(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008715
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】起立着座補助装置
(51)【国際特許分類】
A61G 5/14 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
A61G5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021131806
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】395013164
【氏名又は名称】土佐電子工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】増田 和俊
(72)【発明者】
【氏名】岡村 斉
(72)【発明者】
【氏名】戒田 健一
(72)【発明者】
【氏名】増田 純弥
(57)【要約】
【課題】本発明は踏ん張り力が少しは残っており、少しの介助があれば自分で起立や着座できる人がどこにでも持っていくことができ、さらに狭い場所でも使うことができる起立着座補助装置を提供するものである。
【解決手段】起立着座を支援する補助装置で、人の腹部や上半身をのせる支持体である鞍部7と、前記鞍部につながっている回転可能な構造体20と、その構造体は、伸縮自在な機能と、所定の位置で停止する機能を有し、前記機能を制御する装置と動力源を具備してなるもので、鞍部7に腹をのせ、伸縮機能を作動させることにより、構造体をのばし、腹が持ち上がり、その結果、腰が浮き、起立することができる。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
起立着座を支援する補助装置で、
人の腹部や上半身をのせる支持体である鞍部と、
前記鞍部につながっている回転可能な構造体と、
その構造体は、伸縮自在な機能と、所定の位置で停止する機能を有し、
前記機能を制御する装置と動力源を備えることを特徴とする、起立着座補助装置。
【請求項2】
前記構造体を制御する機能は、
少なくとも、人の血圧・脈拍または体温の一つ以上を測定するセンサーを備え、
測定した結果に応じて、上げ下げの作動許可を与え、
または前記測定結果に応じて速度を制御する機能を有することを特徴とする、請求項目1に記載の起立着座補助装置。
【請求項3】
起立着座補助装置は、構造体の下部に台座が備わっていることによって、垂直な状態で使用できることを特徴とする、請求項1および2に記載の起立着座補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足腰の踏ん張り力が不足して、自力で起立や着座する際に、介助が必要な人に対して、自立支援をおこなう装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、足腰の踏ん張り力が不足して、自力で起立や着座することが難しい人のための支援装置として、下記特許文献1~4に開示されているようなものがある。
【0003】
特許文献1の発明は、自立支援という課題解決には向いているが、被介護者を起こすための仕掛けが大きくなるため、ある程度の広さを確保しなければならないという問題がある。
【0004】
一方、特許文献2は、被介護者を例えば椅子から立ち上がらせるために、必ず介護者の操作が必要であり、かつ被介護者の体格に合わせた高さの調整が事前に必要となるため、自力で起き上がらせることは困難である。
【0005】
さらに、特許文献3の発明およびは特許文献4の発明は、装置そのものが椅子と一体化しているため、前記装置が備わった特定の椅子に腰かけていない時は、装置が使えなく、いつでも、どこでも介助できることができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-166843
【特許文献2】特開2006-325868
【特許文献3】特許第4583812
【特許文献4】特許第6002394
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ある程度自力での起立や着座できる人のためには杖がある。ほとんど自力で起立や着座することができない、言い換えると踏ん張り力がない人のためには、高価で大型になるが、立ち上がりや移乗をサポート機器はある。しかし、若干踏ん張り力が残っており、人が横で介助できる人に対して、小型で安価な補助装置がないのが現実である。
【0008】
本発明の目的は、踏ん張り力が少しは残っており、少しの介助があれば自分で起立や着座することができる人が、どこにでも持っていくことができ、さらに狭い場所でも使うことができる、起立着座を補助する装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明において、起立着座を支援する補助装置で、人の腹部や上半身をのせる支持体である鞍部と、前記鞍部につながっている回転可能な構造体と、その構造体は、伸縮自在な機能と、所定の位置で停止する機能を有し、前記機能を制御する装置と動力源を具備してなるものである。
【0010】
かかる構成において、鞍部に腹をのせ、伸縮機能を作動させることにより、構造体をのばし、腹が持ち上がり、その結果、腰が浮き、起立することができる。
【0011】
第2の発明において、前記構造体を制御する機能は、少なくとも、人の血圧・脈拍または体温の一つ以上を測定するセンサーを備え、測定した結果に応じて、上げ下げの作動許可を与え、または前記測定結果に応じて速度を制御する機能を具備してなるものである。
【0012】
かかる構成において、もし使用者の体調が悪い時、例えば血圧が低い時には、構造体の伸縮機能のスイッチが入っても、構造体の伸長機能を作動させないで、アラームをだすことにより、使用者ならびに周りにいる人へ伝えるようにすることができる。
【0013】
第3の発明において、起立着座補助装置は、構造体の下部に台座が備わっていることによって、垂直な状態で使用できる機能を具備してなるものである。
【0014】
かかる構成において、鞍部に腹を乗せ、構造体に伸長の動作指令を与えた場合、本発明の補助装置が垂直に立っているため、伸縮装置が垂直方向に作動し、補助装置が倒れることなく、安全に作動することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、足の踏ん張り力がなくなった被介護者が自立するできること、および、二人介護で行っていたことを一人介護で可能になり、介護現場の人手不足に貢献することができる。また、本発明は小型のため、使用する場所の制約を受けないものであり、自立支援に向けての有効なツールにもなる。さらに、体調管理センサーをつければ、被介護者の体調に配慮した制御ができる。
【発明を実施するための形態】
【実施例0016】
以下、本発明の起立着座補助装置1を具体化した一実施例について、図で示し説明する。
図1は、伸びる前の状態の側面図。
図2は、伸びる前の状態の正面図。
図3は、伸びた状態の側面図。
図4は、伸びた状態の正面図である。
【0017】
次に図を見ながら伸縮の動作について説明を行う。
図1~
図4において、太さの異なる第1の筐体3と第2の筐体4とを伸縮可能に連結して、太いほうが第1の筐体3で、細いほうが第2の筐体4で、第2の筐体4を第1の筐体3に差し込む構造になっており、第1の筐体3と第2の筐体4で構造体を構成している。第2の筐体4の先端には、腹部または上半身をのせる鞍7があり、回転可能にするボルト6を介して筐体4とつながっている。鞍7には手でつかむバー2が取り付けられている。バー2は前記構造体の伸縮を制御するスイッチの機能が備わっており、人が鞍7に上半身または腹部を乗せた上状態でバー2を手前に引く、
図1で説明するとバー2を右側に移動する、ことにより、引いている間、第2の筐体4が上昇し続けるようになっている。バー2を持つ手を放すまたは引くことをやめると、上昇する動作が止まるようになっている。またバー2を押す、
図1で説明するとバー2を左側に移動する、ことにより、押している間、下降し続けるようになっている。上昇動作、下降動作、両方とも誤動作を防ぐために、鞍7に体重がかかってないときは、バー2を操作しても上昇・下降の動作はしないようにすることもできる。さらに、起立着座補助装置1が垂直に立っていない場合は、上昇・下降の動作はしないようにすることもできる。
【0018】
次に、上昇・下降の動作原理を実現した第1の実施例について、図を見ながら構造体20の伸縮の動作原理について説明する。
図5は、構造体20の伸びる前の状態の側面図である。
図6は、構造体20の伸びる前の状態の正面図。
図7は、構造体20の伸びた状態の側面図。
図8は、構造体20の伸びた状態の正面図である。
【0019】
図5において、モーター16の回転軸に、プーリー17が固定されており、モーター16の回転に合わせてプーリー17が回転する。プーリー17にはワイヤー18が取り付けられており、ワイヤー18は、滑車15を経由して、第1の筐体3に固定された滑車14を経由し、第2の筐体4に固定された滑車13を経由し、同じく第2の筐体4に固定された滑車11を経由し、同じく第2の筐体4に固定された滑車10を経由し、同じく第2の筐体4に固定された滑車12を経由し、第1の筐体3のワイヤー固定場所19で固定される。
【0020】
モーター16には電源が供給されており、さらにバー2にはスイッチが連動されており、そのスイッチの入り方によりモーターの回転方向が異なるようになっている。この場合は、
図1においてバー2が左に移動している場合モーター16は、
図5において左回転を行い、
図1においてバー2が右に移動している場合は、モーター16が
図5において右回転を行う。バー2を離すとモーター16が止まるようになっていても構わないし、バー2を離すとモーター16はそのまま回転を続け、あらかじめ定められた分伸びると止まるようになっていても構わない。
【0021】
モーター16が止まっている間は、例えば、安全のためワイヤー18に負荷がかかっても、モーター16が回転しない様クラッチによるロック機構が備わっている。前記ロック機構は、電源がモーター16に供給されないときも有効になっている。モーター16が左回転をすると、プーリー17にワイヤーが巻き取られ、
図7のように第2の筐体4が上昇する。
図7のように第2の筐体4が上昇している状態で、モーター16が右回転すると、プーリー17に巻き取られたワイヤーがほどかれ、第2の筐体4が下降する。これら上昇・下降動作において、鞍7に重量を測る機能があり、誤動作防止のため、ある程度の重量が鞍1にかからないと、バーを操作したときに上昇・下降動作を行わないようにすることもできる。
【0022】
またバー2の動作方向により上昇・下降を行うが、バー2の動作方向が逆でも構わない。すなわち、
図1において、バー2を左方向に移動することにより筐体4が上昇し、バー2を右方向に移動することにより筐体4が下降する。さらに、バー2を動かす代わりに、鞍7やバー2に、例えば押しボタンのようなスイッチを取り付け、そのスイッチを手や指で動作させることにより上昇・下降を行わせても構わない。さらに、前記スイッチ機能を有線リモコンまたは無線リモコンにより、起立着座補助装置から離すことも可能である。例えば、介助者がそれらリモコンを操作してもいいし、非介助者が操作しても構わない。
【0023】
また、図示していないが、第2の筐体4が第1の筐体3に対して、相対的に伸縮を行うために移動する際に、伸縮方向に直角な平面内において、第1の筐体3、第2の筐体4の前記平面内において、相対的移動が極力少なくなっており、ぶれないで、まっすぐに伸縮するような構造になっている。
【0024】
図9・
図10は、上昇・下降の動作原理を実現した構造体20の第2の実施例である。
図9において、モーター31には、ボールねじ30がモーター31の回転軸に取り付けられており、ボールねじ30が回転することにより、第2の筐体4に固定して取り付けられた雌ねじ32と勘合し、ボールねじの回転方向に従い、第2の筐体4が伸縮する。
【0025】
例えば、モーター31の回転軸に取り付けられたボールねじ30が、左回転すると、第2の筐体4が伸び、逆にボールねじ30が右回転すると、第2の筐体4が縮む。
図10は、モーター31が左回転し、伸びている状態を表している。配線は図示してないが、モーター31には電源が供給されており、実施例2のモーターの制御に関しては、実施例1と同様である。
【0026】
すなわち、バー2にはスイッチが連動されており、そのスイッチの入り方によりモーターの回転方向が異なるようになっている。例えば、
図1においてバー2が左に移動している場合モーター31は、左回転を行い、
図1においてバー2が右に移動している場合は、モーター31は右回転を行う。バー2を離すとモーター31が止まるようになっていても構わないし、バー2を離すとモーター31はそのまま回転を続け、あらかじめ定められた分伸びると止まるようになっていても構わない。
【0027】
モーター31が止まっている間は、モーター31が回転しないように、クラッチによるロック機構が備わっている。電源がモーター31に供給されないときも前記ロック機構は、有効になっている。図示してないが、鞍7に重量を測る機能があり、誤動作防止のため、ある程度の重量が鞍7にかからないと、バーを操作しても上昇、下降動作を行わないようにすることもできる。
【0028】
またバー2の動作方向により上昇下降を行うが、バー2の動作方向が逆でも構わない。すなわち、
図1において、バー2を右方向に移動することにより筐体4が上昇し、
図1において、バー2を左方向に移動することにより筐体4が下降する。さらに、バー2を動かす代わりに、鞍7やバー2に、例えば押しボタンのようなスイッチを取り付け、そのスイッチを手や指で動作させることにより上昇下降を行わせても構わない。さらに前記スイッチ機能を有線リモコンまたは無線リモコンにより、起立着座補助装置から離すことも可能である。例えば介助者がそれらリモコンを操作してもいいし、非介助者が操作しても構わない。
【0029】
【0030】
図13・
図14は、ボールねじ43が、マジックハンド構造40に固定されている雌ねじ41と勘合しており、モーター42の回転に応じて、マジックハンド構造40が伸長する様子を示している。例えばモーター42が左回転することにより、マジックハンド構造40は伸長し、逆にモーター42が右回転すると、マジックハンド構造40は縮小し、
図11・
図12のようになる。
【0031】
図示してないが、モーター42には電源が供給されており、実施例3のモーターの制御に関しては、記述は省略するが、実施例1、実施例2と同様である。
【0032】
図15は、起立着座補助装置1にバイタル情報を計測できる装置を取り付けた状態の俯瞰図である。バー2を握って、昇降を操作する場合において、バー2を握る前に、血圧や脈拍を計測できる装置50に腕を通してから、握る。また、バー2で、手で握る部分にセンサーをあらかじめ入れておくことにより、体温や脈拍や体脂肪率などを計測することもできる。血圧、脈拍計測装置および体温、脈拍、体脂肪などの計測装置からは、図示していないが、昇降を制御する制御装置に、それぞれの数値が送られるようになっており、それぞれの数値が許容範囲に入っていないときは、ランプをつけたり、音が鳴ったりする警告を出し、バー2を操作しても、昇降しないようになっている。制御装置には、許容範囲を切り替える機能も付いており、利用者の健康状態、体力によって操作できるようにすることもできる。以上述べたような各種計測装置は、実施例1・実施例2・実施例3のいずれにも取り付けることが可能で、それぞれの実施例の制御装置に計測数値が送られるようになっている。
【0033】
図16・
図17・
図18は、本発明の起立着座補助装置1の使用例を示した図であり、図に従って順番に説明していく。
図16は、使用者51が腰かけている状態で、起立着座補助装置1を使用する前の状態を示している。
図17は、起立着座補助装置1を足の間にセットし、構造体20が伸びていない状態で、使用者51のおなかを起立着座補助装置1の上の鞍7に乗せた状態で、レバー2を握っている状態を示している。
図18は、使用者がスイッチを入れることにより、構造体20が伸長し、使用者51の腰が上がっている状態を示している。腰が浮けば、起立することができる。また、図示していないが、使用者51が起立した状態で、おなかを鞍7にのせ、レバー2を握ってスイッチを入れることにより構造体20を縮めることにより、踏ん張り力がなくても着座することができる。
本発明は、一般家庭の在宅介護、各種老人ホームの入所介護、一般病院の各診療科のリハビリなどを含め、ほぼすべての生活における起立支援が必要とされる現場で使うことができる。