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特開2023-87204ヒストグラム生成回路、光測距装置、ヒストグラム生成方法および光測距方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087204
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】ヒストグラム生成回路、光測距装置、ヒストグラム生成方法および光測距方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/4865 20200101AFI20230616BHJP
   G01S 17/10 20200101ALI20230616BHJP
【FI】
G01S7/4865
G01S17/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201450
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000242600
【氏名又は名称】北陽電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】安田 国弘
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AA10
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA20
5J084BA36
5J084BA38
5J084BA49
5J084BB02
5J084BB26
5J084BB28
5J084CA03
5J084CA25
5J084CA32
5J084CA45
5J084CA70
(57)【要約】
【課題】限られたメモリ領域を有効に活用することにより、メモリ容量を低減させることができるヒストグラム生成回路、光測距装置、ヒストグラム生成方法および光測距方法を提供する。
【解決手段】所定周期で繰返し出力される測定光の出力時点から各測定光に対する反射光の検出時点までの飛行時間または飛行距離である各飛行情報に基づいて、予め設定された測定範囲に分布する前記飛行情報の累積度数を示すヒストグラムを生成するヒストグラム生成回路60であって、前記ヒストグラムを記憶する記憶回路62と、前記測定範囲を複数区画に区分けした各ビンを前記飛行情報に基づき順序付けて個別に識別するビン番号と、各ビンに含まれる前記飛行情報および前記累積度数と、を関連付けて前記記憶回路62に記憶する記憶処理回路61と、を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周期で繰返し出力される測定光の出力時点から各測定光に対する反射光の検出時点までの飛行時間または飛行距離である各飛行情報に基づいて、予め設定された測定範囲に分布する前記飛行情報の累積度数を示すヒストグラムを生成するヒストグラム生成回路であって、
前記ヒストグラムを記憶する記憶回路と、
前記測定範囲を複数区画に区分けした各ビンを前記飛行情報に基づき順番付けて個別に識別するビン番号と、各ビンに含まれる前記飛行情報および前記累積度数と、を関連付けて前記記憶回路に記憶する記憶処理回路と、
を備えているヒストグラム生成回路。
【請求項2】
前記記憶処理回路は、前記飛行情報が発生すると、前記記憶回路に記憶された前記ビン番号を読み出して、今回の飛行情報が属する前記ビンのビン番号を含めて前記飛行情報を昇順または降順に並べ替えて、前記ビン番号と前記飛行情報および前記累積度数を前記記憶回路に記憶する請求項1記載のヒストグラム生成回路。
【請求項3】
前記記憶回路として、前記飛行情報が発生したときに、既に記憶されたビン番号を把握するための参照用記憶回路と、新たなビン番号を含むビン番号と前記累積度数を記憶する保存用記憶回路を備え、
前記記憶処理回路は、前記飛行情報が発生する度に、前記参照用記憶回路と前記保存用記憶回路の機能を切り替えて、前記参照用記憶回路に記憶されたビン番号を読み出して、今回の飛行時間情報が属する前記ビンのビン番号を含めて前記飛行情報を昇順または降順に並べ替えて、前記ビン番号と前記飛行情報および前記累積度数を前記保存用記憶回路に記憶するように構成されている請求項1または2記載のヒストグラム生成回路。
【請求項4】
前記記憶処理回路は、前記飛行情報の最初の発生時には、前記参照用記憶回路と前記保存用記憶回路の機能を切り替えることなく、前記ビン番号と前記飛行情報および前記累積度数を前記保存用記憶回路に記憶する請求項3記載のヒストグラム生成回路。
【請求項5】
FIFO方式の記憶回路をさらに備え、
前記FIFO方式の記憶回路は、前記飛行情報の発生に同期して前記飛行情報を記憶する書込み回路と、前記飛行情報の発生とは非同期で前記飛行情報を読み出して前記記憶処理回路に出力する読出し回路と、を備えている請求項1から4の何れかに記載のヒストグラム生成回路。
【請求項6】
前記書込み回路は、前記所定周期で前記飛行情報の出力が終了する度に前記FIFO方式の記憶回路に一周期の前記飛行情報の出力の終了を示すダミーデータを記憶するように構成され、前記読出し回路は、前記ダミーデータを読み出す度に一周期の前記飛行情報の出力の終了を示す信号を出力するように構成されている請求項5記載のヒストグラム生成回路。
【請求項7】
パルス状の測定光を出力する発光素子と、
前記測定光に対する物体からの反射光を検出するフォトンカウント型の複数の受光素子と、
各受光素子から出力される電圧パルスを加算する加算回路と、
前記測定光の出力時点から前記加算回路の加算値が所定の加算閾値に達する時点までの時間または前記時間に対応する距離を飛行情報として算出する飛行情報算出回路と、
前記測定光を所定周期で繰り返し出力したときに前記飛行情報算出回路で算出された前記飛行情報に基づいて、予め設定された測定範囲に分布する前記飛行情報の累積度数を示すヒストグラムを生成する請求項1から6の何れかに記載のヒストグラム生成回路と、
前記ヒストグラムに基づいて前記度数が所定のヒストグラム閾値に到る前記ビン番号の前記ビンに分布する前記飛行情報から前記物体に対する前記飛行情報の代表値を算出する代表値算出回路と、
前記代表値算出回路で算出された前記飛行情報の前記代表値に基づいて前記物体までの距離を算出する距離演算回路と、
を備えている光測距装置。
【請求項8】
所定周期で繰返し出力される測定光の出力時点から各測定光に対する反射光の検出時点までの飛行時間または飛行距離である各飛行情報に基づいて、予め設定された測定範囲に分布する前記飛行情報の累積度数を示すヒストグラムを生成するヒストグラム生成方法であって、
前記ヒストグラムを記憶回路に記憶する記憶ステップと、
前記測定範囲を複数区画に区分けした各ビンを前記飛行情報に基づき順番付けて個別に識別するビン番号と、各ビンに含まれる前記飛行情報および前記累積度数と、を関連付けて前記記憶回路に記憶する記憶処理ステップと、
を備えているヒストグラム生成方法。
【請求項9】
発光素子から出力されるパルス状の測定光に対する物体からの反射光をフォトンカウント型の複数の受光素子で検出する反射光検出ステップと、
前記測定光の出力時点から各受光素子から出力される電圧パルスの加算値が所定の加算閾値に達する時点までの時間または前記時間に対応する距離を飛行情報として算出する飛行情報算出ステップと、
前記測定光を所定周期で繰り返し出力したときに前記飛行情報算出ステップで算出された前記飛行情報に基づいて、予め設定された測定範囲に分布する前記飛行情報の累積度数を示すヒストグラムを生成する請求項8記載のヒストグラム生成方法を実行するヒストグラム生成ステップと、
前記ヒストグラムに基づいて前記度数が所定のヒストグラム閾値に到る前記ビン番号の前記ビンに分布する前記飛行情報から前記物体に対する前記飛行情報の代表値を算出する代表値算出ステップと、
前記代表値算出ステップで算出された前記飛行情報の前記代表値に基づいて前記物体までの距離を算出する距離演算ステップと、
を備えている光測距方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒストグラム生成回路、光測距装置、ヒストグラム生成方法および光測距方法に関し、特にフォトンカウント型の受光素子を用いる場合に好適なヒストグラム生成回路、光測距装置、ヒストグラム生成方法および光測距方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光の飛翔時間の算出にヒストグラムを用いるレーザレーダにおいて、ヒストグラムを格納するメモリの容量を従来技術と比べて削減可能な技術を提供することを目的とする光検出器が開示されている。
【0003】
当該光検出器は、フォトンの入射に応答してパルス信号を出力するように構成された複数の受光部を有し、照射部から照射され、物体に反射した反射光を受光して、前記複数の受光部からそれぞれ出力される前記パルス信号を並列に出力するように構成された受光アレイ部と、前記照射部が光を照射したタイミングからの経過時間を計測するように構成された計時部と、一定周期のタイミング毎に、前記複数の受光部のうち前記パルス信号を出力している受光部の数を応答数としてカウントし、予め設定されるバイアス値を、前記応答数から減算または除算した調整応答数を出力するように構成されたカウント部と、アドレスが前記計時部で計測される計時値に対応づけられたメモリと、前記計時部での計時値から特定される前記メモリのアドレスに、該アドレスのデータとして、前記調整応答数を積算する処理を予め設定された積算回数だけ繰り返すことでヒストグラムを生成するように構成されたヒストグラム生成部と、を備えている。
【0004】
当該光検出器によれば、ヒストグラムを生成する際に、応答数より小さな値となる調整応答数を積算するため、応答数をそのまま積算する場合と比較して、メモリの容量を削減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-169384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された光検出器では、ヒストグラムを生成するために用いるメモリのアドレスが計時部で計測される計時値に対応づけられているため、具体的には光検出器で計時可能な時間の全範囲をカバーするように設定された時間ビン数に対応するアドレス空間が準備されている必要があるため、計時値が存在しないメモリ領域が無駄になるという問題があった。
【0007】
また、測距の分解能に応じてビンの総数やビンが持つデータビット幅も多くなるため、測定距離が長く高分解能に測距するほど無駄にメモリ容量が嵩むという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、限られたメモリ領域を有効に活用することにより、メモリ容量を低減させることができるヒストグラム生成回路、光測距装置、ヒストグラム生成方法および光測距方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明によるヒストグラム生成回路の第一の特徴構成は、所定周期で繰返し出力される測定光の出力時点から各測定光に対する反射光の検出時点までの飛行時間または飛行距離である各飛行情報に基づいて、予め設定された測定範囲に分布する前記飛行情報の累積度数を示すヒストグラムを生成するヒストグラム生成回路であって、前記ヒストグラムを記憶する記憶回路と、前記測定範囲を複数区画に区分けした各ビンを前記飛行情報に基づき順番付けて個別に識別するビン番号と、各ビンに含まれる前記飛行情報および前記累積度数と、を関連付けて前記記憶回路に記憶する記憶処理回路と、を備えている点にある。
【0010】
発生した飛行情報と、その飛行情報が属するビンを飛行時間または飛行距離である飛行情報に基づいて順番付けて個別に識別するビン番号と、を記憶処理回路が関連付けて記憶回路に格納することにより、飛行情報が発生しないビンに対応する記憶領域を予め確保する必要がなく、記憶容量を低減することができる。そして、同一のビン番号に複数の飛行情報が発生する場合には、記憶処理回路が当該ビン番号に累積度数を関連付けることにより、予め設定された測定範囲に分布する飛行情報の累積度数を示すヒストグラムが生成できる。なお、飛行情報として、測定光の出力時点から各測定光に対する反射光の検出時点までの飛行時間を用いることが好ましいが、当該飛行時間に対応する飛行距離を用いることも可能である。
【0011】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記記憶処理回路は、前記飛行情報が発生すると、前記記憶回路に記憶された前記ビン番号を読み出して、今回の飛行情報が属する前記ビンのビン番号を含めて前記飛行情報を昇順または降順に並べ替えて、前記ビン番号と前記飛行情報および前記累積度数を前記記憶回路に記憶する点にある。
【0012】
記憶処理回路は、新たに発生した飛行情報が属するビン番号を求めて、記憶回路から以前に記憶した各ビン番号を読み出し、読み出したビン番号と新たな飛行情報が属するビン番号と対比する。そして各ビン番号が昇順または降順になるように並び替えて記憶回路に更新記憶する。このとき、記憶処理回路は、新たな飛行情報が属するビン番号と同じビン番号が存在する場合には、当該ビン番号の累積度数を1加算した後に記憶回路に更新記憶して累積度数を更新することができる。
【0013】
同第三の特徴構成は、上述した第一または第二の特徴構成に加えて、前記記憶回路として、前記飛行情報が発生したときに、既に記憶されたビン番号を把握するための参照用記憶回路と、新たなビン番号を含むビン番号と前記累積度数を記憶する保存用記憶回路を備え、前記記憶処理回路は、前記飛行情報が発生する度に、前記参照用記憶回路と前記保存用記憶回路の機能を切り替えて、前記参照用記憶回路に記憶されたビン番号を読み出して、今回の飛行時間情報が属する前記ビンのビン番号を含めて前記飛行情報を昇順または降順に並べ替えて、前記ビン番号と前記飛行情報および前記累積度数を前記保存用記憶回路に記憶するように構成されている点にある。
【0014】
記憶回路として、既に記憶されたビン番号を把握するための参照用記憶回路と、新たなビン番号を含むビン番号と累積度数を記憶する保存用記憶回路の二つを備える。記憶処理回路によって保存用記憶回路に記憶されたビン番号と累積度数が直近のヒストグラムとなる。新たな飛行情報が発生すると、記憶処理回路は保存用記憶回路を参照用記憶回路として機能させて、参照用記憶回路から読み出したビン番号と新たな飛行情報が属するビン番号と対比する。そして各ビン番号が昇順または降順になるように前記飛行情報を並び替えて、参照用記憶回路から機能を切り替えた保存用記憶回路にビン番号と飛行情報および累積度数を記憶する。参照用記憶回路と保存用記憶回路に機能を分離することで、一方の記憶回路からの読出し処理と他方の記憶回路への書き込み処理を同時に行えるようになり、単一の記憶回路を用いる場合と比較して処理速度が上昇する。
【0015】
同第四の特徴構成は、上述した第三の特徴構成に加えて、前記記憶処理回路は、前記飛行情報の最初の発生時には、前記参照用記憶回路と前記保存用記憶回路の機能を切り替えることなく、前記ビン番号と前記飛行情報および前記累積度数を前記保存用記憶回路に記憶する点にある。
【0016】
最初の飛行情報の発生時には、ビン番号を対比する必要がないので、何れか一方の記憶回路を保存用記憶回路として機能させて、ビン番号と飛行情報および累積度数(この場合は「1」となる。)を記憶すればよい。
【0017】
同第五の特徴構成は、上述した第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、FIFO方式の記憶回路をさらに備え、前記FIFO方式の記憶回路は、前記飛行情報の発生に同期して前記飛行情報を記憶する書込み回路と、前記飛行情報の発生とは非同期で前記飛行情報を読み出して前記記憶処理回路に出力する読出し回路と、を備えている点にある。
【0018】
記憶処理回路は、FIFO方式の記憶回路に備えた書込み回路を介して、飛行情報の発生に同期して飛行情報をFIFO方式の記憶回路に記憶する。また、記憶処理回路は、FIFO方式の記憶回路に備えた読出し回路を介して、当該記憶回路に記憶された飛行情報を飛行情報の発生とは非同期で読み出し、読み出した飛行情報に基づいて対応するビン番号を算出し、上述した第一から第四の何れかの特徴構成に基づいてヒストグラムを更新する。このように構成すれば、飛行情報の発生間隔が短い場合であっても、其々の飛行情報をFIFO方式の記憶回路にバッファリングでき、その後に読出し回路を介して読み出した各飛行情報に基づいてヒストグラムを更新する時間を確保できるようになり、データの喪失という不都合が生じない。
【0019】
同第六の特徴構成は、上述した第五の特徴構成に加えて、前記書込み回路は、前記所定周期で前記飛行情報の出力が終了する度に前記FIFO方式の記憶回路に一周期の前記飛行情報の出力の終了を示すダミーデータを記憶するように構成され、前記読出し回路は、前記ダミーデータを読み出す度に一周期の前記飛行情報の出力の終了を示す信号を出力するように構成されている点ある。
【0020】
発生した飛行情報が書込み回路を介してFIFO方式の記憶回路に順番に書き込まれると、読出し回路を介して読み出した各飛行情報が、所定周期で繰返し出力される測定光の何れの周期における飛行情報であるかを容易に判別できない虞がある。そのような場合でも、一周期の飛行情報の出力の終了を示すダミーデータを当該記憶回路に記憶しておけば、一周期の飛行情報の区切りを容易に判別できるようになる。
【0021】
本発明による光測距装置の第一の特徴構成は、パルス状の測定光を出力する発光素子と、前記測定光に対する物体からの反射光を検出するフォトンカウント型の複数の受光素子と、各受光素子から出力される電圧パルスを加算する加算回路と、前記測定光の出力時点から前記加算回路の加算値が所定の加算閾値に達する時点までの時間または前記時間に対応する距離を飛行情報として算出する飛行情報算出回路と、前記測定光を所定周期で繰り返し出力したときに前記飛行情報算出回路で算出された前記飛行情報に基づいて、予め設定された測定範囲に分布する前記飛行情報の累積度数を示すヒストグラムを生成する請求項1から6の何れかに記載のヒストグラム生成回路と、前記ヒストグラムに基づいて前記度数が所定のヒストグラム閾値に到る前記ビン番号の前記ビンに分布する前記飛行情報から前記物体に対する前記飛行情報の代表値を算出する代表値算出回路と、前記代表値算出回路で算出された前記飛行情報の前記代表値に基づいて前記物体までの距離を算出する距離演算回路と、を備えている点にある。
【0022】
第一から第六の何れかの特徴構成を備えたヒストグラム生成回路により生成されたヒストグラムに基づいて、度数が所定のヒストグラム閾値に到る領域に分布する飛行時間から代表値算出回路によって物体に対する飛行時間の代表値、つまり確からしさの高い飛行情報が算出される。そのような飛行情報に基づいて距離演算回路によって物体までの距離が適切に算出される。
【0023】
本発明によるヒストグラム生成方法の第一の特徴構成は、所定周期で繰返し出力される測定光の出力時点から各測定光に対する反射光の検出時点までの飛行時間または飛行距離である各飛行情報に基づいて、予め設定された測定範囲に分布する前記飛行情報の累積度数を示すヒストグラムを生成するヒストグラム生成方法であって、前記ヒストグラムを記憶回路に記憶する記憶ステップと、前記測定範囲を複数区画に区分けした各ビンを前記飛行情報に基づき順番付けて個別に識別するビン番号と、各ビンに含まれる前記飛行情報および前記累積度数と、を関連付けて前記記憶回路に記憶する記憶処理ステップと、を備えている点にある。
【0024】
本発明による光測距方法の第一の特徴構成は、発光素子から出力されるパルス状の測定光に対する物体からの反射光をフォトンカウント型の複数の受光素子で検出する反射光検出ステップと、前記測定光の出力時点から各受光素子から出力される電圧パルスの加算値が所定の加算閾値に達する時点までの時間または前記時間に対応する距離を飛行情報として算出する飛行情報算出ステップと、前記測定光を所定周期で繰り返し出力したときに前記飛行情報算出ステップで算出された前記飛行情報に基づいて、予め設定された測定範囲に分布する前記飛行情報の累積度数を示すヒストグラムを生成する請求項8記載のヒストグラム生成方法を実行するヒストグラム生成ステップと、前記ヒストグラムに基づいて前記度数が所定のヒストグラム閾値に到る前記ビン番号の前記ビンに分布する前記飛行情報から前記物体に対する前記飛行情報の代表値を算出する代表値算出ステップと、前記代表値算出ステップで算出された前記飛行情報の前記代表値に基づいて前記物体までの距離を算出する距離演算ステップと、を備えている点にある。
【発明の効果】
【0025】
以上説明した通り、本発明によれば、限られたメモリ領域を有効に活用することにより、メモリ容量を低減させることができるヒストグラム生成回路、光測距装置、ヒストグラム生成方法および光測距方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明による光測距装置の構成の説明図である。
図2】受光回路の説明図である。
図3】ヒストグラム生成回路の説明図である。
図4】ヒストグラム生成回路および代表値算出回路の動作説明図である。
図5】他の態様を示すヒストグラム生成回路および代表値算出回路の動作説明図である。
図6】FIFO方式の記憶部へのデータの書込み処理および読出し処理の説明図である。
図7】単一の記憶回路を用いる場合のヒストグラム生成手順の説明図である。
図8】二つの記憶回路を用いる場合のヒストグラム生成手順の説明図である。
図9】二つの記憶回路を用いる場合のヒストグラム生成手順の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明による光測距装置と光測距方法および光測距装置と、それらに用いられるヒストグラム生成回路およびヒストグラム生成方法を説明する。
図1に示すように、光測距装置200は、透光窓を備えたケーシングCに収容され、パルス状の測定光を出力する発光素子2と、測定光に対する物体からの反射光を検出するフォトンカウント型の複数の受光素子3と、発光素子2から出力された測定光を測定空間に向けて走査し、測定空間に存在する物体の表面から拡散反射された反射光を受光素子3に導く光走査装置10と、光走査装置10を作動させつつ発光素子2を駆動し、受光素子3で検出した反射光に対する信号を処理して物体までの距離を算出する制御回路100を備えたTOF方式の光測距装置である。
【0028】
光走査装置10は、発光素子2から出力された測定光を測定空間に向けて偏向するとともに、物体からの反射光を受光素子3に導く偏向ミラー11と、偏向ミラー11を回転軸P周りに回転駆動するモータ13と、モータ13の回転速度および回転位置を検知するエンコーダ14を備えている。
【0029】
エンコーダ14は外周に所定間隔でスリットが形成され回転軸P周りに回転する円盤14Aと、円盤14Aに形成されたスリットを透過する光を検出する透過型のフォトインタラプタ14Bで構成されている。
【0030】
偏向ミラー11は回転軸Pに対して45度傾斜する姿勢で固定され、回転軸Pの軸心上に受光素子3、集光レンズ12、発光素子2、投光レンズ15が其々配置されている。発光素子2から出力されたパルス状の測定光は、投光レンズ15を通過して平行光に整形された後に光ガイド16に沿って伝播し、偏向ミラー11で直角に偏向され、偏向ミラー11の回転とともに偏向走査されて監視領域に出力される。
【0031】
物体からの反射光が光ガイド16の周囲空間を伝播して偏向ミラー11に入射し、回転軸Pの軸心方向に偏向された後に集光レンズ12を通過して受光素子3に入射する。なお、上述した光走査装置10は例示であり、発光素子2から出力された測定光を所定の方向に走査または偏向し、その反射光を受光素子3に導くことができる光走査装置であれば、このような構成に限るものではない。例えば、定速で回転するポリゴンミラーや、圧電素子などの駆動力で揺動する偏向ミラーを備えた構成、光学系全体を回転駆動する構成や、発光素子2および受光素子3を含む光学系全体を回転駆動する構成などを採用することができる。
【0032】
発光素子2として近赤外域のレーザーを出力するレーザーダイオードが用いられ、受光素子3として複数のシングルフォトンアバランシェダイオード(以下、「SPAD」と記す。SPADは、Single Photon Avalanche Diodeの略記である。)を行列状に配置したシリコンフォトマルチプライヤ(以下、「SiPM」と記す。SiPMは、Silicon Photo Multipliersの略記である。)が用いられている。
【0033】
アバランシェフォトダイオード(以下、「APD」と記す。APDは、Avalanche Photo Diodeの略記である。)にフォトンが入射すると、電子・正孔対が生成され、電子と正孔が各々高電界で加速され、次々と雪崩のように衝突電離を引き起こして新たな電子・正孔対が生成される。
【0034】
APDの動作モードには、逆バイアス電圧を降伏電圧(ブレークダウン電圧)未満で動作させるリニアモードと、降伏電圧以上で動作させるガイガーモードとがある。リニアモードでは、降伏電圧未満の逆バイアス電圧を印加・制御することで増倍率を可変制御することができる。出力電流は、入射光量にほぼ比例し、逆バイアス電圧値によって増倍率すなわち感度を変えることが可能であり、入射光量の測定に用いられる。ガイガーモードでは、降伏電圧以上の逆バイアス電圧を印加することで、単一フォトンの入射でアバランシェ現象が起きる。
【0035】
SPADでは、APDの印加電圧を降伏電圧まで下げることにより非破壊的にアバランシェを止めることができる。印加電圧を下げてアバランシェ現象を停止させることはクエンチングと呼ばれる。最も単純なクエンチング回路はAPDと直列にクエンチング抵抗を接続することで実現される。アバランシェ電流が生ずるとクエンチング抵抗端子間の電圧上昇によってAPDのバイアス電圧が降下し、降伏電圧未満となるとアバランシェ電流が止まる。その後、再びAPDの印加電圧が降伏電圧を超えると光検出可能状態となるが、それまでの間にSPADが反応しない不感期間が生まれる。
【0036】
SPADのように、フォトン入射に対して電圧パルスを出力するフォトンカウント型の受光素子を用いる場合、電圧パルスの到来時刻を繰り返し測定してヒストグラムを作成し、その極大値を抽出することにより、外乱光の影響を排除することができる。
【0037】
制御回路100には、モータ駆動回路20、発光制御回路30、受光回路40、飛行時間測定回路50、ヒストグラム生成回路60、代表値算出回路70、距離演算回路80が含まれる。
【0038】
モータ駆動回路20は、エンコーダ14から出力されるパルス信号に基づいて偏向ミラー11が所定速度で回転するようにモータ13を駆動する。モータ13としてブラシレスDCモータやステッピングモータなどが好適に用いられる。
【0039】
発光制御回路30は、エンコーダ14から出力されるパルス信号に基づいて所定周期でパルス状の測定光を出力するように発光素子2を制御する。例えば、偏向ミラー11(モータ13)の回転速度を1200rpm(1回転50msec.)とし、測定光の走査角度の分解能つまり単位走査角度を0.25°とする場合には、28.8kHzでパルス状の測定光を出力することで、0.25°単位で測定光が出力されるようになる。なお、上述の数値は例示に過ぎず、本発明がこれらの数値に限定されるものではない。以下に例示する数値も同様である。
【0040】
実際には後述するように、単位走査角度0.25°の間に、1nsec.のパルス幅のパルス光が約2μsec.の間隔で16回出力され、其々のパルス光に対する反射光を検出した各受光素子3からの出力に基づいて、飛行時間測定回路50によって飛行時間、つまり測定光の出力時期から物体で反射して戻ってくるまでの時間が算出され、ヒストグラム生成回路60でヒストグラムが生成される。
【0041】
図1および図2に示すように、受光回路40は、受光素子(SiPM)3と、受光素子(SiPM)の出力が所定の加算閾値に達するとパルスを出力する比較回路44を備えている。受光素子(SiPM)3は、ガイガーモードのアバランシェフォトダイオード3Aとクエンチング抵抗41からなるSPAD3B及びその出力を短パルス波に整形するコンデンサを含む微分回路であるパルス整形回路42をそれぞれ複数備え、さらに各パルス整形回路42から出力される短パルス波を加算する加算回路43を備える。なお、SiPMを構成するSPADの数は、一般的には1ピクセル当たり約130~6000素子で構成されており、受光素子(SiPM)3はフォトンを検出したSPADの数に対応した出力波形をもつSiPM出力を生成する。
【0042】
飛行時間測定回路50は、発光制御回路30から出力される発光制御信号の立上り時点から比較回路44の出力信号の立上り時点(具体的には、測定光の出力時点から加算回路43の加算値(SiPM出力)が所定の加算閾値に達する時点)までの時間、つまり測定光の出力時点から反射光の検出時点までの時間を飛行時間として演算するTDC回路(TDC:Time-to-Digital Converter)で構成されている。
【0043】
図3には、ヒストグラム生成回路60の一例が示されている。ヒストグラム生成回路60は、測定光を所定周期で繰り返し出力したときに飛行時間測定回路50で算出された飛行時間が所定時間間隔で複数の領域に区分された時間軸上の各領域に分布する度数を示すヒストグラムを生成する。
【0044】
後に詳述するが、ヒストグラム生成回路60は、ヒストグラムを記憶する記憶回路62と、飛行時間測定回路50からの出力に基づいてヒストグラムを生成して記憶回路62に記憶する機能を備えた記憶処理回路61と、飛行時間測定回路50と記憶処理回路61との間で飛行時間を中継するFIFO方式の記憶回路63とを備えている。
【0045】
代表値算出回路70は、ヒストグラムに基づいて度数が所定のヒストグラム閾値に到る領域に分布する時間から物体に対する飛行時間の代表値を算出する。距離演算回路80は、代表値算出回路70で算出された飛行時間の代表値に基づいて物体までの距離を算出する。
【0046】
上述した飛行時間測定回路50、ヒストグラム生成回路60、代表値算出回路70および距離演算回路80は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて一体に構成することができる。
【0047】
発光素子2から物体に向けて出力されたパルス状の測定光に対する反射光が受光素子3であるSiPMに備えた複数のSPADで検出され、各SPADから出力されパルス整形回路42で波形整形された電圧パルスが加算回路43により加算される。測定光の出力時点から加算回路43による加算値が所定の加算閾値に達する時点までの飛行時間が飛行時間測定回路50により算出されて飛行情報が発生する。
【0048】
図4に示すように、単位走査角度(本実施形態では0.25°)の間に所定周期(本実施形態では約500kHz)で繰り返し出力される(本実施形態では16回繰り返し出力される)測定光に対して飛行時間測定回路50で算出される各飛行時間(図4では、「TDCカウント値Tm,n、ここに、mは発光番号、nはエッジ検出番号」と表記している。)に基づいて、ヒストグラム生成回路60により所定時間間隔(図4では、0.5nsec.)で複数の領域(図4では、各領域を「ビン(bin)」と表記している。)に区分された時間軸上の各領域に対応する飛行時間が分布する度数(Max.値で16となる。)を示すヒストグラムが生成される。光測距装置200の測距可能範囲の最短距離から最長距離に対応する飛行時間を所定時間間隔で等分した一区分、または最短距離から最長距離までの距離を所定距離間隔で等分した一区分をビンという。
【0049】
具体的に、測定光の出力時点から加算回路43の出力値が所定の加算閾値に達する時点までが飛行時間となり、ビンごとに存在する飛行時間の存在数を加算することでTDCエッジヒストグラムつまり度数Hnが求まり、ビンごとに存在する飛行時間を加算することでTDCSUMヒストグラムつまり合計飛行時間Snが求まる。
【0050】
そして、度数Hnが所定のヒストグラム閾値に到るビンに分布する飛行時間から代表値算出回路70によって物体に対する飛行時間の代表値が算出(Sn/Hn)される。さらに代表値算出回路70で算出された飛行時間の代表値に基づいて、距離演算回路80が物体までの距離を算出する。
【0051】
代表値算出回路70は、ヒストグラムに基づいて度数Hnが所定のヒストグラム閾値となる領域に分布する飛行時間の全加算値である合計飛行時間Snを、度数Hnの値で除した値を物体に対する飛行時間の代表値として算出する。図4の例では、Sn=T1,1+T2,1+T3,1+・・・+T*,*を度数Hnの値で除した値が代表値になる。
【0052】
図4の例では、度数が所定のヒストグラム閾値となるビンのみを対象に代表値を算出しているが、代表値算出回路70として、ヒストグラムに基づいて度数が所定のヒストグラム閾値に到るビンおよび当該領域に隣接するビンに分布する飛行時間の全加算値を対応するビンの各度数の加算値で除した値を物体に対する飛行時間の代表値として算出してもよい。
【0053】
複数のビンに区分された時間軸上の各領域に跨ってヒストグラムの度数が存在する場合も想定されるが、そのような場合でも、ヒストグラムに基づいて度数が所定のヒストグラム閾値に到るビンおよび当該ビンに隣接するビンに分布する飛行時間の全加算値を、対応するビンの各度数の加算値で除した値を物体に対する飛行時間の代表値として算出することにより代表値としてより正確な値が得られる。この場合、度数が所定のヒストグラム閾値に到るビンに隣接するビンとは度数が最大となるビンの左右の何れかに隣接するビンのうち度数が大きい方の領域を対象としてもよいし、両方の隣接する領域を対象としてもよい。
【0054】
また、単一のビンでは度数が所定のヒストグラム閾値に到らない場合であっても、複数のビンに分布する度数の全加算値がヒストグラム閾値に到るような場合には、複数のビンに分布する飛行時間の全加算値を対応するビンの各度数の加算値で除した値を物体に対する飛行時間の代表値として算出してもよい。その結果、代表値としてより正確な値が得られるようになる。ヒストグラムの隣り合うビンに度数が分散するチャタリングの影響を低減させることで正確な代表値が得られる。
【0055】
さらに、図5に示すように、飛行時間測定回路50を、測定光の出力時点から加算回路43の出力値が所定の加算閾値(第1の加算閾値)に達する各時点までの時間と、所定の加算閾値より高い加算閾値(第2の加算閾値)に達する時点までの時間の其々を飛行時間として算出するように構成してもよい。
【0056】
ヒストグラム生成回路60は、測定光を所定周期で繰り返し出力したときに飛行時間測定回路50で算出した其々の飛行時間が、所定時間間隔で複数の領域(ビン)に区分された時間軸上の各領域に分布する累積度数を示すヒストグラムを生成するように構成される。
【0057】
そして、代表値算出回路70は、ヒストグラムに基づいて度数が所定のヒストグラム閾値に到る領域(ビン)に分布する飛行時間のうち、所定の加算閾値に対応する各飛行時間の全加算値を、所定の加算閾値に対応する度数で除した値を物体に対する飛行時間の代表値として算出するように構成してもよい。
【0058】
この場合、図5に示すように、「TDCカウント値Tm,n」で示すエッジ検出番号nの最大値(Max)は32となり、ヒストグラムのダイナミックレンジの拡大と等価な効果が得られる。
【0059】
以下、図3に基づいて、ヒストグラム生成回路60を詳述する。
ヒストグラム生成回路60は、所定周期で繰返し出力される測定光の出力時点から各測定光に対する反射光の検出時点までの飛行時間または飛行距離である各飛行情報に基づいて、予め設定された測定範囲に分布する飛行情報の累積度数を示すヒストグラムを生成する回路ブロックである。
【0060】
本実施形態では、上述したように、飛行情報として飛行時間測定回路50から出力される飛行時間を対象とする例を説明するが、飛行情報として発光素子2から出射された測定光が物体から反射し、複数の受光素子3で検出されるまでの飛行時間から算出した飛行距離を対象としてもよい。なお、飛行情報は、少なくとも飛行時間または飛行距離を含んでいれば、他に受光レベルあるいは受光信号の時間幅などの他の情報を含んでいてもよい。
【0061】
ヒストグラム生成回路60は、FIFO方式の記憶回路63と、ヒストグラムを記憶する記憶回路62と、測定範囲を複数区画に区分けした各ビンを飛行情報に基づき順番付けて個別に識別するビン番号と、各ビンに含まれる飛行時間および累積度数と、を関連付けて記憶回路62に記憶する記憶処理回路61と、を備えている。ビン番号は、各ビンの順番を個別に識別できる情報であればよい。ビン番号は、例えば、測定光出力時からの飛行時間または飛行距離に対応して順番に数字が増加、または、減少するように設定すれば、昇順または降順に並べ替えるのに利用しやすくなる。
【0062】
発生した飛行時間を含む飛行情報と、その飛行時間が属するビンのビン番号と、を記憶処理回路61が関連付けて記憶回路62に格納することにより、飛行時間が発生しないビンに対応する記憶領域を記憶回路62に予め確保する必要がなく、記憶回路62の記憶容量を低減することができる。そして、同一のビン番号に複数の飛行時間が発生する場合には、記憶処理回路61が当該ビン番号に累積度数を関連付けることにより、予め設定された測定範囲における飛行時間の分布状況であるヒストグラムが生成できる。
【0063】
FIFO方式の記憶回路63は、記憶ブロック67と、記憶ブロック67へのデータの書き込みを制御する書込み回路64と、記憶ブロック67からのデータの読み出しを制御する読出し回路65と、状態管理回路66などを備えている。
【0064】
書込み回路64は、飛行時間測定回路50による飛行時間の発生に同期して飛行時間を記憶ブロック67に書き込むタイミングと書込みアドレスを制御するブロックである。読出し回路65は、書込み回路64によって記憶ブロック67に書き込まれた飛行時間を読み出すタイミングと読み出しアドレスを制御するブロックである。また、状態管理回路66は、記憶ブロック67の空容量を管理するとともに、書込み回路64および読出し回路65による記憶ブロック67へのアクセスが衝突しないように管理するブロックである。
【0065】
書込み回路64は、状態管理回路66からの信号に基づいて、記憶ブロック67の書込みアドレスを管理し、飛行時間測定回路50からの飛行時間を記憶ブロック67に書き込むように制御し、その都度アドレスカウンタを更新して次に書き込むアドレスを管理する。読出し回路65は、状態管理回路66からの信号に基づいて、記憶ブロック67から飛行時間をダミー判定回路68に読み出すように制御し、その都度アドレスカウンタを更新して次に読み出すアドレスを管理する。
【0066】
状態管理回路66は、記憶ブロック67の残容量を管理してフルになると書込み回路64に対応する信号を出力してさらなる書込みを抑制し、空になると読出し回路65に対応する信号を出力してさらなる読み出しを抑制する。
【0067】
飛行時間測定回路50、記憶ブロック67および書込み回路64は、発光制御回路30などを制御する所定周期の計測クロックに同期して動作して、記憶ブロック67への飛行時間の書込みシーケンスを実行し、記憶処理回路61、記憶回路62、記憶ブロック67および読出し回路65は、ヒストグラムの生成クロックに同期して動作して、記憶ブロック67からの飛行時間の読出しシーケンスを実行する。
【0068】
つまり、書込み回路64は、飛行時間測定回路50による飛行時間の発生時期を規定する計測クロックと同期して飛行情報を記憶するように動作し、読出し回路65は、飛行時間の発生とは非同期であるヒストグラムの生成クロックに同期して飛行情報をダミー判定回路68、ひいては記憶処理回路61に出力する。
【0069】
書込み回路64は、所定周期つまりパルス光の発光周期で飛行時間測定回路50からの飛行時間の出力が終了する度に、記憶ブロック67に一周期の飛行情報の出力の終了を示すダミーデータを記憶するダミーデータ付加回路69を備えている。
【0070】
読出し回路65は、記憶ブロック67から飛行時間を読み出す度に記憶処理回路61に飛行時間を出力し、記憶ブロック67からダミーデータを読み出すと、パルス光の発光周期の一周期に発生する飛行時間の出力の終了を示す信号を記憶処理回路61に出力するダミー判定回路68を備えている。記憶処理回路61は、ダミーデータに基づいてパルス光の発光周期の一周期内における飛行情報であるか否かを判別する。
【0071】
飛行時間測定回路50によって一周期内で複数の飛行時間が検出され、各飛行時間の発生間隔が短い場合であっても、其々の飛行時間をFIFO方式の記憶回路63にバッファリングしておけば、その後にFIFO方式の記憶回路63から読み出した各飛行情報に基づいてヒストグラムを更新する時間を確保できるようになり、データの喪失という不都合は生じない。
【0072】
以下に記憶処理回路61の動作について詳述する。
図6の上段に示すように、パルス光の各発光周期で飛行時間測定回路50から飛行時間(図6では「検出エコー」/「TDCカウント値」と表記している。)が出力される度に、書込み回路64によって記憶ブロック67にTDCカウント値が記憶(PUSH)される。
【0073】
「計測1」と表記されたパルス光の発光周期では、書込み回路64によって、飛行時間測定回路50から出力された三つの「検出エコー」が記憶ブロック67に記憶(PUSH)され、さらにダミーデータ付加回路69によって計測終了を示すダミーデータが記憶(PUSH)される。「計測2」と表記されたパルス光の発光周期では、書込み回路64によって、飛行時間測定回路50から出力された二つの「検出エコー」が記憶ブロック67に記憶(PUSH)され、さらにダミーデータ付加回路69によって計測終了を示すダミーデータが記憶(PUSH)される。
【0074】
記憶ブロック67に記憶(PUSH)された飛行時間は、記憶処理回路61がビジーではなく記憶ブロック67にデータが記憶されているときに、読出し回路65によってダミー判定回路68に読み出される(POP)。ダミー判定回路68でダミーデータであると判定されると、パルス光の一発光周期に対する計測が終了したと判定して、その旨を示す終了信号が記憶処理回路61に出力される。記憶処理回路61は、終了信号を検出するまでの間にダミー判定回路68から入力された飛行時間に基づいてヒストグラムを生成する。
【0075】
図6の下段には、上段に示した順番で、書込み回路64によって記憶ブロック67に各飛行時間が記憶(PUSH)され、書込み回路64による書込みとは非同期で、読出し回路65によって記憶ブロック67から各飛行時間が読み出される(POP)シーケンスが示されている。
【0076】
図7には、記憶回路62が単一の記憶回路で構成される場合の態様が示されている。ダミー判定回路68から入力された飛行時間が属するビン番号が「35」であると記憶処理回路61で算出された場合を例に説明する。左端はその時点で記憶回路62に記憶されたビン番号が示されている。なお、記憶回路62には、ビン番号、度数、飛行時間などのビン番号に関するデータが格納されている。
【0077】
記憶処理回路61は、新たなビン番号「35」と既に記憶回路62に記憶されたビン番号を比較し、記憶回路62に記憶されたビン番号が新たなビン番号「35」より小さいと判定すると、その記憶状態を維持し、記憶回路62に記憶されたビン番号が新たなビン番号「35」より大きいと判定すると、大きなビン番号の記憶アドレスを一つずつずらせて格納し、空いたアドレスに新たなビン番号「35」を格納する。図7では、ビン番号「60」、「50」、「40」の記憶アドレスが変更され、ビン番号「40」が格納されていた記憶アドレスにビン番号「35」が格納される。なお、記憶回路62に記憶されたビン番号に既に「35」があれば、当該ビン番号の度数を「1」加算する。
【0078】
即ち、記憶処理回路61は、飛行情報が発生すると、記憶回路62に記憶されたビン番号を読み出して、今回の飛行情報が属するビン番号を含めて昇順または降順に並べ替えて、ビン番号と飛行情報および累積度数を記憶回路62に記憶する。昇順または降順の切替は書込みアドレスを順にインクリメントするかデクリメントするかによる。
【0079】
図8および図9には、記憶回路62が二つの記憶回路(記憶回路A、記憶回路B)で構成される場合の態様が示されている。記憶回路Aおよび記憶回路Bは、飛行情報が発生したときに、一方が、既に記憶されたビン番号を把握するための参照用記憶回路として機能し、他方が、新たなビン番号を含むビン番号と累積度数を記憶する保存用記憶回路として機能する。
【0080】
記憶処理回路61は、飛行情報が発生する度に、参照用記憶回路と保存用記憶回路の機能を切り替えて、参照用記憶回路に記憶されたビン番号を読み出して、今回の飛行時間情報が属するビン番号を含めて昇順または降順に並べ替えて、ビン番号と飛行情報および累積度数を保存用記憶回路に記憶する。
【0081】
つまり、記憶回路62として、既に記憶されたビン番号を把握するための参照用記憶回路と、新たなビン番号を含むビン番号と累積度数を記憶する保存用記憶回路の二つを備える。記憶処理回路61によって保存用記憶回路に記憶されたビン番号と累積度数が直近のヒストグラムとなる。
【0082】
新たな飛行情報が発生すると、記憶処理回路61は保存用記憶回路を参照用記憶回路として機能させて、参照用記憶回路から読み出したビン番号と新たな飛行情報が属するビン番号と対比する。そして各ビン番号が昇順または降順になるように並び替えて、参照用記憶回路から機能を切り替えた保存用記憶回路にビン番号と飛行情報および累積度数を記憶する。参照用記憶回路と保存用記憶回路に機能を分離することで、一方の記憶回路からの読出し処理と他方の記憶回路への書き込み処理を同時に行えるようになり、単一の記憶回路を用いる場合と比較して処理速度が上昇する。
【0083】
図8の例では、記憶回路Aが参照用記憶回路として機能し、記憶回路Bが保存用記憶回路として機能する。上述と同様に、ダミー判定回路68から入力された飛行時間が属するビン番号が「35」であると記憶処理回路61で算出された場合を例に説明する。左端の図には、参照用記憶回路として機能する記憶回路Aに、その時点で記憶されたビン番号が示されている。なお、記憶回路Aには、ビン番号、度数、飛行時間などのデータが格納されていることは上述と同じである。
【0084】
記憶処理回路61は、新たなビン番号「35」と参照用記憶回路(記憶回路A)に記憶されたビン番号を比較し、参照用記憶回路(記憶回路A)に記憶されたビン番号が新たなビン番号「35」より小さいと判定すると、参照用記憶回路(記憶回路A)に記憶されたビン番号に関するデータを保存用記憶回路(記憶回路B)に、その順番に記憶する。記憶処理回路61は、参照用記憶回路(記憶回路A)に記憶されたビン番号が新たなビン番号「35」より大きいと判定すると、次のアドレスに新たなビン番号「35」に関するデータを保存用記憶回路(記憶回路B)に記憶し、さらにその次のアドレスに参照用記憶回路(記憶回路A)に記憶され新たなビン番号「35」より大きいビン番号に関するデータを保存用記憶回路(記憶回路B)に記憶する。なお、参照用記憶回路(記憶回路A)に記憶されたビン番号に既に「35」があれば、当該ビン番号の度数を「1」加算して保存用記憶回路(記憶回路B)に記憶する。
【0085】
また、記憶処理回路61は、飛行情報の最初の発生時には、参照用記憶回路と保存用記憶回路の機能を切り替えることなく、ビン番号と飛行時間および累積度数を記保存用記憶回路に記憶する。最初の飛行情報の発生時には、ビン番号を対比する必要がないので、何れか一方の記憶回路を保存用記憶回路として機能させて、ビン番号と飛行情報および累積度数(この場合は「1」となる。)を記憶すればよい。
【0086】
図9には、ダミー判定回路68でダミーデータが入力されるまでの各計測の度に、記憶処理回路61によって、参照用記憶回路と保存用記憶回路の機能が切り替えられてヒストグラムデータが更新される手順が示されている。最後の計測の後に、保存用記憶回路に記憶されたビン番号に関するデータが代表値算出回路70に出力されて代表値が算出され、さらに距離演算回路によって距離が算出される。
【0087】
上述した実施形態では、ヒストグラム生成回路60にFIFO方式の記憶回路63を備えた構成を説明したが、FIFO方式の記憶回路63を備えずにヒストグラム生成回路60を構成してもよい。この場合には、飛行時間測定回路50からの測定情報が直接に記憶処理回路61に出力され、その都度、記憶処理回路61が図7で説明した単一の記憶回路62にヒストグラムデータを更新記憶し、或いは、図8,9に示した一対の記憶回路62にヒストグラムデータを更新記憶するように構成すればよい。但し、飛行時間測定回路50からの測定情報の出力間隔が非常に短い場合には、記憶回路62へのヒストグラムデータの更新記憶を損なう虞がある点に留意すべきである。
【0088】
以上説明したように、本発明によるヒストグラム生成方法は、所定周期で繰返し出力される測定光の出力時点から各測定光に対する反射光の検出時点までの飛行時間または飛行距離である各飛行情報に基づいて、予め設定された測定範囲に分布する飛行情報の累積度数を示すヒストグラムを生成するヒストグラム生成方法であって、ヒストグラムを記憶回路に記憶する記憶ステップと、測定範囲を複数区画に区分けした各ビンを飛行情報に基づき順番付けて個別に識別するビン番号と、各ビンに含まれる飛行情報および累積度数と、を関連付けて記憶回路に記憶する記憶処理ステップと、を備えている。
【0089】
また、本発明による光測距装置は、パルス状の測定光を出力する発光素子と、測定光に対する物体からの反射光を検出するフォトンカウント型の複数の受光素子と、各受光素子から出力される電圧パルスを加算する加算回路と、測定光の出力時点から加算回路の加算値が所定の加算閾値に達する時点までの時間または前記時間に対応する距離を飛行情報として算出する飛行情報算出回路と、測定光を所定周期で繰り返し出力したときに飛行情報算出回路で算出された飛行情報に基づいて、予め設定された測定範囲に分布する前記飛行情報の累積度数を示すヒストグラムを生成するヒストグラム生成回路と、ヒストグラムに基づいて度数が所定のヒストグラム閾値に到るビン番号のビンに分布する飛行情報から物体に対する飛行情報の代表値を算出する代表値算出回路と、代表値算出回路で算出された飛行情報の前記代表値に基づいて物体までの距離を算出する距離演算回路と、を備えている。
【0090】
さらに、本発明による光測距方法は、発光素子から出力されるパルス状の測定光に対する物体からの反射光をフォトンカウント型の複数の受光素子で検出する反射光検出ステップと、測定光の出力時点から各受光素子から出力される電圧パルスの加算値が所定の加算閾値に達する時点までの時間または前記時間に対応する距離を飛行情報として算出する飛行情報算出ステップと、測定光を所定周期で繰り返し出力したときに飛行情報算出ステップで算出された飛行情報に基づいて、予め設定された測定範囲に分布する飛行情報の累積度数を示すヒストグラムを生成するヒストグラム生成方法を実行するヒストグラム生成ステップと、ヒストグラムに基づいて度数が所定のヒストグラム閾値に到るビン番号のビンに分布する飛行情報から物体に対する飛行情報の代表値を算出する代表値算出ステップと、代表値算出ステップで算出された飛行情報の代表値に基づいて物体までの距離を算出する距離演算ステップと、を備えている。
【0091】
以上説明した実施形態は、本発明の一例であり、実施形態の記載により本発明の範囲が限定されるものではない。
【符号の説明】
【0092】
2:発光素子
3:受光素子
10:光走査装置
20:モータ駆動回路
30:発光制御回路
40:受光回路
50:飛行時間測定回路
60:ヒストグラム生成回路
61:記憶処理回路
62:記憶回路
63:FIFO方式の記憶回路
64:書込み回路
65:読出し回路
66:状態管理回路
67:記憶ブロック
68:ダミー判定回路
69:ダミーデータ付加回路
70:代表値算出回路
80:距離演算回路
100:制御回路
200:光測距装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9