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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087242
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】洗車装置
(51)【国際特許分類】
   B60S 3/06 20060101AFI20230616BHJP
【FI】
B60S3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201519
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000103138
【氏名又は名称】エムケー精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三ツ井 和也
(72)【発明者】
【氏名】横沢 直哉
【テーマコード(参考)】
3D026
【Fターム(参考)】
3D026AA03
3D026AA13
3D026AA17
3D026AA25
3D026AA34
3D026AA40
3D026AA44
3D026AA45
3D026AA53
3D026AA58
3D026AA71
(57)【要約】
【課題】
車両洗浄工程を途中で停止しても、洗浄剤や洗浄水などの洗浄体を車両から除去できる洗車装置を提供する。
【解決手段】
車両に対して前後移動可能な本体部と、車両に対して洗浄処理が可能な処理装置と、本体部の移動および処理装置の洗浄処理を制御可能な制御部と、を備えた洗車装置であって、前記制御部は、所定の条件に基づき本体部の移動を非常停止させ、非常停止後に、処理装置を駆動しながら本体部を所定位置に移動させる。


【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に対して前後移動可能な本体部と、
前記車両に対して洗浄処理が可能な処理装置と、
前記本体部の移動および前記処理装置の洗浄処理を制御可能な制御部と、
を備えた洗車装置であって、
前記制御部は、所定の条件に基づき前記本体部の移動を非常停止させ、
非常停止後に、前記処理装置を駆動しながら前記本体部を所定位置に移動させる
ことを特徴とする洗車装置。
【請求項2】
前記処理装置は、洗浄水および洗浄剤を散布する洗浄体散布ノズルを有し、
前記制御部は、前記処理装置により前記車両に洗浄剤を散布する処理を行った後、所定の条件に基づき前記本体部の移動を非常停止させた場合、非常停止後に、前記処理装置により前記車両に洗浄水を散布しながら前記本体部を所定位置に移動させる
ことを特徴とする請求項1記載の洗車装置。
【請求項3】
前記処理装置は、洗浄水を散布する洗浄水散布ノズルを有し、
前記処理装置は、さらに車両に送風する乾燥ノズルを有し、
前記制御部は、前記処理装置により洗浄水を前記車両に散布する処理を行った後、所定の条件に基づき前記本体部の移動を非常停止させた場合、非常停止後に、前記処理装置により前記車両に送風しながら前記本体部を所定位置に移動させる
ことを特徴とする請求項1または2記載の洗車装置。
【請求項4】
前記処理装置は、前記車両の下部を前記車両の車幅方向から洗浄する車両下部洗浄装置を有し、
前記車両下部洗浄装置は、前記車両の車長方向に沿って床面に設けられ、
前記制御部は、所定の条件に基づき前記本体部の移動を非常停止させた後、前記車両下部洗浄装置を制御し前記車両に洗浄水を散布しながら前記本体部を所定位置に移動させる
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の洗車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両洗浄工程を非常停止可能な洗車装置が広く知られている。例えば特許文献1には、非常停止手段とセンサ部を備え、センサ部の入出力状態に応じて洗車操作を非常停止可能な洗車機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6308174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両洗浄工程を途中で停止させると、停止させた工程によっては車両に洗浄剤が残留してしまう。そのため、洗浄途中であった車両の所有者は、場合によっては洗車装置の復旧をひたすらに待つか、人の手で洗浄剤を洗い落とす必要があり、不便であった。
【0005】
また、洗車装置は、「車両が洗浄されている」ことが誰にでも視覚的にわかるよう、高い発泡性を有する洗浄剤を用いて、車両の表面を泡で覆い尽くして洗浄することがある。車両が泡で覆い尽くされている時に車両洗浄工程が途中停止してしまうとさらに面倒であり、ボリューミーな泡を人の手で洗い落としきることが大変なばかりか、泡が風で舞い、周辺の車両や設備に付着してしまうことすらあり、解決策が求められていた。
【0006】
本発明の一目的は、車両洗浄工程を途中で停止しても、洗浄剤や洗浄水などの洗浄体を車両から除去できる洗車装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一解決手段に係る洗車装置は、車両に対して前後移動可能な本体部と、前記車両に対して洗浄処理が可能な処理装置と、前記本体部の移動および前記処理装置の洗浄処理を制御可能な制御部と、を備えた洗車装置であって、前記制御部は、所定の条件に基づき前記本体部の移動を非常停止させ、非常停止後に、前記処理装置を駆動しながら前記本体部を所定位置に移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
一解決手段によれば、車両洗浄工程を途中で停止しても、洗浄剤などの洗浄体を車両から除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態(実施形態1)に係る洗車装置の模式的な正面図である。
図2図1に示す洗車装置の側面図である。
図3図1に示す洗車装置の制御系を示すブロック図である。
図4図1に示す洗車装置が有する安全装置の概要図である。
図5図1に示す洗車装置が実行する洗浄工程の一例を示すフロー図である。
図6図1に示す洗車装置が洗浄工程を途中停止する場合の処理の一例を示すフロー図である。
図7】本発明の他の実施形態(実施形態2)に係る洗車装置の模式的な上面図である。
図8】本発明の他の実施形態(実施形態3)に係る洗車装置の模式的な上面図である。
図9図8に示す洗車装置の制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらは互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0011】
(実施形態1)
図1は本実施形態に係る洗車装置10の模式的な正面図、図2は同洗車装置10の側面図である。
【0012】
洗車装置10は、地面G(敷設面)に起立して設けられた本体部11を備えている。本体部11は、処理対象となる車両Cを跨ぐように門型状のフレーム(筐体)で構成されている。このため、本体部11は、地面Gから起立する一対の脚フレーム11aと、この一対の脚フレーム11aにかかる梁フレーム11bとを有する。
【0013】
また、洗車装置10は、レール12と車輪13、車輪14とを備えている。一対のレール12は、互いが平行となるように延在して地面Gに設けられている。車輪13、車輪14は、一対の脚フレーム11aの底部にそれぞれ設けられている。洗車装置10では、車輪13を駆動輪、車輪14を従動輪としている。洗車装置10では、この一対のレール12間に車両Cが停車した状態で、一対のレール12上を車輪13、車輪14(計4輪)を介して本体部11が前後に移動(往復走行)する。なお、図2の右側(例えば車両Cや受付装置51が図示されている側)が本体部11の前方向、左側が後方向となる。
【0014】
また、洗車装置10は、走行用モータ15と走行用エンコーダ16とを備えている。走行用モータ15は、地面Gに対して車輪13よりも高い位置から車輪13と接続されるように本体部11の一対の脚フレーム11aのそれぞれに設けられている。この走行用モータ15は正逆転可能に構成されており、車輪13(駆動輪)を介して本体部11を前後に移動させる。走行用エンコーダ16は、本体部11の脚フレーム11aの一方に設けられ、その一方側の走行用モータ15の出力軸に連結されている。走行用エンコーダ16は、レール12上における本体部11の走行位置を検出する。すなわち、走行用エンコーダ16は、走行用モータ15の回転方向すなわち車輪13の回転方向を検出しながら単位角度回転ごとのパルス信号を出力する。
【0015】
また、洗車装置10は、前後スイッチ17およびドック18a、18bを備えている。前後スイッチ17は、一方の脚フレーム11の底部に設けられている。また、ドック18aは、一方のレール12の一端側(本体部11の前後方向前側)に設けられ、ドック18bは、同じレール12の他端側(前後方向後側)に設けられている。前後スイッチ17は、本体部11の移動によりドック18a、18bでスイッチングし、ドック18aとドック18bとの間で本体部11の移動限界を検出する。このため、洗車装置10においては、本体部11は停車した車両Cを跨いで車長方向に通過するように移動限界の範囲内で移動することができる。なお、洗車装置10が入車待ちの状態(待機状態)は、前後スイッチ17がドック18bとスイッチングして本体部11が停止した状態である。本説明においては、このようにして停止した状態での本体部11の位置を、本体部11の待機位置とする。
【0016】
また、洗車装置10は、洗浄処理装置として、本体部11に設けられたトップブラシ30および一対のサイドブラシ31を備えている。トップブラシ30(回転ブラシ)は、待機時に門型状の本体部11の梁フレーム11bに収容されている。このトップブラシ30は、可動部として本体部11の移動に伴って回転しながら上下に昇降し、主に車両Cの上面をブラッシングすることができる。また、一対のサイドブラシ31(回転ブラシ)は、それぞれ待機時に門型状の本体部11の一対のフレーム11aに収容されている。一対のサイドブラシ31は、可動部として本体部11の移動に伴って回転しながら開閉動作(互いが近づいたり離れたりする動作)し、主に車両Cの前面、側面および後面をブラッシングすることができる。
【0017】
また、洗車装置10は、洗浄処理装置として、本体部11に設けられるトップスプレー32および一対のサイドスプレー33を備えている。トップスプレー32は、門型状の本体部11の梁フレーム11bに収容されている。トップスプレー32は、本体部11の移動に伴ってパイプに設けられた複数の噴射ノズル(不図示)から水や洗浄剤などの洗浄液を噴射し、主に車両Cの上面を洗浄することができる。また、一対のサイドスプレー33は、それぞれ門型状の本体部11の一対の脚フレーム11aに収容されている。一対のサイドスプレー33は、本体部11の移動に伴ってパイプに設けられた複数の噴射ノズル(不図示)から水や洗浄剤などの洗浄液を噴射し、主に車両Cの側面を洗浄することができる。なお、洗車装置10では、本体部11の前進に伴って車両Cをブラッシング洗浄するため、トップスプレー32およびサイドスプレー33はトップブラシ30およびサイドブラシ31よりも本体部11の前側に設けられている。
【0018】
また、洗車装置10は、洗浄処理装置として、本体部11に設けられるトップノズル34(ブロワノズル)および一対のサイドノズル35(ブロワノズル)を備えている。トップノズル34は、待機時に門型状の本体部11の梁フレーム11bに収容されている。トップノズル34は、可動部として本体部11の移動に伴って送風しながら車両Cと接触せずに上下に昇降し、主に車両Cの上面を乾燥することができる。また、一対のサイドノズル35は、それぞれ待機時に門型状の本体部11の一対の脚フレーム11aに収容されている。一対のサイドノズル35は、可動部として本体部11の移動に伴って送風しながら車両Cと接触せずに開閉動作し、主に車両Cの側面を乾燥することができる。
【0019】
また、洗車装置10は、本体部11に、車両Cを検出する車両検出部36を備えている。車両検出部36は、本体部11の前側で本体部11の起立方向(車両Cの車高方向)に延在して設けられている。車両検出部36は、車両Cの側方からの形状を検出することができる。より具体的には、本体部11の移動に伴い、車両Cの側方からの形状(シルエット)を読み取ることができる。なお、洗車装置10は本体部11の前進に伴って車両Cの形状に沿ってブラッシング洗浄するため、車両検出部36はトップブラシ30およびサイドブラシ31よりも本体部11の前側に設けられている。
【0020】
車両検出部36は、車両Cを検出する複数(n個)の検出素子36-1~36-nを有する。例えば、各検出素子36-1~36-nは対を成す発光素子36aおよび受光素子36bを有する透過型の光電センサから構成される。光電センサとしての発光素子36aおよび受光素子36bは、それぞれ門型状の本体部11の開口左右側部側(一対の脚フレーム11a)に収納され、同じ高さに対向配置されることで発光素子36aと受光素子36bの間に水平な光軸を形成する。この水平光軸の遮光状態および通光状態を知ることにより、発光素子36aと受光素子36bの間の車両Cの有無を検出することができる。さらに、複数の検出素子36-1~36-nは、地面G側から順に最下位の検出素子36-1、次の検出素子36-2というように最上位の検出素子36-nまで本体部11の起立方向(鉛直方向)に沿って所定間隔(例えば等ピッチ)に並んで配置されている。これにより、洗車装置10は、複数の検出素子36-1~36-nのうち、車両Cを検出したものと、それが設けられている設置高さから、車両Cの上面の高さを求めることができる。
【0021】
洗車装置10は、車両検出部36の検出結果をもとにトップブラシ30やトップノズル34などの洗浄処理を行う処理装置を駆動する。車両検出部36で取得した車両Cの形状に沿って処理装置を駆動することにより、例えばブラッシング時にトップブラシ30が車両Cに強く押し当てられることを防止したり、乾燥時にトップノズル34が車両Cと接触することを防止したりすることができる。
【0022】
図3は本実施形態の制御系を示すブロック図である。洗車装置10は、図3に示すように制御部50(例えば半導体素子や、これを搭載した電子基板)を備えている。制御部50は、本体部11に設けられ、走行用エンコーダ16、前後スイッチ17、車両検出部36、受付装置51、駆動部52と電気的に接続されている。制御部50は、受付装置51で受け付けた洗浄工程に従い、予めプログラムされたシーケンス(手段)を実行する。
【0023】
なお、洗浄工程とは洗浄処理コースのことであり、本体部11に設けられた各種洗浄処理装置をいつどのような順番で駆動し車両Cの洗浄を行うかを規定するものである。この洗浄工程は予め制御部50にプログラムされたものであってもよいし、洗車装置10のユーザ(例えば車両Cの所有者など、車両Cの洗浄を希望するもの)が受付装置51などを介して洗浄するごとに自身で定義するものであってもよい。
【0024】
制御部50は、走行検出手段53と、車両検出手段54とデータ作成手段55と、データ記憶手段56と、非常停止手段57と、処理手段58を有する。
【0025】
走行検出手段53は、走行用エンコーダ16のパルス信号および前後スイッチ17の信号から本体部11の走行位置(移動位置)を検出することができる。車両検出手段54は、走行用エンコーダ16のパルス信号をトリガに単位距離移動する毎に車両検出部36を駆動して車両Cの上面を検出することができる。データ作成手段55は、走行検出手段53と車両検出手段54の検出結果から車形データを作成することができる。データ記憶手段56は、車形データを記憶することができる。非常停止手段57は、洗浄工程の実行中に、所定の条件に基づき、各洗浄処理装置や走行用モータ15などの駆動を停止(非常停止)するよう処理手段58に信号を送ることができる。処理手段58は、車形データなどをもとに駆動部52を介して洗車処理装置や走行用モータ15などの駆動を制御することができる。処理手段58は、非常停止手段57からの非常停止信号をもとに駆動部52を介して洗車処理装置や走行用モータなどの駆動を非常停止することもできる。
【0026】
非常停止手段57の制御に係る所定の条件は、洗車装置の使用形態に合わせて適宜設定可能なものであるが、例えば「本体部11に備えられた安全装置が作動すること」がその条件であってもよい。安全装置として、洗車装置10は、図4に示すとおり門型状に形成された本体部11の開口部前部に棒状体70を備えている。棒状体70はブラケット71によって揺動可能に設けられている。棒状体70は変位検知部72と接続されており、棒状体70が車両Cのドアミラーなどと接触して変位したことを検知可能としている。変位検知部72は棒状体70の変位を検知したら、制御部50に信号を送ることができる。洗浄工程の実行中、制御部50は変位検知部72から信号を受信したら、非常停止手段57により洗浄工程を停止する。
【0027】
また、非常停止手段57の制御に係る所定の条件は、例えば「洗車装置10を構成するいずれかの要素に不具合があることを検出すること」であってもよい。より具体的には、例えばトップブラシ30が収容位置(待機位置)にあるかどうかを検出可能なセンサを本体部11に設け、トップブラシ30を使用する洗浄処理の開始時に該センサがトップブラシ30を検出しないとき、非常停止手段57により洗浄工程を停止してもよい。
【0028】
また、非常停止手段57の制御に係る所定の条件は、例えば「洗浄処理工程中に車両Cが移動したことを車両検出部36などが検出すること」であってもよい。より具体的には、例えば洗浄処理工程中は常に車両検出部36で車両Cを走査可能にしておき、洗浄工程のとある段階で取得した車両Cの位置や形状と、それより前の段階で取得した車両Cの位置や形状が一致しないとき、非常停止手段57により洗浄工程を停止してもよい。
【0029】
このように洗車装置10は種々の手段(機能)を備えており、制御部50によって各手段が実行される。なお、各手段は、制御部50が有するものとして説明したが、制御部50とは別個の部材(装置)として設けられてもよい。
【0030】
次に、洗車装置10の動作(車両Cの洗浄処理工程)について説明する。最初に、洗車装置10が洗浄処理工程を途中停止(非常停止)せずに完了する場合の動作について説明する。ユーザは受付装置51を介して洗車装置10が実行する洗浄工程(洗浄処理コース)を決定する。すると、洗車装置10は、所定の停車位置に車両Cを停止させるよう表示や音声などによってユーザに案内する。車両Cが所定の停車位置に到達したら、ユーザが決定した洗浄工程が実行される。本例では、ユーザは図5に示す洗浄工程を実行するよう決定したものとして以降の説明を行う。
【0031】
車両Cが所定の停車位置で停止したら、第一処理(一往目)が開始される。第一処理では、本体部11はトップスプレー32およびサイドスプレー33から洗浄水と洗浄剤の混合液を散布しつつ前方に移動する。本体部11が前方に移動する際、車両検出部36で車両Cの検出も行い、さらに求められた車両Cの形状に沿ってトップブラシ30およびサイドブラシ31でブラッシングを行う。
【0032】
本体部11の前方移動に伴い、前後スイッチ17が本体部11前方の移動限界(ドック18a)を検出したら、第二処理(一複目)が開始される。第二処理では、本体部11はトップスプレー32およびサイドスプレー33から洗浄水を散布しつつ後方に移動する。第二処理では、第一処理で車両Cに散布した洗浄剤を流し落とすことができる。さらに、本体部11の後方移動に伴い、車両検出部36で求められた車両Cの形状に沿ってトップブラシ30およびサイドブラシ31でブラッシングを行う。
【0033】
本体部11の後方移動に伴い、前後スイッチ17が本体部11後方の移動限界(ドック18b)を検出したら、第三処理(二往目)が開始される。第三処理では、本体部11はトップスプレー32およびサイドスプレー33から撥水剤などのコーティング剤と洗浄水の混合液を散布しつつ前方に移動する。さらに、本体部11の前方移動に伴い、車両検出部36で求められた車両Cの形状に沿ってトップブラシ30およびサイドブラシ31でブラッシングを行う。
【0034】
本体部11の前方移動に伴い、前後スイッチ17が本体部11前方移動限界(ドック18a)を検出したら、第四処理(二複目)が開始される。第四処理では、本体部11はトップスプレー32およびサイドスプレー33から洗浄水を散布しつつ後方に移動する。第四処理では、第三処理で車両Cに散布したコーティング剤の余剰分を流し落とすことができる。
【0035】
本体部11の後方移動に伴い、前後スイッチ17が本体部11後方移動限界(ドック18b)を検出したら、第五処理(三往目)が開始される。第五処理では、本体部11はトップノズル34およびサイドノズル35から車両Cに送風しつつ前方に移動する。第五処理では、これまでの処理によって車両Cに付着した水滴を吹き飛ばして除去することができる。
【0036】
第五処理終了後、洗車装置10は所定の停車位置から車両Cを退出させるようユーザに案内し、洗浄処理工程を終了する。以上が問題なく洗浄工程を完遂する場合の洗車装置10の動作の一例である。なお、本体部11は本体部11から見て前方の移動限界位置(ドック18a側)で停止し本洗浄工程を終了する。待機位置への移動は、例えば洗浄工程終了後一定時間経過した後に行う。
【0037】
次に、非常停止手段57により洗浄処理工程を途中停止する場合の洗車装置10の動作の一例を説明する。本例における洗車装置10の動作を図6のフロー図を用いて説明する。なお、本例においてユーザが決定した洗浄工程の処理内容は図5に示すものと同一とする。
【0038】
車両Cが所定の停車位置で停止したら、第一処理(一往目)が開始される。第一処理では、本体部11はトップスプレー32およびサイドスプレー33から洗浄水と洗浄剤の混合液を散布しつつ前方に移動する。本体部11が前方に移動する際、車両検出部36で車両Cの検出も行い、さらに求められた車両Cの形状に沿ってトップブラシ30およびサイドブラシ31でブラッシングを行う。
【0039】
本体部11の前方移動に伴い、前後スイッチ17が本体部11前方の移動限界を検出したら、第二処理(一複目)が開始される。第二処理では、本体部11はトップスプレー32およびサイドスプレー33から洗浄水を散布しつつ後方に移動する。第二処理の途中で(例えば車両Cに付着する洗浄剤を部分的に洗い流した段階で)車両Cがわずかに移動したことを車両検出部36により検出したとする。この場合、制御部50は、非常停止に係る条件を満たしたとして、非常停止手段57により本体部11の移動および本体部11が備える各洗浄処理装置の駆動を一旦停止する。
【0040】
停止後に、制御部50は、本体部11が非常停止されたときの洗浄処理の直前の洗浄処理の内容を参照する。例えば本体部11が図5に示す洗浄処理工程の第二処理を実行しているときに非常停止した場合、直前の洗浄処理は第一処理である。このようにして参照された直前の処理が処理内容に洗浄剤の散布を含む場合、制御部50はトップスプレー32およびサイドスプレー33から洗浄水を散布させながら本体部11を待機位置へと移動させる。
【0041】
このような処理を行うことにより、例えば車両Cに洗浄剤が散布されたまま洗車装置10が洗浄サービスを再開できなくなるといった事態を防ぐことができる。もし洗車装置10の復旧に時間がかかる場合にも、車両Cが泡だらけのまま放置されるようなことがないため、例えばユーザは受付装置51によって返金処理を受け、すぐに他の目的地へ車両Cで向かうことができる。
【0042】
また、このような処理を行うことにより、非常停止後にも洗浄工程が続いているようユーザに錯覚させることができ、ユーザが非常停止に驚いて車両Cから降りてしまう事態を防ぐことができる。
【0043】
直前の洗浄処理を参照し、その処理内容が洗浄水散布処理であった場合、本体部11が待機位置に戻る際、洗浄水を散布するかわりに、トップノズル34やサイドノズル35から送風してもよい。このようにして、直前の処理で車両Cの車体上の洗浄剤を濯ぎ終えている場合には、改めて洗浄水を散布する必要はない。
【0044】
洗浄剤の散布処理中に本体部11が非常停止した場合などは、本体部11が待機位置に戻る際、例外的に直前の処理が何であったかに関わらず洗浄水を散布するよう制御してもよい。また、洗浄剤散布処理の開始直後に本体部11が非常停止した場合など、散布処理中に本体部11が非常停止した場合であっても洗浄水の散布が必要ない場合も想定される。本体部11が非常停止した際の位置などから洗浄水散布の必要性の有無を判定し、洗浄動作を制御してもよい。このようにして、非常停止後の洗浄動作は必ずしも直前の洗浄処理によって決定されなくてもよく、例えば非常停止した際の洗浄処理の内容や処理開始後の経過時間などによって決定してもよい。
【0045】
非常停止時の本体部11の位置によっては、車両Cに付着する洗浄剤を流しきれずに本体部11が待機位置に戻ってしまうおそれがある。そのような場合に備え、非常停止後に本体部11が車両Cを跨いで往復(例えば一往復)してから待機位置に戻るよう制御してもよい。車両Cの乾燥においても同様で、非常停止時、車両Cに付着する洗浄水を十分に乾かしきれずに本体部11が待機位置に戻ってしまいうる場合には、本体部11が車両Cを跨いで往復してから待機位置に戻るよう制御してもよい。
【0046】
こうした非常停止後の本体部11の移動によって車両Cと本体部11が接触しないよう、本体部11を非常停止させる条件のうち、特定の条件を満たした場合にのみ車両Cを跨いで一往復してから待機位置に戻る処理を実行するよう制御してもよい。
【0047】
なお、非常停止後に本体部11を移動させる位置は必ずしも待機位置でなくてもよい。例えば、非常停止後にセンサなどによって本体部11周辺の障害物の有無を検出し、本体部11を待機位置に移動することが不可能であれば、本体部11を待機位置の他端側(ドック18a側)などに移動するよう制御してもよい。
【0048】
(実施形態2)
前記実施形態1では、非常停止後の洗浄水散布に本体部11に備えた洗浄処理装置(トップスプレー32およびサイドスプレー33)を用いたが、非常停止後の洗浄処理には、本体部11と別個に設けた洗浄処理装置を用いてもよい。本実施形態では、洗浄処理装置として主に車両Cの下部を洗浄する下部洗浄装置80を備えた洗車装置10Aについて図面を参照して説明する。図7は本実施形態に係る洗車装置10Aの上面視からの概略図である。
【0049】
洗車装置10Aは下部洗浄装置80を備えている。下部洗浄装置80は、複数の噴射ノズル81を有する。噴射ノズル81はレール12沿いに配置されており、例えば洗浄処理工程開始前に車両Cが所定の停車位置に向かってレール12間を進行する際、車両Cの主に車体下部を洗浄することができる。各噴射ノズル81は地面Gに埋設された噴水管の管路の途中に設けられている。噴水管は高圧ポンプを備えた貯水タンク82と接続されており、それにより噴射ノズル81からの洗浄水の噴射を可能としている。
【0050】
貯水タンク82の高圧ポンプは制御部50Aと接続されている。下部洗浄装置80が有する各噴射ノズルの噴射の有無やタイミングは制御部50Aによって制御される。
【0051】
次に、実施形態2に係る洗車装置10Aの主に非常停止時における動作を説明する。
【0052】
ユーザは受付装置51を介して洗車装置10Aが実行する洗浄工程(洗浄処理コース)を決定する。すると、洗車装置10Aは、所定の停車位置に車両Cを停車させるよう表示機や音声などによってユーザに案内する。さらに、洗浄工程の決定に伴い、下部洗浄装置80による洗浄水の噴射を開始する。ユーザは案内に従い、所定の停車位置に向かってゆっくりと車両Cを前進させる。この際、車両Cの下部に付着した泥などの汚れを下部洗浄装置80は洗い落とすことができる。
【0053】
車両Cが所定の停車位置に到達したら、ユーザが決定した洗浄工程が実行される。本例では、実施形態1における説明と同様、ユーザは図5に示す洗浄工程を実行するよう決定したものとして以降の説明を行う。
【0054】
車両Cが所定の停車位置で停止したら、第一処理(一往目)が開始される。第一処理では、本体部11はトップスプレー32およびサイドスプレー33から洗浄水と洗浄剤の混合液を散布しつつ前方に移動する。本体部11が前方に移動する際、車両検出部36で車両Cの検出も行い、さらに求められた車両Cの形状に沿ってトップブラシ30およびサイドブラシ31でブラッシングを行う。第一処理で下部洗浄装置80を駆動し車両Cの下部を洗浄してもよい。
【0055】
本体部11の前方移動に伴い、前後スイッチ17が本体部11前方の移動限界(ドック18a)を検出したら、第二処理(一複目)が開始される。第二処理では、本体部11はトップスプレー32およびサイドスプレー33から洗浄水を散布しつつ後方に移動する。第二処理の途中で(例えば車両Cに付着する洗浄剤を部分的に洗い流した段階で)車両Cがわずかに移動したことを車両検出部36により検出したとする。すると、制御部50は非常停止手段57により本体部11の移動および本体部11が備える各洗浄処理装置の駆動を一旦停止する。
【0056】
停止後に、制御部50は、本体部11が非常停止されたときの洗浄処理の直前の洗浄処理が何であったかに関わらず、下部洗浄装置80から洗浄水を噴射する。非常停止後に下部洗浄装置80から洗浄水が噴射されることで、洗浄工程が続いているようユーザに錯覚させることができ、非常停止に驚いたユーザが車両Cから降りてしまう事態を防ぐことができる。また、下部洗浄装置80は車両Cの側面から洗浄水を噴射するため、ユーザは車両Cのドアを開けることができず、車両Cから降りることができない。
【0057】
さらに、図7に示すように、レール12上に洗浄水を噴射できるよう噴射ノズル81を配置することで、噴射ノズル81からの高圧水でレール12上の障害物を除去することも可能となる。これにより、非常停止後に本体部11がスムーズに移動可能になるため、ユーザを待たせなければならない時間が減る。
【0058】
(実施形態3)
本体部11が非常停止した後の制御を完全には自動で行わず、例えば本体部11の非常停止時、洗車場(例えば本体部11が設置されており、車両洗浄サービスが行われている場所)のスタッフなどがカメラなどの撮像装置によって非常停止時の洗車場の様子をまず確認できるようにしてもよい。本実施形態では、本体部11非常停止時に、本体部11および本体部11周辺の画像や映像を取得可能な監視カメラ90を備えた洗車装置10Bについて図面を参照して説明する。図8は本実施形態に係る洗車装置10Bの上面視からの概略図、図9は本実施形態に係る通信システムの構成図である。
【0059】
洗車装置10Bは監視カメラ90を備えている。監視カメラ90は本体部11やその周辺を撮影する機能を有する。監視カメラ90は本体部11の設置場所などに応じて任意の位置や個数で設けてよい。図8はそのような監視カメラ90の設置形態の一例である。本実施形態では、洗車装置10Bは図8に示すように4機の監視カメラ(すなわち監視カメラ90a~90d)を備えるものとして以降の説明を行う。
【0060】
監視カメラ90aおよび監視カメラ90bは、ともにレール12の延長線上に設けられる。監視カメラ90aと監視カメラ90bは、それらのうちいずれか一方が本体部11Bの前側、他方が本体部11の後側に設けられる。監視カメラ90aと監視カメラ90bは、レール12を構成する複数のレールのうち、同一のレールの延長線上に設けてもよいが、図8のように異なるレールの延長線上にそれぞれ設けるとなおよい。異なるレールの延長線上にそれぞれ設けることにより、監視カメラ90aと監視カメラ90bの2機による撮像範囲を広げることができる。
【0061】
監視カメラ90cは本体部11の梁フレーム11bに設けられる。監視カメラ90cは、門型状に形成された本体部11の開口部内を上部から撮像可能なように設けられる。
【0062】
監視カメラ90dは地面Gに対して本体部11よりも高い位置に設けられる。監視カメラ90dは、本体部11および本体部11の周囲(例えば車両Cが洗浄処理を受けるために通過する進入路や、車両Cが洗浄処理後に通過する退出路など)を高所から俯瞰して撮像可能なように設けられる。
【0063】
このように監視カメラ90a~90dを配置することで、少ないカメラ機数でも効率よく本体部11および本体部11周辺の画像や映像を取得することができる。
【0064】
また、監視カメラ90a~90dはそれぞれ通信部を有し、ネットワーク91を介して管理者端末92と通信可能なように設けられる。管理者端末92は洗車装置10Bの管理者が操作可能な端末である。管理者端末92は、本体部11が有する制御部50Bとネットワーク91を介して通信可能である。管理者端末92により、管理者は洗車装置10Bを管理および制御することができる。より具体的には、管理者は管理者端末92を通じて、例えば本体部11の電源を遠隔操作でONまたはOFFしたり、本体部11による洗浄工程が非常停止した場合にその処理を再開または中止させたり、監視カメラ90a~90dの映像を確認したりすることなどができる。
【0065】
制御部50Bは実施形態1で示した制御部50が有する機能を有するほか、ネットワーク91を介して管理者端末92と通信するための通信部(不図示)を有する。
【0066】
次に、実施形態3に係る洗車装置10Bの主に非常停止時における動作を説明する。
【0067】
ユーザは受付装置51を介して洗車装置10Bが実行する洗浄工程(洗浄処理コース)を決定する。すると、洗車装置10Bは、所定の停車位置に車両Cを停止させるよう表示や音声などによってユーザに案内する。車両Cが所定の停車位置に到達したら、ユーザが決定した洗浄工程が実行される。本例でもこれまでと同様、ユーザは図5に示す洗浄工程を実行するよう決定したものとして以降の説明を行う。
【0068】
第一処理での処理動作については、実施形態1および実施形態2と同様のため、割愛する。第二処理の途中で(例えば車両Cに付着する洗浄剤を部分的に洗い流した段階で)車両Cがわずかに移動したことを車両検出部36により検出したとする。すると、制御部50Bは非常停止手段57により本体部11の移動および本体部11が備える各洗浄処理装置の駆動を一旦停止する。
【0069】
停止後、制御部50Bは、管理者端末92に本体部11が非常停止したことを通知する。管理者は届いた通知を受け、管理者端末92で監視カメラ90a~90dの映像を確認することができる。監視カメラ90a~90dにより映し出される洗車場の様子をもとに、管理者は、管理者端末92で洗浄処理を再開したり中止したりすることができる。
【0070】
このようにして、監視カメラ90a~90dおよび制御部50Bが管理者端末92と通信可能に設けられることにより、洗車装置10Bの管理者は本体部11の非常停止に臨機応変に対応することができる。
【0071】
洗浄処理を中止する場合、制御部50Bは、本体部11が非常停止されたときの洗浄処理の直前の洗浄処理の内容を参照する。参照された直前の処理が処理内容に例えば洗浄剤の散布を含む場合、制御部50Bはトップスプレー32およびサイドスプレー33から洗浄水を散布させながら本体部11を待機位置へと移動させる。
【0072】
このような処理を行うことにより、例えば車両Cに洗浄剤が散布されたまま洗車装置10が洗浄サービスを再開できなくなるといった事態を防ぐことができる。
【0073】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0074】
例えば、受付装置51は、図2に示す受付装置51のように個別に設けられてもよいし、本体部11のいずれかの箇所に備えられてもよい。また、洗車装置10を利用するためのアプリケーションなどを介して、ユーザが有する端末を受付装置51として利用可能にしてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 洗車装置
11 本体部
30 トップブラシ
31 サイドブラシ
32 トップスプレー
33 サイドスプレー
34 トップノズル
35 サイドノズル
50 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9