(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086967
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】マイクロニードルアレイ
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
A61M37/00 530
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023074515
(22)【出願日】2023-04-28
(62)【分割の表示】P 2019534268の分割
【原出願日】2017-12-21
(31)【優先権主張番号】62/437,800
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522236350
【氏名又は名称】ジョンソン アンド ジョンソン コンシューマー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アラリー・マーク
(72)【発明者】
【氏名】ホプソン・ペイトン
(72)【発明者】
【氏名】リウ・ジャン-ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ルンデ・エリック
(72)【発明者】
【氏名】パテル・バーラト
(72)【発明者】
【氏名】モラノ・エマニュエル
(57)【要約】
【課題】 マイクロニードルアレイを提供する。
【解決手段】 マイクロニードルアレイにおいて、第1のマイクロニードル(30j)は、ヒト皮膚表面(52)から真皮(56)と皮下組織(58)との境界面までの深さよりも長い高さを有し、第2のマイクロニードル(30k)は、ヒト皮膚表面(52)から真皮(56)と皮下組織(58)との境界面までの深さよりも短く、かつ、ヒト皮膚表面(52)から表皮(54)と真皮(56)との境界面までの深さよりも長い高さを有し、第1のマイクロニードル(30j)は、第1の外側向きの主表面に対して実質的に垂直に延びる初期の実質的に線形の形態(30j、
図6)を有し、皮膚に挿入されると、遠位端部(34j)がフック様形態に湾曲する第2の展開形態(30j、
図7)に変形するように構成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の外側向きの主表面及び第2の外側向きの主表面を有するフィルムを含む、マイクロニードルアレイであって、前記第1の外側向きの主表面は、前記第1の外側向きの主表面から延びる複数の角質層穿刺マイクロニードルを有しており、前記複数の角質層穿刺マイクロニードルは、第1の有益剤を有する複数の第1のマイクロニードル、及び第2の有益剤を有する複数の第2のマイクロニードルを含み、
前記第1のマイクロニードルは、ヒト皮膚表面から真皮と皮下組織との境界面までの深さよりも長い高さを有し、前記第2のマイクロニードルは、ヒト皮膚表面から真皮と皮下組織との境界面までの深さよりも短く、かつ、ヒト皮膚表面から表皮と真皮との境界面までの深さよりも長い高さを有し、
前記第1のマイクロニードルは、前記第1の外側向きの主表面に対して実質的に垂直に延びる初期の実質的に線形の形態を有し、皮膚に挿入されると、遠位端部がフック様形態に湾曲する第2の展開形態に変形するように構成されている、マイクロニードルアレイ。
【請求項2】
前記第1のマイクロニードルは中実マイクロニードルである、請求項1に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項3】
前記第1のマイクロニードルの前記遠位端部は、表皮を穿通したあとに、真皮と皮下組織との境界面を穿通しないように湾曲するように構成されている、請求項2に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項4】
前記第2のマイクロニードルの遠位先端は、表皮を穿通するように構成されている、請求項3に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項5】
前記第1の外側向きの主表面に配置された接着剤を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項6】
前記第2のマイクロニードルが、前記第1の外側向きの主表面から、そこから遠位の点まで先細形状になっている、請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項7】
個々のマイクロニードルが、少なくとも1種類の有益剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項8】
前記個々のマイクロニードルが、少なくとも2種類の別個の有益剤を含む、請求項7に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項9】
前記個々のマイクロニードルのうちの少なくとも1つが、コア部分とシース部分とを含む、請求項8に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項10】
前記個々のマイクロニードルのうちの前記少なくとも1つの前記コア部分が、剛性組成物を含む、請求項9に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項11】
前記第1の有益剤が、前記中実マイクロニードルに溶解している、請求項2~4のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項12】
前記第2の有益剤が、容器内に保存されており、少なくとも1つの前記第2のマイクロニードル内のマイクロ流体路を通して送達される、請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚を通して患者に有益剤を経皮投与するためのデバイスに関する。より具体的には、本発明は、複数の有益剤を含む、マイクロニードルアレイ、並びにこれらのアレイの製造方法及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経皮薬物送達は、有益剤製剤を患者に投与するための他の経路と比べ、いくつかの利点を与える。例えば、いくつかの有益剤の経口投与は、有益剤が胃腸管で破壊されるか、又は肝臓によって排泄されるため、有効ではない場合がある。これらは両方とも、経皮薬物送達では回避される。従来の皮下注射針を用いた非経口注射も、痛みが強く、不便であることが多いため、欠点がある。
【0003】
経皮薬物送達は、これらの問題を回避する。しかしながら、その使用には障害がある。特に、ヒトの皮膚の角質層の物理的バリア特性は、経皮薬物送達に顕著な問題を引き起こす。これらのバリア特性により、比較的小さな分子が無傷な角質層を通って輸送されることのみが可能になり、多くの有用な薬物は、角質層のある種の改質又は他の輸送促進がなければ、大きすぎて角質層を通過することができない。イオントフォレシス、超音波、及び化学的穿通促進剤に基づくものを含め、種々の経皮促進法が知られている。しかしながら、これらの方法は、無傷な皮膚層を通って多くの医薬の送達を補助するには不十分な場合があり、及び/又は使用するには不便であるか、又は望ましくないほど複雑な場合がある。
【0004】
無傷の皮膚の問題に対処するために、様々なマイクロニードルアレイに基づく薬物送達デバイスが開発されてきた。これらの既知のマイクロニードルアレイは、一般的に、2つの設計カテゴリー:すなわち、(1)活性要素を含まない中実マイクロニードルアレイ、(2)中央に中空穴を有する、従来の皮下針と同様のマイクロニードルの1つに含まれる。
【0005】
中実マイクロニードルアレイは、生体担体又は従来のパッチを局所適用する前に、経皮薬物穿通を促進するために角質層及び表皮上部層に穿刺することによって、皮膚を予め調整することができる。中実マイクロニードルアレイが皮膚内に保持されている場合、穴がマイクロニードルで塞がれたままであるため、薬物は、皮膚内の穴を通って内部に流れていくことが容易にはできない。この方法は、皮膚の浸透性を著しく増加させることが示されている。しかしながら、この方法は、投薬量及び送達される薬物又はワクチンの量を制御するには、制限された能力しか与えない。
【0006】
投薬量の制御を高めるために、いくつかの方法は、薬物で表面コーティングされた中実マイクロニードルを使用する。この方法は、ある程度良好になった投薬量制御を与えるが、送達される薬物の量は大幅に制限される。また、堆積プロセスは信頼できないものであり、マイクロニードル上の薬物製剤の薄層は、マイクロニードルの保管、輸送、又は投与(挿入)中に、マイクロニードルから容易に失われてしまう恐れがある。より厚く強い薬物製剤の層の適用は、マイクロニードルの鋭利さを減らし、そのため、挿入がより困難になり、痛みを伴うため、望ましくない場合がある。この欠点により、この手法の広範な適用が制限され、例えば、ワクチン適用において、最適な量の抗原及び/又はアジュバントの組み合わせの同時送達が除外される。
【0007】
有益剤の容器に取り付けられた、中央の中空穴を有するマイクロニードルも知られている。これらのアレイの注射器型の特徴は、送達の速度及び正確さ、並びに送達される薬剤の量を著しく高めることができる。しかしながら、容器型のマイクロニードルアレイは、製造するのが高価であり、複雑で高価な微細加工手順を必要とする。特に、機械加工技術を用いて中空のマイクロニードル上に鋭利な先端部を製造するのは困難である。したがって、患者の皮膚へのマイクロニードルの挿入は、困難な場合があり、痛みを伴うことが多い。これに加えて、マイクロニードルの中央の穴は非常に小さく、挿入プロセス中に皮膚組織によって容易に塞がれ、それによって、薬物送達導路を遮断してしまう場合がある。マイクロニードルが存在しない場合に薬物を角質層を通して拡散させる場合より、更に遅くなる場合がある。したがって、既知の中空のマイクロニードルアレイ設計に関連する欠点を回避する、薬物送達のためのマイクロニードルアレイを提供することが望ましい。
【0008】
また、既知の方法は、生分解性、生体吸収性、又は溶解性の中実マイクロニードルアレイを使用することも含む。この方法は、単純な製造、貯蔵及び適用という望ましい属性を保持しつつ、中実マイクロニードルの物理的な靱性を、比較的高い生体活性材料容量と組み合わせたものである。溶解性ポリマーに基づくマイクロニードルの現在の製造方法は、一般に、マイクロキャストプロセスを使用する。例えば、主要なマスター成形型は、複雑なリソグラフィ技術とレーザエッチング技術との組み合わせを使用して製造される。しかしながら、リソグラフィ及びレーザに基づく技術は、それらが形成することができる幾何学的特徴の範囲と、それらが適用され得る材料の範囲に限定される。また、これらの非常に複雑な製造技術によってでは、様々な異なるマイクロニードル及びアレイの幾何形状の生体有効性の系統的試験に特に有用であり得る、マスター成形型の高速又は低コストの製造が可能にならない。
【0009】
最後に、溶解性ポリマーに基づくマイクロニードルアレイを製造するためのマイクロキャストプロセスは、単一組成のアレイを製造することに限定される。異なる組成又は有益剤を有する、マイクロニードルを使用する溶解性アレイを必要とする個人向けの治療が望まれている場合、マイクロキャストプロセスは、そのようなアレイを製造することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
要約すると、マイクロニードルアレイに基づくデバイスを使用した有益剤の経皮送達は、口腔及び注射針に基づく薬物送達方法よりも魅力的な理論上の利点を与える。しかしながら、従来のプロセスを用いて構築されたマイクロニードルアレイに関連する設計、製造及び試験には、かなりの実用上の制限が存在する。また、1種類より多い有益剤を同時に送達するマイクロニードルアレイを使用する経皮投与のための、単純で、効果的で、かつ経済的に望ましいデバイスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、本発明者らは、第1及び第2の外側向きの主表面を有するフィルムを含む異なるマイクロニードルのアレイを、正確に達成することができることを発見した。第1の外側向きの主表面は、その主表面から延びる複数の角質層穿刺マイクロニードルを有しており、複数のマイクロニードルは、第1の有益剤を有する複数の第1のマイクロニードル、及び第2の有益剤を有する複数の第2のマイクロニードルを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】マイクロニードルアレイの一実施形態の斜視図である。
【
図2】
図1のマイクロニードルアレイの一部の2-2面に沿った断面図である。
【
図3】
図1のマイクロニードルアレイの一部の上面図である。
【
図4】第2の実施形態のマイクロニードルアレイの一部の断面図である。
【
図5】第3の実施形態のマイクロニードルアレイの一部の断面図である。
【
図6】第4の実施形態のマイクロニードルアレイの一部の断面図である。
【
図7】マイクロニードルが患者の皮膚に穿通した後の
図6のマイクロニードルアレイの一部の断面図である。
【
図8】第5の実施形態のマイクロニードルアレイの一部の断面図である。
【
図9】第6の実施形態のマイクロニードルアレイの一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、マイクロニードルアレイシステムを使用して、皮膚を通して複数の有益剤を患者に経皮投与するためのデバイス、並びにこれらのシステムの製造方法及び使用方法に関する。以下の説明は、当業者が本発明を為し、及び使用できるようにするために提示される。本明細書に記載される実施形態並びに一般的な原理及び特長に対する様々な修正が、当業者には容易に明らかになるであろう。したがって、本発明は、示される実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に記載される特徴と一致する最も広い範囲が与えられるものである。
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「局所」との用語及びその変形語は、「身体の隔離された部分、又はその部分に適用されること」を意味する。この用語には、直接的に、又はバイオフィルムなどの中間体を介してのいずれかで、皮膚、粘膜及びエナメル質が含まれるが、これらに限定されない。
【0015】
本明細書で使用される場合、「有益剤」は、美容的又は治療的に、例えば、皮膚又は身体の症状又は状態を改善し、緩和し、低減し、又は治療するという利益を与える成分又は材料を意味する。「有益剤」に使用する他の用語としては、「生物学的」、「活性要素/活性成分/有効成分」又は「生物活性材料」が挙げられる。これらの用語は全て、医薬的に活性な薬剤、例えば、鎮痛剤、麻酔剤、抗喘息剤、抗生物質、抗鬱剤、抗糖尿病剤、抗真菌剤、抗高血圧剤、抗炎症剤、抗新生物剤、抗不安薬、酵素活性剤、核酸構築物、免疫刺激剤、免疫抑制剤、ワクチンなどを指す。有益剤材料は、可溶性材料、不溶性であるが分散性の材料、天然又は配合されたマクロ粒状物、ミクロ粒状物及びナノ粒状物、並びに/又は可溶性材料、分散性の不溶性材料、天然又は配合されたマクロ粒状物、ミクロ粒状物及びナノ粒状物のうち2つ以上の混合物を含んでいてもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるマイクロニードルアレイシステムは、消費者の皮膚に有益剤材料を送達する部位に対応する三次元形状に適合し得るように可撓性である。他の実施形態では、マイクロニードルアレイは、より剛性であり得、局所的な輪郭と整合するように、記載された三次元形状として構築されてもよい。アレイは、治療への適用をより効果的に可能にするために、様々な個人に向けた領域特有の治療ゾーンを有していてもよい。個々のユーザの身体部分のプロファイルに整合したアレイを物理的なガイドとして有すると、適用は、より容易に、かつより効果的になり、適用のための正確な領域に特定の標的ゾーンを配置するのに役立ち得る。
【0017】
図面を参照すると、
図1は、本発明で使用可能なマイクロニードルアレイ10の一実施形態の斜視図である。マイクロニードルアレイ10は、フィルム20を含んでおり、フィルム20は、第1の外側向きの主表面22と、第2の外側向きの主表面24とを有している。第1の外側向きの主表面22は、主表面22から延びる複数の角質層穿刺マイクロニードル30を有している。各マイクロニードル30は、近位端32と遠位端34とを有し、近位端32は、マイクロニードルアレイ10の第1の外側向きの主表面22に配置されたマイクロニードル30の末端である。
【0018】
図1では、マイクロニードルアレイ10は、長方形の取り付け領域を有するように示されている。マイクロニードルアレイ10のフィルム20はまた、皮膚治療の場所に応じて、様々な形状を有していてもよい。フィルム20によって残される取り付け領域のあり得る形状としては、限定されないが、正方形、長方形、三角形、円形、楕円形、腎臓形、星形、十字形、文字の形などが挙げられる。このような形状の角部は、存在する場合には、潜在的な持ち上げ/取り外し点を減らすように角度が付けられていてもよく、又は湾曲していてもよい。治療ゾーンは、約1,000cm
2より大きくてもよく、約1,000cm
2、又は約100cm
2、又は約10cm
2、又は約1cm
2、又は1cm
2未満であってもよい。
【0019】
マイクロニードルアレイ10のフィルム20要素は、好ましくは、比較的薄く、可撓性であり、それにより、好ましくは、容易にユーザの皮膚に沿い、装着が快適であり、これらのいずれも、可撓性及び形状適合性、並びにその薄さによるものである。本発明のマイクロニードルアレイ10は、長時間の装着を意図していてもよく、また好ましくは、剥離、皺、割れのいずれもなく、又は油っぽさ又はべとつきの表れることがなく、又はそうでなくとも本質的に不快ではなく、又は見栄えのよくない状態ではなく、美的に洗練されたものとして形成される。マイクロニードルアレイ10は、好ましくは、皮膚に置かれたときに通常の使用に耐え得る十分な剛性及び一体性を有するように形成される。いくつかの実施形態では、本発明のマイクロニードルアレイ10は、好ましくは、皮膚が受け得る通常の外力、衣類の擦れにさらされたときに、皮膚上で無傷な状態で保たれるように十分な強度を有するように形成される。
【0020】
いくつかの実施形態では、フィルム20の第1の外側向きの主表面22は、その上に接着剤層が配置されている。接着剤層を使用し、通常の外力にさらされたときに皮膚上で無傷な状態で保たれるように、マイクロニードルアレイ10に十分な強度を与えてもよい。アレイが皮膚上で無傷な状態で保たれるように、マイクロニードルアレイ10に十分な強度を与える他の手段について、以下に記載する。
【0021】
図2は、
図1の2-2面に沿ったマイクロニードルアレイの一部の断面図である。この図は、複数の第1の角質層穿刺マイクロニードル30a、及び複数の第2の角質層穿刺マイクロニードル30aを示す。各マイクロニードル30aは、近位端32aと遠位端34aとを有し、一方、各マイクロニードル30bは、近位端32bと遠位端34bとを有する。複数の第1のマイクロニードル30aは、第1の有益剤を含み、複数の第2のマイクロニードル30bは、第2の有益剤を含む。
【0022】
角質層穿刺マイクロニードル30a、30bの寸法は、送達される有益剤の種類、送達される有益剤の投薬量、及び望ましい穿通深さなどの種々の因子に応じて変化し得る。一般に、角質層穿刺マイクロニードルは、皮膚穿刺機能及び有益剤送達機能を与えるように構築されるため、皮膚への挿入及び皮膚からの引抜に耐えるように十分に丈夫であるように設計される。各マイクロニードルは、長さが約1マイクロメートル(μm)~約5000マイクロメートル(μm)、又は約1μm~約500μm、又は約100μm~約500μmである。マイクロニードルの生体障壁への穿通長さは、約50μm~約200μmである。加えて、各マイクロニードルは、幅が約1μm~約500μmである。更に、各マイクロニードルは、厚さが約1μm~約200μmである。角質層穿刺マイクロニードルの幅及び厚さは、その長さ方向に沿って変化し得ることが当業者には理解される。例えば、ベース部分は、本体部分よりも幅広く(より厚く)てもよく、又は本体部分は、先端部分に近づくにつれてわずかに先細形状を有していてもよい。
【0023】
図3は、
図1のマイクロニードルアレイの一部の上面図である。この図は、マイクロニードルアレイ10の第1の外側向きの主表面22から延びる角質層穿刺マイクロニードル30を示す。各マイクロニードル30は、近位端32と遠位端34とを有している。この図で示されるように、マイクロニードル30は、マイクロニードルアレイ10の第1の外側向きの主表面22上に正方形のパターンで配置される。他の実施形態では、マイクロニードル30は、三角形、正方形、五角形、六角形、八角形などの他のパターンで配置される。
【0024】
本発明のマイクロニードルアレイ10のマイクロニードル30は、種々の長さ及び幾何形状のものでもよい。
図4は、第2の実施形態のマイクロニードルアレイの一部の断面図である。この実施形態では、複数の第1の角質層穿刺マイクロニードル30aは、第1の有益剤を含み、複数の第2の角質層穿刺マイクロニードル30cは、第2の有益剤を含む。これに加えて、複数の第1のマイクロニードル30aは、フィルム20の第1の外側向きの主表面22から高さh
1まで延びており、一方、複数の第2のマイクロニードル30bは、フィルム20の第1の表面22から高さh
2まで延びている。この実施形態では、複数の第1のマイクロニードル30aに含まれる第1の有益剤は、複数の第2のマイクロニードル30bに含まれる第2の有益剤よりも深くユーザの皮膚に穿通することが望まれる場合がある。
【0025】
この図は、第1の角質層穿刺マイクロニードル30aが、均一な高さh1を有し、一方、第2の角質層穿刺マイクロニードル30bが均一な高さh2のものであることを示しているが、他の実施形態では、マイクロニードルが、任意の数の異なる高さのものでもよいことが理解されるべきである。これに加えて、全てのマイクロニードル30aが第1の有益剤で構成されているものではなく、又は全てのマイクロニードル30bが第2の有益剤で構成されているものでもないことに留意することが重要である。いくつかの実施形態では、マイクロニードルの一部は、有益剤を全く含まない。
【0026】
一般に、角質層穿刺マイクロニードル30は、患者への痛みを最小限にしつつ、皮膚穿刺及び有益剤送達を与えるのに適した任意の細長い形状であってもよい。種々の実施形態では、個々のマイクロニードルは、実質的に円筒形、くさび形、円錐形、又は三角形(例えば、ブレード様)である。マイクロニードルの断面形状(マイクロニードルの平面基材に対してほぼ平行な面に沿って、又はマイクロニードルの長手方向軸に対してほぼ垂直な面に沿って切断)、又は皮膚に穿通し得るマイクロニードルの少なくとも一部分は、長方形、正方形、楕円形、円形、菱形、三角形又は星形を含む種々の形態をとっていてもよい。
【0027】
角質層穿刺マイクロニードル30の先端部分は、生体障壁に穿刺し、例えば、患者の皮膚の角質層に穿刺し、有益剤を患者の組織に送達するように設計されている。好ましくは、各マイクロニードルの先端部分は、最小限の痛みで皮膚の穿刺及び穿通を可能にするために十分に小さくかつ鋭利であるべきである。好ましい実施形態では、個々のマイクロニードル30は、マイクロニードルアレイ10の第1の外側向きの主表面22から、そこから遠位の点まで先細形状になっている。様々な実施形態にでは、先細形状先端部分は、先端部において斜角の形態であってもよく、又はピラミッド形状又は円錐形状又は三角形状であってもよい。
【0028】
図5は、種々の角質層穿刺マイクロニードルの形状を示す、第3の実施形態のマイクロニードルアレイの一部の断面図である。マイクロニードル30aは、円錐形状であり、近位端32aから遠位端34aまで先細形状になっている。マイクロニードル30dは、円筒形の近位端32dを有しており、遠位端34dのある点まで先細形状になっている。マイクロニードル30eは、近位端32eと遠位端34eとを有し、起伏のある形状を有する。マイクロニードル30fは、円筒形の形状であり、近位端32fから遠位端34fまで先細形状がない。最後に、マイクロニードル30gは、ピラミッド形状であり、近位端32gから遠位端34gまで先細形状を有する。
【0029】
図5は、実質的に均一な高さの全ての角質層穿刺マイクロニードル30を示しているが、他の実施形態では、マイクロニードルは、任意の数の異なる高さのものであってもよいことが理解されるべきである。これに加えて、マイクロニードル30a、30d、30e、30f及び30gは、少なくとも1種類の有益剤を含む。いくつかは、第1の有益剤を含み、その他は、第2の有益剤を含み、その結果、マイクロニードルアレイ10は、2種類の別個の有益剤を有するマイクロニードルを含む。当然ながら、任意の所与の形状又は高さの全てのマイクロニードル30が、全て第1の有益剤又は第2の有益剤のいずれかを含む必要はない。
【0030】
本発明のマイクロニードルアレイ10はまた、複数の組成物で構成される角質層穿刺マイクロニードル30を含んでいてもよい。
図6は、このようなマイクロニードルを有する第4の実施形態のマイクロニードルアレイ10の一部の断面図である。この図は、4種類の異なるマイクロニードルを示しており、マイクロニードルは、変更可能な高さを有し、少なくとも2種類の別個の有益剤を含む。マイクロニードル30hは、円筒形の近位端32hを有しており、遠位端34hのある点まで先細形状である。これに加えて、マイクロニードル30hの近位端32hは、マイクロニードル30hの遠位端34hとは異なる組成のものである。マイクロニードル30iは円筒形であり、コア部分32iとシース部分34iとを有する。ここで、コア部分32iは、シース部分34iとは異なる組成のものである。マイクロニードル30jは、円筒形の近位端32jと、円筒形の遠位端34jとを有し、実質的に線形の形態を有する。ここで、マイクロニードル30jの近位端32jは、マイクロニードル30jの遠位端34jとは異なる組成のものである。最後に、マイクロニードル30kは、円錐形状であり、近位端32kから遠位端34kまで先細形状になっている。マイクロニードル30kの近位端32kは、マイクロニードル30kの遠位端34kとは異なる組成のものである。
【0031】
ここで、マイクロニードル30iに特に注目する。マイクロニードル30iは、コア部分32iとシース部分34iとを含む。コア部分32iは、シース部分34iとは異なる組成のものである。いくつかの実施形態では、コア部分32iは、皮膚に穿通するための機械強度又は剛性を有しておらず、一方、シース部分34iは有している。他の実施形態では、シース部分34iは、皮膚に穿通するための機械強度又は剛性を有しておらず、一方、コア部分32iは有している。したがって、シース部分の少なくとも1つは、剛性組成物を含む。そのため、皮膚に穿通するには十分に強くない材料/有効成分/薬物をなお送達することができる。
【0032】
ここで、マイクロニードル30jに特に注目する。マイクロニードル30jは、円筒形の遠位端34jを有し、初期の実質的に線形の形態を有する。皮膚に挿入されると、遠位端34jは、フック様構造又はフック様形態を形成して湾曲するように設計される。前述したとおり、いくつかの実施形態では、フィルム20の第1の外側向きの主表面22は、その上に接着剤層が配置されており、通常の外力にさらされたときに皮膚上で無傷な状態で保たれるように、マイクロニードルアレイ10に十分な強度を与える。いくつかの実施形態では、マイクロニードルアレイ10は、フック様構造を形成する複数のマイクロニードルを有していてもよい。フック様のマイクロニードル30jは、皮膚に穿通された際、使用中に皮膚上でマイクロニードルアレイ10を無傷な状態に保つように十分な強度を有していてもよい。
【0033】
この図はまた、角質層穿刺マイクロニードルが異なる長さのものであることも示す。この実施形態では、マイクロニードル30h及び30iは、フィルム20の第1の外側向きの主表面22から高さh1まで延びており、マイクロニードル30jは、フィルム20の第1の表面22から高さh2まで延びており、マイクロニードル30kは、フィルム20の第1の表面22から高さh3まで延びている。この実施形態では、異なる有益剤をユーザの皮膚に更に深く穿通することが望まれる場合がある。
【0034】
図6の図は、異なる高さの角質層穿刺マイクロニードル30を示しているが、他の実施形態では、マイクロニードルは、全てが同じ高さのものであってもよく、任意の数の異なる高さのものであっていてもよいことが理解されるべきである。これに加えて、全てのマイクロニードル30が第1の有益剤で構成されているものではなく、又は第2の有益剤で構成されているものでもないことに留意することが重要である。また、全てのマイクロニードル30が、複数の有益剤で構成されているわけではない。いくつかの実施形態では、角質層穿刺マイクロニードルの一部は、有益剤を全く含まない。
【0035】
異なる大きさ、組成及び幾何形状の角質層穿刺マイクロニードルが、理論上の使用で例示される。
図7は、マイクロニードルが展開され、患者の皮膚に穿通した後の
図6のマイクロニードルアレイの一部の断面図である。この図は、外側表面52を有する皮膚組織50を示す。外側表面52の下に、表皮54、真皮56、及び皮下組織又は皮下層54が位置している。フィルム20の第1の外側向きの主表面22は、皮膚組織50の外側表面52と接している。
【0036】
マイクロニードル30h、30i、30j及び30kは全て、外側表面52と表皮54とに穿通している。マイクロニードル30h、30i及び30jは、マイクロニードル30kよりも深く真皮56に穿通している。また、マイクロニードル30hの近位端32hは、マイクロニードル30hの遠位端34hとは異なる組成のものであるため、遠位端の組成は、近位端よりも深く真皮内に堆積される。マイクロニードル30j及び30kについても同じである。そのため、異なる皮膚深さでの個人向けの治療に対する需要が存在する場合、本発明のマイクロニードルアレイ10により、マイクロキャストプロセスを使用して製造されたマイクロニードルアレイでは得ることができない自由度が可能になる。
【0037】
また、前述のように、マイクロニードル30jの遠位端34jは、皮膚に挿入したときに湾曲してフック様の展開形態を形成するように設計されている。フック様のマイクロニードル30jは、使用中に皮膚上でマイクロニードルアレイ10を無傷な状態で保つように十分な強度を有していてもよい。これにより、フィルム20の第1の外側向きの主表面22が接着剤を含まないようにすることができる。
【0038】
これまでに示されている実施形態では、マイクロニードルアレイ10は、平面であるように示されている。いくつかの実施形態では、アレイは、曲線であってもよい。
図8は、本発明の第5の実施形態のマイクロニードルアレイの一部の断面図である。マイクロニードルアレイ100は、湾曲したフィルム120を含んでおり、湾曲したフィルム120は、第1の外側向きの主表面122と、第2の外側向きの主表面124とを有する。第1の外側向きの主表面122は、主表面122から延びる複数の角質層穿刺マイクロニードル130を有している。この図は、複数の第1の角質層穿刺マイクロニードル130a、及び複数の第2の角質層穿刺マイクロニードル130aを示す。各マイクロニードル130aは、近位端132aと遠位端134aとを有し、一方、各マイクロニードル130bは、近位端132bと遠位端134bとを有する。複数の第1のマイクロニードル130aは、第1の有益剤を含み、複数の第2のマイクロニードル130bは、第2の有益剤を含む。近位端132a、132bは、マイクロニードルアレイ100の第1の外側向きの主表面122上に配置されたマイクロニードル130a、130bの末端である。
【0039】
図8は、マイクロニードル130に対して凹状の形状を有するマイクロニードルアレイ100を示す。
図9は、本発明の第6の実施形態のマイクロニードルアレイの一部の断面図である。この実施形態では、マイクロニードルアレイ200は、アレイ内に凹凸状の湾曲を有する。マイクロニードルアレイ200は、湾曲したフィルム220を含んでおり、湾曲したフィルム220は、第1の外側向きの主表面222と、第2の外側向きの主表面224とを有する。第1の外側向きの主表面222は、主表面222から延びる複数の角質層穿刺マイクロニードル230を有している。他の全ての実施形態と同様に、マイクロニードルアレイ200は、少なくとも第1の有益剤及び第2の有益剤を含む。
【0040】
図8及び
図9は、一方向に曲線のマイクロニードルアレイを示しているが、アレイは、局所的な領域で、又は全体に複数の曲率の軸を有していてもよい。他の実施形態は、マイクロニードルアレイを形成するために複数の曲率の軸を用いてもよい。
【0041】
本体表面に形成された曲線のマイクロニードルアレイにより、その表面に対して垂直に配向したマイクロニードルが得られる。これにより、治療のためのより良いマイクロニードルの穿通、及びアレイの保持がもたらされる。
【0042】
好ましい実施形態では、フィルム20、120、220、角質層穿刺マイクロニードル30、130、230、又は両方が、生体適合性材料で形成されているか、又は生体適合性材料でコーティングされている。マイクロニードル30、130、230は、フィルム20、120、220に使用したのと同じ材料から形成されてもよく、あるいは、マイクロニードルは、フィルム材料とは異なる材料を含んでいてもよい。構築に適した材料の代表例としては、金属及び合金、例えば、ステンレス鋼、パラジウム、チタン及びアルミニウム;プラスチック、例えば、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリメチルペンテン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフェニルスルホン、液晶ポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレート-グリコール変性(PETG)、ポリイミド;並びにシリコン及びガラスなどのセラミックが挙げられる。材料は、好ましくは、マイクロニードルが皮膚に効果的に穿刺されるように設計された寸法でマイクロニードルが、それが顕著に曲がったり又は破損したりすることなく、十分に強いように選択される。マイクロニードル及び基材材料はまた、マイクロニードルアレイによって送達される薬物製剤と非反応性であるべきである。
【0043】
いくつかの実施形態では、フィルム20、120、220、マイクロニードル30、130、230、又は両方が、生分解性材料又は生体吸収性材料で形成されている。好適な材料の代表的な例としては、限定されないが、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(オルトエステル)(POE)、コポリ(エーテル-エステル)(CEE)、カルボキシメチルセルロース(CMC)系製剤、又はこれらの材料の組み合わせが挙げられる。
【0044】
フィルム20、120、220、角質層穿刺マイクロニードル30、130、230、又は両方が、場合により、これらに埋め込まれているか、又はこれらにコーティングされている副次的構築材料を更に含んでいてもよい。例えば、ミクロ粒子、ナノ粒子、繊維、フィブリド、又は他の粒状物質が含まれていてもよい。これらの副次的材料は、マイクロニードルアレイ10、100、200の1つ以上の物理特性又は化学特性を向上させ得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、角質層穿刺マイクロニードル30、130、230が、生分解性材料から形成され、一方、フィルム20、120、220は、生分解性ではない。これらの実施形態では、有益剤材料は、可溶性物質、又は不溶性であるが分散性の物質を含んでいてもよい。そのため、有益剤の送達機構は、例えば、マイクロニードルの生分解が、有益剤の溶解又は分散と同時のものであってもよい。マイクロニードルの分解速度は、有益剤の所定の薬物送達速度を可能にするように制御されてもよい。いくつかの実施形態では、第1の有益剤の放出速度は、第2の有益剤の放出速度と異なっていてもよい。全ての角質層穿刺マイクロニードルが分解した時点で、フィルム20、120、220を治療部位から取り除いてもよい。
【0046】
別の実施形態では、多くのフック様のマイクロニードル30jが、使用中に皮膚上でマイクロニードルアレイ10を無傷な状態で保つように十分な強度を有していてもよい。これにより、フィルム20の第1の外側向きの主表面22が接着剤を含まないようにすることができる。この実施形態では、マイクロニードル30jの近位端32jは、マイクロニードル30jの遠位端34jとは異なる組成を有する。遠位端34jの組成が生分解性である場合、マイクロニードルアレイ10は、フック様のマイクロニードル30jの遠位端34jが分解するまで、皮膚上で無傷なまま保たれ得る。この時点で、マイクロニードルアレイ10は、患者の皮膚から容易に取り除かれ得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、マイクロニードルアレイ10は、マイクロニードルのみ、又は基材と組み合わせてのいずれかで、有益剤で更にコーティングされていてもよい。
【0048】
あるいは、マイクロニードルは、所望の表面構造、例えば、マイクロニードルを所定位置に保持するために、わずかに方向性のある隆起を有していてもよい。有益剤としては、潤滑剤、スリップ剤などを挙げることができる。あるいは、有益剤は、標的となる局所領域に1つ以上の利益を与え得る。このような有益剤は、ワックス、油、皮膚軟化剤、保湿剤などを含むが、これらに限定されない様々な組成物のいずれかであってもよい。
【0049】
有益剤としては、ヒアルロン酸、ヒドロキシ酸(例えば、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、サリチル酸、クエン酸、酒石酸);抗ニキビ剤(例えば、サリチル酸、レチノール、レチノイド、又は他の角質溶解剤、及び過酸化ベンゾイル、又はニキビの治療に用いられる他の抗微生物剤);光沢調節剤(例えば、コメタンパク質、コットンパウダー、エルビオール(ジクロロフェニルイミダゾールチオキソラン);トレチノイン、イソトレチノイン、モトレチニド、アダパレン、タザロテン、アゼライン酸、及びレチノールなどのレチノイド又はその誘導体;5αリダクターゼ阻害剤、例えば、グリシン誘導体;大豆タンパク質及び小麦タンパク質などを含む加水分解植物性タンパク質;緑茶(カメリア・シネンシス(camellia sinesis))抽出物、及びシナモン樹皮抽出物);保湿剤;抗微生物剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、トリクロルカルバン(triclocarbon)、ポリヘキサメチレンビグアニド、塩化セチルピリジウム、及び塩化メチルベンゼトニウム(methyl and benzothonium chloride)などのカチオン性抗微生物剤;ロドプロピニルブチルカルバメート、ジアゾリジニル尿素、ジグルコン酸クロルヘキシデンジ、酢酸クロルヘキシデン、イセチオン酸クロルヘキシデン、及び塩酸クロルヘキシデンなどのクロルヘキシジンの塩類;2,4,4’-トリクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテル(トリクロサン)などのハロゲン化フェノール化合物;パラクロロメタキシレノール(PCMX);エタノール、プロパノールなどの短鎖アルコールなど);抗生剤又は消毒剤(ムピロシン、硫酸ネオマイシン、バシトラシン、ポリミキシンB、1-オフロキサシン、テトラサイクリン類(塩酸クロロテトラサイクリン、10塩酸オキシテトラサイクリン、及び塩酸テトラサイクリン)、リン酸クリンダマイシン、硫酸ゲンタマイシン、メトロニダゾール、ヘキシルレゾルシノール、塩化メチルベンゼトニウム、フェノール、第四級アンモニウム化合物、ティーツリー油、並びにこれらの医薬的に許容される塩及びプロドラッグ)、抗炎症剤(適切なステロイド系抗炎症剤、例えば、コルチコステロイド、例えば、ヒドロコルチゾン、ヒドロキシルトリアムシノロン、α-メチルデキサメタゾン、リン酸デキサメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、吉草酸クロベタゾール、デソニド、デソキシメタソン、酢酸デソキシコルチコステロン、デキサメタゾン、ジクロリゾン、二酢酸ジフロラゾン、吉草酸ジフルコルトロン、フルアドレノロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロコルチゾン、ピバリン酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルコルチンブチルエステル、フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン(フルプレドニリデン)、フルランドレノロン、ハルシノニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、コルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド、フルドロコルチゾン、二酢酸ジフルオロゾン、フルラドレノロンアセトニド、メドリゾン、アムシナフェル、アムシナフィド、ベタメタゾン、クロロプレドニゾン、酢酸クロロプレドニゾン、クロコルテロン、クレスシノロン、ジクロリゾン、ジフルプレドネート、フルクロロニド、フルニゾリド、フルオロメタロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、シクロペンチルプロピオン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルタメート、メプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、トリアムシノロン、及びこれらの塩など、非ステロイド系抗炎症剤、ナツシロギク(タナセタム・パーテニウム(Tanacetum parthenium))、クコの実(リシウム・バルバラム(Lycium barbarum))、マリアアザミ抽出物(シリバム・マリアナム(Silybum marianum))、アマランス油(アマランサス・クルエンタス(Amaranthus cruentus))、ザクロ(プニカ・グラナタム(Punica granatum))、イェルバ・マテ(イレクス・パラグアリエンシス(Ilex paraguariensis)葉抽出物)、ホワイトリリー花抽出物(リリウム・カンジダム(Lilium Candidum))、オリーブ葉抽出物(オレア・エウロピア(Olea europaea))、及びフロレチン(リンゴ抽出物));抗糸状菌/抗真菌剤(例えば、ミコナゾール、エコナゾール、ケトコナゾール、セルタコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、ボリコナゾール、クリオキノール、ビフォコナゾール、テルコナゾール、ブトコナゾール、チオコナゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール、サペルコナゾール、クロトリマゾール、ウンデシレン酸、ハロプロジン、ブテナフィン、トルナフテート、ナイスタチン、シクロピロクスオラミン、テルビナフィン、アモロルフィン、ナフチフィン、エルビオール、グリセオフルビン、並びにこれらの薬学的に許容される塩及びプロドラッグ;アゾール、アリルアミン、又はこれらの混合物);外用鎮痛剤(例えば、イブプロフェン又はジクロフェナク;カプサイシン、フェンタニル、及びクエン酸フェンタニルなどのこれらの塩;パラセタモール(アセトアミノフェンとして);サリチル酸エステルなどの非ステロイド系抗炎症剤(NSAID);モルヒネ及びオキシコドンなどのオピオイド薬;イブプロフェン又はジクロフェナク含有ゲル);酸化防止剤(例えば、スルフヒドリル化合物及びその誘導体(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム及びN-アセチルシステイン)、リポ酸及びジヒドロリポ酸、レスベラトロル、ラクトフェリン;アスコルビン酸、アスコルビン酸エステル、及びアスコルビン酸誘導体(例えば、パルミチン酸アスコルビル、及びアスコルビルポリペプチド);ブチルヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン(ブチルヒドロキシトルエン)、レチノイド(例えば、レチノール及びパルミチン酸レチノール)、トコフェロール(例えば、酢酸トコフェロール)、トコトリエノール、及びユビキノン;システイン、Nーアセチルシステイン、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒド・スルホキシル酸ナトリウム、アセトン-重亜硫酸ナトリウム、トコフェロール、及びノルジヒドログアイアレチン酸;フラボノイド及びイソフラボノイド、並びにこれらの誘導体(例えば、ゲニステイン及びジアゼイン)を含む抽出物;レスベラトロルなどを含む抽出物;グレープシード、緑茶、松樹皮、及びプロポリス;クローブ、シナモン、オレガノ、ターメリック、クミン、パセリ、バジル、カレー粉、マスタードシード、ショウガ、コショウ、チリパウダー、パプリカ、ガーリック、コリアンダー、オニオン、及びカルダモンなどの植物由来のポリフェノール抗酸化物質;セージ、タイム、マジョラム、テラゴン、ペパーミント、オレガノ、セイボリー、バジル、及びイノンドなどの一般的なハーブ類));脱毛剤(例えば、チオグリコール酸カルシウム又はチオグリコール酸カリウム);ビタミン類(例えば、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE;α、β、γ、又はδトコフェロール、ナイアシン、又はナイアシンアミド)、並びにアスコルビン酸ジグルコシド、及び酢酸又はパルミチン酸ビタミンEなどのビタミン塩又は誘導体;サンブロック(例えば、二酸化チタン)及び/又はサンスクリーン(例えば、二酸化チタン及び酸化亜鉛などの無機サンスクリーン;オクチルメトキシシンナメート、サリチル酸オクチル、ホモサラート、アボベンゾンなどの有機サンスクリーン;血管拡張薬(例えば、ナイアシン);保湿剤(例えば、グリセリン);アンチエイジング剤(例えば、レチノイド;ジメチルアミノエタノール(DMAE)、銅含有ペプチド);グリコール酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、アスコルビン酸、α-ヒドロキシ酪酸、α-ヒドロキシイソ酪酸、α-ヒドロキシイソカプロン酸、アトロ乳酸、α-ヒドロキシイソ吉草酸、ピルビン酸エチル、ガラクツロン酸、グルコヘプトン酸、グルコヘプトノ1,4-ラクトン、グルコン酸、グルコノラクトン、グルクロン酸、グルクロノラクトン、ピルビン酸イソプロピル、ピルビン酸メチル、ムチン酸、ピルビン酸、サッカリン酸、サッカリック酸1,4-ラクトン、酒石酸、及びタルトロン酸などのα-ヒドロキシ酸又はフルーツ酸及びこれらの前駆体;β-ヒドロキシ酪酸、β-フェニル-乳酸、及びβ-フェニルピルビン酸などのβ-ヒドロキシ酸;亜鉛及び酸化亜鉛などの亜鉛含有化合物;緑茶、大豆、マリアアザミ、藻類、アロエ、アンゼリカ、ビターオレンジ、コーヒー、オウレン、グレープフルーツ、ブクリョウ、スイカズラ、ハトムギ、シコン、クワ、ボタン、プエラリア、コメ(nice)、及びベニバナなどの植物抽出物、並びにこれらの塩類及びプロドラッグ);カロチノイド、セラミド、脂肪酸、酵素、酵素阻害剤、ミネラル、ステロイド、ペプチド、アミノ酸、植物抽出物、着色剤などを挙げることができる。物質は、例えば、保湿、皮膚のトーン又は色合いの改善(顔料によるなど)、様々な皮膚の状態(例えば、乾燥又は重度の乾燥肌、湿疹、乾癬、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮疹、ニキビ、黒頭病、膿疱、面皰、酒さ、帯状疱疹、皺、口唇ヘルペス、ヘルペス、いぼ、日焼け、虫刺れ、ツタウルシなど)を治療又は少なくとも緩和すること、機械力(例えば、収縮)を加え、皺を伸ばすこと、又は、より一般的には、望ましくない皮膚の欠陥(例えば、目の下のくま、ニキビの発赤、小皺及び皺、炎症後色素沈着(PIH)、発赤、炎症、セルライト、皺、年齢による染み、斑状色素沈着、濃い染み、肝斑、目の下の腫れ)の症状及び外観を治療又は緩和すること、望ましくない顔又は身体の毛を脱毛すること、傷口の治癒を助けること、などの様々な方法のいずれかで皮膚に影響を及ぼすことができる。例えば、ローション、クリーム、オイル、及び更にはマスクを皮膚に付けることで皮膚を治療し、又は他の形で皮膚に影響を及ぼすことができる。このような個人向け又は消費者向けヘルスケア物質は、皮膚を通じた拡散又は輸送の速度が皮膚の両側の有効成分の濃度の差と相関する拡散の原理に概ねしたがって皮膚に吸収される。
【0050】
前述したように、マイクロニードルアレイを製造するための微細加工又はマイクロキャストプロセスは、単一組成のアレイの製造に限定される。本発明では、個人向けの治療に、1種類より多い有益剤を含む角質層穿刺マイクロニードルを使用する。そのため、微細加工又はマイクロキャストプロセスを使用することはできない。
【0051】
本発明のマイクロニードルアレイは、付加製造(Additive Manufacturing)技術を使用して製造することができる。付加製造は、三次元コンピュータ支援設計(CAD)データを使用して物理的な部品又はアセンブリを迅速に製造するために使用される技術群である。部品又はアセンブリの構築は、通常、3D印刷などの「付加層製造(additive layer manufacturing)」技術を用いて行われる。付加製造は、1種類より多い有益剤を同時に送達するマイクロニードルアレイを製造する、単純で、効果的で、かつ経済的な方法である。
【0052】
一般に、コンピュータ支援設計及びコンピュータ支援製造CAD-CAMワークフローは、従来の付加製造プロセスである。このプロセスは、CADワークステーションを使用した3D固体、又は走査デバイスを使用した2Dスライスのいずれかとして、幾何学的データの作成から開始する。付加製造では、このデータは、有効な幾何学的モデル、すなわち、境界面が有限な体積を包含しており、構造に設計されていない限り、内部を露出する穴を含まず、それ自体が折り返されないものを表していなければならない。言い換えると、物体は、「内部」を有していなければならない。3D空間での各点について、アルゴリズムが、その点がモデルの境界面の内部にあるか、境界面上にあるか、又は境界面の外部にあるかを一意的に判定し得る場合、モデルは有効である。CADポストプロセッサは、内部のCAD幾何学的形態を単純化された数学的形態に近似し、次いで、付加製造の一般的な特徴である特定のデータフォーマットで表現する。付加製造機構を働かせるために必要な運動制御軌道を得るために、作成した幾何学的モデルを、典型的には、層状にスライスし、そのスライスを線状にスキャンし(コンピュータ数値制御ツールパスとしての軌道を作成するために使用される「2D描画」を作成する)、層ごとに物理的な構築プロセスが得られる。
【0053】
3D印刷プロセスにより、異なる大きさ及び形状のマイクロニードルの製造が可能になり、並びに1種類より多い有益剤を有するマイクロニードルアレイを製造する能力が可能になる。個々のマイクロニードルの位置、鋭利さ、キャビテーション及び材料は、微細加工又はマイクロキャストよりも3D印刷による方が、はるかに容易に制御することができる。軟質材料、硬質材料や、及び更に液体を、個々のマイクロニードルに組み込むことができる。送達プロファイルの変化は、スマートマイクロニードルアレイを製造するためのシステムに設計することができる。非相溶性化合物も、交差汚染のおそれなく、マイクロニードルアレイの異なる部分に構築することができる。
【0054】
マイクロニードルは、少なくとも100μm以上の深さに有効成分/薬物を送達する必要があるが、約20ミクロン以上の変更可能な穿通を有するように設計することができる。異なる用途及び使用は、異なるレベルの穿通、溶解度及び設計特徴(大きさ、形状、角度、溶解度など)を必要とする。場合によっては、有益剤は、マイクロニードル材料に溶解してもよく、他の場合では、有益剤は、容器内に貯蔵され、マイクロニードル内のマイクロ流体路を通して送達されてもよい。
【0055】
ここで図示及び説明した実施形態は、最も実用的で好適な実施形態と考えられるが、当業者であれば、ここに図示及び開示した特定の設計及び方法からの変更はそれ自体当業者にとって自明であり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく使用できることは明らかであろう。本発明は、説明し例証した特定の構成に限定されないが、添付の特許請求の範囲に含まれ得る全ての修正と一貫するように構成されているべきである。
【0056】
〔実施の態様〕
(1) 第1及び第2の外側向きの主表面を有するフィルムを含む、マイクロニードルアレイであって、前記第1の外側向きの主表面は、前記第1の外側向きの主表面から延びる複数の角質層穿刺マイクロニードルを有しており、前記複数のマイクロニードルは、第1の有益剤を有する複数の第1のマイクロニードル、及び第2の有益剤を有する複数の第2のマイクロニードルを含む、マイクロニードルアレイ。
(2) 前記第1の外側向きの主表面に配置された接着剤を更に含む、実施態様1に記載のマイクロニードルアレイ。
(3) 複数のマイクロニードルは、各々、前記第1の外側向きの主表面から延びる高さが約1μm~約5000μmである、実施態様1に記載のマイクロニードルアレイ。
(4) 前記複数のマイクロニードルは全て、実質的に均一な高さを有する、実施態様3に記載のマイクロニードルアレイ。
(5) 前記複数のマイクロニードルが、変更可能な高さを有する、実施態様3に記載のマイクロニードルアレイ。
【0057】
(6) 個々のマイクロニードルが、前記第1の外側向きの主表面から、そこから遠位の点まで先細形状になっている、実施態様1に記載のマイクロニードルアレイ。
(7) 個々のマイクロニードルが、少なくとも1種類の有益剤を含む、実施態様1に記載のマイクロニードルアレイ。
(8) 個々のマイクロニードルが、少なくとも2種類の別個の有益剤を含む、実施態様7に記載のマイクロニードルアレイ。
(9) 少なくとも1つの個々のマイクロニードルが、コア部分とシース部分とを含む、実施態様8に記載のマイクロニードルアレイ。
(10) 前記少なくとも1つの個々のマイクロニードルの前記コア部分が、剛性組成物を含む、実施態様9に記載のマイクロニードルアレイ。
【0058】
(11) 少なくとも1つのマイクロニードルは、前記第1の外側向きの主表面に対して実質的に垂直に延びる初期の実質的に線形の形態と、遠位端がフック様形態に湾曲する第2の展開形態とを有する、実施態様1に記載のマイクロニードルアレイ。
(12) 前記第1の有益剤及び前記第2の有益剤の少なくとも1つが、マイクロニードル材料に溶解している、実施態様1に記載のマイクロニードルアレイ。
(13) 前記第1の有益剤及び前記第2の有益剤の少なくとも1つが、容器内に保存されており、少なくとも1つのマイクロニードル内のマイクロ流体路を通して送達される、実施態様1に記載のマイクロニードルアレイ。
【外国語明細書】