(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086968
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】カメラモジュール
(51)【国際特許分類】
A61B 1/04 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
A61B1/04 530
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074559
(22)【出願日】2023-04-28
(62)【分割の表示】P 2019005228の分割
【原出願日】2019-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】320008672
【氏名又は名称】i-PRO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】久原 隆
(72)【発明者】
【氏名】川内 洋介
(72)【発明者】
【氏名】畑瀬 雄一
(57)【要約】
【課題】熟練技能を必要とせずにパッドと導体を位置決めでき、自動化による組立を容易に可能とすることにより、量産化を実現し、製造コストを低減できる。
【解決手段】カメラモジュールは、四角形で形成され、撮像面と反対の背面に複数のパッドが設けられる撮像素子と、背面に略垂直な方向に延在する複数の平行な電線を一体に固定し、それぞれの電線の導体を背面と平行な対向端面からそれぞれのパッドに応じて突出させた電線位置決め固定体と、複数のパッドのそれぞれに、導体の先端を導通接続する導電材と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四角形で形成され、撮像面と反対の背面に複数のパッドが設けられる撮像素子と、
前記背面に略垂直な方向に延在する複数の平行な電線を一体に固定し、それぞれの前記電線の導体を前記背面と平行な対向端面からそれぞれの前記パッドに応じて突出させた電線位置決め固定体と、
複数の前記パッドのそれぞれに、前記導体の先端を導通接続する導電材と、を備え、
前記電線位置決め固定体は、前記導体間の相対的位置を固定する、
カメラモジュール。
【請求項2】
前記導体は、前記パッドに対して垂直に固定される、
請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項3】
前記電線位置決め固定体と、前記パッドとは接触しない、
請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項4】
前記電線位置決め固定体と前記導電材とは接触しない、
請求項1または3に記載のカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子内視鏡においては、撮像素子が、対物光学系との位置関係(つまり、ピント出し)を正確に調整した状態で金属製のシールドパイプ内に固着され、信号ケーブルが撮像素子の背面に配置された端子に後方から接合されている(例えば特許文献1参照)。信号ケーブルの心線は、撮像素子の背面に配置された端子に半田付け等で接合される。なおなお、心線と端子との接合部は、シールドパイプ内に撮像素子を組み付ける作業中に破壊されないようにするため、周囲を接着剤でモールディングして補強される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば血管等の微細径の管あるいは孔の挿入に使用される極細の電子内視鏡では、撮像素子の一辺が1mm以下の四角形を使用することがある。この場合、信号ケーブルの各心線の先端を撮像素子の背面に配置された端子(つまり、パッド)に手作業で半田付けするには、相当に熟練した技能を要し、かつ多大な実装工数が必要となった。例えば、信号ケーブルのそれぞれの心線の一部分を1本ずつ露出させるような微細加工が必要であった。このため、従来の電子内視鏡の撮像素子と信号ケーブルの接続構造および接続方法では、上述した使用が想定される極細の電子内視鏡等のカメラにおいては、相当に熟練した技能を要する作業者の人為的介在が必要であった点で自動化が困難となり、製造コストが高くなるという課題があった。
【0005】
本開示は、上述した従来の状況に鑑みて案出され、熟練技能を必要とせずにパッドと導体とを位置決めでき、自動化による組立を容易に可能とすることにより、量産化を実現し、製造コストを低減できるカメラモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、四角形で形成され、撮像面と反対の背面に複数のパッドが設けられる撮像素子と、前記背面に略垂直な方向に延在する複数の平行な電線を一体に固定し、それぞれの前記電線の導体を前記背面と平行な対向端面からそれぞれの前記パッドに応じて突出させた電線位置決め固定体と、複数の前記パッドのそれぞれに、前記導体の先端を導通接続する導電材と、を備え、前記電線位置決め固定体は、前記導体間の相対的位置を固定する、カメラモジュールを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、熟練技能を必要とせずにパッドと導体を位置決めでき、自動化による組立を容易に可能とすることにより、量産化を実現し、製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る内視鏡システムの外観例を示す斜視図
【
図2】
図1に示したカメラの先端側の外観例を示す斜視図
【
図3】
図2に示したカメラに搭載されるカメラモジュールをケーブルの一部とともに示した側面図
【
図5】
図3に示したレンズおよび撮像素子を省略したカメラモジュールをケーブルとともに示した正面図および側面図
【
図6】
図5に示したカメラモジュールのケーブル接続方法における手順の一例を示した工程図
【
図7】
図6に示した電線位置決め固定体における製造手順の一例を示した工程図
【
図8】変形例1に係るカメラモジュールをケーブルとともに示した正面図および側面図
【
図9】
図8に示した電線位置決め固定体における製造手順の一例を示した工程図
【
図10】変形例2に係るカメラモジュールをケーブルとともに示した正面図および側面図
【
図11】
図10に示した電線位置決め固定体における製造手順の一例を示した工程図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係るカメラモジュール、カメラ、およびカメラモジュールのケーブル接続方法の構成および作用を具体的に開示した各実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0010】
(実施の形態1)
先ず、実施の形態1に係る内視鏡システム11、ならびに内視鏡システム11を構成するカメラ13(例えば、内視鏡)について説明する。
【0011】
図1は、実施の形態1に係る内視鏡システム11の外観例を示す斜視図である。
図1では、カメラ13およびビデオプロセッサ15を含む内視鏡システム11の全体構成を斜視図にて示している。なお、本明細書において説明に用いる方向は、
図1中の方向の記載に従う。ここで、「上」、「下」は、水平面に置かれたビデオプロセッサ15の上と下にそれぞれ対応し、「前(先)」、「後」は、カメラ13の挿入部17の先端側とプラグ部19の基端側(言い換えると、ビデオプロセッサ側)にそれぞれ対応する。
【0012】
図1に示すように、内視鏡システム11は、例えば医療用の軟性鏡であるカメラ13(例えば、内視鏡)と、観察対象(例えば、人体の血管)の内部を撮影して得られた静止画または動画に対して周知の画像処理等を行うビデオプロセッサ15と含む構成である。カメラ13は、略前後方向に延在し、観察対象の内部に挿入される挿入部17と、挿入部17の後部が接続されるプラグ部19と、を備える。
【0013】
ビデオプロセッサ15は、前壁21に開口するソケット部23を有している。ソケット部23にはカメラ13のプラグ部19の後部が挿入される。これにより、カメラ13は、ビデオプロセッサ15との間で電力および各種信号(映像信号、制御信号など)の送受信が可能である。
【0014】
上述した電力および各種の制御信号は、軟性部25の内部に挿通されたケーブル27(
図3参照)を介してプラグ部19から軟性部25に導かれる。先端部29に設けられた撮像素子31(
図3参照)から出力された撮像画像のデータは、ケーブル27を介してプラグ部19からビデオプロセッサ15に伝送される。ビデオプロセッサ15は、プラグ部19から伝送された撮像画像のデータに対し、例えば色補正や階調補正等の周知の画像処理を施し、画像処理後の撮像画像のデータを表示装置(図示略)に出力する。表示装置は、例えば液晶表示パネル等の表示デバイスを有するモニタ装置であり、カメラ13によって撮像された被写体の撮像画像(例えば、被写体である人体の血管内の様子を示す撮像画像)のデータを表示する。
【0015】
挿入部17は、プラグ部19に後端が接続された可撓性の軟性部25と、軟性部25の先端に連なる先端部29とを有している。軟性部25は、各種の内視鏡検査、内視鏡手術等の方式に対応する適切な長さを有する。軟性部25は、例えば螺旋状に巻回された金属薄板の外周にネットを被せ、さらに、その外周に被覆を被せることにより構成され、十分な可撓性を有するように形成される。軟性部25は、先端部29とプラグ部19との間を接続する。
【0016】
カメラ13は、細径で形成されることにより、細径の体腔への挿入が可能となる。細径の体腔は、人体の血管に限定されず、例えば尿管、すい管、胆管、細気管支等が含まれる。つまり、カメラ13は、人体の血管、尿管、すい管、胆管、細気管支等への挿入を可能とすることができる。言い換えると、カメラ13は、血管内の病変の観察に用いることができる。カメラ13は、動脈硬化性プラークの同定において有効となる。また、心臓カテーテル検査時の内視鏡による観察にも適用可能となる。さらに、カメラ13は、血栓や動脈硬化性の黄色プラークの検出にも有効となる。なお、動脈硬化病変では、色調(白色、淡黄色、黄色)や、表面(平滑、不整)が観察される。血栓では、色調(赤色、白色、暗赤色、黄色、褐色、混色)が観察される。
【0017】
また、カメラ13は、腎盂・尿管がんや、特発性腎出血の診断・治療に用いることができる。この場合、カメラ13は、尿道から膀胱内に挿入され、さらに尿管内にまで進めて、尿管と腎盂の中を観察することができる。
【0018】
また、カメラ13は、十二指腸に開口するファーター乳頭への挿入が可能となる。胆汁は、肝臓から造られ胆管を通って、また膵液は膵臓から造られ膵管を通って十二指腸にあるファーター乳頭から排出される。カメラ13は、胆管および膵管の開口部であるファーター乳頭から挿入され、胆管または膵管の観察を可能とすることができる。
【0019】
さらに、カメラ13は、気管支への挿入が可能となる。カメラ13は、背臥位となった検体(つまり、被施術者)の口腔または鼻腔から挿入される。カメラ13は、咽頭、喉頭を過ぎ、声帯を視認しつつ気管へ挿入される。気管支は分岐するたびに細くなる。例えば最大外径が2mm未満のカメラ13によれば、亜区域気管支まで内腔の確認が可能となる。
【0020】
図2は、
図1に示したカメラ13の先端側の外観例を示す斜視図である。カメラ13は、先端部29にモールド部33を有する。モールド部33には、先端部29と同一の外径で形成されてモールド部33の少なくとも一部を覆う管状のシース35が接続される。モールド部33は、モールド樹脂からなり、後述のレンズ37および撮像素子31を埋入して柱状に成形される。シース35は、その内径側がモールド部33の後端から延出する小径延出部(図示略)の外周に接着剤等によって固定される。シース35の内部には、後述のケーブル27が挿通される。
【0021】
先端部29の先端面には、中央部に四角形の対物カバーガラス39が設けられる。先端面には、対物カバーガラス39の各辺の外側に、ライトガイド41を構成する4つの光ファイバ43の光出射端面が配置されている。
【0022】
図3は、
図2に示したカメラ13に搭載されるカメラモジュール45をケーブル27の一部とともに示した側面図である。カメラ13は、レンズ37と、カメラモジュール45と、を有する。レンズ37は、先端部29の最も対物側に配置される対物カバーガラス39の後方に設けられ、単一レンズで構成される。レンズ37の後方には、撮像素子の撮像面を保護するための素子カバーガラス47を挟んで撮像素子31が設けられる。つまり、カメラ13は、カメラモジュール45に設けられる撮像素子31の撮像面側に、レンズ37を配置して構成されている。カメラ13は、これら対物カバーガラス39、レンズ37、カメラモジュール45、およびケーブル27の一部が、先端を形成するモールド部33に埋入される。
【0023】
カメラモジュール45に設けられる撮像素子31は、1辺が1mm以下(例えば、0.5mm~1mm程度)の四角形(例えば、正方形)で形成される。撮像素子31は、撮像面と反対の背面49に、複数のパッド51が設けられる。
【0024】
図4は、
図3に示した撮像素子31の背面49を示した背面図である。パッド51は、撮像素子31の略正方形の背面49において、例えばそれぞれの四隅に一つずつの複数(
図4の図示例では4つ)が配置される。それぞれのパッド51は、例えば電源、画像信号、GND(グランド)、CLK(例えば、ビデオプロセッサ15からのクロックおよびコマンドの入力)等の回路接続に用いられる。なお、パッド51の数および配置は、これに限定されない。
【0025】
撮像素子31の背面49に設けられたそれぞれのパッド51には、ケーブル27が導通接続される。ケーブル27は、複数の電線53と、シールド線55(
図5参照)とを有する。それぞれの電線53は、線状の導体57の外周が、内部被覆により覆われている。シールド線55は、アルミや銅等の素線が被覆に覆われずにそのまま配線される。これらシールド線55や、内部被覆に覆われてそれぞれが絶縁された複数の電線53は、外周がシールド層59により一括して覆われる。
【0026】
図5は、
図3に示したレンズ37および撮像素子31を省略したカメラモジュール45をケーブル27とともに示した正面図および側面図である。シールド層59は、外部からの静電気が電線53に印加されて、撮像素子31等の電子部品が静電破壊されることを防止する。シールド層59には、例えばアルミ等の金属箔や、細径の導線等を網目状に編んだ編組シールドが用いられる。また、シールド層59は、これら金属箔と編組シールドとが二層で設けられてもよい。複数の電線53およびシールド線55を覆ったシールド層59の外周は、さらに軟質の絶縁性樹脂からなるチューブ状のケーブルシース61により覆われる。つまり、ケーブル27は、中心側より複数の電線53およびシールド線55、これらを覆うシールド層59、シールド線55の外周を覆うケーブルシース61により三層構造で構成される。
【0027】
ケーブル27は、その後端側の基端が、上記のプラグ部19に導入される。プラグ部19に導入されたケーブル27は、それぞれの電線53の導体57が、プラグ部19に収容されている回路基板(図示略)の所定の回路端子に半田付けされる。また、シールド線55は、回路基板のGND端子に半田付けされる。これにより、撮像素子31から出力された撮像画像のデータは、ケーブル27を介してプラグ部19からビデオプロセッサ15に伝送される。
【0028】
ところで、撮像画像のデータの伝送に用いられるケーブル27の先端は、それぞれの電線53が、撮像素子31の背面49に設けられたそれぞれのパッド51に接続される。カメラモジュール45は、複数の電線53を、撮像素子31のパッド51に接続するための電線位置決め固定体63を備える。すなわち、カメラモジュール45は、撮像素子31と電線位置決め固定体63とにより構成される。複数の電線53は、この電線位置決め固定体63にガイドされて撮像素子31に接続されることになる。
【0029】
電線位置決め固定体63は、背面49に略垂直な方向に延在する複数の平行な電線53を一体に固定する。電線位置決め固定体63は、それぞれの電線53の導体57を背面49と平行な対向端面65からそれぞれのパッド51に応じて突出させる。
【0030】
実施の形態1において、この電線位置決め固定体63は、複数の導体57を一括して覆って固化した絶縁性の接着材67である。接着材67には、例えばエポキシ系(一液性、二液性を含む)、アクリル系のものを用いることができる。
【0031】
電線位置決め固定体63は、電線53の直交方向を円形とした円柱形に形成され、4つの電線53が、円形の内側に接する。
【0032】
また、円柱形に形成された電線位置決め固定体63は、
図4に示すように、直径が、撮像素子31の最も短い辺の長さよりも小さく形成される。
【0033】
電線位置決め固定体63により纏められた複数の電線53は、対向端面65から突出したそれぞれの導体57が、複数のパッド51のそれぞれに、導電材69により導通接続される。導電材69には、低融点導電材が好適に用いられる。低融点導電材は、例えばペースト状のフラックスに半田粉を練り込んだクリーム半田とすることができる。クリーム半田を用いることにより、微細なパターンを印刷装置によりパッド51や導体57に転写することができる。
【0034】
次に、実施の形態1に係るカメラモジュール45のケーブル接続方法を説明する。
【0035】
図6は、
図5に示したカメラモジュール45のケーブル接続方法における手順の一例を示した工程図である。カメラモジュールのケーブル接続方法は、電線一括供給工程と、導電材塗布工程と、導体位置決め工程と、導電材固着工程と、主要な工程として含む。
【0036】
撮像素子31は、上面が水平面となる定盤(図示略)などに、背面49が上側となるように載置される。電線一括供給工程では、この撮像素子31に対して、先端に導体57が露出した電線53のそれぞれを一括して固定した電線位置決め固定体63が、
図6の上方より供給される。
【0037】
導電材塗布工程では、導体57および撮像素子31の背面49に設けられた複数のパッド51の少なくとも一方に、未固化の導電材69が塗布される。
【0038】
導体位置決め工程では、電線位置決め固定体63から突出するそれぞれの導体57の先端が、電線位置決め固定体63が垂直に立てられて、それぞれのパッド51に位置決めされる。
【0039】
導電材固着工程では、導電材69に、導電材69の融点より高い高温空気71が吹き付けられ、溶融した導電材69を介してパッド51と導体57とが導通接続する。
【0040】
これにより、実施の形態1に係るカメラモジュール45のケーブル接続方法によれば、複数の電線53の導体57を、それぞれのパッド51に導通接続でき、カメラモジュール45に対するケーブル27の接続が完了する。
【0041】
なお、カメラモジュール45のケーブル接続方法は、導電材固着工程において、導電材69の融点より高い温度のレーザ光が照射され、溶融した導電材69を介してパッド51と導体57とが導通接続するものであってもよい。
【0042】
また、カメラモジュール45のケーブル接続方法は、導電材固着工程において、リフロー炉により加熱され、溶融した導電材69を介してパッド51と導体57とが導通接続するものであってもよい。
【0043】
ここで、カメラモジュール45のケーブル接続方法は、上記の手順の中に、複数の電線53を一括して電線位置決め固定体63により固定する手順を含めることができる。この場合、上記した電線一括供給工程の前に、電線一括固定工程が加えられることになる。上記したカメラモジュールのケーブル接続方法の手順では、この電線一括固定工程が、別工程で行われる例を示している。すなわち、別工程で製作された電線位置決め固定体63が、電線一括供給工程で供給されている。
【0044】
図7は、
図6に示した電線位置決め固定体63における製造手順の一例を示した工程図である。電線位置決め固定体63を製造する電線一括固定工程では、先ず、パッド51に対向するように電線53を挿通する複数の挿通孔73が穿設された治具75の挿通孔73のそれぞれに対して、電線53のそれぞれが挿通される。次いで、治具75に挿通する手前の電線同士が絶縁性の接着材67で一括して覆われる。この際、治具75が上方に配置され、下方より接着材67が注入されることで、接着材67と治具75との接触を防止しやすくできる。接着材67が固化した後に、治具75が電線53から取り外されて、電線位置決め固定体63の製造が完了する。上述したように、この電線一括固定工程は、上記したカメラモジュール45のケーブル接続方法における電線一括供給工程の前に組み込むことができる。
【0045】
次に、上記したカメラモジュール45およびカメラ13の構成による作用を説明する。
【0046】
実施の形態1に係るカメラモジュール45は、四角形で形成され、撮像面と反対の背面49に複数のパッド51が設けられる撮像素子31と、背面49に略垂直な方向に延在する複数の平行な電線53を一体に固定し、それぞれの電線53の導体57を背面49と平行な対向端面65からそれぞれのパッド51に応じて突出させた電線位置決め固定体63と、複数のパッド51のそれぞれに、導体57の先端を導通接続する導電材69と、を具備する。
【0047】
実施の形態1に係るカメラモジュール45では、撮像素子31の背面49に、複数のパッド51が設けられる。この撮像素子31の背面49には、電線位置決め固定体63が接続される。電線位置決め固定体63は、撮像素子31の背面49に略垂直な方向に延在する複数の平行な電線53を一体に固定している。つまり、独立した一本一本の電線53が、一纏めに固定されている。電線位置決め固定体63は、背面49と平行な対向端面65を有する。
【0048】
ここで、電線位置決め固定体63は、背面49に設けられたそれぞれのパッド51に対応させるようにして、それぞれの電線53を配置している。それぞれのパッド51に対応して配置された電線53は、被覆が除去されて露出した先端の導体57が、電線位置決め固定体63の対向端面65から、撮像素子31の背面49に向かって突出する。これにより、電線位置決め固定体63は、撮像素子31に対して所定の相対位置に位置決めすることで、複数の電線53の導体57を、複数のパッド51のそれぞれに同時に位置決めが完了する。この際、導体57およびパッド51の少なくとも一方にはクリーム半田等の導電材69を塗布等により予め設けておく。従って、導体57とパッド51は、位置決めが完了した後、高温空気71により導電材69が溶融固化されることにより導通接続される。
【0049】
従来、撮像素子31は、一辺が1mm程度の場合、顕微鏡等を用いた手作業により電線53と接続することが可能であった。ところが、撮像素子31の更なる小型化により、一辺が0.5mm未満となると、手作業による電線53とパッド51との接合作業が極めて非効率的或いは困難となる。
【0050】
そこで、このカメラモジュール45では、複数の電線53のそれぞれの導体57が、それぞれのパッド51の位置に応じて電線位置決め固定体63により保持されている。従って、電線位置決め固定体63を、撮像素子31に対して所定の相対位置に位置決めすれば、一つのパッド51と一本の電線53の導体57とをいちいち位置決めせずに、全ての導体57を、それぞれのパッド51に対して、一括して位置決めすることができる。電線位置決め固定体63と撮像素子31との所定の相対位置は、例えば背面49に設けたマーカーに、電線位置決め固定体63をアライメントする画像処理により行うことができる。
【0051】
従って、カメラモジュール45では、熟練技能を必要とせずに、複数の電線53とパッド51の位置決めから接続までを自動化して、量産化を実現し、製造コストを低減することができる。
【0052】
また、カメラモジュール45では、電線位置決め固定体63が、複数の導体57を一括して覆って固化した絶縁性の接着材67である。
【0053】
このカメラモジュール45では、電線位置決め固定体63が、接着材67により複数の電線53を一括固定する。簡単な治具75を用いる他は、固定構造が接着材67のみにより形成できるため、電線位置決め固定体63を安価且つ小型(短尺)に製造できる。
【0054】
また、カメラモジュール45では、電線位置決め固定体63が、電線53の直交方向を円形とした円柱形に形成され、4つの電線53が、円形の内側に接する。
【0055】
このカメラモジュール45では、電線位置決め固定体63を円柱形とした場合、4つの電線53を最も離間させて配置することができる。これにより、各電線間の絶縁距離を最大に確保することができる。換言すれば、所定の絶縁距離を確保しなければならない場合、円柱形を最も小さい外径で形成できる電線53の配置構造とすることができる。その結果、カメラ13の小径化に有利な構造とすることができる。
【0056】
また、カメラモジュール45は、電線位置決め固定体63の直径が、撮像素子31の最も短い辺の長さよりも小さい。
【0057】
このカメラモジュール45では、円柱形に形成された電線位置決め固定体63の直径が、撮像素子31の最も短い辺の長さよりも小さく設定される。従って、電線位置決め固定体63は、撮像素子31の背面49から外側へはみ出さずに配置することが可能となる。これにより、カメラモジュール45は、四角形となった撮像素子31の各辺の外側に配置される他部材(例えばライトガイド41)に対して、電線位置決め固定体63を干渉させない構造とすることができる。
【0058】
また、カメラモジュール45は、撮像素子31の最も長い辺の長さが1mm以下である。
【0059】
このカメラモジュール45では、撮像素子31の最も長い辺の長さが1mm以下(例えば、0.5mm~1mm程度)の四角形(例えば、正方形)で形成される。このカメラモジュール45を搭載した血管用のカメラ13は、例えば冠動脈に挿入を可能とする外径まで小型化が可能となる。カメラモジュール45は、例えば最も長い辺の長さが0.5mmの撮像素子31に、ケーブル27を接続する場合であっても、電線位置決め固定体63を用いることにより、複数のパッド51に各電線53を自動で位置決めすることが可能となる。
【0060】
また、実施の形態1に係るカメラ13は、カメラモジュール45と、撮像素子31の撮像面側に配置されるレンズ37と、を備える。
【0061】
実施の形態1に係るカメラ13では、撮像部位からの光をレンズ37によってカメラモジュール45における撮像素子31の撮像面に結像させる。撮像素子31は、結像光を電気信号に変換し、この電気信号を画像信号として、背面49のパッド51から電線53を介してケーブル27へ出力する。カメラ13は、微細部品である撮像素子31に対するケーブル27の接続が、電線位置決め固定体63を用いることにより容易且つ高精度に行える。これにより、カメラ13は、自動化による量産化が可能となる。
【0062】
従って、実施の形態1に係るカメラ13によれば、熟練技能を必要とせずにパッド51と導体57を位置決めでき、自動化による組立を容易に可能とすることにより、量産化を実現し、製造コストを低減できる。
【0063】
また、実施の形態1に係るカメラモジュールのケーブル接続方法は、先端に導体57が露出した電線53のそれぞれを一括して固定した電線位置決め固定体63を供給する電線一括供給工程と、導体57および撮像素子31の背面49に設けられた複数のパッド51の少なくとも一方に未固化の導電材69を塗布する導電材塗布工程と、電線位置決め固定体63から突出するそれぞれの導体57の先端を、それぞれのパッド51に位置決めする導体位置決め工程と、導電材69に、導電材69の融点より高い高温空気71を吹き付け、溶融した導電材69を介してパッド51と導体57とを導通接続する導電材固着工程と、を含む。
【0064】
実施の形態1に係るカメラモジュールのケーブル接続方法では、微細部品である撮像素子31に対してケーブル27を接続するに際し、複数の電線53のそれぞれを一括して固定した電線位置決め固定体63が供給される。
【0065】
電線位置決め固定体63は、撮像素子31の背面49に略垂直な方向に延在する複数の平行な電線53を一体に固定している。つまり、独立した一本一本の電線53が、一纏めに固定されている。電線位置決め固定体63は、背面49と平行な対向端面65を有する。ここで、電線位置決め固定体63は、背面49に設けられたそれぞれのパッド51に対応させるようにして、それぞれの電線53を配置している。それぞれのパッド51に対応して配置された電線53は、被覆が除去されて露出した先端の導体57が、電線位置決め固定体63の対向端面65から、撮像素子31の背面49に向かって突出する。
【0066】
電線位置決め固定体63から突出する導体57および撮像素子31の背面49に設けられた複数のパッド51の少なくとも一方には、未固化の導電材69が塗布される。
【0067】
電線位置決め固定体63は、撮像素子31に対して所定の相対位置に位置決めすることで、複数の電線53の導体57を、複数のパッド51のそれぞれに同時に位置決めが完了する。
【0068】
導体57とパッド51は、位置決めが完了した後、高温空気71により導電材69が溶融固化されることにより導通接続される。
【0069】
このカメラモジュールのケーブル接続方法では、複数の電線53のそれぞれの導体57が、パッド51に応じて電線位置決め固定体63により保持されている。従って、電線位置決め固定体63を、撮像素子31に対して所定の相対位置に位置決めすれば、一つのパッド51と一本の電線53の導体57とをいちいち位置決めせずに、全ての導体57を、それぞれのパッド51に対して、一括して位置決めすることができる。医療用カメラなどの小さな撮像素子31でも実装することができ小型化することができる。また、固定位置が予め決まっているので、自動化が可能で、工数もかからない。
【0070】
従って、カメラモジュールのケーブル接続方法では、熟練技能を必要とせずに、複数の電線53とパッド51の位置決めから接続までを自動化して、量産化を実現し、製造コストを低減できる。
【0071】
また、カメラモジュールのケーブル接続方法において、電線位置決め固定体63は、パッド51に対向するように電線53を挿通する複数の挿通孔73が穿設された治具75の挿通孔73のそれぞれに対して電線53のそれぞれを挿通し、治具75に挿通する手前の電線同士を絶縁性の接着材67で一括して覆い、接着材67が固化した後に、治具75を電線53から取り外して形成する。
【0072】
このカメラモジュールのケーブル接続方法では、簡単な治具75を用いる他は、接着材67のみにより、複数の電線53を一括して固定した電線位置決め固定体63を容易に且つ安価に形成できる。また、接着材67の供給量の増減により、電線位置決め固定体63の体積を調整できる。これにより、所定の電線固定強度を有した小型の電線位置決め固定体63を容易に形成できる。カメラモジュール45は、電線位置決め固定体63が小型に形成できることで、搭載されるカメラ13の曲率半径を小さくできる。
【0073】
次に、上記した実施の形態1の変形例1を説明する。
【0074】
図8は、変形例1に係るカメラモジュール45をケーブル27とともに示した正面図および側面図である。変形例1に係るカメラモジュール45は、電線位置決め固定体77が、複数の電線53のそれぞれを挿通する複数の挿通孔73を有した絶縁樹脂材等からなる柱状の絶縁部材79である。
【0075】
このカメラモジュール45では、電線位置決め固定体77が、柱状の絶縁部材79で形成される。柱状の絶縁部材79は、それぞれの電線53を挿通する複数の挿通孔73を有する。この挿通孔73は、電線53の導体57がそれぞれのパッド51に対向するように、所定の位置で穿設されている。それぞれの電線53は、この挿通孔73に、接着材67を介して固定される。柱状の絶縁部材79は、外形状を例えば高精度な円柱で予め形成しておくことができる。このため、接着材67を用いたモールド構造に比べ、電線位置決め固定体77の形状を安定化させ且つ小型(短尺)に製造することができる。
【0076】
図9は、
図8に示した電線位置決め固定体77における製造手順の一例を示した工程図である。電線位置決め固定体77は、パッド51に対向するように電線53を挿通する複数の挿通孔73が穿設された絶縁部材79の挿通孔73のそれぞれに対して電線53のそれぞれを挿通する。電線53の被覆先端には、予め接着材67を塗布しておく。それぞれの電線53と絶縁部材79とを接着材67により固定して電線位置決め固定体77の製造が完了する。この電線一括固定工程は、上記したカメラモジュールのケーブル接続方法における電線一括供給工程の前に組み込むことができる。
【0077】
このカメラモジュールのケーブル接続方法において、柱状の絶縁部材79は、外形状を例えば高精度な円柱で予め形成しておくことができる。このため、接着材67を用いたモールド構造に比べ、電線位置決め固定体77の形状を安定化させることができる。また、接着材67の硬化にかかる時間を、モールド構造に比べ短くできるので、生産性を高めることができる。
【0078】
次に、上記した実施の形態1の変形例2を説明する。
【0079】
図10は、変形例2に係るカメラモジュール45をケーブル27とともに示した正面図および側面図である。変形例2に係るカメラモジュール45は、電線位置決め固定体81が、先端に複数の電線53のそれぞれを挿通する複数の挿通孔73を有した電線位置決め板83を有する。この電線位置決め固定体81は、挿通孔73を貫通したそれぞれの電線53の貫通側と反対側が、絶縁性の接着材67により電線位置決め板83と一体に固定される。電線位置決め板83の材質としては、ポリイミド、ガラエポ樹脂などの絶縁材で、200℃以上の耐熱性のあるものが用いられる。
【0080】
このカメラモジュール45では、電線位置決め固定体81が、それぞれの電線53を挿通する複数の挿通孔73を電線位置決め板83に備えている。この挿通孔73は、電線53の導体57がそれぞれのパッド51に対向するように、所定の位置で穿設されている。つまり、電線位置決め板83は、それぞれの導体57をパッド51に位置決めする治具的な役割を果たす。電線53は、この電線位置決め板83の挿通孔73に挿通された状態で、接着材67により電線位置決め板83と一体に固定される。
【0081】
従って、変形例2に係る電線位置決め固定体81は、撮像素子31の背面49に対向する対向端面65が、電線位置決め板83となるので、接着材67を用いたモールド構造に比べ、背面49と高い平行度で対向端面65を形成できる。また、電線位置決め板83は、薄厚とすることができるので、柱状の絶縁樹脂材に比べ、挿通孔73への電線53の挿通を容易にできる。また、電線位置決め固定体81の全てを接着材67で形成するモールド構造に比べ、電線位置決め板83を用いて強度が向上する分、接着材67の量を少なくできる。これにより、接着材67によるモールド構造や柱状の絶縁樹脂材を用いる構造に比べ、電線位置決め固定体81を小型(短尺)に製造できる。
【0082】
図11は、
図10に示した電線位置決め固定体81における製造手順の一例を示した工程図である。
【0083】
電線位置決め固定体81は、パッド51に対向するように電線53を挿通する複数の挿通孔73が穿設された電線位置決め板83の挿通孔73のそれぞれに対して電線53のそれぞれを挿通する。電線位置決め固定体81は、電線位置決め板83に挿通する手前の電線同士を絶縁性の接着材67で一括して覆いながら、電線位置決め板83に接着して製造が完了する。この電線一括固定工程は、上記したカメラモジュールのケーブル接続方法における電線一括供給工程の前に組み込むことができる。
【0084】
このカメラモジュールのケーブル接続方法では、電線位置決め板83が、それぞれの導体57をパッド51に位置決めする治具的な役割を果たす。電線53は、この電線位置決め板83の挿通孔73に挿通された状態で、接着材67により電線位置決め板83と一体に固定される。この電線位置決め固定体81は、撮像素子31の背面49に対向する対向端面65が、電線位置決め板83となるので、背面49と高い平行度で対向端面65を形成できる。また、対向端面65に電線位置決め板83を用いるので、下向きのまま接着材67を注入でき、
図7に示したような電線位置決め固定体81の上下反転工程を不要にできる。さらに、電線位置決め固定体81の全てを接着材67で形成するモールド構造に比べ、電線位置決め板83を用いて強度が向上する分、接着材67の量を少なくできる。これにより、接着材67によるモールド構造に比べ、電線位置決め固定体81を小型(短尺)に製造できる。
【0085】
以上、添付図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本開示は、熟練技能を必要とせずにパッドと導体とを位置決めでき、自動化による組立を容易に可能とすることにより、量産化を実現し、製造コストを低減できるカメラモジュール、カメラおよびカメラモジュールのケーブル接続方法として有用である。
【符号の説明】
【0087】
13 カメラ
27 ケーブル
31 撮像素子
37 レンズ
45 カメラモジュール
49 背面
51 パッド
53 電線
57 導体
63 電線位置決め固定体
65 対向端面
67 接着材
69 導電材
71 高温空気
73 挿通孔
75 治具
77 電線位置決め固定体
79 絶縁部材
81 電線位置決め固定体
83 電線位置決め板