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特開2023-87031ヒトの腫瘍のための腫瘍溶解性ポリオウイルス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087031
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】ヒトの腫瘍のための腫瘍溶解性ポリオウイルス
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/768 20150101AFI20230615BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
A61K35/768
A61P35/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075928
(22)【出願日】2023-05-02
(62)【分割の表示】P 2021059723の分割
【原出願日】2013-11-21
(31)【優先権主張番号】61/729,021
(32)【優先日】2012-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514312365
【氏名又は名称】デューク ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】グロメイアー マティアス
(72)【発明者】
【氏名】サンプソン ジョン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ビグナー ダレル ディー.
(72)【発明者】
【氏名】デジャルダン アニック
(72)【発明者】
【氏名】フリードマン ヘンリー エス.
(57)【要約】
【課題】腫瘍溶解性ウイルスによる抗腫瘍治療の提供。
【解決手段】以下の工程を含む、NECL5(ネクチン様タンパク質5)を発現する固形腫瘍を有するヒトを治療する方法:ポリオウイルスSabin I型株を含むキメラポリオウイルス構築物であって、該ポリオウイルスが、該ポリオウイルスのクローバーリーフと該ポリオウイルスのオープンリーディングフレームとの間の該ポリオウイルスの5'非翻訳領域にヒトライノウイルス2(HRV2)内部リボソーム進入部位(IRES)を有する、構築物を、該ヒトにおける該腫瘍に直接投与する工程。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、NECL5(ネクチン様タンパク質5)を発現する固形腫瘍を有するヒトを治療する方法:
ポリオウイルスSabin I型株を含むキメラポリオウイルス構築物であって、該ポリオウイルスが、該ポリオウイルスのクローバーリーフと該ポリオウイルスのオープンリーディングフレームとの間の該ポリオウイルスの5'非翻訳領域にヒトライノウイルス2(HRV2)内部リボソーム進入部位(IRES)を有する、構築物を、該ヒトにおける該腫瘍に直接投与する工程。
【請求項2】
前記キメラポリオウイルス構築物を投与するために対流増加送達が用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固形腫瘍が神経膠芽腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記固形腫瘍が前立腺腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記投与が脳内投与である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記固形腫瘍が髄芽腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記固形腫瘍が乳腺腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記固形腫瘍が肺腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記固形腫瘍が結腸直腸腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記投与が、対流増加送達による脳内注入である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記投与が定位的に誘導される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒトが成人である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ヒトが小児である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
同時または連続化学療法が前記ヒトに施される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
同時または連続放射線療法が前記ヒトに施される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記固形腫瘍が、非病原性の腫瘍溶解性ポリオウイルスの投与前または投与後に外科切除される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記固形腫瘍が、前記投与する工程の前に、NECL5の発現について試験される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
以下の工程を含む、NECL5(ネクチン様タンパク質5)を発現する固形腫瘍を有するヒトを治療する方法:
固形腫瘍がNECL5を発現していることを確認するために該固形腫瘍を試験する工程;
ポリオウイルスSabin I型株を含むキメラポリオウイルス構築物であって、該ポリオウイルスが、該ポリオウイルスのクローバーリーフと該ポリオウイルスのオープンリーディングフレームとの間の該ポリオウイルスの5'非翻訳領域にヒトライノウイルス2(HRV2)内部リボソーム進入部位(IRES)を有する、構築物を、該ヒトにおける該腫瘍に直接投与する工程であって、該投与が、定位的に誘導される、対流増加送達による脳内注入である、工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米国政府により提供される資金を用いて成された。米国政府は、米国国立衛生研究所R01 CA87537、P50 NS20023、R01 CA124756及びR01 CA140510からの補助金の条件により一定の権利を保持する。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、抗腫瘍治療の領域に関連する。特に、本発明は腫瘍溶解性ウイルスによる抗腫瘍治療に関連する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
PVS-RIPOは、腫瘍溶解性ポリオウイルス(PV)の組換体である。PVS-RIPOは、2型ヒトライノウイルス(HRV2)の外来内部リボソーム進入部位(IRES)を含有する、減弱化生1型(Sabin)PVワクチンからなる。IRESは、PVゲノムの5'非翻訳領域内に位置するシス作用性遺伝要素であり、ウイルス性のm7G-キャップ非依存性翻訳を仲介する。
【0004】
PVS-RIPOによる腫瘍溶解療法は、組織培養アッセイ(6、7、10、15~17)及び動物腫瘍モデルでは報告されているものの、ヒトでの臨床試験では報告されていない。組織培養、動物モデル、及びヒトの間の違いにより、効能は予想できない。さらに、前臨床研究で用いられているウイルス標品は純粋ではないことが多いため、何れの活性も、調査中の薬剤に起因すると考えることはできない。
【0005】
当分野は、腫瘍モデルにおける生物活性が患者における効能を正確に予測した腫瘍溶解性ウイルス剤の例を提供していない。この理由は、腫瘍溶解性ウイルス治療は (a)感染した悪性細胞、(b)非悪性腫瘍微小環境、及び(c)宿主免疫系の間の複雑な三角関係の結果であるからである。このように複雑で込み入った系は、如何なる動物モデルでも再現されていない。
【0006】
当分野においては、ヒト、特に脳腫瘍患者のための効果的な抗癌治療の同定及び開発についてのニーズが引き続き存在している。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一態様により、NECL5(CD155, HVED, Nec1-5, PVS, TAGE4, ネクチン様5; ネクチン様タンパク質5)を発現する固形腫瘍を有するヒトを治療するための方法が提供される。キメラポリオウイルス構築物が、ヒトにおける腫瘍に直接投与される。当該キメラポリオウイルスは、ポリオウイルスSabin I型株であって、当該ポリオウイルスのクローバーリーフと当該ポリオウイルスのオープンリーディングフレームとの間の当該ポリオウイルスの5'非翻訳領域にヒトライノウイルス2(HRV2)内部リボソーム進入部位(IRES)を有する、当該ポリオウイルスSabin I型株を含む。
【0008】
本明細書を読むことにより当業者に明らかとなる、これら及びその他の態様は、脳腫瘍を含む腫瘍を治療する方法を当技術分野に提供する。
[本発明1001]
以下の工程を含む、NECL5(ネクチン様タンパク質5)を発現する固形腫瘍を有するヒトを治療する方法:
ポリオウイルスSabin I型株を含むキメラポリオウイルス構築物であって、該ポリオウイルスが、該ポリオウイルスのクローバーリーフと該ポリオウイルスのオープンリーディングフレームとの間の該ポリオウイルスの5'非翻訳領域にヒトライノウイルス2(HRV2)内部リボソーム進入部位(IRES)を有する、構築物を、該ヒトにおける該腫瘍に直接投与する工程。
[本発明1002]
前記キメラポリオウイルス構築物を投与するために対流増加送達が用いられる、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記固形腫瘍が神経膠芽腫である、本発明1001の方法。
[本発明1004]
前記固形腫瘍が前立腺腫瘍である、本発明1001の方法。
[本発明1005]
前記投与が脳内投与である、本発明1001の方法。
[本発明1006]
前記固形腫瘍が髄芽腫である、本発明1001の方法。
[本発明1007]
前記固形腫瘍が乳腺腫瘍である、本発明1001の方法。
[本発明1008]
前記固形腫瘍が肺腫瘍である、本発明1001の方法。
[本発明1009]
前記固形腫瘍が結腸直腸腫瘍である、本発明1001の方法。
[本発明1010]
前記投与が、対流増加送達による脳内注入である、本発明1001の方法。
[本発明1011]
前記投与が定位的に誘導される、本発明1010の方法。
[本発明1012]
前記ヒトが成人である、本発明1001の方法。
[本発明1013]
前記ヒトが小児である、本発明1001の方法。
[本発明1014]
同時または連続化学療法が前記ヒトに施される、本発明1012の方法。
[本発明1015]
同時または連続放射線療法が前記ヒトに施される、本発明1013の方法。
[本発明1016]
前記固形腫瘍が、非病原性の腫瘍溶解性ポリオウイルスの投与前または投与後に外科切除される、本発明1001の方法。
[本発明1017]
前記固形腫瘍が、前記投与する工程の前に、NECL5の発現について試験される、本発明1001の方法。
[本発明1018]
以下の工程を含む、NECL5(ネクチン様タンパク質5)を発現する固形腫瘍を有するヒトを治療する方法:
固形腫瘍がNECL5を発現していることを確認するために該固形腫瘍を試験する工程;
ポリオウイルスSabin I型株を含むキメラポリオウイルス構築物であって、該ポリオウイルスが、該ポリオウイルスのクローバーリーフと該ポリオウイルスのオープンリーディングフレームとの間の該ポリオウイルスの5'非翻訳領域にヒトライノウイルス2(HRV2)内部リボソーム進入部位(IRES)を有する、構築物を、該ヒトにおける該腫瘍に直接投与する工程であって、該投与が、定位的に誘導される、対流増加送達による脳内注入である、工程。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1A~1B(以前の図8)。PVS-RIPOの腫瘍内注入は、段階的な腫瘍退縮を誘導する。図1A:mock(□)またはPVS-RIPO(■)による処置後の腫瘍体積。図1B:示された期間における腫瘍からの平均ウイルス回収率。
図2図2(以前の図12)。2012/4/16のMRI。軸方向ポストコントラストT1強調MRIであり、疾病の進行を示している。
図3図3(以前の図13)。2012/5/9のMRI。PVS-RIPO注入前に得られた、軸方向ポストコントラストT1強調MRIである。
図4図4(以前の図14)。2012/5/11のMRI。軸方向、ポストコントラスト、T1強調MRIであり脳内でのGd-DTPAコントラスト及び(おそらく)PVS-RIPOの分布を示している。
図5図5(以前の図15)。2012/6/6のMRI。軸方向ポストコントラストT1強調MRIであり、疾病の安定性を示している。
図6図6(以前の図16)。2012/7/9のMRI。軸方向ポストコントラストT1強調MRIによって、疾病の進行の懸念が明らかになった。
図7図7(以前の図17)。2012/7/11の18-FDG PETスキャン。当該結果は、MRIで懸念された領域における代謝亢進活性の欠如を示唆している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
本発明者らは、ヒトにおいて使用するためのウイルス構築物を開発した。以前より、ウイルス構築物の実験室グレードの標品が細胞培養モデル及び動物モデルで試験されてきた。しかし、これらの試験は、如何なる効果も、未精製の実験室グレードの標品中の他の要素ではなく、ウイルス構築物自身に起因すると考えるには不十分である。さらに、当分野において周知なように、細胞培養モデル及び動物モデルは、ヒトにおける効能を予測させるものではない。
【0011】
ポリオウイルスは潜在的な病原体であるため、対象に疾病を引き起こす作用物質が導入されないように特に用心する必要がある。優良な製造方法及び精製を用いて、試験においてヒトに導入することができるくらい十分に純粋な標品が作られた。
【0012】
標品を腫瘍に直接投与するための何れの技術を用いてもよい。直接投与は、腫瘍へ到達するのに血液脈管構造に依存しない。製剤は、腫瘍表面に塗布する、腫瘍中に注入する、手術中に腫瘍部位中または腫瘍部位に滴下注入する、カテーテルを介して腫瘍中に注入する等してもよい。使用できる一つの具体的な技術は、対流増加送達である。
【0013】
小児腫瘍及び成人腫瘍の両方を含むいずれのヒトの腫瘍をも治療することができる。腫瘍はどのような臓器にあってもよく、例えば、脳、前立腺、乳房、肺、大腸及び直腸である。種々の型の腫瘍を治療でき、例えば、神経膠芽腫、髄芽腫、細胞癌、腺癌等を含む。腫瘍の他の例は、副腎皮質癌、肛門癌、虫垂癌、グレードI(未分化)星細胞腫、グレードII星細胞腫、グレードIII星細胞腫、グレードIV星細胞腫、中枢神経系の非定型奇形腫様/横紋筋肉腫様腫瘍、基底細胞癌、膀胱癌、乳房肉腫、気管支癌、細気管支肺胞上皮癌、子宮頸癌、頭蓋咽頭腫、子宮内膜癌、子宮内膜子宮癌、脳室上衣芽細胞腫、上衣腫、食道癌、鼻腔神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝臓外胆管癌、線維性組織球腫、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド、消化管間質腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、膠腫、頭頸部癌、肝細胞癌、肛門部胆管癌、下咽頭癌、眼内黒色腫、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、ランゲルハンス細胞組織球症、大細胞未分化肺癌、喉頭癌、口唇癌、肺腺癌、悪性線維性組織球腫、髄上皮腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、内分泌新生物、鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔癌、口腔咽頭癌、骨肉腫、卵巣明細胞癌、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、膵臓癌、乳頭腫、副鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、松果体実質腫瘍、松果体芽細胞腫、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、腎細胞癌、第15染色体の変異を含む気道癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肺小細胞癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、扁平非小細胞肺癌、扁平頸癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、精巣腫瘍、咽頭癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺腫、腎盂癌、尿道癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、及び、ウィルムス腫瘍を含む。
【0014】
場合により、患者をNECL5発現に基づき階層化してもよい。これは、例えば、プローブ、プライマーまたは抗体を用いて、RNAまたはタンパク質レベルで分析できる。NECL5発現は、本発明のキメラポリオウイルスで処置をするかしないかの決定を導くかもしれない。NECL5発現はまた、用量、頻度及び処置の持続期間を含む、処置の積極性を導くために用いてもよい。
【0015】
治療レジメンは、キメラポリオウイルス構築体の送達に加えて、腫瘍の外科的切除、腫瘍の外科的縮小、化学療法、生物学的療法、放射線療法を含み得る。これらの治療法は、多くの疾病状態において標準的なケアであり、患者はこれらの標準的なケアを否定されない。キメラポリオウイルスは、標準的なケアの前、その間、またはその後に投与してもよい。キメラポリオウイルスは、標準的なケアの失敗後に投与してもよい。
【0016】
出願人は、キメラポリオウイルスの臨床的医薬製剤が驚嘆すべき遺伝的安定性及び均質性を有することを見出した。これは、ポリオウイルスは培養中及び天然の生物的蓄積の両方において非常に変異性であることが知られていることから、特に有利である。遺伝的安定性及び均質性についてのいずれの好適なアッセイをも用いることができる。安定性についての一つのアッセイは、39.5℃で生育できないことについて試験することを含む。別のアッセイは集団配列決定を含む。さらに別のアッセイは霊長類神経毒性について試験することを含む。
【0017】
出願人は特定の作用機序に縛られることを望まないが、その効能に多数の機構が貢献していると考えられている。これらには、癌細胞の溶解、免疫細胞の動員、及び、癌細胞に対する特異性が含まれる。さらに、ウイルスは神経弱毒化されている。
【0018】
上記開示は本発明を全般的に記述している。本明細書中に開示される全ての参考文献は、参照として明確に組入れられる。以下の、単に例としての目的で提供され、且つ、本発明の範囲を限定することを意図したものではない具体的な実施例を参照することによって、より完全な理解が得られる。
【実施例0019】
実施例1
動物腫瘍モデル。 PVS-RIPOのIND用有効性試験を、胸腺欠損マウスのHTB-15 GBM異種移植モデルで行った。(臨床ロットからの)PVS-RIPOを、「マウス用に調整された」FDAにより承認された最大開始用量で投与した[FDAにより承認された最大開始用量(10e8 TCID)を、マウスにおけるより小さい腫瘍サイズ用に(6.7×10e6 TCIDに)調節した]。送達は、所期の臨床経路、即ち、ゆっくりとした腫瘍内注入を模した。これらの条件下で、PVS-RIPOは、15日後に全ての動物において完全な腫瘍退縮を誘導した(図8A)。10日目までは、処置された腫瘍からウイルスが回収されたものの、その量は最高でも中程度であり、ウイルスによる直接的な腫瘍細胞死滅だけではこの処置の効果を説明できないことが示唆された(図8B)。
【0020】
動物腫瘍モデルからの証拠は、PVS-RIPOの腫瘍内接種が、直接的にウイルスにより誘導された腫瘍細胞死滅を起こし、そして、感染/死滅した腫瘍に対する強力な宿主免疫応答を惹起することを示唆している(3、7、10)。ウイルス注入に対する応答は、腫瘍への免疫浸潤へと至る、強力で局所的な応答により特徴付けられる。最終的に、PVS-RIPO注入に対するゆっくりとした組織応答によって、腫瘍塊が消滅し、腫瘍塊が傷痕に置き換えられる。
【0021】
実施例2
臨床試験。 IND番号14,735の「再発性神経膠芽腫に対するPVSRIPOの用量決定及び安全性研究」は、2011年6月19日にFDAに承認され、2011年10月27日にIRBに承認された。再発性神経膠芽腫(GBM)(NCT01491893)の患者におけるフェーズI/II臨床試験について現在患者を登録している。
【0022】
IRB承認プロトコルによって、これまでに2人のヒト対象をPVS-RIPOで処置した。第一の対象からの予備的発見を実施例3に記載する。
【0023】
実施例3
第一のヒト対象での予備的発見。 当該患者は、右前頭葉のGBM(WHOグレードIV)と診断された21歳の女性看護学生である。当該患者は重篤な頭痛の病歴、及び、副鼻腔感染の疑いによる失敗に終わった治療の後、20歳の2011年6月に初めて診断された。2011年6月17日に脳イメージングが得られ、右前頭葉に約5×6cmと測定された大きな腫瘤が見られた。当該患者は、2011年6月22日に右前頭葉の腫瘤の部分切除を受け、病理学的にGBM(WHOグレードIV)と確認された。当該患者の若さ、抜群のパフォーマンスステータス及び部分腫瘍切除を考慮し、6週間の放射線治療、および、毎日の経口での75mg/m2のテモダール化学療法と2週間毎のベバシズマブ(血管新生抑制剤)投与との併用の組合せで、当該患者を積極的に処置することが決定された。当該患者は2011年9月18日に、6週間の処置を終えた。当該患者は2011年10月3日に、2週間毎のベバシズマブ10mg/kgに加えて、毎月5日間のテモダール化学療法による補助療法を開始した。
【0024】
当該患者は、睡眠中に初めて全身性痙攣を経験した後、2012年4月16日に診療所に報告した。この時点で、当該患者は、テモダールとベバシズマブの組合せを6か月間終了していた。当該患者は小児腫瘍看護師になるための学位を取得しているところであったので、GBMの診断及び進行中の化学療法処置にも拘わらず、当該患者は発作の原因を学校において増加したストレスである考えていた。当日得られた脳MRIは、切除腔の内側面に沿った新しい結節影を伴った腫瘍再発を示していた(図12)。
【0025】
当該患者は複数の処置オプションを提案されたが、PVS-RIPO臨床試験を続行することを選択した。最初の全身性痙攣の後にケプラを処方されたが時折飲むことを忘れ、そのため及び判明した腫瘍再発のため、2012年5月6日の睡眠中に2度目の全身性痙攣を経験した。当該患者は、ベースラインの神経学的状態に戻り、プロトコルに登録するために精密検査を受けた。
【0026】
2012年5月11日に当該患者が、FDAに承認された最大開始用量(10e8)でのPVS-RIPO注入を所期の臨床送達方法(コントラスト剤Gd-DTPAを含有するウイルス懸濁液3mLの6時間に亘る対流増加腫瘍内送達;実施例4参照)で受けるより前に、経過観察MRIが2012年5月9日に得られた(図13)が、これに関連した神経合併症または他の合併症は経験しなかった。
【0027】
注入完了直後に得られたMRIが注入液の分布を証明している(図14)。
【0028】
我々の研究チームは一週間単位で患者の経過観察を行ったが、注入2週後に診療所で当該患者と面会し、その時点で、当該患者は如何なる神経症状、発作の再発、疲労、息切れまたは衰弱をも否定した。当該患者は再度、2012年6月7日に診療所で評価され、そして、当該患者の身体症状及び神経症状は正常なままであった。訪問時に得られた脳MRIは、病気の安定を示していた(図15)。
【0029】
2012年7月9日に診療所で当該患者と面会した。当該患者は、再度、PVS-RIPO注入前に、2012年5月6日に観察された発作以来の如何なる発作活動の再発もないことを含め、如何なる新しい神経症状の存在をも否定した。当該患者はまた、自身の気分が良いこと、看護学校での自身の進歩に満足しており、注入後からは、より良く学校に集中できていると感じていることを報告した。当該患者はさらに二人のルームメートとの転居、そして、定期的に運動できることに興奮していた。その日に得られた当該患者の脳MRIは、腫瘤効果のわずかな増大と上部線状影のごくわずかな増強を示しており、疾病の進行が懸念された(図16)。
【0030】
臨床的悪化は伴わないが気に掛かるX線検査の変化を考慮して、我々は18-FDG PETスキャンを取ることを決定した。18-FDG PETスキャンは、MRIで懸念された領域において、壊死工程を示唆する低代謝活性を示した(治療応答効果;図17)。7月9日のPETスキャンは、生存腫瘍の不在を示唆している。患者及びその母親との話し合いの後、当該患者を臨床的観点及びX線検査の観点から経過観察を行うことを決定した。
【0031】
8月27日及び10月22日の検査において、当該患者は、2012年5月6日(PVS-RIPO注入前)に観察された発作以来の如何なる発作活動もないことを含め、如何なる新しい神経症状の存在をも否定した。当該患者は、認知/記憶機能、運動機能(運動)の改善を報告している。10月26日において当該患者は神経学的に正常である。
【0032】
8月27日のX線検査の結果が良かったため、PETスキャンは行われなかった。10月22日に当該患者は再スキャンされ、X線検査での定量化できる応答があった。
【0033】
MRI/PETオーバーレイは、腫瘍再発領域全体からのシグナルがないことを示している。
【0034】
実施例4
対流注入。 術前にBrainLab iPlan Flowシステムを用いて、術前MRIから得られる情報を用いて予測される分布に基づいてカテーテルの経路を設計する。
【0035】
本発明は、ポリオウイルスの分布を同定するための代替トレーサーに対し、124I-標識化ヒト血清アルブミンと共に、1mMのガドリニウムを用いる。これは他の薬物注入においても同様に用いられ得る。ガドリニウム及び放射標識アルブミンは薬物と一緒に注入され、その分布を定量するために種々のMRIシーケンス及びPETイメージングが使用される。
【0036】
送達されるべき薬剤の全容量が、注入開始の直前に滅菌条件下、手術室またはNICUで、治験薬剤師により注射器に予め装填され、カテーテルへ接続される。注入のために必要な全要素(手術室時間、調剤時間、及び放射線科予約)を計画する複雑さから、試験薬物注入のための研究について、+1日の空きが設けられた。これは、生検/カテーテル留置後の次の日に注入を始めてもよいことを意味する。プロトコル及び続いてのイベントについての時間調整に関して、これは依然として「0日目」とみなされる。ウイルス注入時、エピネフリン及びジフェンヒドラミンを含む救急用薬物が入手可能であり、神経学的状態、酸素飽和度、及び心リズムがモニターされるであろう。薬物注入は、その他の全ての救急設備が使用可能なように、神経外科集中治療室(NSCU)で行われるであろう。患者は、カテーテル留置のため麻酔の導入から始められ、ナフシリン、第二世代セファロスポリン、またはバンコマイシン等の予防的抗生物質で処置されるであろう。
【0037】
我々自身の経験、以前に公開された報告(19)、並びに、類似の注入技術を用いるIRB及びFDAに承認されている試験(IRB#4774-03-4R0)に基づいて、患者は、速度500μL/時で注入を受けるであろう。Medfusion 3500注入ポンプが、500μL/時の送達速度に予めプログラミングされるであろう。(注入システム中の3.3723mLの「デッドスペース」を埋めるため、総量では10mLとなるであろう)薬剤が、注入の如何なる中断をも避けるため、開始時にシリンジポンプ内の20mLのシリンジ中に装填されるであろう。患者に送達される接種物の総量は3mLとなるであろう。予めカテーテル自体(長さ30cm、内径1mm)をウイルス懸濁液で装填することはできない。従って、注入の最初の約250μLは、留置カテーテルの「デッドスペース」中の保存剤無しの生理食塩水であろう。これに見合うよう、注入ポンプは3.250mLの送達のためにプログラミングされるであろう。注入はMedfusion3500(Medex, Inc., Duluth, GA)シリンジ注入ポンプを用いて行われるであろう。ウイルス注入工程は6.5時間以内で完了されるであろう。PVSRIPOの送達後すぐにカテーテルは取り除かれるであろう。
【0038】
注入カテーテル(PIC030)及び注入チューブ(PIT400)はSohysa, Inc.(Crown Point, IN)により供給されるであろう。Infusion Catheter Kitは、1cmごとの印が20cm分付けられた30cmの透明で終端部が開口のカテーテル(1.0mm ID/2.0mm OD)である。カテーテルには、30cmのステンレスのスタイレット、キャップ付きの反矢じりメスルアーロック及びステンレスのトロカールを備える。Infusion Tubing Kitは、エアフィルター付き三方向コックコネクタ、アンチサイフォンバルブ付きの4mの微小口径チューブ、赤い開孔キャップ、及び白いルアーロックキャップからなる。カテーテル製品は無菌で包装され、非発熱性であり、そして単回(一回)使用のみが意図される。注入は、Medfusion3500(Medex, Inc., Duluth, GA)シリンジ注入ポンプを用いて行われるであろう。
【0039】
参考文献
引用される各参考文献の開示は、本明細書に明示的に組入れられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願の明細書に記載される発明。