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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086970
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】第XA因子誘導体の調製
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20230615BHJP
   C07K 14/745 20060101ALI20230615BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230615BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230615BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230615BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20230615BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20230615BHJP
   A61K 38/36 20060101ALI20230615BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230615BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230615BHJP
   C12P 21/02 20060101ALN20230615BHJP
   C07K 1/18 20060101ALN20230615BHJP
   C07K 1/20 20060101ALN20230615BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20230615BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/745
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
A61P7/04
A61P39/02
A61K38/36
A61K47/18
A61K47/26
C12P21/02 A ZNA
C07K1/18
C07K1/20
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074627
(22)【出願日】2023-04-28
(62)【分割の表示】P 2021165271の分割
【原出願日】2017-06-19
(31)【優先権主張番号】62/351,841
(32)【優先日】2016-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506109155
【氏名又は名称】ポートラ ファーマシューティカルズ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】マーク カーバーズ
(72)【発明者】
【氏名】パメラ ビー. コンリー
(72)【発明者】
【氏名】ゲンミン ルー
(57)【要約】
【課題】第XA因子誘導体の調製。
【解決手段】本開示は、fXa誘導体タンパク質を大規模で製造して、高収率の高純度タンパク質生成物を得る方法を提供する。この方法は、タンパク質をコードするポリヌクレオチドコンストラクトを含む試料に界面活性剤を添加し、大豆トリプシンインヒビター(STI)ベースのアフィニティークロマトグラフ、イオン交換及び混合モードクロマトグラフ及び疎水性相互作用を介してタンパク質を精製することを含み得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、2016年6月17日に出願された米国仮特許出願連番第62/351,841号の利益を主張し、それぞれの内容は開示内容全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
fXaを標的とする抗凝固剤に対する解毒剤として有用な、第Xa因子(fXa)タンパク質の修飾された誘導体が開発されている。この誘導体は、抗凝固に拮抗する必要がある、経口または注射可能な第Xa因子インヒビターでの抗凝固療法を受けている患者への一般的な拮抗薬として開発されている。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、fXa解毒剤ポリペプチドを大規模で製造して、高収率の高純度タンパク質生成物を得る方法を提供する。一実施形態においては、方法は、配列番号7の核酸配列または配列番号7によりコードされるアミノ酸配列に少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドコンストラクトから発現したポリペプチド生成物を調製するために提供される。この方法は、ポリヌクレオチドコンストラクトを含む試料に界面活性剤を添加し、大豆トリプシンインヒビター(STI)ベースのアフィニティークロマトグラフ、イオン交換及び混合モードクロマトグラフ及び/または疎水性相互作用を介してコードされた解毒剤タンパク質を精製することを含み得る。
【0004】
一実施形態においては、配列番号7の核酸配列または配列番号7によりコードされるアミノ酸配列に少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドコンストラクトから発現したポリペプチド生成物を調製する方法であって、ポリヌクレオチドコンストラクト及びポリヌクレオチドコンストラクトから発現したポリペプチド生成物を含む試料に界面活性剤を添加することと、試料を大豆トリプシンインヒビター(STI)ベースのアフィニティークロマトグラフに充填し、第1の溶出緩衝液でポリペプチドを溶出し、第1の溶出された試料を生成することであって、充填した試料は有機溶媒を含まないことと、第1の溶出された試料をイオン交換及び混合モードクロマトグラフに充填し、少なくとも1Mの無機塩を含む第2の溶出緩衝液でポリペプチドを溶出し、第2の溶出された試料を生成することと、第2の溶出された試料を疎水性相互作用クロマトグラフに充填し、少なくとも2mMの塩化ナトリウムを含む第3の溶出緩衝液でポリペプチドを溶出することとを含み、それにより、ポリペプチド生成物を含む精製された試料を調製する方法が提供される。
【0005】
いくつかの実施形態においては、界面活性剤は、トリトンX-100(ポリエチレングリコールP-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェニルエーテル)を含む。いくつかの実施形態においては、第1の溶出緩衝液は0.5M~2Mのアルギニンを含む。いくつかの実施形態においては、第1の溶出緩衝液のpHは約5~5.4である。いくつかの実施形態においては、イオン交換及び混合モードクロマトグラフは、セラミックヒドロキシアパタイトタイプIクロマトグラフを含む。
【0006】
いくつかの実施形態においては、第2の溶出緩衝液は、少なくとも2Mの無機塩を含む。いくつかの実施形態においては、無機塩は塩化ナトリウムである。いくつかの実施形態においては、疎水性相互作用クロマトグラフはオクチルセファロースクロマトグラフを含む。
【0007】
いくつかの実施形態においては、方法はアニオン交換クロマトグラフでの精製ステップを更に含む。いくつかの実施形態においては、アニオン交換クロマトグラフは、Sartobind(商標)イオン交換膜を含む。
【0008】
方法は、試料の1つ以上を、ナノフリースフィルタでの濾過に供することを更に含む。いくつかの実施形態においては、ナノフリースフィルタでの濾過は、試料のSTIベースのアフィニティークロマトグラフへの充填に先行する。
【0009】
いくつかの実施形態においては、精製された試料は、約1%未満の、ポリヌクレオチドコンストラクトから発現されたものではない汚染タンパク質を含む。いくつかの実施形態においては、ポリペプチド生成物はポリヌクレオチドコンストラクトを含む細胞において発現される。いくつかの実施形態においては、細胞は、培養液1リットルあたり少なくとも100mgのポリペプチド生成物を産生する条件下で、培養液中で増殖される。いくつかの実施形態においては、細胞は、培養液1リットルあたり少なくとも200mgのポリペプチド生成物を産生する条件下で、培養液中で増殖される。いくつかの実施形態においては、精製された試料は、約50%を超える培養液中で産生されたポリペプチド生成物を含む。いくつかの実施形態においては、精製された試料は、培養液1リットルあたり産生量から約100mgを超えるポリペプチド生成物を含む。
【0010】
いくつかの実施形態においては、ポリペプチド生成物は、軽鎖及び重鎖を含む二重鎖ポリペプチドである。いくつかの実施形態においては、精製された試料における約20%~50%のポリペプチド生成物は、配列番号5のアミノ酸配列からなる重鎖を有する。いくつかの実施形態においては、配列番号5のアミノ酸配列からなる重鎖の約5%~95%は、2つのO-結合グリコシル化を有し、配列番号5のアミノ酸配列からなる重鎖の約5%~95%は、1つのO-結合グリコシル化を有する。いくつかの実施形態においては、精製された試料におけるポリペプチド生成物の約40%~80%は、配列番号8のアミノ酸配列からなる重鎖を有する。いくつかの実施形態においては、配列番号8のアミノ酸配列からなる重鎖の少なくとも約90%は、1つのO-結合グリコシル化を有する。いくつかの実施形態においては、精製された試料におけるポリペプチド生成物の約2%~12%は、配列番号9のアミノ酸配列からなる重鎖を有する。いくつかの実施形態においては、精製された試料におけるポリペプチド生成物の約0.1%~1.5%は、配列番号10のアミノ酸配列からなる重鎖を有する。いくつかの実施形態においては、精製された試料におけるポリペプチド生成物の約2%~8%は、配列番号11のアミノ酸配列からなる重鎖を有する。いくつかの実施形態においては、精製された試料におけるポリペプチド生成物の約35%~60%は、配列番号4のアミノ酸配列からなる軽鎖を有する。
【0011】
一実施形態においては、実施形態のいずれか1つに記載の方法により調製されたポリペプチドもまた提供される。
【0012】
一実施形態においては、医薬的に許容される担体及び二重鎖ポリペプチドのポリペプチド部分を含む医薬組成物であって、約35%~60%の二重鎖ポリペプチドが配列番号4のアミノ酸配列からなる軽鎖を有し、約20%~60%の二重鎖ポリペプチドが配列番号5のアミノ酸配列からなる重鎖を有し、約40%~60%の二重鎖ポリペプチドが配列番号8のアミノ酸配列からなる重鎖を有し、10%未満の二重鎖ポリペプチドが配列番号9のアミノ酸配列からなる重鎖を有する、医薬組成物が提供される。
【0013】
いくつかの実施形態においては、5%未満の二重鎖ポリペプチドは配列番号9のアミノ酸配列からなる重鎖を有する。いくつかの実施形態においては、3%未満の二重鎖ポリペプチドは配列番号9のアミノ酸配列からなる重鎖を有する。いくつかの実施形態においては、約0.1%~1.5%の二重鎖ポリペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列からなる重鎖を有する。いくつかの実施形態においては、約2%~8%の二重鎖ポリペプチドは配列番号11のアミノ酸配列からなる重鎖を有する。いくつかの実施形態においては、配列番号5のアミノ酸配列からなる重鎖の約30%~70%は、2つのO-結合グリコシル化を有する。いくつかの実施形態においては、配列番号5のアミノ酸配列からなる重鎖の約30%~70%は、1つのO-結合グリコシル化を有する。いくつかの実施形態においては、少なくとも約90%の配列番号8のアミノ酸配列からなる重鎖は、1つのO-結合グリコシル化を有する。
【0014】
いくつかの実施形態においては、製剤は凍結乾燥される。いくつかの実施形態においては、組成物はL-アルギニンHClまたはL-アルギニンアセテートを更に含む。いくつかの実施形態においては、組成物はスクロースを更に含む。いくつかの実施形態においては、組成物はマンニトールを更に含む。
一実施形態においては、第Xa因子インヒビターでの抗凝固療法を受けている患者において、抗凝固を拮抗または阻害するための方法であって、患者に本開示の実施形態のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与することを含む、方法もまた提供される。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
配列番号7の核酸配列または配列番号7によりコードされるアミノ酸配列に少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドコンストラクトから発現したポリペプチド生成物を調製する方法であって、
前記ポリヌクレオチドコンストラクト及び前記ポリヌクレオチドコンストラクトから発現したポリペプチド生成物を含む試料に界面活性剤を添加することと、
前記試料を大豆トリプシンインヒビター(STI)ベースのアフィニティークロマトグラフに充填し、第1の溶出緩衝液で前記ポリペプチドを溶出し、第1の溶出された試料を生成することであって、前記充填された試料は有機溶媒を含まない、前記生成することと、
前記第1の溶出された試料をイオン交換及び混合モードクロマトグラフに充填し、少なくとも1Mの無機塩を含む第2の溶出緩衝液で前記ポリペプチドを溶出し、第2の溶出された試料を生成することと、
前記第2の溶出された試料を疎水性相互作用クロマトグラフに充填し、少なくとも2mMの塩化ナトリウムを含む第3の溶出緩衝液で前記ポリペプチドを溶出することと、を含み、
それにより、前記ポリペプチド生成物を含む精製された試料を調製する、前記方法。
(項目2)
前記界面活性剤が、トリトンX-100(ポリエチレングリコールp-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェニルエーテル)を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記第1の溶出緩衝液が0.5M~2Mのアルギニンを含む、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記第1の溶出緩衝液のpHが約5~5.4である、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記イオン交換及び混合モードクロマトグラフが、セラミックヒドロキシアパタイトタイプIクロマトグラフを含む、先行項目のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記第2の溶出緩衝液が、少なくとも2Mの無機塩を含む、先行項目のいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記無機塩が塩化ナトリウムである、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記疎水性相互作用クロマトグラフが、オクチルセファロースクロマトグラフを含む、先行項目のいずれかに記載の方法。
(項目9)
アニオン交換クロマトグラフでの精製ステップを更に含む、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記アニオン交換クロマトグラフが、Sartobind(商標)イオン交換膜を含む、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記試料の1つ以上を、ナノフリースフィルタでの濾過に供することを更に含む、先行項目のいずれかに記載の方法。
(項目12)
前記ナノフリースフィルタでの前記濾過が、前記試料の前記STIベースのアフィニティークロマトグラフへの充填に先行する、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記精製された試料が、約1%未満の、前記ポリヌクレオチドコンストラクトから発現されたものではない汚染タンパク質を含む、先行項目のいずれかに記載の方法。
(項目14)
前記ポリペプチド生成物が前記ポリヌクレオチドコンストラクトを含む細胞において発現される、先行項目のいずれかに記載の方法。
(項目15)
前記細胞が、培養液1リットルあたり少なくとも100mgの前記ポリペプチド生成物を産生する条件下で、培養液中で増殖される、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記細胞が、培養液1リットルあたり少なくとも200mgの前記ポリペプチド生成物を産生する条件下で、培養液中で増殖される、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記精製された試料が、約50%を超える前記培養液中で産生された前記ポリペプチド生成物を含む、項目15または16に記載の方法。
(項目18)
前記精製された試料が、前記培養液のリットルあたりの産生量から約100mgを超える前記ポリペプチド生成物を含む、項目15または16に記載の方法。
(項目19)
前記ポリペプチド生成物が、軽鎖及び重鎖を含む二重鎖ポリペプチドである、先行項目のいずれかに記載の方法。
(項目20)
前記精製された試料における約20%~50%の前記ポリペプチド生成物が、配列番号5のアミノ酸配列からなる重鎖を有する、項目19に記載の方法。
(項目21)
約5%~95%の配列番号5のアミノ酸配列からなる前記重鎖が、2つのO-結合グリコシル化を有し、約5%~95%の配列番号5のアミノ酸配列からなる前記重鎖が、1つのO-結合グリコシル化を有する、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記精製された試料における約40%~80%の前記ポリペプチド生成物が、配列番号8のアミノ酸配列からなる重鎖を有する、項目19~21のいずれか1項に記載の方法。
(項目23)
少なくとも約90%の配列番号8のアミノ酸配列からなる前記重鎖が、1つのO-結合グリコシル化を有する、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記精製された試料における約2%~12%の前記ポリペプチド生成物が、配列番号9のアミノ酸配列からなる重鎖を有する、項目19~23のいずれか1項に記載の方法。
(項目25)
前記精製された試料における約0.1%~1.5%の前記ポリペプチド生成物が、配列番号10のアミノ酸配列からなる重鎖を有する、項目19~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目26)
前記精製された試料における約2%~8%の前記ポリペプチド生成物が、配列番号11のアミノ酸配列からなる重鎖を有する、項目19~25のいずれか1項に記載の方法。
(項目27)
前記精製された試料における約35%~60%の前記ポリペプチド生成物が、配列番号4のアミノ酸配列からなる軽鎖を有する、項目19~26のいずれか1項に記載の方法。
(項目28)
項目1~27のいずれか1項に記載の方法により調製されたポリペプチド。
(項目29)
医薬的に許容される担体及び二重鎖ポリペプチドのポリペプチド部分を含む医薬組成物であって、
約35%~60%の前記二重鎖ポリペプチドが配列番号4のアミノ酸配列からなる軽鎖を有し、
約20%~60%の前記二重鎖ポリペプチドが配列番号5のアミノ酸配列からなる重鎖を有し、
約40%~60%の前記二重鎖ポリペプチドが配列番号8のアミノ酸配列からなる重鎖を有し、
10%未満の前記二重鎖ポリペプチドが配列番号9のアミノ酸配列からなる重鎖を有する、前記医薬組成物。
(項目30)
5%未満の前記二重鎖ポリペプチドが配列番号9のアミノ酸配列からなる重鎖を有する、項目29に記載の医薬組成物。
(項目31)
3%未満の前記二重鎖ポリペプチドが配列番号9のアミノ酸配列からなる重鎖を有する、項目29に記載の医薬組成物。
(項目32)
約0.1%~1.5%の前記二重鎖ポリペプチドが配列番号10のアミノ酸配列からなる重鎖を有する、項目29~31のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目33)
約2%~8%の前記二重鎖ポリペプチドが配列番号11のアミノ酸配列からなる重鎖を有する、項目29~32のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目34)
約30%~70%の配列番号5のアミノ酸配列からなる前記重鎖が、2つのO-結合グリコシル化を有する、項目29~33のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目35)
約30%~70%の配列番号5のアミノ酸配列からなる前記重鎖が、1つのO-結合グリコシル化を有する、項目29~34のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目36)
少なくとも約90%の配列番号8のアミノ酸配列からなる前記重鎖が、1つのO-結合グリコシル化を有する、項目29~35のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目37)
前記製剤が、凍結乾燥される、項目29~36のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目38)
L-アルギニンHClまたはL-アルギニンアセテートを更に含む、項目29~37のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目39)
スクロースを更に含む、項目29~38のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目40)
マンニトールを更に含む、項目29~39のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目41)
第Xa因子インヒビターでの抗凝固療法を受けている患者における抗凝固を拮抗または阻害するための方法であって、前記患者に項目29~40のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本願発明の一実施形態に係る精製プロセス100を示す。
図2図2は、本願発明の一実施形態に係る規模拡大後続プロセスを示す。
図3図3は、本願発明の一実施形態に係る3つの潜在的な後続プロセス(DSP)の評価を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
以下の説明は本技術の例示的な実施形態を記述する。しかし、そのような説明は、本開示の範囲を限定するものではなく、例示的な実施形態の説明として提供されることが認識されるべきである。
【0017】
例えば、範囲を含むpH、温度、時間、濃度及び分子量などの全ての数値表示は、0.1または10%の増分により(+)または(-)変動する近似値である。必ずしも明記されるわけではないが、全ての数値表示の前に用語「約」が付いていることを理解されるべきである。また、必ずしも明記されるわけではないが、本明細書に記載の試薬は単なる例示であり、その等価物は当該技術分野において公知であることも理解されるべきである。
【0018】
明細書及び特許請求の範囲において使用される、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の参照を含む。例えば、用語「医薬的に許容される担体」としては、その混合物を含む複数の医薬的に許容される担体が挙げられる。
【0019】
本明細書で用いられる、用語「含む」は、組成物及び方法が列挙された要素を含むが、他の要素を排除しないことを意味することを意図する。組成物及び方法を定義するために使用する場合、「から本質的になる」は、意図された使用のために、本質的な意味を持つ他の要素を組み合わせに含まないことを意味する。従って、本明細書で定義される要素から本質的になる組成物は、単離及び精製方法ならびにリン酸緩衝化生理食塩水、防腐剤などの医薬的に許容される担体から微量の汚染物質を排除しない。「からなる」とは、他の成分の微量を超える要素及び本開示の組成物を投与するための実質的な方法のステップを含まないことを意味する。これらの推移する用語のそれぞれにより定義される実施形態は、本開示の範囲内にある。
【0020】
用語「タンパク質」及び「ポリペプチド」は、互換可能的に、これらの最も広義において、2つ以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体またはペプチド模倣薬の化合物を指すために使用される。サブユニットはペプチド結合により結合し得る。別の実施形態においては、サブユニットは、例えばエステル、エーテルなどの他の結合により結合し得る。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含まなければならず、タンパク質の配列またはペプチドの配列を含み得るアミノ酸の最大数に制限はない。本明細書で使用される用語「アミノ酸」は、グリシンならびにD光学異性体及びL光学異性体の両方、アミノ酸類似体及びペプチド模倣体を含む天然及び/または非天然もしくは合成アミノ酸のいずれかを指す。天然アミノ酸の1文字及び3文字の略語を、以下に列挙する。
【0021】
「第Xa因子」または「fXa」または「fXaタンパク質」は、血液凝固経路におけるセリンプロテアーゼであり、これは、不活性第X因子から産生される(fX、配列番号1、表1)。ヒト第X因子(「fX」)をコードするヌクレオチド配列は、受託番号「NM_000504」でGenBankにおいて見出すことができる。重鎖の最初の52の残基の触媒的開裂により、fXは活性化されfXaとなる。FXaは軽鎖及び重鎖を含む。軽鎖の最初の45のアミノ酸残基(配列番号1の残基1~45)は、翻訳後に修飾された11個のγ-カルボキシグルタミン酸残基(Gla)を含むため、Glaドメインと呼ばれる。また、短い(6のアミノ酸残基)芳香族スタック配列(配列番号1の残基40~45)も含む。キモトリプシン消化は1~44の残基を選択的に除去し、Glaドメインを欠くfXaを生じる。fXaのセリンプロテアーゼ触媒的ドメインは、C末端重鎖に位置する。fXaの重鎖は、トロンビン、トリプシン、及び活性タンパク質Cなどの他のセリンプロテアーゼに対する相同性が高い。
【0022】
「天然のfXa」または「野生型fXa」は、血漿中に天然に存在するか、またはプロトロンビンを活性化する生物学的活性を処理し、従って、血餅の形成を促進する元の非修飾形態で単離されるfXaを指す。この用語には、組織試料から単離された天然に存在するポリペプチド、及び組換え産生されたfXaが含まれる。「活性fXa」はプロトロンビンを活性化する凝血促進活性を有するfXaを指す。「活性fXa」は、凝固促進活性を保持する天然fXaまたは改変fXaであり得る。
【0023】
本明細書で用いられる「fXa解毒剤」、「解毒剤」、または「fXa誘導体」は、プロトロンビナーゼ複合体への組み込みにおいてfXaと競合せず、凝固促進活性または触媒活性が低下しているか、もしくはなく、更にfXaインヒビターなどの抗凝固剤と結合及び/またはそれを実質的に中和する改変されたfXaタンパク質を指す。いくつかの態様においては、fXaタンパク質またはfXa誘導体の「凝固促進活性」は、野生型活性fXaポリペプチドが保持する酵素活性を指す。fXa誘導体の例は、米国特許第8,153,590号、及びPCT公報WO2009/042962及びWO2010/056765に提供され、配列番号2及び3及びそれらの生物学的等価物などが本明細書に更に提供される。
【0024】
fXaポリペプチドまたはその誘導体の「酵素活性」は、基質との直接的な相互作用を介して、基質との生化学反応を触媒するポリペプチドの能力を指す。
【0025】
配列番号2は、野生型fXaと比較して3つの突然変異を含む。第1の突然変異は、fXのGlaドメインにおける6~39aaの欠損である。第2の突然変異は、活性化ペプチド配列143~194aaの-RKR-との置換である。これにより、軽鎖(配列番号4)及び重鎖(配列番号5)を結合する-RKRRKR-(配列番号6)リンカーが生成される。分泌すると、このリンカーは切断され、二重鎖ポリペプチド、配列番号3(r-Antidote)をもたらす。第3の突然変異は、活性部位残基S379のAla残基への突然変異である。このアミノ酸置換は、配列番号1及び3のアミノ酸296及び290にそれぞれ対応する。
【0026】
解毒剤の例は、リンカーの切断後、配列番号2のプロセシングされた二重鎖ポリペプチドプロセシング産物を指す「r-Antidote」である。これは、配列番号3により示される。r-Antidoteは、例えばUS8,153,590に開示され、その内容は参考により本開示に組み込まれる。r-Antidoteは、軽鎖のシステイン98(Cys98)との重鎖のシステイン108(Cys108)との間の単一のジスルフィド結合で結合された軽鎖(配列番号4)及び重鎖(配列番号5)を含む。野生型fXaと同様に、特定の産生バッチにおいては、r-Antidoteは翻訳後修飾を受けて、例えば、軽鎖のSer56、Ser72、Ser76及びThr82及び重鎖のThr249などの特定のアミノ酸残基ならびに修飾された残基、軽鎖のAsp29での(3R)-3-ヒドロキシAspなどの特定のアミノ酸残基でグリコシル化される。更に、鎖間のジスルフィド結合に加えて、軽鎖のシステイン16と27との間、21と36との間、38と47との間、55と66との間、62と75との間、77と90との間ならびに重鎖のシステイン7と12との間、27と43との間、156と170との間、及び181と209との間に形成された鎖内のジスルフィド結合が存在することができる。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】
【0027】
解毒剤の他の例は、r-Antidote(または配列番号2に示されるそれらの前駆体)の生物学的等価物か、あるいは配列番号3に特定の配列同一性を有するポリペプチドであり得る。一態様においては、かかる生物学的等価物は、配列番号3の構造滴特性、つまり、修飾された活性部位及び欠失または修飾されたGlaドメインを保持する。別の態様においては、かかる生物学的等価物は、配列番号3の機能的特性、つまり、プロトロンビナーゼ複合体への組み込みにおいてfXaと競合しないこと及び凝固促進(例えば、酵素的または触媒的)活性が低下しているか、またはないことを保持する。
【0028】
用語「活性部位」は化学反応が起こる酵素または抗体の部分を指す。「改変された活性部位」は、化学的反応性または特異性の増加または減少した活性部位をもたらすように構造的に改変された部位である。活性部位の例としては、235~488のアミノ酸残基を含むヒト第X因子の触媒ドメイン及び195~448のアミノ酸残基を含むヒト第Xa因子の触媒ドメインが挙げられるが、これらに限定されない。改変された活性部位の例としては、位置Arg306、Glu310、Arg347、Lys351、Lys414またはArg424での少なくとも1つのアミノ酸置換を有する、配列番号1の195~448のアミノ酸残基を含むヒト第Xa因子の触媒ドメインが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
解毒剤の調製
実験例(実施例1及び2)は、fXa解毒剤を調製するための培養及び精製方法の開発を実証した。培養された細胞は、配列番号7の核酸配列または配列番号7によりコードされるアミノ酸配列に少なくとも90%の配列同一性(もしくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドコンストラクトを含む。細胞は通常、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0030】
精製方法の1つは図1に例示される。細胞を収集(ステップ101)し、デプスフィルタを用いて清澄化し、高分子重量(HWM)の不純物を除去した後、試料を濃縮した(例えば、約10倍)(ステップ102)。濃縮ステップは制限なく、再生セルロースを使用することができる。ステップ103において、ウィルス不活性化(例えば、1%のトリトンX-100、0.3%のトリブチルホスフェート(最終濃度)などの界面活性剤/溶媒を用いて)を行い、細胞培養における外被に覆われたウィルスを不活性化することができる。ウィルスの除去に続いて、ステップ104(混合モードカチオン交換)、105(混合モードアニオン交換)及び106(混合モードイオン交換)を行い、宿主細胞タンパク質及びDNAを除去し、解毒剤を捕捉する。ステップ107では、疎水性相互作用樹脂を使用し、更に残存する宿主細胞タンパク質を除去することができる。場合により、これらの精製ステップの後に、最終的なウィルス除去濾過ステップを用い、全ての残存するウィルスを除去することができる。
【0031】
別の実施形態においては、精製ステップは図2に例示され、実施例2において実証される。いくつかの実施形態においては、方法はポリヌクレオチドコンストラクト(例えば、配列番号7)及びポリヌクレオチドコンストラクトから発現したポリペプチド生成物(例えば、配列番号3)を含む試料に界面活性剤を添加することを含む。いくつかの実施形態においては、界面活性剤はトリトンX-100を含む。いくつかの実施形態においては、試料がその後の親和性精製に供される前に、試料を処理するために溶媒は使用されない。いくつかの実施形態においては、試料がその後の親和性精製に供される前に、試料を処理するために有機溶媒は使用されない。いくつかの実施形態においては、試料がその後の親和性精製に供される前に、試料にトリブチルホスフェートは添加されない。
【0032】
いくつかの実施形態においては、次いで試料を大豆トリプシンインヒビター(STI)ベースのアフィニティークロマトグラフに充填し、溶出緩衝液で溶出して溶出された試料を生成する。いくつかの実施形態においては、充填された試料は有機溶媒で処理されていないか、または有機溶媒を含まない。
【0033】
「STI」または「大豆トリプシンインヒビター」は、大豆またはその生物学的等価物から単離されたトリプシンインヒビターを指す。トリプシンインヒビターは、サイズが約20kDaであり、トリプシン(タンパク質分解酵素)及び血漿カリクレイン、第Xa因子及びプラスミン活性を低下させる。STIは、Life Technologies(Grand Island,NY)などの供給業者から市販で入手可能である。STIの例は、GenBank受託番号NP_001238611を有するダイズ(大豆)由来のKTI3 Kunitzトリプシンインヒビターである。
【0034】
特定のタンパク質の精製のため、STIを固体支持体樹脂上に固定化することができる。大豆トリプシンインヒビターに加えて、血清、ライマメ、ウシ膵臓、もしくはオボムコイドから単離されたもの、またはそれらの改変された形態などの他のトリプシンインヒビタータンパク質もまた利用することができる。また、特定のプロテアーゼインヒビター、特にセリンプロテアーゼインヒビターを使用して、解毒剤を精製する目的で親和性樹脂を調製できることも想到される。次いで、解毒剤を、アルギニンを含む緩衝液で溶出してもよい。いくつかの実施形態においては、溶出緩衝液は少なくとも0.2M、0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、1M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.5M、または2Mのアルギニンを含む。いくつかの実施形態においては、溶出緩衝液は約0.5M~2Mのアルギニン、または約0.7M~1.5Mのアルギニン、または0.8M~1.2Mのアルギニンを含む。いくつかの実施形態においては、溶出緩衝液は約4.5~6、または4.6~5.6、または4.7~5.5、または4.8~5.4、または5~5.4、または5.1~5.3または約5.2のpHを有する。一実施形態においては、溶出緩衝液はpH5.2で25mMの酢酸ナトリウム、1.0Mのアルギニンを含む。
【0035】
いくつかの実施形態においては、次いで、試料をイオン交換及び混合モードクロマトグラフに充填する。イオン交換及び混合モードクロマトグラフの非限定例としては、セラミックヒドロキシアパタイトタイプIクロマトグラフが挙げられる。次いで、試料を、無機塩を含む溶出緩衝液で溶出してもよい。いくつかの実施形態においては、無機塩は塩化ナトリウムまたは塩化カリウムである。いくつかの実施形態においては、溶出緩衝液における塩の濃度は、少なくとも0.5M、1M、1.5M、2M、2.5Mまたは3Mである。
【0036】
いくつかの実施形態においては、溶出は、平衡緩衝液と溶出緩衝液との間に発生した勾配の使用を伴う。均衡緩衝液は、いくつかの実施形態においては、例えば0.2M未満、0.1M未満、50mM未満、20mM未満、10mM未満などのより低い濃度の塩を含む。いくつかの実施形態においては、勾配は、少なくとも5倍、または10倍、または20倍、または50倍、または100倍の塩の濃度の増加を含む。いくつかの実施形態においては、pH7.0で、平衡緩衝液は50mMのMES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、5mMのリン酸ナトリウムを含む。いくつかの実施形態においては、pH7.0で溶出緩衝液は50mMのMES、5mMのリン酸ナトリウム、2Mの塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態においては、勾配は約90%の平衡緩衝液で開始し、約90%の溶出緩衝液で終了する。
【0037】
いくつかの実施形態においては、試料を更に疎水性相互作用クロマトグラフに充填する。いくつかの実施形態においては、疎水性相互作用クロマトグラフはオクチルセファロースクロマトグラフを含む。いくつかの実施形態においては、試料を、少なくとも2mMの塩化ナトリウム、あるいは少なくとも1M、1.5M、2.5M、3M、4Mまたは5Mの塩化ナトリウムを含む溶出緩衝液で溶出する。
【0038】
いくつかの実施形態においては、上記の中間体試料の1つを、更にアニオン交換クロマトグラフでの精製ステップに供する。いくつかの実施形態においては、アニオン交換クロマトグラフは、Sartobind(商標)イオン交換膜を含む。いくつかの実施形態においては、アニオン交換クロマトグラフはアフィニティークロマトグラフの後に適用される。
【0039】
いくつかの実施形態においては、上記の中間体試料の1つを、更にナノフリースフィルタでの濾過に供する。いくつかの実施形態においては、ナノフリースフィルタでの濾過は、試料をSTIベースのアフィニティークロマトグラフに充填する前に適用される。
【0040】
いくつかの実施形態においては、精製された試料は、宿主細胞タンパク質または親和性樹脂/カラムから放出されたSTIなどのポリヌクレオチドコンストラクトにより発現されたものではない約1%未満の汚染タンパク質を含む。
【0041】
上記の実施形態のいずれかの精製プロセスは、少なくとも約50%(または少なくとも約40%、45%、55%、60%、65%、70%、75%、80%もしくは85%)の、細胞培養において発現された解毒剤タンパク質を回収することができる。いくつかの実施形態においては、細胞は、培養液1リットルあたり少なくとも100mgのポリペプチド生成物を産生する条件下で、培養液中で増殖される。いくつかの実施形態においては、細胞は、培養液1リットルあたり少なくとも120mg(または少なくとも210mg、220mg、230mg、240mg、250mg、270mg、280mg、290mg、300mg、310mg、320mg、330mg、340mg、もしくは350mg)のポリペプチド生成物を産生する条件下で培養液中で増殖する。いくつかの実施形態においては、精製された試料は、培養液1リットルあたりの産生量から、約50mg超(または少なくとも55mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mgもしくは200mg)のポリペプチド生成物を含む。
【0042】
精製された生成物における解毒剤異性体
本開示の実施形態のいずれかの方法からの精製された解毒剤生成物は、軽鎖及び重鎖を含むと考えられる。しかし、培養及び精製プロセスは、実際のタンパク質に変化を導入し得る。
【0043】
実施例3に実証するように、精製された試料における約20%~50%のポリペプチド生成物は、未変化の重鎖(配列番号5)を有する。未変化の重鎖を有するこれらの中で、約5%~95%の重鎖は2つのO-結合グリコシル化を有し、約5%~95%の重鎖は1つのO-結合グリコシル化を有する。
【0044】
いくつかの実施形態においては、精製された試料における少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%または45%のポリペプチド生成物は未変化の重鎖を有する。いくつかの実施形態においては、精製された試料における約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、または80%以下のポリペプチド生成物は未変化の重鎖を有する。
【0045】
いくつかの実施形態においては、精製された試料における約40%~80%のポリペプチド生成物は、C末端リジンを欠失する重鎖(配列番号8)を有する。いくつかの実施形態においては、配列番号8は、精製された試料の少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%を構成する。いくつかの実施形態においては、配列番号8は、精製された試料の約45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%または90%以下を構成する。いくつかの実施形態においては、少なくとも約90%の配列番号8の重鎖は、1つのO-結合グリコシル化を有する。
【0046】
いくつかの実施形態においては、精製された試料における約2%~12%のポリペプチド生成物は、13のC末端アミノ酸残基を欠失する重鎖(配列番号9)を有する。いくつかの実施形態においては、配列番号9は、精製された試料の少なくとも約0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%または5%を構成する。いくつかの実施形態においては、配列番号9は、精製された試料の約2%、3%、4%、5%、7%、10%、15%、17%、または20%以下を構成する。
【0047】
いくつかの実施形態においては、精製された試料における約0.1%~1.5%のポリペプチド生成物は、14のC末端アミノ酸残基を欠失する重鎖(配列番号10)を有する。いくつかの実施形態においては、配列番号10は、精製された試料の少なくとも約0.05%、0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%または0.5%を構成する。いくつかの実施形態においては、配列番号10は、精製された試料の約0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.5%、2%、2.5%または3%以下を構成する。
【0048】
いくつかの実施形態においては、精製された試料における約2%~8%のポリペプチド生成物は、15のC末端アミノ酸残基を欠失する重鎖(配列番号11)を有する。いくつかの実施形態においては、配列番号11は、精製された試料の少なくとも約0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%または5%を構成する。いくつかの実施形態においては、配列番号11は、精製された試料の約5%、6%、7%、8%、9%、または10%以下を構成する。
【0049】
実施例3はまた、精製された試料における約35%~60%のポリペプチド生成物が未変化の軽鎖(配列番号4)を有する一方、他のいくつかは改変または切断される可能性があることを示す。いくつかの実施形態においては、軽鎖の総数における未変化の軽鎖の量は、少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%である。いくつかの実施形態においては、軽鎖の総数における未変化の軽鎖の量は、約45%、50%、55%、60%、65%、70%、80%または90%以下である。
【0050】
いくつかの実施形態においては、本開示は、医薬的に許容される担体及び二重鎖ポリペプチドのポリペプチド部分を含む医薬品であって、約35%~60%の二重鎖ポリペプチドが配列番号4のアミノ酸配列からなる軽鎖を有する医薬品を提供する。いくつかの実施形態においては、約20%~50%の二重鎖ポリペプチドは配列番号5のアミノ酸配列からなる重鎖を有する。いくつかの実施形態においては、約40%~80%の二重鎖ポリペプチドは配列番号8のアミノ酸配列からなる重鎖を有する。いくつかの実施形態においては、約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%または3%未満の二重鎖ポリペプチドは配列番号9のアミノ酸配列からなる重鎖を有する。いくつかの実施形態においては、約0.1%~1.5%の二重鎖ポリペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列からなる重鎖を有する。いくつかの実施形態においては、約2%~8%の二重鎖ポリペプチドは配列番号11のアミノ酸配列からなる重鎖を有する。
【0051】
いくつかの実施形態においては、配列番号5のアミノ酸配列からなる重鎖の約5%~95%は、2つのO-結合グリコシル化を有する。いくつかの実施形態においては、配列番号5のアミノ酸配列からなる重鎖の約5%~95%は、1つのO-結合グリコシル化を有する。いくつかの実施形態においては、配列番号8のアミノ酸配列からなる重鎖の少なくとも約90%は、1つのO-結合グリコシル化を有する。
【0052】
製剤、方法及び投与量
精製された解毒剤タンパク質生成物で調製された製剤もまた提供される。いくつかの実施形態においては、凍結乾燥に好適な水性製剤が提供される。一実施形態においては、製剤は、可溶化剤、安定化剤(または安定剤)、及び結晶性作用物質と共に解毒剤を含む。製剤は界面活性剤及び/または緩衝剤を更に含んでもよい。いくつかの態様においては、これらの作用剤の各々の存在により、凍結乾燥の間、例えば、凍結乾燥温度が-40℃、-30℃、-20℃、-10℃、0℃、5℃、10℃、または15℃より高く、20℃または25℃と同等の高さである場合に、解毒剤の崩壊が防止される。
【0053】
「結晶質成分」は、ポリペプチドを含む製剤において、凍結乾燥プロセスの間、結晶質マトリクスを形成する分子を指す。結晶質成分の非限定例としては、マンニトール及びグリシンが挙げられる。
【0054】
いくつかの態様においては、結晶質成分はマンニトール(例えば、結晶性マンニトール)である。一態様においては、水性製剤における結晶質成分の濃度は、少なくとも1%(w/v)である。一態様においては、水性製剤における結晶質成分の濃度は、少なくとも1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、または4%(w/v)である。一態様においては、水性製剤における結晶質成分の濃度は、8%よりも高くないか、あるいは7%、6.5%、6%、5.5%、5%、4.5%または4%(w/v)よりも高くない。一態様においては、水性製剤における結晶質成分の濃度は、約1%~約8%、または約2%~約6%、または約3%~約5.5%、または約4.5%~約5.5%、または約4.6%~約5.4%、または約4.7%~約5.3%、または約4.8%~約5.2%、または約4.9%~約5.1%、または約4%、4.5%、または5%(w/v)である。
【0055】
いくつかの態様においては、可溶化剤は水性製剤中に含まれる。用語「可溶化剤」は、溶液中に存在する場合、溶液中の別の分子(例えば、活性成分)の溶解度を増加させる塩、イオン、炭水化物、複合体形成剤、ポリマー及び他の化合物を指す。可溶化剤の非限定例としては、アルギニン及びクエン酸が挙げられる。一態様においては、可溶化剤はアルギニンである。一態様においては、可溶化剤はクエン酸である。
【0056】
可溶化剤の存在は、fXaポリペプチドを製剤中に可溶性及び安定に保つのに有用であり得る。いくつかの態様においては、可溶化剤(例えば、アルギニン)の濃度は、少なくとも10mM、あるいは少なくとも20mM、25mM、30mM、36mM、または40mMである。いくつかの態様においては、可溶化剤(例えば、アルギニン)の濃度は、100mM、96mM、90mM、80mM、70mM、60mMまたは50mMよりも高くない。いくつかの態様においては、可溶化剤の濃度は約10mMまたは20mM~約60mM、約10mMまたは20mM~約55mM、約35mM~約55mM、約40mM~約50mM、約41mM~約49mM、約42mM~約48mM、約43mM~約47mM、約44mM~約46mM、または40mM、45mMまたは50mMである。本明細書で使用されるアルギニンという用語は、アミノ酸及びその塩(例えば、アルギニンHCl)を指すことに留意されたい。アルギニンは約174.2ダルトンの分子量を有し、アルギニンHCl(例えば、L-アルギニンHCl、L-アルギニンアセテート)は約210.7ダルトンの分子量を有する。
【0057】
一実施形態においては、可溶化剤はクエン酸またはその塩である。クエン酸の塩はクエン酸ナトリウムである。一態様においては、クエン酸は約1.0mM~約200.0mMの濃度を含む。更なる態様においては、クエン酸の濃度は約25mMである。別の態様においては、クエン酸の濃度は約50mMである。更なる実施形態においては、クエン酸の濃度は約5mM、10mM、または20mMである。別の実施形態においては、クエン酸は約0.05mM~約0.2mMの濃度を含む。
【0058】
いくつかの態様においては、安定剤は水性製剤中に含まれる。用語「安定剤」は、製造、貯蔵及び適用中の化学的及び/または物理的分解から有効成分(例えば、fXa誘導体ポリペプチド)及び/または製剤を保護する医薬的に許容される賦形剤を意味する。安定剤の例としては、スクロース、アルギニン、クエン酸、マンニトール、トレハロース、グリシン、塩化ナトリウム、デキストラン及びグルコースが挙げられる。一態様においては、安定剤はスクロースである。
【0059】
一態様においては、水性製剤における安定剤(例えば、スクロース)の濃度は、少なくとも約0.5%(w/v)である。一態様においては、水性製剤における安定剤(例えば、スクロース)の濃度は、少なくとも約0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%または2%(w/v)である。一態様においては、水性製剤における安定剤(例えば、スクロース)の濃度は、約5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%または2%(w/v)を超えない。一態様においては、水性製剤における安定剤(例えば、スクロース)の濃度は、約1%~約5%、または約1%~約4%、または約1%~約3%、または約1.5%~約2.5%、または約1.6%~約2.4%、または約1.7%~約2.3%、または約1.7%~約2.2%、または約1.9%~約2.1%、または約1%、1.5%、2%、2.5%または3%(w/v)である。
【0060】
いくつかの態様においては、水性製剤は、界面活性剤、緩衝剤、等張剤、抗凍結剤、界面活性剤、凍結保護剤、防腐剤またはそれらの組み合わせを更に含むことができる。
【0061】
いくつかの態様においては、水性製剤は6以上、または6.5以上、または7以上、または7.5以上のpHを有する。いくつかの態様においては、pHは9、8.5、または8よりも高くない。いくつかの態様においては、pHは6~9、6.5~8.5、7~8.5、7.5~8.2、7.6~8.1、7.7~7.9、または約7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、もしくは8である。
【0062】
一態様においては、水性製剤は約45mMのアルギニン、約2%のスクロース(w/v)、約5%のマンニトール(w/v)及び約10mg/mLの二重鎖r-Antidoteを含み、この製剤は約7.8のpHを有する。一態様においては、水性製剤は約45mMのアルギニン、約2%のスクロース(w/v)、約5%のマンニトール(w/v)及び約20mg/mLの二重鎖r-Antidoteを含み、この製剤は約7.8のpHを有する。一態様においては、水性製剤は約45mMのアルギニン、約2%のスクロース(w/v)、約5%のマンニトール(w/v)及び約40mg/mLの二重鎖r-Antidoteを含み、この製剤は約7.8のpHを有する。一態様においては、水性製剤は0.01%~0.02%(w/v)のポリソルベート80及び緩衝液を更に含む。
【0063】
いくつかの態様においては、本開示の水性製剤を凍結乾燥することにより調製された凍結乾燥された組成物もまた提供される。水性製剤における各作用剤の濃度に基づき、凍結乾燥された組成物における作用剤の相対含有量を即座に決定できる。
【0064】
一態様においては、凍結乾燥された組成物は少なくとも5%、あるいは少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、または35%(w/w)のfXa解毒剤を含む。次いで、他の主成分内で、例えば、L-アルギニンHCl:スクロース:マンニトールの重量比は、(0.5~1.4):(1~3):(2~6)の範囲であり得る。いくつかの態様においては、L-アルギニンHCl:スクロース:マンニトールの重量比は、(0.9~1):(1.5~2.5):(4.5~5.5)、または(0.91~0.99):(1.6~2.4):(4.6~5.4)、または(0.92~0.98):(1.7~2.3):(4.7~5.3)、(0.93~0.97):(1.8~2.2):(4.8~5.2)、または(0.94~0.96):(1.9~2.1):(4.9~5.1)の範囲である。いくつかの態様においては、凍結乾燥された組成物は、界面活性剤及び/または緩衝液の固体部分を更に有する。
【0065】
本開示はまた、fXaインヒビターでの抗凝固療法を受けている対象における出血を治療、予防または軽減する治療方法であって、適切な溶媒に溶解される有効量の凍結乾燥された製剤を対象に投与することを含む治療方法に関する。本開示の解毒剤または誘導体は、待機的または緊急の状況で使用される短期間薬剤であり得、有害な血行力学的副作用または損傷に対する増殖性血管反応の増悪を引き起こさずにfXaインヒビターの従来の抗凝固特性を安全かつ特異的に中和することができることが想到される。
【0066】
本明細書で用いられる用語「治療すること」、「治療」等は、所望の薬理的及び/または生理的効果を得ることを意味するために本明細書で使用される。その効果は、疾患またはその徴候もしくは症状を完全または部分的に予防することに関して予防的であり得、及び/または疾患及び/または疾患に起因する有害作用を部分的または完全に治癒することに関して治療的であり得る。
【0067】
「治療すること」はまた、哺乳動物における疾患の任意の治療を包含し、(A)罹患し得る傾向にあるが、まだ罹患していると診断されていない可能性がある対象において疾患が生じることを予防する(例えば、抗凝固剤の過剰摂取を伴う患者における出血を予防する)こと、(b)疾患を阻害する(すなわちその発生を阻止すること、例えば出血を抑制する)こと、または(c)疾患を軽減または改善する(例えば、出血を減少させる)ことを含む。
【0068】
本明細書で用いられる「治療する」は、病状に関連する症状の全身的改善及び/または症状の発症の遅延を更に含む。「治療」の臨床的及び亜臨床的証拠は、病理学、個体及び治療によって変化する。
【0069】
「投与」は、治療の過程全体にわたって、1回の投与で、連続してまたは断続的に行うことができる。投与の最も有効な手段及び投与量を決定する方法は、当業者に公知であり、治療に使用される組成物、治療の目的、治療される標的細胞、及び治療される対象によって変化する。治療する医師により選択される用量レベル及びパターンに応じて単一または複数回投与を行うことができる。投与する薬剤の好適な用量の製剤及び方法は、当該技術分野において公知である。診断または治療の「対象」は、細胞またはヒトを含む哺乳動物である。診断または治療の非ヒト動物対象としては、例えば、ラット、マウスなどのマウス、イヌなどのイヌ科動物、ウサギなどのウサギ科動物、家畜、スポーツ用の動物、及びペットが挙げられる。
【0070】
本開示の薬剤及び組成物は、薬剤の製造において、ならびに医薬組成物中の有効成分などの従来の手順に従って投与することによって、ヒト及び他の動物の治療用に使用することができる。
【0071】
本開示の薬剤は、任意の好適な経路により、特に非経口(皮下、筋肉内、静脈内及び皮内を含む)投与により、治療のために投与することができる。また、好ましい経路は、受容者の状態及び年齢、ならびに治療される疾患によって変化することも理解されよう。
【0072】
表現「医薬的に許容されるポリマー」は、1つ以上の本明細書に記載のポリペプチドに結合することができる化合物の群を指す。ポリマーのポリペプチドへの結合は、ポリペプチドのin vivo及びin vitroの半減期を延長することができることが想到される。非限定例としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、糖類、ポリオール及びこれらの混合物が挙げられる。
【0073】
「抗凝固薬」または「抗凝固剤」は血餅形成を阻害する薬剤である。抗凝固剤の例としては、トロンビン、第IXa因子、第Xa因子、第XIa因子、第XIIa因子または第VIIa因子に特異的なインヒビター、ヘパリン及び誘導体、ビタミンK拮抗剤、ならびに抗組織因子抗体が挙げられるが、これらに限定されない。トロンビンの特定のインヒビターの例としては、ヒルジン、ビバリルジン(Angiomax(商標登録))、アルガトロバン及びレピルジン(Refludan(商標登録))が挙げられる。ヘパリン及び誘導体の例としては、未分画ヘパリン(UFH)、エノキサパリン(Lovenox(商標登録)、ダルテパリン(Fragmin(商標登録)、及びダナパロイド(Orgaran(商標登録))などの低分子量ヘパリン(LMWH)、フォンダパリヌクス(Arixtra(商標登録))などの合成五糖類が挙げられる。ビタミンK拮抗剤の例としては、ワルファリン(Coumadin(商標登録))、フェノクマロール、アセノクマロール(Sintrom(商標登録))、クロリンジオン、ジクマロール、ジフェナジオン、エチルビスクムアセテート、フェンプロクモン、フェニンジオン、及びチオクロマロールが挙げられる。一実施形態においては、抗凝固剤は第Xa因子のインヒビターである。一実施形態においては、抗凝固剤はベトリキサバンである。
【0074】
「抗凝固治療」は、望ましくない血餅または血栓症を予防するために患者に投与される治療法を指す。抗凝固治療は、患者における望ましくない血餅または血栓症を治療または予防するのに好適な用量及び計画で、1つのまたは2つ以上の抗凝固剤もしくは他の薬剤の組み合わせを投与することを含む。
【0075】
用語「第Xa因子インヒビター」または「第Xa因子のインヒビター」は、in vitro及び/またはin vivoでのプロトロンビンのトロンビンへの変換を触媒する凝固因子Xaの活性を、直接的または間接的に阻害することができる化合物を指す。
【0076】
「直接型第Xa因子インヒビター」はfXaに直接結合し、非限定例としては、NAP-5、rNAPc2、組織因子経路インヒビター(TFPI)、DX-DX-9065a(例えば、Herbert,J.M.,et al,J Pharmacol Exp Ther.1996 276(3):1030-8に記載される)、YM-60828(例えば、Taniuchi,Y.,et al,Thromb Haemost.1998 79(3):543-8に記載される)、YM-150(例えば、Eriksson,B.I.et.al,Blood 2005;106(11),Abstract 1865に記載される)、アピキサバン、リバーロキサバン、TAK-442、PD-348292(例えば、Pipeline Insight:Antithrombotics-Reaching the Untreated Prophylaxis Market,2007に記載される)、オタミキサバン、エドキサバン(例えば、Hylek
EM,Curr Opin Invest Drugs 2007 8(9):778-783に記載される)、LY517717(例えば、Agnelli,G.,et al,J.Thromb.Haemost.2007 5(4):746-53に記載される)、GSK913893、ラザキサバン、ベトリキサバンまたは薬学的に許容されるそれらの塩及びそれらの組み合わせが挙げられる。特定の態様においては、直接型第Xa因子インヒビターはリバーロキサバンである。いくつかの態様においては、直接型fXaインヒビターは低分子の化学化合物である。
【0077】
「間接型第Xa因子インヒビター」のfXa活性の阻害は1つ以上の他の因子により媒介される。間接型第Xa因子インヒビターの非限定例としては、フォンダパリヌクス、イドラパリナックス、ビオチン化されたイドラパリナックス、エノキサパリン、フラグミン、チンザパリン、低分子量ヘパリン(「LMWH])、及びそれらの組み合わせが挙げられる。特定の態様においては、間接型第Xa因子インヒビターはエノキサパリンである。
【0078】
一実施形態においては、第Xa因子インヒビターは、ベトリキサバン、リバーロキサバン、LMWH、DX-9065a、YM-60828、YM-150、PD-348292、オタミキサバン、エドキサバン、LY517717、GSK913893、ラザキサバン、アピキサバン、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0079】
用語「ベトリキサバン」は、化合物「[2-({4-[(ジメチルアミノ)イミノメチル]フェニル}カルボニルアミノ)-5-メトキシフェニル]-N-(5-クロロ(2-ピリジル))カルボキサミド」または薬学的に許容されるその塩を指す。ベトリキサバンは、米国特許第6,376,515号、6,835,739号及び7,598,276号に記載されており、その内容は本明細書に参照により組み込まれる。ベトリキサバンは第Xa因子の特異的インヒビターとして知られる。
【0080】
fXaのインヒビターの活性を「中和する」「拮抗する」または「相殺する」または同様の表現は、fXaインヒビターの第Xa因子阻害機能または抗凝固機能を阻害または防止することを指す。かかる表現は、in vitro及び/またはin vivoにおいて、機能の部分的な阻害または防止、及びfXaインヒビター活性の大部分または全てを阻害または防止することを指す。
【0081】
「有効量」は、所望の生物学的及び/または治療的結果をもたらすのに十分な誘導体の量を指す。その結果は、疾患の徴候、症状、もしくは原因の軽減、または生物系の任意の他の所望の改変であり得る。本開示では、結果は、通常、患者に投与されたfXaインヒビターの中和、fXaインヒビターの抗凝固活性の拮抗、血漿からのfXaインヒビターの除去、止血の修復、及び出血の減少または停止の1つ以上を含む。有効量は、使用される特定の解毒剤、対象に投与された特定のfXaインヒビター、fXaインヒビターの投与レジメン、解毒剤の投与のタイミング、治療される対象及び疾患状態、対象の体重及び年齢、疾患状態の重篤度、投与様式などに依存して変化し、これらの全ては当業者によって容易に決定され得る。
【0082】
特定の態様においては、溶液を投与して、約10ミリグラム(mg)~約2グラム(g)の量のfXa解毒剤を送達する。使用されるr-antidoteの他の量としては、約100mg~約1.5g、約200mg~約1g、約400mg~約900mgを含む。いくつかの態様においては、使用されるr-antidoteの量は、約400mgまたは960mgである。いくつかの態様においては、使用されるr-antidoteの量は、約10mg~約100mg、約15mg~約95mg、約20mg~約80mgである。
【0083】
製剤を投与すると、第Xa因子インヒビターを少なくとも約20%、または少なくとも約50%、または少なくとも約75%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%中和する。
【0084】
トロンビン生成アッセイなどの複数のin vitroアッセイ、ならびにaPTT、PT及びACTなどの臨床的凝固アッセイによって、この方法、すなわち第Xa因子インヒビターの阻害または拮抗が達成されるかどうかを決定することができる。
【0085】
本開示の一態様は、有効量の凍結乾燥製剤の溶液を対象に投与することを含む、fXaインヒビターでの抗凝固療法を受けている対象において、外因的に投与されたfXaインヒビターに選択的に結合及びそれを阻害する方法に関する。この療法に適した患者は、従来の抗凝固療法を受けており、例えば、1種以上の抗凝固剤(例えば、fXaの直接型または間接型インヒビター)が投与されている。
【0086】
別の態様においては、本明細書で提供される方法は、凍結乾燥製剤の溶液を対象に投与することを含む、第Xa因子インヒビターでの抗凝固療法を受けている対象において、外因的に投与された第Xa因子インヒビターに選択的に結合及びそれを阻害する。対象は、細胞またはヒトなどの哺乳動物であり得る。
【0087】
本明細書に記載の溶解した凍結乾燥製剤の投与及び付随する方法から利益を受ける対象は、臨床的に大量出血事例または臨床的に有意な非大量出血事例を経験しているか、またはその素因があるものが含まれる。臨床的な大量出血事例の例は、出血、重要な器官への出血、再手術または新しい治療手順を必要とする出血、及び関連する顕性出血を伴う2.0以上の出血指数からなる群から選択される(Turpie AGG,et al,NEJM,2001,344:619-625)。更に、対象は、持続性または再発性であり、相当量であるまたは介入なしに止まらない場合がある鼻出血、治療手順を必要とするレベルまで上昇しない直腸または尿路出血、自発的であるか、または軽度の外傷を伴って起こる注射部位または他の場所における実質的な血腫、排液を必要としない通常外科手術に伴うものを超える相当の失血、予定外の輸血を必要とする出血からなる群から選択される非大量出血事例を経験しているか、またはその素因がある可能性がある。
【0088】
いくつかの実施形態においては、溶解した凍結乾燥製剤は、fXaインヒビターの過剰投与後または対象が出血の危険にさらされる可能性のある手術の前に投与される。
【実施例0089】
以下の実施例は、本開示の特定の実施形態を実証するために含まれる。当業者により、以下の実施例に開示される技術は、本開示の実施においてよく機能する技術を表し、従って、その実施のための特定の様式を構成すると考えることができることを理解されたい。しかし、本開示を考慮すると、当業者らは、開示された特定の実施形態において多くの変更がなされてもよく、更に、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、同様のまたは類似の結果を得ることができることを認識すべきである。
【0090】
実施例1:細胞培養からのr-Antidoteの精製
この実施例は、培養条件及びr-Antidoteの製造のための後続の精製プロセスの開発を実証する。CHO細胞に適合した市販の培養培地を、-RKRRKR-リンカー(配列番号6)の除去の際に二重鎖r-Antidote(配列番号3)を生成するr-Antidote前駆体(配列番号2)をコードする核酸配列(配列番号7)を含むコンストラクトで形質移入したCHO細胞について試験した。ProCHO(商標)培地は、好適な条件下で、75~95mg/Lの高さの力価をもたらすことができた。
【0091】
後続の精製プロセス(「後続プロセス」)を開発し、培養された細胞から解毒剤を精製した。いくつかの初期の開発実行においては、様々な膜及びカラムが試験された。
【0092】
2つの試験実行においては、清澄化された収集物は、生成物が限外濾過(UF)によって濃縮されたときに膜を汚すか、またはUFを避けて生成物を第1のクロマトグラフィーステップによって濃縮した場合にクロマトグラフィー媒体を汚すことが判明した。実験の初期段階で、生成物の濃縮が必要であると考えられたため、ファウリングの原因を特定し、除去するステップを決定するために実験を行った。続いて、ファウリングは細胞培養中に培地中に分泌された高分子量(HMW)タンパク質不純物により起こることが特定された。このHMWタンパク質は清澄化された収集物中に部分的にしか溶解せず、濃縮すると更に不溶性になり、UF膜またはクロマトグラフィーカラムの許容できないファウリングを引き起こした。
【0093】
いくつかのデプスフィルタ、イオン交換膜、及びクロマトグラフィー媒体の評価の後、1つの特定のデプスフィルタ(Millipore(商標)X0HCグレードフィルタ)が許容可能な生成物収率を達成しながら不純物の大部分を除去できることが見出された。次いで、生成物をUFにより最大10倍まで濃縮した。このフィルタは、清澄プロセスの元のフィルタの1つを置き換え、2回の追加実行で実装された。
【0094】
図1は、この開発努力からの精製プロセス100を示す。細胞を収集(ステップ101)し、Millipore(商標)X0HCフィルタを用いて清澄化し、HWMの不純物を除去した後、試料を10倍濃縮する(ステップ102)。濃縮には再生セルロースを使用できる。ステップ103において、ウィルス不活性化(1%のトリトンX-100、最終濃度0.3%のトリブチルホスフェートなどの界面活性剤/溶媒を用いて)を行い、細胞培養における外被に覆われたウィルスを不活性化することができる。ウィルスの除去に続いて、ステップ104(混合モードカチオン交換)、105(混合モードアニオン交換)及び106(混合モードイオン交換)を行い、宿主細胞タンパク質及びDNAを除去し、解毒剤を捕捉することができる。ステップ107では、疎水性相互作用樹脂を使用し、残存する宿主細胞タンパク質を更に除去することができる。場合により、これらの精製ステップの後に、最終的なウィルス除去濾過ステップを用い、全ての残存するウィルスを除去することができる。
【0095】
このプロセスは、細胞培養液中に発現された解毒剤の約30~35%を回収することができ、細胞培養液1リットルあたり約22~33mgの解毒タンパク質を産生した。
【0096】
実施例2:規模拡大製造プロセス
実施例1に示されるプロセスに基づき、産生量の規模を拡大する目的のため改善されたプロセスが開発された。
【0097】
実施例1の培養培地は、約75~95mg/Lの力価を生成することができた。産生量を増加させるため、複数の他のCHO培養培地を試験した。それらの1つが、細胞増殖及びピーク細胞密度(力価=200~225mg/L)において2~3倍の増加を示し、10,000Lまでの規模の拡大も可能にした。
【0098】
解毒剤を大量に抽出するためにアフィニティークロマトグラフを開発した。親和性配位子は、全大豆または小麦粉から抽出されたKunitzトリプシンインヒビター(21kDa;pI=4.5)を含んだ。大豆トリプシンインヒビター(STI)は、解毒剤と1:1の複合体を形成する。拡張性及び適合性に関して、非競合的インヒビターの溶出条件が同定され、pH5.2で25mMの酢酸ナトリウム、1Mのアルギニンを含んだ。
【0099】
実施例1で開発されたプロセスにおいては、デプスフィルタでの収集物清澄化ステップを用いてHMW不純物を除去し、続いて10倍の濃縮を行った。更に、ウィルス不活性化ステップは界面活性剤(トリトンX-100)及び溶媒(トリブチルホスフェート)を使用した。これらのステップの適合性及び効率を、親和性捕捉に関して評価した。
【0100】
このデータは、デプス濾過が必要ではなく、溶媒及び10倍濃縮ステップの使用により生成物の回収が減少することを示す。従って、更なる開発においては、デプス濾過及び濃縮ステップは排除され、ウィルス不活性化では溶媒を使用せず界面活性剤のみ(トリトンX-100)を使用した。ウィルス不活性化は生成物1リットルあたり52.7mlの緩衝液の比で、10%のトリトンX-100の添加により達成された(最終濃度:0.5%のトリトンX-100)。この知見は、一般的にアフィニティーカラムに充填する前に試料調製のために溶媒が使用されるため、予想外であった。また、細胞培養物を採取したとき、沈殿物を除去するために通って流れる遠心分離ステップを使用したことにも留意されたい。
【0101】
室温での15分間の混合時間及び最短1時間の保持期間の後、処理した生成物を、Sartogruad NFフィルタ(0.8/0.2μm)プレフィルタからSartopore 2(0.45/0.22μm)プレフィルタへ、続けて0.22μmフィルタを備える500Lの容器へのフィルタ列を通して濾過した。各カラムの充填物は使用する日に濾過した。
【0102】
STI親和性樹脂からの生成物の溶出には、アルギニン(25mMの酢酸ナトリウム/1.0Mのアルギニン、pH5.2)を含む溶出緩衝液を使用した。
【0103】
親和性捕捉の後、DNA、宿主細胞タンパク質(HCP)、及び親和性配位子の浸出液を含む残りの不純物を除去するために、いくつかの研磨ステップを用いた。カチオン交換及び混合モードイオン交換を含む2つのクロマトグラフィーの選択肢を試験した。しかし、性質決定に利用可能なプロセスに特異的な宿主細胞タンパク質アッセイはなかった。従って、代用として使用される市販のELISA、及び特異的HCPのLC-MS/MS定量化を補助的な性質決定として使用した。更に、定量的性質決定のための2D銀染色評価を使用した。
【0104】
図3は3つの潜在的な後続プロセス(DSP)の評価を示す。3つのDSPは親和性配位子浸出液のクリアランスに基づき同定された。生成物の性質及びプロセスに関連する不純物のクリアランスを評価するために、同じ親和性溶出プールを各ストリームにわたって順方向処理し、生成物の回収及びCHO宿主細胞タンパク質のクリアランス(HCP;百万分率(ppm)で表した)について比較した。各DSPプロセスからの溶出液を、生成物の性質に関して更に試験した(下記の表)。
【表5】

表注:3つの評価された後続プロセスの生成物の性質評価。3つのDSP(図3)から得られた溶出液を、生成物の性質の影響について評価した。電荷に基づく不均一性(IEX)または逆相(RP)への影響は見られなかった。しかし、カチオン交換研磨ステップにより精製されたDSP-2からの試料は、サイズ排除(SEC)により高分子量凝集%の増加を示した。
【0105】
試験に基づき、規模拡大後続プロセスを開発し、これは、図2に示される。このプロセスは図1に示したものよりも簡素である。しかし、収率は2倍高かった。実施例2に記載の方法は、2~3倍のタンパク質産生量の増加を有する新しい細胞培養系と組み合わせて、全体の解毒剤産生量を4~6倍増加させることができ、少なくとも10,000Lの産生規模を可能にした。
【0106】
図2において、後続プロセス200は、溶媒は使用せずに界面活性剤(トリトンX-100)のみを使用する収集(201)後にウィルス不活性化ステップ(202)を使用する。親和性捕捉ステップ203では、STI配位子を有する樹脂を使用し、アルギニンを含む溶出緩衝液(pH5)で解毒剤を溶出した。親和性捕捉の後に、任意の限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)ステップを使用することができ、これは、タンパク質を濃縮し、pHを約7にすることができる。
【0107】
ステップ204では、アニオン性膜が使用され、試料からの特定の不純物(例えば、DNA、HCP)を除去する。試験されたアニオン性膜の例は、Sartobind Q膜であり、解毒剤に有害な効果を呈さなかった。
【0108】
ステップ205では、混合モードイオン交換の種類の例は、CHT(セラミックヒドロキシアパタイト)でのIEX混合モードである。溶出緩衝液の例は、リン酸塩緩衝液である。このステップはSTI浸出液を除去するのに有用である。
【0109】
ステップ206では、オクチルセファロースクロマトグラフィーを例として疎水性分離を達成することができ、タンパク質はNaClを含む緩衝液で溶出することができる。このステップは残存するHCPを除去するのに有用である。
【0110】
下記の表は、いくつかの試験実行における精製及び回収収率を示す。
【表6】
【0111】
実施例3:製造されたタンパク質の性質決定
この実施例においては、方法は上記の開発されたプロセスから生成されたタンパク質生成物を性質決定するために開発された。試験された方法は、等電点電気泳動(IEF)、還元逆相(Red-RP)及び還元ペプチドマップ(PMAP)を含んだ。
【0112】
等電点電気泳動は解毒剤タンパク質の電荷不均一性を決定するために使用された。等電点電気泳動は、等電点(pI)またはタンパク質が正味電荷を持たないpHに基づいてタンパク質を分離する電気泳動技術である。等電点電気泳動は、電気泳動(Novex IEFゲル)及びColloidal Blue Staining Kit(Invitrogen)で染色するために、Life Technologies製造業者の指示に従って、pH3~10のゲル及び試薬を用いて行った。結果をServa3~10pIマーカーと比較した。
【0113】
試験ロットを水中で1.6mg/mLに希釈し、次いでpH3~10の試料緩衝液のIEF中で1:1にした。各試料を10μL(8.0μg)で充填し、100Vで1時間、続いて200Vで1時間、500Vで30分間電気泳動を行った。ゲルを固定液(Sigma-Aldrich)中で30分間固定し、Colloidal Blue染色で1時間染色し、水中で一晩脱染した。
【0114】
還元逆相は、タンパク質の全長及び切断型の両方の検出のために逆相クロマトグラフィー分離を用いるHPLC法である。試料を6MのグアニジンーHCl/50mMのトリスpH7.5に緩衝液交換し、DTTで還元した後、50℃で30分間インキュベートした。次いで、室温で90分間、暗所でビニルピリジンを用いて試料をアルキル化し、続いて1MのDTTで消光した。この方法は、タンパク質を固定相に結合させるためにAgilent Zorbax C18 HPLCカラムを利用し、疎水性に基づいてタンパク質を分離するために極性が減少する移動相(アセトニトリル中0.1%のトリフルオロ酢酸)の15~95%の勾配を利用する。UV波長は214nmである。
【0115】
Lys-C消化ペプチドマップは、Lys-C消化物のUPLC-UV/MSE分析を利用した。この方法により、98%を超える配列包括度を提供することができ、グリコシル化、アスパラギン酸ヒドロキシル化、及びC末端リジン切断のような翻訳後修飾を特徴付けることができた。また、この方法は、アスパラギンの脱アミド化及びメチオニンの酸化などの安定性指示マーカーをモニターすることができた。試料ロットをそれぞれ還元し、アルキル化し、リジルエンドペプチダーゼ(Lys-C)で処理した。酵素消化により生成されたペプチドをRP-UPLCで分離し、質量分析により分析した。
【0116】
以下の表は、精製されたタンパク質生成物及びそれらのパーセンテージ及び配列から検出されたタンパク質アイソフォームの型を示す(ロット番号1:実施例1で開発された後続プロセスを用いる、ロット番号1:実施例2で開発された後続プロセスを用いる)。興味深いことに、実施例1:のプロセスと比較して、実施例2のプロセスは、おそらく増加した精製効率に起因して、配列番号9のパーセンテージを相当に減少(9.0%から2.7%)させた。
軽鎖アイソフォーム:
【表7】

重鎖アイソフォーム:
【表8-1】

【表8-2】

【表8-3】
【0117】
実施例4:規模拡大プロセスの検証
この実施例は、更なる検証のために、実施例1及び2に示されるプロセスに基づくプロセスを説明する。
【0118】
界面活性剤によるウィルス不活性化
10%のトリトンX-100を収集したタンパク質に添加することにより、ウィルス不活性化ステップを行った。1 Capto STIサイクル(以下に記載)に対応する収集されたタンパク質を、収集タンクから、プレフィルタとして使用された4×30インチのSartoguard NFフィルタを通して10%のトリトンX-100添加タンクに濾過し、次いで3×20インチのSartoguard NFフィルタ0.8/0.2μmを通して濾過した。10%のトリトンX-100の添加後、プールを混合し、次いで3×30インチのSartoguard NF0.8/0.2μmフィルタを通して保持タンクに移した。保持時間が完了した後、不活性化されたプールを、3×30インチのSartopore 2 0.45/0.2μmフィルタと連続する6×30インチのSartoguard NFフィルタ0.8/0.2μmフィルタを通してCapto STIカラムに装填する。この順序を、Capto STI操作中に実行される4つのサイクルが完了するまで繰り返した。第2のサイクルが充填された後、6×30インチのSartoguard NF0.8/0.2μmフィルタを取り換えた。
【0119】
Capto STIクロマトグラフィー
大気温度でCapto STI樹脂を用いてアフィニティーカラムクロマトグラフィーを行った。充填段階中、生成物は樹脂に結合し、一方、汚染物質は飛散した。溶出緩衝液中の高濃度のアルギニンとのタンパク質相互作用を破壊することによって生成物を回収した。使用の前に、カラムを注射用蒸留水(WFI)ですすぎ、100mMのリン酸(pH3.0)で洗浄し、WFIですすいだ。このカラムを、最初に予備平衡緩衝液(20mMのトリス-HCl、pH7.4)で予め平衡化し、次いで平衡緩衝液(20mMのトリス-HCl、200mMのNaCl、pH7.4)で平衡化し、カラムのpH及び伝導率が仕様の範囲内にある場合、トリトンX-100で処理した清澄化収集物(HCCF)を充填した。各サイクルのHCCF材料をウィルス不活性化保持タンクから直接カラムに移した。
【0120】
充填後、カラムを平衡緩衝液で洗浄し、高アルギニン低pHの溶出緩衝液(溶出緩衝液:25mMの酢酸ナトリウム、1.0Mのアルギニン、pH5.2)で溶出した。サイクルの終わり及び次のサイクルの前に、カラムをWHIですすぎ、100mMのリン酸(pH3.0)で再度洗浄し、再度WHIですすいだ。複数のサイクルから得られる全ての溶出液を一緒に貯蔵した。最終サイクルを収集した後、溶出された生成物をカラムの後続のラインから収集容器に流すために、カラムをバイパスする緩衝液の追跡を行った。全てのサイクルが完了した後、カラムをWFIですすぎ、100mMのリン酸(pH3.0)で洗浄し、WFIでリンスし、予備平衡化及び平衡化緩衝液で中和し、エタノール貯蔵溶液に保存した。
【0121】
Capto STI溶出液プールを1.0MのアルギニンHCl(pH7.0)と混合して100mMのアルギニンHClの最終濃度にし、プールを安定化させた。次いで、得られるプールを濃縮し、10KDaのウルトラセルぺリコン3メンブレン上でダイアフィルトレーションして、大部分のアルギニンを除去し、その後のクロマトグラフィーステップへの充填を可能にした。
【0122】
Sartobind Q膜クロマトグラフィー
大気温度でSartobind Qジャンボカートリッジを用いてアニオン交換膜クロマトグラフィーを行った。充填段階中、生成物は膜を通して流れ、一方、汚染物質は結合した。使用の前にカートリッジを平衡緩衝液ですすぎ、貯蔵保湿剤を除去した。カートリッジを0.5MのNaOHで洗浄した。次いで、カートリッジを平衡緩衝液で平衡化し、カートリッジのpH及び伝導率が仕様の範囲内である場合、濃縮され、ダイアフィルトレーションされたCapto STI溶出液で充填した。充填された材料の1つのサイクルは、UF/DF後の収集タンクから直接充填された。充填の後、カートリッジを平衡緩衝液で洗浄した。生成物を収集した後、生成物をカートリッジの後続のラインから収集容器に流すために、カートリッジをバイパスする緩衝液の追跡を行った。
【0123】
セラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー(CHT)
大気温度でCHTタイプI 40μm樹脂を用いて混合モードカラムクロマトグラフィーを行った。充填段階中、生成物は樹脂に結合し、一方、一部の汚染物質は飛散した。生成物を、直線勾配でナトリウム濃度を増加させることによって回収した。使用の前に、カラムを1.0MのNaOHで洗浄し、少量の平衡緩衝液ですすいだ。このカラムを、最初に予備平衡緩衝液で予め平衡化し、次いで平衡緩衝液で平衡化し、カラムのpH及び伝導率が仕様の範囲内にある場合、Sartobind Q溶出液を充填した。
【0124】
各サイクルの充填物を収集タンクから直接カラムに移した。充填の後、カラムを平衡緩衝液で洗浄した。次いで、勾配を90%平衡化緩衝液(50mMのMES、5mMのリン酸ナトリウム、pH7.0)から90%溶出緩衝液(50mMのMES、5mMのリン酸ナトリウム、2Mの塩化ナトリウム、pH7.0)に実行した。
【0125】
サイクルの終わり及び次のサイクルの前に、カラムを平衡緩衝液ですすぎ、その後高リン酸塩の溶出後洗浄緩衝液でストリッピングし、平衡緩衝液ですすぎ、1.0MのNaOHで再度洗浄し、平衡緩衝液で再度すすいだ。いくつかのサイクルから得られる全ての溶出液を一緒に貯蔵した。最終サイクルを収集した後、溶出された生成物をカラムの後続のラインから収集容器に流すために、カラムをバイパスする緩衝液の追跡を行った。全てのサイクルが完了した後、カラムを平衡緩衝液ですすぎ、1.0MのNaOHで洗浄し、腐食性/ホスフェート貯蔵溶液に保存した。
【0126】
オクチルセファロース4FFクロマトグラフィー
大気温度オクチルセファロースFF樹脂を用いて疎水性相互作用クロマトグラフィーを行った。充填段階中、生成物は樹脂を通して流れ、一方、汚染物質は結合した。使用の前にカラムを1.0MのNaOHで洗浄した。このカラムを、最初にWFIで予め平衡化し、次いで平衡緩衝液で平衡化し、カラムのpH及び伝導率が仕様の範囲内にある場合、CHT溶出液を充填した。各サイクルの充填物を収集タンクから直接カラムに移した。充填の後、カラムを平衡緩衝液で洗浄した。サイクルの終わり及び次のサイクルの前に、カラムをWFIでストリッピングし、1.0MのNaOHで再度洗浄した。最終サイクルを収集した後、生成物をカートリッジの後続のラインから収集容器に流すために、カラムをバイパスする緩衝液の追跡を行った。全てのサイクルが完了した後、カラムをWFIでストリッピングし、1.0MのNaOHで洗浄し、腐食性貯蔵溶液に保存した。
【0127】
Planova 20Nウィルス減少濾過(VRF)
Planova 20Nウィルス減少フィルタを用いてウィルス減少濾過を行った。フィルタを全量モードで操作し、生成物をフィルタを通過させ、残存するいかなるウィルス粒子も繊維に保持させた。使用前にフィルタをオクチルセファロース平衡緩衝液で洗い流した。次いで、生成物をフィルタに通し、次いで更なる平衡緩衝液で洗い流した。フィルタの完全性を試験し、使用後に処分した。
【0128】
VRF濾液を10KDaのUltracel Pellicon3メンブレン上で濃縮した。部分的な濃縮の後、ダイアフィルトレーションして最終製剤にした。次いで、生成物を最終目的濃度に濃縮し、回収した。
【0129】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0130】
本明細書に例示的に記載された発明は、本明細書に具体的に開示されていない要素(複数可)、制限(複数可)の非存在下で好適に実施することができる。従って、例えば、「備える」、「含む」、「含有する」等の用語は、広範かつ制限なく読まれるものとする。更に、本明細書で使用される用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として使用されており、示され説明された特徴またはその一部のいずれの等価物をも排除するような用語及び表現を使用する意図はないが、特許請求された本発明の範囲内で種々の変更が可能であることが認識される。
【0131】
従って、本発明は、好ましい実施形態及び任意の特徴によって具体的に開示されているが、それに具現化され本明細書に開示されている本発明の修正、改良及び変形は、当業者が用い得るものであり、そのような改良及び変形は本発明の範囲内にあることが理解されるべきである。本明細書で提供される材料、方法、及び実施例は、好ましい実施形態の代表例であり、例示的であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0132】
本発明は、本明細書において広く一般的に記載されている。一般的な開示の範囲内に含まれるより狭い種及び亜属のグルーピングの各々も、本発明の一部を形成する。これは、除去された物質が本明細書に具体的に列挙されているかどうかにかかわらず、属からの任意の主題を除去する条件または否定的制限を伴う本発明の一般的な説明を含む。
【0133】
加えて、本発明の特徴または態様がマーカッシュ群に関して記載されているが、当業者であれば、本発明はマーカッシュ群のメンバーの任意の個々のメンバーまたはサブグループに関しても記載されることを認識するであろう。
【0134】
本明細書に記載されている全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、それぞれが個々に同一範囲に参照により組み込まれているかのように、その全体が参照により明白に組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先する。
【0135】
本開示は、上記の実施形態と共に記載されているが、前述の説明及び実施例は、例示を意図するものであり、本開示の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本開示の範囲内の他の態様、利点及び変更は、本開示が関係する当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
【配列表】
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