(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087205
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/01 20060101AFI20230616BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
B60C11/01 A
B60C11/13 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201451
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 昌
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA39
3D131BB03
3D131BC22
3D131BC31
3D131BC33
3D131BC35
3D131EB11V
3D131EB11W
3D131EB11Y
3D131EB19X
3D131EB20X
3D131EB23X
3D131EB23Y
3D131EB24V
3D131EB24W
3D131EB24X
3D131EB24Y
3D131EB26X
3D131EC01W
3D131EC01X
3D131EC01Y
3D131EC02V
3D131EC04X
(57)【要約】
【課題】ショルダー陸を陸本体と犠牲リブとを区画する周溝の溝底クラックの発生の抑制と、犠牲リブの摩耗後において陸本体の摩耗の抑制とを実現した空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤは、接地面からタイヤ径方向内側に延び且つ複数のベルトプライのベルト端のうち最もタイヤ軸方向外側にあるベルト端よりもタイヤ軸方向外側に位置する周溝を有する。周溝は、陸を、陸本体および陸本体よりもタイヤ軸方向外側に位置する犠牲リブに区画する。犠牲リブは、周溝の溝底よりもタイヤ径方向外側に第1環状溝を有する。第1環状溝は、周溝の壁面またはバットレスの表面に開口し且つ犠牲リブ内で終端し且つタイヤ周方向に延びて円環状である。バットレスの表面は、周溝の溝底よりもタイヤ径方向内側に開口する第2環状溝を有する。第2環状溝は、周溝のタイヤ軸方向内側の壁面よりもタイヤ軸方向内側へ延びて終端している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーカスと、接地面を形成する陸と、前記カーカスと前記接地面との間に配置される複数のベルトプライと、前記接地面の端からタイヤ径方向内側に延びるバットレスの表面と、前記接地面からタイヤ径方向内側に延び且つタイヤ周方向に一周し且つ前記複数のベルトプライのベルト端のうち最もタイヤ軸方向外側にあるベルト端よりもタイヤ軸方向外側に位置する周溝と、を備え、
前記周溝は、前記陸を、陸本体および前記陸本体よりもタイヤ軸方向外側に位置する犠牲リブに区画し、
前記犠牲リブは、前記周溝の溝底よりもタイヤ径方向外側に第1環状溝を有し、前記第1環状溝は、前記周溝の壁面または前記バットレスの表面に開口し且つ前記犠牲リブ内で終端し且つタイヤ周方向に延びて円環状であり、
前記バットレスの表面は、前記周溝の溝底よりもタイヤ径方向内側に開口し、タイヤ周方向に延びて円環状となる第2環状溝を有し、前記第2環状溝は、前記周溝のタイヤ軸方向内側の壁面よりもタイヤ軸方向内側へ延びて終端している、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1環状溝は、前記周溝の溝深さの中央または前記中央よりもタイヤ径方向内側に配置されている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1環状溝のタイヤ軸方向の長さは、前記接地面における前記犠牲リブのタイヤ軸方向の長さの3分の1以下である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1環状溝は、少なくとも1つ設けられ、前記第1環状溝の1本あたりの最低幅は2mmであり、少なくとも1つの前記第1環状溝の合計幅は8mm以下である、請求項1~3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第2環状溝は、前記複数のベルトプライのベルト端のうち最もタイヤ軸方向外側にあるベルト端から3mm以上離れている、請求項1~4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第2環状溝は、少なくとも1つ設けられ、前記第2環状溝の1本あたりの最低幅は2mmであり、少なくとも1つの前記第2環状溝の合計幅は4mm以下である、請求項1~5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記第1環状溝及び前記第2環状溝は、サイドウォールの表面に沿って10mm以上離れている、請求項1~6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
トラックやバスに用いられる空気入りタイヤは、接地面を形成する陸の端部の接地圧力が高く、陸が摩耗しやすいことが知られている。
【0003】
特許文献1には、タイヤ側壁面におけるバットレスに、2本の環状溝を形成したタイヤが開示されている。
【0004】
特許文献2には、トレッドを区画する溝と、ショルダー部に形成された細溝列とを有するタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-99077号公報
【特許文献2】特開2000-6615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、接地面を形成するショルダー陸と、ショルダー陸の接地面からタイヤ径方向内側に延びる周溝と、を有し、周溝によってショルダー陸が陸本体と犠牲リブとに区画されたタイヤの場合、周溝の溝底にクラックが発生する可能性がある。また、犠牲リブが摩耗した後には、陸本体の接地圧が高まって陸本体の摩耗が促進されてしまう場合がある。
【0007】
本開示は、ショルダー陸を陸本体と犠牲リブとを区画する周溝の溝底クラックの発生の抑制と、犠牲リブの摩耗後において陸本体の摩耗の抑制とを実現した空気入りタイヤを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の空気入りタイヤは、カーカスと、接地面を形成する陸と、前記カーカスと前記接地面との間に配置される複数のベルトプライと、前記接地面の端からタイヤ径方向内側に延びるバットレスの表面と、前記接地面からタイヤ径方向内側に延び且つタイヤ周方向に一周し且つ前記複数のベルトプライのベルト端のうち最もタイヤ軸方向外側にあるベルト端よりもタイヤ軸方向外側に位置する周溝と、を備え、前記周溝は、前記陸を、陸本体および前記陸本体よりもタイヤ軸方向外側に位置する犠牲リブに区画し、前記犠牲リブは、前記周溝の溝底よりもタイヤ径方向外側に第1環状溝を有し、前記第1環状溝は、前記周溝の壁面または前記バットレスの表面に開口し且つ前記犠牲リブ内で終端し且つタイヤ周方向に延びて円環状であり、前記バットレスの表面は、前記周溝の溝底よりもタイヤ径方向内側に開口し、タイヤ周方向に延びて円環状となる第2環状溝を有し、前記第2環状溝は、前記周溝のタイヤ軸方向内側の壁面よりもタイヤ軸方向内側へ延びて終端している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の空気入りタイヤの要部を示すタイヤ子午線断面図。
【
図3】
図1の要部を拡大して示すタイヤ子午線断面図。
【
図4】第1実施形態の変形例を示すタイヤ子午線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下、本開示の第1実施形態の空気入りタイヤについて、図面を参照して説明する。図において、「CD」はタイヤ周方向を意味し、「AD」はタイヤ軸方向を意味し、「RD」はタイヤ径方向を意味する。各図は、タイヤ新品時の形状を示す。
【0011】
図1及び
図2に示すように、空気入りタイヤは、一対のビード(非図示)と、各々のビードからタイヤ径方向外側RD1に延びるサイドウォール2と、サイドウォール2のタイヤ径方向外側RD1端同士を連ねるトレッド3とを備える。ビードには、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビードコア(非図示)と、硬質ゴムからなるビードフィラー(非図示)とが配置されている。ビードは、リム(非図示)のビードシートに装着され、空気圧が所定圧(例えばJATMAで決められた空気圧)であれば、タイヤ内圧によりリムフランジに適切にフィッティングし、タイヤがリムに嵌合される。
【0012】
また、このタイヤは、トレッド3からサイドウォール2を経てビードに至るトロイド状のカーカス4を備える。カーカス4は、一対のビード同士の間に設けられ、その端部がビードコアを介して巻き上げられた状態で係止されている。カーカス4の内周側には、空気圧を保持するためのインナーライナーゴム5が配置されている。
【0013】
トレッド3におけるカーカス4の外周には、カーカス4を補強するための複数枚(第1実施形態では4枚)のベルトプライ6a,6b,6c,6dと、トレッドゴム30と、が内側から外側に向けて順に設けられている。複数のベルトプライ6a,6b,6c,6dは、カーカス4とトレッドゴム30との間に配置される。トレッドゴム30が形成する接地面33とカーカス4との間に複数のベルトプライ6a,6b,6c,6dが配置されているともいえる。トレッド3の表面には、タイヤ周方向CDに沿って延びる複数の主溝31と、主溝31により区画されタイヤ周方向CDに連続する陸32とが形成されている。第1実施形態では、リブタイヤであるので、タイヤ周方向CDに分断されるブロックが形成されていない。第1実施形態では、タイヤ片側に2本の主溝31が形成され、全体で4本の主溝31を有するが、これに限定されない。例えば、全体で3本でもよく、5本以上でもよい。
【0014】
第1実施形態では、主溝31によって、ショルダー陸32a、クオーター陸32b、センター陸32cが形成されているが、陸32の数は適宜変更可能である。センター陸32cは、タイヤ赤道面CLに最も近い陸である。ショルダー陸32aは、複数の主溝31のうち最もタイヤ軸方向外側AD1にある主溝31よりもタイヤ軸方向外側AD1に形成される陸である。クオーター陸32bは、ショルダー陸32aとセンター陸32cの間に配置される陸である。主溝31の数によってクオーター陸32bが省略される場合がある。
【0015】
4枚のベルトプライ6a、6b、6c、6dは、それぞれ簾状に平行配列した複数本のスチールコードを含み、それらをゴム被覆して形成されている。4枚のベルトプライ6a、6b、6c、6dのうち、カーカス4から外周に向けて第2及び第3番目となるベルトプライ6b、6cのコードは、タイヤ軸に対して互いに逆方向に傾斜して交差している。第2及び第3のベルトプライ6b、6cは、いわゆるメインベルトであり、トレッドゴム30を挟み込んでいる。
【0016】
図1に示すように、トレッド3の陸32は、接地面33を形成する。接地面33におけるタイヤ軸方向外側AD1の接地端LEよりも更にタイヤ軸方向外側AD1には、サイドウォールゴムで形成されるタイヤ側壁面7がある。タイヤ側壁面7は、接地端LEからタイヤ最大幅部位(非図示)までの領域にバットレス70を含む。第1実施形態のように、接地端LEは、重荷重用タイヤにおいては接地面33とタイヤ側壁面7との稜線が該当する。
【0017】
接地端LEは、接地面33のタイヤ軸方向ADの最も外側の端である。
接地面33は、正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤを平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの路面に接地する面を意味する。正規リムは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤごとに定めるリムである。 JATMAであれば標準リム、TRA、又はETRTOであれば「Measuring Rim」となる。
【0018】
正規内圧は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤごとに定めている空気圧である。JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATION PRESSURE」である。
【0019】
正規荷重は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤごとに定めている荷重である。JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば上記の表に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」である。
【0020】
図3は、
図1の要部を拡大した図である。
図1~
図3に示すように、タイヤは、接地面33からタイヤ径方向内側RD2に延びる周溝80を有する。周溝80は、タイヤ周方向CDに一周している。周溝80(その溝底80aを含む)は、複数のベルトプライ6a,6b,6c,6dのベルト端のうち最もタイヤ軸方向外側AD1にあるベルト端60よりもタイヤ軸方向外側AD1に位置する。周溝80は、ショルダー陸32aを、陸本体34および犠牲リブ35に区画する。犠牲リブ35は、陸本体34のタイヤ軸方向外側AD1に位置する。第1実施形態の周溝80は、タイヤ径方向に平行に延びている。
【0021】
周溝80の溝深さは、15mm以下としてもよく、または、周溝80の溝深さは、主溝の深さに対して80%以上且つ100%以下としてもよい。
周溝80のタイヤ軸方向ADの幅は、1.5mm以上且つ3.0mm以下としてもよい。
周溝80は、接地端LEから2.0mm以内に配置されているとしてもよい。
周溝80は、接地端LEからタイヤ軸方向内側AD2に向けて、ショルダー陸32aのタイヤ軸方向ADの寸法の20%の位置よりもタイヤ軸方向外側AD1に配置されているとしてもよい。
【0022】
犠牲リブ35は、少なくとも1つの第1環状溝90を有する。少なくとも1つの第1環状溝90は、周溝80の溝底80aよりもタイヤ径方向外側RD1に配置される。第1環状溝90が複数形成される場合には、全ての第1環状溝90が周溝80の溝底80aよりもタイヤ径方向外側RD1に配置される。第1環状溝90は、バットレス70の表面7に開口し且つ犠牲リブ35内で終端する。第1環状溝90は、タイヤ周方向CDに連続して延びて円環状に形成されている。
第1環状溝90によって犠牲リブ35がしなることが可能になり、第1環状溝90の溝底も応力を負担するので、周溝80の溝底80aに作用する応力を分散可能となる。
【0023】
図3に示すように、第1環状溝90は、周溝80の溝深さの中央C1に配置され、または、周溝80の溝深さの中央C1よりもタイヤ径方向内側RD2に配置されている、としてもよい。中央C1は、周溝80の溝深さの半分である。これにより、路面に接触する接地面33から第1環状溝90を遠ざけることができるので、第1環状溝90を起点とするクラックの発生を抑制可能となる。第1環状溝90が複数ある場合には、最もタイヤ径方向外側RD1にある第1環状溝90が、周溝80の溝深さの中央C1に配置されている、または、周溝80の溝深さの中央C1よりもタイヤ径方向内側RD2に配置されていることが好ましい。
【0024】
第1環状溝90のタイヤ軸方向ADの長さD2は、接地面33における犠牲リブ35のタイヤ軸方向ADの長さD1の3分の1以下であることが好ましい。犠牲リブ35の剛性を確保して、外傷に対する耐久性を確保するためである。第1環状溝90のタイヤ軸方向ADの長さD2は、接地面33における犠牲リブ35のタイヤ軸方向ADの長さD1の3分の1よりも大きければ、犠牲リブ35の剛性が損なわれて外傷に対して弱くなる。
【0025】
第1環状溝90は、少なくとも1つ設けられている。第1環状溝90の1本あたりの最低幅は2mmである。第1環状溝90の合計幅は8mm以下であることが好ましい。第1実施形態では、第1環状溝90は1本形成されているので、第1環状溝90の幅E1は、2mm以上且つ8mm以下にすることができる。別の実施形態において第1環状溝90が2本であれば、第1環状溝90の幅E1は、2mm以上且つ4mm以下にすることができる。別の実施形態において第1環状溝90が3本であれば、第1環状溝90の幅E1は、2mm以上且つ(8/3)mm以下にできる。別の実施形態において、第1環状溝90が4本あれば、第1環状溝90の幅E1は、2mmである。
第1環状溝90の幅が2mmよりも小さければ、応力を分散させる効果が表れにくく、第1環状溝90の合計幅が8mmを超えると犠牲リブの剛性が損なわれて、外傷に対する耐久性が低下する。
第1環状溝90の幅は厚み方向で計測する。第1実施形態において第1環状溝90は、タイヤ子午線断面において、互いに平行な直線面と、端部を形成する曲線とを有する形状である。第1環状溝90の幅E1は、互いに平行な直線面の垂線で計測される。
【0026】
バットレス70の表面7は、少なくとも1つの第2環状溝91を有する。第2環状溝91は、周溝80の溝底80aよりもタイヤ径方向内側RD2に開口する。第2環状溝91は、タイヤ周方向に連続して延びて円環状に形成されている。第2環状溝91は、周溝80のタイヤ軸方向内側AD2の壁面80cよりもタイヤ軸方向内側AD2へ延びて終端している。第2環状溝91のタイヤ軸方向内側AD2の端91aは、周溝80のタイヤ軸方向内側AD2の壁面80cよりもタイヤ軸方向内側AD2に位置する。
図3に示すように、第2環状溝91が、周溝80のタイヤ軸方向内側AD2の壁面80cよりもタイヤ軸方向内側AD2へ延びているので、犠牲リブ35が摩耗して消失した後であっても陸本体34の端の接地圧力を下げることができ、陸本体34の摩耗を抑制可能となる。
【0027】
第2環状溝91は、複数のベルトプライ6a,6b,6c,6dのベルト端のうち最もタイヤ軸方向外側AD1にあるベルト端60から3mm以上離れている、としてもよい。すなわち、第2環状溝91と、ベルト端60との間の最短距離D3が3mm以上あることが好ましい。万一、第2環状溝91にクラックが発生したとしても、そのクラックがベルトプライ6bに到達することを抑制可能となる。
また、第2環状溝91は、カーカス4との最短距離D5が3mm以上あることが好ましい。万一、第2環状溝91にクラックが発生したとしても、そのクラックがカーカス4に到達することを抑制可能となる。
【0028】
第2環状溝91は、少なくとも1つ設けられている。第2環状溝91の1本あたりの最低幅は2mmである。第2環状溝91の合計幅は4mm以下であることが好ましい。第1実施形態では、第2環状溝91は1本形成されているので、第2環状溝91の幅E2は、2mm以上且つ4mm以下にすることができる。別の実施形態において、第2環状溝91が2本であれば、第2環状溝91の幅E2は、2mmである。つまり、第2環状溝91は、1本または2本設けることが可能である。第2環状溝91の幅が2mmよりも小さければ、応力を分散させる効果が表れにくく、第2環状溝91の合計幅が4mmを超えると犠牲リブの剛性が損なわれて、外傷に対する耐久性が低下する。
【0029】
第1環状溝90と第2環状溝91は、
図1に示すように、サイドウォール2の表面7に沿って10mm以上離れていることが好ましい。つまり、サイドウォール2の表面7に沿った第1環状溝90と第2環状溝91の離間距離D4は、10mm以上である。バットレス70全体の剛性を確保するためである。
【0030】
第1環状溝90及び第2環状溝91は、その向きを任意に設定可能であるが、第1の向きと第2の向きの間の向きであってもよい。第2の向きは、
図3に示すように、犠牲リブ35の接地面33と平行となる向きであり、タイヤ軸方向ADに対する角度θがN度とする。タイヤ軸方向内側AD2の端が、タイヤ軸方向外側AD1の端よりもタイヤ径方向外側RD1に位置する向きであるともいえる。
第1の向きは、タイヤ軸方向ADに平行となる向きであり、タイヤ軸方向ADに対する角度θが0度となる。タイヤ軸方向内側AD2の端とタイヤ軸方向外側AD1の端とがタイヤ径方向RDに同位置にあるともいえる。
第1環状溝90及び第2環状溝91は、タイヤ軸方向ADに対する角度θが0度以上且つN度以下にすることが可能となる。
【0031】
<第1実施形態の変形例>
(1)第1環状溝90が、周溝80の溝深さの中央C1よりもタイヤ径方向外側RD1に配置されていてもよい。
【0032】
(2)第1環状溝90及び第2環状溝91の向きについて、タイヤ軸方向ADに対する角度θがマイナスとなる向きでもよい。すなわち、第1環状溝90のタイヤ軸方向内側AD2の端が、第1環状溝90のタイヤ軸方向外側AD1の端よりもタイヤ径方向内側RD2に位置してもよい。第2環状溝91も同様である。
【0033】
(3)
図1~3に示す実施形態では、第1環状溝90は、バットレス70の表面7に開口しているが、これに限定されない。例えば、
図4に示す実施形態のように、第1環状溝90は、周溝80の側壁80bに開口してもよい。
【0034】
(4)第1実施形態では、第2環状溝91は、複数のベルトプライ6a,6b,6c,6dのベルト端のうち最もタイヤ軸方向外側AD1にあるベルト端60よりもタイヤ径方向内側RD2に位置するが、これに限定されない。例えば、第2環状溝91は、複数のベルトプライ6a,6b,6c,6dのベルト端のうち最もタイヤ軸方向外側AD1にあるベルト端60よりもタイヤ径方向外側RD1に位置してもよい。また、第2環状溝91は、複数のベルトプライ6a,6b,6c,6dのベルト端のうち最もタイヤ軸方向外側AD1にあるベルト端60とタイヤ径方向RDで同位置にあってもよい。
【0035】
(5)第1環状溝90及び第2環状溝91の子午線断面の形状は、直線状の本体と、湾曲する端部とを合わせた形状に限定されない。本体が湾曲していてもよい。
【0036】
以上のように、
図1~
図4に示す実施形態の空気入りタイヤのように、カーカス4と、接地面33を形成する陸32(ショルダー陸32a)と、カーカス4と接地面33との間に配置される複数のベルトプライ6a,6b,6c,6dと、接地面33の端(LE)からタイヤ径方向内側RD2に延びるバットレス70の表面7と、接地面33からタイヤ径方向内側RD2に延び且つタイヤ周方向CDに一周し且つ複数のベルトプライ6a,6b,6c,6dのベルト端のうち最もタイヤ軸方向外側AD1にあるベルト端60よりもタイヤ軸方向外側AD1に位置する周溝80と、を備え、周溝80は、陸32を、陸本体34および陸本体34よりもタイヤ軸方向外側AD1に位置する犠牲リブ35に区画し、犠牲リブ35は、周溝80の溝底80aよりもタイヤ径方向外側RD1に第1環状溝90を有し、第1環状溝90は、周溝80の壁面80cまたはバットレス70の表面7に開口し且つ犠牲リブ35内で終端し且つタイヤ周方向CDに延びて円環状であり、バットレス70の表面7は、周溝80の溝底80aよりもタイヤ径方向内側RD2に開口し、タイヤ周方向CDに延びて円環状となる第2環状溝91を有し、第2環状溝91は、周溝80のタイヤ軸方向内側AD2の壁面80cよりもタイヤ軸方向内側AD2へ延びて終端している、としてもよい。
【0037】
この構成によれば、第1環状溝90を起点として犠牲リブ35がしなることが可能になり、周溝80だけでなく第1環状溝90も応力を負担するので、周溝80の溝底80aに作用する応力を分散させることができ、周溝80の溝底80aのクラックの発生を抑制可能となる。また、周溝80のタイヤ軸方向内側AD2の壁面80cよりもタイヤ軸方向内側AD2へ第2環状溝91が延びていることで、犠牲リブ35が摩耗した後であっても陸本体34の端の接地圧力を下げることができ、陸本体34の摩耗を抑制可能となる。
【0038】
特に限定されないが、
図1~4に示す実施形態のように、第1環状溝90は、周溝80の溝深さの中央C1または中央C1よりもタイヤ径方向内側RD2に配置されている、としてもよい。
この構成によれば、第1環状溝90を路面に接触する接地面33から遠ざけることができるので、第1環状溝90を起点とするクラックの発生を抑制可能となる。
【0039】
特に限定されないが、
図1~4に示す実施形態のように、第1環状溝90のタイヤ軸方向ADの長さD2は、接地面33における犠牲リブ35のタイヤ軸方向ADの長さD1の3分の1以下である、としてもよい。
この構成によれば、犠牲リブ35の剛性を確保でき、外傷に対する耐久性を確保可能となる。
【0040】
特に限定されないが、
図1~4に示す実施形態のように、第1環状溝90は、少なくとも1つ設けられ、第1環状溝90の1本あたりの最低幅は2mmであり、少なくとも1つの第1環状溝90の合計幅は8mm以下である、としてもよい。
幅が小さければ効果が表れにくく、合計幅を8mm以下に抑制することで犠牲リブの剛性を確保でき、外傷に対する耐久性を確保可能となる。
【0041】
特に限定されないが、
図1~4に示す実施形態のように、第2環状溝91は、複数のベルトプライ6a,6b,6c,6dのベルト端のうち最もタイヤ軸方向外側AD1にあるベルト端60から3mm以上離れている、としてもよい。
第2環状溝91にクラックが発生したとしても、クラックがベルトプライに到達することを抑制可能となる。
【0042】
特に限定されないが、
図1~4に示す実施形態のように、第2環状溝91は、少なくとも1つ設けられ、第2環状溝91の1本あたりの最低幅は2mmであり、少なくとも1つの第2環状溝91の合計幅は4mm以下である、としてもよい。
幅が小さければ効果が表れにくく、合計幅を4mm以下に抑制することで犠牲リブの剛性を確保でき、外傷に対する耐久性を確保可能となる。
【0043】
特に限定されないが、
図1~4に示す実施形態のように、第1環状溝90及び第2環状溝91は、サイドウォール2の表面7に沿って10mm以上離れている、としてもよい。
この構成によれば、陸本体34及び犠牲リブ35の剛性を確保可能となる。
【0044】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0045】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0046】
32a…ショルダー陸(陸)、33…接地面、34…陸本体、35…犠牲リブ、4…カーカス、6a,6b,6c,6d…ベルトプライ、60…ベルト端、7…バットレスの表面、70…バットレス、80…周溝、90…第1環状溝、91…第2環状溝、CD…タイヤ周方向、LE…接地端(接地面の端)、AD1…タイヤ軸方向外側、AD2…タイヤ軸方向内側、RD1…タイヤ径方向外側、RD2…タイヤ径方向内側。