にたまった水分を排出することが可能となる。
【0041】
第8に、本発明の実施例において、ガススプリングは、前記エプロンが下降した地点において、収縮するよう構成しているため、最も長い時間である耕うん時においてガススプリングのピストンロッド表面が汚れることがなくなり、ガススプリングの寿命が大幅に向上する。これは、作業機のメンテナンスコストの低減にも寄与する。
【0042】
第9に、本発明の実施例において、アシスト機構は、外側筒状部材と内側筒状部材との間に樹脂カラーを介在させている。この結果、外側筒状部材と内側筒状部材とが摺動する際に、異音の発生を防ぐことが可能となる。
【0043】
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
100:作業機、210:内側筒状部材、220:外側筒状部材、250:ガススプリング、251:シリンダー、252:ピストンロッド、256:ピストン、257:フリーピストン