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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087220
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】管用ねじ継手の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23G 3/00 20060101AFI20230616BHJP
   F16L 15/00 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
B23G3/00 B
F16L15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201478
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100174285
【弁理士】
【氏名又は名称】小宮山 聰
(72)【発明者】
【氏名】堂内 貞男
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 省吾
(72)【発明者】
【氏名】松本 卓也
【テーマコード(参考)】
3H013
【Fターム(参考)】
3H013GA08
(57)【要約】
【課題】継ぎ合わされた管同士の周方向のずれを従来よりも精度よく調整する。
【解決手段】管用ねじ継手の製造方法は、外周面に第1マーキングが付与された第1素管の一方の端部にボックスを形成する工程(ステップS1)と、外周面に第2マーキングが付与された第2素管を、第2マーキングが所定のピン加工初期位置になるように第1旋盤に配置し、第2素管の一方の端部に試作ピンを形成する工程(ステップS3)と、ボックスと試作ピンとを締結してずれ量αを測定する工程(ステップS4)と、外周面に第3マーキングが付与された第3素管を、第3マーキングがピン加工初期位置になるように第1旋盤に配置し、試作ピンの加工に使用したプログラムに対して素管の回転角度をずれ量αだけオフセットさせたプログラムを使用して、第3素管の一方の端部にピンを形成する工程(ステップS5)と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによるプログラム制御が可能な一又は複数の旋盤を使用して管用ねじ継手を製造する、管用ねじ継手の製造方法であって、
前記管用ねじ継手は、管の先端部に設けられる管状のピンと、前記ピンがねじ込まれて前記ピンと締結される管状のボックスとを備え、前記ピンは、前記ピンの外周に形成された雄ねじを有し、前記ボックスは、前記ボックスの内周に形成され且つ締結時に前記雄ねじに嵌合する雌ねじを有し、
外周面に第1マーキングが付与された第1素管の一方の端部に前記ボックスを形成する工程と、
外周面に第2マーキングが付与された第2素管を、前記第2マーキングが所定のピン加工初期位置になるように第1旋盤に配置し、前記第2素管の一方の端部に試作ピンを形成する工程と、
前記ボックスと前記試作ピンとを締結し、締結状態における前記第1マーキングと前記第2マーキングとの周方向のずれ量αを測定する工程と、
外周面に第3マーキングが付与された第3素管を、前記第3マーキングが前記ピン加工初期位置になるように前記第1旋盤に配置し、前記試作ピンの加工に使用したプログラムに対して素管の回転角度を前記ずれ量αだけオフセットさせたプログラムを使用して、前記第3素管の一方の端部に前記ピンを形成する工程と、を備える、管用ねじ継手の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の管用ねじ継手の製造方法であって、
前記試作ピンを形成する工程は、前記第1旋盤のチャックに付与されたマーキングの位置と前記第2マーキングの位置とを一致させる工程を含み、
前記ピンを形成する工程は、前記チャックに付与されたマーキングの位置と前記第3マーキングの位置とを一致させる工程を含む、管用ねじ継手の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の管用ねじ継手の製造方法であって、
前記ボックスを形成する工程は、
前記第1素管を、前記第1マーキングが所定のボックス加工初期位置になるように旋盤に配置し、前記第1素管の前記一方の端部に前記ボックスを形成する工程を含む、管用ねじ継手の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の管用ねじ継手の製造方法であって、さらに、
前記ボックスが形成された前記第1素管を管軸方向と垂直な方向を回転軸として180°回転させた後、前記第1マーキングが前記ボックス加工初期位置になるように前記ボックスの加工に使用した旋盤に配置し、前記第1素管の前記ボックスが形成された端部と反対の端部に第2ボックスを形成する工程を備える、管用ねじ継手の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の管用ねじ継手の製造方法であって、さらに、
前記ピンが形成された前記第3素管を管軸方向と垂直な方向を回転軸として180°回転させた後、前記第3マーキングが前記ピン加工初期位置になるように前記第1旋盤に配置し、前記ピンの加工に使用したプログラムを使用して、前記第3素管の前記ピンが形成された端部と反対の端部に第2ピンを形成する工程を備える、管用ねじ継手の製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の管用ねじ継手の製造方法であって、
前記第3素管の一方の端部と他方の端部とを異なる旋盤で加工する、管用ねじ継手の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の管用ねじ継手の製造方法であって、さらに、
前記第2素管を、前記第2マーキングが所定の第2ピン加工初期位置になるように、前記第1旋盤とは異なる第2旋盤に配置し、前記第2素管の前記試作ピンが形成された端部と反対の端部に第2試作ピンを形成する工程と、
前記ボックスと前記第2試作ピンとを締結し、締結状態における前記第1マーキングと前記第2マーキングとの周方向のずれ量βを測定する工程と、
前記第3素管を、前記第3マーキングが前記第2ピン加工初期位置になるように前記第2旋盤に配置し、前記第2試作ピンの加工に使用したプログラムに対して素管の回転角度を前記ずれ量βだけオフセットさせたプログラムを使用して、前記第3素管の前記ピンが形成された端部と反対の端部に第2ピンを形成する工程と、を備える、管用ねじ継手の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の管用ねじ継手の製造方法であって、さらに、
前記第3素管から前記第3マーキング及び前記ピンを含むようにマーキングゲージを採取する工程と、
外周面に第4マーキングが付与された第4素管を、前記第4マーキングが所定の試作ボックス加工初期位置になるように旋盤に配置し、前記第4素管に試作ボックスを形成する工程と、
前記マーキングゲージと前記試作ボックスとを締結し、締結状態における前記第3マーキングと前記第4マーキングとの周方向のずれ量γを測定する工程と、
外周面に第5マーキングが付与された第5素管を、前記第5マーキングが前記試作ボックス加工初期位置になるように前記試作ボックスの加工に使用した旋盤に配置し、前記試作ボックスの加工に使用したプログラムに対して素管の回転角度を前記ずれ量γだけオフセットさせたプログラムを使用して、前記第5素管の一方の端部に前記ボックスを形成する工程と、を備える、管用ねじ継手の製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の管用ねじ継手の製造方法であって、
前記ピンは、ピンショルダ面を有し、前記ボックスは、締結状態において前記ピンショルダ面に接触するボックスショルダ面を有する、管用ねじ継手の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管用ねじ継手の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油井、天然ガス井等(以下、総称して「油井」ともいう。)においては、地下資源を採掘するため、複数段の井戸壁を構築するケーシングや、該ケーシング内に配置されてオイルやガスを生産するチュービングが用いられる。これらケーシングやチュービングは、多数の鋼管が順次連結されて成り、その連結に管用ねじ継手が用いられる。油井に用いられる鋼管は油井管とも称される。
【0003】
一般に、雄ねじが形成された鋼管の管端部は、雌ねじが形成された鋼管の管端部に挿入される要素を含むことから、「ピン」と称される。雌ねじが形成された鋼管の管端部は、雄ねじが形成された鋼管の管端部を受け入れる要素を含むことから、「ボックス」と称される。これらピン及びボックスは、管材の端部であるため、いずれも管状である。
【0004】
油井管を地中に埋設する際に、採油ポンプ等へ電力を供給するためのケーブルを配置することがある。このケーブルは地上から油井の最深部まで、油井管表面に固定される。この固定方法には2通りある。一つ目は、リグでの降管作業と同時にケーブル及び固定用治具を油井管表面に取り付けていく方法である。二つ目は、リグではなく油井管保管所(ヤード)で予めケーブル固定用治具のみを油井管表面に取り付けておき、リグでの降管作業時にケーブルを取り付けていく方法である。
【0005】
前者は後者に比べてリグでの作業時間がより多く必要となるが、通常仕様の油井管で対応可能である。後者は前者に比べてリグでの作業時間を短縮することができるが、それぞれの油井管に取り付けた固定用治具が、降管後にすべて一直線上(In-Line)に並ぶ必要がある。すなわち、後者の方法を実施するためには、ねじ継手の周方向締結位置が制御されている必要がある。
【0006】
特許第4741497号公報には、相互に方向付けられたねじ切り要素を備える円筒状構成部品の製造方法が開示されている。この方法は、構成部品の一端部に第1のねじ切り要素を機械加工するステップ(ステップb)、及び、他端部に第2のねじ切り要素を機械加工するステップ(ステップd)を含む。この方法はさらに、第1のねじ切り要素に第1の方位ゲージをねじ込むステップ(ステップe)、第1の方位ゲージのマークと軸方向に位置合わせされた方位マークを構成部品の外周に描くステップ(ステップf)、第2のねじ切り要素に第2の方位ゲージをねじ込むステップ(ステップg)、及び、構成部品に描かれたマークと第2の方位ゲージのマークとの間に存在する偏差の角度等の関数として決定された量によって、新たな第2のねじ切り要素の機械加工の開始位置を、初期位置に対して軸方向にオフセットするように定義するステップ(ステップh)を含む。
【0007】
特表2003-525757号公報には、パイプジョイントの組立方法が開示されている。この方法は、ピン部材の各々及び連結部材の各々に計算された深さまで複数のねじ山を機械加工し、それによりピン部材及び連結部材が完全結合位置にあるときピンアライメントマークと連結アライメントマークとが一直線になるようにする機械加工ステップを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4741497号公報
【特許文献2】特表2003-525757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許第4741497号公報及び特表2003-525757号公報に記載された方法はいずれも、締結位置の周方向のずれを軸方向オフセットに変換して、ねじの長さを変えることで、継ぎ合わされた管同士の周方向のずれを調整している。しかし、本発明者らは、軸方向オフセットによる調整では、継ぎ合わされた管同士の周方向のずれを精度よく調整できない場合があることを知見した。
【0010】
本発明の課題は、継ぎ合わされた管同士の周方向のずれを従来よりも精度よく調整することができる、管用ねじ継手の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態による管用ねじ継手の製造方法は、コンピュータによるプログラム制御が可能な一又は複数の旋盤を使用して管用ねじ継手を製造する、管用ねじ継手の製造方法であって、前記管用ねじ継手は、管の先端部に設けられる管状のピンと、前記ピンがねじ込まれて前記ピンと締結される管状のボックスとを備え、前記ピンは、前記ピンの外周に形成された雄ねじを有し、前記ボックスは、前記ボックスの内周に形成され且つ締結時に前記雄ねじに嵌合する雌ねじを有し、外周面に第1マーキングが付与された第1素管の一方の端部に前記ボックスを形成する工程と、外周面に第2マーキングが付与された第2素管を、前記第2マーキングが所定のピン加工初期位置になるように第1旋盤に配置し、前記第2素管の一方の端部に試作ピンを形成する工程と、前記ボックスと前記試作ピンとを締結し、締結状態における前記第1マーキングと前記第2マーキングとの周方向のずれ量αを測定する工程と、外周面に第3マーキングが付与された第3素管を、前記第3マーキングが前記ピン加工初期位置になるように前記第1旋盤に配置し、前記試作ピンの加工に使用したプログラムに対して素管の回転角度を前記ずれ量αだけオフセットさせたプログラムを使用して、前記第3素管の一方の端部に前記ピンを形成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、継ぎ合わされた管同士の周方向のずれを従来よりも精度よく調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、管用ねじ継手の構成の一例を模式的に示す平面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態による管用ねじ継手の製造方法を示すフロー図である。
図4図4は、第1素管の一方の端部にボックスを形成する工程を説明するための模式図である。
図5図5は、第1素管の一方の端部にボックスを形成する工程を説明するための模式図である。
図6図6は、第1素管の他方の端部に第2ボックスを形成する工程を説明するための模式図である。
図7図7は、第1素管の他方の端部に第2ボックスを形成する工程を説明するための模式図である。
図8図8は、第2素管の一方の端部に試作ピンを形成する工程を説明するための模式図である。
図9図9は、第2素管の一方の端部に試作ピンを形成する工程を説明するための模式図である。
図10図10は、ボックスと試作ピンとを締結し、締結状態における第1マーキングと第2マーキングとの周方向のずれ量αを測定する工程を説明するための模式図である。
図11図11は、第3素管の一方の端部にピンを形成する工程を説明するための模式図である。
図12図12は、第3素管の一方の端部にピンを形成する工程を説明するための模式図である。
図13図13は、第3素管の他方の端部に第2ピンを形成する工程を説明するための模式図である。
図14図14は、第3素管の他方の端部に第2ピンを形成する工程を説明するための模式図である。
図15図15は、軸方向オフセットCを適用する前のピンの形状、及び軸方向オフセットCを適用した後のピンの形状を模式的に示す断面図である。
図16図16は、軸方向オフセットCを適用する前のピンの断面の輪郭と、軸方向オフセットCを適用した後のピンの断面の輪郭とを重ねた図である。
図17図17は、本発明の第2の実施形態による管用ねじ継手の製造方法を示すフロー図である。
図18図18は、第2素管の他方の端部に第2試作ピンを形成する工程を説明するための模式図である。
図19図19は、第2素管の他方の端部に第2試作ピンを形成する工程を説明するための模式図である。
図20図20は、ボックスと第2試作ピンとを締結し、締結状態における第1マーキングと第2マーキングとの周方向のずれ量βを測定する工程を説明するための模式図である。
図21図21は、第3素管の他方の端部に第2ピンを形成する工程を説明するための模式図である。
図22図22は、第3素管の他方の端部に第2ピンを形成する工程を説明するための模式図である。
図23図23は、本発明の第3の実施形態による管用ねじ継手の製造方法を示すフロー図である。
図24図24は、第3素管からマーキングゲージを採取する工程を説明するための模式図である。
図25図25は、第4素管に試作ボックスを形成する工程を説明するための模式図である。
図26図26は、マーキングゲージと試作ボックスとを締結し、締結状態における第3マーキングと第4マーキングとの周方向のずれ量γを測定する工程を説明するための模式図である。
図27図27は、第5素管にボックスを形成する工程を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態による管用ねじ継手の製造方法は、コンピュータによるプログラム制御が可能な一又は複数の旋盤を使用して管用ねじ継手を製造する、管用ねじ継手の製造方法である。管用ねじ継手は、管の先端部に設けられる管状のピンと、ピンがねじ込まれてピンと締結される管状のボックスとを備える。ピンは、ピンの外周に形成された雄ねじを有し、ボックスは、ボックスの内周に形成され且つ締結時に雄ねじに嵌合する雌ねじを有する。管用ねじ継手の製造方法は、外周面に第1マーキングが付与された第1素管の一方の端部にボックスを形成する工程と、外周面に第2マーキングが付与された第2素管を、第2マーキングが所定のピン加工初期位置になるように第1旋盤に配置し、第2素管の一方の端部に試作ピンを形成する工程と、ボックスと試作ピンとを締結し、締結状態における第1マーキングと第2マーキングとの周方向のずれ量αを測定する工程と、外周面に第3マーキングが付与された第3素管を、第3マーキングがピン加工初期位置になるように第1旋盤に配置し、試作ピンの加工に使用したプログラムに対して素管の回転角度をずれ量αだけオフセットさせたプログラムを使用して、第3素管の一方の端部にピンを形成する工程と、を備える。
【0015】
この構成によれば、第1素管及び第2素管のそれぞれにボックス及び試作ピンを形成した後、これらを締結し、第1素管に付与された第1マーキングと第2素管に付与された第2マーキングとの周方向のずれ量αを測定する。その後、試作ピンの加工に用いた旋盤と同じ第1旋盤に第3素管を配置する。このとき、第3素管に付与された第3マーキングが、試作ピンを形成する工程における第2マーキングの加工初期位置と同じ加工初期位置(ピン加工初期位置)になるように配置する。そして、試作ピンを形成する工程で使用したプログラムに対して、素管の回転角度をずれ量αだけオフセットさせたプログラムを使用して第3素管にピンを形成する。これによって、ボックスとピンとを締結させたとき、第1マーキングと第3マーキングとの周方向のずれを小さくすることができる。
【0016】
上記の実施形態において、試作ピンを形成する工程は、第1旋盤のチャックに付与されたマーキングの位置と第2マーキングの位置とを一致させる工程を含み、ピンを形成する工程は、チャックに付与されたマーキングの位置と第3マーキングの位置とを一致させる工程を含んでもよい。
【0017】
上記の実施形態において、ボックスを形成する工程は、第1素管を、第1マーキングが所定のボックス加工初期位置になるように旋盤に配置し、第1素管の一方の端部にボックスを形成する工程を含んでもよい。この構成によれば、複数の管を製造する場合において、第1マーキングとボックスの形状との関係を毎回一定にすることができる。
【0018】
上記の実施形態による製造方法は、さらに、ボックスが形成された第1素管を管軸方向と垂直な方向を回転軸として180°回転させた後、第1マーキングがボックス加工初期位置になるようにボックスの加工に使用した旋盤に配置し、第1素管のボックスが形成された端部と反対の端部に第2ボックスを形成する工程を備えてもよい。この構成によれば、ボックスと第2ボックスとを対称な形状にすることができる。
【0019】
上記の実施形態による製造方法は、さらに、ピンが形成された第3素管を管軸方向と垂直な方向を回転軸として180°回転させた後、第3マーキングがピン加工初期位置になるように第1旋盤に配置し、ピンの加工に使用したプログラムを使用して、第3素管のピンが形成された端部と反対の端部に第2ピンを形成する工程を備えてもよい。この構成によれば、ピンと第2ピンとを対称な形状にすることができる。
【0020】
上記の実施形態において、前記第3素管の一方の端部と他方の端部とを異なる旋盤で加工してもよい。
【0021】
上記の実施形態による製造方法は、さらに、第2素管を、第2マーキングが所定の第2ピン加工初期位置になるように、第1旋盤とは異なる第2旋盤に配置し、第2素管の試作ピンが形成された端部と反対の端部に第2試作ピンを形成する工程と、ボックスと第2試作ピンとを締結し、締結状態における第1マーキングと第2マーキングとの周方向のずれ量βを測定する工程と、第3素管を、第3マーキングが第2ピン加工初期位置になるように第2旋盤に配置し、第2試作ピンの加工に使用したプログラムに対して素管の回転角度をずれ量βだけオフセットさせたプログラムを使用して、第3素管のピンが形成された端部と反対の端部に第2ピンを形成する工程と、を備えてもよい。
【0022】
上記の実施形態による製造方法は、さらに、第3素管から第3マーキング及びピンを含むようにマーキングゲージを採取する工程と、外周面に第4マーキングが付与された第4素管を、第4マーキングが所定の試作ボックス加工初期位置になるように旋盤に配置し、第4素管に試作ボックスを形成する工程と、マーキングゲージと試作ボックスとを締結し、締結状態における第3マーキングと第4マーキングとの周方向のずれ量γを測定する工程と、外周面に第5マーキングが付与された第5素管を、第5マーキングが試作ボックス加工初期位置になるように試作ボックスの加工に使用した旋盤に配置し、試作ボックスの加工に使用したプログラムに対して素管の回転角度をずれ量γだけオフセットさせたプログラムを使用して、第5素管の一方の端部に前記ボックスを形成する工程と、を備えてもよい。
【0023】
上記の実施形態において、ピンは、ピンショルダ面を有し、ボックスは、締結状態においてピンショルダ面に接触するボックスショルダ面を有してもよい。
【0024】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0025】
[管用ねじ継手]
図1は、管用ねじ継手の一例である管用ねじ継手10の構成を模式的に示す平面図である。図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。管用ねじ継手10は、図2に示すように、管40の先端部に設けられる管状のピン20と、ピン20がねじ込まれてピン20と締結される管状のボックス30とを備えている。ピン20は、ピン20の外周に形成された雄ねじ21を有する。ボックス30は、ボックス30の内周に形成され且つ締結時に雄ねじ21に嵌合する雌ねじ31を有する。
【0026】
管用ねじ継手10では、ピン20は管40の両端に形成されており、ボックス30は管50の両端に形成されている。すなわち、管用ねじ継手10は、カップリング型のねじ継手である。
【0027】
管40及び管50の各々は、典型的には鋼管であるが、ニッケル基合金等からなる金属管であってもよい。
【0028】
管40及び管50の少なくとも一方の外周面には、周方向の基準位置を示す線であるリファレンスラインRL(図1)が付与されている。管用ねじ継手10は、複数の管40及び管50を継ぎ合わせたとき、リファレンスラインRLが一直線上に並ぶように構成されている。すなわち、管用ねじ継手10は、ピン20とボックス30との締結状態において、継ぎ合わされた管のリファレンスラインRLが同一直線上に並ぶように構成されている。
【0029】
ここでの「締結状態」は、締結完了状態を意味し、例えば、ピンショルダ面22とボックスショルダ面32とが接触した状態を「締結状態」とすることができる。これに代えて、例えばピン20とボックス30との締結度合いに応じて締結トルクが変化するような管用ねじ継手(例えば、楔型ねじを備えた管用ねじ継手)の場合、締結トルクが所定の大きさに到達した状態を「締結状態」としてもよい。締結状態を締結トルクで管理する場合、管用ねじ継手10は、ピンショルダ面22及びボックスショルダ面32を有していなくてもよい。
【0030】
[管用ねじ継手の製造方法]
[第1の実施形態]
本実施形態による管用ねじ継手の製造方法は、コンピュータによるプログラム制御が可能な旋盤(所謂NC旋盤)を使用して管用ねじ継手を製造する方法である。本実施形態による管用ねじ継手の製造方法は、より具体的には、ピン又はボックスの形成よりも前段階の加工を済ませた管(以下「素管」という。)に対して、旋盤による加工を行ってピン又はボックスを形成して、管用ねじ継手を製造する方法である。
【0031】
図3は、本発明の第1の実施形態による管用ねじ継手の製造方法を示すフロー図である。この製造方法は、素管BP1(第1素管)の一方の端部にボックスを形成する工程(ステップS1)と、素管BP1の他方の端部にボックス(第2ボックス)を形成する工程(ステップS2)と、素管BP2(第2素管)に試作ピンを形成する工程(ステップS3)と、ボックスと試作ピンとを締結してずれ量αを測定する工程(ステップS4)と、素管BP3(第3素管)の一方の端部にピンを形成する工程(ステップS5)と、素管BP3の他方の端部にピン(第2ピン)を形成する工程(ステップS6)とを備えている。以下、各工程を詳述する。
【0032】
まず、素管BP1(第1素管)を加工する(ステップS1及びステップS2)。図4図7は、これらの工程を説明するための模式図である。
【0033】
図4に示すように、素管BP1には、外周面にマーキングM1(第1マーキング)が付与されている。マーキングM1は、好ましくは、素管BP1の管軸方向に平行な直線として付与される。マーキングM1は、素管BP1の全長にわたって付与されている必要はなく、例えば、素管BP1の端部(片端又は両端)の近傍にのみ付与されていてもよい。マーキングM1は、素管BP1の外周面の一部を加工して形成したもの(例えば溝等)であってもよいが、ペン等で描画したものであることがより好ましい。マーキングM1がペン等で描画されたものであれば、管用ねじ継手の性能に影響を及ぼすことがなく、付与する作業も簡便なためである。
【0034】
素管BP1の加工には、コンピュータによるプログラム制御が可能な旋盤L0を用いる。旋盤L0は、素管BP1を固定するためのチャックC0と、工具T0とを備えている。旋盤L0は、素管BP1を管軸方向の回りに回転させる機構、及び工具T0を移動させる機構等を備えている。旋盤L0は、予め設定されたプログラムにしたがって、素管BP1を加工する。
【0035】
まず、図5に示すように、素管BP1の一方の端部にボックスB1を形成する(ステップS1)。
【0036】
このとき、マーキングM1が所定の加工初期位置(ボックス加工初期位置)になるように素管BP1を旋盤L0に配置して、素管BP1を加工することが好ましい。これは例えば、図4に示すように、旋盤L0のチャックC0の所定の位置にマーキングCM0を付与しておき、マーキングM1とマーキングCM0とが一致するように素管BP1をチャックC0に固定して、素管BP1を加工することで実現することができる。これによって、複数の管を製造する場合において、マーキングM1とボックスB1の形状との関係を毎回一定にすることができる。
【0037】
本実施形態では、後述するように、ピンとボックスとを締結させたときに、継ぎ合わされた管同士の間で生じる周方向のずれが小さくなるように調整を行う。以下、この調整を「位相合わせ」と呼ぶ。複数の管を製造する場合において、マーキングM1とボックスB1の形状との関係が毎回一定であれば、位相合わせは一回だけ行えばよく、その後の位相合わせを省略することができる。
【0038】
続いて、図6に示すように、ボックスB1が形成された素管BP1を管軸方向と垂直な方向を回転軸として180°回転させてチャックC0に固定し、図7に示すように、素管BP1の他方の端部にボックスB2(第2ボックス)を形成する(ステップS2)。
【0039】
このとき、マーキングM1が、ボックスB1を形成する工程(ステップS1)における加工初期位置と同じ加工初期位置(ボックス加工初期位置)になるように素管BP1を旋盤L0に配置して、素管BP1を加工することが好ましい。これは例えば、図6に示すように、マーキングM1とマーキングCM0とが一致するように素管BP1をチャックC0に固定して、素管BP1を加工することで実現することができる。
【0040】
ボックスB1を形成する工程(ステップS1)とボックスB2を形成する工程(ステップS2)とにおいて、加工初期位置を同じにしておくことで、ボックスB1とボックスB2とを対称な形状にすることができる。ボックスB1とボックスB2とが対称な形状であれば、ボックスB1とボックスB2との一方について位相合わせを行えばよく、他方についての位相合わせを省略することができる。
【0041】
次に、素管BP2(第2素管)に試作ピンを形成する(ステップS2)。図8及び図9は、この工程を説明するための模式図である。
【0042】
図8に示すように、素管BP2にも、素管BP1と同様に、外周面にマーキングM2(第2マーキング)が付与されている。マーキングM2は、好ましくは、素管BP2の管軸方向に平行な直線として付与される。マーキングM2は、素管BP2の全長にわたって付与されている必要はなく、例えば、素管BP2の端部(片端又は両端)の近傍にのみ付与されていてもよい。
【0043】
素管BP2の加工には、素管BP1の加工と同様に、コンピュータによるプログラム制御が可能な旋盤L1(第1旋盤)を用いる。旋盤L1も、旋盤L0と同様に、チャックC1と、工具T1とを備えている。旋盤L1は、素管BP1の加工に使用した旋盤L0と同一の旋盤であってもよいし、異なる旋盤であってもよい。
【0044】
図9に示すように、素管BP2の一方の端部に試作ピンTP1を形成する(ステップS3)。
【0045】
このとき、マーキングM2が所定の加工初期位置(ピン加工初期位置)になるように素管BP2を旋盤L1に配置して、素管BP2を加工する。これは例えば、図8に示すように、旋盤L1のチャックC1の所定の位置にマーキングCM1を付与しておき、マーキングM2とマーキングCM1とが一致するように素管BP2をチャックC1に固定して、素管BP2を加工することで実現することができる。
【0046】
次に、ボックスB1と試作ピンTP1とを締結し、締結状態におけるマーキングM1とマーキングM2との周方向のずれ量αを測定する(ステップS4)。図10は、この工程を説明するための模式図である。
【0047】
「締結状態」は、既述のとおり、締結完了状態を意味する。ずれ量αは、例えば、素管BP1の周方向に沿った距離を素管BP1の半径で除した値、又は素管BP2の周方向に沿った距離を素管BP2の半径で除した値(弧度法で表した角度)とすることができる。
【0048】
次に、素管BP3(第3素管)を加工する(ステップS5及びステップS6)。図11図14は、これらの工程を説明するための模式図である。
【0049】
図11に示すように、素管BP3にも、素管BP2と同様に、外周面にマーキングM3(第3マーキング)が付与されている。マーキングM3は、好ましくは、素管BP3の管軸方向に平行な直線として付与される。マーキングM3は、素管BP3の全長にわたって付与されている必要はなく、例えば、素管BP3の端部(片端又は両端)の近傍にのみ付与されていてもよい。
【0050】
素管BP3の加工には、素管BP2の加工に用いた旋盤L1(第1旋盤)を用いる。
【0051】
まず、図12に示すように、素管BP3の一方の端部にピンP1を形成する(ステップS5)。
【0052】
このとき、マーキングM3が、試作ピンを形成する工程(ステップS3)における加工初期位置と同じ加工初期位置(ピン加工初期位置)になるように素管BP3を旋盤L1に配置して、素管BP3を加工する。これは例えば、図11に示すように、マーキングM3とマーキングCM1とが一致するように素管BP3をチャックC1に固定して、素管BP3を加工することで実現することができる。
【0053】
ピンP1を形成する工程(ステップS5)では、試作ピンを形成する工程(ステップS3)で使用したプログラムに対して、素管の回転角度(管軸方向の回りの回転角度。以下同じ。)をずれ量αだけオフセットさせたプログラムを使用して、素管BP3を加工する。すなわち、試作ピンを形成する工程(ステップS3)で使用したプログラムに対して、ずれ量αが打ち消される方向に素管の回転角度をずらしたプログラムを使用して、素管BP3を加工する。これによって、ボックスB1とピンP1とを締結させたとき、マーキングM1(図7)とマーキングM3との周方向のずれを小さくすることができる。
【0054】
続いて、図13に示すように、ピンP1が形成された素管BP3を管軸方向と垂直な方向を回転軸として180°回転させてチャックC1に固定し、図14に示すように、素管BP3の他方の端部にピンP2(第2ピン)を形成する(ステップS6)。
【0055】
このときも、マーキングM3が、試作ピンを形成する工程(ステップS3)における加工初期位置と同じ加工初期位置(ピン加工初期位置)になるように素管BP3を旋盤L1に配置して、素管BP3を加工することが好ましい。また、ピンP2を形成する工程(ステップS6)においても、試作ピンを形成する工程(ステップS3)で使用したプログラムに対して、素管の回転角度をずれ量αだけオフセットさせたプログラム(すなわち、ピンP1を形成する工程(ステップS5)で使用したプログラム)を使用して、素管BP3を加工することが好ましい。これによって、ピンP1とピンP2とを対称な形状にすることができる。
【0056】
以上の工程によって、管用ねじ継手が製造される。本実施形態による管用ねじ継手の製造方法では、両端にボックス(ボックスB1及びボックスB2)が形成された素管BP1(図7)が図1の管50に相当し、両端にピン(ピンP1及びピンP2)が形成された素管BP3(図14)が図1の管40に相当する。素管BP1のマーキングM1及び素管BP3のマーキングM3は、図1のリファレンスラインRLとして、そのまま残しておいてもよい。
【0057】
特許第4741497号公報に記載された円筒状構成部品の製造方法では、下記の式で表される軸方向オフセットCを用いてピン又はボックスの形状を修正する。
C=P×(α+Q)/2π
ここで、Pはねじ山ピッチであり、αはラジアン単位で表された偏差である。Qは事前に定義された設定値である。
【0058】
特許第4741497号公報の製造方法には、次のような課題がある。軸方向オフセットCの式は理論式であり、ねじ山ピッチPのばらつきが考慮されていない。例えば、設計値はP=5.08mmであっても、実物はP=5.07mmになっている可能性がある。Pのばらつきにより、継ぎ合わされた管同士の周方向のずれを精度よく調整できない場合がある。
【0059】
また、特許第4741497号公報には、「設定値Qは、組み立てトルク及びグリース量のような種々のパラメータの関数として実験的に定義可能である。」と記載されている。すなわち、製造前にQの値を決定するためのテストが必要になる。
【0060】
さらに、管用ねじ継手がテーパーねじを有する場合、次のような課題がある。図15は、軸方向オフセットCを適用する前のピン90Aの形状、及び軸方向オフセットCを適用した後のピン90Bの形状を模式的に示す断面図である。91A及び91Bはそれぞれ、ピン90A及びピン90Bのねじ部分である。軸方向オフセットCを適用することによって、ショルダ先端からねじまでの距離がL1-L2=Cだけ変化する。
【0061】
図16は、ピン90Aの断面の輪郭とピン90Bの断面の輪郭とを重ねた図である。図16から分かるとおり、軸方向オフセットCを適用することによって、ピン90Aのねじ径よりもピン90Bのねじ径の方が大きくなる。そのため、軸方向オフセットCを適用すると、径方向の寸法も修正する必要がある。
【0062】
また、特許第4741497号公報の製造方法は、ショルダ面同士が接触した状態を締結状態とする管用ねじ継手にしか適用することができない。
【0063】
本実施形態による管用ねじ継手の製造方法によれば、上記の課題をすべて解決できる。本実施形態による製造方法では、ねじ山ピッチPのばらつきは考慮する必要がない。また、設定値Qを定義するためのテストも不要である。また、管用ねじ継手がテーパーねじを有する場合であっても、径方向の寸法を修正する必要はない。さらに、本実施形態による製造方法は、締結トルクで締結状態を管理する管用ねじ継手にも適用可能である。
【0064】
以上、本発明の第1の実施形態による管用ねじ継手の製造方法を説明した。本実施形態によれば、継ぎ合わされた管同士の周方向のずれを従来よりも精度よく調整することができる。
【0065】
上記の実施形態では、カップリング型の管用ねじ継手を製造する場合を説明したが、本実施形態による管用ねじ継手の製造方法は、インテグラル型の管用ねじ継手の製造にも適用可能である。インテグラル型のねじ継手では、管の一方の端部にピンが形成され、他方の端部にボックスが形成される。例えば、インテグラル型の管用ねじ継手を製造した後、ボックス部分を切断し、切断したボックスをピンに締結させてずれ量αを測定すればよい。あるいは、ピン用及びボックス用のマーキングゲージを用意してずれ量αを測定してもよい。
【0066】
[第2の実施形態]
図17は、本発明の第2の実施形態による管用ねじ継手の製造方法を示すフロー図である。この製造方法は、第1の実施形態による製造方法(図3)の工程に加えて、素管BP2に第2試作ピンを形成する工程(ステップS7)と、ボックスと第2試作ピンとを締結してずれ量βを測定する工程(ステップS8)とをさらに備えている。さらに、素管BP3の他方の端部にピンを形成する工程(ステップS9)が、第1の実施形態における同工程(図3のステップS6)と異なっている。
【0067】
素管BP1(第1素管)を加工する工程(ステップS1及びステップS2)、及び素管BP2(第2素管)の一方の端部に試作ピンを形成する工程(ステップS3)は、第1の実施形態の場合と同じである。
【0068】
本実施形態ではさらに、素管BP2の他方の端部に第2試作ピンを形成する(ステップS7)。図18及び図19は、この工程を説明するための模式図である。
【0069】
この加工には、試作ピンTP1の形成に使用した旋盤L1(第1旋盤、図9を参照。)とは異なる旋盤L2(第2旋盤)を用いる。旋盤L2も、旋盤L1と同様に、コンピュータによるプログラム制御が可能な旋盤であり、チャックC2と、工具T2とを備えている。
【0070】
図19に示すように、素管BP2の他方の端部に第2試作ピンTP2を形成する(ステップS7)。
【0071】
このとき、マーキングM2が所定の加工初期位置(第2ピン加工初期位置)になるように素管BP2を旋盤L2に配置して、素管BP2を加工する。これは例えば、図18に示すように、旋盤L2のチャックC2の所定の位置にマーキングCM2を付与しておき、マーキングM2とマーキングCM2とが一致するように素管BP3をチャックC2に固定して、素管BP2を加工することで実現することができる。
【0072】
ボックスB1と試作ピンTP1とを締結してずれ量αを測定する工程(ステップS4)は、第1の実施形態の場合と同じである。
【0073】
本実施形態ではさらに、ボックスB1と第2試作ピンTP2とを締結し、締結状態におけるマーキングM1とマーキングM2との周方向のずれ量βを測定する(ステップS8)。図20は、この工程を説明するための模式図である。ずれ量βを測定する工程(ステップS8)は、ずれ量αを測定する工程(ステップS4)と同様に行うことができる。
【0074】
次に、素管BP3(第3素管)を加工する(ステップS5及びステップS9)。このうち、素管BP3の一方の端部にピンを形成する工程(ステップS5)は、第1の実施形態の場合と同様である。
【0075】
図21及び図22は、素管BP3の他方の端部にピンを形成する工程(ステップS9)を説明するための模式図である。本実施形態では、第1の実施形態の場合と異なり、第2試作ピンTP2を形成する工程(ステップS7)で使用した旋盤L2を使用して、素管BP3の他方の端部にピンP2を形成する(ステップS9)。
【0076】
このとき、マーキングM3が、第2試作ピンを形成する工程(ステップS7)における加工初期位置と同じ加工初期位置(第2ピン加工初期位置)になるように素管BP3を旋盤L2に配置して、素管BP3を加工する。これは例えば、図21に示すように、マーキングM3とマーキングCM2とが一致するように素管BP3をチャックC2に固定して、素管BP3を加工することで実現することができる。
【0077】
ピンP2を形成する工程(ステップS9)では、第2試作ピンを形成する工程(ステップS7)で使用したプログラムに対して、素管の回転角度をずれ量βだけオフセットさせたプログラムを使用して、素管BP3を加工する。これによって、ボックスB1とピンP2とを締結させたとき、マーキングM1(図7)とマーキングM3との周方向のずれを小さくすることができる。
【0078】
以上の工程によって、管用ねじ継手が製造される。
【0079】
第1の実施形態による製造方法では、図11図14に示すとおり、素管BP3の両端を一つの旋盤(旋盤L1)で加工する。これに伴って、第1の実施形態による製造方法では、素管BP3を180°回転させる。長尺の素管BP3を回転させるためには、広いスペースが必要である。また、素管BP3の回転にクレーンを用いる場合には、クレーンを操作する人員が必要であり、自動化が困難である。
【0080】
これに対し、第2の実施形態による製造方法では、素管BP3の一方の端部と他方の端部とを異なる旋盤(旋盤L1及び旋盤L2)で加工する。これに伴って、第2の実施形態による製造方法では、二つの旋盤のそれぞれについてずれ量(ずれ量α及びずれ量β)の調整を行う。一方、第2の実施形態による製造方法では、素管BP3を180°回転させなくてもよい。そのため、設備のレイアウトをコンパクトにできる。また、自動化も比較的容易である。
【0081】
以上、本発明の第2の実施形態による管用ねじ継手の製造方法を説明した。本実施形態によっても、継ぎ合わされた管同士の周方向のずれを従来よりも精度よく調整することができる。
【0082】
上記の実施形態では、一方の端部に試作ピンTP1が形成された素管BP2の他方の端部に第2試作ピンTP2を形成し、これを用いてずれ量βを測定する場合を説明した。しかし、これに代えて、素管BP2とは別の素管に第2試作ピンTP2を形成し、これを用いてずれ量βを測定してもよい。
【0083】
上記の実施形態では、ずれ量αの測定及びずれ量βの測定の両方において、マーキングM2を基準とする場合を説明した。しかし、ずれ量βの測定に用いるマーキングは、ずれ量βの測定に用いるマーキングと同一でなくてもよい。例えば、素管BP2にマーキングM2とは異なるマーキングM2aを付与し、マーキングM2aが所定の加工初期位置(第2ピン加工初期位置)になるように素管BP2を旋盤L2に配置して第2試作ピンTP2を形成してもよい。この場合、ボックスB1と第2試作ピンTP2との締結状態における、マーキングM1とマーキングM2aとの周方向のずれ量がβとなる。
【0084】
[第3の実施形態]
図23は、本発明の第3の実施形態による管用ねじ継手の製造方法を示すフロー図である。この製造方法は、第1の実施形態による製造方法(図3)の工程に加えて、素管BP3からマーキングゲージを採取する工程(ステップS10)と、素管BP4(第4素管)に試作ボックスを形成する工程(ステップS11)と、マーキングゲージと試作ボックスとを締結してずれ量γを測定する工程(ステップS12)と、素管BP5(第5素管)にボックスを形成する工程(ステップS13)とをさらに備えている。図24図27は、これらの工程を説明するための模式図である。
【0085】
本実施形態による管用ねじ継手の製造方法は、例えば、過去に製造したピンとのインラインコネクションが可能なボックスを製造する必要が生じた場合に、予めピンから採取して保管しておいたマーキングゲージ(「短冊」や「バレット」等とも呼ばれる。)を用いてボックスを製造する方法である。
【0086】
まず、図24に示すように、素管BP3(第3素管)から、マーキングM3(第3マーキング)及びピンP1を含むようにマーキングゲージGを採取する(ステップS10)。図24のマーキングゲージGの形状は例示であり、マーキングゲージGの形状はこれに限定されない。マーキングゲージGは、マーキングM3及びピンP1を含む任意の形状であってよい。
【0087】
次に、図25に示すように、外周面にマーキングM4(第4マーキング)が付与された素管BP4(第4素管)に試作ボックスTB1を形成する(ステップS11)。以下では、図25に示すように、旋盤L0を使用して素管BP4を加工する場合を説明するが、素管BP4の加工に用いる旋盤は任意である。素管BP4の加工に用いる旋盤は、旋盤L1(図11)や旋盤L2(図18)であってもよいし、これら以外の旋盤であってもよい。
【0088】
このとき、マーキングM4が所定の加工初期位置(試作ボックス加工初期位置)になるように素管BP4を旋盤L0に配置して、素管BP4を加工する。これは例えば、図25に示すように、マーキングM4とマーキングCM0とが一致するように素管BP4をチャックC0に固定して、素管BP4を加工することで実現することができる。
【0089】
次に、図26に示すように、マーキングゲージGと試作ボックスTB1とを締結し、締結状態におけるマーキングM3とマーキングM4との周方向のずれ量γを測定する(ステップS12)。
【0090】
次に、図27に示すように、外周面にマーキングM5(第5マーキング)が付与された素管BP5(第5素管)にボックスB1を形成する(ステップS13)。ボックスB1の加工には、試作ボックスを形成する工程(ステップS11)で使用した旋盤と同じ旋盤(旋盤L0)を使用する。
【0091】
このとき、マーキングM5が、試作ボックスを形成する工程(ステップS11)における加工初期位置と同じ加工初期位置(試作ボックス加工初期位置)になるように素管BP5を旋盤L0に配置して、素管BP5を加工する。これは例えば、図27に示すように、マーキングM5とマーキングCM0とが一致するように素管BP5をチャックC0に固定して、素管BP5を加工することで実現することができる。
【0092】
ボックスを形成する工程(ステップS13)では、試作ボックスを形成する工程(ステップS11)で使用したプログラムに対して、素管の回転角度をずれ量γだけオフセットさせたプログラムを使用して、素管BP5を加工する。これによって、ボックスB1とピンP1とを締結させたとき、マーキングM3とマーキングM5との周方向のずれを小さくすることができる。
【0093】
以上、本発明の第3の実施形態による管用ねじ継手の製造方法を説明した。本実施形態によれば、過去に製造したピンとのインラインコネクションが可能なボックスを製造することができる。
【0094】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0095】
10 管用ねじ継手
20 ピン
21 雄ねじ
22 ピンショルダ面
30 ボックス
31 雌ねじ
32 ボックスショルダ面
40、50 管
BP1 素管(第1素管)
BP2 素管(第2素管)
BP3 素管(第3素管)
BP4 素管(第4素管)
BP5 素管(第5素管)
M1 マーキング(第1マーキング)
M2 マーキング(第2マーキング)
M3 マーキング(第3マーキング)
M4 マーキング(第4マーキング)
M5 マーキング(第5マーキング)
B1 ボックス
B2 ボックス(第2ボックス)
TP1 試作ピン
TP2 第2試作ピン
P1 ピン
P2 ピン(第2ピン)
TB1 試作ボックス
L0 旋盤
L1 旋盤(第1旋盤)
L2 旋盤(第2旋盤)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27