(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087223
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】車両診断方法および情報提示方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20230616BHJP
【FI】
G01M17/007 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201487
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 陸
(57)【要約】
【課題】走行中の車両において通常とは異なる音(異音)が発生した場合に、当該車両の乗員が正しく対処できるよう支援する技術を提供する。
【解決手段】車両診断システム10のコンピュータは、走行中の車両12において生じた音声を取得する。車両診断システム10のコンピュータは、取得された音声をもとに車両12の状態を診断する。車両診断システム10のコンピュータは、車両12の状態の診断結果を車両12に搭載された装置から出力させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載装置と通信し、かつ、異音と車両状態とを関連付けて記録するデータベースを備えた機器において実行される車両診断方法であって、
前記車載装置から送信された、走行中の車両において生じた音声を取得し、
取得された音声をもとに前記車両の状態を診断し、
前記車両の状態の診断結果を前記車載装置に送信する、
車両診断方法。
【請求項2】
前記車両の走行データを取得し、
取得された音声と取得された走行データとをもとに前記車両の状態を診断する、
請求項1に記載の車両診断方法。
【請求項3】
前記診断結果は、前記車両の乗員がとるべき行動に関する情報を含む、
請求項1または2に記載の車両診断方法。
【請求項4】
取得された現在の走行音と通常時の走行音とを比較することにより異音を検知し、
前記異音が検知された場合に、前記車両の状態を診断する、
請求項1から3のいずれかに記載の車両診断方法。
【請求項5】
異音と車両状態とを関連付けて記録するデータベースを備えた機器と通信する車載装置において実行される情報提示方法であって、
走行中の車両において生じた音声を前記機器に送信し、
前記機器から送信された、前記音声に基づく前記車両の状態の診断結果を受け付け、
前記診断結果を出力部から出力させる、
情報提示方法。
【請求項6】
前記機器による診断で用いられた音声のデータを保存する、
請求項5に記載の情報提示方法。
【請求項7】
前記診断結果は、所定のサービスの利用を促す内容を含み、
前記車両の乗員の操作に応じて、前記サービスに関する装置と通信する、
請求項5または6に記載の情報提示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はデータ処理技術に関し、特に車両診断方法および情報提示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部品の経年劣化や故障により、走行中の車両が通常とは異なる音(以下「異音」とも呼ぶ。)を発生させることがある。以下の特許文献1では、専用の集音デバイスを車両に設置して、当該車両で発生する異音を検知する音声処理システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現状、走行中の車両において異音が発生した場合に、専門家でない車両の乗員が異音の原因を迅速に判断して、正しく対処することは困難である。
【0005】
本開示はこうした課題に鑑みてなされたものであり、1つの目的は、走行中の車両で発生した異音に対する当該車両の乗員の対処を支援する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の車両診断方法は、車載装置と通信し、かつ、異音と車両状態とを関連付けて記録するデータベースを備えた機器において実行される車両診断方法であって、車載装置から送信された、走行中の車両において生じた音声を取得し、取得された音声をもとに車両の状態を診断し、車両の状態の診断結果を車載装置に送信する。
【0007】
本開示の別の態様は、情報提示方法である。この方法は、異音と車両状態とを関連付けて記録するデータベースを備えた機器と通信する車載装置において実行される情報提示方法であって、走行中の車両において生じた音声を機器に送信し、機器から送信された、音声に基づく車両の状態の診断結果を受け付け、診断結果を出力部から出力させる。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を、装置、システム、装置またはシステムを備える車両、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを記録した記録媒体などの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の技術によれば、走行中の車両で発生した異音に対する当該車両の乗員の対処を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】実施例の車両診断システムの構成を示す図である。
【
図3】
図2の車両の機能ブロックを示すブロック図である。
【
図4】
図2のサーバの機能ブロックを示すブロック図である。
【
図5】車両診断システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示における装置または方法の主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがプログラムを実行することによって、本開示における装置または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、プログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(Integrated Circuit)(IC)、またはLSI(Large Scale Integration)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。ここではICあるいはLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)もしくはUSLI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるものであってもよい。LSIの製造後にプログラムされる、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array)(FPGA)、またはLSI内部の接合関係の再構成またはLSI内部の回路区画のセットアップができる再構成可能な論理デバイスも同じ目的で使うことができる。複数の電子回路は、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM(Read Only Memory)、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録されてもよいし、コンピュータが読み取り可能なRAM(Random Access Memory)などの一時的記憶媒体に記録されてもよい。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体もしくは記憶媒体に供給されてもよい。
【0012】
まず、実施例の概要を説明する。部品の経年劣化や故障により、走行中の車両が通常とは異なる音(異音)を発生させることがある。異音は、正常な車両の走行時に発生する音とは異なる音とも言え、正常な車両では鳴らない音とも言える。異音が発生する原因は多様であり、原因によって重要度や解決方法が異なる。
【0013】
図1は、異音の鳴り方のパターンを示す。異音の鳴り方、異音の発生部位、異音の発生状況(車両の動作状態とも言える)の組み合わせに応じて、異音の原因は異なり、対処方法も異なる。例えば、同じ「ゴロゴロ」と鳴る異音であっても、異音の発生部位がミッション部分であれば、走行中の車両を安全な場所に停車させ、救助依頼する必要があり、一方、異音の発生部位が足下であれば、早めに整備工場で点検を受ければよい。
【0014】
上述の特許文献1では、専用の集音デバイスを車両に設置して、当該車両で発生する異音を検知する音声処理システムが提案されている。特許文献1の音声処理システムは、音声センサで検出された音声の音量レベルや周波数特性をPCのディスプレイに表示させることが記載されているが、専門家でない車両の乗員(運転者等)が、異音の原因や対処方法を判断することは困難である。
【0015】
そこで実施例では、走行中の車両で生じた音に基づいて当該車両の状態を診断し、その診断結果を当該車両の車載装置に出力させる情報処理システム(後述の車両診断システム10)を提案する。実施例のシステムによると、走行中の車両で発生した異音に対して当該車両の乗員が適切に対処できるよう支援することができる。
【0016】
実施例の詳細を説明する。
図2は、実施例の車両診断システムの構成を示す。車両診断システム10は、車両12、サーバ14、外部サービス16を備える。車両診断システム10の各要素は、LAN・WAN・インターネット等を含み得る通信網18を介して接続される。
【0017】
サーバ14は、車両12に対して異音診断サービスを提供する情報処理装置である。外部サービス16は、車両の乗員の支援や車両の修理・整備を行う外部サービスの装置やシステムである。外部サービス16は、例えば、オペレータサービス、救助サービス、整備工場予約サービス等を提供する装置やシステムを含んでもよい。
【0018】
図3は、
図2の車両12の機能ブロックを示すブロック図である。本開示のブロック図において示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPU・メモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0019】
車両12は、音声入力部20と車載装置22を備える。音声入力部20は、車両12の車室前方(例えばステアリングの下)に設置されたマイクロフォンを含む。音声入力部20は、車両12内の音を電気信号に変換した音声データを車載装置22に入力する。音声データは、車両12内の音の音量、周波数特性、方向(具体的にはマイクロフォンから音源への方向)を示すデータを含む。
【0020】
車載装置22は、車両12に搭載された情報処理装置である。車載装置22は、例えば、カーナビゲーションシステムの装置であってもよく、IVI(In-Vehicle Infotainment)システムの装置であってもよい。車載装置22は、通信部24、表示部30、操作入力部32、異音ログ保持部34、制御部36を備える。
【0021】
通信部24は、所定の通信プロトコルにしたがって外部装置と通信する。通信部24は、送信部26と受信部28を含む。送信部26は、制御部36から出力されたデータをサーバ14または外部サービス16へ送信する。受信部28は、サーバ14または外部サービス16から送信されたデータを制御部36に入力する。
【0022】
表示部30は、制御部36による制御にしたがって各種情報を表示する。操作入力部32は、ユーザによる操作入力を受け付け、ユーザにより入力された操作の情報を制御部36に渡す。表示部30と操作入力部32は、一体構成であってもよく、例えばタッチスクリーンにより実現されてもよい。
【0023】
異音ログ保持部34は、異音ログのデータを記憶する。異音ログは、異音発生時の音声データおよび走行データと、それらのデータに基づく診断結果を含む。
【0024】
制御部36は、各種データ処理を実行する。制御部36は、車載装置22のプロセッサ(CPU、ECU(Electronic Control Unit)等)により実現されてもよい。制御部36は、音声取得部38、異音検知結果取得部40、走行データ取得部42、診断結果取得部43、診断結果出力部44、外部サービス連携部46を含む。これら複数の機能ブロックの機能はコンピュータプログラムに実装され、そのコンピュータプログラムは車載装置22のストレージにインストールされてもよい。車載装置22のプロセッサは、上記コンピュータプログラムをメインメモリに読み出して実行することにより上記複数の機能ブロックの機能を発揮してもよい。
【0025】
音声取得部38は、音声入力部20から入力された、走行中の車両12において生じた音声のデータを取得する。異音検知結果取得部40は、サーバ14から提供された、異音検知結果を取得する。異音検知結果は、異音の有無を示す情報である。
【0026】
走行データ取得部42は、車両12の走行データを取得する。走行データは、車両12の速度、加速度、エンジン回転数、ステアリング角度、ブレーキの作動状況を含む。走行データ取得部42は、車両12のCAN(Controller Area Network)のバスから走行データを取得してもよく、車両12に設けられた1つまたは複数のECUから走行データを取得してもよい。
【0027】
診断結果取得部43は、サーバ14から提供された、車両12の状態の診断結果を取得する。診断結果出力部44は、サーバ14から提供された(診断結果取得部43により取得された)、車両12の状態の診断結果を車両12に搭載された装置から出力させる。実施例では、診断結果出力部44は、診断結果を示す画面のデータを表示部30へ送信し、診断結果の画面を表示部30に表示させる。変形例として、診断結果が音声データの場合、診断結果出力部44は、診断結果を示す音声のデータを車両12内のスピーカー(不図示)へ送信し、診断結果の音声をスピーカから出力させてもよい。
【0028】
また、診断結果出力部44は、車両12の状態の診断結果と、その診断に用いられた音声データおよび走行データを含む異音ログを異音ログ保持部34に格納する。
【0029】
外部サービス連携部46は、通信部24を介して、外部サービス16と各種データを送受信することにより、外部サービス(例えばオペレータサービス)を利用する。
【0030】
図4は、
図2のサーバ14の機能ブロックを示すブロック図である。サーバ14は、通常時音声保持部50、異音データ保持部52、異音検知部54、異音検知結果提供部56、診断部58、診断結果提供部60を備える。通常時音声保持部50と異音データ保持部52は、サーバ14のストレージにより実現されてもよい。異音検知部54、異音検知結果提供部56、診断部58、診断結果提供部60の機能は、コンピュータプログラムに実装されてもよい。サーバ14のプロセッサ(CPU等)は、ストレージに格納された上記コンピュータプログラムをメインメモリに読み出して実行することにより、上記複数の機能ブロックの機能を発揮してもよい。
【0031】
通常時音声保持部50は、車両12の通常走行時(言い換えれば、正常な状態の車両12の走行時)に音声入力部20により検知されると想定される音声(以下「通常時音声」とも呼ぶ。)のパターンを示すデータを記憶する。通常時音声は、例えば、車両12の走行時に生じるロードノイズを含むが、異音を含まないものであってよい。通常時音声のパターンデータは、通常時音声の音量、周波数特性、方向(音声入力部20から音源への方向)を示すデータを含む。
【0032】
異音データ保持部52は、異音と車両状態とを関連付けて記録するデータベースである。具体的には、異音データ保持部52は、異音パターンと走行データパターンの組み合わせと、診断結果とを対応付けたデータである異音データを複数記憶する。複数の異音データのそれぞれは、互いに異なる異音パターンと走行データパターンの組み合わせと、互いに異なる診断結果とを組み合わせたものである。
【0033】
異音パターンは、異音(もしくは異音とそれ以外の音声とが混在するもの)の音量、周波数特性、方向(音声入力部20から音源への方向)を示すデータを含む。走行データパターンは、車両12の速度、加速度、エンジン回転数、ステアリング角度、ブレーキの作動状況を示すデータを含む。診断結果は、異音の発生部位の情報(実施例ではテキストおよび画像)と、対処方法とを含む。対処方法は、車両12の乗員がとるべき行動(例えば車両12の停車等)に関する情報を含む。
【0034】
異音検知部54は、車両12から送信された(車両12の音声取得部38で取得された)車両12の現在の走行音に関する音声データと、通常時音声保持部50に記憶された通常時音声のパターンデータとを比較することにより、車両12で発生している異音を検知する。
【0035】
異音検知結果提供部56は、異音検知部54による異音の検知結果を示すデータ(例えば、異音が発生しているか否かの情報)を車両12へ送信する。
【0036】
診断部58は、異音検知部54により車両12で異音が発生していることが検知された場合に、車両12(車載装置22)から取得された車両12の音声データと走行データとをもとに車両12の状態を診断する。具体的には、診断部58は、車両12から送信された(言い換えれば、車両12の音声取得部38で取得された)車両12の現在の走行音に関する音声データと、車両12から送信された(言い換えれば、車両12の走行データ取得部42で取得された)走行データとを受け付ける。診断部58は、車両12の音声データおよび走行データと、異音データ保持部52に記憶された異音データとを比較して診断結果を生成する。
【0037】
診断結果提供部60は、診断部58により生成された診断結果のデータを車両12(車載装置22)へ送信する。
【0038】
以上の構成による車両診断システム10の動作を説明する。
図5は、車両診断システム10の動作を示すフローチャートである。車両12の乗員(例えば運転者)は、車両12の走行中に通常と異なる音の発生に気づいた場合、車載装置22に対して異音診断機能を起動させる所定の操作を入力する。車載装置22の操作入力部32が異音診断機能の起動操作を受け付けると(S10のY)、車載装置22の音声取得部38は、音声入力部20を介して、走行中の車両12において生じた音声に関する音声データを取得する(S11)。音声取得部38は、送信部26を介して、取得した音声データをサーバ14へ送信する。
【0039】
サーバ14の異音検知部54は、車両12から送信された音声データと、通常時音声保持部50に記憶された通常時音声のパターンデータとを比較することにより、車両12における異音の発生有無を判定する(S12)。具体的には、異音検知部54は、車両12から送信された音声データが示す音量、周波数特性、方向の組み合わせと、通常時音声のパターンデータが示す音量、周波数特性、方向の組み合わせとの差異が予め定められた閾値を超過する場合、車両12に異音が発生していると判定してもよい。
【0040】
また、異音検知部54は、車両12から送信された音声データが示す音量、周波数特性、方向の組み合わせと、通常時音声のパターンデータが示す音量、周波数特性、方向の組み合わせとが一致し、または、差異が上記閾値以下の場合に、車両12に異音が未発生と判定してもよい。上記閾値は、車両診断システム10の開発者の知見や、車両診断システム10を用いた実験により適切な値が決定されてもよい。
【0041】
サーバ14の異音検知結果提供部56は、異音の発生有無を示す異音検知結果を車両12へ送信する。車載装置22の異音検知結果取得部40は、受信部28を介して、サーバ14から送信された異音検知結果を取得する。異音検知結果が異音の発生を示す場合(S13のY)、車載装置22の音声取得部38は、走行中の車両12において生じた音声に関する音声データを取得し、車載装置22の走行データ取得部42は、走行中の車両12の走行データを取得する(S14)。音声取得部38は、送信部26を介して、取得した音声データをサーバ14へ送信する。走行データ取得部42は、送信部26を介して、取得した走行データをサーバ14へ送信する。
【0042】
サーバ14の診断部58は、車両12から送信された音声データおよび走行データと、異音データ保持部52に記憶された異音データとを比較することにより、車両12で発生している異音の発生原因と対処方法を推定する(S15)。
【0043】
具体的には、診断部58は、異音データ保持部52に記憶された複数の異音データの中から、車両12から送信された音声データ(音量、周波数特性、方向の組み合わせ)と走行データ(速度、加速度、エンジン回転数、ステアリング角、ブレーキの作動状況の組み合わせ)に一致または類似する異音パターンと走行データパターンが規定された異音データを該当異音データとして識別する。類似するとは、差異が予め定められた閾値内であることでもよく、この閾値は開発者の知見や実験により決定されてよい。なお、該当異音データの識別には、公知の検索技術や機械学習が用いられてよい。
【0044】
診断部58は、該当異音データで規定された診断結果(異音発生部位と対処方法)と、診断結果のエビデンス情報(実施例では診断処理に用いた音声データの音声波形と周波数特性のデータ)とを含む診断結果データを生成する。サーバ14の診断結果提供部60は、診断部58により生成された診断結果データを車両12へ送信する。
【0045】
車載装置22の診断結果出力部44は、受信部28を介して、サーバ14から送信された診断結果データを取得する。診断結果出力部44は、(1)音声取得部38により取得されてサーバ14に送信された音声データと、(2)走行データ取得部42により取得されてサーバ14に送信された走行データと、(3)1、2のデータに基づく診断の結果を示す、サーバ14から送信された診断結果データと、を含む異音ログを異音ログ保持部34に格納する(S16)。これにより、外部サービス(例えば販売店や修理工場)での解析作業を支援できる。サーバ14から送信された異音検知結果が異音を検知しないことを示す場合(S13のN)、S14~S16の処理をスキップする。
【0046】
また、診断結果出力部44は、サーバ14から送信された診断結果データに基づいて診断結果画面のデータを生成する。診断結果出力部44は、診断結果画面のデータを表示部30へ出力することにより、診断結果画面を表示部30に表示させる(S17)。
図6は、診断結果画面の例を示す。診断結果画面70は、サーバ14から送信された診断結果データの各項目に対応する、異音発生部位情報72(72a、72b)、エビデンス情報74、対処方法76を含む。
【0047】
異音発生部位情報72aは、推定された異音発生部位を示すテキストである。異音発生部位情報72bは、推定された異音発生部位を示す画像である。エビデンス情報74は、診断処理に用いられた音声データの音声波形と周波数特性を示す。対処方法76は、車両12の乗員(典型的には運転者)がとるべき行動を示す情報である。対処方法76は、
図1に示した対処方法を含んでもよい。
【0048】
なお、サーバ14から送信された異音検知結果が異音を検知しないことを示す場合(すなわちS14~S16の処理をスキップした場合)、診断結果出力部44は、S17の処理として、異音が検知されなかった旨の診断結果を表示部30に表示させてもよい。
【0049】
図6に示したように、診断結果画面70の対処方法は、外部サービスの利用(例えば、オペレータサービスを利用して検査予約をすること)を提案する内容を含み得る。
図6の診断結果画面70では、車両12の乗員は、オペレータサービスを利用して検査予約を希望する場合、OKボタン78を選択する。
【0050】
診断結果画面70において外部サービスの利用を要求する操作が入力されると(例えば
図6の診断結果画面70でOKボタン78が選択されると)(S18のY)、外部サービス連携部46は、外部サービス16との間でサービスを利用するために必要な各種データを送受信する(S19)。診断結果画面70において外部サービスの利用を要求する操作が未入力であれば(S18のN)、S19の処理をスキップする。
【0051】
例えば、S19の処理として、外部サービス連携部46は、オペレータサービスに対して通話を要求してもよい。また、外部サービス連携部46は、自動車販売店や工場での整備を予約するデータを送信してもよい。また、外部サービス連携部46は、自動車会社等に設けられたデータベースであり、オペレータサービスや修理サービスから参照可能なデータベースに、異音ログ(例えば音声データ、走行データ、診断結果等)を送信し、登録してもよい。
【0052】
車載装置22の操作入力部32が異音診断機能の起動操作を受け付けなければ(S10のN)、S11以降の処理をスキップする。
【0053】
実施例の車両診断システム10によると、走行中の車両12において異音が発生した場合に、当該車両12の乗員が正しく対処できるよう支援でき、乗員の安全性や満足度を向上させることができる。また、実施例の車両診断システム10では、異音検知処理と診断処理をサーバ14が実行することにより、車載装置22のシステムリソースの逼迫を回避しやすくなる。
【0054】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、実施例の各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0055】
変形例を説明する。上記実施例の車両診断システム10では、車両12の乗員による異音診断機能の起動操作をトリガに異音検知処理を開始したが、変形例として、異音検知処理を自動的に実行してもよい。具体的には、乗員による操作の有無にかかわらず、車載装置22の音声取得部38は、車両12内の音声を定期的に繰り返し取得し、サーバ14の異音検知部54は、異音検知処理を定期的に繰り返し実行してもよい。そして、異音が検知された場合、車載装置22とサーバ14は、
図5に関連して説明した診断処理(S14以降の処理)を実行してもよい。
【0056】
別の変形例を説明する。上記実施例の車両診断システム10では、サーバ14が異音検知処理と診断処理を実行したが、変形例として、車両12の車載装置22が異音検知処理と診断処理を実行してもよい。すなわち、車載装置22が、異音検知部54および診断部58を備える構成であってもよい。なお、通常時音声保持部50および異音データ保持部52は、サーバ14が備える構成であってもよく、車載装置22が備える構成であってもよい。
【0057】
さらに別の変形例として、異音検知処理と診断処理をサーバ14と車載装置22の両方で実行してもよい。この場合、サーバ14と車載装置22それぞれの異音検知部54は、異音検知結果の確からしさを示す確率値を導出してもよい。同様に、サーバ14と車載装置22それぞれの診断部58は、診断結果の確からしさを示す確率値を導出してもよい。車載装置22の制御部36は、サーバ14の異音検知部54による異音検知結果と、車載装置22の異音検知部54による異音検知結果のうち確からしさを示す確率値がより高い方の異音検知結果を採用して処理を進めてもよい。同様に、車載装置22の制御部36は、サーバ14の診断部58による診断結果と、車載装置22の診断部58による診断結果のうち確からしさを示す確率値がより高い方の診断結果を採用して処理を進めてもよい。
【0058】
さらに別の変形例を説明する。上記実施例では、車載装置22の診断結果出力部44は、車載装置22の表示部30に診断結果を表示させた。変形例として、車載装置22の診断結果出力部44は、車載装置22とは異なる表示装置(例えばヘッドアップディスプレイ等)に診断結果を表示させてもよい。また、車載装置22の診断結果出力部44は、車載装置22と無線接続された乗員の端末(スマートフォン等)に診断結果のデータを出力し、乗員の端末に診断結果を表示させてもよい。
【0059】
上述した実施例および変形例の任意の組み合わせもまた本開示の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施例および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施例および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【0060】
実施例および変形例に記載の技術は、以下の各項目に記載の態様にて特定されてもよい。
[項目1]
車載装置と通信し、かつ、異音と車両状態とを関連付けて記録するデータベースを備えた機器において実行される車両診断方法であって、
前記車載装置から送信された、走行中の車両において生じた音声を取得し、
取得された音声をもとに前記車両の状態を診断し、
前記車両の状態の診断結果を前記車載装置に送信する、
車両診断方法。
この車両診断方法によると、走行中の車両で発生した異音に対する当該車両の乗員の対処を支援でき、乗員の安全性や満足度を向上させることができる。
[項目2]
前記車両の走行データを取得し、
取得された音声と取得された走行データとをもとに前記車両の状態を診断する、
項目1に記載の車両診断方法。
この車両診断方法によると、車両の走行データを加味して、当該車両の状態の診断精度を高めることができる。
[項目3]
前記診断結果は、前記車両の乗員がとるべき行動に関する情報を含む、
項目1または2に記載の車両診断方法。
この車両診断方法によると、乗員が異音に対して適切な対処をとれるよう一層効果的に支援できる。
[項目4]
取得された現在の走行音と通常時の走行音とを比較することにより異音を検知し、
前記異音が検知された場合に、前記車両の状態を診断する、
項目1から3のいずれかに記載の車両診断方法。
この車両診断方法によると、車両の乗員が検知しない異音についても自動的に検知でき、乗員の安全性や満足度を一層向上させることができる。
[項目5]
異音と車両状態とを関連付けて記録するデータベースを備えた機器と通信する車載装置において実行される情報提示方法であって、
走行中の車両において生じた音声を前記機器に送信し、
前記機器から送信された、前記音声に基づく前記車両の状態の診断結果を受け付け、
前記診断結果を出力部から出力させる、
情報提示方法。
この情報提示方法によると、走行中の車両で発生した異音に対する当該車両の乗員の対処を支援でき、乗員の安全性や満足度を向上させることができる。
[項目6]
前記機器による診断で用いられた音声のデータを保存する、
項目5に記載の情報提示方法。
この情報提示方法によると、診断に用いられた音声データを保存しておくことにより、販売店や工場での詳細な検査を支援でき、また、再現性のない異音の場合の販売店や工場の手間を削減できる。
[項目7]
前記診断結果は、所定のサービスの利用を促す内容を含み、
前記車両の乗員の操作に応じて、前記サービスに関する装置と通信する、
項目5または6に記載の情報提示方法。
この情報提示方法によると、走行中の車両で発生した異音に対して当該車両の乗員が適切な対処をとれるよう支援することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 車両診断システム、 12 車両、 14 サーバ、 20 音声入力部、 22 車載装置、 38 音声取得部、 42 走行データ取得部、 44 診断結果出力部、 46 外部サービス連携部、 54 異音検知部、 58 診断部。