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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087224
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/12 20060101AFI20230616BHJP
【FI】
B60C19/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201489
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】梶原 晃平
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA60
3D131BA04
3D131BB01
3D131BC24
3D131LA13
3D131LA28
(57)【要約】
【課題】シール性の低下を抑制することが可能な空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤは、インナーライナーのタイヤ径方向内側の面にシーラント層60が形成されている。シーラント層60は、タイヤ接地端Eよりもタイヤ幅方向内側の領域における貯蔵弾性率G’が、タイヤ接地端Eよりもタイヤ幅方向外側の領域における貯蔵弾性率G’よりも小さい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーライナーのタイヤ径方向内側の面にシーラント層が形成されている空気入りタイヤであって、
前記シーラント層は、タイヤ接地端よりもタイヤ幅方向内側の領域における貯蔵弾性率G’が、タイヤ接地端よりもタイヤ幅方向外側の領域における貯蔵弾性率G’よりも小さい、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記シーラント層は、前記G’に対する前記G’の比が1.1以上10.0以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記シーラント層は、前記G’が1kPa以上50kPa以下であり、前記G’が10kPa以上100kPa以下である、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記シーラント層は、前記インナーライナーのタイヤ径方向内側の面に沿って連続的に配置されている紐状の第一シーラント材と、前記第一シーラント材に隣接して連続的に配置されている紐状の第二シーラント材と、を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第一シーラント材および前記第二シーラント材の断面形状は、それぞれ略三角形および略逆三角形である、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第一シーラント材は、タイヤ幅方向に隣り合うように並列配置されており、タイヤ周方向に周回する複数の周回部と、前記周回部のタイヤ周方向の一方の端部から、タイヤ幅方向一方側に隣り合う前記周回部のタイヤ周方向の他方の端部に移行する複数の移行部と、を有する、請求項4または5に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤのインナーライナーに異物が刺さった場合のシール性を確保するために、インナーライナーのタイヤ径方向内側の面にシーラント層が形成されている空気入りタイヤが知られている。ここで、シーラント層は、インナーライナーのタイヤ径方向内側の面に沿って連続的に配置されている紐状のシーラント材を有する。
【0003】
特許文献1には、第一シーラント層および第二シーラント層が積層されているシーラント層が記載されている。ここで、第一シーラント層を構成するシーラント材は、螺旋状に配置されており、第一シーラント層を構成するシーラント材と、第二シーラント層を構成するシーラント材は、同一の周方向に配され、かつ、タイヤ幅方向にずらして配置されている。
【0004】
特許文献2には、内腔側に第一シーラント層が配置されており、タイヤゴム側に第二シーラント層が配置されているシーラント層が記載されている。ここで、第二シーラント層に対する第一シーラント層の30℃における粘度の比が1.6以上である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6848744号公報
【特許文献2】特許第6695355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2では、空気入りタイヤが転動時に発熱すると、タイヤ接地端よりもタイヤ幅方向の外側の曲率が大きい領域のシーラント材がタイヤ幅方向内側に移動するため、空気入りタイヤのシール性が低下する。これは、タイヤの転動による遠心力および発熱によるシーラント材の粘度低下に起因していると推測される。
【0007】
本発明は、シール性の低下を抑制することが可能な空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、インナーライナーのタイヤ径方向内側の面にシーラント層が形成されている空気入りタイヤであって、前記シーラント層は、タイヤ接地端よりもタイヤ幅方向内側の領域における貯蔵弾性率G’が、タイヤ接地端よりもタイヤ幅方向外側の領域における貯蔵弾性率G’よりも小さい。
【0009】
前記シーラント層は、前記G’に対する前記G’の比が1.1以上10.0以下であってもよい。
【0010】
前記シーラント層は、前記G’が1kPa以上50kPa以下であり、前記G’が10kPa以上100kPa以下であってもよい。
【0011】
前記シーラント層は、前記インナーライナーのタイヤ径方向内側の面に沿って連続的に配置されている紐状の第一シーラント材と、前記第一シーラント材に隣接して連続的に配置されている紐状の第二シーラント材と、を有してもよい。
【0012】
前記第一シーラント材および前記第二シーラント材の断面形状は、それぞれ略三角形および略逆三角形であってもよい。
【0013】
前記第一シーラント材は、タイヤ幅方向に隣り合うように並列配置されており、タイヤ周方向に周回する複数の周回部と、前記周回部のタイヤ周方向の一方の端部から、タイヤ幅方向一方側に隣り合う前記周回部のタイヤ周方向の他方の端部に移行する複数の移行部と、を有してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シール性の低下を抑制することが可能な空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るタイヤのタイヤ幅方向の断面を示す図である。
図2図1のタイヤの内面を示す展開図である。
図3図2のシーラント層のタイヤ接地端近傍の領域のA-A面における断面の部分拡大図である。
図4図3の第一シーラント材および第二シーラント材のステップ貼りを実施する方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ(以下、タイヤ1という)のタイヤ幅方向の断面を示す図である。タイヤ1は、例えば、乗用車用のタイヤである。タイヤ1の基本的な構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっている。図中、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸(タイヤ子午線)に直交する面であり、かつ、タイヤ幅方向中心に位置する面である。
【0018】
なお、図1の断面図は、タイヤ1を規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態のタイヤ幅方向断面図(タイヤ子午線断面図)である。なお、規定リムとは、タイヤサイズに対応してJATMAに定められた標準となるリムを指す。また、規定内圧とは、例えば、タイヤが乗用車用である場合には180kPaである。
【0019】
ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、図1の断面図における紙面左右方向である。図1においては、タイヤ幅方向Xとして図示されている。
【0020】
そして、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、図1においては、紙面中央側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、図1においては、紙面左側および右側である。
【0021】
また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、図1における紙面上下方向である。図1においては、タイヤ径方向Yとして図示されている。
【0022】
そして、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、図1においては、紙面下側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、図1においては、紙面上側である。
【0023】
図1に示されるように、タイヤ1は、インナーライナー50のタイヤ径方向内側の面、すなわち、インナーライナー50の内面501にシーラント層60が形成されている。なお、タイヤ1の構造の詳細については、後述する。
【0024】
シーラント層60は、インナーライナー50の少なくともトレッド30に対応する内面501に配置されている。シーラント層60の幅(タイヤ幅方向の長さ)は、タイヤ接地幅(タイヤ接地端E間の距離)となるトレッドゴム33の通常走行時の踏面(路面との接地面)331の幅に対して、例えば、1.1倍程度とされる。なお、シーラント層60は、トレッド30に対応する内面501からタイヤ幅方向外側に張り出して、サイドウォール20のトレッド30側の一部を含むように配置されてもよい。ここで、シーラント層60は、粘着性を有するため、インナーライナー50に貼り付けられている。
【0025】
図2は、タイヤ1の内面を示す展開図であり、インナーライナー50の内面501に形成されているシーラント層60を模式的に示している。図2においては、矢印Xでタイヤ幅方向を示し、矢印Zでタイヤ周方向を示している。また、図3は、シーラント層60のタイヤ1のタイヤ接地端Eよりもタイヤ幅方向内側の領域のA-A面における断面の部分拡大図であり、シーラント層60を構成する第一シーラント材611および第二シーラント材612を模式的に示している。図3においては、矢印Xでタイヤ幅方向を示し、矢印Yでタイヤ径方向を示している。
【0026】
図2および図3に示されるように、シーラント層60は、インナーライナー50の内面501に沿って連続的に配置されている紐状の第一シーラント材611と、第一シーラント材611に隣接して連続的に配置されている紐状の第二シーラント材612と、を有する。ここで、第一シーラント材611および第二シーラント材612の断面形状は、それぞれ略三角形および略逆三角形である。なお、第一シーラント材611および第二シーラント材612の断面形状は、隣接して連続的に配置することが可能であれば、特に限定されず、例えば、それぞれ略台形および略逆台形であってもよい。
【0027】
他の実施形態においては、第二シーラント材612が第一シーラント材611に隣接して連続的に配置されていなくてもよい。この場合、第一シーラント材611および第二シーラント材612の断面形状は、例えば、略円形であってもよい。また、第二シーラント材612を省略してもよいし、シーラント材を3層以上積層してもよい。
【0028】
シーラント層60は、インナーライナー50の内面501に対して、タイヤ周方向に沿って周回されながら貼り付けられた第一シーラント材611および第二シーラント材612により形成されている。第二シーラント材612は、複数の環状の周回部62および複数の移行部63を有する。なお、第一シーラント材611は、第二シーラント材612と同様に、複数の環状の周回部および複数の移行部を有するが、以下、代表して、第二シーラント材612の構造について説明する。
【0029】
図2において、符号61Aは、第二シーラント材612の貼り付け開始端部を示し、符号61Bは、第二シーラント材612の貼り付け終了端部を示している。図2に示されるように、第二シーラント材612は、貼り付け開始端部61Aから貼り付け終了端部61Bまで、図2中、矢印で示されるようにして周回しながら、タイヤ幅方向一方側から他方側(図2中、左側から右側)に連続して貼り付けられる。
【0030】
周回部62は、第二シーラント材612がタイヤ周方向に周回する領域である。複数の周回部62は、タイヤ幅方向に隣り合うように並列配置されている。なお、複数の周回部62は、必要に応じて、所定の間隔を隔てて、配置されていてもよい。
【0031】
移行部63は、第二シーラント材612が、タイヤ周方向に対して、所定の角度で傾斜している領域である。複数の移行部63は、タイヤ幅方向に隣り合うように並列配置されている。なお、複数の移行部63は、必要に応じて、所定の間隔を隔てて、配置されていてもよい。
【0032】
移行部63は、周回部62のタイヤ周方向の一方の端部から、タイヤ幅方向一方側(図2中、右側)に隣り合う周回部62のタイヤ周方向の他方の端部に移行する第二シーラント材612の領域である。具体的には、移行部63は、第二シーラント材612がインナーライナー50の内面501にほぼ1周貼り付けられて1つの周回部62が形成された後に、タイヤ幅方向一方側(図2中、右側)に、第二シーラント材612が移行する領域である。移行部63を経て、周回部62のタイヤ幅方向一方側に隣り合う周回部62が貼り付けられる。次に、移行部63を経て、タイヤ幅方向の一方側に隣り合う周回部62が繰り返し貼り付けられて、シーラント層60が形成される。
【0033】
このように、シーラント材をインナーライナーの内面に貼り付ける際に、タイヤ周方向に周回する周回部を、移行部を経てタイヤ幅方向に順次貼り付けることを、本明細書において、ステップ貼りという場合がある。
【0034】
第一シーラント材611および第二シーラント材612としては、特に限定されないが、例えば、未加硫または半加硫状態のブチルゴムと、ポリイソブチレン、ポリブテン等の可塑剤と、熱可塑性オレフィン/ジオレフィン共重合体等の粘着性付与剤と、カーボンブラック、シリカ等の充填材と、を配合した粘着性組成物を使用することができる。なお、第一シーラント材611および第二シーラント材612は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0035】
シーラント層60は、タイヤ接地端Eよりもタイヤ幅方向内側の領域における貯蔵弾性率G’が、タイヤ接地端Eよりもタイヤ幅方向外側の領域における貯蔵弾性率G’よりも小さい。このため、タイヤ1が転動時に発熱しても、タイヤ接地端Eよりもタイヤ幅方向の外側の曲率が大きい領域の第一シーラント材611および第二シーラント材612がタイヤ幅方向内側に移動しにくくなるため、タイヤ1のシール性の低下が抑制される。
【0036】
本明細書および特許請求の範囲において、タイヤ接地端Eは、下記の条件において、静的状態で測定した際のタイヤ接地幅におけるタイヤ幅方向の端部である。
リム幅:法規(JATMA、ETRTO、TRA)に記載されている測定リム幅
内圧:常用負荷時空気圧
荷重:最大負荷能力の88%
【0037】
本明細書および特許請求の範囲において、タイヤ接地端Eよりもタイヤ幅方向内側の領域における貯蔵弾性率G’は、タイヤ接地端Eよりもタイヤ幅方向内側に配置されている第一シーラント材611および第二シーラント材612の貯蔵弾性率である。また、タイヤ接地端Eよりもタイヤ幅方向外側の領域における貯蔵弾性率G’は、タイヤ接地端Eよりもタイヤ幅方向外側に配置されている第一シーラント材611および第二シーラント材612の貯蔵弾性率である。なお、タイヤ接地端Eに存在し、且つ、タイヤ幅方向内側およびタイヤ幅方向外側の両側に存在する第一シーラント材611および/または第二シーラント材612の領域(遷移領域)は、貯蔵弾性率G’およびG’を測定する対象としない(例えば、図3参照)。
【0038】
なお、シーラント層60の貯蔵弾性率は、Rubber Process Analyzer D-RPA3000(Montech製)を用いて、温度40℃、動的ひずみ25%、周波数1Hzの条件で測定される。
【0039】
’に対するG’の比(G’/G’)は、1.1以上10.0以下であることが好ましく、4.0以上7.0以下であることがさらに好ましい。G’/G’が1.1以上であると、タイヤ1が転動時に発熱しても、タイヤ接地端Eよりもタイヤ幅方向の外側の曲率が高い領域の第一シーラント材611および第二シーラント材612がタイヤ幅方向内側に移動しにくくなる。一方、G’/G’が10以下であると、タイヤ接地端Eよりもタイヤ幅方向外側の領域に異物が刺さっても、第一シーラント材611および第二シーラント材612がパンク孔に流入しやすくなる。
【0040】
’は、1kPa以上50kPa以下であることが好ましく、5kPa以上20kPa以下であることがさらに好ましい。G’が1kPa以上であると、タイヤ接地端Eよりもタイヤ幅方向内側の領域に異物が刺さっても、第一シーラント材611および第二シーラント材612がパンク孔からタイヤ1の外部に流出しにくくなる。一方、G’が50kPa以下であると、タイヤ接地端Eよりもタイヤ幅方向内側の領域に異物が刺さっても、第一シーラント材611および第二シーラント材612がパンク孔に流入しやすくなる。
【0041】
’は、10kPa以上100kPa以下であることが好ましく、20kPa以上60kPa以下であることがさらに好ましい。G’が10kPa以上であると、タイヤ1が転動時に発熱しても、タイヤ接地端Eよりもタイヤ幅方向の外側の曲率が高い領域の第一シーラント材611および第二シーラント材612がタイヤ幅方向内側に移動しにくくなる。一方、G’が100kPa以下であると、タイヤ接地端Eよりもタイヤ幅方向外側の領域に異物が刺さっても、第一シーラント材611および第二シーラント材612がパンク孔に流入しやすくなる。
【0042】
次に、第一シーラント材611および第二シーラント材612のステップ貼りを実施する方法について説明する。
【0043】
図4に示されるように、シーラント層60が形成される前のタイヤ1を軸周りに回転させながら、ノズル100からインナーライナー50の内面501に第一シーラント材611を吐出して貼り付けた後、第一シーラント材611と同様に第二シーラント材612を吐出して貼り付けることにより、シーラント層60が形成される。このとき、第一シーラント材611および第二シーラント材612を吐出する際に用いるノズル100の断面形状は、それぞれ三角形および逆三角形である。ここで、第一シーラント材611および第二シーラント材612は、粘着性組成物であるため、第一シーラント材611および第二シーラント材612の断面形状は、変形する場合があり、それぞれ略三角形および略逆三角形となる。
【0044】
ノズル100は、押出機(不図示)の先端に取り付けられており、シーラント層60が形成される前のタイヤ1の内側に挿入される。その結果、押出機から押し出された第一シーラント材611および第二シーラント材612が、ノズル100の先端からインナーライナー50の内面501に吐出される。
【0045】
図4においては、タイヤ1の幅方向断面が示され、タイヤ幅方向X、タイヤ径方向Y、タイヤ周方向Zがそれぞれ示されている。図4において符号Gは、タイヤ1の回転軸線である。
【0046】
ノズル100から連続的に第二シーラント材612を吐出しながら、シーラント層60が形成される前のタイヤ1を軸周りにほぼ1周回転させることにより、周回部62が形成される。ここで、周回部62を形成する際には、ノズル100をタイヤ幅方向に移動させない。次に、第二シーラント材612の幅分、ノズル100をタイヤ幅方向一方側に移動させると、周回部62のタイヤ周方向の一方の端部から、タイヤ幅方向一方側に隣り合う周回部62のタイヤ周方向の他方の端部に移行する移行部63が形成される。次に、ノズル100をタイヤ幅方向に移動させずに、周回部62のタイヤ幅方向一方側に隣り合う周回部62を形成する。以上の動作を繰り返すことにより、シーラント層60の全域に、第二シーラント材612が貼り付けられる。
【0047】
以上のようにして、第一シーラント材611および第二シーラント材612のステップ貼りを実施することにより、シーラント層60が形成される。なお、第一シーラント材611および第二シーラント材612のステップ貼りを実施する代わりに、第一シーラント材611および第二シーラント材612を螺旋状に貼り付けてもよい。この場合、ノズル100をタイヤ幅方向一方側に移動させながら、第一シーラント材611および第二シーラント材612をノズル100から連続的に吐出する。
【0048】
シーラント層60が形成されているタイヤ1のトレッド30に、例えば、釘等の異物が刺さって、シーラント層60に達する孔が生じても、シーラント層60によって孔が塞がれるため、パンクが未然に防止される。
【0049】
以下、タイヤ1の構造の詳細について説明する。図1に示されるように、タイヤ1は、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード10と、一対のビード10の各々からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20間に配置されたトレッド30と、一対のビード10の間に配置されたカーカスプライ40と、カーカスプライ40のタイヤ内腔側に配置されたインナーライナー50と、を備える。
【0050】
ビード10は、ビードコア11と、ビードコア11のタイヤ径方向外側に延びるビードフィラー12と、チェーハー13と、リムストリップゴム14と、を備える。
【0051】
ビードコア11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤを複数回巻いて形成した環状の部材であり、空気が充填されたタイヤ1を、リムに固定する役目を果たす部材である。
【0052】
ビードフィラー12は、タイヤ径方向外側に延びるにしたがって先細り形状となっているゴム部材である。ビードフィラー12は、ビード10の周辺部分の剛性を高め、高い操縦性および安定性を確保するために設けられている部材である。ビードフィラー12は、例えば、周囲のゴム部材よりも硬度の高いゴムにより構成される。
【0053】
チェーハー13は、ビードコア11周りに設けられたカーカスプライ40のタイヤ径方向内側に設けられている。
【0054】
リムストリップゴム14は、チェーハー13およびカーカスプライ40のタイヤ幅方向外側に配置されている。リムストリップゴム14は、タイヤ1が装着されるリムと接触する部材である。
【0055】
サイドウォール20は、カーカスプライ40のタイヤ幅方向外側に配置されたサイドウォールゴム21を含む。サイドウォールゴム21は、タイヤ1の外壁面を構成する。サイドウォールゴム21は、タイヤ1がクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0056】
トレッド30は、無端状のベルト31およびキャッププライ32と、トレッドゴム33と、を備える。
【0057】
ベルト31は、カーカスプライ40のタイヤ径方向外側に配置されている。キャッププライ32は、ベルト31のタイヤ径方向外側に配置されている。
【0058】
ベルト31は、トレッド30を補強する部材である。ベルト31は、内側のベルト311と外側のベルト312とを備えた2層構造である。内側のベルト311および外側のベルト312は、いずれも複数のスチールコード等のコードがゴムで覆われた構造を有する。なお、ベルト31は、2層構造に限らず、1層、あるいは3層以上の構造を有していてもよい。
【0059】
キャッププライ32は、ベルト31とともにトレッド30を補強する部材である。キャッププライ32は、例えば、ポリアミド繊維等の絶縁性を有する複数の有機繊維コードがゴムで覆われた構造を有する。キャッププライ32を設けることにより、耐久性の向上、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。
【0060】
トレッドゴム33は、キャッププライ32のタイヤ径方向外側に配置されている。トレッドゴム33は、踏面331を構成する部材である。トレッドゴム33の踏面331には、例えば、複数の溝で構成されるトレッドパターン34が設けられている。トレッドパターン34は、タイヤ幅方向に並ぶ複数の主溝341を有する。複数の主溝341のそれぞれは、タイヤ周方向に沿って延びている。
【0061】
カーカスプライ40は、タイヤ1の骨格となるプライを構成している。カーカスプライ40は、一対のビード10間を、一対のサイドウォール20およびトレッド30を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。
【0062】
カーカスプライ40は、タイヤ1の骨格となる複数のカーカスコードを含む。複数のカーカスコードは、例えば、タイヤ幅方向に延びており、タイヤ周方向に並んで配列されている。カーカスコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されている。複数のカーカスコードがゴムにより被覆されて、カーカスプライ40が構成されている。
【0063】
カーカスプライ40は、一方のビードコア11から他方のビードコア11に延び、トレッド30とビード10との間に延在するプライ本体部401と、プライ本体部401からビードコア11で折り返される一対の屈曲部402と、屈曲部402のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対の折り返し部403と、を有する。プライ本体部401、屈曲部402および折り返し部403は、連続している。
【0064】
プライ本体部401は、タイヤ径方向内側においてビードコア11およびビードフィラー12のタイヤ幅方向内側に配置されている。折り返し部403は、タイヤ径方向内側においてビードコア11およびビードフィラー12のタイヤ幅方向外側に配置されている。ビードコア11およびビードフィラー12以外の部分において、折り返し部403は、プライ本体部401に重ね合わされている。屈曲部402は、カーカスプライ40において、タイヤ径方向の最も内側の部分を構成している。
【0065】
カーカスプライ40は、1層構造であるが、2層、あるいは3層以上の構造を有していてもよい。
【0066】
ビード10のチェーハー13は、屈曲部402を含むカーカスプライ40のタイヤ径方向内側の端部を取り囲むように設けられている。また、リムストリップゴム14は、チェーハー13およびカーカスプライ40の折り返し部403のタイヤ幅方向外側に配置されている。リムストリップゴム14のタイヤ径方向外側の端部は、サイドウォールゴム21で覆われている。
【0067】
インナーライナー50は、一対のビード間のタイヤ内面を覆っている。インナーライナー50は、カーカスプライ40のプライ本体部401の内面および一対のビード10のチェーハー13の内面を覆っている。
【0068】
インナーライナー50は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨の範囲内で、上記の実施形態を適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 タイヤ
50 インナーライナー
60 シーラント層
611 第一シーラント材
612 第二シーラント材
62 周回部
63 移行部
E タイヤ接地端
図1
図2
図3
図4