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特開2023-87140変調器、変調方法、信号送信機および信号送信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087140
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】変調器、変調方法、信号送信機および信号送信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/00 20060101AFI20230616BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
H04L27/00 Z
H04B1/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201327
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】301072650
【氏名又は名称】NECスペーステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 絢介
【テーマコード(参考)】
5K060
【Fターム(参考)】
5K060FF06
5K060GG04
(57)【要約】
【課題】高次高調波スプリアスの発生を抑制したトーン信号を重畳した被変調波を生成することができる変調器等を提供する。
【解決手段】
変調器は、搬送波角周波数ωの搬送波を発生する搬送波発生部と、第1変調度mと第1角周波数ωを有する第1トーン信号と、第2変調度mと第2角周波数ωとを有する第2トーン信号とで前記搬送波を位相変調した時の被変調波の理論式を級数展開して2次以上の高調波に対応する項を切り捨てた被変調波を表す被変調波記述式を取得する被変調波記述式取得部と、前記被変調波記述式の前記搬送波と同相の項の係数を同相成分として生成する同相成分生成部と、前記被変調波記述式の前記搬送波と直交する項の係数を直交成分として生成する直交成分生成部と、前記同相成分と前記直交成分とで前記搬送波を直交変調し、前記搬送波の被変調波s(t)を出力する直交変調部と、を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
数式(1)で表される搬送波c(t)を発生する搬送波発生部と、
数式(2)で表される第1トーン信号a(t)と、数式(3)で表される第2トーン信号a(t)とで前記搬送波c(t)を位相変調した時の被変調波s(t)の理論式である数式(4)を級数展開して2次以上の高調波の項を切り捨てた被変調波s(t)を表す被変調波記述式である数式(5)を取得する被変調波記述式取得部と、
前記数式(5)のうちで、前記搬送波c(t)と同相の項の係数として数式(6)で表される同相成分I(t)を生成する同相成分生成部と、
前記数式(5)のうちで、前記搬送波c(t)と直交する項の係数として数式(7)で表される直交成分Q(t)を生成する直交成分生成部と、
前記同相成分I(t)と前記直交成分Q(t)とで前記搬送波c(t)を直交変調し、前記数式(5)で表される前記搬送波の被変調波s(t)を出力する直交変調部と、
を有することを特徴とする変調器。

c(t)=cos(ωt)、但し、ω:搬送波角周波数、t:時間・・・(1)

(t)=msin(ωt)、但し、m:第1変調度、ω:第1角周波数、t:時間・・・(2)

(t)=msin(ωt)、但し、m:第2変調度、ω:第2角周波数、t:時間・・・(3)

(t)=cos{ωt+msin(ωt)+msin(ωt)}、
但し、m:第1変調度、m:第2変調度、ω:第1角周波数、ω:第2角周波数、t:時間・・・(4)

s(t)=J(m)J(m)cos(ωt)
-[2J(m)J(m)sin(ωt)+2J(m)J(m)sin(ωt)]sin(ωt)
=I(t)cos(ωt)-Q(t)sin(ωt) 、
但し、J、J:第1種ベッセル関数、m:第1変調度、m:第2変調度、ω:第1角周波数、ω:第2角周波数、t:時間・・・(5)

I(t)=J(m)J(m)、
但し、I(t):同相成分、J、J:第1種ベッセル関数、m:第1変調度、m:第2変調度、t:時間・・・(6)

Q(t)=2J(m)J(m)sin(ωt)+2J(m)J(m)sin(ωt)、
但し、Q(t):直交成分、J、J:第1種ベッセル関数、m:第1変調度、m:第2変調度、ω:第1角周波数、ω:第2角周波数、t:時間・・・(7)
【請求項2】
前記第1変調度mを取得する第1変調度取得部と、
前記第2変調度mを取得する第2変調度取得部を有し、
前記直交成分生成部が、
取得した前記第1変調度mと前記第2変調度mとに基づいて前記数式(5)の右辺第1項を第1トーン成分として生成する第1トーン成分生成部と、
取得した前記第1変調度mと前記第2変調度mとに基づいて前記数式(5)の右辺第2項を第2トーン成分として生成する第2トーン成分生成部と、を有し、
前記第1トーン成分生成部が、
前記第1変調度mと前記第2変調度mとに基づいて前記第1トーン成分の係数である第1トーン係数2J(m)J(m)を生成する第1トーン係数生成部と、
前記第1トーン成分の波動成分である第1トーン波sin(ωt)を発生する第1トーン波発生部と、
前記第1トーン係数2J(m)J(m)と前記第1トーン波sin(ωt)とを乗算する第1乗算回路とを有し、
前記第2トーン成分生成部が、
前記第1変調度mと前記第2変調度mとに基づいて前記第2トーン成分の係数である第2トーン係数2J(m)J(m)を生成する第2トーン係数生成部と、
前記第2トーン成分の波動成分である第2トーン波sin(ωt)を発生する第2トーン波発生部と、
前記第2トーン係数2J(m)J(m)と前記第2トーン波sin(ωt)とを乗算する第2乗算回路とを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の変調器。
【請求項3】
前記第1トーン成分生成部により生成される前記第1トーン成分と、前記第2トーン成分生成部により生成される前記第2トーン成分とを加算して、加算結果の前記直交成分Q(t)を前記直交変調部に出力する加算回路を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の変調器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の変調器と、
前記変調器から入力された被変調波s(t)を電波に変換して送信する送信部と、を有する、
ことを特徴とする信号送信機。
【請求項5】
変調器が
数式(1)で表される搬送波c(t)を発生し、
数式(2)で表される第1トーン信号a(t)と、数式(3)で表される第2トーン信号a(t)とで前記搬送波c(t)を位相変調した時の被変調波s(t)の理論式である数式(4)を級数展開して2次以上の高調波の項を切り捨てた被変調波s(t)を表す被変調波記述式である数式(5)を取得し、
前記数式(5)のうちで、前記搬送波と同相の項の係数として数式(6)で表される同相成分I(t)を生成し、
前記数式(5)のうちで、前記搬送波と直交する項の係数として数式(7)で表される直交成分Q(t)を生成し、
前記同相成分I(t)と前記直交成分Q(t)とで前記搬送波c(t)を直交変調し、前記搬送波の被変調波s(t)を出力する、
ことを特徴とする変調方法。

c(t)=cos(ωt)、但し、ω:搬送波角周波数、t:時間・・・(1)

(t)=msin(ωt)、但し、m:第1変調度、ω:第1角周波数、t:時間・・・(2)

(t)=msin(ωt)、但し、m:第2変調度、ω:第2角周波数、t:時間・・・(3)

(t)=cos{ωt+msin(ωt)+msin(ωt)}、
但し、m:第1変調度、m:第2変調度、ω:第1角周波数、ω:第2角周波数、t:時間・・・(4)

s(t)=J(m)J(m)cos(ωt)
-[2J(m)J(m)sin(ωt)+2J(m)J(m)sin(ωt)]sin(ωt)
=I(t)cos(ωt)-Q(t)sin(ωt)、
但し、J、J:第1種ベッセル関数、m:第1変調度、m:第2変調度、ω:第1角周波数、ω:第2角周波数、t:時間・・・(5)

I(t)=J(m)J(m)、
但し、I(t):同相成分、J、J:第1種ベッセル関数、m:第1変調度、m:第2変調度、t:時間・・・(6)

Q(t)=2J(m)J(m)sin(ωt)+2J(m)J(m)sin(ωt)、
但し、Q(t):直交成分、J、J:第1種ベッセル関数、m:第1変調度、m:第2変調度、ω:第1角周波数、ω:第2角周波数、t:時間・・・(7)
【請求項6】
前記変調器が
前記第1変調度mを取得し、
前記第2変調度mを取得し、
取得した前記第1変調度mと前記第2変調度mとに基づいて前記数式(7)の右辺第1項を第1トーン成分として生成し、
取得した前記第1変調度mと前記第2変調度mとに基づいて前記数式(7)の右辺第2項を第2トーン成分として生成し、
前記第1トーン成分の生成においては
前記第1変調度mと前記第2変調度mとに基づいて前記第1トーン成分の係数である第1トーン係数2J(m)J(m)を生成し、
前記第1トーン成分の波動成分である第1トーン波sin(ωt)を発生し、
前記第1トーン係数2J(m)J(m)と前記第1トーン波sin(ωt)とを乗算し、
前記第2トーン成分の生成においては
前記第1変調度mと前記第2変調度mとに基づいて前記第2トーン成分の係数である第2トーン係数2J(m)J(m)を生成し、
前記第2トーン成分の波動成分である第2トーン波sin(ωt)を発生し、
前記第2トーン係数と前記第2トーン波とを乗算する、
ことを特徴とする請求項5に記載の変調方法。
【請求項7】
前記変調器が、
前記第1トーン成分と前記第2トーン成分とを加算して、加算結果を前記直交成分Q(t)として生成する、
ことを特徴とする請求項6に記載の変調方法。
【請求項8】
信号送信機が
請求項5乃至7のいずれか一項に記載の変調方法で変調された被変調波s(t)を電波に変換して送信する、
ことを特徴とする信号送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変調器等に関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙探査機や人工衛星などと、地上局との間でトーン信号を搬送波に重畳させて送受信することで、宇宙探査機等と地上局との間の距離を測定(測距)する技術が知られている。この技術では、例えば、地上局からトーン信号を送信し、宇宙探査機等から返信させる。そして、宇宙探査機等がトーン信号を送信してから受信するまでの時間と光速に基づいて、地上局から宇宙探査機等までの距離を測定する(例えば、特許文献1)。
【0003】
ここで、一般的に、トーン信号の送信の時間間隔が、宇宙探査機等がトーン信号を送信してから受信するまでの時間より短い場合、トーン信号が重畳先の搬送波のどの位置にあるかが検出できないことがあり、測定の不確定さ(アンビュギュイティ)が生じる。
【0004】
特許文献1に記載の技術では、距離測定用の主トーン(第1トーン信号)と、アンビギュイティ除去用のコード(第2トーン信号)によって、トーン信号を構成することで、上記の測定の不確定さを解消している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63-040891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用文献1に記載の技術では測距用の第1トーン信号とアンビギュイティ除去用の第2トーン信号によって変調された搬送波(被変調波)が出力されるが、同時に第1トーン信号及び第2トーン信号の双方の高次高調波スプリアスも出力される。すなわち、これらのトーン信号の高次高調波スプリアス成分が、宇宙探査機等の被変調波に含まれる。
【0007】
この高次高調波スプリアスは、宇宙探査機等の数が多くなると、宇宙探査機等と地上局との間の通信に障害を生じさせることが知られている。近年、宇宙探査機等の数が急増し、測距信号のチャネルが逼迫している。宇宙探査機等の被変調波に含まれるトーン信号の高次高調波スプリアスが、チャネルが隣接する他の宇宙探査機等の通信の妨害になる恐れが生じていた。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、高次高調波スプリアスの発生を抑制したトーン信号を搬送波に重畳して、被変調波を生成することができる変調器等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の変調器は、数式(1)で表される搬送波c(t)を発生する搬送波発生部と、数式(2)で表される第1トーン信号a(t)と、数式(3)で表される第2トーン信号a(t)とで前記搬送波c(t)を位相変調した時の被変調波s(t)の理論式である数式(4)を級数展開して2次以上の高調波の項を切り捨てた被変調波s(t)を表す被変調波記述式である数式(5)を取得する被変調波記述式取得部と、前記数式(5)のうちで、前記搬送波c(t)と同相の項の係数として数式(6)で表される同相成分I(t)を生成する同相成分生成部と、前記数式(5)のうちで、前記搬送波c(t)と直交する項の係数として数式(7)で表される直交成分Q(t)を生成する直交成分生成部と、前記同相成分I(t)と前記直交成分Q(t)とで前記搬送波c(t)を直交変調し、前記数式(5)で表される前記搬送波の被変調波s(t)を出力する直交変調部と、を有する。
c(t)=cos(ωt)、但し、ω:搬送波角周波数t:時間・・・(1)

(t)=msin(ωt)、但し、m:第1変調度、ω:第1角周波数、t:時間・・・(2)

(t)=msin(ωt)、但し、m:第2変調度、ω:第2角周波数、t:時間・・・(3)

(t)=cos{ωt+msin(ωt)+msin(ωt)}、
但し、m:第1変調度、m:第2変調度、ω:第1角周波数、ω:第2角周波数、t:時間・・・(4)

s(t)=J(m)J(m)cos(ωt)
-[2J(m)J(m)sin(ωt)+2J(m)J(m)sin(ωt)]sin(ωt)
=I(t)cos(ωt)-Q(t)sin(ωt)、
但し、J、J:第1種ベッセル関数、m:第1変調度、m:第2変調度、ω:第1角周波数、ω:第2角周波数、t:時間・・・(5)

I(t)=J(m)J(m)、
但し、I(t):同相成分、J、J:第1種ベッセル関数、m:第1変調度、m:第2変調度、t:時間・・・(6)

Q(t)=2J(m)J(m)sin(ωt)+2J(m)J(m)sin(ωt)、
但し、Q(t):直交成分、J、J:第1種ベッセル関数、m:第1変調度、m:第2変調度、ω:第1角周波数、ω:第2角周波数、t:時間・・・(7)

また、本発明の信号送信機は、上記の変調器と、前記変調器から入力された被変調波を電波に変換して送信する送信部と、を有する。
【0010】
また、本発明の変調方法は、変調器が数式(1)で表される搬送波c(t)を発生し、数式(2)で表される第1トーン信号a(t)と、数式(3)で表される第2トーン信号a(t)とで前記搬送波c(t)を位相変調した時の被変調波s(t)の理論式である数式(4)を級数展開して2次以上の高調波の項を切り捨てた被変調波s(t)を表す被変調波記述式である数式(5)を取得し、前記数式(5)のうちで、前記搬送波と同相の項の係数として数式(6)で表される同相成分I(t)を生成し、前記数式(5)のうちで、前記搬送波と直交する項の係数として数式(7)で表される直交成分Q(t)を生成し、前記同相成分I(t)と前記直交成分Q(t)とで前記搬送波c(t)を直交変調し、前記搬送波c(t)の被変調波s(t)を出力する
【0011】
また、本発明のトーン信号送信方法は、上記の変調方法で変調された被変調波を電波に変換して送信する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果は、高次高調波スプリアスの発生を抑制したトーン信号を重畳した被変調波を生成することができる変調器等を提供できることである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態の変調器の構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態の変調器の動作を示すフローチャートである。
図3】第1の実施形態の変調器の被変調波のスペクトルの一例である。
図4】一般的な変調器の構成を示すブロック図である。
図5】一般的な変調器の被変調波のスペクトルの一例である。
図6】第2の実施形態の変調器の構成を示すブロック図である。
図7】第2の実施形態の変調器のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図8】第3の実施形態の信号送信機の構成を示すブロック図である。
図9】第3の実施形態の信号送信機の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお各図面の同様の構成要素には同じ番号を付し、説明を省略する場合がある。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の変調器10の構成を示すブロック図である。また図2は、変調器10の動作を示すフローチャートである。
【0016】
変調器10は、被変調波記述式取得部1と、同相成分生成部2と、直交成分生成部3と、搬送波発生部4と、直交変調部5とを有する。
【0017】
搬送波発生部4は、次の数式(1)で表される搬送波角周波数ωの搬送波c(t)を発生する。

c(t)=cos(ωt)、但し、ω:搬送波角周波数、t:時間・・・(1)

ここで、前記搬送波c(t)を数式(2)で表される第1トーン信号a1(t)と、数式(3)で表される第2トーン信号a2(t)とで前記搬送波c(t)を位相変調した時の被変調波s0(t)の理論式は数式(4)となる。

(t)=msin(ωt)、但し、m:第1変調度、ω:第1角周波数、t:時間・・・(2)

(t)=msin(ωt)、但し、m:第2変調度、ω:第2角周波数、t:時間・・・(3)

(t)=cos{ωt+msin(ωt)+msin(ωt)}、
但し、m:第1変調度、m:第2変調度、ω:第1角周波数、ω:第2角周波数、t:時間・・・(4)

数式(4)は、ベッセル関数を用いて数式(4-2)のように級数展開できることが知られている。例えば、竹内央、他、”IKAROSの工学実験機器:VLBI計測用マルチトーン送信器によるDelta-DOR実証実験”日本航空宇宙学会誌、第62巻、第11号(2014年11月)、P359-364を参照されたい。

(t)=J(m)J(m)cos(ωt)
-2J(m)J(m)sin(ωt)sin(ωt)
-2J(m)J(m)sin(ωt)sin(ωt)
+・・・(高次高調波の項)、
但し、J、Jは、第1種ベッセル関数・・・(4-2)

被変調波記述式取得部1は、上記の数式(4)を級数展開した数式(4-2)から2次以上の高調波の項を切り捨てた被変調波s(t)を表す被変調波記述式である数式(5)を取得する。

s(t)=J(m)J(m)cos(ωt)
-[2J(m)J(m)sin(ωt)+2J(m)J(m)sin(ωt)]sin(ωt)
=I(t)cos(ωt)-Q(t)sin(ωt)、
但し、J、J:第1種ベッセル関数、m:第1変調度、m:第2変調度、ω:第1角周波数、ω:第2角周波数、t:時間・・・(5)

同相成分生成部2は、搬送波c(t)と同相の項の係数として数式(6)で表される同相成分I(t)を生成する。

I(t)=J(m)J(m)、
但し、I(t):同相成分、J、J:第1種ベッセル関数、m:第1変調度、m:第2変調度、t:時間・・・(6)

直交成分生成部3は、搬送波c(t)と直交する項の係数として数式(7)で表される直交成分Q(t)を生成する。

Q(t)=2J(m)J(m)sin(ωt)+2J(m)J(m)sin(ωt)、
但し、Q(t):直交成分、J、J:第1種ベッセル関数、m:第1変調度、m:第2変調度、ω:第1角周波数、ω:第2角周波数、t:時間・・・(7)

直交変調部5は、搬送波c(t)を同相成分I(t)と直交成分Q(t)とで直交変調し、搬送波c(t)の被変調波s(t)を出力する。
【0018】
次に変調器10の動作について説明する。図2は変調器10の動作を示すフローチャートである。まず被変調波記述式取得部1が、数式(5)で表される被変調波s(t)の記述式を取得する(S101)。次に同相成分生成部2が、同相成分I(t)を生成し直交変調部5に出力する(S102)。また、直交成分生成部3が、直交成分Q(t)を生成し直交変調部5に出力する(S103)。搬送波発生部4が搬送波c(t)を発生し、直交変調部5に出力する(S104)。上記のS102-S104は同時に行われる。次に直交変調部5が、入力された同相成分I(t)と直交成分Q(t)とを用いて、搬送波c(t)を変調し、被変調波s(t)を出力する(S105)。
【0019】
次に、変調器10を用いて生成した被変調波s(t)の具体例について説明する。図3は、数値シミュレーションにより求めた第1の実施形態の変調器10の被変調波s(t)の周波数スペクトルの一例である。また比較のために一般的な変調器20の構成と被変調波s(t)の周波数スペクトルを図4、5に示す。図4は、一般的な変調器20の構成を示すブロック図であり、図5は、一般的な変調器20の被変調波の周波数スペクトルの一例である。
【0020】
図3の変調器10の被変調波s(t)のスペクトルでは、搬送波周波数成分と第1トーン周波数成分と第2トーン周波数成分とが現れている。一方で、高次高調波スプリアス成分は出現していない。これは、数式(5)に示すように、直交変調部5に入力する直交成分に高次高調波成分が含まれていないためである。
【0021】
次に、比較例の一般的な変調器20の構成と被変調波のスペクトルについて説明する。図4は、一般的な変調器20の構成を示すブロック図である。一般的な変調器20は、第1トーン信号生成部21と、第2トーン信号生成部22と、搬送波発生部23と、位相変調部24とを有している。位相変調部24には、搬送波と、第1トーン信号a(t)と、第2トーン信号a(t)とが入力され、位相変調部24は、入力された第1トーン信号a(t)、第2トーン信号a(t)で搬送波を位相変調し、被変調波s(t)を出力する。被変調波s(t)は数式(4-2)で表わされるものとなる。数式(4-2)は、右辺第4項以降に高次高調波の項を含んでいる。
【0022】
図5は、一般的な変調器20の被変調波27のスペクトルの一例である。図5の一般的な変調器20の被変調波27のスペクトルでは、搬送波周波数成分、第1トーン周波数成分、第2トーン周波数成分の他に、高次高調波スプリアス成分bが現れている。これは、数式(4-2)に示されているように、被変調波s(t)が高次高調波の項を含んでいるためである。
【0023】
図3の本実施形態の変調器10の被変調波s(t)のスペクトルと、図5の一般的な変調器20の被変調波s(t)のスペクトルとの比較から明らかなように、本実施形態の変調器10では、高次高調波スプリアス成分bの発生を抑制することができる。
【0024】
以上、第1の実施形態の変調器等について説明した。
【0025】
本発明の第1の実施形態における変調器10は、被変調波記述式取得部1と、同相成分生成部2と、直交成分生成部3と、搬送波発生部4と、直交変調部5とを有する。搬送波発生部4は、上記数式(1)で表される搬送波角周波数ωの搬送波c(t)を発生する。但し、tは時間である。搬送波c(t)を上記数式(2)で表される第1トーン信号a1(t)と上記数式(3)で表される第2トーン信号a(t)で位相変調した時の被変調波s(t)の理論式は数式(4)で表される。ここで、第1トーン信号は、第1変調度mと第1角周波数ωを用いて表され、第2トーン信号は、第2変調度mと第2角周波数ωを用いて表される。数式(4)はベッセル関数を用いて数式(4-2)のように級数展開することができる。なお、数式(4-2)の係数のJ、Jは第1種ベッセル関数である。被変調波記述式取得部1は、数式(4-2)から2次以上の高次高調波の項を切り捨てた被変調波記述式である数式(5)を取得する。同相成分生成部2は、上記数式(5)のうちで、搬送波c(t)と同相の項として上記数式(6)で表される同相成分I(t)を生成する。直交成分生成部3は、上記数式(5)のうちで、搬送波c(t)と直交する項の係数として数式(7)で表される直交成分Q(t)を生成する。直交変調部5は、搬送波c(t)を同相成分I(t)と直交成分Q(t)とで直交変調し、搬送波c(t)の被変調波s(t)を出力する。
【0026】
以上の構成では、搬送波を直交変調する時の同相成分および直交成分が、2次以上の高調波を含まないものになっている。このため、被変調波s(t)には2次以上の高調波が重畳されず、被変調波s(t)は高次高調波スプリアス成分bを含まないものになる。すなわち、高次高調波スプリアスの発生を抑制したトーン信号を重畳した被変調波を生成することができる変調器等を提供することができる。
【0027】
また、本発明の第1の実施形態における変調方法は、変調器10が、上記数式(1)で表される搬送波角周波数ωの搬送波c(t)を発生する。但し、tは時間である。搬送波c(t)を上記数式(2)で表される第1トーン信号a1(t)と上記数式(3)で表される第2トーン信号a(t)で位相変調した時の被変調波s(t)の理論式は数式(4)で表される。ここで、第1トーン信号は、第1変調度mと第1角周波数ωを用いて表され、第2トーン信号は、第2変調度mと第2角周波数ωを用いて表される。数式(4)はベッセル関数を用いて数式(4-2)のように級数展開することができる。なお、数式(4-2)のJ、Jは第1種ベッセル関数である。変調器10は、数式(4-2)から2次以上の高次高調波の項を切り捨てた被変調波記述式である数式(5)を取得する。そして変調器10は、上記数式(5)のうちで、搬送波c(t)と同相の項として上記数式(6)で表される同相成分I(t)を生成し、上記数式(5)のうちで、搬送波c(t)と直交する項の係数として数式(7)で表される直交成分Q(t)を生成する。さらに変調器10は、搬送波c(t)を同相成分I(t)と直交成分Q(t)とで直交変調し、搬送波c(t)の被変調波s(t)を出力する。
【0028】
以上の変調方法では、搬送波を直交変調する時の同相成分および直交成分が、2次以上の高次高調波を含まないものになっている。このため、被変調波s(t)に2次以上の高次高調波が重畳されず、被変調波s(t)は高次高調波スプリアス成分bを含まないものになる。すなわち、本実施形態の変調方法によれば、変調器10が、高次高調波スプリアスの発生を抑制したトーン信号を重畳した被変調波を生成することができる。
【0029】
(第2の実施形態)
本実施形態では、第1の実施形態の変調器10の具体的な構成例について説明する。図6は、第2の実施形態の変調器10の構成を示すブロック図である。変調器10は、被変調波記述式取得部110と、第1変調度取得部120と、第2変調度取得部130と、直交成分生成部200と、同相成分生成部300と、搬送波発生部400と、直交変調部500とを有している。ここで、直交成分生成部200は第1の実施形態の直交成分生成部3の一例、同相成分生成部300は同相成分生成部2の一例、搬送波発生部400は搬送波発生部4の一例、直交変調部500は直交変調部5の一例である。
【0030】
被変調波記述式取得部110は、被変調波s(t)を表す被変調波記述式を取得する。搬送波c(t)を上記数式(2)で表される第1トーン信号a1(t)と上記数式(3)で表される第2トーン信号a2(t)で位相変調した時の被変調波s0(t)の理論式は数式(4)で表される。2つのトーン信号で搬送波c(t)を位相変調した時の被変調波s(t)の理論式である数式(4)で表される。数式(4)はベッセル関数を用いて数式(4-2)のように級数展開することができる。被変調波s(t)を表す被変調波記述式は、数式(4-2)から2次以上の高次高調波の項を切り捨てたものであり、数式(5)で記述される。
【0031】
第1変調度取得部120は、予め設定された第1変調度mを取得する。第2変調度取得部130は予め設定された第2変調度mを取得する。第1変調度m、第2変調度mは予め設定されているものであり、例えば定数とすることができる。
【0032】
直交成分生成部200は、第1トーン成分生成部210と、第2トーン成分生成部220とを有している。
【0033】
第1トーン成分生成部210は、第1トーン係数生成部211と、第1トーン波発生部212と、第1乗算回路213とを備えている。
【0034】
第1トーン係数生成部211は、第1変調度mと第2変調度mと、数式(7)の右辺第1項とに基づいて、第1トーン成分Q(t)の係数2J(m)J(m)を生成する。
【0035】
第1トーン波発生部212は、第1トーン成分Q(t)の波動成分の第1トーン波sin(ωt)を発生する。
【0036】
第1乗算回路213は、第1トーン成分Q(t)の係数2J(m)J(m)と第1トーン波sin(ωt)とを乗算して、第1トーン成分Q(t)を出力する。
【0037】
第2トーン成分生成部220は、第2トーン係数生成部221と、第2トーン波発生部222と、第2乗算回路223とを備えている。
【0038】
第2トーン係数生成部221は、第1変調度mと第2変調度mと、数式(7)の右辺第2項とに基づいて、第2トーン成分Q(t)の係数2J(m)J(m)を生成する。
【0039】
第2トーン波発生部222は、第2トーン成分Q(t)の波動成分の第2トーン波sin(ωt)を発生する。
【0040】
また、同相成分生成部300は、第1変調度mと第2変調度mと数式(6)とに基づいて、同相成分I(t)を生成する。
【0041】
加算回路230は、第1乗算回路213から出力された第1トーン成分Q(t)と第2乗算回路223から出力された第2トーン成分Q(t)とを加算して直交成分Q(t)を直交変調部500に出力する。
【0042】
同相成分生成部300は、第1変調度mと第2変調度mと数式(7)とに基づいて、式7の同相成分I(t)=J(m)J(m)を生成する。例えば、第1変調度m、第2変調度mが定数の場合は、同相成分I(t)も定数となる。
【0043】
搬送波発生部400は、搬送波を発生し、搬送波c(t)を直交変調部500に出力する。
【0044】
直交変調部500は、加算回路230から出力された直交成分Q(t)と同相成分生成部300から出力された同相成分I(t)を用いて、搬送波c(t)を変調し、被変調波s(t)を出力する。この被変調波s(t)は、変調に用いる同相成分I(t)と直交成分Q(t)とが2次以上の高調波成分を含んでいないため、被変調波s(t)も2次以上の高調波成分を含まないものとなる。
【0045】
図7は、変調器10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。変調器10は、ハードウェアとして、例えば、第1正弦波発生回路910、第2正弦波発生回路920、第1乗算回路930、第2乗算回路940、加算回路950、搬送波発生回路960、直交変調回路970、プロセッサ980、記憶回路990を有する。
【0046】
例えば、変調器10の機能ブロックの第1トーン波発生部212は第1正弦波発生回路910に実装され、第2トーン波発生部222は第2正弦波発生回路920に実装される。また、例えば、第1乗算回路213、第2乗算回路223は、第1乗算回路930、第2乗算回路940に実装され、加算回路230は加算回路950に実装される。また、例えば、搬送波発生部400は搬送波発生回路960に実装され、直交変調部500は、直交変調回路970に実装される。また、例えば、被変調波記述式取得部110、第1変調度取得部120、第2変調度取得部130、第1トーン係数生成部211、第2トーン係数生成部221、同相成分生成部300は、プロセッサ980に実装される。記憶回路990は、予め設定された第1変調度m、第2変調度m、被変調波記述式、その他の設定値などを保持する。
【0047】
以上、第2の実施形態の変調器10について説明した。
【0048】
本発明の第2の実施形態における変調器10は、第1の実施形態における変調器10と同様の構成を有する。つまり、第2の実施形態における変調器10は、被変調波記述式取得部110と、同相成分生成部300と、直交成分生成部200と、搬送波発生部400と、直交変調部500とを有する。変調器10は、さらに、第1変調度mを取得する第1変調度取得部120と、第2変調度mを取得する第2変調度取得部130とを有する。また、直交成分生成部200は、第1トーン成分生成部210と第2トーン成分生成部220とを有する。直交成分生成部200は、第1トーン成分生成部210と、第2トーン成分生成部220とを有する。第1トーン成分生成部210は、取得した第1変調度mと第2変調度mとに基づいて数式(7)の右辺第1項を第1トーン成分として生成する。第2トーン成分生成部220は、第1変調度mと第2変調度mとに基づいて数式(7)の右辺第2項を第2トーン成分として生成する。また、第1トーン成分生成部210は、第1トーン係数生成部211と、第1トーン波発生部212と、第1乗算回路213とを有する。第2トーン係数生成部221は、第1変調度mと第2変調度mとに基づいて第1トーン成分の係数である第1トーン係数2J(m)J(m)を生成する。第1トーン波発生部212は、第1トーン成分の波動成分である第1トーン波sin(ωt)を発生する。第1乗算回路213は、第1トーン係数2J(m)J(m)と第1トーン波sin(ωt)とを乗算する。乗算により第1トーン成分Q(t)が得られる。第2トーン成分生成部220は、第2トーン係数生成部221と、第2トーン波発生部222と、第2乗算回路223とを有する。第2トーン係数生成部221は、第1変調度mと第2変調度mとに基づいて第2トーン成分の係数である第2トーン係数2J(m)J(m)を生成する。第2トーン波発生部222は、第2トーン成分の波動成分である第2トーン波sin(ωt)を発生する。第2乗算回路223は、第2トーン係数2J(m)J(m)と第2トーン波sin(ωt)とを乗算する。乗算により第2トーン成分Q(t)が得られる。
【0049】
上記の構成とすることにより、簡単な回路の構成で、2次以上の高調波成分を含まない第1トーン成分Q(t)と第2トーン成分Q(t)を生成することができる。
【0050】
また一態様では、変調器10の直交成分生成部200は第1トーン成分生成部210が生成する第1トーン成分Q(t)と第2トーン成分生成部220が生成する第2トーン成分Q(t)とを加算する加算回路230を有する。そして、加算結果の直交成分Q(t)を直交変調部500に出力する。
【0051】
上記の構成とすることにより、簡単な回路の構成で、2次以上の高調波成分を含まない第1トーン成分Q(t)と第2トーン成分Q(t)を加算し、高次高調波スプリアスを含まない直交成分Q(t)を生成することができる。
【0052】
また、本発明の第2の実施形態における変調方法は、変調器10が、第1変調度mを取得し、第2変調度mを取得する。そして、取得した第1変調度mと第2変調度mとに基づいて数式(7)の右辺第1項を第1トーン成分Q(t)として生成し、数式(7)の右辺第2項を第2トーン成分Q(t)として生成する。また、変調器10が、第1変調度mと第2変調度mとに基づいて第1トーン成分Q(t)の係数である第1トーン係数2J(m)J(m)を生成する。また変調器10が、第1トーン成分Q(t)の波動成分である第1トーン波sin(ωt)を発生し、第1トーン係数2J(m)J(m)と前記第1トーン波sin(ωt)とを乗算する。また変調器10が、第1変調度mと第2変調度mとに基づいて第2トーン成分Q(t)の係数である第2トーン係数2J(m)J(m)を生成する。また変調器10が、第2トーン成分Q(t)の波動成分である第2トーン波sin(ωt)を発生し、第2トーン係数2J(m)J(m)と前記第2トーン波sin(ωt)とを乗算する。
【0053】
上記の構成とすることにより、簡単な回路構成で実現できる方法で、2次以上の高調波成分を含まない第1トーン成分Q(t)と第2トーン成分Q(t)を生成することができる。
【0054】
また一態様では、変調器10の変調方法は、第1トーン成分Q(t)と第2トーン成分Q(t)とを加算して、加算結果の直交成分Q(t)として生成し、を直交変調部500に出力する。
【0055】
上記の構成では、簡単な回路の構成で実現できる方法で、2次以上の高調波成分を含まない第1トーン成分Q(t)と第2トーン成分Q(t)を加算しているので、高次高調波スプリアスを含まない直交成分Q(t)を容易に生成することができる。
【0056】
(第3の実施形態)
図8は、第3の実施形態の信号送信機10000の構成を示すブロック図である。また、図9は、第3の実施形態の信号送信機10000の動作を示すフローチャートである。
【0057】
図8に示すように、信号送信機10000は、第1または第2の実施形態の変調器10と、送信部1000を有する。送信部1000は、変調器10が出力した被変調波s(t)を電波に変換して、外部に送信する。
【0058】
次に信号送信機10000の動作について説明する。図9に示すように、まず変調器10が、搬送波c(t)を変調して被変調波s(t)を出力する(S201)。この被変調波s(t)は、既述の通り第1トーン周波数成分と第2トーン周波数成分とを含み、高次高調波スプリアス成分bを含まないものである。次に、送信部1000が、被変調波s(t)を電波に変換し、外部に送信する。
【0059】
本実施形態の信号送信機10000は、例えば、宇宙探査機に搭載されて、地上局から、宇宙探査機の軌道決定のための距離測定に好適に用いることができる。宇宙探査機の軌道決定の一つにDDOR(Delta-Differential One-Way Ranging)がある。DDORは、超長基線電波干渉法(Very Long Baseline Interferometry、VLBI)一つである。DDORでは、地球上で遠く離れた2つの地上局で宇宙探査機から送信されたトーン信号を同時に受信し、2つの地上局の間で信号伝搬時間の差(Differential One-way Range)を計測する。そして、天球面上で探査機の近傍にあり位置(方向)がよく分かっている電波星と探査機を交互に観測し、電波星と探査機の遅延量(DOR)同士の差(Delta)を算出する。この結果に基づいて、電波星を基準とする探査機の相対的な天球面上の位置(Delta-DOR観測量)を精密に計測できる。
【0060】
本実施形態の信号送信機10000は、DDORに用いるために宇宙探査機に搭載する信号送信機に好適である。
【0061】
以上、本実施形態の信号送信機10000について説明した。
【0062】
本発明の第3の実施形態における信号送信機10000は、第1の実施形態または第2の実施形態の変調器10と、変調器10から入力された被変調波を電波に変換して送信する送信部1000と、を有する。この構成により、信号送信機10000は、高次高調波スプリアス成分bを含まないトーン信号を送信することができる。
【0063】
また本実施形態のトーン信号送信方法によれば、信号送信機10000が、第1の実施形態または第2の実施形態の変調方法で変調された被変調波を電波に変換して送信する。この構成によれば、信号送信機10000は、高次高調波スプリアス成分bを含まないトーン信号を送信することができる。
【0064】
上述した第1乃至第3の実施形態の処理を、コンピュータに実行させるプログラムおよび該プログラムを格納した記録媒体も本発明の範囲に含む。記録媒体としては、例えば、磁気ディスク、磁気テープ、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ、などを用いることができる。
【0065】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1、110 被変調波記述式取得部
2、300 同相成分生成部
3、200 直交成分生成部
4、23、400 搬送波発生部
5 直交変調部
10 変調器
20 一般的な変調器
120 第1変調度取得部
130 第2変調度取得部
211 第1トーン係数生成部
212 第1トーン波発生部
221 第2トーン係数生成部
222 第2トーン波発生部
213 第1乗算回路
223 第2乗算回路
230 加算回路
400 搬送波発生部
500 直交変調部
1000 送信部
10000 信号送信機
I(t) 同相成分
第1変調度
第2変調度
Q(t) 直交成分
(t) 第1トーン成分
(t) 第2トーン成分
s(t) 被変調波
(t) 被変調波
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9