(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087194
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】同軸ケーブルおよび放射線検出器
(51)【国際特許分類】
G01T 7/00 20060101AFI20230616BHJP
H01B 7/02 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
G01T7/00 A
H01B7/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201436
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】石澤 和哉
(72)【発明者】
【氏名】疋田 憲之
【テーマコード(参考)】
2G188
5G309
【Fターム(参考)】
2G188BB09
2G188CC01
2G188CC05
2G188DD35
5G309PA02
(57)【要約】
【課題】信号ノイズの発生を低減できる同軸ケーブルを提供する。
【解決手段】同軸ケーブル12は、芯線20と、金属製の管状で、芯線20を同軸状に覆う複数の被覆21と、芯線20と最内側の被覆21との間、および複数の被覆21の間にそれぞれ充填される粉末状の絶縁材22と、芯線20と最内側の被覆21との間を気密に封止する第1気密部23と、内側の被覆21とこの内側の被覆21よりも外側の被覆21との間を気密に封止する第2気密部24と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線と、
金属製の管状で、前記芯線を同軸状に覆う複数の被覆と、
前記芯線と最内側の前記被覆との間、および複数の前記被覆の間にそれぞれ充填される粉末状の絶縁材と、
前記芯線と最内側の前記被覆との間を気密に封止する第1気密部と、
内側の前記被覆とこの内側の前記被覆よりも外側の前記被覆との間を気密に封止する第2気密部と
を備えることを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項2】
前記第2気密部は、内側の前記被覆に気密に取り付けられる金属製の第1取付部と、この第1取付部が取り付けられる内側の前記被覆よりも外側の前記被覆に気密に取り付けられる金属製の第2取付部と、前記第1取付部と前記第2取付部とを気密に連結するとともに電気的に絶縁する絶縁部とを有する
ことを特徴とする請求項1記載の同軸ケーブル。
【請求項3】
前記第2気密部は、内側の前記被覆とこの内側の前記被覆よりも外側の前記被覆との間に介在する気体が別の気体に置換された状態で封止される置換封止部を有する
ことを特徴とする請求項1または2記載の同軸ケーブル。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか一記載の同軸ケーブルを備える
ことを特徴とする放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、同軸ケーブルおよび放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
強い放射線環境でパルス計測を行う放射線検出器の信号伝送ケーブルには、同軸ケーブルが使用されている。この同軸ケーブルは、中心に芯線があり、この芯線を囲むように金属製で管状の被覆が配置され、これら芯線と被覆の間に粉末状の絶縁材が充填されている。また、一重目の被覆を囲むように二重目の金属製で管状の被覆が配置され、これら一重目の被覆と二重目の被覆との間に粉末状の絶縁材が充填されている二重被覆構造の同軸ケーブルがある。
【0003】
二重被覆構造の同軸ケーブルは、一重目の被覆と二重目の被覆との間が開放状態にあることがある。これは、一重目の被覆と二重目の被覆との間が開放状態でも、絶縁抵抗が所定値以上であれば電気的にフローティングされるため、信号ノイズの発生への影響が少ないことによる。
【0004】
しかしながら、湿度の影響を受けやすい環境では、一重目の被覆と二重目の被覆との間が開放状態にあると、一重目の被覆と二重目の被覆との間に充填されている粉末状の絶縁材の隙間に外部から湿分が侵入して絶縁抵抗が低下し、信号ノイズの発生の原因となることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、信号ノイズの発生を低減できる同軸ケーブルおよび放射線検出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の同軸ケーブルは、芯線と、金属製の管状で、芯線を同軸状に覆う複数の被覆と、芯線と最内側の被覆との間、および複数の被覆の間にそれぞれ充填される粉末状の絶縁材と、芯線と最内側の被覆との間を気密に封止する第1気密部と、内側の被覆とこの内側の被覆よりも外側の被覆との間を気密に封止する第2気密部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態を示す同軸ケーブルを備えた放射線検出器の側面図である。
【
図3】同上同軸ケーブルの第2気密部の拡大断面図である。
【
図4】第2の実施形態を示す同軸ケーブルの第2気密部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、第1の実施形態を、
図1ないし
図3を参照して説明する。
【0010】
図1に、例えば中性子などの放射線を検出する放射線検出器10を示す。放射線検出器10は、放射線を検出する検出器本体11と、この検出器本体11で放射線の検出に応じて発生した電気信号を測定器などに伝送する同軸ケーブル12とを備えている。
【0011】
検出器本体11は、管状の密封容器内に、陰極および陽極が配置されるとともに、電離ガスが封入されている。そして、放射線が密封容器内に入射すると、電離ガスが電離し、電離した電子が陽極に収集され、陽極に電気信号が発生するように構成されている。
【0012】
また、同軸ケーブル12は、放射線環境でも対応可能とする無機同軸ケーブルが用いられ、検出器本体11の陽極に発生した電気信号を測定器などに伝送する。同軸ケーブル12は、ケーブル部13と、このケーブル部13の両端に設けられたコネクタ部14とを備えている。コネクタ部14が検出器本体11または測定器に装着される。
【0013】
図2に示すように、同軸ケーブル12は、芯線20と、この芯線20を同軸状または同心円状に覆う複数の被覆21と、これら芯線20と被覆21との間、および複数の被覆21の間にそれぞれ充填される粉末状の絶縁材22と、最内側の被覆21の両端部で芯線20と最内側の被覆21との間をそれぞれ気密に封止する第1気密部23と、内側の被覆21とこの内側の被覆21よりも外側の被覆21の両端部との間をそれぞれ気密に封止する第2気密部24とを備えている。これら芯線20、複数の被覆21および絶縁材22によって同軸状のケーブル部13が構成されている。
【0014】
芯線20は、導体であり、例えば銅製の細いワイヤーが用いられている。芯線20は、検出器本体11の陽極に電気的に接続され、検出器本体11での放射線の検出に応じて陽極に発生した電気信号を測定器などに伝送する。
【0015】
被覆21は、芯線20を囲むように覆う一重目(一層目)の内側被覆である内被21aと、この内被21aよりも大径で内被21aを囲むように覆う二重目(二層目)の外側被覆である外被21bとが含まれている。内被21aおよび外被21bは、芯線20に対して絶縁材22を介して同軸状に配置されている。内被21aおよび外被21bは、例えばステンレスなどの金属製で、管状または筒状またはパイプ状に形成されている。なお、本実施形態では内被21aの厚みが外被21bの厚みよりも厚い例を示すが、外被21bの厚みが内被21aの厚みよりも厚くてもよく、あるいは内被21aの厚みと外被21bの厚みとが同じ厚みであってもよい。
【0016】
外被21bは、同軸ケーブル12の長手方向(軸方向)の領域のうち、少なくともシールド性能を確保したい領域に配置されている。本実施形態では、例えば、同軸ケーブル12の一端部は検出器本体11とともに放射線の被検出対象の装置内などに配置され、同軸ケーブル12の他端部は測定器などに配置され、同軸ケーブル12の中間部は放射線環境にさらされるような場合において、同軸ケーブル12の両端部間の中間部に外被21bが配置され、同軸ケーブル12の両端部は内被21aのみとされている。外被21bの長手方向の長さは内被21aの長さよりも短く、同軸ケーブル12の中間部のみ外被21bで覆われた二重被覆構造とされ、同軸ケーブル12の両端部は外被21bで覆われない一重被覆構造とされている。さらに、内被21aの長さは芯線20の長さよりも短く、内被21aの両端部から芯線20の両端部が突出され、この芯線20の両端部がコネクタ部14に配置されている。
【0017】
絶縁材22は、粉末状の例えばAl2O3やSiO2など無機絶縁材料で構成されている。絶縁材22は、芯線20と内被21aとの間に充填される一重目(一層目)の内側絶縁材22aと、内被21aと外被21bとの間に充填される二重目(二層目)の外側絶縁材22bとが含まれている。各絶縁材22a,22bは、充填された状態で管状に形状保持され、芯線20に対して内被21aおよび外被21bが同軸状に配置されるとともに、芯線20と内被21aとの間および内被21aと外被21bとの間に1×105Ω程度またはその値以上の所定の絶縁抵抗が確保されている。
【0018】
第1気密部23は、同軸ケーブル12の両端部において、芯線20の端部と内被21aの端部とを電気的に絶縁状態で保持し、内側絶縁材22aが充填された芯線20と内被21aとの間を気密に封止している。第1気密部23は、検出器本体11や測定器に装着されるコネクタ部14と兼用されていてもよい。検出器本体11に装着されたコネクタ部14は、芯線20が検出器本体11の陽極に電気的に接続される。第1気密部23は、第2気密部24がケーブル部13に取り付けられた後に、ケーブル部13の端部に取り付けられる。
【0019】
図3に示すように、第2気密部24は、内被21aと外被21bの端部との間に取り付けられ、外側絶縁材22bが充填された内被21aと外被21bとの間を気密に封止している。第2気密部24は、内被21aの周面に気密に取り付けられる例えばステンレスなどの金属製の第1取付部30と、この第1取付部30が取り付けられる内被21aよりも外側の被覆21である外被21bの周面に気密に取り付けられる例えばステンレスなどの金属製の第2取付部31と、これら第1取付部30と第2取付部31とを気密に連結するとともに電気的に絶縁する絶縁部32とを有している。
【0020】
第1取付部30は、筒状または管状で、一端側に内被21aの外径に対応して小径の内被取付部33が形成され、他端側に絶縁部32の外径に対応して一端側よりも大径の絶縁部取付部34が形成されている。第1取付部30の絶縁部取付部34は、絶縁部32の周面に例えばろう付けによって気密に取り付けられている。
【0021】
第2取付部31は、筒状または管状で、一端側に外被21bの外径に対応して小径の外被取付部35が形成され、他端側に絶縁部32の外径に対応して一端側よりも大径の絶縁部取付部36が形成されている。第2取付部31の絶縁部取付部36は、絶縁部32の周面に例えばろう付けによって気密に取り付けられている。
【0022】
絶縁部32は、例えばAl2O3やSiO2など無機絶縁材料で筒状に焼結して成形された成形品である。絶縁部32の中心には、内被21aの外径よりも大きく、内被21aが挿通する挿通孔37が設けられている。絶縁部32の外径は、外被21bよりも大きく設けられている。絶縁部32の周面の両端部に、第1取付部30の絶縁部取付部34および第2取付部31の絶縁部取付部36がそれぞれ例えばろう付けによって気密に取り付けられている。
【0023】
そして、第2気密部24は、ケーブル部13の各端部側から内被21aに挿通され、第2取付部31の外被取付部35が外被21bに挿通され、第1取付部30の内被取付部33が内被21aの周面に例えば溶接やろう付けによって気密に取り付けられ、第2取付部31の外被取付部35が外被21bの周面に例えば溶接やろう付けによって気密に取り付けられる。
【0024】
第2気密部24により、外側絶縁材22bが充填された内被21aと外被21bとの間を気密に封止し、粉末状の外側絶縁材22bの隙間に外部からの湿分が侵入するのを防ぐことができる。そのため、外側絶縁材22bの絶縁抵抗の低下を抑制し、信号ノイズの発生を低減できる。
【0025】
同軸ケーブル12の被覆21間に一度湿分が侵入してしまうと、湿分がなくなるまで長期的に信号ノイズが発生する原因となり、また、湿分を除去する手段として同軸ケーブル12を加熱して回復することも可能であるものの、湿分を除去するのに多くの時間を要することになるが、第2気密部24を付加することでこのような問題を解消できる。
【0026】
第2気密部24は、内被21aに気密に取り付けられる金属製の第1取付部30と、この第1取付部30が取り付けられる内被21aよりも外側の被覆21である外被21bに気密に取り付けられる金属製の第2取付部31と、これら第1取付部30と第2取付部31とを気密に連結するとともに電気的に絶縁する絶縁部32とを備えた構成であるため、内被21aと外被21bとの間の気密性を確保しながら、内被21aと外被21bを電気的に分離できる。
【0027】
また、第2気密部24は、外側絶縁材22bが充填された内被21aと外被21bとの間を気密に封止するだけでも、防湿効果が得られ、外側絶縁材22bの絶縁性を確保できるが、第2気密部24の内側を真空にしたり、不活性ガスと置換し、外側絶縁材22bの絶縁性を高めるようにしてもよい。
【0028】
この場合、
図4で示す第2の実施形態のように、第2気密部24は、内側の被覆21とこの内側の被覆21よりも外側の被覆21との間に介在する気体が別の気体に置換された状態で封止される置換封止部40を有するように構成してもよい。
【0029】
置換封止部40においては、第2取付部31(第1取付部30でもよい)の一部に置換孔41が設けられ、この置換孔41を通じて第2気密部24の内側および内被21aと外被21bとの間の気体が抜かれて真空状態とされた後、置換孔41を通じて第2気密部24の内側および内被21aと外被21bとの間に例えばアルゴンや窒素などの不活性ガスが充填され、最後に置換孔41が封止栓42により封止されている。
【0030】
なお、第2気密部24は、絶縁材料のみで形成し、内被21aと外被21bにそれぞれ気密に取り付けることで、気密性を確保するとともに内被21aと外被21bを電気的に分離するようにしてもよい。
【0031】
また、外被21bおよび外側絶縁材22bは、内被21aの端部または端部近傍まで延長されていてもよい。この場合、第1気密部23と第2気密部24とは一体に設けられてもよい。
【0032】
また、同軸ケーブル12は、内被21aと外被21bの二重被覆構造であったが、さらに被覆21を同軸状に配置し、三重以上の被覆構造としてもよい。この場合、一重目の被覆21と二重目の被覆21との間、二重目の被覆21と三重目の被覆21との間というように、それぞれの重なり毎に個別の第2気密部24を用いて気密に封止してもよいし、あるいは、例えば、内被21aと例えば三重目などの最外側の被覆21との間を1つの第2気密部24で一括して気密に封止してもよい。
【0033】
また、同軸ケーブル12は、放射線検出器10以外にも、信号伝送ケーブルとして使用できる。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
10 放射線検出器
12 同軸ケーブル
20 芯線
21 被覆
22 絶縁材
23 第1気密部
24 第2気密部
30 第1取付部
31 第2取付部
32 絶縁部
40 置換封止部