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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087208
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 6/18 20060101AFI20230616BHJP
   B65D 21/08 20060101ALI20230616BHJP
   B65D 21/032 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
B65D6/18 A
B65D21/08
B65D21/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201462
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】591006944
【氏名又は名称】三甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 香奈
【テーマコード(参考)】
3E006
3E061
【Fターム(参考)】
3E006AA03
3E006BA03
3E006DA04
3E006DB03
3E061AA02
3E061CA13
3E061CA23
3E061DA08
3E061DB11
(57)【要約】
【課題】隣合う嵩上側壁同士の連結作業を従来より容易に行うことが可能な容器を提供する。
【解決手段】本開示の容器10Aでは、嵩上側壁30,35,40が、各側壁13~15に重なる垂下姿勢から各側壁13~15上で起立する起立姿勢に変更されて隣合う嵩上側壁30,35,40同士が連結されることで、収容量を増やすことができる。そして、嵩上側壁30,35,40と側壁とには、嵩上側壁30,35,40が起立姿勢になると互いに係合して、嵩上側壁30,35,40を起立姿勢に保持する下面突部32及び起立支持部33(本開示の起立保持機構に相当する)が備えられているので、隣合う嵩上側壁30,35,40同士の連結を容易に行うことができる。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体が上面開放の直方体状をなしかつ、少なくとも3つ以上複数の側壁の上端部にそれぞれ嵩上側壁が回動可能に連結され、それら嵩上側壁が、各前記側壁に重なる垂下姿勢から各前記側壁上で起立する起立姿勢に変更されて隣合う前記嵩上側壁同士が連結されることで、収容量を増やすことが可能な容器において、
前記嵩上側壁と前記側壁とに設けられ、前記嵩上側壁が前記起立姿勢になると互いに係合して、前記嵩上側壁を前記起立姿勢に保持する起立保持機構を備える容器。
【請求項2】
前記嵩上側壁は、前記側壁に回動可能かつ上下に移動可能に連結され、移動可能範囲の下端位置で、前記起立保持機構により前記起立姿勢に保持される一方、上端位置で前記保持が解消される請求項1に記載の容器。
【請求項3】
隣合う前記嵩上側壁にそれぞれ設けられて、相対的に上下にスライドさせると上下方向以外で分離不可能に係合するサイド係合部を備える請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記複数の嵩上側壁には、前記側壁に回動可能に連結される本体部の端部に延長部が可動状態に連結されている複合嵩上側壁が含まれ、
前記延長部は、前記本体部の外面又は内面に重なる待機位置と前記待機位置より前記本体部の横方向に張り出す延長位置との間を移動する請求項1から3の何れか1の請求項に記載の容器。
【請求項5】
前記嵩上側壁の前記延長部と前記側壁とに前記起立保持機構が設けられている請求項4に記載の容器。
【請求項6】
前記側壁には、前記延長部が前記待機位置に配置されかつ前記垂下姿勢の前記複合嵩上側壁を受容する受容凹部が備えられている請求項4又は5に記載の容器。
【請求項7】
前記延長部は、前記本体部の回動半径方向と平行な回動軸を中心に回動可能に連結されかつ、前記待機位置で、前記本体部の前記起立姿勢における外面に重ねられ、前記複合嵩上側壁の前記垂下姿勢で、前記側壁と前記本体部との間に挟まれる請求項4から6の何れか1の請求項に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、嵩上側壁を利用して収容量を変更可能な容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の容器として、複数の側壁の上端部にそれぞれ嵩上側壁が回動可能に連結され、それら嵩上側壁が、各側壁に重なる垂下姿勢から各側壁上で起立する起立姿勢に変更されて隣合う嵩上側壁同士が連結されることで、収容量を増やすことが可能なものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-221688号公報(図1図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の容器では、隣合う嵩上側壁同士を連結する際に、それら嵩上側壁を一方と他方の手で起立姿勢に保持しつつ、一方の手の指だけを動かして嵩上側壁同士を連結部材にて連結するという困難な作業に強いられていた。このため、嵩上側壁同士の連結作業を従来より容易に行うことが可能な容器の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、全体が上面開放の直方体状をなしかつ、少なくとも3つ以上複数の側壁の上端部にそれぞれ嵩上側壁が回動可能に連結され、それら嵩上側壁が、各前記側壁に重なる垂下姿勢から各前記側壁上で起立する起立姿勢に変更されて隣合う前記嵩上側壁同士が連結されることで、収容量を増やすことが可能な容器において、前記嵩上側壁と前記側壁とに設けられ、前記嵩上側壁が前記起立姿勢になると互いに係合して、前記嵩上側壁を前記起立姿勢に保持する起立保持機構を備える容器である。
【0006】
請求項2の発明は、前記嵩上側壁は、前記側壁に回動可能かつ上下に移動可能に連結され、移動可能範囲の下端位置で、前記起立保持機構により前記起立姿勢に保持される一方、上端位置で前記保持が解消される請求項1に記載の容器である。
【0007】
請求項3の発明は、隣合う前記嵩上側壁にそれぞれ設けられて、相対的に上下にスライドさせると上下方向以外で分離不可能に係合するサイド係合部を備える請求項2に記載の容器である。
【0008】
請求項4の発明は、前記複数の嵩上側壁には、前記側壁に回動可能に連結される本体部の端部に延長部が可動状態に連結されている複合嵩上側壁が含まれ、前記延長部は、前記本体部の外面又は内面に重なる待機位置と前記待機位置より前記本体部の横方向に張り出す延長位置との間を移動する請求項1から3の何れか1の請求項に記載の容器である。
【0009】
請求項5の発明は、前記嵩上側壁の前記延長部と前記側壁とに前記起立保持機構が設けられている請求項4に記載の容器である。
【0010】
請求項6の発明は、前記側壁には、前記延長部が前記待機位置に配置されかつ前記垂下姿勢の前記複合嵩上側壁を受容する受容凹部が備えられている請求項4又は5に記載の容器である。
【0011】
請求項7の発明は、前記延長部は、前記本体部の回動半径方向と平行な回動軸を中心に回動可能に連結されかつ、前記待機位置で、前記本体部の前記起立姿勢における外面に重ねられ、前記複合嵩上側壁の前記垂下姿勢で、前記側壁と前記本体部との間に挟まれる請求項4から6の何れか1の請求項に記載の容器である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の容器では、嵩上側壁が、各側壁に重なる垂下姿勢から各側壁上で起立する起立姿勢に変更されて隣合う嵩上側壁同士が連結されることで、収容量を増やすことができる。ここで、嵩上側壁と側壁とには、嵩上側壁が起立姿勢になると互いに係合して、嵩上側壁を起立姿勢に保持する起立保持機構が備えられているので、隣合う嵩上側壁同士の連結を容易に行うことができる。
【0013】
ここで、起立保持機構としては、嵩上側壁の回動途中で弾性変形し、嵩上側壁の起立姿勢で弾性復帰する弾性係合部を備えてもよいし、請求項2の構成のように、嵩上側壁が、側壁に回動可能かつ上下に移動可能に連結され、上下の移動可能範囲の下端位置で起立姿勢に保持される一方、上端位置で保持が解消される構成としてもよい。
【0014】
また、隣合う嵩上側壁同士を連結する構造としては、一方の嵩上側壁に水平に旋回する係合レバーを設けて、それを他方の嵩上側壁に係合する構造や、起立状態となって隣合う嵩上側壁に上方から嵌合されるL形のキャップであってもよい。また、請求項3の構成では、隣合う嵩上側壁にそれぞれ設けられて、相対的に上下にスライドさせると上下方向以外で分離不可能に係合するサイド係合部を備えた構成としてもよい。
【0015】
なお、起立保持機構は、全ての嵩上側壁と側壁とに設けられていなくてもよい。また、垂下姿勢では、嵩上側壁は、側壁の内面に重なっても外面に重なってもよい。
【0016】
請求項4の容器では、複数の嵩上側壁には、本体部と延長部とを連結して備えた複合嵩上側壁が含まれ、不使用時(垂下姿勢時や回動中を含む)には、複合嵩上側壁の延長部を本体部に重ねた待機位置に配置してコンパクトに纏めることができる。
【0017】
請求項5の容器では、複合嵩上側壁の延長部と側壁との間に起立保持機構が設けられているので、複合嵩上側壁の起立姿勢で延長部が延長位置に安定し、複合嵩上側壁とその隣の嵩上側壁との連結が強化される。
【0018】
請求項6の容器の複合嵩上側壁は、延長部が待機位置に配置されて垂下姿勢になると、側壁の受容凹部に受容されるので、別部材との衝突から守られて破損が防がれる。
【0019】
請求項7の容器の延長部は、本体部に回動可能に連結され、待機位置に配置されて複合嵩上側壁が垂下姿勢になると、側壁と本体部との間に挟まれるので、振動等により延長部が勝手に延長位置に移動することが防がれると共に、延長部が本体部の後ろに隠れて見た目が簡素になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の一実施形態に係る容器の嵩上状態の斜視図
図2】容器の分解斜視図
図3】容器の一部の分解斜視図
図4】容器の一部の分解斜視図
図5】容器の側壁の上部の斜視図
図6】容器の延長部の斜視図
図7】嵩上状態と通常状態との間の途中状態の容器の斜視図
図8】嵩上状態と通常状態との間の途中状態の容器の斜視図
図9】嵩上状態と通常状態との間の途中状態の容器のコーナー部の拡大斜視図
図10】嵩上状態の容器のコーナー部の拡大斜視図
図11】通常状態の容器の斜視図
図12】容器を折畳状態にする途中の斜視図
図13】容器の段積み状態の斜視図
図14】容器の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1図14を参照して、本開示の一実施形態に係る容器10Aについて説明する。図1に示すように、容器10Aは、上面開放の直方体の一側壁の横方向の中間部分を上端から下端寄り位置まで除去して前面開口16を備えた構造をなしている。また、容器10Aの平面形状は、長方形になっていて、前面開口16は、一方の長辺側の側壁に形成されている。
【0022】
以下、側壁を区別する際には、前面開口16を有する側壁14を「前側壁14」といい、それと対向する側壁13を「後側壁13」といい、残りの1対の側壁15を「横側壁15」ということとする。また、これら側壁を区別しない場合には、「側壁13~15」ということとする。
【0023】
側壁13~15は、底壁11に対してヒンジ連結されていて、図12に示すように底壁11の上に1対の横側壁15を倒してから、それら上に後側壁13及び前側壁14を倒して図13の上端の容器10Aのように折畳状態にすることができる。より具体的には、図2に示すように、底壁11の上面でもある底面11Sの外縁部のうち1対の長辺部分からは1対の第1土手部11Aが突出すると共に、1対の短辺部分からは、第1土手部11Aより低い1対の第2土手部11Bが突出している。そして、1対の第1土手部11Aに、前側壁14及び後側壁13の下端の複数のヒンジ脚部19がヒンジ連結されると共に、1対の第2土手部11Bに、1対の横側壁15の下端の複数のヒンジ脚部19がヒンジ連結されている。そして、各側壁13~15が起立姿勢と、底壁11の上に重なる水平姿勢とに変化するように回動する。また、容器10Aの組立状態では、1対の横側壁15は、前側壁14と後側壁13との間に挟まれていて、前述の如く、折畳状態にするには、図12に示すように、1対の横側壁15が底壁11の上に先に倒されてから、前側壁14と後側壁13とが1対の横側壁15の上に重なるように倒される。なお、1対の横側壁15同士は、水平姿勢で互いに重ならず、前側壁14及び後側壁13は水平姿勢で互いに重なる。また、図示しないが、底壁11の下面には、外縁部より内側部分を段付き状に突出させて段積用突部が形成されている。そして、図13に示すように、組立状態の容器10Aの上に他の容器10Aを段積みすると、下段側の容器10Aの上面開口の内側に上段側の容器10Aの段積用突部が嵌合し、折畳状態の容器10Aの上に他の容器10Aを段積みすると、下段側の容器10Aの1対の第1土手部11Aの内側に上段側の容器10Aの段積用突部が嵌合する。
【0024】
図2に示すように、横側壁15は、その内面全体を形成する平板状の主板15Sの外面に1対の縦リブ20と1対の横リブ21,22とを備える。1対の縦リブ20は、主板15Sの両側部で上下方向に延び、一方の横リブ21は、主板15Sの下縁部に沿って延びて1対の縦リブ20の下端部同士の間を連絡している。そして、横リブ21の下面から前述の複数のヒンジ脚部19が垂下している。また、他方の横リブ22は、横側壁15の上下方向の中央より僅かに上寄り位置で、1対の縦リブ20の間を連絡している。なお、これら縦リブ20,横リブ21,22の先端面は面一になっている。
【0025】
図4に示すように、1対の縦リブ20の上端は、主板15Sの上端と面一に配置され、それら1対の縦リブ20の上端部の間には、複数の起立支持部33が横側壁15の横方向に間隔を空けて設けられている。各起立支持部33は、例えば、上面開放した直方体状をなしている。また、起立支持部33の上面は、1対の縦リブ20及び主板15Sの上面と面一に配置され、起立支持部33の正面は、縦リブ20,横リブ21,22の先端面と面一に配置されている。さらには、隣合う起立支持部33の互いの対向壁には、上下方向に延びる長孔34が形成されている。
【0026】
図示しないが後側壁13の外面も横側壁15と同様の構造をなしている。即ち、後側壁13は、1対の縦リブ20と横リブ21,22と複数の起立支持部33と長孔34とを備えている。また、前側壁14は、図2に示すように、前面開口16の両側のそれぞれに、後側壁13と同様の1対の縦リブ20と横リブ21,22と複数(2つ)の起立支持部33と長孔34とを備えている。
【0027】
横側壁15のうち1対の縦リブ20の互いに反対側を向いた外面には、1対のサイド連結部24が設けられている。サイド連結部24は、横側壁15の主板15Sの両側部に、横側壁15の上端から下端寄り位置(第1土手部11Aの上面に到達する位置)まで延びる帯状片を設けて、その帯状片の外面の外縁部から縦リブ20より低いリブ23を突出させた構造をなしている。また、サイド連結部24の上下方向の複数位置には、縦リブ20と略同じ高さに突出する複数の連結突部15Aが備えられている。
【0028】
図2に示すように、前側壁14及び後側壁13の内面の両側縁部には、複数の連結突部15Aが突入する係合孔13Aを有しかつサイド連結部24の外面に当接する複数の係合突部13Cが備えられている。また、前側壁14及び後側壁13の両側縁寄り位置の上部には、それら前側壁14及び後側壁13の一部を片持ち片状に切り離して、その先端部の内面に突部を備えた弾性係合片13Bが設けられている。そして、連結突部15Aが係合孔13Aに係合した状態で弾性係合片13Bが横側壁15の内面に係合して容器10Aが組立状態に保持さ、弾性係合片13Bが押圧操作されて横側壁15の内面との係合が解除されると、容器10Aが前述の折畳状態になる。
【0029】
図1に示すように、容器10Aには、側壁13~15の上端部に嵩上側壁30,35,40がヒンジ連結されていて、同図に示すように、嵩上側壁30,35,40を、側壁13~15上で起立姿勢にした嵩上状態と、図11に示すように、嵩上側壁30,35,40を、側壁13~15の外面に重ねた垂下姿勢にした通常状態とに変更可能になっている。以下の説明において、嵩上側壁30,35,40の上下方向は、特記しない限り起立姿勢における上下方向であることとして、嵩上側壁30,35,40の詳細構造について説明する。
【0030】
図1に示すように、前側壁14の嵩上側壁35は、対をなして、前面開口16を挟んだ両側で前側壁14の上端部にヒンジ連結されている。図3に示すように、各嵩上側壁35は、前側壁14上で起立した状態で内面に位置する平板状の主板35Sの外面に補強リブ35Lを備えた構造をなし、下面に、1つのヒンジ脚部31と、そのヒンジ脚部31を横方向で挟んで並ぶ1対の下面突部32とを有する。1対の下面突部32は、箱形構造をなしている。また、ヒンジ脚部31は、下面突部32より下方に延び、その下端部の両側面からは、1対のヒンジ突起31Pが突出している。
【0031】
そして、図9に示すように、ヒンジ脚部31の下端部が、前側壁14の横方向の各端部における1対の起立支持部33の間に受容され、図示しないが1対のヒンジ突起31Pが長孔34に回動可能かつ上下にスライド可能に係合している。そして、図7に示すように、嵩上側壁35を起立姿勢にして、スライド可能な範囲の上端に配置し、そこから真下に降下させると、図9に示すように、前側壁14の複数の下面突部32が後側壁13の複数の起立支持部33内に嵌合し、これにより、嵩上側壁35が起立姿勢に保持される。また、そこから嵩上側壁35を真上に持ち上げ、外側に倒すと、図11に示すように前側壁14の外面に重なる垂下姿勢となり、前側壁14における1対の縦リブ20と横リブ22と複数の起立支持部33とに四方を包囲された受容凹部29に収まる。
【0032】
また、嵩上側壁35の全体の厚さは、前側壁14の全体の厚さより僅かに小さくなっていて、嵩上側壁35が起立姿勢になったときには、嵩上側壁35全体が前側壁14の真上の領域に収まる。即ち、嵩上側壁35の内面が、前側壁14の内面と面一か僅かに外側に位置し、嵩上側壁35の外面が、前側壁14の外面と面一か僅かに内側に位置する。また、嵩上側壁35が垂下姿勢になったときには、縦リブ20、横リブ22の先端面から外側に出ないように嵩上側壁35全体が受容凹部29内に収まる。
【0033】
図2に示すように、後側壁13の嵩上側壁30は、後側壁13の横方向に延びる帯板状の主板30Sの外面に補強リブを備えた構造をなし、下面には、嵩上側壁35と同様に、下面突部32とヒンジ脚部31と交互に並べて備え、両側面に1対のサイド係合部39を有する。そして、嵩上側壁30も嵩上側壁35と同様に、後側壁13の上端部にスライド可能かつ回動可能にヒンジ連結され、下面突部32と起立支持部33との嵌合により起立姿勢に保持されて後側壁13の真上の領域に収まると共に、垂下姿勢になると後側壁13の受容凹部29(図示せず)に全体が収まる。
【0034】
図2に示すように、1対の横側壁15の嵩上側壁40は、本体部41と1対の延長部51とからなる複合嵩上側壁になっている。以下、嵩上側壁40を嵩上側壁30,35と区別する場合には、「複合嵩上側壁40」という。図4に示すように、本体部41は、横側壁15の横方向に延びる帯板状の主板41Sの外面に補強リブ41Lを備えた構造をなし、下面には、嵩上側壁30,35と同様に、下面突部32とヒンジ脚部31と交互に並べて備える。そして、本体部41も、嵩上側壁30,35と同様に、横側壁15の上端部にスライド可能かつ回動可能にヒンジ連結されて、下面突部32と起立支持部33との嵌合により起立姿勢に保持されて横側壁15の真上の領域に収まると共に、垂下姿勢になると横側壁15の受容凹部29に全体が収まる。
【0035】
1対の延長部51は、本体部41の両側部にヒンジ連結されて上下方向に延びる回動中心軸を有し、図6(B)に示すように、本体部41の外面に重なる待機位置と、そこから略180°離れた延長位置(図9(A)参照)との間を回動する。詳細には、図6(A)に示すように、延長部51は、四角形の平板状の主板51Sのうち、延長部51が延長位置で内面となる側に補強リブ51Lを有する。また、延長部51のうち本体部41側の一側部には、上下の両端部に1対のヒンジ突部51Tが形成され、それら1対のヒンジ突部51Tの間に丸棒状のヒンジバー51Mが差し渡されている。
【0036】
これに対し、図3に示すように、本体部41の側部の上下方向の中間部には、ヒンジ突部41Tが形成され、そのヒンジ突部41Tに、上下方向に延びるヒンジ溝41Mが形成されている。ヒンジ溝41Mの断面は、一部が開放した円形をなしている。そして、ヒンジバー51Mがヒンジ溝41Mに受容されて延長部51が本体部41に対して回動可能になっている。
【0037】
また、図4に示すように、本体部41の左右の両端部では、中間部に比べて強リブ41Lの高さが半分程度になっている。これに対し、延長部51の補強リブ51Lの一部は、延長部51の厚さ方向の途中位置に段差面51Dを有していて、図6(B)に示すように、延長部51が待機位置に配置されると段差面51Dより一方側が本体部41の補強リブ41Lの内側に収まる。また、このとき、延長部51の次述する下面突部32は、本体部41の下面突部32内に収まる。そして、本体部41の端部とそこに重なる延長部51とを合わせた厚さが、延長部51が重なっていない本体部41の横方向の中間部の厚さと略同一になっている。
【0038】
延長部51の下面のうち回動中心から離れた端部からは下面突部32が垂下している。そして、図8及び図9(A)に示すように、延長部51が延長位置に配置され、複合嵩上側壁40が起立姿勢のままスライド可能な範囲の上端位置から降下されると、図10(A)に示すように、延長部51の下面突部32が、前側壁14及び後側壁13の横方向の両端部の起立支持部33に凹凸係合する。また、図5に示すように、前側壁14のうち横側壁15側の端部の起立支持部33の内部には区画壁33Kが備えられて、起立支持部33内が延長部51の下面突部32が嵌合する領域と嵩上側壁35の下面突部32が嵌合する領域とに区画されている。また、図示しないが後側壁13における横側壁15側の端部の起立支持部33の内部も同様になっている。
【0039】
図6(A)に示すように、延長部51のうち下面突部32の近傍位置には、サイド係合部69が備えられている。サイド係合部69は、上下方向に延びて、延長部51の起立姿勢で内面側を向く面と下面とに開口する溝形構造をなし、その内部空間の平断面形状は、T字状をなし、内部空間の最大幅が開口幅より大きな、所謂、アリ溝形状をなしている。さらに、延長部51の前述の下面突部32は、平断面がL形をなし、そのLの内側で直交する1対の内側面がサイド係合部69内の直交する1対の内側面と面一になっている。
【0040】
そして、図8に示すように、嵩上側壁30,35が後側壁13及び前側壁14の上で起立姿勢に保持された状態で、前述の如く、延長部51が延長位置に配置され、複合嵩上側壁40が起立姿勢のままスライド可能な範囲の上端位置に配置されると、図9(B)に示すように、延長部51の下面突部32の1対の内側面が、嵩上側壁30,35におけるサイド係合部39の1対の外側面に当接する。そして、複合嵩上側壁40が降下されると、図10(B)に示すように、嵩上側壁30,35のサイド係合部39が、延長部51のサイド係合部69にスライド係合して、複合嵩上側壁40の両端部が嵩上側壁30,35と連結する。
【0041】
本実施形態の容器10Aの構成に関する説明は以上である。次に、この容器10Aの作用効果について説明する。図11に示された容器10Aは、組立状態でかつ全ての嵩上側壁30が垂下姿勢になった通常状態になっている。この状態で、複数の容器10Aを段積みすると、各段の容器10Aの前面開口16から荷物を容器10Aに出し入れすることができ、商品の陳列棚や倉庫のラック等として使用することができる(図13の下から1番目の容器10A参照)。
【0042】
通常状態の容器10Aには収まらない高さの商品も容器10Aを嵩上状態にすることで収容可能になる場合がある。容器10Aを通常状態から嵩上状態にするには、先ずは、図7に示すように、後側壁13の嵩上側壁30と前側壁14の1対の嵩上側壁35を起立状態にする。そのためには、上述の通り、嵩上側壁30,35を起立姿勢に維持して、スライド可能な範囲の上端位置から降下させる。すると、嵩上側壁30,35の下面突部32が後側壁13及び前側壁14の起立支持部33にそれぞれ嵌合して、嵩上側壁30,35が起立状態に保持される。この際、嵩上側壁30と1対の嵩上側壁35の何れか1つずつ起立姿勢に保持させてもよいし、何れか2つを両手でもって一度に2つを起立姿勢に保持させてもよい。
【0043】
次いで、一方の複合嵩上側壁40を上方に回動して受容凹部29から出し、1対の延長部51を待機位置から延長位置まで回動する(図14(A)及び図14(B)参照)。そして、嵩上側壁30,35と同様に、図8に示すように、複合嵩上側壁40を起立姿勢に維持して、スライド可能な範囲の上端位置から降下させる。すると、複合嵩上側壁40の本体部41の下面突部32が横側壁15の起立支持部33に嵌合すると共に、一方の延長部51の下面突部32が後側壁13の起立支持部33に嵌合し、さらに、他方の延長部51の下面突部32が前側壁14の起立支持部33に嵌合して複合嵩上側壁40が起立状態に保持される。このとき、一方の延長部51のサイド係合部69に、後側壁13の嵩上側壁30のサイド係合部39がスライド係合すると共に、他方の延長部51のサイド係合部69に前側壁14の嵩上側壁35のサイド係合部39がスライド係合して、複合嵩上側壁40が、その両隣の嵩上側壁35と嵩上側壁30とに連結される。他方の複合嵩上側壁40に関しても同様の処理を行えば、全ての嵩上側壁30,35,40が連結された状態で側壁13~15上で起立し、容器10A全体が嵩上状態になる。また、この嵩上状態でも複数の容器10Aを段積みすることができる。背の高い荷物を収容する陳列棚又はラック等として使用することができる(図13の下から2番目の容器10A参照)。
【0044】
上述した動作と逆の手順で容器10Aを通常状態に戻すことができる。そして、通常状態の容器10Aの弾性係合片13Bを内側から押圧操作し、図12に示すように1対の横側壁15を底壁11上に倒して、その上に後側壁13と前側壁14とを倒せば、容器10Aを折り畳状態にするがことできる(図13の上から1番目の容器10A参照)。また、嵩上側壁30,35,40は、側壁13~15の受容凹部29に収まっているので、容器10Aを折畳状態にしても、嵩上側壁30,35,40によってかさばることはない。
【0045】
上記したように本実施形態の容器10Aでは、嵩上側壁30,35,40が、各側壁13~15に重なる垂下姿勢から各側壁13~15上で起立する起立姿勢に変更されて隣合う嵩上側壁30,35,40同士が連結されることで、収容量を増やすことができる。そして、嵩上側壁30,35,40と側壁とには、嵩上側壁30,35,40が起立姿勢になると互いに係合して、嵩上側壁30,35,40を起立姿勢に保持する下面突部32及び起立支持部33(本開示の起立保持機構に相当する)が備えられているので、隣合う嵩上側壁30,35,40同士の連結を容易に行うことができる。しかも、本実施形態の容器10Aでは、複合嵩上側壁40とその両側の嵩上側壁30,35とが、上下方向でスライド係合して上下方向以外で分離不可能に係合するサイド係合部39,69を有するので、複合嵩上側壁40の起立保持の操作と、複合嵩上側壁40と嵩上側壁30,35とを連結する操作とを一度に行うことができる。
【0046】
また、複数の嵩上側壁30,35,40には、本体部41と延長部51とを連結して備えた1対の複合嵩上側壁40が含まれている。これにより、複合嵩上側壁40を横方向に長くし、その分、他の嵩上側壁30,35を横方向に短くすることができる。また、横方向に長くなった複合嵩上側壁40は、1対の延長部51を本体部41に重なるように折り畳むことで横方向に短くすることもできる。これにより、嵩上側壁30,35,40を不使用時に側壁13~15の受容凹部29に収めることができ、通常状態の容器10Aがコンパクトになると共に、嵩上側壁30,35,40が別部材との衝突から守られ、破損が防がれる。しかも、複合嵩上側壁40は受容凹部29に収まった状態では、延長部51が本体部41と横側壁15との間に配置されるので、振動等により延長部51が勝手に延長位置に移動することが防がれると共に、延長部51が本体部41の後ろに隠れて見た目が簡素になる。また、本実施形態の容器10Aでは、複合嵩上側壁40の延長部51と後側壁13及び前側壁14との間にも、下面突部32と起立支持部33とにより起立保持機構が設けられているので、複合嵩上側壁40の起立姿勢で延長部51が延長位置に安定し、複合嵩上側壁40とその隣の嵩上側壁30,35との連結が強化される。さらには、本実施形態の容器10Aでは、延長部51が待機位置に配置されると、図6(B)に示すように延長部51の下面突部32が本体部41の下面突部32内に収まるので、本体部41を待機位置に配置した状態のまま、複合嵩上側壁40を起立姿勢に保持することもできる。
【0047】
なお、本実施形態では、前述の通り、嵩上側壁30,35,40(41,51)を起立姿勢に維持して、スライド可能な範囲の上端位置から降下させるが、この時の「起立姿勢」を「起立準備姿勢」と称し、嵩上側壁30,35,40(41,51)の下面突部32が側壁13~15の起立支持部33にそれぞれ嵌合して、嵩上側壁30,35,40(41,51)が起立状態に保持された「起立姿勢」を「起立保持姿勢」と称し、それぞれの姿勢を区別してもよい。
【0048】
[他の実施形態]
(1)起立保持機構としては、上記実施形態のように嵩上側壁30,35,40の下面突部32が側壁13~15の起立支持部33に凹凸係合する構成に限定されるものではなく、例えば、嵩上側壁の回動途中で弾性変形して、嵩上側壁が起立姿勢になると弾性復帰する弾性係合部を嵩上側壁か側壁に備えた構成としてもよい。
【0049】
(2)上記実施形態では、嵩上側壁30,35,40の下面突部32が、側壁13~15の起立支持部33の内側に嵌合する構造であったが、嵩上側壁30,35,40の下部に上下に貫通する嵌合孔を設け、それら嵌合孔に側壁13~15から上方に突出する嵌合突部が係合する構成としてもよい。
【0050】
(3)また、嵩上側壁が垂下姿勢で側壁の外側面に重なるものでは、例えば、側壁の上面のうち外側面側の縁部から突出する規制突片を設け、嵩上側壁をスライド範囲の上端位置に移動しない限り、嵩上側壁が規制突壁に支持された起立姿勢に保持される構成や、嵩上側壁が垂下姿勢で側壁の内側面に重なるものでは、例えば、側壁の上面のうち内側面側の縁部から突出する規制突片を設けて同様の構成としたものも、起立保持機構として挙げられる。また、嵩上側壁が側壁の内側面に重なるか、外側面に重なるかに関わらず、側壁の上面の内側面側の縁部と外側面側の縁部との両方から規制突壁が突出した構造としてもよい。さらには、複数種類の起立保持機構を併用してもよい。
【0051】
(4)前記実施形態では、側壁13~15側に長孔34が設けられ、そこに嵩上側壁30,35,40のヒンジ突起31Pがスライド可能に係合していたが、それとは逆に、嵩上側壁30,35,40に長孔を設けて、側壁13~15にヒンジ突起31Pを設けてもよい。
【0052】
(5)前記実施形態では、起立保持機構が嵩上側壁30,35,40の全ての側壁13~15との間に設けられていたが、起立保持機構は、全ての嵩上側壁と側壁とに設けられていなくてもよい。
【0053】
(6)また、前記実施形態では、複合嵩上側壁40においては、本体部41と延長部51との両方に起立保持機構が設けられていたが、本体部41のみ又は延長部51のみに設けてもよい。
【0054】
(7)隣合う嵩上側壁30,35,40同士を連結する構造としては、上記したサイド係合部39,69とを備える構成に限定されるものではなく、例えば、隣合う嵩上側壁の一方に水平に旋回する係合レバーを設けて、それを他方の嵩上側壁に係合させる構成や、起立姿勢となって隣合う嵩上側壁に上方から嵌合されるL形のキャップを使用する構成であってもよい。
【0055】
(8)前記実施形態の容器10Aは、折り畳み可能であり、かつ、前面開口16を有していたが、折り畳むことができない容器や前面開口を有しない容器で嵩上側壁を備えるものに上述の起立保持機構を備えてもよい。
【0056】
(9)また、垂下姿勢では、嵩上側壁30,35,40は、側壁の内面に重なっても外面に重なってもよい。
【0057】
(10)前記実施形態では、嵩上側壁30,35,40は、垂下姿勢になると、受容凹部29に全体が収まっていたが、一部が受容凹部29から突出する構成としてもよい。
【0058】
(11)前記実施形態では、起立保持機構を備えたものにおいて複数の嵩上側壁30,35,40の一部が複合嵩上側壁40になっていたが、起立保持機構を備えていないものにおいて、複数の嵩上側壁の一部又は全部を複合嵩上側壁としてもよい。
【0059】
(12)前記実施形態では、複合嵩上側壁40の延長部51と後側壁13及び前側壁14との間にも、下面突部32と起立支持部33とにより起立保持機構が設けられているが、これに代えて又は加えて複合嵩上側壁40の延長部51と横側壁15との間にも、下面突部32と起立支持部33とによる起立保持機構が設けられていてもよい。
【0060】
(13)前記実施形態では、垂下姿勢の嵩上側壁30,35,40を受容凹部29から出して起立姿勢にする際に、一定量(外方かつ上方に)回動させてから上方にスライド移動させつつさらに回動させて、その後下方へスライド移動させる構造だが、先に上方にスライド移動させてから(外方かつ上方に)回動させて、その後下方へスライド移動させる構造でもよい。つまり、回動可能かつ上下に移動可能な構造は実施形態に限定されない。
【0061】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0062】
10A 容器
13~15 側壁
29 受容凹部
30,35 嵩上側壁
32 下面突部(起立保持機構)
33 起立支持部(起立保持機構)
39,69 サイド係合部
40 複合嵩上側壁
41 本体部
51 延長部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図12
図13
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