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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087195
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 29/08 20060101AFI20230616BHJP
【FI】
B66B29/08 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201437
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【弁理士】
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】物部 愛
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321AA04
3F321AA11
3F321FB04
(57)【要約】
【課題】本発明は、乗り口か降り口かを容易に判別することができる乗客コンベアを提供することを課題とし、また、上りか下りかを容易に判別することができる乗客コンベアを提供することを課題とする。
【解決手段】乗客コンベアは、乗り口4Aにおいて乗客が手で触ることができる所定の高さ位置に、乗り口4Aから搬送部2に向かう方向性を有する立体形状部50f,50g及び乗客コンベアの上り下りの傾きに対応して傾く立体形状部50d,50f,50gを方向表示部として備える表示体5を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路に沿って循環駆動される無端搬送体により乗客を搬送する搬送部と、
搬送部に対する乗り口及び降り口の乗降口とを備え、
乗り口において乗客が手で触ることができる所定の高さ位置に、乗り口から搬送部に向かう方向性を有する立体形状部を方向表示部として備える表示体を備え、
降り口において乗客が手で触ることができる所定の高さ位置に、搬送部から降り口に向かう方向性を有する立体形状部を方向表示部として備える表示体を備える
乗客コンベア。
【請求項2】
通路に沿って循環駆動される無端搬送体により乗客を階上又は階下に搬送する搬送部と、
搬送部に対する乗り口及び降り口の乗降口とを備え、
乗り口及び降り口において乗客が手で触ることができる所定の高さ位置に、乗客コンベアの上り下りの傾きに対応して傾く立体形状部を方向表示部として備える表示体を備える
乗客コンベア。
【請求項3】
通路に沿って循環駆動される無端搬送体により乗客を階上又は階下に搬送する搬送部と、
搬送部に対する乗り口及び降り口の乗降口とを備え、
乗り口において乗客が手で触ることができる所定の高さ位置に、乗り口から搬送部に向かう方向性を有する立体形状部及び乗客コンベアの上り下りの傾きに対応して傾く立体形状部を方向表示部として備える表示体を備える
乗客コンベア。
【請求項4】
通路の両側に通路に沿って設けられるハンドレール部を備え、
表示体は、乗降口においてハンドレール部の延長線上に設置される立設体の上部に取り付けられる
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
表示体は、
立体形状部を方向表示部として備える表示体本体と、
乗降口に設置される立設体の上部に取り付けられ、又は、立設体の上部に一体に設けられ、方向表示部の向きを乗降口の前後方向に対して正逆いずれかの向きに選択し、かつ、方向表示部の向きを上向き下向きのいずれかの向きに選択して、表示体本体を支持可能とする支持体とを備える
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環駆動される無端搬送体により乗客を搬送する乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道といった乗客コンベアは、搬送部と、乗降口とを備える。搬送部は、無端搬送体を備え、無端搬送体が通路に沿って移動することにより、乗客を搬送する。乗降口は、フロアプレートを備え、通路の始端部と終端部とに設けられる(乗り口及び降り口)。乗客は、乗り口のフロアプレートから通路内に進入し、無端搬送体の乗客受け入れ部まで移動すると、無端搬送体により搬送され、しかる後、無端搬送体の乗客送り出し部に到達すると、降り口のフロアプレートまで移動し、そのまま移動して乗客コンベアを後にする。
【0003】
視覚障害者が乗客コンベアを利用する場合、安全面の配慮は当然のこと、視覚障害者がストレスなく利用できるよう配慮する必要がある。床面に点字ブロックを形成する、音声ガイダンスを発する等して、視覚障害者を乗降口に誘導することは、既に広く実施されている対策である。しかし、2機又は3機以上の乗客コンベアが並設され、複数の乗降口が並ぶ場合、視覚障害者が誤って降り口に進むことがあり得る。また、乗り口に到達したとしても、この乗客コンベアが上りか下りかはわからない。ハンドレールに触るか、無端搬送体の乗客受け入れ部に足を踏み入れると、乗り口か降り口かはわかる。しかし、降り口であった場合、ハンドレールや無端搬送体は自身に向かって移動しており、視覚障害者には危険である。また、上りか下りかは、乗客コンベアに乗ってみないとわからない。行先方向が誤りであった場合、別の乗客コンベアに乗って戻ってくるという不必要な移動が生じ、視覚障害者には大きな負担が掛かる。
【0004】
これらの問題を解決するために、各種の表示機能を備えるフロアプレートが提案されている。特許文献1に記載されたフロアプレートは、乗り口と降り口とで段差の傾き方向を異ならせることにより、乗り口か降り口かを判別可能にするというものである。特許文献2に記載されたフロアプレートは、前方を向く二等辺三角形の領域に複数の凸部を設け、斜辺に足裏を沿わせることにより、進むべき方向を誘導するというものである。特許文献3に記載されたフロアプレートは、上りと下りとで点字パターンを異ならせることにより、上りか下りかを判別可能にするというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-161455号公報
【特許文献2】特開平7-144867号公報
【特許文献3】特開平10-017257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されたフロアプレートにおいては、視覚障害者が段差に躓くおそれがある。特許文献2に記載されたフロアプレートにおいては、視覚障害者が斜辺の位置を特定することは必ずしも容易ではないため、誘導効果が期待できない場合があるという問題がある。特許文献3に記載されたフロアプレートにおいては、視覚障害者が点字パターン全体の位置を特定することは必ずしも容易ではないため、点字の意味を把握することが困難な場合があるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、乗り口か降り口かを容易に判別することができる乗客コンベアを提供することを課題とする。また、本発明は、上りか下りかを容易に判別することができる乗客コンベアを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る乗客コンベアは、
通路に沿って循環駆動される無端搬送体により乗客を搬送する搬送部と、
搬送部に対する乗り口及び降り口の乗降口とを備え、
乗り口において乗客が手で触ることができる所定の高さ位置に、乗り口から搬送部に向かう方向性を有する立体形状部を方向表示部として備える表示体を備え、
降り口において乗客が手で触ることができる所定の高さ位置に、搬送部から降り口に向かう方向性を有する立体形状部を方向表示部として備える表示体を備える
乗客コンベアである。
【0009】
第2の発明に係る乗客コンベアは、
通路に沿って循環駆動される無端搬送体により乗客を階上又は階下に搬送する搬送部と、
搬送部に対する乗り口及び降り口の乗降口とを備え、
乗り口及び降り口において乗客が手で触ることができる所定の高さ位置に、乗客コンベアの上り下りの傾きに対応して傾く立体形状部を方向表示部として備える表示体を備える
乗客コンベアである。
【0010】
第3の発明に係る乗客コンベアは、
通路に沿って循環駆動される無端搬送体により乗客を階上又は階下に搬送する搬送部と、
搬送部に対する乗り口及び降り口の乗降口とを備え、
乗り口において乗客が手で触ることができる所定の高さ位置に、乗り口から搬送部に向かう方向性を有する立体形状部及び乗客コンベアの上り下りの傾きに対応して傾く立体形状部を方向表示部として備える表示体を備える
乗客コンベアである。
【0011】
また、これらの発明に係る乗客コンベアの一態様として、
通路の両側に通路に沿って設けられるハンドレール部を備え、
表示体は、乗降口においてハンドレール部の延長線上に設置される立設体の上部に取り付けられる
との構成を採用することができる。
【0012】
また、これらの発明に係る乗客コンベアの他態様として、
表示体は、
立体形状部を方向表示部として備える表示体本体と、
乗降口に設置される立設体の上部に取り付けられ、又は、立設体の上部に一体に設けられ、方向表示部の向きを乗降口の前後方向に対して正逆いずれかの向きに選択し、かつ、方向表示部の向きを上向き下向きのいずれかの向きに選択して、表示体本体を支持可能とする支持体とを備える
との構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0013】
第1及び第3の発明によれば、視覚障害者は、乗り口から搬送部に向かう方向性を有する方向表示部を手で触ることにより、進行方向であることを観念的に認識し、ここは乗り口であることを把握する。他方、視覚障害者は、搬送部から降り口に向かう方向性を有する方向表示部を手で触ることにより、進行方向逆方向であることを観念的に認識し、ここは降り口であることを把握する。このため、第1及び第3の発明によれば、乗り口か降り口かを容易に判別することができる。
【0014】
第2及び第3の発明によれば、視覚障害者は、乗客コンベアの上り下りの傾きに対応して傾く方向表示部を手で触ることにより、上向きであるか下向きであるかを認識し、ここは上りの乗客コンベアであるか下りの乗客コンベアであるかを把握する。このため、第2及び第3の発明によれば、上りか下りかを容易に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、エスカレータの斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係る表示体の側面図である。
図3図3は、実施形態1に係る表示体の背面図である。
図4図4(a)ないし(d)は、実施形態1に係る表示体の使用例の説明図である。
図5図5(a)ないし(d)は、実施形態1の変形例に係る表示体の使用例の説明図である。
図6図6は、実施形態2に係る表示体の側面図である。
図7図7(a)ないし(d)は、実施形態2に係る表示体の使用例の説明図である。
図8図8は、実施形態3に係る表示体の側面図である。
図9図9(a)ないし(d)は、実施形態3に係る表示体の使用例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る一実施形態として、乗客コンベアの一つであるエスカレータについて説明する。
【0017】
図1に示すように、エスカレータ1は、トラス(図示しない)と、搬送部2と、ハンドレール部3と、乗降口4とを備える。トラスは、エスカレータ1の自重及び積載荷重を支える構造体である。搬送部2は、トラスに支持され、踏面が通路に沿って移動することにより、乗客をその位置に立たせたまま歩かせることなく搬送する。ハンドレール部3も、トラスに支持され、通路の両側に通路に沿って設けられる。乗降口4は、トラスの両端部の上部に設けられる。本実施形態においては、2機のエスカレータ1,1が並設され、2つの乗降口4,4が横に並ぶ形態であって、右のエスカレータ1Aは、乗客を手前から奥(当該階から階上)に搬送する設定となっており、左のエスカレータ1Bは、乗客を手前から奥(当該階から階下)に搬送する設定となっている。このため、右のエスカレータ1Aは、手前から奥に、乗り口4A、搬送部2、降り口4Bを備え、左のエスカレータ1Bは、手前から奥に、乗り口4A、搬送部2、降り口4Bを備える。設定を逆に切り替えると、乗り口4Aは降り口に、降り口4Bは乗り口に切り替わる。
【0018】
トラスは、上弦材、下弦材、縦材、斜材及び横桁を適宜組み合わせた骨組構造である。トラスは、2つの水平端部と、傾斜部とを備える。一方の水平端部は、建築物における階上の支持架台に掛けられ、他方の水平端部は、階下の支持架台に掛けられる。これにより、トラス、ひいてエスカレータ1は、建築物に設置される。
【0019】
搬送部2は、無端搬送体20を備える。無端搬送体20は、複数の踏段(ステップ)21,…が無端状に連結されたもので、循環駆動される。ハンドレール部3は、ハンドレール30と、欄干パネル31とを備える。ハンドレール30は、移動手摺とも呼ばれ、可撓性を有する無端状で、無端搬送体20と連動して循環駆動される。欄干パネル31は、下辺部がトラスに支持され、ハンドレール30を循環移動可能に支持する。
【0020】
乗降口4は、トラスの水平端部の上部に設けられる。乗降口4は、フロアプレート40と、ポール41とを備える。フロアプレート40は、乗降口4の床を構成し、通路の端部(始端部及び終端部)を構成する。ポール41は、通路の両側の少なくとも一方に設けられ、通路の端(始端及び終端)に設置される。
【0021】
エスカレータ1は、表示体5を備える。表示体5は、ポール41の上部に取り付けられ、乗降口4において乗客が手で触ることができる所定の高さ位置に配置される。ポール41は、ハンドレール部3の延長線上(より詳しくは、ハンドレール30の折返し端部の延長線上)に設置され、ハンドレール部3(より詳しくは、ハンドレール30の折返し端部の上側部分)と略同一の高さである。これにより、表示体5は、ハンドレール部3の延長線上に配置され、ハンドレール部3と略同一の高さ位置に配置される。
【0022】
<実施形態1>
以下、実施形態1に係る表示体5について、図2ないし図4を参酌して説明する。
【0023】
図2及び図3に示すように、表示体5は、表示体本体50と、支持体51とを備える。表示体本体50は、三角板状体50aである。表示体本体50は、互いに直交する第1辺部50b及び第2辺部50cと、第1辺部50b及び第2辺部50cのそれぞれに対して傾斜する斜辺部50dとを有する直角二等辺三角形状を有する。支持体51は、ポール41の上面41aに接着剤、粘着剤、ビス止め等の固定手段により取り付けられ、表示体本体50を支持する。
【0024】
表示体本体50は、第1辺部50b及び第2辺部50cのそれぞれに、係合部50eを備える。他方、支持体51は、係合部50eと係合して第1辺部50b又は第2辺部50cにて表示体本体50を係止する係止部51aを備える。これにより、表示体本体50は、支持体51に脱着可能に取り付けられる。本実施形態においては、係合部50eは、アリ溝形状の凹部であり、係止部51aは、係合部50eに嵌入するアリ形状の凸部である。なお、係合部は、アリ形状の凸部であり、係止部は、アリ溝形状の凹部であってもよく、あるいは、係合部及び係止部のそれぞれは、アリ形状の凸部及びアリ溝形状の凹部の組み合わせであってもよい。
【0025】
表示体本体50は、2種類の立体形状部を方向表示部として備える。第1の立体形状部は、乗り口4Aから搬送部2に向かう方向性又は搬送部2から降り口4Bに向かう方向性を有する立体形状部である。第2の立体形状部は、エスカレータ1の上り下りの傾きに対応して傾く立体形状部である。
【0026】
具体的には、表示体本体50は、立体形状部として、斜辺部50d、尖端突起50f及び方向指示標識50gを備える。斜辺部50dは、第2の立体形状部である。本実施形態においては、斜辺部50dは、階段状に形成されるが、これは必須ではない。尖端突起50fは、円錐形状、角錐形状、偏平な三角形状、矢印形状等、先端側に向かって断面形状又は幅が小さくなる部分を有する立体形状部であるとともに、斜辺部50dの延長線の先に向かう方向性を有する立体形状部であり、第1及び第2の両方の立体形状部である。方向指示標識50gは、三角板状体50aの側面に凸設又は凹設され、三角形状、矢印形状等、先端側に向かって断面形状又は幅が小さくなる部分を有する立体形状部であるとともに、尖端突起50fと同様、斜辺部50dの延長線の先に向かう方向性を有する立体形状部であり、第1及び第2の両方の立体形状部である。なお、表示体本体50において、斜辺部50d、尖端突起50f及び方向指示標識50gを全て備えることは必須ではなく、いずれか一部のみを備えるようにしてもよい。
【0027】
図4(a)ないし(d)に示すように、表示体本体50は、方向表示部50f,50gの向きを乗降口4の前後方向に対して正逆いずれかの向きに選択し、かつ、方向表示部50d,50f,50gの向きを上向き下向きのいずれかの向きに選択して、支持体51に取り付けられる。より詳しくは、表示体本体50は、方向表示部50f,50gの向きを乗降口4の前後方向に対して正逆いずれかの向きに選択し、かつ、方向表示部50d,50f,50gの向きが上向き下向きのいずれかの向きとなるよう、第1辺部50b又は第2辺部50cのいずれかの辺部を選択して、支持体51に取り付けられる。
【0028】
図4(a)は、紙面右側に搬送部2があるとして、上りのエスカレータ1の乗り口4Aに対する表示体5の表示形態である。表示体本体50は、方向表示部50f,50gの向きを乗降口4の前後方向に対して正の向きに選択し、かつ、方向表示部50d,50f,50gの向きが上向きとなるよう、第1辺部50bを選択して、支持体51に取り付けられる。
【0029】
図4(b)は、紙面右側に搬送部2があるとして、下りのエスカレータ1の乗り口4Aに対する表示体5の表示形態である。表示体本体50は、方向表示部50f,50gの向きを乗降口4の前後方向に対して正の向きに選択し、かつ、方向表示部50d,50f,50gの向きが下向きとなるよう、第2辺部50cを選択して、支持体51に取り付けられる。
【0030】
図4(c)は、紙面右側に搬送部2があるとして、下りのエスカレータ1の降り口4Bに対する表示体5の表示形態である。表示体本体50は、方向表示部50f,50gの向きを乗降口4の前後方向に対して逆の向きに選択し、かつ、方向表示部50d,50f,50gの向きが下向きとなるよう、第2辺部50cを選択して、支持体51に取り付けられる。
【0031】
図4(d)は、紙面右側に搬送部2があるとして、上りのエスカレータ1の降り口4Bに対する表示体5の表示形態である。表示体本体50は、方向表示部50f,50gの向きを乗降口4の前後方向に対して逆の向きに選択し、かつ、方向表示部50d,50f,50gの向きが上向きとなるよう、第1辺部50bを選択して、支持体51に取り付けられる。
【0032】
以上のとおり、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、視覚障害者は、乗り口4Aから搬送部2に向かう方向性を有する立体形状部からなる方向表示部(図4(a)及び(b)の方向表示部50f又は方向表示部50g)を手で触ることにより、進行方向であることを観念的に認識し、ここは乗り口4Aであることを把握する。他方、視覚障害者は、搬送部2から降り口4Bに向かう方向性を有する立体形状部からなる方向表示部(図4(c)及び(d)の方向表示部50f又は方向表示部50g)を手で触ることにより、進行方向逆方向であることを観念的に認識し、ここは降り口4Bであることを把握する。このため、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、乗り口4Aか降り口4Bかを容易に判別することができる。
【0033】
また、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、視覚障害者は、上りのエスカレータ1の傾きに対応して上向きに傾く立体形状部からなる方向表示部(図4(a)及び(d)の方向表示部50d、方向表示部50f又は方向表示部50g)を手で触ることにより、上向きであることを認識し、ここは上りのエスカレータ1であることを把握する。他方、視覚障害者は、下りのエスカレータ1の傾きに対応して下向きに傾く立体形状部からなる方向表示部(図4(b)及び(c)の方向表示部50d、方向表示部50f又は方向表示部50g)を手で触ることにより、下向きであることを認識し、ここは下りのエスカレータ1であることを把握する。このため、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、上りか下りかを容易に判別することができる。
【0034】
また、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、表示体5は、乗り口4Aに設置されるポール41の上部に取り付けられることにより、ハンドレール部3の延長線上に配置され、より好ましくは、ハンドレール部3と略同一の高さ位置に配置される。このため、ここが乗り口4Aであると把握した視覚障害者の手をハンドレール部3のハンドレール30上に誘導するという効果がある。
【0035】
<実施形態1の変形例>
図5に示すように、第1辺部50b及び第2辺部50cの交差角が直角から鈍角に変更されることにより、方向表示部50d,50f,50gの傾きが緩くなる表示体5であってもよい。
【0036】
また、表示体本体は、第1辺部、第2辺部及び斜辺部を備えていれば、三角形状であることや板状体であることは必須ではない。
【0037】
<実施形態2>
次に、実施形態2に係る表示体5について、図6及び図7を参酌して説明する。なお、実施形態2に係る表示体5が実施形態1に係る表示体5と異なる点は、表示体5自体の構成に関する点である。この点以外については、両者は、同じである。そこで、以下においては、異なる点について記載し、同じ点については、実施形態1についての記載と同様であるとして、記載を省略する。
【0038】
図6に示すように、表示体5は、表示体本体50と、支持体51とを備える。表示体本体50は、直状体50hである。支持体51は、ポール41の上面41aに接着剤、粘着剤、ビス止め等の固定手段により取り付けられ、表示体本体50を支持する。
【0039】
表示体本体50は、球継手51bを介して支持体51と一体的に接続される。これにより、表示体本体50は、全方位(垂直軸回り及び水平軸回りを含む)に回転変位可能に支持体51に支持される。球継手51bには、固定用ネジ51c等の固定手段が設けられ、固定手段により、表示体本体50を任意の姿勢状態に固定することができる。
【0040】
表示体本体50は、2種類の立体形状部を方向表示部として備える。第1の立体形状部は、乗り口4Aから搬送部2に向かう方向性又は搬送部2から降り口4Bに向かう方向性を有する立体形状部である。第2の立体形状部は、エスカレータ1の上り下りの傾きに対応して傾く立体形状部である。
【0041】
具体的には、表示体本体50は、立体形状部として、直状体50h及び尖端突起50iを備える。直状体50hは、第2の立体形状部である。本実施形態においては、直状体50hは、階段状に形成されるが、これは必須ではない。尖端突起50iは、円錐形状、角錐形状、偏平な三角形状、矢印形状等、先端側に向かって断面形状又は幅が小さくなる部分を有する立体形状部であるとともに、直状体50hの延長線の先に向かう方向性を有する立体形状部であり、第1及び第2の両方の立体形状部である。
【0042】
図7(a)ないし(d)に示すように、表示体本体50は、方向表示部50iの向きを乗降口4の前後方向に対して正逆いずれかの向きに選択し、かつ、方向表示部50h,50iの向きを上向き下向きのいずれかの向きに選択して、支持体51に固定される。図7(a)ないし(d)は、図4(a)ないし(d)に対応している。
【0043】
このように、実施形態2に係るエスカレータ1によっても、実施形態1に係るエスカレータ1が奏する作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0044】
<実施形態3>
次に、実施形態3に係る表示体5について、図8及び図9を参酌して説明する。なお、実施形態3に係る表示体5が実施形態1に係る表示体5と異なる点は、表示体5自体の構成に関する点である。この点以外については、両者は、同じである。そこで、以下においては、異なる点について記載し、同じ点については、実施形態1についての記載と同様であるとして、記載を省略する。
【0045】
図8に示すように、表示体5は、表示体本体50と、支持体51とを備える。表示体本体50は、円錐形状、角錐形状等の錘状体50jである。支持体51は、ポール41の上面41aに接着剤、粘着剤、ビス止め等の固定手段により取り付けられ、表示体本体50を支持する。
【0046】
表示体本体50は、側部に、開口が共通しかつ互いに交差する2つの挿入孔50kを備える。他方、支持体51は、挿入孔50kに挿入されて表示体本体50を係止する係止部51d(支柱の先端部)を備える。これにより、表示体本体50は、支持体51に脱着可能に取り付けられる。なお、挿入孔50k及び係止部51dは、ともに非円形であり、表示体本体50は、支持体51に対して垂直軸回りに回転変位することができない。
【0047】
表示体本体50は、2種類の立体形状部を方向表示部として備える。第1の立体形状部は、乗り口4Aから搬送部2に向かう方向性又は搬送部2から降り口4Bに向かう方向性を有する立体形状部である。第2の立体形状部は、エスカレータ1の上り下りの傾きに対応して傾く立体形状部である。
【0048】
具体的には、表示体本体50は、立体形状部として、錘状体50jを備える。錘状体50jは、先端側に向かって断面形状が小さくなる立体形状部であるとともに、錘状体50jの延長線の先に向かう方向性を有する立体形状部であり、第1及び第2の両方の立体形状部である。
【0049】
図9(a)ないし(d)に示すように、表示体本体50は、方向表示部50jの向きを乗降口4の前後方向に対して正逆いずれかの向きに選択し、かつ、方向表示部50jの向きを上向き下向きのいずれかの向きに選択して、支持体51に取り付けられる。より詳しくは、表示体本体50は、方向表示部50jの向きを乗降口4の前後方向に対して正逆いずれかの向きに選択し、かつ、方向表示部50jの向きが上向き下向きのいずれかの向きとなるよう、2つの挿入孔50kのいずれかの挿入孔を選択して、支持体51に取り付けられる。図9(a)ないし(d)は、図4(a)ないし(d)に対応している。
【0050】
このように、実施形態3に係るエスカレータ1によっても、実施形態1に係るエスカレータ1が奏する作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0052】
上記実施形態においては、表示体5は、立設体としてのポール41の上部に取り付けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、立設体は、柵(通路の両側の少なくとも一方に設けられ、乗客が通路を通らずに側方から乗降口を出退するのを防止するための柵)であり、表示体は、柵の上部に取り付けられるようにしてもよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、表示体5は、表示体本体50と支持体51とで構成され、支持体51は、立設体の上部に取り付けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。支持体は、立設体の上部に一体に設けられるものであってもよい。
【0054】
また、上記実施形態においては、表示例として、2機のエスカレータ1,1が並設され、2つの乗降口4,4が横に並ぶ形態について説明した。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、1機の場合にも適用することができるのは言うまでもない。
【0055】
また、上記実施形態においては、乗客コンベアは、エスカレータである。しかし、本発明は、動く歩道にも適用できることは言うまでもない。なお、動く歩道は、水平搬送が一般的であるが、エスカレータと同様、傾斜搬送のものもある。
【0056】
また、物理的に干渉するものでない限り、以上に記載した技術要素を他の実施形態ないし例に適用すること、以上に記載した技術要素を他の実施形態ないし例に係る技術要素と置換すること、以上に記載した技術要素同士を組み合わせること等は、当然に可能であり、これは、本発明が当然に意図するところである。
【符号の説明】
【0057】
1…エスカレータ、1A…右のエスカレータ、1B…左のエスカレータ、2…搬送部、20…無端搬送体、21…踏段、3…ハンドレール部、30…ハンドレール、31…欄干パネル、4…乗降口、4A…乗り口、4B…降り口、40…フロアプレート、41…ポール、41a…上面、5…表示体、50…表示体本体、50a…三角板状体、50b…第1辺部、50c…第2辺部、50d…斜辺部、50e…係合部、50f…尖端突起、50g…方向指示標識、50h…直状体、50i…尖端突起、50j…錘状体、50k…挿入孔、51…支持体、51a…係止部、51b…球継手、51c…固定用ネジ、51d…係止部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-04-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路に沿って循環駆動される無端搬送体により乗客を階上又は階下に搬送する搬送部と、
搬送部に対する乗り口及び降り口の乗降口とを備え、
乗り口において乗客が手で触ることができる所定の高さ位置に、乗り口から搬送部に向かう方向性を有する立体形状部及び乗客コンベアの上り下りの傾きに対応して傾く立体形状部を方向表示部として備える表示体を備え、
降り口において乗客が手で触ることができる所定の高さ位置に、搬送部から降り口に向かう方向性を有する立体形状部及び乗客コンベアの上り下りの傾きに対応して傾く立体形状部を方向表示部として備える表示体を備える
乗客コンベア。
【請求項2】
通路の両側に通路に沿って設けられるハンドレール部を備え、
表示体は、乗降口においてハンドレール部の延長線上に設置される立設体の上部に取り付けられる
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
表示体は、
立体形状部を方向表示部として備える表示体本体と、
乗降口に設置される立設体の上部に取り付けられ、又は、立設体の上部に一体に設けられ、方向表示部の向きを乗降口の前後方向に対して正逆いずれかの向きに選択し、かつ、方向表示部の向きを上向き下向きのいずれかの向きに選択して、表示体本体を支持可能とする支持体とを備える
請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
表示体本体は、それぞれ係合部を備える第1辺部及び第2辺部と、第1辺部及び第2辺部のそれぞれに対して傾斜する斜辺部とを有する三角板状体であり、
支持体は、i)乗降口の前後方向に対して正の向きとなる表示体本体の第1辺部の係合部、ii)乗降口の前後方向に対して正の向きとなる表示体本体の第2辺部の係合部、iii)乗降口の前後方向に対して逆の向きとなる表示体本体の第2辺部の係合部、iv)乗降口の前後方向に対して逆の向きとなる表示体本体の第1辺部の係合部、の各係合部と係合して表示体本体を係止する係止部を備える
請求項3に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
支持体は、球継手を介して表示体本体を全方位に回転変位可能に支持する
請求項3に記載の乗客コンベア。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
発明に係る乗客コンベアは、
通路に沿って循環駆動される無端搬送体により乗客を階上又は階下に搬送する搬送部と、
搬送部に対する乗り口及び降り口の乗降口とを備え、
乗り口において乗客が手で触ることができる所定の高さ位置に、乗り口から搬送部に向かう方向性を有する立体形状部及び乗客コンベアの上り下りの傾きに対応して傾く立体形状部を方向表示部として備える表示体を備え、
降り口において乗客が手で触ることができる所定の高さ位置に、搬送部から降り口に向かう方向性を有する立体形状部及び乗客コンベアの上り下りの傾きに対応して傾く立体形状部を方向表示部として備える表示体を備える
乗客コンベアである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
また、発明に係る乗客コンベアの一態様として、
通路の両側に通路に沿って設けられるハンドレール部を備え、
表示体は、乗降口においてハンドレール部の延長線上に設置される立設体の上部に取り付けられる
との構成を採用することができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
また、発明に係る乗客コンベアの他態様として、
表示体は、
立体形状部を方向表示部として備える表示体本体と、
乗降口に設置される立設体の上部に取り付けられ、又は、立設体の上部に一体に設けられ、方向表示部の向きを乗降口の前後方向に対して正逆いずれかの向きに選択し、かつ、方向表示部の向きを上向き下向きのいずれかの向きに選択して、表示体本体を支持可能とする支持体とを備える
との構成を採用することができる。
また、この場合、
表示体本体は、それぞれ係合部を備える第1辺部及び第2辺部と、第1辺部及び第2辺部のそれぞれに対して傾斜する斜辺部とを有する三角板状体であり、
支持体は、i)乗降口の前後方向に対して正の向きとなる表示体本体の第1辺部の係合部、ii)乗降口の前後方向に対して正の向きとなる表示体本体の第2辺部の係合部、iii)乗降口の前後方向に対して逆の向きとなる表示体本体の第2辺部の係合部、iv)乗降口の前後方向に対して逆の向きとなる表示体本体の第1辺部の係合部、の各係合部と係合して表示体本体を係止する係止部を備える
との構成を採用することができる。
あるいは、この場合、
支持体は、球継手を介して表示体本体を全方位に回転変位可能に支持する
との構成を採用することができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
発明によれば、視覚障害者は、乗り口から搬送部に向かう方向性を有する方向表示部を手で触ることにより、進行方向であることを観念的に認識し、ここは乗り口であることを把握する。他方、視覚障害者は、搬送部から降り口に向かう方向性を有する方向表示部を手で触ることにより、進行方向逆方向であることを観念的に認識し、ここは降り口であることを把握する。このため、発明によれば、乗り口か降り口かを容易に判別することができる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
また、本発明によれば、視覚障害者は、乗客コンベアの上り下りの傾きに対応して傾く方向表示部を手で触ることにより、上向きであるか下向きであるかを認識し、ここは上りの乗客コンベアであるか下りの乗客コンベアであるかを把握する。このため、発明によれば、上りか下りかを容易に判別することができる。