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特開2023-87106テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール抗エストロゲン薬物
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  • 特開-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール抗エストロゲン薬物 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087106
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール抗エストロゲン薬物
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20230615BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230615BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230615BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230615BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
C07D471/04 103A
C07D471/04 CSP
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00 101
A61K31/437
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076673
(22)【出願日】2023-05-08
(62)【分割の表示】P 2020169604の分割
【原出願日】2016-09-29
(31)【優先権主張番号】62/235,900
(32)【優先日】2015-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514152004
【氏名又は名称】オレマ ファーマシューティカルズ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド シー. マイルス
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ジェイ. クシュナー
(72)【発明者】
【氏名】サイラス エル. ハーモン
(57)【要約】
【課題】 抗エストロゲン薬物を提供すること
【解決手段】
本発明の開示は、エストロゲンにより媒介される障害もしくはより完全に本明細書に記載されている他の障害をモジュレーションするための、テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール化合物もしくは薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、立体異性体、互変異性体、回転異性体、N-オキシドおよび/もしくは置換誘導体を、または、必要に応じて医薬組成物中の、それを提供する。それらのテトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール化合物は、ナノモル濃度でエストロゲン受容体に対して有意な阻害作用を有し、最小量の残留エストロゲン作用を有する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
本発明は医薬の分野にあり、特に新規のテトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール化合物、ならびにその塩(薬学的に許容される塩を含む)、プロドラッグおよび誘導体、ならびにエストロゲン受容体モジュレーターとしての使用および抗エストロゲン薬物から恩恵を受けることになる医学的状態に対する使用を含めたこれらの医学的使用、ならびにその組成物である。
【背景技術】
【0002】
背景
エストロゲン受容体モジュレーターは、エストロゲン受容体に作用する特定のクラスの化合物である。これらの化合物は、純粋なアゴニスト(模倣エストロゲン)、純粋なアンタゴニスト、または混合したアゴニスト-アンタゴニスト(時には選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)と呼ばれる)であることができる。例えば、エストラジオールは純粋なアゴニストであり、フルベストラントは完全なアンタゴニストであり、そしてタモキシフェンおよびラロキシフェンはSERMである。
【0003】
大部分の乳がんは、エストロゲン受容体(ER)を発現し、これらの成長は、その受容体、主にERアルファにおけるエストロゲンの作用により推進される。この種のがんは、エストロゲン受容体アンタゴニストで処置するが、エストロゲン受容体アンタゴニストは、受容体への結合に対してエストロゲンと競合するが、受容体を活性化せず、エストロゲン駆動性成長を阻止する。部分的抗エストロゲン、例えば、ラロキシフェンおよびタモキシフェンなどは、子宮成長のエストロゲン様刺激、また場合によっては、腫瘍成長を刺激する、乳がん進行中のエストロゲン様作用を含めた一部のエストロゲン様作用を保持する。対照的に、完全な抗エストロゲンであるフルベストラントは、子宮に対するエストロゲン様作用がなく、タモキシフェン耐性腫瘍において有効である。最近の研究はまた、フルベストラントが転移性乳がんの処置においてアロマターゼ阻害剤であるアナストロゾールより実質的に優れていることを示唆している(Robertsonら、J Clin Oncol、(200
9年)27巻(27号):4530~5頁)。
【0004】
エストラジオールは天然由来の女性エストロゲンホルモンである。ラロキシフェンは、1981年にEli Lillyにより(米国特許第4,418,068号;第5,478,847号;第5,393,763号;および第5,457,117号)乳がんの予防および骨粗鬆症の処置のために開示された。フルベストラントは、1983年にImperial Chemical Industries(ICI)により開示された(米国特許第4,659,516号、2007年に失効し、特許期間が延長された;米国特許第6,774,122号および第7,456,160号)。タモキシフェンもまた、‘516特許においてICIにより開示された。タモキシフェンは、乳房組織内のエストロゲン作用の強いアンタゴニズムに基づき、乳がん処置用に開発された(Jordan, J.、Cell. Biochem.、51巻(1995年))。
【化1】
【0005】
抗エストロゲン性の程度は、多くの場合、雌の未成熟な(好ましくは卵巣切除した)げっ歯類を、エストロゲンの非存在下(アゴニストモード)および存在下(アンタゴニストモード)の両方で、試験用量の化合物に曝露することによってアッセイする。タモキシフェンおよび他の部分的抗エストロゲンは、アゴニストモードで子宮重量増加を刺激し、アンタゴニストモードで、エストロゲン駆動性の子宮重量増加を部分的にのみ遮断する。フルベストラントおよび他の完全抗エストロゲンは、アゴニストモードでは子宮の重量増加を刺激せず、アンタゴニストモードではエストロゲン駆動性重量増加を完全に遮断する。培養中のヒト子宮がん細胞成長におけるエストロゲン調節性アルカリホスファターゼ発現の誘導は、部分的抗エストロゲン性と完全抗エストロゲン性とを区別するために使用することができ、げっ歯類の重量増加アッセイとも十分相関する。米国特許第9,018,244号を参照されたい。
【0006】
タモキシフェンおよびフルベストラントは両方とも、エストロゲンによって誘発される培養ヒト乳がんの細胞増殖を阻害する。しかし、フルベストラントは、増殖因子、特にインスリン/インスリン様増殖因子ファミリーの増殖因子で誘発された場合、増殖をより完全に阻害する。したがって、増殖因子駆動性の乳がん細胞増殖の阻害および子宮重量に対する作用からは、完全抗エストロゲンと、部分的抗エストロゲンとを区別することができる2つのアッセイが得られる。
【0007】
エストロゲン受容体を分解することによって作用する化合物は、時には「SERD」(選択的エストロゲン受容体機能ディグレーダー(Selective Estrogen
Receptor Degraders))と呼ばれる。タモキシフェン結合はエストロゲン受容体を安定化する一方で、フルベストラントおよび化学的に関連する抗エストロゲン、例えば、ICI-164384およびRU-58668などは、エストロゲン受容体の分解を引き起こす。受容体の分解を誘導する能力は、タモキシフェンとフルベストラントの挙動を区別する因子であり、乳がんを処置する薬物において望ましいこともある。
【0008】
フルベストラントは17-ベータエストラジオール核を組み込んでいる。エストラジオール核は経口吸収を遮断し、長い柔軟性のある脂肪族側鎖は薬物の溶解度を低下させる。
これらの態様は一緒になって、フルベストラントの経口バイオアベイラビリティーを低下させるので、薬物は注射を介して投与しなければならない。各臀部に1本ずつ行う、2本の5ml筋肉内デポー注射は、健康専門家が毎月投与しなければならない。さらに、これらの2本の注射が、最適な作用に対して十分な薬物曝露を提供するかどうか不明確である。薬物は閉経前の女性には作用しないようである。
【0009】
一部の化合物、例えば、GW-5638(Wuら、Mol Cell.、18巻、413頁(2005年))などは、受容体を分解するが、完全な抗エストロゲンよりもむしろ部分的エストロゲンである。したがって、エストロゲン受容体を分解する能力は、完全な抗エストロゲン性を保証しない。
【0010】
1990年、高親和性ベンゾピラン抗エストロゲンのファミリーがKapilおよび共同研究者により発見された。(Sharmaら(1990年)J Med Chem、33巻(12号):3222~9頁;Sharmaら、(1990年)J Med Chem、33巻(12号):3216~22頁)。この研究は薬物候補アコルビフェンの発見をもたらした。
【0011】
2011年6月、Aragon Pharmaceuticalsは、PCT/US2011/039669(2011年12月15日にWO2011/156518として公開された)を出願し、これは、「Estrogen Receptor Modulators and Uses Thereof」という表題の米国仮特許出願第61/353,531号に対する優先権を主張したものであった。Aragonは、タモキシフェン耐性乳がんの処置のため、追加のベンゾピラン誘導体および少なくとも71種のアコルビフェン類似体を開示した。Aragonに譲渡された特許出願はまた、米国特許第8,455,534号および第8,299,112号も含む。Aragonは、2013年、その前立腺抗アンドロゲン薬物ラインについて、Johnson & Johnsonに買収され、Aragonは、Seragon Pharmaceuticals,Inc.の名称で、その抗エストロゲン性薬物開発を継続した。Seragonは、局所的に進行したまたは転移性エストロゲン受容体陽性乳がんを有する閉経後の女性に対する臨床治験において、SERD ARN-810を現在進めている。この分野内のSeragonによる特許出願は、米国特許第9,078,871号;第8,853,423号;および第8,703,810号;ならびにGovekらに
より出願されたUS2015/0005286およびWO2014/205136、ならびにKahramanらにより出願されたWO2014/205138を含む。Seragonは2014年にGenentechにより買収された。
【0012】
Kushnerらは、2012年12月17日に出願され、Olema Pharmaceu
ticalsに譲渡されたWO2013/090921およびUS2013/0178445において、OP-1038(3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチル-2-(4-{2-[(3R)-3-メチルピロリジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-2H-クロメン-7-オール)およびOP-1074((2S)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチル-2-(4-{2-[(3R)-3-メチルピロリジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-2H-クロメン-7-オール)、ならびに医薬組成物および使用の方法について記載している。Olemaによる抗エストロゲン性化合物の分野内の追加の特
許出願はWO2014/203129およびWO2014/203132を含む。
Astra Zenecaは、エストロゲン受容体陽性(ER+)乳がんを有する患者において、新規の、経口の選択的エストロゲン受容体下方制御因子(SERD)であるAZD9496を現在開発中である。WO2014/191726を参照されたい。AZD9496の構造が以下に例示されている:
【化2】
追加のインドール、ベンゾピラン、および2H-クロメン化合物は、WO2012/084711;WO2002/013802;WO2002/004418;WO2002/003992;WO2002/003991;WO2002/003990;WO2002/003989;WO2002/003988;WO2002/003986;WO2002/003977;WO2002/003976;WO2002/003975;WO2006/078834;US6821989;US2002/0128276;US6777424;US2002/0016340;US6326392;US6756401;US2002/0013327;US6512002;US6632834;US2001/0056099;US6583170;US6479535;WO1999/024027;US6005102;EP0802184;US5998402;US5780497およびUS5880137において開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第4,418,068号明細書
【特許文献2】米国特許第5,478,847号明細書
【特許文献3】米国特許第5,393,763号明細書
【特許文献4】米国特許第5,457,117号明細書
【特許文献5】米国特許第4,659,516号明細書
【特許文献6】米国特許第6,774,122号明細書
【特許文献7】米国特許第7,456,160号明細書
【特許文献8】米国特許第9,018,244号明細書
【特許文献9】国際公開第2011/156518号
【特許文献10】米国特許第8,455,534号明細書
【特許文献11】米国特許第8,299,112号明細書
【特許文献12】米国特許第9,078,871号明細書
【特許文献13】米国特許第8,853,423号明細書
【特許文献14】米国特許第8,703,810号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2015/0005286号明細書
【特許文献16】国際公開第2014/205136号
【特許文献17】国際公開第2014/205138号
【特許文献18】国際公開第2013/090921号
【特許文献19】米国特許出願公開第2013/0178445号明細書
【特許文献20】国際公開第2014/203129号
【特許文献21】国際公開第2014/203132号
【特許文献22】国際公開第2014/191726号
【特許文献23】国際公開第2012/084711号
【特許文献24】国際公開第2002/013802号
【特許文献25】国際公開第2002/004418号
【特許文献26】国際公開第2002/003992号
【特許文献27】国際公開第2002/003991号
【特許文献28】国際公開第2002/003990号
【特許文献29】国際公開第2002/003989号
【特許文献30】国際公開第2002/003988号
【特許文献31】国際公開第2002/003986号
【特許文献32】国際公開第2002/003977号
【特許文献33】国際公開第2002/003976号
【特許文献34】国際公開第2002/003975号
【特許文献35】国際公開第2006/078834号
【特許文献36】米国特許第6821989号明細書
【特許文献37】米国特許出願公開第2002/0128276号明細書
【特許文献38】米国特許第6777424号明細書
【特許文献39】米国特許出願公開第2002/0016340号明細書
【特許文献40】米国特許第6326392号明細書
【特許文献41】米国特許第6756401号明細書
【特許文献42】米国特許出願公開第2002/0013327号明細書
【特許文献43】米国特許第6512002号明細書
【特許文献44】米国特許第6632834号明細書
【特許文献45】米国特許出願公開第2001/0056099号明細書
【特許文献46】米国特許第6583170号明細書
【特許文献47】米国特許第6479535号明細書
【特許文献48】国際公開第1999/024027号
【特許文献49】米国特許第6005102号明細書
【特許文献50】欧州特許第0802184号明細書
【特許文献51】米国特許第5998402号明細書
【特許文献52】米国特許第5780497号明細書
【特許文献53】米国特許第5880137号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Robertsonら、J Clin Oncol、(2009年)27巻(27号):4530~5頁
【非特許文献2】Jordan, J.、Cell. Biochem.、51巻(1995年)
【非特許文献3】Wuら、Mol Cell.、18巻、413頁(2005年)
【非特許文献4】Sharmaら(1990年)J Med Chem、33巻(12号):3222~9頁
【非特許文献5】Sharmaら、(1990年)J Med Chem、33巻(12号):3216~22頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、エストロゲン受容体により媒介されるまたは影響を受ける医学的障害の処置に対して有利な特性を有する新規な抗エストロゲン性化合物ならびに医薬組成物およびその使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の要旨
本発明は、通常ヒトである宿主において、エストロゲン受容体によりモジュレートされるまたは影響を受ける医学的障害の処置に対して有利な特性を有する式Iの特定のテトラ
ヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール化合物を提供する。それらのテトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール化合物は、ナノモル濃度でエストロゲン受容体に対して有意な阻害作用を有し、最小量の残留エストロゲン作用を有する。
【0017】
本発明は特に、2つの特定の化合物、化合物B((1R,3R)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-3-メチル-1-(4-((1-プロピルアゼチジン-3-イル)オキシ)フェニル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール)および化合物C((1R,3R)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-1-(4-(2-(3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル)エトキシ)フェニル)-3-メチル-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール)を提供し、驚くことにこれらの構造は、有用なエストロゲン受容体アンタゴニストとして当技術分野で記載されている以前の化合物と異なり、実際のところ、当技術分野の教示で望ましくないと断定的に示された特定の構造的特徴を含有する。具体的には、AZD9496とは異なり、上記に記載されている化合物BおよびCは、以下に例示されるように、ジフルオロフェニル架橋を持たない。
【化3】
【0018】
本発明の開示は、これらの化合物BおよびCならびにこれに関係する様々な方法および組成物について記載している。さらに、本発明の開示は、構造的に同様の薬剤と比較した場合でも、これらの化合物のある特定の驚くべきおよび予期せぬ特質について記録している。化合物BおよびCは両方とも、本発明により提供される式I:
【化4】
(式中、
Xは-CH-または-O-であり、
Yは、
【化5】
であり、
、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素またはハロから選択され、
は、水素、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、C~Cアルケニル、
~C(C~Cシクロアルキル)またはC~Cヘテロアルキルであり、
は、水素、C~Cアルキル、C~CハロアルキルまたはC~C(C~Cシクロアルキル)であり、
およびRは、それぞれ独立に、水素またはC~Cアルキルから選択される)
またはその薬学的に許容される塩もしくは組成物に包含される。
化合物BおよびCは、本明細書で記録されているように、式Iの範囲内の構造を有する他の化合物に関しても、特に顕著な構造的態様を有し、予期せぬおよび望ましい機能的特質によりさらに特徴付けられる。
【0019】
化合物BおよびCの構造から容易に明らかなように、R、R、RおよびRのそれぞれはHである。化合物BおよびCの特定の有意性を記載することに加えて、本発明の開示は、R、R、RおよびRのそれぞれがHである式Iの化合物を具体的およびより一般的に提供する。
【0020】
本明細書に例示されている式I内の特定の化合物は化合物A、すなわち(1R,3R)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-1-(3-フルオロ-4-((1-プロピルアゼチジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3-メチル-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール、化合物B、すなわち(1R,3R)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-3-メチル-1-(4-((1-プロピルアゼチジン-3-イル)オキシ)フェニル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール、化合物C、すなわち(1R,3R)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-1-(4-(2-(3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル)エトキシ)フェニル)-3-メチル-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール、および化合物D、すなわち(1R,3R)-1-(2,6-ジフルオロ-4-(2-(3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル)エトキシ)フェニル)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-3-メチル-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドールである。
【0021】
化合物A、化合物B、化合物C、および化合物Dの構造は以下に例示される。
【化6】
【0022】
これらの化合物のそれぞれにおいて、
【化7】
の部分は、フェニルまたはフルオロ置換フェニル架橋を介してテトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール核に結合している。注目すべきことに、これらの化合物のうちの1つのみ、化合物Dは、AstraZenecaの開示が重大であると教示している種類のジフルオロ置換を含む。化合物Dは、PCT出願公開WO2016/097072においてGoodacreらにより報告され、別様に本明細書で「Goodacre化合物102」として参照されている。したがって、少なくとも化合物A~Cのそれぞれは、エストロゲン受容体アンタゴニストに不可欠なものとして本技術により教示された部分を明示的に持たない構造を有する。
【0023】
本発明の開示は、化合物A~Dのそれぞれはある特定の有利な抗エストロゲン活性を有することを記録している。例えば、AZD9496は、乳房細胞においてIC50=1.3nMを有するE2誘導性転写、および乳房細胞においてIC50=0.2nMを有するE2刺激性増殖の強力な阻害剤である一方、AZD9496は、化合物A~Dと比較して、アルカリホスファターゼ(AP)のアゴニストとアンタゴニストの両方として約10倍大きなエストロゲン様活性を有する。化合物A、化合物B、化合物Cおよび化合物Dの有利な活性は表1に例示されている。
【表1】
【0024】
化合物BおよびCは、ヒト転移性乳がんを1次処置するための他のホルモン療法よりも優れていることが示されている筋肉内注射抗エストロゲンである、フルベストラントと同等の活性を示す。化合物BおよびCは、エストロゲン駆動性遺伝子発現およびヒト乳がん細胞増殖の遮断においてフルベストラントと同様の潜在能力を有する。したがって、化合物BおよびCの効力はAZD9496よりも優れている。図2Aを参照されたい。
【0025】
本発明の開示は、化合物Bに対する様々な追加の興味深く望ましい活性を例証している。例えば、化合物Bは、乳房細胞において、IC50=4.35nMでE2誘導性転写を阻害した。化合物Bはまた、乳房細胞において、IC50=4.53nMでE2刺激性増殖を阻害することも実証した。ECC-1細胞を化合物Bと共にインキュベートした場合、500pM 17β-エストラジオールがECC-1細胞に対して有する作用に対してAP活性を正規化していたとして、細胞が有したことになるAP活性のわずか2.18%しか細胞は有していなかった。ECC-1細胞を、化合物Bと500pM 17β-エストラジオールとで共に処置した場合、ECC-1細胞は、17β-エストラジオールがもたらしたであろう活性のわずか1.96%しか示さなかった。
【0026】
本発明で提供される化合物は、所望する場合、抗エストロゲン性薬剤で処置可能なもの
を含めて、エストロゲン受容体によりモジュレートされるまたは影響を受ける障害を処置するために、薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、立体異性体、互変異性体、回転異性体、N-オキシド、またはX、Y、R、R、R、R、R、R、Rおよび/もしくはRが置換されている誘導体として、必要に応じて薬学的に許容される組成物で調製することができる。
【0027】
ある特定の実施形態では、式I(a)を有する化合物:
【化8】
(式中、
、R、R、R、R、R、RおよびRは上で定義された通りである)
または薬学的に許容されるその塩が開示される。
【0028】
ある特定の実施形態では、式I(b)を有する化合物:
【化9】
(式中、
、R、R、R、R、R、RおよびRは上で定義された通りである)
または薬学的に許容されるその塩が開示される。
【0029】
ある特定の実施形態では、式I(c)を有する化合物:
【化10】
(式中、
、R、R、R、R、R、RおよびRは上で定義された通りである)
または薬学的に許容されるその塩が開示される。
【0030】
ある特定の実施形態では、式I(d)を有する化合物:
【化11】
(式中、
、R、R、R、R、R、RおよびRは上で定義された通りである)
または薬学的に許容されるその塩が開示される。
【0031】
本発明により提供される化合物は、エストロゲン受容体によりモジュレートされるまたは影響を受ける障害の処置を必要とするヒトまたは他の宿主において、エストロゲン受容体によりモジュレートされるまたは影響を受ける障害を処置するために、それ自体で、または薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、立体異性体、互変異性体、回転異性体またはN-オキシドとして、必要に応じて薬学的に許容される組成物で調製することができる。一部の実施形態では、式Iの化合物はプロドラッグとして提供される。
【0032】
一部の実施形態では、式Iの化合物は、少なくとも1つの同位体置換、特に、例えば、水素に対する重水素による少なくとも1つの置換を有する。一実施形態では、重水素は、代謝中の結合破壊の位置に結合することもできるし(α-重水素速度論的同位体効果)または結合破壊部位に隣接して、またはその付近に結合することもできる(β-重水素速度論的同位体効果)。
【0033】
本明細書に記載の化合物またはこれらの薬学的に許容される塩、プロドラッグなど、またはその組成物を用いて処置することができる障害の例として、これらに限定されないが、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体またはこれらの両方の発現に陽性である局所的、進行性または転移性乳がんが挙げられる。化合物は、再発の危険性を低減するため、または残留する腫瘍を処置するために、手術前または手術後に投与することができる。本明細書に記載の化合物は、化学療法、放射線または手術の後またはこれらの代わりの補助的治療としてとして有用である。本明細書に記載の化合物はまた、エストロゲンでモジュレートされる腫瘍に対してハイリスクを有する女性における乳がんの予防に対して、または他のがんおよびエストロゲン受容組織の異常成長疾患、例えば、卵巣がん、子宮内膜がん、および膣がんを含めた、女性生殖管がんなど、ならびに子宮内膜症などの処置に対して有用である。
【0034】
一部の実施形態では、乳がんなどのがんは、治療後に再発または進行した閉経後の女性におけるがんである。他の実施形態では、閉経後の女性に生じる乳がんなどのがんは、内分泌性治療の存在下で進行している。さらに他の実施形態では、閉経後の女性のがんも含めたがんは、アロマターゼ阻害剤、例えば、アミノグルテチミド、テストラクトン、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ボロゾール、ホルメスタン、ファドロゾール、4-ヒドロキシアンドロステンジオン、1,4,6-アンドロスタトリエン-3,
17-ジオン、または4-アンドロステン-3,6,17-トリオンなどを用いた治療の存在下で以前に進行したものである。一部の実施形態では、アロマターゼ阻害剤はアナストロゾール、レトロゾール、またはエキセメスタンである。
【0035】
一部の実施形態では、本発明の化合物は、エストロゲンまたはプロゲステロン受容体陰性乳がんを処置するために使用される。
【0036】
本明細書中で提供されている化合物は、それ自体で、または、標的療法剤、例えば、標的療法、例えば、mTOR阻害剤(例えば、エベロリムスまたはラパマイシン)、CDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ(PD-0332991)(Pfizer)、アベマシクリブ(Abemaciclib)(LY2835219)(Lilly)またはLEE001(Novartis))、ハーセプチン、PD-1、PD-L1、もしくはCTLA-4の抗体もしくはこれらに対する阻害剤、またはEGFR、PGFRもしくはIGFRの阻害剤もしくはこれらに対する抗体を含めた、1種または複数種の他の抗がん剤と組み合わせて、例えば、進行性乳がんに対して以前のホルモン療法を受けたことのない患者において、エストロゲンでモジュレートされる腫瘍の最初の処置として使用することができる。組み合わせた投与は、例えば、別個の、逐次的な、同時の、または交互の投与を含めて、当業者に明らかな任意の技術により進行することができる。
【0037】
本発明により提供される化合物は、再発を予防するために手術後のアジュバント療法としても有用である。このようなアジュバントの使用は、多くの場合、数年間、例えば、手術、および/または関連する化学療法および放射線療法の終了後5年、または10年まで投与される。
【0038】
本発明により提供される化合物は、ハイリスクの女性において乳がんの予防に有用であり、無期限を含めた、任意の所望の期間の間摂取することができる。例えば、乳がんの家族歴を有する、またはBRCA1もしくはBRCA2の変異または患者を乳がんに罹りやすくする他の遺伝子を保持すると判定されたことのある患者(通常女性である患者)は、乳房切除術または他の治療介入の代わりにこのような予防的処置を使用することを選ぶこともできる。本明細書に記載の化合物はまた、外科切除前に大きな腫瘍を縮小させるネオアジュバントとして有用であり、乳房保存手術も可能にし、再発の危険性も減少させる。
【0039】
選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)はまた、特に骨粗鬆症を処置または予防するための、閉経後の女性に対するホルモン療法に対して有用である。一部の実施形態では、本発明の化合物は、骨減少症、骨粗鬆症、または関連する骨障害を処置するために、必要に応じて、エストロゲン、SERM、または部分的抗エストロゲンと組み合わせて使用され、これによって、抗エストロゲンが、全エストロゲンまたは部分的エストロゲンの子宮および他の組織に対する有害作用が予防される。
【0040】
他の目的および利点は、次の詳細な説明を考慮することにより当業者には明らかとなる。開示された本発明のすべての変化形および修正形は、本発明の範囲内であると考えられる。
【0041】
本発明は、少なくとも以下の特徴を含む:
(a)本明細書に記載の式Iの化合物、およびその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、立体異性体、互変異性体、回転異性体またはN-オキシド(これらのそれぞれおよびそのすべての亜属および種は個々に企図され、具体的に記載されている);
(b)エストロゲン受容体によりモジュレートされるまたは影響を受ける障害の処置または予防を必要とするヒトまたは他の宿主における、エストロゲン受容体によりモジュレー
トされるまたは影響を受ける障害、および本明細書でさらに記載されている他の障害の処置または予防における使用のための、本明細書に記載の式Iの化合物、およびその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、立体異性体、互変異性体、回転異性体またはN-オキシド;
(c)エストロゲン受容体によりモジュレートされるまたは影響を受ける障害の処置または予防を必要とするヒトまたは他の宿主におけるエストロゲン受容体によりモジュレートされるまたは影響を受ける障害、および本明細書でさらに記載されている他の障害の処置または予防における使用のための医薬の製造における、式Iの化合物、および薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、立体異性体、互変異性体、回転異性体またはN-オキシドの使用;
(d)本明細書に記載の式Iの化合物が製造において使用されることを特徴とする、エストロゲン受容体によりモジュレートされるまたは影響を受ける障害の処置または予防を必要とするヒトまたは他の宿主における、エストロゲン受容体によりモジュレートされるまたは影響を受ける障害、および本明細書でさらに記載されている他の障害を処置するまたは予防するための治療的使用を目的とする、医薬の製造のためのプロセス;
(e)宿主を処置する有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、立体異性体、互変異性体、回転異性体もしくはN-オキシドを、薬学的に許容される担体または希釈剤とともに含む医薬製剤(複数可);
(f)他の化学的実体から実質的に単離したものを含む、実質的に純粋な形態の本明細書に記載の式Iの化合物(例えば、少なくとも90または95%);
(g)式Iの化合物およびその塩、組成物、剤形の製造のためのプロセス;ならびに
(h)本明細書に記載の有効量の式Iの化合物を含有する治療用生成物の調製のためのプロセス。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1A図1Aは、BALB/cマウスにおける、5mg/kgの用量での、化合物BおよびGoodacre化合物107に対する遊離薬物濃度のプロットである。x軸は、時間単位での時間を表し、y軸はpg/mlで濃度を表す。
【0043】
図1B図1Bは、BALB/cマウスにおける、5mg/kgの用量での、化合物CおよびGoodacre化合物102に対する遊離薬物濃度のプロットである。x軸は時間単位での時間を表し、y軸はpg/mlで濃度を表す。
【0044】
図2図2は、提供された化合物の濃度と比較した、対数的に測定したエストロゲン受容体α(ER-α)の発現量%のプロットである。
【0045】
図3図3は、提供された化合物の濃度と比較した、対数的に測定したルシフェラーゼ活性量%のプロットである。
【0046】
図4図4は、提供された化合物の濃度と比較した、対数的に測定した細胞増殖量%のプロットである。
【0047】
図5A図5Aは、異種移植したマウスの49日後の腫瘍サイズの変化%を測定したプロットである。
【0048】
図5B図5Bは、異種移植したマウスの49日後の腫瘍サイズの変化%を測定したウォーターフォールプロットである。
【0049】
図6A図6Aは、エストロゲンの非存在下、示されている化合物の濃度と比較した、アゴニストとして図中に示されている化合物に対する、対数的に測定したエストロゲン応答%のプロットである。
【0050】
図6B図6Bは、エストロゲンの存在下、示されている化合物の濃度と比較した、アンタゴニストとして図中に示されている化合物に対する、対数的に測定したエストロゲン応答%のプロットである。
【0051】
図6C図6Cは、図6A~6Bで試験した化合物の描写を提供する。
【0052】
図7図7は、MCF-7細胞内でエストロゲン受容体を分解する特定の化合物の能力を測定している、エストロゲン分解アッセイの結果である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
発明の詳細な説明
乳がんなどの障害に対する処置を開発するための努力は、競合的結合を介して、または受容体の分解を介して受容体を最終的に不活化するエストロゲン受容体との相互作用に焦点が絞られている。受容体結合に対してエストロゲンと競合し、受容体活性を阻害する化合物は「抗エストロゲン」として公知である。
【0054】
AstraZenecaによる抗エストロゲンの最近の開発は、最近治験段階に入った化合物AZD9496に焦点が絞られている。PCT出願公開WO2014/191726を参照されたい。
【化12】
【0055】
AZD9496は、その時点で開発中であった他の抗エストロゲンとは異なりジフルオロフェニル架橋を含む。しかし、AstraZenecaは、このジフルオロフェニル架橋が全体的作用強度を増加させるのに必要であることを実証した(例えば、単離した受容体への結合の増加、エストロゲン受容体の分解の増強、プロゲステロン受容体遺伝子のエストロゲン誘発性発現のより有効な阻害、および/またはヒト乳がん細胞の増殖阻害の増加のうちの1つまたは複数により評価されるように)。ジフルオロフェニル架橋を有する化合物の作用強度は、ジフルオロフェニル架橋を持たない類似の化合物より5倍から10倍高いことが判明した。PCT出願公開WO2014/191726、表A(29頁)を参照されたい。具体的には、AstraZenecaは、化合物AZD9496(実施例1)が、ジフルオロフェニル(difluorphenyl)架橋を持たない以下に示されている実施
例2の値よりも良いER結合のIC50およびER下方制御IC50値を有することを記録した。
【化13】
【0056】
さらに、De Saviらにより発表された研究は、AstraZeneca化合物におけるジフルオロフェニル(difulorophenyl)架橋の重要性を裏付けている。De Saviら、「Optimization of a Novel Binding Motif to (E)-3-(3,5-Difluoro-4- ((1R,3R)-2-(2-fluoro-2-methylpropyl)-3-methyl-2,3,4,9- tetrahydro-1H-pyrido[3,4-b]indol-1-yl)phenyl)acrylic Acid (AZD9496), a Potent and Orally Bioavailable Selective Estrogen Receptor Downregulator and Antagonist」、J. of Med. Chem.、58巻(20号):8128~8140頁(2015年)(本明細書で以下「De Savi」と称す)を参照されたい。そこで、著者らは、化合物30b(AZD9496に対応する)を、化合物29b(WO2014/191726の実施例2に対応する)を含めたいくつかの化合物と比較して、ER結合、ER下方制御、PRアゴニズム、PRアンタゴニズム、およびMCF7抗増殖を評価した。上記De Savi、8130頁、表1を参照されたい。そこで、De Saviは、以下に提供されている表1からの抜粋において示されている通り、これらのアッセイにおいて、フェニル架橋上のフルオロ置換の存在が作用強度のために必要であることを例示するデータを報告した:
【表A】
【0057】
したがって、これら2つの化合物(AZD9496およびWO2014/191726の実施例2)は、ジフルオロ置換を除いて構造的に互いに同一であり、AstraZenecaにより提供された教示は、ジフルオロ置換が全体的な作用強度および/または活性に必要であることを明確に示している。
【0058】
これらの知見を考慮して、抗エストロゲンのその後の開発は、同じまたは同様のジフルオロフェニルリンカーを化合物に組み込む傾向にあった。例えば、Genentechにより出願され、構造的に同様の化合物を対象とする特許出願が、2016年6月23日に公開された。PCT出願公開WO2016/097072を参照されたい。その中に記載
されている属は広範であるが、報告された化合物のほとんどすべてが同じジフルオロフェニル部分、例えば、化合物102および107(それぞれ以下「Goodacre化合物102」および「Goodacre化合物107」とも称す)を含む。PCT出願公開WO2016/097072、33頁の以下の表1および2を参照されたい。Goodacre化合物102は上記「化合物D」とも称す。
【化14】
【0059】
本発明の開示は、化合物BおよびCのある特定の有利な抗エストロゲン活性をさらに開示している。フルベストラント、AZD9496、およびGoodacre化合物102および107と比較した、化合物Bおよび化合物Cの有利な活性が表2および表3に例示されている。
【表2-1】
【0060】
表2から分かるように、化合物BおよびCは、AZD9496およびGoodacre化合物102と比べて、改善されたAPアンタゴニスト活性(すなわち、より完全な抗エストロゲン)を示す。注目するのは、その構造が活性に必要不可欠であるとAstraZ
enecaにより教示されたジフルオロ置換を含むGoodacre化合物102は、最悪のAPアゴニストおよびアンタゴニスト活性を示していることである。
【0061】
さらにより重要なことには、ジフルオロフェニル架橋を持たない化合物BおよびCが、ジフルオロフェニル架橋を含有する構造的に同様の化合物であるGoodacre化合物102および107よりも、マウスおよびヒト血漿中で高い遊離画分を示す。これらの化合物のそれぞれが、強制経口投与によりマウスに送達された場合、および遊離画分を考慮に入れた場合、化合物Bおよび化合物Cは、等しい用量の化合物107および102よりも実質的に高い経口薬物曝露を有する(図1A~1B)。化合物Bおよび化合物Cは、Goodacre化合物102および107と比較した場合、単離したエストロゲン受容体アルファへの結合(表3)、エストロゲン受容体アルファの分解(図2)、ならびにエストロゲン駆動性乳がん細胞遺伝子発現(図3)および増殖(図4)の遮断において同様の作用強度を有する。全体では、化合物BおよびCにおいて同等または優れた作用強度が観察されたことは、同一用量当たり優れた遊離薬物曝露が観察されたことと合わせると、化合物BおよびCが、エストロゲン受容体駆動性の病理学的状態、例えば、エストロゲン駆動性乳がんなどの遮断において、1経口投与単位当たりのGoodacre化合物102および107より有効である可能性が高いことを示している。
【0062】
したがって、本発明は、式Iの特定のテトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール化合物(立体異性体の混合物、また純粋なエナンチオマーの形態)が、エストロゲン受容体によりモジュレートされるまたは影響を受ける医学的障害の処置に対して有利な特性を有するという発見に基づくものである。
【0063】
本発明は特に、2つの特定の化合物、化合物B((1R,3R)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-3-メチル-1-(4-((1-プロピルアゼチジン-3-イル)オキシ)フェニル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール)および化合物C((1R,3R)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-1-(4-(2-(3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル)エトキシ)フェニル)-3-メチル-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール)を提供し、これらの構造は驚くことに、当技術分野で有用なエストロゲン受容体アンタゴニストとして記載された以前の化合物とは異なり、実際、当技術分野の教示で望ましくないと断定的に示された特定の構造的特徴を含有する。具体的には、化合物BおよびCは、上記に記載されているAZD9496、およびGoodacre化合物102および107とは異なり、以下に例示されているように、ジフルオロフェニル架橋を持たない。
【化15】
【表3】
【0064】
本発明の開示は、これらの化合物BおよびCならびにこれらに関係する様々な方法および組成物について記載している。さらに、本発明の開示は、構造的に同様の薬剤と比較した場合でさえ、これらの化合物のある特定の驚くべきおよび予期せぬ特質を記録している。
【0065】
具体的には、AstraZeneca(PCT出願公開WO2014/191726)およびGenentech(PCT出願公開WO2016/097072)により提示された特許出願中に存在するジフルオロ置換フェニル架橋を持たない化合物は、表1ならび
図5A~5Bで上記に例示されているように、エストロゲン駆動性遺伝子誘導およびエストロゲン駆動性ヒト乳がん増殖の遮断において強力であることが判明した。
【0066】
他者が指摘したように、特にエストロゲン受容体アンタゴニストの分野において、個々のSERMにおいてアンタゴニスト活性を増強することが判明した部分は、構造的にはっきりと異なる化合物の核の間で必ずしも交換可能ではない。例えば、Blizzardらにより記述されているように、これらのプラットフォームにおいて作用強度を増加することが判明した特定の側鎖の使用は、他のエストロゲン受容体アンタゴニストの作用強度に対していかなる作用も有さないことが判明した。Blizzardら、「Estrogen receptor ligands. Part 14: Application of novel antagonist side chains to existing platforms」、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、15巻:5124~5128頁(2005年)を参照されたい。
【0067】
本発明の開示は、本発明の化合物が完全な抗エストロゲンとして作用する(例えば、これらが、子宮細胞を含めたすべての細胞型において、標的遺伝子の発現および細胞応答を調節するエストロゲンの能力を完全に遮断するという意味で)ことをさらに実証している。当業者は、抗エストロゲン活性の程度を実証するまたは評価するよう本分野において利用されているアッセイを理解している。例えば、十分に確立されたげっ歯類子宮の重量増加アッセイ(例えば、Wakelingら、1991年、A Potent Specific Pure Antiestrogen with Clinical Potential、Cancer Research、51巻、3867~3873頁を参照されたい)は、抗エストロゲン活性の程度を評価するために共通して使用されている。また、培養物中で成長させたヒト子宮細胞におけるアルカリホスファターゼ遺伝子活性の誘導は、げっ歯類子宮の重量増加アッセイと十分に相関し、部分的抗エストロゲンと、完全抗エストロゲンとを区別するためのin vitroアッセイとして使用することができる。米国特許第9,018,244号を参照されたい。また、完全な抗エストロゲン活性は通常、薬物製品中の活性医薬成分として利用されることが、化合物において望まれると考えられることを当業者は理解している。例えば、抗エストロゲン治療後、疾患が進行した閉経後の女性における、ホルモン受容体陽性、転移性乳がんの処置のための、商標名FASLODEX(登録商標)で現在市販されているフルベストラントは、少なくとも部分的には、げっ歯類子宮重量増加アッセイにおけるその性能に基づく内因性エストロゲン様特性を有さない、純粋な抗エストロゲンとして歓迎されている。(例えば、Wakelingら、1991年、A Potent Specific Pure Antiestrogen with Clinical Potential、Cancer Research、51巻、3867~3873頁を参照されたい)。
【0068】
しかし、対照的に、抗エストロゲン性質または活性を有することが報告された多くの他の化合物は、上記で論じられたような、AstraZenecaにより記載されたもの、および確立された乳がん薬物タモキシフェンの活性代謝物であるエンドキシフェンも含めて、標準的アッセイにおいて不完全な抗エストロゲン活性しか示さない。
【0069】
さらに、化合物BおよびCは、これらは、転移性ヒト乳がんの1次処置のための他のホルモン療法より優れていることが示されているフルベストラントと活性および機能において同等であるため、乳がんなどのヒトエストロゲン受容体駆動性病態を処置することにおいて重大な潜在的有用性を示す。PCT出願公開WO2016/097072、19頁、6~9行を参照されたい(タモキシフェンでの治療にもかかわらず乳がんが進行した女性において乳がんを処置するためにフルベストラントが使用されていることを言及している)。フルベストラントは、内因性エストロゲン様特性を有さない、選択的エストロゲン受容体機能ディグレーダー(SERD)および純粋な抗エストロゲンである。化合物BおよびCは、同様にSERDであり(図1A~1B)、純粋なアンタゴニストである(図6A~6B)。化合物BおよびCは、さらに、エストロゲン駆動性遺伝子発現およびヒト乳がん細胞の増殖の遮断において、フルベストラントと同様の作用強度を有する(図3および
4)。化合物BおよびCは、低用量である10mg/kg(図5Aおよび5B)で、ヒト乳がん異種移植片を縮小させるのに目立って強力である。したがって化合物BおよびCは、乳がんの再発または発現を処置するまたは予防するための抗エストロゲンとしての有用性を実証している。
【0070】
本明細書で記録されているように、提供された化合物は、関連するアッセイにおいて完全な抗エストロゲン活性を示しているが、これは、乳がん、特に転移性乳がんの処置におけるこれらの有用性を強調している。図6A~6Bは、本発明の例示的化合物である化合物Bと、フルベストラント(fluvestrant)、エンドキシフェン、AZD9496、およ
びARN-810(すべての化合物は図6Cに図で描かれている)とを比較して、この区別の1つの例示を提供している。
【0071】
所望する場合、化合物は、抗エストロゲン性で処置可能なものを含めて、エストロゲン受容体によりモジュレートされるまたは影響を受ける障害を処置するための、薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、立体異性体、互変異性体、回転異性体、N-オキシドおよび/または置換されている誘導体として、必要に応じて薬学的に許容される組成物で提供することができる。
【0072】
本発明は、特に、2つの特定の化合物、化合物B((1R,3R)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-3-メチル-1-(4-((1-プロピルアゼチジン-3-イル)オキシ)フェニル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール)および化合物C((1R,3R)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-1-(4-(2-(3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル)エトキシ)フェニル)-3-メチル-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール)を提供し、これらの構造は、驚くことに、当技術分野で有用なエストロゲン受容体アンタゴニストとして記載されている以前の化合物とは異なり、実際に、当技術分野の教示で望ましくないと断定的に示された特定の構造的特徴を含有する。
【0073】
具体的には、化合物BおよびCは、AstraZenecaとGenentechの両方により提示された最も活性のある化合物中に存在するジフルオロフェニル架橋を持たない。さらに、上述のように、化合物BおよびCは、ジフルオロフェニル架橋を含む化合物と比較した場合、弱い活性により、AstraZenecaが望ましくないと示した特定の非置換フェニル架橋を組み込んでいる。
【0074】
しかし、化合物BおよびCは、転移性ヒト乳がんを1次処置するための他のホルモン療法よりも優れていることが示され、筋肉内注射された抗エストロゲンである、フルベストラントと同等の活性を示すことが判明した。化合物BおよびCは、エストロゲン駆動性遺伝子発現およびヒト乳がん細胞の増殖の遮断において、AZD9496とは異なり、フルベストラントと同様の作用強度を有する。図2および4を参照されたい。
【化16】
【0075】
本発明の開示は、化合物Bに対する様々な追加的な興味深いおよび望ましい活性を例証している。例えば、化合物Bは、IC50=4.35nMで、乳房細胞においてE2誘導性転写を阻害した。化合物Bはまた、IC50=4.53nMで、乳房細胞においてE2刺激性増殖の阻害も実証した。ECC-1細胞を化合物Bと共にインキュベートした場合、500pM 17β-エストラジオールがECC-1細胞に対して有する作用に対してAP活性を正規化していたとして、細胞が有したことになるAP活性のわずか2.18%しか細胞は有していなかった。ECC-1細胞を、化合物Bと500pM 17β-エストラジオールとで共に処置した場合、ECC-1細胞は、17β-エストラジオールがもたらしたであろう活性のわずか1.96%しか示さなかった。
【0076】
上述のように、化合物BおよびCは、式I:
【化17】
(式中、
Xは-CH-または-O-であり、
Yは、
【化18】
であり、
、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素またはハロから選択され、
は、水素、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、C~Cアルケニル、C~C(C~Cシクロアルキル)またはC~Cヘテロアルキルであり、
は、水素、C~Cアルキル、C~CハロアルキルまたはC~C(C~Cシクロアルキル)であり、
およびRは、それぞれ独立に、水素またはC~Cアルキルから選択される)
またはその薬学的に許容される塩または組成物の範囲内にある。
【0077】
本発明の開示は式Iの範囲内の様々な有用な亜属を定義する。例えば、一部の実施形態では、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素またはハロから選択される。一部の実施形態では、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素またはフルオロから選択される。一部の実施形態では、R、R、R、およびRはそれぞれ水素である。上述のように、化合物BおよびCに対して、R、R、R、およびRはそれぞれ水素である。
【0078】
一部の実施形態では、Rは水素である。一部の実施形態では、Rは水素である。一部の実施形態では、Rは水素である。一部の実施形態では、Rは水素である。
【0079】
一部の実施形態では、Rはハロである。一部の実施形態では、Rはハロである。一部の実施形態では、Rはハロである。一部の実施形態では、Rはハロである。一部の実施形態では、Rはフルオロである。一部の実施形態では、Rはフルオロである。一
部の実施形態では、Rはフルオロである。一部の実施形態では、Rはフルオロである。
【0080】
式Iの一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式Iの一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式Iの一部の実施形態では、Rは、
【化19】
である。
【0081】
式Iの一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。式Iの一部の実施形態では、Rはメチルである。
【0082】
一部の実施形態では、式I(a)を有する化合物:
【化20】
(式中、
、R、R、R、R、R、RおよびRは上で定義された通りである)
または薬学的に許容されるその塩が開示される。
【0083】
式I(a)の一部の実施形態では、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素またはハロから選択される。一部の実施形態では、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素またはフルオロから選択される。一部の実施形態では、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素から選択される。
【0084】
他の実施形態では、Rは水素である。他の実施形態では、Rは水素である。他の実施形態では、Rは水素である。他の実施形態では、Rは水素である。
【0085】
他の実施形態では、Rはハロである。他の実施形態では、Rはハロである。他の実施形態では、Rはハロである。他の実施形態では、Rはハロである。他の実施形態では、Rはフルオロである。他の実施形態では、Rはフルオロである。他の実施形態では、Rはフルオロである。他の実施形態では、Rはフルオロである。一部の実施形態では、R、R、R、およびRのうちの1つのみがハロ(例えば、フルオロ)である。
【0086】
式I(a)の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(a)の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(a)の一部の実施形態では、Rは、
【化21】
である。
【0087】
式I(a)の一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。式I(a)の一部の実施形態では、Rはメチルである。
【0088】
ある特定の実施形態では、式I(b)を有する化合物:
【化22】
(式中、
、R、R、R、R、R、RおよびRは上で定義された通りである)
または薬学的に許容されるその塩が開示される。
【0089】
式I(b)の一部の実施形態では、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素またはハロから選択される。一部の実施形態では、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素またはフルオロから選択される。一部の実施形態では、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素から選択される。
【0090】
一部の実施形態では、Rは水素である。一部の実施形態では、Rは水素である。一部の実施形態では、Rは水素である。一部の実施形態では、Rは水素である。
【0091】
一部の実施形態では、Rはハロである。一部の実施形態では、Rはハロである。一部の実施形態では、Rはハロである。一部の実施形態では、Rはハロである。一部の実施形態では、Rはフルオロである。一部の実施形態では、Rはフルオロである。一部の実施形態では、Rはフルオロである。一部の実施形態では、Rはフルオロである。一部の実施形態では、R、R、R、およびRのうちの1つのみがハロ(例えば、フルオロ)である。
【0092】
式I(b)の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(b)の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(b)の一部の実施形態では、Rは、
【化23】
である。
【0093】
式I(b)の一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。式I(b)の一部の実施形態では、Rはメチルである。
【0094】
ある特定の実施形態では、式I(c)を有する化合物:
【化24】
(式中、
、R、R、R、R、R、RおよびRは上で定義された通りである)
または薬学的に許容されるその塩が開示される。
【0095】
式I(c)の一部の実施形態では、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素またはハロから選択される。一部の実施形態では、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素またはフルオロから選択される。一部の実施形態では、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素から選択される。
【0096】
一部の実施形態では、Rは水素である。一部の実施形態では、Rは水素である。一部の実施形態では、Rは水素である。一部の実施形態では、Rは水素である。
【0097】
一部の実施形態では、Rはハロである。一部の実施形態では、Rはハロである。他の実施形態では、Rはハロである。一部の実施形態では、Rはハロである。一部の実施形態では、Rはフルオロである。一部の実施形態では、Rはフルオロである。一部の実施形態では、Rはフルオロである。一部の実施形態では、Rはフルオロである。一部の実施形態では、R、R、R、およびRのうちの1つのみがハロである(例えば、フルオロ)。
【0098】
式I(c)の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(c)の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(c)の一部の実施形態では、Rは、
【化25】
である。
【0099】
式I(c)の一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。式I(c)の一部の実施形態では、Rはメチルである。
【0100】
ある特定の実施形態では、式I(d)を有する化合物:
【化26】
(式中、
、R、R、R、R、R、RおよびRは上で定義された通りである)
または薬学的に許容されるその塩が開示される。
【0101】
式I(d)の一部の実施形態では、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素またはハロから選択される。一部の実施形態では、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素またはフルオロから選択される。一部の実施形態では、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素から選択される。
【0102】
一部の実施形態では、Rは水素である。一部の実施形態では、Rは水素である。一部の実施形態では、Rは水素である。一部の実施形態では、Rは水素である。
【0103】
一部の実施形態では、Rはハロである。一部の実施形態では、Rはハロである。一部の実施形態では、Rはハロである。一部の実施形態では、Rはハロである。一部の実施形態では、Rはフルオロである。一部の実施形態では、Rはフルオロである。一部の実施形態では、Rはフルオロである。一部の実施形態では、Rはフルオロである。一部の実施形態では、R、R、R、およびRのうちの1つのみがハロ(例えば、フルオロ)である。
【0104】
式I(d)の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(d)の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(d)の一部の実施形態では、Rは、
【化27】
である。
【0105】
式I(d)の一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。式I(d)の一部の実施形態では、Rはメチルである。
【0106】
一部の実施形態では、本発明は、式I(e)~I(l)の化合物:
【表2-2】
【表2-3】
(式中、X、Y、R、RおよびRのそれぞれが、上で定義され、本明細書で記載されている通りである)を提供する。
【0107】
式I(e)、I(f)、I(g)、I(h)、I(i)、I(j)、I(k)およびI(l)の一部の実施形態では、ハロはフルオロである。
【0108】
一部の実施形態では、本発明は、式I(j)の化合物:
【化28】
(式中、
はハロであり、R、R、RおよびRは上で定義された通りである)
または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0109】
式I(j)の一部の実施形態では、Rはフルオロである。
【0110】
式I(j)の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(j)の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(j)の一部の実施形態では、Rは、
【化29】
である。
【0111】
式I(j)の一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。式I(j)の一部の実施形態では、Rはメチルである。
【0112】
一部の実施形態では、本発明は、式I(j)-1の化合物:
【化30】
(式中、
はハロであり、R、R、RおよびRは上で定義された通りである)
または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0113】
式I(j)-1の一部の実施形態では、Rはフルオロである。
【0114】
式I(j)-1の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(j)-1の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(j)-1の一部の実施形態では、Rは、
【化31】
である。
【0115】
式I(j)-1の一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。式I(j)-1の一部の実施形態では、Rはメチルである。
【0116】
一部の実施形態では、本発明は、式I(j)-2の化合物:
【化32】
(式中、
はハロおよびR、R、RおよびRは上で定義された通りである)
または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0117】
式I(j)-2の一部の実施形態では、Rはフルオロである。
【0118】
式I(j)-2の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(j)-2の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(j)-2の一部の実施形態では、Rは、
【化33】
である。
【0119】
式I(j)-2の一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。式I(j)-2の一部の実施形態では、Rはメチルである。
【0120】
一部の実施形態では、本発明は、式I(j)-3の化合物:
【化34】
(式中、
はハロであり、R、R、RおよびRは上で定義された通りである)
または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0121】
式I(j)-3の一部の実施形態では、Rはフルオロである。
【0122】
式I(j)-3の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(j)-3の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(j)-3の一部の実施形態では、Rは、
【化35】
である。
【0123】
式I(j)-3の一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。式I(j)-3の一部の実施形態では、Rはメチルである。
【0124】
一部の実施形態では、式I(j)-4を有する化合物:
【化36】
(式中、
はハロであり、R、R、RおよびRは上で定義された通りである)
または薬学的に許容されるその塩が開示される。
【0125】
式I(j)-4の一部の実施形態では、Rはフルオロである。
【0126】
式I(j)-4の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(j)-4の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(j)-4の一部の実施形態では、Rは、
【化37】
である。
【0127】
式I(j)-4の一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。式I(j)-4の一部の実施形態では、Rはメチルである。
【0128】
一部の実施形態では、式I(l)を有する化合物:
【化38】
(式中、
、R、RおよびRは上で定義された通りである)
または薬学的に許容されるその塩が開示される。
【0129】
式I(l)の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(l)の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(l)の一部の実施形態では、Rは、
【化39】
である。
【0130】
式I(l)の一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。式I(l)の一部の実施形態では、Rはメチルである。
【0131】
一部の実施形態では、式I(l)-1を有する化合物:
【化40】
(式中、
、R、RおよびRは上で定義された通りである)
または薬学的に許容されるその塩が開示される。
【0132】
式I(l)-1の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(l)-1の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(l)-1の一部の実施形態では、Rは、
【化41】
である。
【0133】
式I(l)-1の一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。式I(l)-1の一部の実施形態では、Rはメチルである。
【0134】
一部の実施形態では、式I(l)-2を有する化合物:
【化42】
(式中、
、R、RおよびRは上で定義された通りである)
または薬学的に許容されるその塩が開示される。
【0135】
式I(l)-2の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(l)-2の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(l)-2の一部の実施形態では、Rは、
【化43】
である。
【0136】
式I(l)-2の一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。式I(l)-2の一部の実施形態では、Rはメチルである。
【0137】
一部の実施形態では、式I(l)-3を有する化合物:
【化44】
(式中、
、R、RおよびRは上で定義された通りである)
または薬学的に許容されるその塩が開示される。
【0138】
式I(l)-3の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(l)-3の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(l)-3の一部の実施形態では、Rは、
【化45】
である。
【0139】
式I(l)-3の一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。式I(l)-3の一部の実施形態では、Rはメチルである。
【0140】
一部の実施形態では、式I(l)-4を有する化合物:
【化46】
(式中、
、R、RおよびRは上で定義された通りである)
または薬学的に許容されるその塩が開示される。
【0141】
式I(l)-4の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(l)-4の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(l)-4の一部の実施形態では、Rは、
【化47】
である。
【0142】
式I(l)-4の一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。式I(l)-4の一部の実施形態では、Rはメチルである。
【0143】
一部の実施形態では、本発明は、式I(m)の化合物:
【化48】
(式中、
、R、およびYは上で定義された通りである)を提供する。
【0144】
式I(m)の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(m)の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(m)の一部の実施形態では、Rは、
【化49】
である。
【0145】
式I(m)の一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。式I(m)の一部の実施形態では、Rはメチルである。
【0146】
一部の実施形態では、本発明は、式I(n)の化合物
【化50】
(式中、
、R、およびYは上で定義された通りである)を提供する。
【0147】
式I(n)の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(n)の一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。式I(n)の一部の実施形態では、Rは、
【化51】
である。
【0148】
式I(n)の一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。式I(n)の一部の実施形態では、Rはメチルである。
【0149】
本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では(例えば、式I、I(a)、I(b)、I(c)、I(d)、I(e)、I(f)、I(g)、I(h)、I(i)、I(j)、I(j)-1、I(j)-2、I(j)-3、I(j)-4、I(k)、I(l)、I(l)-1、I(l)-2、I(l)-3、I(l)-4、I(m)、およびI(n))、RはC~Cアルキルである。本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では、Rはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、または
ヘキシルから選択される。本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では、Rはメチルである。本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では、Rはエチルである。本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では、Rはプロピルである。
【0150】
本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では、Rは-CHFである。本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では、Rは-CHFである。本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では、Rは-CFである。
【0151】
本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では、Rは、水素、C~Cアルキル、C~CハロアルキルまたはC~C(C~Cシクロアルキル)から選択される。本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では、Rは-CHCF(CHである。本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では、RはC~Cアルキルまたはハロアルキルである。本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では、RはC~Cアルキルまたはハロアルキルである。本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では、RはC~Cアルキルまたはハロアルキルである。本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、またはヘキシルから選択される。本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では、Rはメチルまたはハロメチルである。本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では、Rはエチルまたはハロエチルである。
【0152】
本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立に、水素またはC~Cアルキルから選択される(RまたはRに対して上に記載されているような任意の下位実施形態の中に存在することもできる)。本明細書に記載の式のいずれかの一部の実施形態では、Rはメチルであり、Rは水素である。
【0153】
さらに、本発明の開示は、化合物B((1R,3R)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-3-メチル-1-(4-((1-プロピルアゼチジン-3-イル)オキシ)フェニル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール)を報告している:
【化52】
【0154】
さらに、本発明の開示は、化合物C((1R,3R)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-1-(4-(2-(3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル)エトキシ)フェニル)-3-メチル-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール)を報告している:
【化53】
用語
【0155】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は単に例示的および説明的であるだけで、本発明を限定するものではない。実施形態のいずれか1つまたは複数の他の特徴およびメリットは、以下の詳細な説明、および特許請求の範囲から明らかとなろう。
【0156】
他に定義されない限り、本明細書で使用されているすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者により共通して理解されているものと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本発明の明細書を優先することになる。本発明の実施形態の実施または試験において本明細書に記載されたものと同様または同等の方法および物質を使用することができるが、適切な方法および材料は以下に記載されている。加えて、材料、方法、および例は単に例示的であるだけで、限定することを意図しない。
【0157】
量、濃度、または他の値またはパラメーターが、上側の好ましい値および/または下側の好ましい値の範囲、好ましい範囲またはリストとして与えられた場合、これは、範囲が別々に開示されているかどうかに関わらず、任意の上側の範囲限界または好ましい値と、任意の下側の範囲限界または好ましい値との任意のペアから形成されるすべての範囲を具体的に開示するものとして理解されるものとする。数値的な値の範囲が本明細書で列挙された場合、特に述べられていない限り、範囲はそのエンドポイント、ならびに範囲内のすべての整数および分数を含むことを意図する。
【0158】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」「含む(includes)」「を含めて(including)」「有する(has)」、「有している(having)」またはその任意の他の変化形は非独占的包含を網羅することを意図する。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、または装置は、これらの要素のみに限定されるだけでなく、明示的に列挙されていない、またはこのようなプロセス、方法、物品、または装置に特有である他の要素を含んでもよい。さらに、特に逆の記載がない限り、「または」は、「独占的なまたは」ではなく、「包括的なまたは」を指す。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれか1つにより満たされる:Aは真であり(または存在する)かつBは偽りである(または存在しない)、Aは偽りであり(または存在しない)かつBは真である(または存在する)、AとBの両方とも真である(または存在する)。
【0159】
本明細書に記載の化合物は、1つまたは複数の不斉中心を含むことができ、したがって、様々な異性体の形態、例えば、エナンチオマーおよび/またはジアステレオマーで存在することができる。例えば、本明細書に記載の化合物は、個々のエナンチオマー、ジアステレオマーまたは幾何異性体の形態であることができ、またはラセミ混合物および1つまたは複数の立体異性体を豊富に含む混合物を含めた、立体異性体の混合物の形態であることができる。異性体は、キラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびキラル塩の形成および結晶化を含めた、当業者に公知の方法により混合物から単離することができ、または好ましい異性体は不斉合成により調製することができる。例えば、Jacquesら、E
nantiomers, Racemates and Resolutions(Wiley Interscience、New York、1981年);Wilenら、Tetrahedron、33巻:2725頁(1977年);Eliel、Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw-Hill、NY、1962年);およびWilen、Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions、268頁(E. L. Eliel編、Univ. of Notre Dame Press、Notre Dame、1972年)を参照されたい。特に述べられていない限り、本発明は、本明細書に記載の化合物を、実質的に他の異性体を含まない個々の異性体として、あるいは、様々な異性体の混合物として包含する。
【0160】
値の範囲が列挙されている場合、その範囲内の各値および部分範囲を包含することを意図する。例えば「C1~6アルキル」は、C、C、C、C、C、C、C1~6、C1~5、C1~4、C1~3、C1~2、C2~6、C2~5、C2~4、C2~3、C3~6、C3~5、C3~4、C4~6、C4~5、およびC5~6アルキルを包含することを意図する。
【0161】
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、1つまたは1つより多くの(すなわち少なくとも1つの)、冠詞の文法上の目的語を指すために本明細書で使用することができる。例として「類似体」は1つの類似体または1つより多くの類似体を意味する。
【0162】
「アルキル」とは、一実施形態では1~6個の炭素原子を有する直鎖または分枝の飽和炭化水素基(「C1~6アルキル」)の基を指す。一部の実施形態では、アルキル基は1~5個の炭素原子を有する(「C1~5アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は1~4個の炭素原子を有する(「C1~4アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は1~3個の炭素原子を有する(「C1~3アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は1~2個の炭素原子を有する(「C1~2アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は1個の炭素原子を有する(「Cアルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は2~6個の炭素原子を有する(「C2~6アルキル」)。C1~6アルキル基の例として、メチル(C)、エチル(C)、n-プロピル(C)、イソプロピル(C)、n-ブチル(C)、tert-ブチル(C)、sec-ブチル(C)、イソ-ブチル(C)、n-ペンチル(C)、アミル(C)、ネオペンチル(C)、3-メチル-2-ブタニル(C)、第三級アミル(C)、およびn-ヘキシル(C)が挙げられる。特に明記しない限り、アルキル基の各事例は、独立に、必要に応じて置換されている、すなわち、非置換であるか(「非置換アルキル」)または1つもしくは複数の置換基、例えば、1~5つの置換基、1~3つの置換基、または1つの置換基で置換されている(「置換アルキル」)。ある特定の実施形態では、アルキル基は非置換のC1~6アルキル(例えば、-CH)である。ある特定の実施形態では、アルキル基は置換C1~6アルキルである。
【0163】
「アルケニル」は、直鎖または分枝の炭化水素基の基を指し、一実施形態では2~6個の炭素原子、1つまたは複数の炭素-炭素二重結合を有し、三重結合を有さない基を指す(「C2~6アルケニル」)。一部の実施形態では、アルケニル基は2~5個の炭素原子を有する(「C2~5アルケニル」)。一部の実施形態では、アルケニル基は2~4個の炭素原子を有する(「C2~4アルケニル」)。一部の実施形態では、アルケニル基は2~3個の炭素原子を有する(「C2~3アルケニル」)。一部の実施形態では、アルケニル基は2個の炭素原子を有する(「Cアルケニル」)。1つまたは複数の炭素-炭素二重結合は、内部にあることもできるし(例えば、2-ブテニルなどにおいて)または末端にあることもできる(例えば、1-ブテニルなどにおいて)。C2~4アルケニル基の例として、エテニル(C)、1-プロペニル(C)、2-プロペニル(C)、1-ブテニル(C)、2-ブテニル(C)、ブタジエニル(C)などが挙げられる。C2~6アルケニル基の例として、上述のC2~4アルケニル基ならびにペンテニル(C)、ペンタジエニル(C)、ヘキセニル(C)などが挙げられる。特に明記しない限り
、アルケニル基の各事例は、独立に必要に応じて置換されている、すなわち、非置換であるか(「非置換アルケニル」)または1つもしくは複数の置換基、例えば、1~5つの置換基、1~3つの置換基、または1つの置換基で置換されている(「置換アルケニル」)。ある特定の実施形態では、アルケニル基は非置換C2~6アルケニルである。ある特定の実施形態では、アルケニル基は置換C2~6アルケニルである。
【0164】
「カルボシクリル」、「シクロアルキル」または「炭素環式」は、非芳香族環系の中に3~8個の環炭素原子(「C3~8カルボシクリル」)およびゼロ個のヘテロ原子を有する非芳香族環式の炭化水素基の基を指す。例示的C3~6カルボシクリル基として、制限なしで、シクロプロピル(C)、シクロプロペニル(C)、シクロブチル(C)、シクロブテニル(C)、シクロペンチル(C)、シクロペンテニル(C)、シクロヘキシル(C)、シクロヘキセニル(C)、シクロヘキサジエニル(C)などが挙げられる。例示的C3~8カルボシクリル基として、制限なしで、上述のC3~6カルボシクリル基ならびにシクロヘプチル(C)、シクロヘプテニル(C)、シクロヘプタジエニル(C)、シクロヘプタトリエニル(C)、シクロオクチル(C)、シクロオクテニル(C)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル(C)、ビシクロ[2.2.2]オクタニル(C)、などが挙げられる。前述の例が例示するように、ある特定の実施形態では、カルボシクリル基は単環式であるか(「単環式カルボシクリル」)、または縮合した、架橋した、もしくはスピロの環系、例えば、二環式系などを含有し(「二環式カルボシクリル」)、飽和であっても、または部分的に不飽和であってもよい。特に明記しない限り、カルボシクリル基の各事例は、独立に、必要に応じて置換されている、すなわち、非置換であるか(「非置換カルボシクリル」)または1つもしくは複数の置換基で置換されている(「置換カルボシクリル」)。ある特定の実施形態では、カルボシクリル基は非置換C3~8カルボシクリルである。ある特定の実施形態では、カルボシクリル基は置換C3~8カルボシクリルである。
【0165】
「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素(フルオロ、-F)、塩素(クロロ、-Cl)、臭素(ブロモ、-Br)またはヨウ素(ヨード、-I)を指す。
【0166】
「ハロアルキル」は、C~Cアルキル基の水素原子の1つまたは複数が独立に、ハロゲン、例えば、フルオロ、ブロモ、クロロ、またはヨードで置き換えられている、本明細書で定義されたような置換C~Cアルキル基である。一部の実施形態では、アルキル部分は1~6個の炭素原子を有する(「C~Cアルキル」)。一部の実施形態では、アルキル部分は1~4個の炭素原子を有する(「C~Cハロアルキル」)。一部の実施形態では、アルキル部分は1~3個の炭素原子を有する(「C~Cハロアルキル」)。一部の実施形態では、アルキル部分は1~2個の炭素原子を有する(「C~Cハロアルキル」)。一部の実施形態では、アルキル部分は1個の炭素原子を有する(「Cハロアルキル」)。一部の実施形態では、水素原子のすべてはフルオロで置き換えられている。ハロアルキル基の例として、CHF、CHF、-CF、-CHCHF、CHCHF、-CHCFなどが挙げられる。
【0167】
「ヘテロ」は、化合物または化合物上に存在する基を記載するために使用した場合化合物または基の中の1個または複数の炭素原子が窒素、酸素、または硫黄ヘテロ原子で置き換えられていることを意味する。ヘテロは、1~3個、通常1個のヘテロ原子を有する、上記に記載されているヒドロカルビル基、例えば、アルキル、例えば、ヘテロアルキルなどのいずれかに適用し得る。
【0168】
「ヘテロシクリル」、「ヘテロ環」、または「ヘテロ環式」は、各ヘテロ原子が独立に、窒素、酸素、および硫黄から選択される、環炭素原子および1~2個の環ヘテロ原子を有する3~6員の非芳香族環系の基を指す(「3~6員のヘテロシクリル」)。1個また
は複数の窒素原子を含有するヘテロシクリル基において、結合点は、原子価が許す場合、炭素または窒素原子であることができる。ヘテロシクリル基は、単環式(「単環式ヘテロシクリル」)または縮合した、架橋したもしくはスピロの環系のいずれかであることができ、飽和であっても、または部分的に不飽和であってもよい。ヘテロシクリル二環系は、1つの環または両方の環に1個もしくは複数のヘテロ原子を含むことができる。「ヘテロシクリル」はまた、上で定義されたようなヘテロシクリル環が、1つまたは複数のカルボシクリル基と縮合している環系(ここで、結合点はカルボシクリルまたはヘテロシクリル環のいずれかの上にある)も含む。特に明記しない限り、ヘテロシクリルの各事例は、独立に、非置換であるか(「非置換のヘテロシクリル」)または1つもしくは複数の置換基で置換されている(「置換ヘテロシクリル」)。ある特定の実施形態では、ヘテロシクリル基は非置換の3~6員のヘテロシクリルである。ある特定の実施形態では、ヘテロシクリル基は置換されている3~6員のヘテロシクリルである。一実施形態では、ヘテロシクリル基は置換されている4員のヘテロシクリルである。一実施形態では、ヘテロシクリル基は置換されているアゼチジンである。
【0169】
本明細書で定義されたようなアルキル、アルケニル、カルボシクリル、ヘテロアルキルおよびヘテロシクリル基は、必要に応じて置換されている(例えば、「置換されている」または「非置換の」アルキル、「置換されている」または「非置換の」アルケニル、「置換されている」または「非置換の」カルボシクリル、「置換されている」または「非置換の」ヘテロアルキル)。一般的に、用語「置換されている」は、用語「必要に応じて」が先行しているか、いないかに関わらず、許容できる置換基、例えば、置換により、安定した化合物、例えば、転位、環化、脱離、または他の反応などにより自然に変換されない化合物を結果として生じる置換基により、基の上に存在する少なくとも1個の水素(例えば、炭素原子または窒素原子)が置き換えられることを意味する。他に指摘されていない限り、「置換されている」基は、基の1つまたは複数の置換可能な位置に置換基を有し、任意の所与の構造内の1つより多くの位置が置換されている場合、置換基は、各位置において同じまたは異なる。用語「置換されている」は、有機化合物のすべての許容できる置換基、すなわち、安定した化合物の形成をもたらす本明細書に記載の置換基のいずれかによる置換を含むことを想定している。本発明は、安定した化合物に到達するために、任意のおよびすべてのこのような組合せを想定している。本発明の目的のため、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基、および/またはヘテロ原子の原子価を満たし、安定した部分の形成をもたらす、本明細書に記載の任意の適切な置換基を有することができる。例示的炭素および窒素原子置換基として、これらに限定されないが、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、-COOH、-CONH、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルコキシ、C~Cアシル、C~Cアルキルエステル、(モノ-およびジ-C~Cアルキルアミノ)C~Cアルキル-、C~Cハロアルキル、およびC~Cハロアルコキシが挙げられる。
【0170】
「薬剤」または「抗がん剤」は、本明細書で使用される場合、化学療法剤、標的療法剤、およびホルモン療法剤を指す。抗がん剤の適切な例は、例えば、化学療法剤のゲムシタビン(gemcitibine)、標的療法剤のパルボシクリブ(palbocilib)およびエベロリムス
、ならびに乳がんに対するホルモン療法剤、例えば、タモキシフェン、フルベストラント、ステロイド系アロマターゼ阻害剤、ならびに非ステロイド系アロマターゼ阻害剤などである。
化合物の純度および立体配置
【0171】
本明細書で使用される場合、用語「エナンチオマーとして純粋な」または「純粋なエナンチオマー」は、少なくとも95重量%の単一エナンチオマーを含む化合物を表す。代替の実施形態では、特定された場合、この用語は、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも98.5重量%、少なくとも99重量%、少
なくとも99.2重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.6重量%、少なくとも99.7重量%、少なくとも99.8重量%または少なくとも99.9重量%のエナンチオマーを指すことができる。重量は、化合物のすべてのエナンチオマーまたは立体異性体の総重量に基づく。
【0172】
本明細書で使用される場合および他に指摘されていない限り、用語「エナンチオマーとして純粋な(1R,3R)化合物」は、少なくとも95重量%の(1R,3R)化合物および最大でも約5重量%の(1S,3R)、(1R,3S)、および(1S,3S)化合物を指す。代替の実施形態では、特定された場合、この用語は、少なくとも約99重量%の(1R,3R)化合物および最大でも約1重量%の(1S,3R)、(1R,3S)、および(1S,3S)化合物または少なくとも約99.9重量%の(1R,3R)化合物または最大でも約0.1重量%の(1S,3R)、(1R,3S)、および(1S,3S)化合物を指すことができる。ある特定の実施形態では、重量は化合物の総重量に基づく。
【0173】
本明細書で使用される場合、用語「ジアステレオマーとして純粋な」または「純粋なジアステレオマー」は、特定のジアステレオマーにおいてこの化合物が約95重量%またはそれよりも多くを構成することを表す。代替の実施形態では、この用語は、96重量%超、97重量%超、98重量%超、98.5重量%超、99重量%超、99.2重量%超、99.5重量%超、99.6重量%超、99.7重量%超、99.8重量%超または99.9重量%超のジアステレオマーを指すことができる。重量は、化合物のすべての立体異性体の総重量に基づく。
【0174】
一実施形態では、化合物は一般的に任意の純度の状態で提供される。別の実施形態では、式の化合物は実質的に純粋である。用語「実質的に純粋な」の使用は、式Iの化合物は少なくとも約80重量%の純度であることを意味する。別の実施形態では、式Iの化合物は少なくとも約85重量%の純度であり、別の実施形態では、これは少なくとも約90重量%の純度がある。さらなる別の実施形態では、用語「実質的に純粋な」は、式Iの化合物が少なくとも約95重量%の純度であることを意味する。別の実施形態では、これは少なくとも約97重量%の純度であり、別の実施形態では、これは少なくとも約98重量%の純度であり、さらなる別の実施形態では、これは少なくとも約99重量%の純度である。他に指摘されていない限り、用語「実質的に純粋な」は、少なくとも約90重量%を意味する。式Iの化合物は、化学構造がある特定の立体配置を表さない限り、制限なしで、そのエナンチオマー、ジアステレオマーおよびラセミ混合物を含めた、その立体異性体を含む。その場合、対応するエナンチオマー、ジアステレオマーまたはラセミ混合物は代替の実施形態で使用することができる。
【0175】
特に、式Iの化合物のテトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール核の1および3位において炭素原子はフェニル基に結合しており、RおよびR基はそれぞれキラル炭素であり、したがって、化合物はこれらの位置でRまたはS立体配置のいずれかで存在し得ることが指摘されている。本発明の開示は、テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール、またはその混合物の1および3位において可能な立体異性体のすべてを、ラセミ混合物を含めて、任意の比率で含む。一実施形態では、テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドールの1および3位において炭素原子はフェニル基に結合し、RおよびR基はそれぞれ(1R,3R)立体配置を有する。別の実施形態では、テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドールの1および3位において炭素原子はフェニル基に結合し、RおよびR基はそれぞれ(1S,3S)立体配置を有する。別の実施形態では、テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドールの1および3位において炭素原子はフェニル基に結合し、RおよびR基はそれぞれ(1R,3S)立体配置を有する。別の実施形態では、テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]イン
ドールの1および3位において炭素原子はフェニル基に結合し、RおよびR基はそれぞれ(1S,3R)立体配置を有する。
【0176】
本発明の開示の化合物は、ジアステレオマーとしてまたはエナンチオマーとして純粋な式Iの化合物を含む。本明細書に提供されているこれらのジアステレオマーとしてまたはエナンチオマーとして純粋な式Iの化合物は、当業者に公知の技術に従い調製することができる。例えば、これらは、適切な光学的に純粋な前駆体からキラルまたは不斉合成により調製することができ、あるいはラセミ体またはエナンチオマーもしくはジアステレオマーの混合物から任意の従来の技術、例えば、キラルカラムを使用したクロマトグラフィー分離、TLCにより、またはジアステレオ異性体の調製、その分離および所望のエナンチオマーもしくはジアステレオマーの再生成により得ることもできる。例えば、「Enantiomers, Racemates and Resolutions」、J. Jacques、A. Collet、およびS.H. Wilen
(Wiley-Interscience、New York、1981年);S.H. Wilen、A. Collet、およびJ.
Jacques、Tetrahedron、2725頁(1977年);E.L. Eliel、Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw-Hill、NY、1962年);ならびにS.H. Wilen Tables
of Resolving Agents and Optical Resolutions 268頁(E.L. Eliel編、Univ. of Notre Dame Press、Notre Dame、IN、1972年、Stereochemistry of Organic Compounds、Ernest L. Eliel、Samuel H. Wilen、およびLewis N. Manda(
1994年、John Wiley & Sons, Inc.)ならびにStereoselective Synthesis A Practical Approach、Mihaly Nogradi(1995年、VCH Publishers, Inc.、NY、NY)を参照されたい。
【0177】
ある特定の実施形態では、ジアステレオマーとして純粋な式Iの化合物は、ラセミ体の反応により、またはジアステレオマーと適切な光学活性な酸もしくは塩基との混合により得ることができる。適切な酸または塩基として、その内容が、これらの全体において、参照により本明細書に組み込まれている、Bighleyら、1995年、Salt Forms of Drugs and Adsorption、Encyclopedia of Pharmaceutical Technology、13巻、Swarbrick & Boylan編、Marcel Dekker、New York;ten HoeveおよびH. Wynberg、1985年、Journal of Organic Chemistry、50巻:4508~4514頁;DaleおよびMosher、1973年、J. Am. Chem. Soc.、95巻:512頁;およびCRC Handbook of Optical Resolution via Diastereomeric Salt Formationに記載されているも
のなどが挙げられる。
【0178】
エナンチオマーとしてまたはジアステレオマーとして純粋な化合物はまた、利用した特定の酸分割剤および使用した特定のアミンエナンチオマーまたはジアステレオマーの溶解度特性に応じて、結晶化ジアステレオマーからまたは母液から回収することもできる。こうして回収した特定の化合物の識別情報および光学純度は、旋光分析または当技術分野で公知の他の分析方法により決定することができる。次いで、ジアステレオ異性体は、例えば、クロマトグラフィーまたは分別再結晶により分離することができ、所望のエナンチオマーまたはジアステレオマーは、適当な塩基または酸を用いた処理により再生成することができる。他のエナンチオマーまたはジアステレオマーは、ラセミ体またはジアステレオマーの混合から同様の方式で得ることもできるし、または第1の分離の液から、後処理することにより得ることもできる。
【0179】
ある特定の実施形態では、エナンチオマーとしてまたはジアステレオマーとして純粋な化合物は、キラルクロマトグラフィーにより、ラセミ化合物またはジアステレオマーの混合物から分離することができる。エナンチオマーまたはジアステレオマーの分離における使用のための様々なキラルカラムおよび溶離液が利用可能であり、分離に対する適切な条件は、当業者に公知の方法により経験的に決定することができる。本明細書に提供されている、エナンチオマーの分離における使用に利用可能な例示的キラルカラムとして、これ
らに限定されないが、CHIRALPAK(登録商標)IA-3、CHIRALPACK(登録商標)IC、CHIRALCEL(登録商標)OB、CHIRALCEL(登録商標)OB-H、CHIRALCEL(登録商標)OD、CHIRALCEL(登録商標)OD-H、CHIRALCEL(登録商標)OF、CHIRALCEL(登録商標)OG、CHIRALCEL(登録商標)OJおよびCHIRALCEL(登録商標)OKが挙げられる。
同位体置換
【0180】
本発明は、式Iの化合物および同位体の天然存在度よりも高い量で(すなわち、濃縮された)原子の所望の同位体置換を有する化合物の使用を含む。同位体は、同じ原子番号を有するが、質量数が異なる、すなわち、同数のプロトンを有するが、中性子の数が異なる原子である。一般的な例としておよび制限なしで、水素の同位体、例えば、重水素(H)およびトリチウム(H)は、記載されている構造のどこかに使用することができる。これの代わりにまたはこれに加えて、炭素の同位体、例えば、13Cおよび14Cを使用することができる。好ましい同位体置換は、薬物の性能を改善するための、分子上の1つまたは複数の位置での水素に対する重水素である。重水素は、代謝中の結合破壊の位置に結合する(α-重水素速度論的同位体効果)ことができ、または、結合破壊の部位に隣接してもしくは付近に結合する(β-重水素速度論的同位体効果)ことができる。
【0181】
重水素などの同位体による置換は、より大きな代謝安定性、例えば、in vivoでの半減期の増加または必要用量の減少などから生じるある特定の治療上の利点をもたらすことができる。代謝性破壊の部位で水素を重水素で置換すると、その結合での代謝速度を減少させる、または代謝をなくすことができる。水素原子が存在できる化合物の任意の位置で、水素原子は、プロチウム(H)、重水素(H)およびトリチウム(H)を含めた、任意の水素同位体であることができる。したがって、本明細書での化合物に対する言及は、状況が明確に他を指示しない限り、すべての潜在的な同位体形態を包含する。
【0182】
用語「同位体標識した」類似体とは、「重水素化された類似体」、「13C標識した類似体」、または「重水素化された/13C標識した類似体」である類似体を指す。用語「重水素化された類似体」とは、H同位体、すなわち、水素/プロチウム(H)がH同位体、すなわち、重水素(H)で置き換えられている本明細書に記載の化合物を意味する。重水素置換は、部分的または完全であることができる。部分的な重水素置換とは、少なくとも1個の水素が少なくとも1個の重水素で置換されていることを意味する。ある特定の実施形態では、同位体は、任意の目的の位置において、ある同位体が90、95または99%またはそれよりも多く濃縮されている。一部の実施形態では、所望の位置に90、95または99%濃縮されているのは重水素である。ある特定の実施形態では、式Iの1つまたは複数の位置において水素の代わりに重水素が提供される。
式Iの化合物
【0183】
一実施形態では、化合物は、
【化54】
または薬学的に許容されるその塩からなる群から選択される。
【0184】
一実施形態では、式Iの化合物は、プロドラッグ、例えば、リン酸二水素メチルとして
提供される。US2012/0238755を参照されたい。
【0185】
一部の実施形態では、本発明は、化合物:
【化55】
または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0186】
一部の実施形態では、本発明は、化合物:
【化56】
または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0187】
一部の実施形態では、本発明は、化合物:
【化57】
または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0188】
本発明の化合物は、これらが、AstraZeneca(PCT出願公開WO2014/191726)およびGenetech(PCT出願公開WO2016/097072)により報告されたほとんどすべての化合物において見出されるジフルオロフェニル架橋を持たないという点において、AstraZenecaおよびGenentechにより報告された化合物よりも優れた驚くべき利点を提供し、しかもエストロゲン受容体の阻害剤として、上記で論じた通りおよび以下の実施例においてさらに例示されている通り、AstraZenecaまたはGenentechのいずれかにより報告された化合物よりも改善された生物学的活性を提供する。
医薬組成物
【0189】
「剤形」とは、活性剤の投与の単位を意味する。剤形の非限定的例として、錠剤、カプセル剤、注射剤、懸濁剤、液剤、静脈内流体、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、坐剤、吸入用形態、経皮的形態などが挙げられる。
【0190】
「医薬組成物」とは、少なくとも1種の活性剤、例えば、本明細書で開示されている活性化合物のうち1つの化合物または塩など、および少なくとも1種の他の物質、例えば、担体などを含む組成物である。医薬組成物は、1つより多くの活性剤を必要に応じて含有する。「医薬的組合せ」または「併用治療」とは、少なくとも2種の活性剤、一実施形態
では、3種または4種またはそれよりも多い活性剤の投与を指し、この活性剤は、必要に応じて本明細書に記載の障害を処置するために活性剤を一緒に使用するという指示と共に、単一剤形中で組み合わせられていてもよいし、または別個の剤形で一緒に提供されてもよい。
【0191】
本発明の化合物は、本明細書に記載の状態のいずれかに対して、患者、通常ヒトへの経口送達に適切な医薬組成物および剤形中、有効量で投与することができる。代わりに、化合物は、局所的、経皮的(パッチを含む)、静脈内、動脈内、経膣、直腸、口腔内頬側、舌下、非経口、大動脈内、皮下または他の所望の送達経路(例えば、分解性ポリマーを使用した、またはナノ粒子もしくはマイクロ粒子、リポソーム、層状錠剤または送達を遅延させる他の構造的枠組みを用いた任意の方法の制御送達を含む)、に適切な担体で送達することもできる。
【0192】
一態様では、本発明の活性化合物は、エストロゲン受容体を介してモジュレートされる障害を予防するために使用することができ、これは、このような予防を必要とする患者に、予防的有効量の化合物または医薬組成物を投与することを含む。
【0193】
「薬学的に許容される塩」とは、薬学的に許容され、親化合物の所望の薬理学的活性を保有する本発明の化合物の塩を指す。特に、このような塩は、低い毒性を有し、無機酸または有機酸の付加塩および塩基付加塩であってよい。具体的に、このような塩として以下が挙げられる:(1)無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸)を用いて形成される酸付加塩、;または有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-二スルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸)を用いて形成される酸付加塩;または(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが金属イオン(例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、またはアルミニウムイオン)で置き換えられるか;または有機塩基(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルグルカミン)と配位する場合に形成された塩。塩は、単なる例示であるが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなどをさらに含み、化合物が塩基性官能基を含有する場合、非毒性の有機酸または無機酸の塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩などを含む。電子的中性を維持する、対イオンまたはアニオン性対イオンを第4級アミン中で使用することができる。例示的な対イオンとして、ハロゲン化物イオン(例えば、F、Cl、Br、I)、NO 、ClO 、OH、HPO 、HSO 、スルホネートイオン(例えば、メタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、p-トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、10-カンファースルホネート、ナフタレン-2-スルホネート、ナフタレン-1-スルホン酸-5-スルホネートなど)、およびカルボキシレートイオン(例えば、アセテート、エタノエート、プロパノエート、ベンゾエート、グリセレート、ラクテート、タータレート、グリコレートなど)が挙げられる。
【0194】
「薬学的に許容される担体」とは、本発明の化合物が投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤または他の担体を指す。
【0195】
「薬学的に許容される賦形剤」とは、一般的に安全であり、十分に無毒性であり、生物学的にもその他の点でも望ましくないものではない医薬組成物/組合せを調製するのに有用である賦形剤を意味する。「薬学的に許容される賦形剤」は、本出願で使用した場合、1種の賦形剤と、1種より多くのこのような賦形剤の両方を含む。
【0196】
「プロドラッグ」とは、本明細書で使用される場合、in vivoで宿主に投与された場合、親薬物へと変換される化合物を意味する。本明細書で使用される場合、用語「親薬物」とは、宿主、通常ヒトにおいて、本明細書に記載の障害のいずれかを処置すること、または本明細書に記載の任意の生理学的もしくは病理学的障害に関連する潜在的な原因もしくは症状を制御もしくは改善することに対して有用である現在記載されている化学化合物のいずれかを意味する。プロドラッグは、親薬物の特性を増強することまたは親薬物の薬学的もしくは薬物動態特性を改善することを含めた、任意の所望の作用を達成するために使用することができる。in vivoでの親薬物の生成のための条件をモジュレートすることにおける選択肢を提供するプロドラッグ戦略が存在し、これらのすべては本明細書に含まれているとみなされる。プロドラッグ戦略の非限定的例として、除去可能な基または基の除去可能な部分の共有結合が挙げられる。
【0197】
「溶媒和物」とは、通常、加溶媒分解反応により溶媒または水と会合した化合物の形態(また「水和物」とも呼ばれる)を指す。この物理的会合は水素結合を含むことができる。従来の溶媒として、水、エタノール、酢酸などが挙げられる。本発明の化合物は、例えば、結晶性または液体形態で調製してもよいし、溶媒和または水和していてもよい。適切な溶媒和物として、水和物などの薬学的に許容される溶媒和物が挙げられ、さらに化学量論的溶媒和物と、非化学量論的溶媒和物の両方が挙げられる。ある特定の事例では、溶媒和物は、例えば、1つまたは複数の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子内に組み込まれている場合、単離することが可能である。「溶媒和物」は、溶液相と分離可能な溶媒和物の両方を包含する。代表的な溶媒和物として、水和物、エタノレートおよびメタノレートが挙げられる。
【0198】
投与が想定されている「宿主」または「被験体」は、抗エストロゲン性治療またはエストロゲン受容体活性をモジュレートする治療に応答する、通常、ヒト(すなわち、任意の年齢群の女性または男性、例えば、小児被験体(例えば、乳児、子供、青年))または成人被験体(例えば、若年成人、中年成人または高齢成人))である任意の宿主を含む。代替の実施形態では、宿主は非ヒト動物、例えば、哺乳動物、例えば、霊長類(例えば、カニクイザル、アカゲザルなど)、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、げっ歯類、ネコ、および/またはイヌなどである。
【0199】
一部の実施形態では、医薬組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、液体、懸濁剤、ゲル剤、分散液、懸濁剤、液剤、乳剤、軟膏剤、またはローション剤である。
【0200】
組成物中の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩などの有効量は通常、処置される状態、選択された投与経路、投与される化合物または塩、個々の患者の年齢、体重、および応答、患者の症状の重症度などを含めた、関連する状況を考慮して医師により決定されることになる。
【0201】
経口投薬に対して、所望の目標を達成する任意の用量が適当である。1つの例では、適切な1日投与量は、約0.1~4,000mgの間、より典型的には、5mg~1グラムの間、より典型的には10mg~500mgの間であり、1日1回、1日2回または1日3回、連続的(毎日)または断続的に(例えば、週に3~5日)経口的に投与される。例えば、本明細書に記載の任意の障害を処置するために使用する場合、式Iの化合物またはこれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、立体異性体、回転異
性体または互変異性体の用量は、1日当たり少なくとも約0.1、0.5、1、5、25、50、75、100、150、200、300、400、500、600、700、800、1000、1200、1500または2000mgの投与量で提供される。一実施形態では、式Iの化合物またはこれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、立体異性体、回転異性体または互変異性体の用量は、1日当たり少なくとも約10、50、100、200、250、1,000または約2,000mgまでの投与量で提供される。代わりに、非限定投与量は、約0.01~約20mg/kgの範囲の本明細書に提供されている式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、立体異性体または互変異性体であり、典型的な用量として約0.1~約10mg/kg、特に約1~約5mg/kgが提供される。
【0202】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩などを、薬学的に許容される担体中に含む、薬学的に許容される組成物の様々な非限定例が本明細書の以下に記載されている。製剤は、重量比としてまたは重量としてのいずれかで活性成分を含む。特にそれとは反対の指示がない限り、重量および重量比は、製剤がその塩形態を含有したとしても、式Iの化合物の分子量に基づくことを理解されたい。
【0203】
経口投与のための組成物は、塊状液体溶液または懸濁物、または塊状粉末の形態を取ることができる。通常、組成物は、正確な投薬を促進するために単位剤形で提示される。用語「単位剤形」とは、ヒト被験体および他の哺乳動物に対する単位投薬量として適切な物理的に別個の単位を指し、各単位は、所望の治療効果を、適切な薬学的賦形剤を伴ってもたらすように計算された既定量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩の活性物質を含有する。典型的な単位剤形として、液体組成物の充填済みの、予め測定したアンプルもしくはシリンジ、または固形組成物の場合、丸剤、錠剤、カプセル剤などが挙げられる。このような組成物において、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、微量成分として(非限定例として、約0.1~約50重量%、または好ましくは約1~約40重量%)存在してもよく、残りは、所望の投薬形態を形成するために有益な様々なビヒクルまたは担体および加工助剤である。
【0204】
経口投与に適切な液体形態は、適切な水性もしくは非水性のビヒクルを、緩衝剤、懸濁化剤および分配剤、着色剤、香味料などと共に含むことができる。固体形態は、例えば、以下の成分のいずれか、または同様の性質の化合物を含むことができる:結合剤、例えば、微結晶性のセルロース、トラガカントガムもしくはゼラチンなど、賦形剤、例えば、デンプンもしくはラクトースなど、崩壊剤、例えば、アルギン酸、Primogel、もしくはトウモロコシデンプンなど、滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムなど、流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素など、甘味剤、例えば、スクロースもしくはサッカリンなど、または香味剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香味料など。
【0205】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩から構成される注射用組成物は、本発明の開示の範囲内であると想定される。これらの注射溶液は、当技術分野内で公知の注射用担体、例えば、注射用の滅菌生理食塩水またはリン酸緩衝食塩水担体などを使用する。
【0206】
式Iの化合物またはこれらの薬学的に許容される塩から構成される注射用量レベルの注射溶液は、すべて約1~約120時間および特に24~96時間に対して、任意の所望の用量、例えば、約0.1mg/kg/時間~少なくとも10mg/kg/時間で提供される。一実施形態では、式Iの化合物またはこれらの薬学的に許容される塩で構成される、約0.1mg/kg~約10mg/kgまたはそれを超える予め充填したボーラスも十分な定常状態レベルを達成するために投与することができる。40~80kgのヒト患者に対する最大全用量は、約2~5g/日を超えないことが予想される。
【0207】
経皮的用量は、注射用量を使用して達成される血中レベルと同様またはこれより低い血中レベルを提供するように一般的に選択される。経皮的組成物は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を含有する局所用軟膏剤またはクリーム剤として、例えば、約0.01~約20重量%、別の実施形態では、約0.1~約20重量%、さらなる別の実施形態では、約0.1~約10重量%、およびさらに異なる実施形態では、約0.5~約15重量%の範囲の量で通常製剤化される。軟膏剤として製剤化される場合、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は通常、適切な送達ポリマー組成物、またはパラフィン系もしくは水混和性軟膏基剤のいずれかと組み合わせることになる。代わりに、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、例えば、水中油型クリーム基剤と共にクリーム剤中で製剤化されてもよい。このような経皮製剤は、当技術分野で周知であり、活性成分または製剤の皮膚への浸透安定性を増強する追加成分を一般的に含む。すべてのこのような公知の経皮製剤および成分は、本明細書に提供されている範囲内に含まれる。
【0208】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、経皮デバイスで投与することができる。経皮的投与は、リザーバーまたは多孔質膜タイプ、または固形マトリックス型のいずれかのパッチを使用して達成できる。
【0209】
経口的に投与可能な、注射用または局所的に投与可能な組成物に対する上に記載された構成成分は単に代表的なものである。他の物質ならびに加工技術などは、参照により本明細書に組み込まれている、Remington's Pharmaceutical Sciences、17版、1985
年、Mack Publishing Company、Easton、Pennsylvaniaの第8部に記載されている。
【0210】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩はまた、持続放出形態で、または持続放出薬物送達系から投与することもできる。代表的な持続放出物質の記載は、Remington's
Pharmaceutical Sciencesに見出すことができる。
【0211】
ある特定の実施形態では、製剤は水を含む。別の実施形態では、製剤はシクロデキストリン誘導体を含む。ある特定の実施形態では、製剤はヘキサプロピル-β-シクロデキストリンを含む。より特定の実施形態では、製剤はヘキサプロピル-β-シクロデキストリン(水中10~50%)を含む。より特定の実施形態では、製剤はCaptisol(登録商標)を含む。
【0212】
以下の製剤の例は、単に例示的目的のみの本開示に従い調製され得る非限定的な、代表的医薬組成物を例示している。本発明は具体的には、以下の医薬組成物に限定されないものとする。本明細書の製剤の例は式Iの化合物を参照しているが、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、立体異性体、互変異性体、回転異性体、N-オキシドならびに/または置換されている誘導体塩、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、立体異性体、互変異性体、回転異性体、N-オキシドおよび/もしくは置換されている誘導体をこれらの代わりに使用することができることを理解されたい。したがって、例えば、式Iの化合物がその塩として製剤中に存在する場合、重量比は、その塩に起因する重量を考慮に入れることなく、製剤中に存在する式Iの化合物の重量に基づくものとする。
製剤1-錠剤
【0213】
式Iの化合物は、乾燥粉末として、約1:2の重量比で乾燥ゼラチン結合剤と混和することができる。微量のステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として加える。混合物は、打錠機内で、240~270mg錠剤(1錠当たり80~90mgの式Iの化合物)へと形成される。
製剤2-カプセル剤
【0214】
式Iの化合物は、乾燥粉末として、約1:1の重量比でデンプン希釈剤と混和することができる。混合物を250mgカプセル剤に充填する(1カプセル剤当たり125mgの式Iの化合物)。
製剤3-液剤
【0215】
式Iの化合物(125mg)をスクロース(1.75g)およびキサンタンガム(4mg)と混和することができ、生成した混合物をブレンドし、No.10メッシュU.S.シーブに通し、次いで予め作製した微結晶性セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム(11:89、50mg)の水溶液と混合することができる。安息香酸ナトリウム(10mg)、香味剤、および着色剤を水で希釈し、撹拌しながら加える。次いで、十分な水を加えて、総量5mLを生成することができる。
製剤4-錠剤
【0216】
式Iの化合物は、乾燥粉末として、約1:2の重量比で乾燥ゼラチン結合剤と混和することができる。微量のステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として加える。混合物は、打錠機内で、450~900mg錠剤(150~300mgの式Iの化合物)へと形成される。他の実施形態では、経口錠剤中に10~500mgの間の式Iの化合物が存在する。
製剤5-注射剤
【0217】
式Iの化合物は、約5、または10、または15、または20、または30または50mg/mLの濃度まで、緩衝した滅菌食塩水注射用水性媒体中に溶解または懸濁させることができる。
製剤6-錠剤
【0218】
式Iの化合物は、乾燥粉末として、約1:2の重量比で乾燥ゼラチン結合剤と混和することができる。微量のステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として加える。混合物は、打錠機内で90~150mgの錠剤(1錠当たり30~50mgの式Iの化合物)へと形成される。
製剤7-錠剤
【0219】
式Iの化合物は、乾燥粉末として、約1:2の重量比で乾燥ゼラチン結合剤と混和することができる。微量のステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として加える。混合物は、打錠機内で30~90mgの錠剤(1錠当たり10~30mgの式Iの化合物)へと形成される。
製剤8-錠剤
【0220】
式Iの化合物は、乾燥粉末として、約1:2の重量比で乾燥ゼラチン結合剤と混和することができる。微量のステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として加える。混合物は、打錠機内で0.3~30mgの錠剤(1錠当たり0.1~10mgの式Iの化合物)へと形成される。
製剤9-錠剤
【0221】
式Iの化合物は、乾燥粉末として、約1:2の重量比で乾燥ゼラチン結合剤と混和することができる。微量のステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として加える。混合物は、打錠機内で150~240mgの錠剤(1錠当たり50~80mgの式Iの化合物)へと形成される。
製剤10-錠剤
【0222】
式Iの化合物は、乾燥粉末として、約1:2の重量比で乾燥ゼラチン結合剤と混和することができる。微量のステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として加える。混合物は、打錠
機内で錠剤(1錠当たり5~1000mgの式Iの化合物)へと形成される。
薬物治療における使用の方法
【0223】
本明細書に記載の式Iの化合物または本明細書に記載のその塩もしくは誘導体またはその薬学的に許容される組成物は、エストロゲン受容体によりモジュレートされる、媒介されるもしくは影響を受ける、またはそうでなければ本明細書に記載されているような任意の障害を処置するのに有用な抗エストロゲン活性を有する。障害の非限定例は、エストロゲンおよび/またはプロゲステロン陰性または陽性乳がん、卵巣がん、子宮内膜がん、膣がん、子宮内膜症、肺がん、骨がん、結腸直腸の子宮内膜がん、前立腺がん、子宮がんおよびがんに伴うエストロゲン受容体-α機能障害である。これらは、エストロゲン受容体を発現する肺および気管支のがんの処置に使用することができる。
【0224】
本明細書で記載の化合物はまた、別の活性剤と共に補助的治療または併用治療として使用することもできる。例えば、治療有効量の化合物は、特にエストロゲン受容体陽性乳がんに対する、ただし一部の実施形態では、エストロゲン受容体陰性乳がんに対する別の抗がん剤と組み合わせて使用することができる。
【0225】
一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、本明細書でより完全に記載されているような、がんの処置のための別の抗がん剤と組み合わせてまたは交互に使用される。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、閉経後障害の処置のためにエストロゲンまたは部分的エストロゲン受容体アンタゴニストと組み合わせてまたは交互に使用される。
【0226】
一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体または両方の発現に対して陽性である局所的な、進行性または転移性の乳がん(受容体陽性進行性乳がん)を処置するために使用される。代替の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、エストロゲンまたはプロゲステロン受容体陰性乳がんを処置するために使用される。式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、それ自身で、または1つもしくは複数の他の抗がん剤、またはそうでなければ当業者に公知のものと組み合わせて、進行性乳がんに対して過去のホルモン療法を受けたことのない患者において、進行性乳がんの初期処置として使用することができる。式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、それ自身で、または別の抗がん剤、例えば、mTOR阻害剤などの標的療法、例えば、エベロリムスなど、またはCDK4/6阻害剤、例えば、パルボシクリブ、アベマシクリブ、またはリボシクリブなどと組み合わせて、過去の抗ホルモン療法が失敗した後の処置のための2次治療に対して有用でもある。
【0227】
式Iの化合物またはこれらの薬学的に許容される塩はまた、化学療法、放射線もしくは手術の後、またはこれらの代わりの補助的治療として有用でもある。このようなアジュバントの使用は、多くの場合、化学療法または他の治療法が終わった後、数年間、おそらく5年までまたはそれよりも長い間使用されるが、最適には、追加の数年間継続し得る。
【0228】
式Iの化合物またはこれらの薬学的に許容される塩はまた、ハイリスクの女性において乳がんの予防に有用であり、無期限を含めた、任意の所望の期間の間摂取することができる。例えば、乳がんの家族歴を有する、またはBRACA1もしくはBRACA2遺伝子の変異または患者を乳がんに罹りやすくする他の遺伝子を保持すると判定されたことのある患者(通常女性である患者)は、乳房切除術または他の治療介入の代わりにこのような予防的処置を使用することを選ぶことができる。本明細書に記載の式Iの化合物またはこれらの薬学的に許容される塩はまた、外科切除前に大きな腫瘍を縮小させるネオアジュバントとして有用であり、乳房保存手術も可能にし、再発の危険性も減少させる。
【0229】
選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、およびバゼドキシフェンは、閉経後の女性において、骨粗鬆症および他の障害、例えば、ホットフラッシュなどを予防するためのホルモン補充療法としての用途、すなわち、例えば、骨に対するこれらの部分的エストロゲン様作用に依存する使用をさらに有する。本明細書に記載の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、エストロゲンまたは選択的エストロゲン受容体モジュレーターと組み合わせて使用されて、治療法の望ましくないエストロゲン活性を遮断し得る。完全な抗エストロゲンは、子宮および乳腺に対するエストロゲンまたはエストロゲン受容体モジュレーターの有害作用を予防し、さらに、骨および血管運動神経性症状に対するエストロゲンの有益な作用をもたらす量で投薬される。
【0230】
式Iの化合物またはこれらの薬学的に許容される塩は、がん、特に乳がんの処置のために、ハーセプチン、タイケルブ、CDK4/6阻害剤、例えば、パルボシクリブ(もともとPD-0332991として公知)、アベマシクリブ、リボシクリブ、mTOR阻害剤、例えば、Novartisのエベロリムスおよび他のラパマイシン類似体、例えば、ラパマイシンおよびテムシロリムス、MillenniumのMLN0128 TORC1/2阻害剤、EFGR-ファミリー阻害剤、例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ado-トラスツズマブエムタンシン、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ネラチニブおよび同様の化合物、PI3キナーゼ阻害剤、例えば、ペリホシン、CAL101、BEZ235、XL147、XL765、GDC-0941、およびIPI-145など、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、例えば、ボリノスタット、ロミデプシン、パノビノスタット、バルプロ酸、エンチノスタット(etinostat)、およびベリノスタットと組み合わせてまたは
伴って投与することができる。
【0231】
一部の実施形態では、本明細書に記載の式のいずれかの化合物は、例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピディリズマブ、もしくはBMS936559などのPD-1阻害剤、および/またはアテゾリズマブ、アベルマブ、もしくはデュルバルマブなどのPD-L1阻害剤を含めた、標的化された抗がん免疫療法剤と組み合わせて投与することができる。
【0232】
処置態様の別の方法では、エストロゲン受容体により影響を受ける状態に罹りやすいもしくは罹患している哺乳動物を処置する方法であって、式Iの化合物またはその薬学的に許容されるその塩を、それを必要とする被験体に投与することによる方法が本明細書に提供されている。
【0233】
乳がんの発症および進行におけるER-αの中心的役割を考慮すると、本明細書で開示されている化合物は、単独で、または、これらに限定されないが、IGFlR、EGFR、erB-B2および3、PI3K/AKT/mTOR軸、HSP90、PARPまたはヒストンデアセチラーゼを標的化するものを含めた、乳がんにおける他の重大な経路をモジュレートすることができる他の薬剤と組み合わせて、乳がんの処置に有用である。
【0234】
乳がんの発症および進行におけるER-αの中心的役割を考慮すると、本明細書で開示されている化合物は、単独で、または、これらに限定されないが、アロマターゼ阻害剤、アントラサイクリン、プラチン、ナイトロジェンマスタードアルキル化剤、およびタキサンを含めた、乳がんを処置するために使用される他の薬剤と組み合わせて、乳がんの処置に有用である。乳がんを処置するために使用される例示的薬剤として、これらに限定されないが、パクリタキセル、アナストロゾール、エキセメスタン、シクロホスファミド、エピルビシン、フルベストラント、レトロゾール、ゲムシタビン、トラスツズマブ、ペグフィルグラスチム、フィルグラスチム、タモキシフェン、ドセタキセル、トレミフェン、ビ
ノレルビン、カペシタビン、イクサベピロン、ならびに本明細書に記載のその他の薬剤が挙げられる。
【0235】
一般的に、ER関連疾患または状態として、がん(骨がん、乳がん、肺がん、直腸結腸がん、子宮内膜がん、前立腺がん、卵巣がんおよび子宮がん)、中枢神経系(CNS)欠陥(アルコール中毒、片頭痛)、循環器欠陥(大動脈の動脈瘤、心筋梗塞への感受性、大動脈弁硬化、心血管疾患、冠動脈疾患、高血圧)、血液系欠陥(深部静脈血栓症)、免疫および炎症疾患(グレーブス病、関節炎、多発性硬化症、肝硬変症)、感染症への感受性(B型肝炎、慢性肝疾患)、代謝性欠陥(骨密度、胆汁うっ滞、尿道下裂、肥満、骨関節炎、骨減少症、骨粗鬆症)、神経系欠陥(アルツハイマー病、パーキンソン病、片頭痛、めまい)、精神的欠陥(拒食症、注意欠陥多動性障害(ADHD)、認知症、大うつ病性障害、精神病)および生殖欠陥(初潮の年齢、子宮内膜症、不妊)に伴うER-α機能障害が挙げられる。
【0236】
一部の実施形態では、本明細書で開示されている化合物は、哺乳動物において、エストロゲン受容体依存性またはエストロゲン受容体媒介性疾患または状態の処置に使用される。
【0237】
一部の実施形態では、エストロゲン受容体依存性またはエストロゲン受容体媒介性疾患または状態は、がん、中枢神経系(CNS)欠陥、循環器欠陥、血液系欠陥、免疫疾患および炎症疾患、感染症への感受性、代謝性欠陥、神経系欠陥、精神的欠陥ならびに生殖欠陥から選択される。
【0238】
一部の実施形態では、エストロゲン受容体依存性またはエストロゲン受容体媒介性疾患または状態は、骨がん、乳がん、肺がん、直腸結腸がん、子宮内膜がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮がん、アルコール中毒、片頭痛、大動脈の動脈瘤、心筋梗塞に対する感受性、大動脈弁硬化、心血管疾患、冠動脈疾患、高血圧、深部静脈血栓症、グレーブス病、関節炎、多発性硬化症、肝硬変症、B型肝炎、慢性肝疾患、骨密度、胆汁うっ滞、尿道下裂、肥満、骨関節炎、骨減少症、骨粗鬆症、アルツハイマー病、パーキンソン病、片頭痛、めまい、拒食症、注意欠陥多動性障害(ADHD)、認知症、大うつ病性障害、精神病、初潮の年齢、子宮内膜症、および不妊から選択される。
【0239】
一部の実施形態では、がんは、抗ホルモンの処置に耐性があるエストロゲン感受性がんまたはエストロゲン受容体依存性がんである。一部の実施形態では、抗ホルモンの処置は、タモキシフェン、フルベストラント、ステロイド系アロマターゼ阻害剤、および非ステロイド系アロマターゼ阻害剤耐性から選択される少なくとも1つの薬剤を用いた処置を含む。
【0240】
一部の実施形態では、本明細書で開示されている化合物は、抗エストロゲン療法後に疾患が進行する閉経後の女性において、ホルモン受容体陽性転移性の乳がんを処置するために使用される。
【0241】
一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物を用いた処置の方法は、放射線療法を哺乳動物へ投与することを含む処置レジメンを含む。
【0242】
一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物を用いた処置の方法は、手術前または手術後に化合物を投与することを含む。
【0243】
一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物を用いた処置の方法は、少なくとも1種の追加の抗がん剤を哺乳動物に投与することを含む。
【0244】
一部の実施形態では、本明細書で開示されている化合物は、哺乳動物においてがんを処置するために使用され、この哺乳動物は化学療法を受けたことがない。
【0245】
一部の実施形態では、本明細書で開示されている化合物は、哺乳動物においてがんを処置するために使用され、この哺乳動物は少なくとも1種の抗がん剤を用いてがんが処置されている。
【0246】
一実施形態では、がんはホルモン不応性がんである。
【0247】
したがって、一部の実施形態では、本発明は、式Iの化合物:
【化58】
(式中、
Xは-CH-または-O-であり、
Yは、
【化59】
であり、
、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素またはハロから選択され、
は、水素、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、C~Cアルケニル、C~C(C~Cシクロアルキル)またはC~Cヘテロアルキルであり、
は、水素、C~Cアルキル、C~CハロアルキルまたはC~C(C~Cシクロアルキル)であり、
およびRは、それぞれ独立に、水素またはC~Cアルキルから選択される)
または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0248】
一部の実施形態では、Xは-O-である。一部の実施形態では、Xは-CH-である。
【0249】
一部の実施形態では、Yは
【化60】
である。一部の実施形態では、Yは
【化61】
である。
【0250】
一部の実施形態では、Xは-O-であり、Yは
【化62】
である。一部の実施形態では、Xは-O-であり、Yは
【化63】
である。
【0251】
一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。一部の実施形態では、Rは、メチル、エチル、プロピルおよびブチルからなる群から選択される。一部の実施形態では、Rはプロピルである。一部の実施形態では、Rは、C~CアルキルまたはC~Cハロアルキルである。一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。一部の実施形態では、Rは、-CHF、CHFまたはCFからなる群から選択される。一部の実施形態では、RはCHFである。
【0252】
一部の実施形態では、Rは水素、C~CアルキルまたはC~Cハロアルキルである。一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。一部の実施形態では、Rは-CHCF(CHである。
【0253】
一部の実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立に、水素またはC~Cアルキルから選択される。一部の実施形態では、Rはメチルであり、Rは水素である。
【0254】
一部の実施形態では、本発明は、式I(a)の化合物:
【化64】
または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0255】
一部の実施形態では、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素またはハロから選択される。一部の実施形態では、R、R、RおよびRは水素である。一部の実施形態では、R、R、RおよびRは水素またはフルオロである。
【0256】
一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。一部の実施形態では、R
、メチル、エチル、プロピルおよびブチルからなる群から選択される。一部の実施形態では、Rはプロピルである。
【0257】
一部の実施形態では、Rは水素、C~CアルキルまたはC~Cハロアルキルである。一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。一部の実施形態では、Rは-CHCF(CHである。
【0258】
一部の実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立に、水素またはC~Cアルキルから選択される。一部の実施形態では、Rはメチルであり、Rは水素である。
【0259】
一部の実施形態では、本発明は、式I(b)の化合物:
【化65】
または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0260】
一部の実施形態では、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素またはハロから選択される。一部の実施形態では、R、R、RおよびRは水素である。一部の実施形態では、R、R、RおよびRは水素またはフルオロである。
【0261】
一部の実施形態では、RはC~Cアルキルである。一部の実施形態では、Rは、メチル、エチル、プロピルおよびブチルからなる群から選択される。一部の実施形態では、Rはプロピルである。
【0262】
一部の実施形態では、Rは水素、C~CアルキルまたはC~Cハロアルキルである。一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。一部の実施形態では、Rは-CHCF(CHである。
【0263】
一部の実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立に、水素またはC~Cアルキルから選択される。一部の実施形態では、Rはメチルであり、Rは水素である。
【0264】
一部の実施形態では、本発明は、式I(c)の化合物:
【化66】
または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0265】
一部の実施形態では、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素またはハロから選択される。一部の実施形態では、R、R、RおよびRは水素である。一部の実施形態では、R、R、RおよびRは水素またはフルオロである。
【0266】
一部の実施形態では、RはC~CアルキルまたはC~Cハロアルキルである。一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。一部の実施形態では、Rは、-CHF、CHFまたはCFからなる群から選択される。一部の実施形態では、RはCHFである。
【0267】
一部の実施形態では、Rは水素、C~CアルキルまたはC~Cハロアルキルである。一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。一部の実施形態では、Rは-CHCF(CHである。
【0268】
一部の実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立に、水素またはC~Cアルキルから選択される。一部の実施形態では、Rはメチルであり、Rは水素である。
【0269】
一部の実施形態では、本発明は、式I(d)の化合物:
【化67】
または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0270】
一部の実施形態では、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素またはハロから選択される。一部の実施形態では、R、R、RおよびRは水素である。一部の実施形態では、R、R、RおよびRは水素またはフルオロである。
【0271】
一部の実施形態では、RはC~CアルキルまたはC~Cハロアルキルである
。一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。一部の実施形態では、Rは、-CHF、CHFまたはCFからなる群から選択される。一部の実施形態では、RはCHFである。
【0272】
一部の実施形態では、Rは水素、C~CアルキルまたはC~Cハロアルキルである。一部の実施形態では、RはC~Cハロアルキルである。一部の実施形態では、Rは-CHCF(CHである。
【0273】
一部の実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立に、水素またはC~Cアルキルから選択される。一部の実施形態では、Rはメチルであり、Rは水素である。
【0274】
一部の実施形態では、本発明は、化学構造:
【化68】
を有する化合物または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0275】
一部の実施形態では、本発明は、化学構造:
【化69】
を有する化合物または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0276】
一部の実施形態では、本発明は、化学構造:
【化70】
を有する化合物または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0277】
一部の実施形態では、本発明は、化学構造:
【化71】
を有する化合物または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0278】
一部の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の式のいずれかの化合物と、薬学的に許容される担体とを含む組成物を提供する。一部の実施形態では、担体は経口送達に適切である。
【0279】
一部の実施形態では、本発明は、患者において、エストロゲン受容体により媒介される障害を処置するための方法であって、必要に応じて薬学的に許容される担体中の、治療有効量の本明細書に記載の任意の式を、患者に投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、障害は乳がんである。
【0280】
一部の実施形態では、障害は、卵巣がん、子宮内膜がん、膣がん、肺がん、骨がん、子宮がんおよび子宮内膜症からなる群から選択される。
【0281】
一部の実施形態では、方法は、本発明の化合物を、がんの処置のために、別の抗がん剤と組み合わせてまたは交互に投与することをさらに含む。
【0282】
一部の実施形態では、方法は、閉経後障害の処置のために、化合物を、エストロゲンまたは部分的エストロゲン受容体アンタゴニストと組み合わせてまたは交互に投与することをさらに含む。一部の実施形態では、患者はヒトである。
【0283】
本明細書で使用される場合、用語「組合せ」は、2種またはそれよりも多い治療剤の同時または逐次的投与を意味する。一部の実施形態では、本明細書に記載の任意の式の化合物は、追加の治療剤、例えば、エストロゲンまたは部分的エストロゲン受容体アンタゴニストの投与前、投与中または投与後に投与することができる。
【0284】
一部の実施形態では、本発明は、医学的処置における使用のために、本明細書に記載の任意の式の化合物を提供する。
【0285】
一部の実施形態では、本発明は、卵巣がん、子宮内膜がん、膣がん、肺がん、骨がん、子宮がんおよび子宮内膜症からなる群から選択される障害の処置における使用のための、本明細書に記載の任意の式の化合物を提供する。一部のこのような実施形態では、障害は乳がんである。
【0286】
一部の実施形態では、本発明は、閉経後障害の処置のために、エストロゲンまたは部分的エストロゲン受容体アンタゴニストと組み合わせて使用するための本明細書に記載の任意の式の化合物を提供する。
【0287】
一部の実施形態では、本発明は、卵巣がん、子宮内膜がん、膣がん、肺がん、骨がん、子宮がんおよび子宮内膜症からなる群から選択される障害を処置するための医薬の製造に
おける使用のための、本明細書に記載の任意の式の化合物を提供する。一部のこのような実施形態では、障害は乳がんである。
【0288】
一部の実施形態では、本発明は、卵巣がん、子宮内膜がん、膣がん、肺がん、骨がん、子宮がんおよび子宮内膜症からなる群から選択される障害を処置するための医薬の製造における使用のための本明細書に記載の任意の式の化合物を提供し、この医薬は、閉経後障害の処置のために、エストロゲンまたは部分的エストロゲン受容体アンタゴニストと組み合わせて使用するために製剤化される。
化合物の調製
【0289】
本明細書に提供されている化合物は、以下の一般的な方法および手順を使用して、容易に入手できる出発材料から調製することができる。例えば、以下の合成スキームを参照されたい。典型的なまたは好ましいプロセスの条件(すなわち、反応温度、時間、反応物質のモル比、溶媒、圧力など)が与えられている場合、特に述べられていない限り、他のプロセスの条件もまた使用できることが認識される。最適な反応条件は使用する特定の反応物質または溶媒により異なり得るが、このような条件は、規定通りの最適化手順により当業者により決定することができる。
【0290】
さらに、当業者には明らかなように、ある特定の官能基が所望しない反応を受けることを防ぐために、従来の保護基が必要であり得る。特定の官能基に対する適切な保護基ならびに保護および脱保護に対する適切な条件の選択は当技術分野で周知である。例えば、多くの保護基、およびこれらの導入および除去は、T. W. GreeneおよびP. G. M. Wuts、Protecting Groups in Organic Synthesis、第2版、Wiley、New York、1991年、およびその中で引用されている参考文献に記載されている。
【0291】
本明細書に提供されている化合物は、公知の標準的手順により単離および精製することができる。このような手順として、(これらに限定されないが)再結晶、カラムクロマトグラフィーまたはHPLCが挙げられる。以下のスキームは、本明細書で列挙された代表的な式Iの化合物の調製について詳細に提示している。本明細書に提供されている化合物は、公知のまたは市販の出発材料および試薬から有機合成の当業者により調製し得る。
【0292】
代表的な化合物の調製のための以下の非限定的なスキームおよび実施例は、式Iの化合物を調製するために使用する方法を例示したものである。本発明の化合物を調製するための一般的なプロセスは本発明のさらなる実施形態として提供され、以下のスキームに例示されている。スキームでは、特に反対の指示がない限り、X、Y、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、本明細書において上で定義された通りである。
【0293】
以下の実施例では以下の略語を使用し得る:aq.(水性);ACN(アセトニトリル);CSA(カンファースルホン酸);d(日(複数可));DCM(ジクロロメタン);DEA(ジエチルアミン);DHP(ジヒドロピラン);DMF(N,N-ジメチルホルムアミド);DIPEA(N,N-ジイソプロピルエチルアミン);DMAP(4-ジメチルアミノピリジン);DMSO(ジメチルスルホキシド);EA(酢酸エチル);ee(鏡像体過剰率);equiv.(当量);エタノール(EtOH);h(時間(複数可));Hex(ヘキサン);HPLC(高速液体クロマトグラフィー);IPA(イソプロピルアルコール);KHMDS(カリウムビス(トリメチルシリル)アミド);LAH(水素化リチウムアルミニウム);LCMS(液体クロマトグラフィー質量分析法);LDA(リチウムジイソプロピルアミド);LiHMDS(リチウムビス(トリメチルシリル)アミド);MeOH(メタノール);min(分(複数可));NMR(核磁気共鳴);Pd/C(パラジウム担持炭素);PPhO(トリフェニルホスフィンオキシド);Pt/C(白金担持炭素);rb(丸底);Rf(保持係数);rtまたはRT(室
温);SM(出発材料);TEA(トリエチルアミン);THF(テトラヒドロフラン);THP(テトラヒドロピラン);TLC(薄層クロマトグラフィー);TsOH(p-トルエンスルホン酸またはトシル酸);およびUV(紫外線)。
【0294】
本明細書に提供されている範囲内の追加の実施形態は、本明細書の他の箇所でおよび本明細書で以下の実施例において、非限定的な形式で記載されている。これらの実施例は例証目的のみのものであり、どのような形でもこれを限定すると解釈されるものではないことを理解されたい。
【実施例0295】
以下の非限定的なスキームおよび実施例は、本発明の開示の例示である。
【化72】
【0296】
スキームAに例示されているように、式Iの化合物の合成のための重要な中間体は、容易に入手できる官能化アゼチジンA-1およびA-4から合成することができる。
【0297】
化合物A-2は、アミンアルキル化条件下、LCH(式中、Lは、脱離基、例えば、ハロゲン化物(例えば、Br、Cl、I)など、または他の脱離基、例えば、OTs、OBs、ONs、OMs、トリフレート、ノナフレート、トレシレートなどである)などの部分を含有する適切に官能化されたアルキル化剤を使用して、A-1またはそのO保護された類似体の直接的アルキル化により調製することができる。化合物A-2はまた、水素およびPt、Pdなどの水素添加触媒の存在下、またはAcOHなどの弱酸およびNaHB(OAc)などの還元剤の存在下、HC(O)RとのA-1の還元的アミノ化により調製することもできる。代わりに、A-2は、アミド形成条件下、XC(O)R(式中、Xは脱離基である)をA-4と反応させて、アミドケトン、A-5を形成し、これに続いて、LAHなどの当技術分野で公知の還元剤を使用して、生成したアミドケトンA-5を還元させることによって調製する。当技術分野で公知の条件下での、アリール求核置換(フルオロ置換A-3については)による、またはUllmanカップリング条件(ヨード置換A-3については)を経由する、官能化ベンズアルデヒドA-3上でのハロゲン化物の、A-2による求核性芳香族置換により、重要な中間体A-7(式中、XはOである)が生じる。同様に、対応する中間体A-7(式中、XはSである)は、求核置換反応条件下、例えば、塩酸もしくは臭化水素酸もしくはヨウ化水素酸を使用して対応するクロリド、ブロミドもしくはヨージドをそれぞれ形成することによって、またはアゼチジ
ンA-1を、SOCl、PCl、PCl、POClなどの無機酸ハロゲン化物と反応させて対応するクロリドを形成することによって、アゼチジンA-1からハロゲン化物を調製することによって調製することができる。その生成物を、硫化水素ナトリウムまたはチオ酢酸ナトリウムなどの硫化物と反応させて、対応するチオールまたはチオエステルを形成する。このチオールまたはチオエステルを、アミンアルキル化条件下、LCH(式中、Lはハロゲン化物(例えば、Br、Cl、I)などの脱離基であるか、またはOTs、OBs、ONs、OMs、トリフレート、ノナフレート、トレシレートなどの別の脱離基である)などの部分を含有する適切に官能化されたアルキル化剤と反応させ、生成した生成物をA-3と反応させて、A-7の化合物(式中、XはSである)を形成する。
【0298】
XがCHである化合物を形成するために、アミドケトンA-5は、ウィッティヒ形成条件下、ウィッティヒ反応において、A-6のホスホニウム塩を経由してエステルA-6にカップリングすることによって、アルケンA-6.1を形成することができる。
【化73】
【0299】
生成したアルケンの還元、これに続く当技術分野で公知の還元条件下でのアミドおよびエステル官能基の還元は、ベンジル型アルコールA-6.2を提供する。
【化74】
【0300】
当技術分野で公知の酸化剤、例えば、亜クロム酸銅;DMSO;コリンズ試薬;コリー試薬;二クロム酸ピリジニウム;水中の二クロム酸ナトリウムなどを使用して、またはモファット酸化条件下でDMSO、ジシクロヘキシルカルボジイミドおよび無水リン酸を使用して、またはスワーン酸化条件下で無水リン酸および塩化オキサリルを使用して、ベンジルアルコールの酸化により、アルデヒドA-7(式中、XはCHである)が得られる。
【化75】
【0301】
スキームBに例示されているように、式Iの化合物の合成のための重要な中間体は、容易に入手できる官能化フェノールB-1から合成することができる。ステップ1では、化合物B-2は、フェノールアルキル化条件下で、LGCHCHOH(式中、LGはハロゲン化物(例えば、Br、Cl、I)などの脱離基であるか、またはOTs、OBs、ONs、OMs、トリフレート、ノナフレート、トレシレートなどの他の脱離基である)などの部分を含有する適切に官能化されたアルキル化剤を使用することによって、B-1の直接的アルキル化により調製することができる。一実施形態では、フェノールアルキル化条件は、塩基および有機溶媒を、必要に応じて高温で使用することを含む。一実施形態では、塩基は炭酸セシウムである。一実施形態では、有機溶媒はN,N-ジメチルホルムアミドである。ステップ2では、B-2アルコール基は、当業者に公知の条件を使用することによって、脱離基LGに変換することができる。脱離基LGは、ハロゲン化物(例えば、Br、Cl、I)であっても、OTs、OBs、ONs、OMs、トリフレート、ノナフレート、トレシレートなどの他の脱離基であってもよい。一実施形態では、B-2を、約0℃の低温で、塩化メタンスルホニル;トリエチルアミンなどの塩基;ジクロロメタンなどの有機溶媒で処理する。ステップ3では、当業者に公知の条件に従い、高温で、アミンB-4を、B-3、塩基および有機溶媒で処理して、アミンB-5を生成する。一実施形態では、塩基は炭酸カリウムである。一実施形態では、有機溶媒はアセトニトリルである。一実施形態では、アミンB-4は塩の形態である。一実施形態では、B-4は塩酸塩である。ステップ4では、当業者に公知の条件に従い、化合物B-5をホルミル化する。一実施形態では、低温で、B-5を塩基およびテトラメチルエチレンジアミンで処理し、これに続いて室温で、N,N-ジメチルホルムアミドで処理して、B-6を生成する。一実施形態では、塩基はn-ブチルリチウムである。一実施形態では、低温は約-78℃である。WO2005/080380を参照されたい。
【化76】
【0302】
スキームCに例示されているように、式Iの化合物の合成のための重要な中間体は、容易に入手できるケトンC-1から合成することができる。ステップ1では、C-1を、(R)-(+)-1-フェニルエチルアミンなどのアミン;ジクロロメタンなどの有機溶媒、およびトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で、必要に応じて低温で処理することによって、アミンC-2を生成する。ステップ2では、当業者に公知の方法に従いアミンC-2を脱保護する。ステップ2では、C-2を、水で湿らせた炭素上の20%Pd(OH)などの触媒、メタノールなどの有機溶媒および約50psiの水素気体で処理することによって、インドールC-3を生成する。
【0303】
スキームCでもまた例示されているように、式Iの化合物の合成のための重要な中間体は、容易に入手できるアルコールC-4から合成することができる。ステップ3では、C-4アルコール基を、当業者に公知の条件を使用することによって、脱離基LGに変換することができる。脱離基LGは、ハロゲン化物(例えば、Br、Cl、I)であっても、OTs、OBs、ONs、OMs、トリフレート、ノナフレート、トレシレートなどの他の脱離基であってもよい。一実施形態では、C-4を、約0℃の低温にて、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、2,6-ルチジンなどの塩基、ジクロロメタンなどの有機溶媒で処理する。ステップ4では、当業者に公知の方法に従い、アミンC-3をC5、塩基、および有機溶媒で処理する。一実施形態では、C-3を、約90℃の高温にて、C-5、ジイソプロピルエチルアミンなどの塩基、ならびにジクロロメタンおよび1,4-ジオキサンなどの有機溶媒で処理することによって、C-6を生成する。
【化77】
【0304】
スキームDに例示されているように、式Iの化合物は、当業者に公知のピクテ-スペン
グラー反応条件を使用して、アミンC-6およびD-1などのアルデヒドから合成することができる。例えば、アミンC-6を、窒素雰囲気下、暗所で約80℃の高温にて、トルエンなどの無水溶媒中、アルデヒドD-1、氷酢酸などの酸、モレキュラーシーブで、処理することによって、式Iの化合物を生成する。
セクション1:アルデヒドの調製
実施例1
2,6-ジフルオロ-4-(2-(3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル)エトキシ)-ベンズアルデヒドの調製
【化78】
ステップ1.2-(3,5-ジフルオロフェノキシ)エタノールの調製
【化79】
【0305】
3,5-ジフルオロフェノール(5.07g、39.0mmol、1.0当量)、2-ブロモエタノール(4.14mL、58.5mmol、1.5当量)および炭酸セシウム(19.05g、58.5mmol、1.5当量)のDMF(100mL)中懸濁液を90℃に12時間加熱した。TLC(10%EA/Hex)は反応がほぼ完了したことを示した。反応物をEA(200mL)で希釈し、水(3×100mL)、ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮することによって、生成物を生成した(4.86g、71.6%)。
【0306】
1H NMR (300 MHz, CDCl3), δ 6.46 - 6.40 (m, 3H), 4.05 (t, J = 4.2
Hz, 2H), 3.99 - 3.94 (m, 2H), 1.94 (t, J = 6.0 Hz, 1H).
ステップ2.2-(3,5-ジフルオロフェノキシ)エチルメタンスルホネートの調製
【化80】
【0307】
塩化メシル(0.77mL、9.9mmol、1.0当量)を、2-(3,5-ジフルオロフェノキシ)エタノール(1.66g、9.5mmol、1.0当量)およびトリエチルアミン(1.80mL、12.9mmol、1.4当量)のDCM(120mL.)溶液に0℃で10分間にわたり加えた。反応物を0℃で1時間撹拌した。TLC(5%MeOH/DCM)は反応が完了したことを示した。重炭酸ナトリウム飽和溶液を反応物に加え、0℃で30分間撹拌した。有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物は精製することなく直ぐに使用した。
【0308】
1H NMR (300 MHz, CDCl3), δ 6.50 - 6.43 (m, 3H), 4.56 (t, J = 4.8
Hz, 2H), 4.22 (t, J = 4.8 Hz, 2H), 3.08 (s, 3H).
ステップ3.1-(2-(3,5-ジフルオロフェノキシ)エチル)-3-(フルオロメチル)アゼチジンの調製
【化81】
【0309】
2-(3,5-ジフルオロフェノキシ)エチルメタンスルホネート(2.20g、8.7mmol、1.0当量)、炭酸カリウム(2.65g、19.2mmol、2.2当量)、3-(フルオロメチル)アゼチジン塩酸塩(1.11g、8.8mmol、1.0当量)のCHCN中懸濁液を、終夜激しく撹拌しながら、82℃で加熱した。TLC(5%MeOH/DCM)は新規スポットおよびメシレートと同じRfを有するスポットを示した。LCMSは所望の質量が存在することを示した。固体を濾別し、濾液を濃縮することによって半固体を得、これをDCMに溶解させ、シリカゲルカラム(25gカートリッジ、50~100%EA/Hex)にロードして、淡黄色の油状物として表題化合物を得た(1.65g、77.1%)。
【0310】
1H NMR (300 MHz, CDCl3), δ 6.45 - 6.37 (m, 3H), 4.50 (dd, J = 47.7, 5.4 Hz, 2H), 3.92 (t, J = 5.7 Hz, 2H), 3.48 (t, J = 7.2 Hz,
2H), 3.14 (t, J = 4.2 Hz, 2H), 2.93 - 2.80 (m, 3H).
ステップ4.2,6-ジフルオロ-4-(2-(3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル)エトキシ)ベンズアルデヒドの調製
【化82】
【0311】
1-(2-(3,5-ジフルオロフェノキシ)エチル)-3-(フルオロメチル)アゼチジン(0.60g、2.4mmol、1.0当量)の乾燥THF(5mL)溶液を窒素雰囲気下で-78℃に冷却し、この混合物に、テトラメチル-エチレンジアミン(3.0mL、20.0mmol、8.2当量)およびn-ブチルリチウム(1.70mL、2.5mmol、1.0当量)を加え、-78℃で30分間撹拌した。N,N-ジメチルホルムアミド(6.0mL、3.0mmol、1.2当量)を加え、反応物をRTで60分間撹拌した。LCMSは所望の質量の存在を示し、TLC(5%MeOH/DCM)は出発材料と同じRfを有するかすかなスポットが存在することを示した。反応を0℃で水によりクエンチし、EA(80mL)で抽出した。有機層を水(3×50mL)、ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、淡黄色の残留物に濃縮した。残留物をDCMに溶解させ、シリカゲルカラム(25gカートリッジ、0~5%MeOH/DCM)にロードして、薄黄色の高粘度の油状物として表題化合物を得た。この手順に関する一般的参考文献はWO2005/080380、44頁;(PCT/US2005/000024、44頁)である。
【0312】
1H NMR (300 MHz, CDCl3), δ 10.19 (s, 1H), 6.48 (d, J = 10.5 Hz, 2H), 4.50 (dd, J = 47.7, 5.4 Hz, 2H), 3.98 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 3.48 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 3.15 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 2.91 - 2.80
(m, 3H).
実施例2
4-(2-(3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル)エトキシ)ベンズアルデヒドの調製
【化83】
ステップ1.2-(4-ホルミルフェノキシ)エチルメタンスルホネートの調製
【化84】
【0313】
塩化メシル(0.50mL、6.5mmol、1.1当量)を、4-(2-ヒドロキシエトキシ)ベンズアルデヒド(1.01g、6.1mmol、1.0当量)およびトリエチルアミン(1.1mL、7.9mmol、1.3当量)のDCM(20mL)溶液に0℃で加えた。30分間撹拌後、TLC(5%MeOH/DCM)は反応が完了したことを示した。重炭酸ナトリウム飽和溶液を反応物に加え、0℃で30分間撹拌した。有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物は、精製することなく直ぐに使用した。
【0314】
1H NMR (300 MHz, CDCl3), δ 9.91 (s, 1H), 7.86 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.03 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 4.60 (t, J = 4.5 Hz, 2H), 4.34 (t,
J = 4.5 Hz, 2H), 3.10 (s, 3H).
ステップ2.4-(2-(3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル)エトキシ)ベンズアルデヒドの調製
【化85】
【0315】
2-(4-ホルミルフェノキシ)エチルメタンスルホネート(1.46g、6.0mmol、1.0当量)、炭酸カリウム(1.90g、13.7mmol、2.4当量)、3-(フルオロメチル)アゼチジン塩酸塩(0.73g、5.8mmol、1.0当量)のCHCN中懸濁液を、終夜激しく撹拌しながら、82℃で加熱した。TLC(5%MeOH/DCM)は、主要な新規スポットおよび生成物より極性の低いかすかな新規スポットを示した。反応物を周囲温度に冷却し、減圧下で濃縮した。残留物をEA(100mL)および水(50mL)で希釈した。有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮することによって黄色の残留物を得、これをDCMに溶解させ、シリカゲルカラム(25gカートリッジ、0~5%MeOH/DCM)にロードして、淡黄色の油状物として表題化合物を得た(0.45g、32.4%)。早期画分から出発メシレート(0.35g)を回収した。
【0316】
1H NMR (300 MHz, CDCl3), δ 9.88 (s, 1H), 7.82 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 6.98 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 4.51 (dd, J = 47.4, 5.7 Hz, 2H), 4.05 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 3.50 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 3.17 (t, J =
7.4 Hz, 2H), 2.89 - 2.85 (m, 3H).
実施例3
4-((1-プロピルアゼチジン-3-イル)オキシ)ベンズアルデヒドの調製
【化86】
ステップ1:1-プロピオニルアゼチジン-3-オンの調製
【化87】
【0317】
化合物3-アゼチジノン塩酸塩(10.000g、93.0mmol、1.0当量)、無水1,2-ジクロロエタン(200mL)およびジイソプロピルエチルアミン(38.9mL、223mmol、2.4当量)を、丸底フラスコ(500mL)に加えて、淡黄色の懸濁液を得た。懸濁液を1時間超音波処理し、次いで、-10℃(ドライアイス/MeOH)に10分間冷却した。この冷却した懸濁液に塩化プロピオニル(9.8mL、112mmol、1.2当量)を滴下添加し、橙色の溶液を得た。反応物を槽から除去し、室温で16時間撹拌した。溶媒を除去して、半固体を得た。半固体をEA(300mL)中に懸濁させ、懸濁液を濾過した。固体をEA(2×100mL)ですすいだ。TLC分析(10%MeOH/DCM、KMnO染色/加熱)は、3つのスポット(Rf:0.2、0.5、0.7)が存在することを示した。TLC(50%EA/Hex、KMnO染色/加熱する)は、2つのスポット(Rf:1、0.3)が存在することを示した。濾液を濃縮し、シリカゲル(25g)上に吸着させ、DCM(5分間)次いで0~10%MeOHを15分間にわたって用いてシリカゲル(100gカートリッジ)を通すクロマトグラフ分析を行った。生成物が、DCM中カラムから早期に分離し、10%までのMeOHを有するカラムから継続して溶離した。両方の溶媒系中でのTLCを実施することによって、任意のプロピオニルクロリドが早期画分中に存在するかどうか判定した。生成物を含有する画分をプールし、濃縮することによって、黄色の液体として表題化合物を得た(11.610g、98.2%)。
【0318】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 4.80 (d, J = 5.6 Hz, 4H), 2.29 (q, J
= 7.5 Hz, 2H), 2.01 (s, 3H), 1.18 (t, J = 7.5 Hz, 3H).
ステップ2.1-プロピルアゼチジン-3-オールの調製
【化88】
【0319】
水素化リチウムアルミニウム(10.397g、273.9mmol、3.0当量)をTHF(200mL)中に懸濁させ、氷浴内で冷却した。この反応混合物に、1-プロピオニルアゼチジン-3-オン(11.610g、91.3mmol、1.0当量)のTHF(100mL)溶液を、圧力平衡滴下漏斗を介して30分間にわたり滴下添加した。滴下漏斗を除去した。次いで、フラスコに冷却器を装着し、反応物を、油浴内で、75℃で16時間加熱還流させた。反応物を氷浴内で20分間冷却し、硫酸ナトリウム十水和物(グラウバー塩、25g)を20分間にわたり少量ずつ加えた。添加完了後、混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を、Celite(登録商標)の床(2cm)を通して濾過し、固体をEA(2×250mL)ですすいだ。透明な溶液を薄黄色の液体(9.580g、91.1%)に濃縮した。NMRはTHFおよびEAの存在を示した。この物質を、さ
らに精製せずに、以下の実施例の化合物の調製に使用した。
【0320】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 4.39 (五重線, J = 6 Hz, 1H), 3.62 - 3.56 (m, 2H), 2.90 - 2.85 (m, 2H), 2.41 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 1.34
(六重線, J = 7.2 Hz, 2H), 0.87 (t, J = 7.8 Hz, 3H).
ステップ3.4-((1-プロピルアゼチジン-3-イル)オキシ)ベンズアルデヒドの調製
【化89】
【0321】
4-フルオロベンズアルデヒド(15.00g、120.9mmol、0.9当量)、1-プロピルアゼチジン-3-オール(15.00g、130.2mmol、1.0当量)、炭酸セシウム(88.40g、271.3mmol、2.1当量)およびN,N-ジメチルホルムアミド(284mL)を、500mL丸底フラスコ内で、TeflonTM(登録商標)撹拌棒を用いて一緒に混合した。フラスコを密閉し、加熱ブロック内で、95℃で6時間加熱した。反応物をLCMSで分析すると、アルデヒドが消費されたことを示した。焼結ガラス漏斗を通して懸濁液を濾過し、固体を酢酸エチル(100mL)で洗浄した。濾液を橙色の懸濁液に濃縮した。懸濁液を水(200mL)および酢酸エチル(200mL)と混合し、有機層を水(3×200mL)、ブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、橙色の液体(21.74g、76.1%)に濃縮した。この物質をさらに精製せずに使用した。
【0322】
1HNMR (300 MHz, CDCl3), δ 9.87 (s, 1H), 7.82 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 6.86 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 4.86 (五重線, J = 5.7 Hz, 1H), 3.85
- 3.80 (m, 2H), 3.13 - 3.08 (m, 2H), 2.48 (t, J = 7.2 Hz, 2H),
1.46 - 1.34 (m, 2H), 0.91 (t, J = 7.2 Hz, 3H).
実施例4
3-フルオロ-4-((1-プロピルアゼチジン-3-イル)オキシ)ベンズアルデヒドの調製
【化90】
【0323】
3-フルオロ-4-ヨードベンズアルデヒド(0.800g、3.2mmol、1.0当量)、ブチロニトリル(1mL)中95.0%1-プロピルアゼチジン-3-オール(1.261g、10.4mmol、3.3当量)、1,10-フェナントロリン(0.058g、0.3mmol、0.1当量)、および炭酸セシウム(2.294g、7.0mmol、2.2当量)の溶液を48mLガラス耐圧瓶に加えた。混合物を脱気し、アルゴン(3回)で覆い、次いでヨウ化Cu(I)(0.616g、3.2mmol、1.0当量)を加えた。混合物を脱気し、アルゴンでさらに3回覆った。反応混合物を120℃で
40時間加熱した。TLC(20%EA/Hex)は、出発材料が依然として存在することを示した。TLC(5%MeOH/DCM)は、出発アルデヒドよりも極性の低い新規スポットが存在することを示した。反応物を室温に冷却し、EAで希釈し、混合物を超音波処理した。Celite(登録商標)パッドを通して混合物を濾過した。生成した暗褐色の残留物をシリカゲルカラム(12g、0~10%MeOH/DCM)上で精製することによって、不純な生成物を含有する暗色の油状物を得た。この物質をアセトニトリルに溶解させ、分取HPLC(10~90%アセトニトリル/HO、20分間)上でさらに精製することによって、明褐色油状物として表題化合物を得た(0.073g、9.6%)。
【0324】
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ: 9.85 (s, 1H), 7.64 - 7.58 (m, 2H), 6.83 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 4.90 (t, J = 5.8 Hz, 1H), 3.90 - 3.85 (m, 2H), 3.18 - 3.13 (m, 2H), 2.50 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 1.45 - 1.37 (m, 2H), 0.92 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
LCMS:[M+1]、238.5。
セクション2:式Iの化合物の調製
実施例5
(R)-1-(1H-インドール-3-イル)-N-((R)-1-フェニルエチル)プロパン-2-アミンの調製
【化91】
【0325】
下、25℃で、インドール-3-アセトン(25.0g、144mmol、1.0当量)を、(R)-(+)-1-フェニルエチルアミン(23.0mL、181mmol、1.3当量)のジクロロメタン(600mL)溶液に加え、混合物を1時間撹拌した。反応物を0~5℃に冷却し、この氷冷溶液に、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(100g、472mmol、3.3当量)を、粉末滴下漏斗を介して30分間にわたり加えた。橙色の溶液を0℃で1時間撹拌し、次いで室温まで温めた。反応物を室温で19時間撹拌した。この時点で、ESI+はインドール出発材料が存在しないことを示した。NaHCO飽和溶液(100mL)を、激しく撹拌しながら、10℃で15分間にわたり5mLずつに分けて加えた。溶液を15分間撹拌し、NaCO飽和溶液(200mL)を15分間にわたり加えた。固体KCO(9g)を3gずつに分けて加え、加え終えた時点で水性層はpH12であり、気泡の形成は停止した。層を濾過し、分離した。赤色の有機層を飽和水性NaHCO(2×100mL)で洗浄した。水性層を合わせ、DCM(2×100mL)で抽出した。合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮することによって、粗生成物を得た(49g)。TLC(90:10DCM:MeOH)は、4つのスポット(Rf=0.63、0.50、0.16、0.26)を示し、これらのうち2つは、分離したジアステレオマーの主要生成物であった(Rf=0.16および0.26)。粗製物をシリカゲル上に吸着させ、フラッシュクロマトグラフィー(330gカートリッジ、0~100%EA:Hex)を通して精製した。R,Rジアステレオマーを含有する画分をプールし、同じフラッシュクロマトグラフィー条件を用いて2回目の精製を行うことによって、24gの生成物を得た(約82%ee)。過去の成功した分離は40:1のシリカゲル:粗製物の比により達成され、その結果、混合物は3つの部分に分けられ、3×330gシリカゲルカートリッジ(0~40%EA/Hex、20分間、均一濃度の40%EA/Hex、40分間)上で分離した。所望の生成物を含有するすべての画分は、>99%のジアステレオマー純度であった。純粋な画分を濃縮し、プールして、橙色の半固体として、(R)-1-(1H-インドール-3-イル)-N-(
(R)-1-フェニルエチル)-プロパン-2-アミンを得た(11.91g、29.6%)。
【0326】
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) R,R ジアステレオマー: δ 0.96 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.30 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 2.68 (q, J = 7.2 Hz, 1H), 2.97
(m, 2H) 4.00 (q, J = 6.3 Hz, 1H), 7.43-6.97 (m, 10H), 7.96 (br s, 1H). R,S ジアステレオマー: δ 1.11 (d, J = 5.7 Hz, 3H), 1.30 (d, J = 5.4 Hz, 3H) 2.80 (m, 3H), 3.92 (q, J = 6.9 Hz, 1H), 6.93-7.40 (m, 10H), 8.13 (br s, 1H);芳香族領域は、純度の欠如によりR,Rジアス
テレオマーと区別するのが困難であった。
【0327】
LCMS:ES+[M+H]+279.0。
実施例6
(2R)-1-(1H-インドール-3-イル)プロパン-2-アミンの調製
【化92】
【0328】
化合物(R)-1-(1H-インドール-3-イル)-N-((R)-1-フェニルエチル)プロパン-2-アミン(11.91g、42.8mmol、1.0当量)をメタノール(250mL)に溶解させ、2LのParrビンに加え、溶液をNで10分間スパージした。水で湿らせた炭素上の20%Pd(OH)(10.71g、76.3mmol、1.8当量)を加え、ビンを50psiの水素で加圧し、Parr装置内で22時間振盪し、LCMS分析は反応が完了したことを示した。Celite(登録商標)を通して懸濁液を濾過し、濃縮して、MeOHを除去した。粗原料をDCM中に溶解させ、NaCO飽和溶液(50mL)で洗浄し、水性層をDCM(2×50mL)で抽出した。有機層を合わせ、乾燥させ、濃縮することによって、淡褐色固体として(2R)-1-(1H-インドール-3-イル)プロパン-2-アミンを得、これは、さらなる精製を必要としなかった(6.68g、89.6%)。
【0329】
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 1.17 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 2.66 (dd, J
= 8.4, 14.7 Hz, 1H), 2.88 (dd, J = 5.4, 14.1 Hz, 1H), 3.27 (六重線, J = 1.5 Hz, 1H), 7.05-7.22 (m, 3H), 7.37 (d, J = 7.5 Hz, 1H),
7.62 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 8.00 (br s, 1H).
【0330】
LCMS:ES+[M+H]+174.9。
実施例7
2-フルオロ-2-メチルプロパノールの調製
【化93】
【0331】
メチル2-フルオロ-2-メチルプロピオネート(5.01g、40.5mmol、1.0当量)を、氷浴内で冷却した、無水ジエチルエーテル(100mL)中の水素化リチウムアルミニウム(2.50g、65.9mmol、1.6当量)の撹拌懸濁液に、15分間にわたり滴下添加した。2時間後、2.0mLの水、2.0mLの15%w/vNaOH、および5.0mLの水を逐次的に滴下添加した。15分後、白色の懸濁液をDCM
で希釈し、Celite(登録商標)を通す重力濾過をし、固体をDCMで洗浄した。濾液を濃縮(200mbar、25℃)して、無色の油状物として、2-フルオロ-2-メチルプロパノールを得た(2.09g、56.1%)。
【0332】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.34 (d, J = 21.3 Hz, 6H), 1.95 (br t,
1H), 3.56 (dd, J = 6.6, 20.7 Hz, 2H).
実施例8
2-フルオロ-2-メチルプロピルトリフルオロメタンスルホネートの調製
【化94】
【0333】
トリフルオロメタンスルホン酸無水物(5.0mL、29.7mmol、1.3当量)を、DCM(25mL)中の2-フルオロ-2-メチルプロパノール(2.090g、22.7mmol、1.0当量)および2,6ルチジン(3.40mL、29.4mmol、1.3当量)の0℃溶液に30分間にわたり滴下添加した。2時間後、赤色の溶液は明褐色に変わった。TLC(20:80 EA:Hex、KMnO染色)は、出発材料が存在しないことを示した。反応混合物を1M HCl溶液(2×20mL)およびNaHCO飽和溶液(2×20mL)で洗浄した。水性層をDCM(20mL)でそれぞれ抽出し戻した。合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して(150mbar、25℃)、赤色の油状物として2-フルオロ-2-メチルプロピルトリフルオロメタンスルホネートを得た(4.39g、86.3%)。
【0334】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.46 (d, J = 20.4 Hz, 6H), 4.41 (d, J
= 18.6 Hz, 2H). 19F NMR (282 MHz, CDCl3) δ -147.1, -74.5.
実施例9
(R)-N-(1-(1H-インドール-3-イル)プロパン-2-イル)-2-フルオロ-2-メチルプロパン-1-アミンの調製
【化95】
【0335】
化合物2-フルオロ-2-メチルプロピルトリフルオロメタンスルホネート(9.587g、42.8mmol、1.1当量)(DCM溶液、16%DCM(重量%で)、11.4384g)を、(2R)-1-(1H-インドール-3-イル)プロパン-2-アミン(6.680g、38.3mmol、1.0当量)、無水1,4-ジオキサン(60.000ml、701.4mmol、18.3当量)、および新たに蒸留したジイソプロピルエチルアミン(8.500ml、48.8mmol、1.3当量)の溶液に加えた。暗褐色の溶液を90℃で3時間加熱した。3時間後、LCMSは、少量のインドールアミン出発材料が依然として存在することを示した。TLC(10%MeOH/DCM)は、トリフレート(Rf=0.54)が消費されたことを示した。未使用のトリフレートSM(286-30)のNMRは、トリフレートが終夜分解しなかったことを示したので、別の0.1当量(0.9883g、13%DCM重量%、0.8563gトリフレートSM)を加え、反応物を90℃で2時間加熱した。LCMSは反応が完了したことを示し、TLC(10%MeOH/DCM)は、1つのスポット(Rf=0.24)(50%EA/Hexを用いたTLC、1筋のスポットRf<=0.12、Rf=0で別のスポット)を示
した。EtOAc(50mL)を加え、溶液をNaHCO(2×50mL)で洗浄し、合わせた水性層をEtOAc(50mL)で洗浄した。合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。フラッシュシリカクロマトグラフィー(240gカートリッジ、0~100%EA/Hex)によって、粗製物(褐色の油状物、14.8g)を精製した。所望の生成物は長くテーリングしたピークとして溶離した。純粋な画分を濃縮して、暗黄色の油状物として、(R)-N-(1-(1H-インドール-3-イル)プロパン-2-イル)-2-フルオロ-2-メチルプロパン-1-アミンを得た(4.211g、17.0mmol)。
【0336】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.10 (d, J = 6.3 Hz, 3H), 1.34 (dd, J = 3.0, 21.9 Hz, 6H), 2.68-2.95 (m, 4H), 3.02 (六重線, J = 6.6 Hz, 1H), 7.05 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.26-7.11 (m, 2H), 7.36 (d, J =
6.9 Hz, 1H), 7.62 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 8.18 (br s, 1H). 19F NMR
(282 MHz, CDCl3) δ -144.2.m/z:ES+[M+H]+249.0。
実施例10
テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドールシリーズの調製のための一般的手順
【0337】
4-(2-(3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル)エトキシ)ベンズアルデヒド(0.087g、0.4mmol、1.3当量)を、無水トルエン(1.50mL)および氷酢酸(0.100mL、1.7mmol、6.2当量)中の(R)-N-(1-(1H-インドール-3-イル)プロパン-2-イル)-2-フルオロ-2-メチルプロパン-1-アミン(0.070g、0.3mmol、1.0当量)の溶液に加えた。モレキュラーシーブを加え、溶液を、N下、暗所で、80℃で8時間撹拌した。反応液をDCMで希釈し、濾過し、NaCO飽和溶液で洗浄した。水性層をDCMで抽出し、合わせた有機層をNaSOで乾燥させた。溶液を濾過し、濃縮した。残留物をアセトニトリル(2mL)中に溶解させ、シリンジフィルターを通して濾過してから、分取LC(40~90%ACN:HOで18分間、これに続いて均一濃度の90%ACNで7分間)によって精製した。純粋な画分を濃縮し、乾燥させて、白色の粉末として、(1R,3R)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-1-(4-(2-(3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル)エトキシ)フェニル)-3-メチル-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドールを得た(32mg、24.3%)。
収率:
【表4】
分析データ:
(1R,3R)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-1-(3-フルオロ-4-((1-プロピルアゼチジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3-メチル-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.90 (t, J = 7.8 Hz, 3H), 1.10 (d, J
= 7.2 Hz, 3H), 1.27-1.52 (m, 8H), 2.45-2.73 (m, 6H), 3.08 (t, J =
6.6 Hz, 2H), 3.29 (m, 1H), 3.78 (q, J = 7.5 Hz, 2H), 4.66 (五重
線, J = 6.0 Hz, 1H), 5.03 (s, 1H), 6.58 (t, J = 8.1 Hz, 1H), 6.90 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.11-7.30 (m, 4H), 7.53 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 8.08 (br s, 1H). m/z:ES+[M+H]+ 468.3。
(1R,3R)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-3-メチル-1-(4-((1-プロピルアゼチジン-3-イル)オキシ)フェニル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.90 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 1.09 (d, J
= 7.2 Hz, 3H), 1.26-1.50 (m, 8H), 2.45-2.77 (m, 6H), 3.01 (t, J =
7.2 Hz, 2H), 3.34 (m, 1H), 3.77 (m, 2H), 4.60 (五重線, J = 5.7 Hz, 1H), 5.03 (s, 1H), 6.64 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.10-7.21 (m, 5H),
7.54 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 8.19 (br s, 1H). m/z:ES+[M+H]+ 450.2。
(1R,3R)-1-(2,6-ジフルオロ-4-(2-(3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル)エトキシ)フェニル)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-3-メチル-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.10 (d, J = 6.3 Hz, 3H), 1.17 (d, J
= 10.5 Hz, 3H), 1.24 (d, J = 10.5 Hz, 3H), 2.38 (dd, J = 14.7,
25.8 Hz, 1H), 2.60 (dd, J = 3.9, 15.3 Hz, 1H), 2.80-2.917 (m, 4H), 3.07-3.16 (m, 3H), 3.48 (t, J = 8.1 Hz, 2H), 3.67 (m, 1H), 3.90
(t, J = 6.0 Hz, 2H), 4.50 (dd, J = 5.7, 41.7 Hz, 2H), 5.19 (s,
1H), 6.39 (d, J = 10.5 Hz, 2H), 7.09 (m, 2H), 7.22 (m, 1H), 7.50
(m, 2H). m/z:ES+[M+H]+ 503.8。
(1R,3R)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-1-(4-(2-(3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル)エトキシ)フェニル)-3-メチル-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.08 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.29 (d, J
= 21.0 Hz, 3H), 1.43 (d, J = 21.6 Hz, 3H), 2.51-2.89 (m, 7H), 3.14 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 3.38 (m, 1H), 3.48 (t, J = 6.9 Hz, 2H),
3.92 (t, J = 5.7 Hz, 2H), 4.50 (dd, J = 5.7, 47.4 Hz, 2H), 4.99
(s, 1H), 6.79 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.08-7.28 (m, 5H), 7.54 (d, J
= 6.9 Hz, 1H), 7.72 (br s, 1H). m/z:ES+[M+H]+ 467.9。
実施例11
3-(4-ブロモ-3,5-ジフルオロフェノキシ)-1-プロピルアゼチジンの調製
【化96】
【0338】
1-プロピルアゼチジン-3-オール(1.479g、12.8mmol、1.0当量)、4-ブロモ-3,5-ジフルオロフェノール(3.220g、15.4mmol、1.2当量)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液に、トリフェニルホスフィン(4.042g、15.4mmol、1.2当量)、およびアゾジカルボン酸ジイソプロピル(3
.034ml、15.4mmol、1.2当量)を0℃で加えた。生成した混合物を室温で3時間撹拌した。TLC分析(5%MeOH/DCM)は、出発フェノールは強いUV吸光度と共に依然として存在することを示した。混合物を室温でさらに12時間撹拌した。混合物を濃縮し、DCMに溶解させ、シリカゲルカラム(40g、0~5%MeOH/DCM)にロードした。画分7~13を収集し、減圧下で濃縮して、白色の固体を得た。1HNMRは、トリフェニルホスフィンオキシドと共に生成物を示した。残留物をEA(100mL)に溶解させ、ジオキサン(10mL)中4N HClを加えた。混合物を室温で終夜撹拌した。混合物を油状物に濃縮した。この油状物を氷水槽内で冷却し、ジエチルエーテル(100mL)を加え、加え終えた時点で白色の固体が形成された。混合物を超音波処理し、撹拌した。白色の固体を濾過し、ジエチルエーテルですすいだ。生成した固体を重炭酸ナトリウム飽和溶液およびEAに加え、室温で30分間撹拌し、層を分離した。有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮することによって、淡黄色の油状物として、表題化合物を得た。
【0339】
1HNMR (300 MHz, CDCl3), δ 6.40 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 4.74 - 4.67 (m, 1H), 3.78 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 3.07 (dt, J = 7.4, 3.0 Hz, 2H), 2.46 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 1.45 - 1.33 (m, 2H), 0.90 (t, J =
7.5 Hz, 3H).
実施例12
2,6-ジフルオロ-4-((1-プロピルアゼチジン-3-イル)オキシ)ベンズアルデヒドの調製
【化97】
【0340】
3-(3,5-ジフルオロフェノキシ)-1-プロピルアゼチジン(0.689g、3.0mmol、1.0当量)の乾燥THF(5mL)溶液を、窒素雰囲気下で-78℃に冷却した。テトラメチルエチレンジアミン(3.451ml、23.1mmol、7.6当量)およびn-ブチルリチウム(2.000ml、3.0mmol、1.0当量)をシリンジで逐次的に加えた。混合物を-78℃で30分間撹拌した。次いで、無水N,N-ジメチルホルムアミド(7.000ml、3.5mmol、1.2当量)を加え、この混合物は、60分かかって室温まで温まりながら撹拌された。LCMSは、所望の質量を示し、TLC(5%MeOH/DCM)は、反応が完了したことを示した。反応混合物を氷浴内で冷却し、反応物を水でクエンチした。生成した混合物をEA(80mL)で抽出した。相を分離し、有機層を水(3×50mL)、ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。明黄色の残留物(半分)をDCMに溶解させ、シリカゲルプレート(20×20×2mm、5%MeOH/DCM)にロードして、淡黄色の油状物として表題化合物を得た(0.22g、28.4%)。残りの半分をメタノールに溶解させ、分取HPLC上で精製することによって、明黄色の油状物として表題化合物を得た(161mg)。
【0341】
1HNMR (300 MHz, CDCl3), δ 10.19 (s, 1H), 6.36 (d, J = 9.9 Hz, 2H), 4.82 - 4.76 (m, 1H), 3.79 (dt, J = 7.4, 2.4 Hz, 2H), 3.11 (dt,
J = 7.4, 2.4 Hz, 2H), 2.48 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 1.46 - 1.34 (m, 2H), 0.91 (t, J = 7.5 Hz, 3H).
実施例13
(1R,3R)-1-(2,6-ジフルオロ-4-((1-プロピルアゼチジン-3-イル)オキシ)フェニル)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-3-メチル-2
,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドールの調製
【化98】
【0342】
上に描かれた、テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドールを調製するための2,6-ジフルオロ-4-((1-プロピルアゼチジン-3-イル)オキシ)ベンズアルデヒドの一般的なカップリングプロセスについては、上記実施例10を参照されたい。(1R,3R)-1-(2,6-ジフルオロ-4-((1-プロピルアゼチジン-3-イル)オキシ)フェニル)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-3-メチル-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール(0.030g、0.1mmol)は白色の固体であった。
【0343】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.91 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 1.10 (d, J = 6.9 Hz, 3H), 1.17 (d, J = 11.7 Hz, 3H), 1.25 (d, J = 11.7 Hz,
3H), 1.39 (六重線, J = 7.5 Hz, 2H), 2.39 (dd, J = 15.3 Hz, 25.2
Hz, 1H), 2.46 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 2.61 (dd, J = 3.9 Hz, 15 Hz, 1H), 2.86 (dd, J = 14.7 Hz, 19.5 Hz, 1H), 3.06 (m, 3H), 3.67 (
六重線, J = 6.3 Hz, 1H), 3.77 (dt, J = 6.0 Hz, 6.3 Hz, 2H), 4.70
(五重線, J = 5.7 Hz, 1H), 5.20 (s, 1H), 6.27 (d, J = 9.9 Hz, 2H), 7.06-7.14 (m, 2H), 7.19-7.24 (m, 1H), 7.517 (d, J = 9 Hz, 1H), 7.51 (s, 1H).
【表5】
in vitroの感受性エストロゲンアッセイを使用した、本発明の化合物の活性の実証
実施例12
【0344】
代表的な化合物を、Hodges-Gallagher, L.、Valentine, C.V.、El Bader, S.およ
びKushner, P.J.(2007年)「Histone Deacetylase Inhibitors Enhance the Efficacy of Hormonal Therapy Agents on Breast Cancer Cells and Blocks
Anti-estrogen-Driven Uterine Cell Proliferation」Breast Cancer Res Treat, Nov;105巻(3号):297~309頁に記載されているアッセイ方法に従い、それらのエストロゲンの阻害活性について試験した。具体的には、MCF-7細胞は、エストロゲン応答性レポーター遺伝子、ERE-tk109-Lucで一時的にトランスフェクトされた。トランスフェクトされた細胞を、ホルモン除去培地中で100pM 17β-エストラジオール(E2)の存在下、抗エストロゲンで22時間処理した。ルシフェラーゼ活性は、E2の活性のみに対して正規化し、最小二乗フィット方法を使用してIC50を計算した。
【0345】
乳房細胞(nM)内のE2誘導性転写の阻害に対する代表的な結果が表形式で以下に示されている:
【表6】
実施例13
【0346】
Cyquant、蛍光DNA結合染料(Thermo Fisher Scientific)を使用してMCF-7乳がん細胞の増殖を測定した。ホルモン除去培地内で100pM E2の存在下、三連で、MCF-7細胞を抗エストロゲンで5~7日間処理した。蛍光活性は、E2の活性のみに対して正規化し、最小二乗フィット方法を使用してIC50を計算した。
【0347】
乳房細胞内でのE2刺激性増殖の阻害についての代表的な結果(nM)が表形式で以下に示されている。
【表7】
実施例14
【0348】
アルカリホスファターゼ(AP)アッセイを実施するための方法。ECC-1細胞をトリプシン処理し、ホルモン除去培地内に再度懸濁させ、1つのウェル当たり15000個の細胞という密度で、96ウェルプレートに少なくとも4時間プレーティングした。細胞を抗エストロゲンで3日間処理し、続いてプレートを-80℃で凍結させた。解凍したプレートを、APの色素生産性基質、p-ニトロフェニルホスフェート(Thermo Fisher Scientific)と共に、40℃で40分間インキュベートし、吸光度を405nmで読み取った。AP活性はE2の活性のみに対して正規化した。このアッセイは、いくつかの抗エストロゲンで処理後、卵巣切除ラットの子宮の湿重量を比較するin vivo調査と相関することが示された。子宮の細胞内のAP活性の誘導についての代表的な結果(%E2)が表形式で以下に示されている。
【表8】
実施例15
【0349】
実施例13においてAP活性をアッセイしたが、細胞は500pM E2で同時処理した。100nM抗エストロゲンで観察された子宮細胞内のAP活性の阻害についての代表的な結果(%E2)が表形式で以下に示されている。
【表9】
実施例16
ER分解の検出
【0350】
MCF-7細胞を100nM抗エストロゲンで、無血清培地内で24時間処理し、タンパク質抽出物を、ERαおよびβ-アクチンに対するD12抗体を用いて免疫ブロットした(Santa Cruz Biotechnology)。ブロットより下の数は、β-アクチンに対する正規化後のパーセントビヒクルに対する各処理のERαバンドの光学密度を表す。
【0351】
化合物Bは、MCF-7細胞内のエストロゲン受容体を分解する。図7を参照されたい。
【0352】
96ウェルプレート内で24時間上記の通り細胞を処理することによって、In-Cell westernsを実施し、比色分析In-Cell ELISAキット(Thermo Fisher Scientific)を使用して、製造者の指示書に従い、ERαに対するMA5-14501抗体で免疫染色した。最小二乗適合方法を使用して、IC50を計算した。エラーバーは、3連のウェルからのS.E.Mを表す。
【0353】
化合物Bは、MCF-7細胞においてエストロゲン受容体を分解する。図2を参照されたい。
実施例17
異種移植片調査
【0354】
University of California、San Franciscoにおいて、施設用実験動物委員会(Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC))ガイドラインに従い、Preclinical Therapeutics
Core(臨床前治療コア)により異種移植片調査を行った。クローン18細胞(MCF7/Her2/neu)の細胞を培養物中で成長させ、無胸腺の卵巣切除nu/nuマウスに移植した。腫瘍成長を刺激するために、0.36mgのエストラジオール90日間放出ペレット(Innovative Research、Saratoga、FL)を細胞と共に移植した。腫瘍が150~250立方ミリメートルに到達したときに、上記ペレットを0.18mgのエストラジオール90日間放出ペレットに交換し、1つの処置群当たりマウス6匹の群に分けた。それらの群の1つには、ビヒクルだけを与え(0.5%CMC+8%DMSO)、化合物Bおよび化合物Cについてはそれぞれ、2つの群を10または100mg/kgの化合物で処置した。化合物は、最初の21日間の週末/祝日の1日1回を除いて、強制経口投与で1日2回投与し、第21日後は1日1回投与した。腫瘍および体重を1週当たり2回測定した。
【0355】
化合物Bは、10mg/kg程度の低い用量でMCF-7(HER2/neu)腫瘍を縮小させる。図5A~Bを参照されたい。
実施例18
薬物動態
【0356】
BALB/c雌性マウスにおいて薬物動態を研究した。各アームに対して、3匹のBALB/c雌性マウスに5mg/kgの化合物を0.5%CMC製剤で強制経口投与により与えた。LC-MS/MSを使用して、各時点におけるマウス血漿およびこれらの代謝物中の化合物の濃度を分析した。濃度は、マウス血漿中の薬物の遊離画分に対して調整した(以下の方法)。0~24時間に対して台形公式を使用して曲線下面積を計算した。
【0357】
血漿中の薬物の遊離画分を検出するための方法:高速平衡透析デバイス(Thermo
Fisher Scientific)を使用して、ヒトおよびマウス血漿(Bioreclamation、IVT)への結合について化合物をスクリーニングし、続いて化合物をLC-MS/MSで検出した。遊離薬物パーセントは、バッファーチャンバー内の化合物の濃度を、組織画分チャンバー内の化合物濃度で割ったもの×100に等しい。
【0358】
化合物Bは、BALB/cヌードマウスにおいて高い経口バイオアベイラビリティーおよび半減期を有する。化合物Bはまた、他の化合物と比較してより良い24時間薬物曝露も示す。図1A~Bを参照されたい。
実施例19
ER-α結合
【0359】
化合物は、LanthaScreen Competitive Binding Assayスクリーニングサービス(Thermo Fisher Scientific)を使用して、時間分解蛍光エネルギー移動を介して、蛍光標識されたトレイサーERαリガンドを置き換えるこれらの能力についてスクリーニングした。
【0360】
具体的には、化合物BおよびCは、フルベストラント、Goodacre化合物102、およびGoodacre化合物107と同等の活性を示す。化合物BおよびCは、エストロゲン駆動性遺伝子発現およびヒト乳がんの増殖の遮断において、フルベストラントと同様の作用強度を有する。図2を参照されたい。
【0361】
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
式Iの化合物:
【化99】

または薬学的に許容されるその塩であって、式中、
Xは-CH-または-O-であり、
Yは、
【化100】

であり、
、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素またはハロから選択され、
は、水素、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、C~Cアルケニル、C~C(C~Cシクロアルキル)またはC~Cヘテロアルキルであり、
は、水素、C~Cアルキル、C~CハロアルキルまたはC~C(C~Cシクロアルキル)であり、
およびRは、それぞれ独立に、水素またはC~Cアルキルから選択される、
化合物または薬学的に許容されるその塩。
(項目2)
Xが-O-である、項目1に記載の化合物。
(項目3)
Xが-CH-である、項目1に記載の化合物。
(項目4)
Yが、
【化101】

である、項目1に記載の化合物。
(項目5)
Yが、
【化102】

である、項目1に記載の化合物。
(項目6)
Xが-O-であり、Yが、
【化103】

である、項目1に記載の化合物。
(項目7)
Xが-O-であり、Yが、
【化104】

である、項目1に記載の化合物。
(項目8)
がC~Cアルキルである、項目6に記載の化合物。
(項目9)
が、メチル、エチル、プロピルおよびブチルからなる群から選択される、項目8に記載の化合物。
(項目10)
がプロピルである、項目9に記載の化合物。
(項目11)
がC~CアルキルまたはC~Cハロアルキルである、項目7に記載の化合物。
(項目12)
がC~Cハロアルキルである、項目11に記載の化合物。
(項目13)
が、-CHF、CHFまたはCFからなる群から選択される、項目12に記載の化合物。
(項目14)
がCHFである、項目13に記載の化合物。
(項目15)
が水素、C~CアルキルまたはC~Cハロアルキルである、項目1に記載の化合物。
(項目16)
がC~Cハロアルキルである、項目15に記載の化合物。
(項目17)
が-CHCF(CHである、項目16に記載の化合物。
(項目18)
およびRが、それぞれ独立に、水素またはC~Cアルキルから選択される、項目1に記載の化合物。
(項目19)
がメチルであり、Rが水素である、項目18に記載の化合物。
(項目20)
式I(a)の化合物:
【化105】

または薬学的に許容されるその塩。
(項目21)
、R、R、およびRが、それぞれ独立に、水素またはハロから選択される、項目20に記載の化合物。
(項目22)
、R、RおよびRが水素である、項目21に記載の化合物。
(項目23)
、R、RおよびRが水素またはフルオロである、項目21に記載の化合物。(項目24)
がC~Cアルキルである、項目20に記載の化合物。
(項目25)
が、メチル、エチル、プロピルおよびブチルからなる群から選択される、項目24に記載の化合物。
(項目26)
がプロピルである、項目25に記載の化合物。
(項目27)
が水素、C~CアルキルまたはC~Cハロアルキルである、項目20に記載の化合物。
(項目28)
がC~Cハロアルキルである、項目27に記載の化合物。
(項目29)
が-CHCF(CHである、項目28に記載の化合物。
(項目30)
およびRが、それぞれ独立に、水素またはC~Cアルキルから選択される、項目20に記載の化合物。
(項目31)
がメチルであり、Rが水素である、項目30に記載の化合物。
(項目32)
式I(b)の化合物:
【化106】

または薬学的に許容されるその塩。
(項目33)
、R、R、およびRが、それぞれ独立に、水素またはハロから選択される、項目32に記載の化合物。
(項目34)
、R、RおよびRが水素である、項目33に記載の化合物。
(項目35)
、R、RおよびRが水素またはフルオロである、項目33に記載の化合物。(項目36)
がC~Cアルキルである、項目32に記載の化合物。
(項目37)
が、メチル、エチル、プロピルおよびブチルからなる群から選択される、項目36に記載の化合物。
(項目38)
がプロピルである、項目37に記載の化合物。
(項目39)
が水素、C~CアルキルまたはC~Cハロアルキルである、項目32に記載の化合物。
(項目40)
がC~Cハロアルキルである、項目39に記載の化合物。
(項目41)
が-CHCF(CHである、項目40に記載の化合物。
(項目42)
およびRが、それぞれ独立に、水素またはC~Cアルキルから選択される、項目32に記載の化合物。
(項目43)
がメチルであり、Rが水素である、項目42に記載の化合物。
(項目44)
式I(c)の化合物:
【化107】

または薬学的に許容されるその塩。
(項目45)
、R、R、およびRが、それぞれ独立に、水素またはハロから選択される、項目44に記載の化合物。
(項目46)
、R、RおよびRが水素である、項目45に記載の化合物。
(項目47)
、R、RおよびRが水素またはフルオロである、項目45に記載の化合物。(項目48)
がC~CアルキルまたはC~Cハロアルキルである、項目44に記載の化合物。
(項目49)
がC~Cハロアルキルである、項目48に記載の化合物。
(項目50)
が、-CHF、CHFまたはCFからなる群から選択される、項目49に記載の化合物。
(項目51)
がCHFである、項目50に記載の化合物。
(項目52)
が水素、C~CアルキルまたはC~Cハロアルキルである、項目44に記載の化合物。
(項目53)
がC~Cハロアルキルである、項目52に記載の化合物。
(項目54)
が-CHCF(CHである、項目53に記載の化合物。
(項目55)
およびRが、それぞれ独立に、水素またはC~Cアルキルから選択される、項目44に記載の化合物。
(項目56)
がメチルであり、Rが水素である、項目55に記載の化合物。
(項目57)
式I(d)の化合物:
【化108】

または薬学的に許容されるその塩。
(項目58)
、R、R、およびRが、それぞれ独立に、水素またはハロから選択される、項目57に記載の化合物。
(項目59)
、R、RおよびRが水素である、項目58に記載の化合物。
(項目60)
、R、RおよびRが水素またはフルオロである、項目58に記載の化合物。(項目61)
がC~CアルキルまたはC~Cハロアルキルである、項目57に記載の化合物。
(項目62)
がC~Cハロアルキルである、項目61に記載の化合物。
(項目63)
が、-CHF、CHFまたはCFからなる群から選択される、項目62に記載の化合物。
(項目64)
がCHFである、項目63に記載の化合物。
(項目65)
が水素、C~CアルキルまたはC~Cハロアルキルである、項目57に記載の化合物。
(項目66)
がC~Cハロアルキルである、項目65に記載の化合物。
(項目67)
が-CHCF(CHである、項目66に記載の化合物。
(項目68)
およびRが、それぞれ独立に、水素またはC~Cアルキルから選択される、項目57に記載の化合物。
(項目69)
がメチルであり、Rが水素である、項目68に記載の化合物。
(項目70)
化学構造:
【化109】

を有する化合物または薬学的に許容されるその塩。
(項目71)
化学構造:
【化110】

を有する化合物または薬学的に許容されるその塩。
(項目72)
化学構造:
【化111】

を有する化合物または薬学的に許容されるその塩。
(項目73)
化学構造:
【化112】

を有する化合物または薬学的に許容されるその塩。
(項目74)
項目1に記載の化合物および薬学的に許容される担体を含む、組成物。
(項目75)
前記担体が経口送達に適切である、項目74に記載の組成物。
(項目76)
患者において、エストロゲン受容体により媒介される障害を処置するための方法であって、必要に応じて薬学的に許容される担体中の、治療有効量の項目1から75に記載の化合物を前記患者に投与することを含む、方法。
(項目77)
前記障害が乳がんである、項目76に記載の方法。
(項目78)
前記障害が、卵巣がん、子宮内膜がん、膣がん、肺がん、骨がん、子宮がんおよび子宮内膜症からなる群から選択される、項目76に記載の方法。
(項目79)
前記化合物を、がんの処置のための別の抗がん剤と組み合わせてまたは交互に投与することをさらに含む、項目76に記載の方法。
(項目80)
前記化合物を、閉経後の障害の処置のためのエストロゲンまたは部分的エストロゲン受容体アンタゴニストと組み合わせてまたは交互に投与することをさらに含む、項目76に記載の方法。
(項目81)
前記患者がヒトである、項目76に記載の方法。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7