(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087062
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】回転補助ポート
(51)【国際特許分類】
A61B 17/34 20060101AFI20230615BHJP
A61B 17/02 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
A61B17/34
A61B17/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023076176
(22)【出願日】2023-05-02
(62)【分割の表示】P 2021116801の分割
【原出願日】2014-03-14
(31)【優先権主張番号】61/792,218
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/211,433
(32)【優先日】2014-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510253996
【氏名又は名称】インテュイティブ サージカル オペレーションズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】マクグロガン,アンソニー ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ラムスタッド,クレイグ アール
(72)【発明者】
【氏名】リラガン,ポール イー
(72)【発明者】
【氏名】イケダ,マイケル
(57)【要約】
【課題】手術領域により良好にアクセスするためのシステムを開発する。
【解決手段】回転補助ポート装置の実施態様を提示する。補助ポート装置を利用して単一ポートロボット手術において追加的な補助器具を提供する。一部の実施態様では、単一ポート遠隔操作ロボット手術中の皮膚収縮のために補助ポート装置を利用し得る。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形エラストマー要素と、
該円形エラストマー要素に連結されるスリーブと、
前記円形エラストマー要素の反対側で前記スリーブに連結されるスリーブマウントと、
該スリーブマウントに取り外し可能に取り付けられる外部ハブと、
前記スリーブマウントと前記外部ハブとの間に捕捉される内部ハブとを含み、
前記内部ハブは、カニューレポートを含む、
回転補助ポート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
この出願は2013年3月15日に出願された米国仮出願第61/792,218及び2014年3月14日に出願された米国非仮出願第14/211,433号の優先権を主張し、それらの全文を参照としてここに援用する。
【0002】
本発明の実施態様はロボット手術に関し、具体的には、ロボット手術と共に用い得る回転補助ポートに関する。
【背景技術】
【0003】
最小侵襲的な手術(MIS)(例えば、内視鏡検査、腹腔鏡検査、胸腔鏡検査、膀胱鏡検査、及び同種検査)は、内部手術部位に導入されるカメラ及び細長い手術器具を用いることによって、小さな切開部(切口)を通じて、患者が手術されるのを可能にする。多くの場合、手術部位は患者の腹部のような体腔を含む。吸入ガスのような透明な流体を用いて体腔を任意的に膨張させ得る。外科医は、ビデオモニタ上で手術部位を見ながら、細長い手術器具の手動エンドエフェクタを用いることによって、組織を処理する。
【0004】
1つ又はそれよりも多くのカニューレを小さな(一般的には1インチ未満の)切開部又は天然の身体開口部に貫通させて、カメラ器具(例えば、内視鏡、腹腔鏡、及び同等物)を含む最小侵襲的な(例えば、内視鏡検査的な、腹腔鏡的検査的な、及び同等な)手術器具のための入口ポートをもたらし得る。外科医は、カメラ器具によって提供されるビュー(眺め)の下で、外科器具を外部的に手術部位に対して操作することによって手術を行い得る。
【0005】
最小侵襲的な外科処置のために幾つかのカニューレを提供するのが典型的である。そのようなシステムは、Intuitive Surgicalが販売しているda Vinciシステム(ダ・ヴィンチ・システム)である。一般的には、各カニューレが単一の手術又はカメラ器具のために手術部位へのアクセスをもたらす。例えば、4つのカニューレを設け、1つのカニューレを用いてカメラ器具を導入し、残余の3つのカニューレを用いて手術器具を導入し得る。カニューレを配置するのに必要な小さな切開部は観血手術に必要な切開部よりも外傷が少ないが、各切開部は依然として患者に対する外傷を表している。
【0006】
最小侵襲的な手術の外傷をより一層減少させる試みにおいて、単一のカニューレのみを用いる最小侵襲的な手術を可能にする技術が開発されている。これは手術に必要な全ての器具に適合し得る幾分より大きなカニューレを用いることによって達成され得る。単一のカニューレを通じて行われる最小侵襲的な手術を単一ポートアクセス(SPA)手術と呼び得る。身体開口部を通じて又は切開部を通じて単一のカニューレを導入し得る。
【0007】
多数の手術器具及び/又はカメラ器具が単一のカニューレを通じて手術部位に導入されるべきであるならば、カニューレ内で器具を管理するのは困難になり得る。カニューレを貫通する器具の大きさと一致する可能な限り小さいカニューレを用いることが望ましい。これは追加的な器具を導入すること及び器具の所要の可動性を維持することを困難にし得る。
【0008】
いずれの場合においても、カニューレを貫通する器具をロボット制御し得る。しかしながら、そのような場合には、手動制御されてロボット制御手術を補助する更なる器具を設けることはより困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、手術領域により良好にアクセスするためのシステムを開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の特徴によれば、回転補助ポート装置は、円形エラストマー要素と、円形エラストマー要素に連結されるスリーブと、円形エラストマー要素の反対側でスリーブに連結されるスリーブマウントと、スリーブマウントに取り外し可能に取り付けられる外部ハブと、スリーブマウントと外部ハブとの間に捕捉される内部ハブとを含み、内部ハブは、カニューレポートを含む。一部の実施態様において、内部ハブは、少なくとも1つの補助カニューレポートを更に含む。
【0011】
一部の実施態様に従った回転補助ポートキットは、各創傷保護具(wound protector)が、円形エラストマー要素と、円形エラストマー要素に連結されるスリーブと、円形エラストマー要素の反対側でスリーブに連結されるスリーブマウントとを含む、1つ又はそれよりも多くの創傷保護具と、1つ又はそれよりも多くの創傷保護具のスリーブマウントに取り付け可能な外部ハブと、外部ハブとスリーブマウントとの間に捕捉可能である内部ハブとを含み、1つ又はそれよりも多くの創傷保護具は、体壁の厚さの変動を許容する。
【0012】
本発明の一部の実施態様に従ったロボット単一ポート手術の方法は、身体の体壁に切開部を形成すること、円形エラストマー要素と、円形エラストマー要素に連結されるスリーブと、円形エラストマー要素の反対側でスリーブに連結されるスリーブマウントとを含む、創傷保護具を挿入すること、内部ハブのカニューレポートを通じてカニューレを配置すること、カニューレが切開部を通じて挿入され且つ内部ハブがスリーブマウントに対して位置付けられるように、内部ハブを配置すること、外部ハブを装着して、スリーブマウントに対して位置付けられる内部ハブを保持すること、遠隔操作ロボットをカニューレに結合させること、及び遠隔ロボット制御される器具をカニューレを通じて挿入することを含み、創傷保護具は、円形エラストマー要素が身体の内側にあり且つスリーブマウントが身体の外側にあるように挿入される。
【0013】
以下の図面に関してこれらの及び他の実施態様を以下に更に議論する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】単一ポート遠隔操作ロボット手術システムを示す図である。
【0015】
【0016】
【
図3】
図2に示す単一ポートカニューレのガイドインサートを示す図である。
【0017】
【
図4A】
図2に示す単一ポートカニューレと共に利用し得る回転補助ポート装置を示す図である。
【
図4B】
図2に示す単一ポートカニューレと共に利用し得る回転補助ポート装置を示す図である。
【0018】
【
図5】
図4A及び4Bに示す回転補助ポート装置の利用を示す図である。
【0019】
【
図6A】回転補助ポート装置内のポートの構成の実施例を示す図である。
【
図6B】回転補助ポート装置内のポートの構成の実施例を示す図である。
【
図6C】回転補助ポート装置内のポートの構成の実施例を示す図である。
【
図6D】回転補助ポート装置内のポートの構成の実施例を示す図である。
【
図6E】回転補助ポート装置内のポートの構成の実施例を示す図である。
【0020】
【
図7A】回転補助ポート装置の更なる利用を示す図である。
【
図7B】回転補助ポート装置の更なる利用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の記載では、本発明の一部の実施態様を記述する特定の詳細を示す。しかしながら、これらの特定の詳細の一部又は全部を伴わずに一部の実施態様を実施し得ることが当業者に明らかであろう。ここに開示する特定の詳細は例示的であることを意図し、限定的ではない。ここに特別に記載していないが、当業者はこの開示の範囲及び精神内にある他の要素を実現し得る。
【0022】
更に、この記述の用語法は本発明の範囲を限定することを意図しない。例えば、図面に例示するような他の要素又は機能に対する1つの要素の又は機能の関係を記載するために、「下」、「下方」、「上」、「上方」、「近位」、「遠位」、「水平」、「垂直」等のような、空間的に相対的な用語を用い得る。これらの空間的に相対的な用語は、図面に示す位置及び向きに加えて、使用中の又は動作中の異なる位置及び向きを包含することを意図する。例えば、図面中の装置が反転させられるならば、他の要素又は機能の「下」又は「下方」にあるものとして記載した要素は、他の要素又は機能の「上」にあるか或いはそれを「覆う」であろう。よって、「下方」という例示的な用語は、上及び下の位置及び向きの両方を包含し得る。装置を別に向け(90度又は他の向きに回転させ)、ここで用いる空間的に相対的な記載を相応して解釈し得る。同様に、様々な軸に沿う又は周りの運動の記述は、様々な特別な装置位置及び向きを含む。加えて、単一形の形態は、文脈が他を示さない限り、複数の形態も含むことを意図する。「含む」、「含んでいる」、「包含する」等は、記載した機能、ステップ、動作、要素、及び/又は構成部品の存在を特定するが、1つ又はそれよりも多くの他の機能、ステップ、動作、要素、構成部品、及び/又は群の存在又は追加を妨げない。連結させられるものとして記載される構成部品を電気的に又は機械的に直接的に連結させ得るし、或いは1つ又はそれよりも多くの中間構成部品を介して間接的に連結させ得る。
【0023】
図1は、ロボット手術器具102,104,106のための単一ポートアクセスを用いる、患者110に対する最小侵襲的な手術の絵画図を示している。単一ポートアクセスは、単一の切開部112を通じて挿入されるカニューレ100を含む。典型的には、カメラ器具を含む3つ又は4つの手術器具が、カニューレ100を通じて導入される。加えて、一般的には、カニューレ100に又はその付近に、二酸化炭素(CO
2)のような吸入ガスを導入するための設備がある。単一ポート手術は少量の空間内に配置される相当な量の機器を利用することが理解されるであろう。
【0024】
手術部位の画像を提供し得るカメラ器具及び他の器具を含み得る遠隔操作ロボット手術器具102,104,106は、アクチュエータ122,124,126,128に連結される。アクチュエータ122,124,126,128はサーボアクチュエータであり、それらは外科医がコンピュータ介在制御ステーション120を用いて手術器具を操作することを可能にし、遠隔操作ロボット140に取り付けられる。これらの操作は、位置決め、把持、及び移動のような機能を含み得る。手術器具のそのようなアクチュエータ制御を遠隔ロボット手術と呼び得る。遠隔操作ロボット140のアクチュエータ122,124,126,128を別個の構造アーム上で支持し得る。構造アームが位置決めされるや否や、構造アームを患者110に対して固定し得る。
【0025】
制御システムはコンピュータ介在制御ステーション120をロボットアクチュエータ122,124,126,128に連結する。外科医に表示されるような手術器具102,104,106の画像が外科医の両手内の入力装置に少なくとも実質的に接続されて現れるように、ロボットシステムは入力装置の動きをそれらの関連する手術器具の動きと調和させ得る。多くの場合には、更なるレベルの接続も設けて、外科医の器用さ及び手術器具102,104,106の使用の容易さを増大させ得る。
【0026】
コンピュータ介在制御ステーション120は、手動コントローラ130を提供し得る。手動コントローラ130は、ケーブル132によってもたらされる電気制御信号のような信号を、連結される手術器具102,104,106の作動を制御するアクチュエータ122,124,126,128に送信することによって、遠隔ロボット手術器具102,104,106の操作を可能にする。典型的には、手術器具のうちの1つ102は、カメラ器具であり、カメラ器具は、操作される物体及び残余の手術器具をカメラの視野内に配置するように操作される。カメラ器具は、視野内の物体及び器具のカメラによって捕捉される画像を、連結される手術器具104,106が操作されるときに外科医が見る視覚的ディスプレイ134上に表示し得るよう、制御ステーション120に信号を送信する。手動コントローラ128及び視覚的ディスプレイ130を配置して、手術器具104,106の直観的な制御をもたらすことができ、手術器具は、予想される方法において、コントローラの動きに応答する。
【0027】
図2は、
図1に示す単一ポートアクセスをもたらすアクセスポートの絵画図を示している。アクセスポートは、カニューレ100を含み、カニューレ100は、器具ガイド200を含み、器具ガイド200は、カニューレ内に挿入され、カニューレ100を通じて多数の器具を案内し、単一ポートアクセスを容易化する。
図3は、器具ガイド200の絵画図である。器具ガイド200は、カニューレ100内に密接に嵌るように構成される。器具ガイド200は、多数のガイド通路222,224を含む。ガイド通路222,224の各々は、カニューレ100内の所定の位置で単一の手術器具102,104,106を支持するように構成される。手術器具102,104,106は、器具ガイド200の近位端で開口202,204,206,208を通じてアクセスポート内に挿入される。手術器具102,104,106は、それらが器具ガイド200の遠位端232,234から現れるまで、ガイド通路222,224によって支持される。器具ガイドを非導電性材料で形成して、焼灼のために用いられる電荷を帯び得る器具を電気的に絶縁するのを助け得る。
【0028】
カニューレ100内のガイド通路222,224を通じて延び得る幾つかの遠隔ロボット制御される器具102,104,106の利用可能性にも拘わらず、一部の手術では、手術部位で利用されるべき更なる器具を提供して、切開部112で収縮(retraction)をもたらし或いは更なる器具及び収縮の両方をもたらすのが有利であり得る。一部の用途では、切開部112に隣接して第2の切開部を設け、第2の手持ち式の器具を第2の切開部を通じて挿入し得る。そのような第2の器具は、例えば、針(ニードル)、吸引、収縮、又は他の器具を含み得る。しかしながら、問題は、多くの場合に、2つの切開部間のトルクの故に第2の切開部が裂けて吸入の損失を招くことである。
【0029】
図4A及び4Bは、第2の手動器具のためのアクセスをもたらすよう利用し得る本発明の一部の実施態様に従った回転可能な補助ポート装置400を例示している。
図4Aは、補助ポート装置400の等角図を示しており、
図4Bは、補助ポート装置400の断面図を例示している。
図4A及び4Bに示すように、回転可能な補助ポート装置400は、カニューレポート402と、補助ポート412とを含む。カニューレポート402は、カニューレ100の挿入に適合し、カニューレ100は、一部の実施態様において、上述のような遠隔操作ロボット140に連結される単一ポートカニューレであり得る。補助ポート412は、手動器具又は単一の器具自体と共に利用するための単一の器具カニューレの挿入に適合する。カニューレポート402内に挿入される単一ポートカニューレを遠隔操作ロボット140によって固定し得る。次に、補助ポート412をカニューレポート402の周りで回転させて、手術領域への広範囲のアクセスをもたらし得る。
【0030】
図4A及び4Bに例示するように、回転可能な補助ポート装置400の遠位部分は、体壁保護スリーブ414と支持リング又はスリーブマウント406とを形成する薄いプラスチック材料に接続される円形エラストマー要素416を含む。全体的に、円形エラストマー要素416、保護スリーブ414、及び支持リング406は、創傷保護具(wound protector)と呼び得るチューブを形成する。
【0031】
図5は、手術中、カニューレ100及びカニューレ506の両方を収容するのに十分な大きさの切開部112が、皮膚及び下に横たわる組織、即ち、体壁508内に配置されることを例示している。円形エラストマー要素416は、皮膚切開部を通じて体壁508の下面に滑り込ませられる。所定の場所に配置されると、エラストマー要素416は拡張し、体壁508の下面でアンカを形成する。スリーブ部分414は、切り込まれた皮膚領域に着座し、部分的に、創傷保護具を形成する。スリーブマウント406は、皮膚の表面で身体の外側にある。よって、スリーブ部分414は、体壁508の如何なる厚さにも適合し得るよう、十分に長くあり得る。
【0032】
図4A及び4Bに更に示すように、外部ハブ420をスリーブマウント406に取り付けることができ、一部の実施態様では、スリーブマウント406にパチンと嵌る。解放機構408が、スリーブマウント406に対して固定される外部ハブ420を保持し得る。内部ハブアセンブリ422をスリーブマウント406に対して回転させ得るよう、内部ハブアセンブリ422をスリーブマウント406と外部ハブ420との間に捕捉し得る。手術の完了後、解放機構408を用いて外部ハブ420を解放することによって、創傷保護具、スリーブマウント406、スリーブ414、及び円形エラストマー要素416を固定されたままにして、内部ハブ422を取り外し得る。
【0033】
内部ハブ422を外部ハブアセンブリ420とスリーブマウント406との間に回転可能な仕方において捕捉する如何なる仕方においても、外部ハブ420をスリーブマウント406に取り付け得る。ラッチ機構408は、例えば、摩擦クランプであり得る。代替的に、スリーブマウント406にネジ山を付けて、外部ハブ420をスリーブマウント406に螺合させ得る。一部の実施態様では、「ピクルス瓶」構成を作製することもでき、その場合には、内部ハブ422が外部ハブ420とスリーブマウント406との間に捕捉されるように、外部ハブ420は、例えば1回転半、スリーブマウント406に形成されるネジ山にねじ込まれる。吸入圧力が維持される間、内部ハブ422がスリーブマウント406に対して回転するように、内部ハブ422とスリーブマウント406との間にシール418を設け得る。
【0034】
図4A及び4Bに示すように、内部ハブアセンブリ422は外部ハブ420に対して回転し得る。内部ハブアセンブリ422は、補助カニューレポート412と、カニューレポート402とを含む。上で議論したように、カニューレポート402を通じて挿入し得るカニューレ100を、遠隔操作ロボット140に固定的に取り付け得る。カニューレクランプ404がカニューレポート402に回転可能に取り付けられる。よって、
図5に例示するように、カニューレクランプ404は、内部ハブアセンブリ422を、カニューレポート402を通じて挿入されるカニューレ100に取り付ける。カニューレクランプ404は、如何なる種類の係止クランプであってもよく、係止機構を提供して、内部ハブアセンブリ422、従って、回転可能な補助ポート装置400の全てを、カニューレ100に固定し得る。カニューレクランプ404は、ロボット140が、体壁508を収縮させるのに補助ポート装置400を利用することを可能にする。
【0035】
よって、カニューレクランプ404及び内部ハブ422と外部ハブ420との間の界面(インターフェース)は、2つの回転継手をもたらす。これらの回転継手の間で、内部ハブ422を、カニューレポート402を通じて位置付けられる固定カニューレ100の周りで回転させることができ、従って、患者110に対して回転させることができる。内部ハブ422を回転させるのを補助するために、内部ハブ422に形成される指グリップ410を設け得る。結果的に、内部ハブ422を回転させることによって、カニューレ506をカニューレ100の周りで回転させ得る。そのプロセス中、円形エラストマー要素416、スリーブ414、及びスリーブマウント406は、実質的に固定されたままである。スリーブ414は、固定カニューレ100に対する内部ハブ422の向きに適合するように位置し得る。
【0036】
補助ポート装置400は、手術吸入ガスも維持する。上で議論したように、吸入ガスはカニューレ100を通じて導入され、手術領域508を膨張させる。
図4A及び4Bに示すように、回転リップシール418が、カニューレポート402内のカニューレ100と内部ハブ422との間及び外部ハブ420とスリーブマウント406との間にある。加えて、補助カニューレポート412は、補助器具が手術部位に導入されるときに補助器具の上を封止するシール424を含む。
【0037】
一部の実施態様では、回転リップシール418を、内部ハブ422とスリーブマウント406との間を封止するOリング型のシールと、カニューレポート402の周りのOリング型のシールとに分離し得る。
図4Aに示すように、補助カニューレポート412は、インサートシール424を含み得る。インサートシール424は、補助カニューレ506の周りを封止し、補助カニューレ506が利用されない場合には、手術器具504の周りを封止する。一部の実施態様では、インサートシール424及び回転リップシール418の機能を含む封止機能の全てを含む一体成形品(単一ピース)で、回転リップシール418を形成し得る。一部の実施態様において、インサートシール424は、その全文をここに参照として援用する米国特許第6,123,689号に記載するシールと類似し得る。
【0038】
図5に例示するように、回転補助ポート装置400は、単一ポートロボット手術を可能にする。換言すれば、単一の皮膚切開部を通じて全ての手術タスクを達成し得る。遠隔操作手術ロボット140は、カニューレポート402を通じて挿入されるカニューレ100を通じて器具102,104,106を操作する。一部の実施態様において、補助活動は、限定的な範囲の運動、機能、及び有用性を伴う、手術器具がカニューレポート402を通じて挿入された状態で起こり得る。しかしながら、補助活動は、補助ポート412を通じても起こり得る。
図5に示すように、補助ポート412を通じて補助カニューレ506を挿入し、補助カニューレ506を通じて手動器具504を挿入し得る。
【0039】
一部の実施態様では、カニューレ506を用いずに、補助カニューレポート412を通じて手動器具504を挿入し得る。一部の実施態様において、補助カニューレポート412は、手動器具504を挿入し得る玉(ボール)のような、ガイドを含み得る。玉は切開部112内への器具504の案内のための玉継手として作用し得る。
【0040】
上で議論したように、シール418及び補助ポート412内のシールは、カニューレ506及び100内のカニューレシールと共に、吸入圧力を維持する。広範囲の器具を通じて吸入圧力を維持し得る。器具は、例えば、5~13mmの器具であり得る。更に、必要に応じて、外科処置を通じて、器具504を取り外し或いは交換し得る。
【0041】
内部ハブ422はカニューレ100によって取り付けられ且つ支持され、それは補助ポート412が器具504を用いた処置を遂行するための支点として作用するのを可能にする。補助ポート412によって形成される支点はカニューレ100の周り、従って、手術部位の周りも旋回するので、補助ポート412は、操作者により大きな範囲の運動をもたらし、大きな解剖学的アクセス領域をもたらす。指グリップ410は、良好な操作のために、使用者がカニューレ100の周りで内部ハブ422を容易に捩ることを可能にする。装置400の回転性は、補助手術器具504が作動するときに、補助手術器具504がカニューレ100に並んで位置するのを可能にする。この構成は切開部112が比較的小さくあることを可能にし、カニューレ100及びカニューレ506の両方を収容するのに必要とされるよりも僅かに大きいに過ぎない。
【0042】
装置400の存在は、カニューレ100が浅い深さに挿入されて依然として機能することも可能にする。浅い又は短いカニューレは、遠隔ロボット器具102,104,106が可能な限り容易に体壁508に近接して配置されて作動するのを可能にする。従って、遠隔操作ロボット140は、ポート部位を失う(即ち、カニューレ100が体壁508から急に飛び出て、次に吸入ガスを失う)危険を伴うことなく、体壁508の付近に配置される解剖学的構造により効果的にアクセスし得る。
【0043】
一部の実施態様では、装置400をキットとして供給してもよく、キットは、内部ハブ422と、様々な大きさの器具504又はカニューレ506を収容する補助カニューレポート412のための多数のシールインサート424と、シール418と、外部ハブ420と、多数の創傷保護具(スリーブマウント406、スリーブ414、及び円形エラストマー要素416)とを含む。多数の創傷保護具をキット内に配置し得る。各創傷保護具は、異なる厚さの体壁508に適合するよう、スリーブ414の長さによって異なり得るし、ロボット140からの異なる収縮圧力に適合するよう、円形エラストマー要素416の剛性によっても異なり得る。一部の実施態様において、スリーブ414は長さにおいて調節可能であり得る。一部の実施態様では、上で議論したように、シール418及びシールインサート424を一体成形品において形成し得る。その場合、異なるカニューレ506に適合するよう、カニューレ506が用いられないならば、異なる器具504に適合するよう、キットは多数のバージョンの一体成形品シールを含み得る。
【0044】
装置400は、単一の補助ポート412を備えて示されている。しかしながら、本発明の実施態様は、如何なる数の補助ポート412を含んでもよいし、補助ポート412を含まなくてもよい。ポートの幾つかの例示的な構成を、
図6A、6B、6C、6D、6Eに示す。
図6Aは、
図4A及び4Bに例示するポートの構成を例示している。
図6Aに示すように、単一の補助ポート412が内部ハブ422上の偏心カニューレポート402付近に位置付けられる。
図6Bは、偏心カニューレポート402付近に位置付けられた2つの補助ポート602,604を備える構成を例示している。一部の実施態様では、補助ポート602,604を互いから90°に位置付け得る。
図6Cは、偏心カニューレポート402付近に位置付けられた3つの補助ポート606,608,610を例示している。
図6Dに示すように、一部の実施態様では、カニューレポート402を内部ハブ422の中心に向かって位置付けてよく、2つ又はそれよりも多くの補助ポート(ポート612,614,616,618を例示している)がカニューレポート402の周りに位置する。
図6Eは、補助ポート412を含まない実施態様を例示している。追加的な補助ポートは、多数の器具506の挿入を可能にするが、装置400及び結果として生じる所要の切開部112の大きさを増大させ得る。
【0045】
図7A及び7Bは、体壁508を収縮させるために装置400を利用することを例示している。
図7Aは、カニューレ100に締め付けられた装置400を例示している。
図7Aに示すように、カニューレ100は、カニューレ100を遠隔操作ロボット140に取り付ける取付具702を含む。
図7Aに示すように、器具102,104,106は、標的構造704に取り組む有効作業領域706を有する。
【0046】
図7Bは、カニューレ100に対して力Fを適用することによる体壁508の収縮を例示している。上で議論したように、カニューレクランプ404を用いて装置400をカニューレ100に係止させ得る。加えて、カニューレ100は、ロボット取付具402を用いて遠隔操作ロボット140に係止され、ロボット取付具702は、遠隔操作ロボット140に対する、カニューレ100のための、従って、カニューレポート402のための堅固に固定的な位置をもたらす。装置400が装着されてカニューレ100に係止されると、引き続き遠隔操作ロボット140を上向きに持ち上げて、体壁508を収縮させ得る。収縮力は装置400を通じてカニューレ100によって支持され、円形エラストマー要素416は体壁508を適用される力の方向に引っ張り、手術器具が作動して手術を行うための空間をもたらすのを助ける。吸入の喪失の場合には、装置400を利用して体壁508に対して張力をかけてもよい。
図7Bに示すように、構造704にアクセスするための有効作業領域706は、実質的に収縮よりも大きくあり得る。例えば、遠隔操作ロボット140を利用して数センチメートルだけ体壁508を収縮させ得る。
【0047】
図7Bに例示するように、装置400はエラストマー要素416を有し、エラストマー要素416は体壁508の内側に挿入され、カニューレクランプ404を用いてカニューレ100に締め付けられ、カニューレ100は遠隔操作ロボット140に取り付けられるので、外科医は、体壁508が有利な方向において引っ張られて標的構造704で平面及び解剖学的構造を露出させるように、遠隔操作ロボット140を移動させ得る。遠隔操作ロボット140を病院スタッフによって要求されるように位置付け得る。
図7Bに示すように、装置400を皮膚収縮機(skin retractor)として利用して、手術を行うための追加的な空間をもたらし得る。
【0048】
身体内に挿入され且つカニューレチューブ及び体壁508が平行に近いように位置付けられるカニューレ100によって、類似の収縮を達成し得る。カニューレ100を引っ張って体壁508を持ち上げ得るが、起こり得る追加的な外傷に関する懸念がある。更に、標的構造704を、カニューレ100を通じる器具に有利に露出させ得ない。加えて、カニューレ100はプロセス中に体壁508から急に飛び出し得る。装置400を用いるならば、ポート喪失は懸念事項でなく、所望の標的構造704を有利に露出させることは容易に達成される。加えて、収縮プロセス中、カニューレ100を標的構造704から更に離れる方向に引っ張り、器具102,104,106がより一層大きい作業領域706内に完全に配置されるのを可能にする。これは全ての器具のより良好な利用を可能にし、カメラが、標的構造704に対する視覚的手掛かり(visual purchase)、視野、及びフォーカスのために、より有利に位置付けられるのも可能にする。更に、器具102,104,106は、標的構造704の手術部位に三角法を用いて、外科医により直観的な作業位置をもたらし得る。
【0049】
一部の実施態様では、例えば、
図6Eに示すように、装置400は補助ポート412を全く利用しなくてもよい。
図6Eは、中心化されたカニューレポート402を備えるが、補助ポート412を備えない、例示的な装置400を示している。装置400は、収縮を用いて、標的構造704への十分なアクセスをもたらし、追加的な器具を必要とせずに外科処置を行い得る。
【0050】
図4A及び4Bに示すように、補助ポート412をカニューレポート402の周りのいずれかの場所に位置付け得るように、内部ハブ422を回転させ得る。更に、外科処置中、補助ポート412を多数回再位置決めし得る。更に、外科処置中、補助ポート412を通じて多数の器具504を利用し得る。しかしながら、実際には、吸入圧力ホース及びポート等を含む、遠隔操作ロボット140及びカニューレ100の形状は、カニューレポート402の周りの補助ポート412の全範囲の動きを制限する。一部の実施態様では、カニューレポート402の周りの補助ポート412の動きの範囲は300°程度であり得る。
【0051】
装置400をポリカーボネート、シリコン、及びポリウレタンで形成し得る。具体的には、内部ハブ422、外部ハブ420、及びスリーブマウント406をポリカーボネートで形成し得る。スリーブ414をポリウレタンで形成し得る。シール、例えば、シールインサート424及びシール418をシリコンシールで形成し得る。
【0052】
外科手術中、スリーブマウント406が体壁508の上に位置付けられる間に、円形エラストマー要素416が体壁508の底に対して位置付けられるように、体壁508に切開部112を形成して、切開部112を通じて創傷保護具を挿入し得る。次に、カニューレ100を内部ハブ422のカニューレポート402内に位置付け、インサートシール424を補助カニューレポート412内に位置付け得る。次に、切開部112を通じてカニューレ100を位置付け、内部ハブ422をスリーブマウント406に対して位置付け得る。次に、カニューレクランプ404を用いてカニューレ100を内部ハブ422に締め付け得る。次に、外部ハブを装着して、内部ハブ422を所定の場所に保持し、装置400の組立てを終了する。次に、遠隔操作ロボット140をカニューレ100に結合(ドッキング)させ、カニューレ100を通じて器具102,104,106を挿入し得る。外科処置中、遠隔操作ロボット140は器具102,104,106を制御するのに対し、補助者は補助ポート412を通じて器具506を利用する。更に、遠隔操作ロボット140は、必要に応じて、追加的な収縮を体壁508にかけて、クランプ404及び内部ハブ422を通じて装置400に対して上向きの力を適用し得る。
【0053】
(付記1)
本発明の1つの態様によれば、
円形エラストマー要素と、
円形エラストマー要素に連結されるスリーブと、
円形エラストマー要素の反対側でスリーブに連結されるスリーブマウントと、
スリーブマウントに取り外し可能に取り付けられる外部ハブと、
スリーブマウントと外部ハブとの間に捕捉される内部ハブとを含み、内部ハブは、カニューレポートを含む、
回転補助ポート装置が提供される。
(付記2)
付記1の回転補助ポート装置において、前記内部ハブは、少なくとも1つの補助カニューレポートを更に含む。
(付記3)
付記1の回転補助ポート装置は、内部ハブとスリーブマウントとの間にシールを更に含む。
(付記4)
付記1の回転補助ポート装置は、カニューレポート内にシールを更に含む。
(付記5)
付記2の回転補助ポート装置は、少なくとも1つの補助カニューレポートの各々の内にシールインサートを更に含む。
(付記6)
付記1の回転補助ポート装置は、カニューレポートの周りの少なくとも1つの補助カニューレポートの回転のために用いるよう内部ハブに形成される指グリップを更に含む。
(付記7)
付記1の回転補助ポート装置は、カニューレポートで内部ハブに回転可能に取り付けられるカニューレクランプを更に含み、カニューレクランプは、カニューレポート内に挿入されるカニューレの周りを締め付ける。
(付記8)
付記1の回転補助ポート装置において、外部ハブは、スリーブマウントに取り付けられ、解放機構を用いて固定される。
(付記9)
付記1の回転補助ポート装置において、外部ハブは、スリーブマウントに形成されるネジ山と係合する。
(付記10)
本発明の別の態様によれば、各創傷保護具が、円形エラストマー要素と、円形エラストマー要素に連結されるスリーブと、円形エラストマー要素の反対側でスリーブに連結されるスリーブマウントとを含む、1つ又はそれよりも多くの創傷保護具と、
1つ又はそれよりも多くの創傷保護具のスリーブマウントに取り付け可能な外部ハブと、
外部ハブとスリーブマウントとの間に捕捉可能な内部ハブとを含み、
1つ又はそれよりも多くの創傷保護具は、体壁の厚さの変動を許容する、
回転補助ポートキットが提供される。
(付記11)
付記10のキットは、回転リップシールと、1つ又はそれよりも多くのシールインサートとを含み、1つ又はそれよりも多くのシールインサートは、カニューレポートでカニューレの周りを封止するのを可能にする。
(付記12)
付記11のキットは、1つ又はそれよりも多くの補助カニューレポートで異なる大きさの器具又はカニューレの周りを封止する1つ又はそれよりも多くのシールインサートを更に含む。
(付記13)
本発明の更に別の態様によれば、
ロボット単一ポート手術の方法であって、
身体の体壁に切開部を形成すること、
円形エラストマー要素と、円形エラストマー要素に連結されるスリーブと、円形エラストマー要素の反対側でスリーブに連結されるスリーブマウントとを含む、創傷保護具を挿入すること、
内部ハブのカニューレポートを通じてカニューレを配置すること、
カニューレが切開部を通じて挿入され且つ内部ハブが前記スリーブマウントに対して位置付けられるように、内部ハブを配置すること、
外部ハブを装着して、スリーブマウントに対して位置付けられる内部ハブを保持すること、
遠隔操作ロボットを前記カニューレに結合させること、及び
遠隔ロボット制御される器具をカニューレを通じて挿入することを含み、
創傷保護具は、円形エラストマー要素が身体の内側にあり且つスリーブマウントが身体の外側にあるように挿入される、
方法が提供される。
(付記14)
付記13の方法は、遠隔操作ロボットを移動させて体壁を収縮させることを含む。
(付記15)
付記13の方法は、内部ハブの補助カニューレポート内にインサートシールを配置すること、及び補助カニューレポートを通じて補助器具を挿入することを含む。
【0054】
上述の記載は本発明の特定の実施態様を例示するために提供され、限定的であることを意図しない。本発明の範囲内で数々の変更及び変形が可能である。本発明は以下の請求項中に示される。
【外国語明細書】