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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087263
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】緊張式屋根
(51)【国際特許分類】
   E04H 15/04 20060101AFI20230616BHJP
   E04H 15/54 20060101ALI20230616BHJP
   E04H 15/34 20060101ALI20230616BHJP
   E04H 15/48 20060101ALI20230616BHJP
   E04H 15/44 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
E04H15/04
E04H15/54
E04H15/34 B
E04H15/48
E04H15/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201556
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】517064843
【氏名又は名称】河野 久米彦
(71)【出願人】
【識別番号】502410196
【氏名又は名称】株式会社 横河システム建築
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 久米彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼柳 隆
(72)【発明者】
【氏名】宮田 智夫
(72)【発明者】
【氏名】朱 大立
(72)【発明者】
【氏名】村岡 真
(72)【発明者】
【氏名】今井 卓司
(72)【発明者】
【氏名】大関 信彦
【テーマコード(参考)】
2E141
【Fターム(参考)】
2E141AA09
2E141DD12
2E141DD22
2E141DD25
2E141EE03
2E141EE04
2E141EE23
2E141EE32
2E141HH01
(57)【要約】
【課題】本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解消することであり、すなわち使用時の天幕に容易に張力を付与することができる緊張式屋根を提供することである。
【解決手段】本願発明の緊張式屋根は、中央に配置される主軸材と、左枝軸材及び右枝軸材からなる枝軸材、枝軸材に固定される引張索材、天幕を備えたものである。なお主軸材には2以上の枝軸材が取り付けられ、それぞれの枝軸材は左枝軸材と右枝軸材によって前方に開くV字状となるように配置される。また引張索材は、前後に隣接する左枝軸材どうし及び右枝軸材どうしを連結するとともに、最後方に配置された左枝軸材及び右枝軸材からさらに後方に伸びるように固定される。そして引張索材を後方に引張すると、後方であって主軸材から離れる方向に枝軸材の先端が展開することによって天幕が展張する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に配置される主軸材と、
左枝軸材及び右枝軸材からなる枝軸材と、
前記枝軸材に固定される引張索材と、
前記枝軸材の上部に取り付けられる天幕と、を備え、
前記主軸材に、2以上の前記枝軸材が取り付けられ、
それぞれの前記枝軸材は、前記左枝軸材と前記右枝軸材によって前方に開くV字状となるように配置され、
前記引張索材は、前後に隣接する前記左枝軸材どうし及び前記右枝軸材どうしを連結するとともに、後方に伸びるように最後方に配置された該左枝軸材及び該右枝軸材に固定され、
前記引張索材を後方に引張すると、後方であって主軸材から離れる方向に前記枝軸材の先端が展開することによって、前記天幕が展張する、
ことを特徴とする緊張式屋根。
【請求項2】
軸方向に伸縮可能な左伸縮手段と右伸縮手段を、さらに備え、
前記左伸縮手段は、前記左枝軸材の水平面における配置方向とは異なる方向に配置されるとともに、一端が鉛直面又は略鉛直面周りに回転可能となるように前記主軸材にピン結合され、他端が鉛直面又は略鉛直面周りに回転可能となるように該左枝軸材にピン結合され、
前記右伸縮手段は、前記右枝軸材の水平面における配置方向とは異なる方向に配置されるとともに、一端が鉛直面又は略鉛直面周りに回転可能となるように前記主軸材にピン結合され、他端が鉛直面又は略鉛直面周りに回転可能となるように該右枝軸材にピン結合され、
前記左枝軸材と前記右枝軸材は、それぞれ鉛直面又は略鉛直面周りに回転可能となるように前記主軸材にピン結合され、
前記左伸縮手段が伸長すると前記左枝軸材は上方に向かって回転し、該左伸縮手段が収縮すると該左枝軸材は下方に向かって回転し、
前記右伸縮手段が伸長すると前記右枝軸材は上方に向かって回転し、該右伸縮手段が収縮すると該右枝軸材は下方に向かって回転する、
ことを特徴とする請求項1記載の緊張式屋根。
【請求項3】
前記左枝軸材は、一端が前記主軸材にピン結合される第1左枝軸材と、鉛直面又は略鉛直面周りに回転可能となるように該第1左枝軸材の他端にピン結合される第2左枝軸材と、を有し、
前記右枝軸材は、一端が前記主軸材にピン結合される第1右枝軸材と、鉛直面又は略鉛直面周りに回転可能となるように該第1右枝軸材の他端にピン結合される第2右枝軸材と、を有し、
前記左伸縮手段は、前記第2左枝軸材にピン結合され、
前記右伸縮手段は、前記第2右枝軸材にピン結合され、
前記左伸縮手段が収縮すると、前記第1左枝軸材と前記第2左枝軸材がV字状となるように折り畳まれ、
前記右伸縮手段が収縮すると、前記第1右枝軸材と前記第2右枝軸材がV字状となるように折り畳まれる、
ことを特徴とする請求項2記載の緊張式屋根。
【請求項4】
前記第1左枝軸材と前記第2左枝軸材との接合位置で複数の前記左枝軸材を連結する左副軸材と、
前記第1右枝軸材と前記第2右枝軸材との接合位置で複数の前記右枝軸材を連結する右副軸材と、をさらに備えた、
ことを特徴とする請求項3記載の緊張式屋根。
【請求項5】
一端が鉛直面又は略鉛直面周りに回転可能となるように前記左伸縮手段にピン結合され、他端が鉛直面又は略鉛直面周りに回転可能となるように前記第1左枝軸材にピン結合される左補助アームと、
一端が鉛直面又は略鉛直面周りに回転可能となるように前記右伸縮手段にピン結合され、他端が鉛直面又は略鉛直面周りに回転可能となるように前記第1右枝軸材にピン結合される右補助アームと、をさらに備えた、
ことを特徴とする請求項3又は請求項4記載の緊張式屋根。
【請求項6】
前記左伸縮手段と前記第2左枝軸材との間に挟まれるように設置される左接近制御材と、
前記右伸縮手段と前記第2右枝軸材との間に挟まれるように設置される右接近制御材と、をさらに備え、
前記左接近制御材は、前記左伸縮手段が伸長したときに該左伸縮手段と前記第2左枝軸材との接近を制御し、
前記右接近制御材は、前記右伸縮手段が伸長したときに該右伸縮手段と前記第2右枝軸材との接近を制御する、
ことを特徴とする請求項3又は請求項4記載の緊張式屋根。
【請求項7】
前記左枝軸材と前記右枝軸材との間に設置される回転制御材を、さらに備え、
前記回転制御材は、前記左伸縮手段が収縮したときに前記第1左枝軸材の下方回転を制御するとともに、前記右伸縮手段が収縮したときに前記第1右枝軸材の下方回転を制御する、
ことを特徴とする請求項3乃至請求項6いずれかに記載の緊張式屋根。
【請求項8】
前記第1左枝軸材と前記第1右枝軸材とを連結する連結索材と、
前記第1左枝軸材と前記第1右枝軸材との間であって、前記連結索材の上方に設置される開放制御材と、をさらに備え、
前記第1左枝軸材と前記第1右枝軸材がそれぞれ上方に回転したとき、前記開放制御材が前記連結索材の上方移動を規制することによって、該第1左枝軸材と該第1右枝軸材の回転を制限し得る、
ことを特徴とする請求項3乃至請求項7いずれかに記載の緊張式屋根。
【請求項9】
前記開放制御材は、上下に移動可能に設置され、
前記開放制御材の設置位置を変更することによって、前記第1左枝軸材と前記第1右枝軸材の回転上限を調整し得る、
ことを特徴とする請求項8記載の緊張式屋根。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、屋根に関する技術であり、より具体的には、天幕に対して容易に張力を付与することができる緊張式屋根に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャンプを楽しむには、風雨をしのぎ安心な寝床を提供してくれるテントは欠かせない用具のひとつである。また、テントからの居住空間を広げてくれるタープもキャンプでは好んで利用される。テントが風雨をしのぐために圧倒的な防水機能を有しているのに対してタープがそれほど防水機能を求められない点でテントとタープは相違し、さらにテントが床構造を備えるのに対してタープがこれを備えない点においても両者は相違するが、いずれも居住空間の上空を覆うシート状の「天幕」を備える点では共通する。
【0003】
近年、テントやタープは、熱中症対策としても注目されている。熱中症対策としては、こまめな水分補給や塩分補給が肝要であるが、日差しを避けることも効果的であり、テントやタープによって日差しを回避するためのいわば一時的な避難所を設置しておくことが熱中症対策となるわけである。特に幼児は成人に比べ体温調節が未熟であり、幼稚園や保育園、小学校などの広場(園庭やグランド)で夏場に活動する際、あらかじめタープなどを設置しておくと有効な熱中症対策として期待できる。
【0004】
一方、テントやタープを常設しておくと、保育園などの広場の活用面積が制限されるため好ましくなく、夏場の暑いときや降雨が予想されるときに臨時にタープなどを設置するのが現実的である。したがって、容易に移動でき、しかも設置や撤去が容易であって、さらに嵩張ることなく収納できるものが望ましく、この点においてはテントよりもタープの方が適している。
【0005】
このように今後テントやタープは需要が拡がることが予想され、さらに利便性を追求すべくその技術改良が進んでいくことも考えられる。これまでにも、テントやタープに関する種々の改良技術が提案されており、例えば特許文献1では、美観や安全性を低下させることなくテントと結合できるタープについて提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-107604号公報
【特許文献2】特許第5711419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1で開示されるタープは、その形状や寸法を比較的容易に変更し得る点で好適な技術といえる。しかしながら特許文献1のタープは、その天幕に張力を付与することができないという問題を指摘することができる。タープやテントを構成する天幕は、使用時において張力が付与されていることが望ましい。特許文献1のタープにように天幕に張力が付与されていない状態で使用すると、風によって簡単に天幕がなびくために騒音が発生するなど利用環境が著しく劣化してしまう。また、天幕に張力が付与されない結果、タープ全体の構造が不安定となり、多少の荷重(風雨や不測の衝突など)でも容易に倒壊するおそれすらある。さらに、屋根の形状を特許文献2に示すような一葉双曲面(いわばポテトチップスにような形状)とすると、屋根構造が特に安定することが知られている。この一葉双曲面は、図12に示すように、屋根の短軸方向(X-X)の断面では下に凸のカテナリー曲線を示し、長軸方向(Y-Y)の断面では上に凸の曲線を示す形状であるが、これをタープやテントの天幕で実現しようとすると、やはり天幕に張力を導入する必要がある。
【0008】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解消することであり、すなわち使用時の天幕に容易に張力を付与することができる緊張式屋根を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、天幕が設置された枝軸材を引張することによって、天幕に張力を付与しながら展張する、という点に着目して開発されたものであり、従来にはない発想に基づいて行われた発明である。
【0010】
本願発明の緊張式屋根は、中央に配置される主軸材と、左枝軸材及び右枝軸材からなる枝軸材、枝軸材に固定される引張索材、枝軸材の上部に取り付けられる天幕を備えたものである。なお主軸材には2以上の枝軸材が取り付けられ、それぞれの枝軸材は左枝軸材と右枝軸材によって前方に開くV字状となるように配置される。また引張索材は、前後に隣接する左枝軸材どうし及び右枝軸材どうしを連結するとともに、最後方に配置された左枝軸材及び右枝軸材からさらに後方に伸びるように固定される。そして引張索材を後方に引張すると、後方であって主軸材から離れる方向に枝軸材の先端が展開することによって天幕が展張する。
【0011】
本願発明の緊張式屋根は、軸方向に伸縮可能な左伸縮手段と右伸縮手段をさらに備えたものとすることもできる。この左伸縮手段は、左枝軸材の配置方向(ただし、水平面に投影した配置方向)とは異なる方向(ただし、水平面に投影した方向)に配置されるとともに、一端が略鉛直面(鉛直面を含む)周りに回転可能となるように主軸材にピン結合され、他端が略鉛直面(鉛直面を含む)周りに回転可能となるように左枝軸材にピン結合される。同様に右伸縮手段は、右枝軸材の配置方向(ただし、水平面に投影した方向)とは異なる方向(ただし、水平面に投影した方向)に配置されるとともに、一端が略鉛直面(鉛直面を含む)周りに回転可能となるように主軸材にピン結合され、他端が略鉛直面(鉛直面を含む)周りに回転可能となるように右枝軸材にピン結合される。また左枝軸材と右枝軸材は、それぞれ略鉛直面(鉛直面を含む)周りに回転可能となるように主軸材にピン結合される。そして、左伸縮手段が伸長すると左枝軸材は上方に向かって回転し、左伸縮手段が収縮すると左枝軸材は下方に向かって回転し、右伸縮手段が伸長すると右枝軸材は上方に向かって回転し、右伸縮手段が収縮すると右枝軸材は下方に向かって回転する。
【0012】
本願発明の緊張式屋根は、左枝軸材が第1左枝軸材と第2左枝軸材を有するとともに、右枝軸材が第1右枝軸材と第2右枝軸材を有するものとすることもできる。なお、第1左枝軸材の一端は主軸材にピン結合され、第1左枝軸材の他端には略鉛直面(鉛直面を含む)周りに回転可能となるように第2左枝軸材がピン結合され、第1右枝軸材の一端は主軸材にピン結合され、第1右枝軸材の他端には略鉛直面(鉛直面を含む)周りに回転可能となるように第2右枝軸材がピン結合される。また左伸縮手段は第2左枝軸材にピン結合され、右伸縮手段は第2右枝軸材にピン結合される。そして、左伸縮手段が収縮すると第1左枝軸材と第2左枝軸材がV字状となるように折り畳まれ、同様に、右伸縮手段が収縮すると第1右枝軸材と第2右枝軸材がV字状となるように折り畳まれる。
【0013】
本願発明の緊張式屋根は、左副軸材と右副軸材をさらに備えたものとすることもできる。この左副軸材は、第1左枝軸材と第2左枝軸材との接合位置で複数の左枝軸材を連結するもので、一方の右副軸材は、第1右枝軸材と第2右枝軸材との接合位置で複数の右枝軸材を連結するものである。
【0014】
本願発明の緊張式屋根は、左補助アームと右補助アームをさらに備えたものとすることもできる。この左補助アームは、一端が略鉛直面(鉛直面を含む)周りに回転可能となるように左伸縮手段にピン結合され、他端が略鉛直面(鉛直面を含む)周りに回転可能となるように第1左枝軸材にピン結合されるもので、一方の右補助アームは、一端が略鉛直面(鉛直面を含む)周りに回転可能となるように右伸縮手段にピン結合され、他端が略鉛直面(鉛直面を含む)周りに回転可能となるように第1右枝軸材にピン結合されるものである。
【0015】
本願発明の緊張式屋根は、左伸縮手段と第2左枝軸材との間に挟まれるように設置される左接近制御材と、右伸縮手段と第2右枝軸材との間に挟まれるように設置される右接近制御材を、さらに備えたものとすることもできる。この左接近制御材は、左伸縮手段が伸長したときに左伸縮手段と左枝軸材との接近を制御するもので、一方の右接近制御材は、右伸縮手段が伸長したときに右伸縮手段と右枝軸材との接近を制御するものである。
【0016】
本願発明の緊張式屋根は、左枝軸材と右枝軸材との間に設置される回転制御材をさらに備えたものとすることもできる。この回転制御材は、左伸縮手段が収縮したときに第1左枝軸材の下方回転を制御するとともに、右伸縮手段が収縮したときに第1右枝軸材の下方回転を制御するものである。
【0017】
本願発明の緊張式屋根は、連結索材と開放制御材をさらに備えたものとすることもできる。この連結索材は、第1左枝軸材と第1右枝軸材とを連結するもので、一方の開放制御材は、第1左枝軸材と第1右枝軸材との間であって連結索材の上方に設置されるものである。そして、第1左枝軸材と第1右枝軸材がそれぞれ上方に回転したとき、開放制御材が連結索材の上方移動を規制することによって、第1左枝軸材と第1右枝軸材の回転が制限される。
【0018】
本願発明の緊張式屋根は、開放制御材が上下に移動可能に設置されたものとすることもできる。この場合、開放制御材の設置位置を変更することによって、第1左枝軸材と第1右枝軸材の回転上限を調整することができる。
【発明の効果】
【0019】
本願発明の緊張式屋根には、次のような効果がある。
(1)枝軸材を引張することによって、使用時における天幕に対して容易に張力を付与することができる。
(2)左伸縮手段と右伸縮手段を備えることによって、全体を概ね半分に折り畳むことができ、すなわち不使用時に嵩張ることなく容易に収容することができる。
(3)連結索材と、上下に移動可能な開放制御材を備えることによって、使用時における天幕の回転角度(鉛直面における角度)の上限を任意に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)は本願発明の緊張式屋根を模式的に示す平面図、(b)は本願発明の緊張式屋根を模式的に示す側面図、(c)は本願発明の緊張式屋根を模式的に示す断面図。
図2】(a)は天幕が上側に凸となる湾曲状で展張される緊張式屋根を模式的に示す断面図、(b)は天幕が上側に凸となる湾曲状で展張される緊張式屋根を模式的に示す側面図。
図3】主軸材と枝軸材からなる骨組構造を備えた緊張式屋根を模式的に示す平面図。
図4】枝軸材の挙動を模式的に示す平面図。
図5】左伸縮手段と右伸縮手段を備えた緊張式屋根を模式的に示す平面図。
図6】(a)は伸縮手段の収縮に伴い枝軸材が折り畳まれた状態を模式的に示す断面図、(b)は伸縮手段の伸長に伴い枝軸材が展開した状態を模式的に示す断面図。
図7】(a)は2部材からなる枝軸材を備えた緊張式屋根を模式的に示す断面図、(b)は2部材の接合部分を模式的に示す部分拡大平面図。
図8】左副軸材と右副軸材を備えた緊張式屋根を模式的に示す平面図。
図9】枝軸材が2部材によって構成される緊張式屋根が折り畳まれるまでの変化を示すステップ図。
図10】(a)は開放制御材が低い位置に配置されたことにより左枝軸材と右枝軸材が水平より下方に傾いた状態で展開した状態を示す鉛直面で切断した断面図、(b)は開放制御材が高い位置に配置されたことにより左枝軸材と右枝軸材が水平より上方に傾いた状態で展開した状態を示す鉛直面で切断した断面図。
図11】(a)は左接近制御材と右接近制御材を備えた緊張式屋根を模式的に示す断面図、(b)は左接近制御材と右接近制御材を備えた場合の2部材の接合部分を模式的に示す部分拡大平面図。
図12】一葉双曲面の屋根構造を模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願発明の緊張式屋根の実施形態の一例を、図に基づいて説明する。
【0022】
1.全体概要
図1は本願発明の緊張式屋根100を模式的に示す図であり、(a)は上方から見た平面図、(b)は側方から見た側面図、(c)は鉛直面で切断して正面から見た断面図である。この図に示すように本願発明の移動式屋根構造100は、骨組構造200と引張索材300、天幕400を含んで構成され、さらに支持体500を含んで構成することもできる。なお便宜上ここでは、図1(a)にも示すように緊張式屋根100の長手方向(図で左右方向)のことを「主軸方向」、この主軸方向に対して垂直な方向(図では上下方向)のことを「主軸直角方向」ということとする。ただし、これら主軸方向と主軸直角方向は水平面に設定される方向である。また、主軸直角方向のうち一方側(図では左側)を「前方」、他方側(図では右側)を「後方」ということとする。
【0023】
骨組構造200は、天幕400を支えるものであって、後述する主軸材と枝軸材(あるいは、さらに副軸材)によって骨組のように構成される構造体である。これら主軸材や枝軸材、副軸材は、断面寸法に比して軸方向寸法(長さ)が卓越したいわゆる軸部材であり、このうち主軸材はその軸方向が主軸方向と略平行(平行を含む)になるように配置される。天幕400は、シート状(膜状)の部材であって展張された状態でその下方を覆うことができ、これにより天幕400下の空間(いわば滞在空間)が強い日差しや降雨から守られる。また引張索材300は、例えばワイヤーロープのようにロープや紐といった策状の部材であり、それぞれの枝軸材(特に、その先端付近)に結び付けられるものである。そして、後述するように引張索材300を後方側に引き込むと、枝軸材の先端が拡がるとともに後方側へ移動し、これにより展張された天幕400には張力が導入される。
【0024】
支持体500は、天幕400の下方に所定の滞在空間が確保されるように(つまり相当の高さで)骨組構造200と天幕400を支えるものであって、地盤に鉛直荷重を伝達する支持本体510と、補助的に骨組構造200を支えるサポートジャッキ520を含んで構成することができる。なお図1(b)では、支持体500を後方側に配置していわば片持ち(キャンチレバー)形式で骨組構造200と天幕400を支持しているが、これに限らず前方と後方に支持体500を配置して単純梁形式(2点支持形式)で骨組構造200と天幕400を支持することもできるし、周囲に配置された複数の支柱(管状や柱状の部材)によって骨組構造200と天幕400を支持することもできる。また、図1(c)では天幕400が下側に凸となる湾曲状で展張されているが、これに限らず図2(a)に示すように天幕400が上側に凸となる湾曲状で展張することもできる。この場合、図2(b)に示すように支持体500がさらに索塔530と吊ロープ540を備えることとし、支持本体510上の索塔530によって支持される吊ロープ540が天幕400中央(主軸直角方向における中央)を吊上げる構造にするとよい。あるいは、天幕400中央部を全長に亘って吊ロープ540で吊上げる構造に代えて、天幕400の前方端と後方端の2点を吊ロープ540で吊上げる構造にすることもできる。
【0025】
以下、本願発明の緊張式屋根100についてさらに詳しく説明する。
【0026】
2.緊張式屋根
図3は、主軸材210と枝軸材220からなる骨組構造200を備えた緊張式屋根100を模式的に示す図であり、上方から見た平面図である。移動式屋根構造100を構成する骨組構造200は、既述したとおり主軸材210と枝軸材220によって骨組のように構成される構造体であり、このうち枝軸材220は図3に示すように1対の左枝軸材220Lと右枝軸材220Rの組み合わせからなる部材である。
【0027】
また複数(図では4対)の枝軸材220が、主軸方向に並ぶように配置されたうえで主軸材210に取り付けられる。より詳しくは、左枝軸材220Lの一端(図では右端で、以下「内側端」という。)が主軸材210に取り付けられるとともに、右枝軸材220Rの一端(図では左端で、以下「内側端」という。)が主軸材210に取り付けられることによって、枝軸材220は主軸材210に取り付けられる。このとき、左枝軸材220Lの他端(図では左端で、以下「外側端」という。)がその内側端よりも前方となるように、同様に右枝軸材220Rの他端(図では右端で、以下「外側端」という。)がその内側端よりも前方となるように、つまり左枝軸材220Lと右枝軸材220Rによって「前方に開くV字」が形成されるように配置されたうえで、それぞれ主軸材210に取り付けられる。
【0028】
引張索材300は、外側端に近い位置で枝軸材220に結び付けられ、左枝軸材220Lどうしを連結する左側の経路と、右枝軸材220Rどうしを連結する右側の経路によって主に構成される。左側経路の引張索材300は、主軸方向に隣接する左枝軸材220Lどうしを連結するとともに、最も後方(図3では最下端)の左枝軸材220Lに結び付けたうえでさらに後方に伸びるように設置される。同様に、右側経路の引張索材300は、主軸方向に隣接する右枝軸材220Rどうしを連結するとともに、最も後方の右枝軸材220Rに結び付けたうえでさらに後方に伸びるように設置される。引張索材300は、各区間(左枝軸材220L~左枝軸材220Lや、右枝軸材220R~右枝軸材220R)においてそれぞれ伸びるような構成とされ、しかも引張索材300の伸び量(つまり、枝軸材220先端の移動距離)が前方区間から徐々に大きくなり最も後方の区間で最大となるような構成とされる。なお、図3に示すように引張索材300の先端側は、主軸材210前方側と、最も前方(図では最上端)の左枝軸材220Lや右枝軸材220Rとを連結してもよい。また、左側経路の引張索材300は、それぞれ一連の部材(つまり1本の索材)とすることもできるし、1区間(左枝軸材220L~左枝軸材220L)ごとに独立して(つまり複数の索材を用意して)連結することもでき、もちろん右側経路の引張索材300も同様の構成とすることができる。
【0029】
天幕400は、概ね骨組構造200を覆うような大きさ(面積)と形状を有するシート状(膜状)の部材であり、それぞれの枝軸材220の上部に取り付けられる。なお天幕400は、布製幕やビニールシートのほか、足場を隠すために利用される目隠しシート、寒冷紗など、従来用いられている種々の材料を利用することができる。
【0030】
図4は、枝軸材220の挙動を模式的に示す図であり、上方から見た平面図である。なお便宜上この図では、天幕400を省略している。この図(特に矢印)に示すように、引張索材300を後方側に引き込む(引張する)と、枝軸材220が拡がるように展開していく。より詳しくは、左枝軸材220Lの外側端が、主軸材210から離れる方向(図では左側)であって、しかも後方(図では下方)に移動していき、同様に右枝軸材220Rの外側端が、主軸材210から離れる方向(図では右側)であって、しかも後方に移動していく。そして、枝軸材220が拡がるように展開すると、枝軸材220の上部に取り付けられた天幕400もさらに展張していく。すなわち、引張索材300を後方側に引き込むことによって、天幕400には相当の張力が導入されるわけである。引張索材300を後方側に引き込むにあたっては、ウィンチやホイストといった巻き取り装置を利用することもできるし、もちろん人力によって引張する構成とすることもできる。
【0031】
上記したように、引張索材300を後方側に引き込むと、枝軸材220の外側端が主軸材210から離れる方向かつ後方に移動していく。一方、枝軸材220の内側端は主軸材210に結合されている。つまり枝軸材220は、引張索材300の引き込みに伴って内側端を中心に回転するように移動するわけである。例えば、図4に示す左枝軸材220Lは内側端を中心に反時計回りに回転するように、一方の右枝軸材220Rは内側端を中心に時計回りに回転するように移動する。そのため枝軸材220(左枝軸材220Lと右枝軸材220R)は、それぞれ回転可能となるように主軸材210に取り付けられる。ただし、枝軸材220の内側端と主軸材210との結合形式は、必ずしもピン結合(ヒンジ結合)に限定されず(もちろんピン結合でもよい)、回転バネが生じた結合形式とすることもできる。この場合、枝軸材220は主軸材210に対して自由に回転することはできないが、ある程度の力(回転モーメント)が作用するとその力の大きさに応じて回転することができる。
【0032】
本願発明の緊張式屋根100は、図5に示すように左伸縮手段600Lと右伸縮手段600Rを備えたものとすることもできる。図5は、左伸縮手段600Lと右伸縮手段600Rを備えた緊張式屋根100を模式的に示す図であり、上方から見た平面図である。左伸縮手段600Lと右伸縮手段600Rは、それぞれ軸方向に伸縮可能な装置であって例えばジャッキ等を利用することができ、特にオペレータが遠隔操作することで動作するものを利用するとよい。なお、この図に示すように主軸材210は、部分的(図では下方側の一部)に2本(3本以上でもよい)の軸部材によって構成することもできる。
【0033】
左伸縮手段600Lは、その内側端(図では右側端)で略鉛直面(鉛直面を含む)周りに回転可能となるように主軸材210の一部にピン結合され、その外側端(図では左側端)で略鉛直面(鉛直面を含む)周りに回転可能となるように左枝軸材220Lの一部にピン結合される。同様に、右伸縮手段600Rは、その内側端(図では左側端)で略鉛直面(鉛直面を含む)周りに回転可能となるように主軸材210の一部にピン結合され、その外側端(図では右側端)で略鉛直面(鉛直面を含む)周りに回転可能となるように右枝軸材220Rの一部にピン結合される。ただし、左伸縮手段600Lと左枝軸材220L、右伸縮手段600Rと右枝軸材220Rは、それぞれ異なる方向(水平面に投影した方向)となるように配置される。例えば図5では、左枝軸材220Lが主軸材210に傾斜して(前方左側に向かって)配置されているのに対して左伸縮手段600Lは主軸材210に略垂直に配置されており、同様に右枝軸材220Rが主軸材210に傾斜して(前方右側に向かって)配置されているのに対して右伸縮手段600Rは主軸材210に略垂直に配置されている。
【0034】
緊張式屋根100が左伸縮手段600Lと右伸縮手段600Rを備える場合、枝軸材220は略鉛直面(鉛直面を含む)周りに回転可能となるように主軸材210にピン結合するとよい。より具体的には、左枝軸材220Lの内側端と主軸材210の一部をピン結合するとともに、右枝軸材220Rの内側端と主軸材210の一部をピン結合する。これにより、左伸縮手段600Lと右伸縮手段600Rの伸縮に応じて、左枝軸材220Lと右枝軸材220Rが展開し、折り畳むことが可能となる。
【0035】
図6は、左伸縮手段600Lと右伸縮手段600Rの伸縮に伴う枝軸材220の動作を模式的に示す鉛直面で切断した断面図であり、(a)は左枝軸材220Lと右枝軸材220Rが折り畳まれた状態を示し、(b)は左枝軸材220Lと右枝軸材220Rが展開した状態を示している。図6(a)では、左伸縮手段600Lと右伸縮手段600Rが収縮しており、そのため左枝軸材220Lと右枝軸材220Rはそれぞれやや下方に垂下した状態とされ、すなわち左枝軸材220Lと右枝軸材220Rは折り畳まれた状態となっている。この状態から左伸縮手段600Lと右伸縮手段600Rを伸長していくと、図6(b)に示すように、左枝軸材220Lは内側端を中心に時計回りに上方回転し、一方の右枝軸材220Rは内側端を中心に反時計回りに上方回転し、すなわち左枝軸材220Lと右枝軸材220Rは展開した状態となっていく。
【0036】
他方、図6(b)に示す状態から左伸縮手段600Lと右伸縮手段600Rを収縮していくと、左枝軸材220Lは内側端を中心に反時計回りに下方回転し、一方の右枝軸材220Rは内側端を中心に時計回りに下方回転し、すなわち左枝軸材220Lと右枝軸材220Rは図6(a)に示す折り畳まれた状態となっていく。
【0037】
本願発明の緊張式屋根100は、図7に示すように、左枝軸材220Lが第1左枝軸材221Lと第2左枝軸材222Lを含んで構成され、右枝軸材220Rが第1右枝軸材221Rと第2右枝軸材222Rを含んで構成されたものとすることもできる。図7は、2部材(第1左枝軸材と第2枝軸材)からなる枝軸材220を備えた緊張式屋根100を模式的に示す図であり、(a)は鉛直面で切断した断面図、(b)は2部材(第1左枝軸材と第2枝軸材)の接合部分を上方から見た部分拡大平面図である。
【0038】
図7(a)に示す左枝軸材220Lは、主軸材210側(図では右側)に配置される第1左枝軸材221Lと、主軸材210から離れた側(図では左側)に配置される第2左枝軸材222Lによって構成され、第1左枝軸材221Lの一端(図では左端)と第2左枝軸材222Lの一端(図では右端)が略鉛直面(鉛直面を含む)周りに回転可能となるようにピン結合される。同様に、右枝軸材220Rは、主軸材210側(図では左側)に配置される第1右枝軸材221Rと、主軸材210から離れた側(図では右側)に配置される第2右枝軸材222Rによって構成され、第1右枝軸材221Rの一端(図では右端)と第2右枝軸材222Rの一端(図では左端)が略鉛直面(鉛直面を含む)周りに回転可能となるようにピン結合される。なお、第2左枝軸材222Lは360°回転可能となるように第1左枝軸材221Lにピン結合することもできるが、第2左枝軸材222Lと第1左枝軸材221Lが直線となった後は回転しないように(つまり、図7(a)の状態からさらに第2左枝軸材222Lのみが時計回りに回転しないように)ピン結合することもできる。もちろん第2右枝軸材222Rも、同様の構造で第1右枝軸材221Rにピン結合することができる。
【0039】
枝軸材220(左枝軸材220Lと右枝軸材220R)を2部材(第1左枝軸材と第2枝軸材)によって構成する場合、図7(a)に示すように、左枝軸材220Lと右枝軸材220Rの間に連結索材710や開放制御材720、回転制御材730を配置するとよい。この連結索材710は、左枝軸材220Lと右枝軸材220Rを連結する策状の部材(例えばワイヤーロープなど)であり、開放制御材720は連結索材710の上方に設置される。なお、連結索材710と開放制御材720、回転制御材730の機能については、後述する。
【0040】
またこの場合、左伸縮手段600Lと右伸縮手段600Rは、略鉛直面(鉛直面を含む)周りに回転可能となるように第2枝軸材にピン結合される。より具体的には、左伸縮手段600Lの外側端(図では左側端)と第2左枝軸材222Lの一部をピン結合するとともに、右伸縮手段600Rの外側端(図では右側端)と第2右枝軸材222Rの一部をピン結合する。図7の例では、左伸縮手段600Lの外側端に左係止具601Lを取り付けたうえでこの左係止具601Lと第2左枝軸材222Lをピン結合し、右伸縮手段600Lの外側端に右係止具601Rを取り付けたうえでこの右係止具601Rと第2右枝軸材222Rをピン結合している。さらに図7の例では、左補助アーム602Lと右補助アーム602Rが設けられ、この左補助アーム602Lの一端(図では下端)と第2左枝軸材222L(あるいは左係止具601L)が略鉛直面(鉛直面を含む)周りに回転可能となるようにピン結合されるとともに、左補助アーム602Lの他端(図では上端)と第1左枝軸材221Lが略鉛直面(鉛直面を含む)周りに回転可能となるようにピン結合され、右補助アーム602Rの一端(図では下端)と第2右枝軸材222R(あるいは右係止具601R)が略鉛直面(鉛直面を含む)周りに回転可能となるようにピン結合されるとともに、右補助アーム602Rの他端(図では上端)と第1右枝軸材221Rが略鉛直面(鉛直面を含む)周りに回転可能となるようにピン結合されている。
【0041】
ここで図7(b)を参照しながら、第1右枝軸材221Rと第2右枝軸材222Rとの接合構造の例についてさらに詳しく説明する。なお、第1左枝軸材221Lと第2左枝軸材222Lも同様の接合構造であるため、ここでは第1右枝軸材221Rと第2右枝軸材222Rの例で説明することとする。この図の例では、第1右接合板223Rと第2右接合板224Rが設けられ、これら第1右接合板223Rと第2右接合板224Rが右蝶番225Rによって回転可能に接合されている。そして、第1右接合板223Rには第1右枝軸材221Rの外側端が固定され、第2右接合板224Rには第2右枝軸材222Rの内側端が固定されており、これにより第1右枝軸材221Rと第2右枝軸材222Rが回転可能に結合されている。また、右係止具601Rが第2右接合板224Rにピン結合され、右補助アーム602Rが第1右枝軸材221Rにピン結合されるとともに、右係止具601Rと右補助アーム602Rがピン結合されており、これにより右係止具601Rと第2右枝軸材222R、右補助アーム602Rと第1右枝軸材221R、そして右係止具601Rと右補助アーム602Rが、それぞれ回転可能に結合されている。
【0042】
枝軸材220(左枝軸材220Lと右枝軸材220R)を2部材(第1左枝軸材と第2枝軸材)によって構成すると、天幕400等は2部材の接合部分で折り曲げられることになる。そこでこの場合は図8に示すように、きれいに折り畳むためのガイドとなる直線状の左副軸材230Lと右副軸材230Rを設置するとよい。もちろん左副軸材230Lと右副軸材230Rは、構造上の補強材としても期待することができる。図8は、左副軸材230Lと右副軸材230Rを備えた緊張式屋根100を模式的に示す図であり、上方から見た平面図である。既述したとおり左副軸材230Lと右副軸材230Rは、主軸材210と枝軸材220とともに骨組構造200を構成する部材であって、断面寸法に比して軸方向寸法が卓越した軸部材である。そしてこの図に示すように、左副軸材230Lは概ね主軸方向に配置され、第1左枝軸材221Lと第2左枝軸材222Lとの接合位置で複数の左枝軸材220Lを連結し、右副軸材230Rは概ね主軸方向に配置され、第1右枝軸材221Rと第2右枝軸材222Rとの接合位置で複数の右枝軸材220Rを連結する。
【0043】
枝軸材220(左枝軸材220Lと右枝軸材220R)が2部材(第1左枝軸材と第2枝軸材)によって構成される場合、図6(a)に示す状態よりさらにコンパクトに左枝軸材220を折り畳むことが可能となる。
【0044】
図9は、枝軸材220が2部材によって構成される緊張式屋根100が折り畳まれるまでの変化を示すステップ図である。以下、この図を参照しながら、この緊張式屋根100が折り畳まれる手順について説明する。
【0045】
まず、図9(a)に示す状態では左伸縮手段600Lと右伸縮手段600Rが伸長しており、そのため左枝軸材220L(第1左枝軸材221Lと第2左枝軸材222L)と右枝軸材220R(第1右枝軸材221Rと第2右枝軸材222R)はそれぞれ水平に近い位置まで上昇しており、すなわち左枝軸材220Lと右枝軸材220Rは展開した状態となっている。この状態から左伸縮手段600Lと右伸縮手段600Rを収縮していくと、図9(b)に示すように、左枝軸材220Lは内側端を中心に反時計回りに下方回転し、一方の右枝軸材220Rは内側端を中心に時計回りに下方回転し、左枝軸材220Lと右枝軸材220Rはそれぞれやや下方に垂下した状態とされる。なお図9(b)に示す状態では、第1左枝軸材221Lと第1右枝軸材221Rがそれぞれ回転制御材730に当接している。
【0046】
そして、図9(b)に示す状態からさらに左伸縮手段600Lと右伸縮手段600Rを収縮していくと、図9(c)に示すように、第2左枝軸材222Lのみが内側端(第1左枝軸材221Lとの接合端)を中心に反時計回りに下方回転し、第2右枝軸材222Rのみが内側端(第1右枝軸材221Rとの接合端)を中心に時計回りに下方回転していく。その結果、第1左枝軸材221Lと第2左枝軸材222Lによって「横倒した(図では時計周りに回転した)V字」が形成されるように第2左枝軸材222Lが折り畳まれ、同様に第1右枝軸材221Rと第2右枝軸材222Rによって「横倒した(図では反時計周りにした)V字」が形成されるように第2右枝軸材222Rが折り畳まれる。このとき、回転制御材730を設置した効果で、第1左枝軸材221Lと第1右枝軸材221Rは図9(b)に示す状態で維持され、つまり第1左枝軸材221Lと第1右枝軸材221Rの下方回転が制御され、したがって第2左枝軸材222Lのみ、そして第2右枝軸材222Rのみが下方回転していくわけである。
【0047】
他方、図9(c)に示す状態から左伸縮手段600Lと右伸縮手段600Rを伸長していくと、第2左枝軸材222Lのみが内側端を中心に時計回りに上方回転し、第2右枝軸材222Rのみが内側端を中心に反時計回りに上方回転し、図9(b)に示すように第1左枝軸材221Lと第2左枝軸材222Lが概ね直線配置となり、第1右枝軸材221Rと第2右枝軸材222Rが概ね直線配置となる。
【0048】
そして、図9(b)に示す状態からさらに左伸縮手段600Lと右伸縮手段600Rを伸長していくと、左枝軸材220L(第1左枝軸材221Lと第2左枝軸材222L)が内側端を中心に時計回りに上方回転し、右枝軸材220R(第1右枝軸材221Rと第2右枝軸材222R)が内側端を中心に反時計回りに上方回転していく。その結果、図9(a)に示すように左枝軸材220Lと右枝軸材220Rはそれぞれ水平に近い位置まで上昇し、すなわち左枝軸材220Lと右枝軸材220Rは展開した状態とされる。このとき、連結索材710と開放制御材720を設置していると、連結索材710が開放制御材720に当接した状態から第1左枝軸材221Lと第1右枝軸材221Rはそれ以上、上方回転することができず、つまり第1左枝軸材221Lと第1右枝軸材221Rの上方回転が制御される。その結果、第2左枝軸材222Lのみが上方回転するとともに、第2右枝軸材222Rのみが上方回転することとなり、第1左枝軸材221Lと第2左枝軸材222L、第1右枝軸材221Rと第2右枝軸材222Rは、それぞれ極めて直線に近い配置となる。
【0049】
上記したとおり、連結索材710が開放制御材720に当接することによって第1左枝軸材221Lと第1右枝軸材221Rの上方回転が制御される。換言すれば、第1左枝軸材221Lと第1右枝軸材221Rの上方回転の限度は、開放制御材720の設置位置(設置高さ)に依存する。したがって、図10に示すように開放制御材720の設置高さを変更できる構造にすると、所望の位置で第1左枝軸材221Lと第1右枝軸材221Rの上方回転を制限することができて好適となる。なお便宜上、図10では、右枝軸材220R(第1右枝軸材221Rと第2右枝軸材222R)のみを示し、左枝軸材220L(第1左枝軸材221Lと第2左枝軸材222L)は省略している。例えば、図10(a)では低い位置に開放制御材720を配置していることから、左枝軸材220Lと右枝軸材220Rはそれぞれ水平より下方に傾いた状態で停止しているが、これに対して図10(b)では高い位置に開放制御材720を配置していることから、左枝軸材220Lと右枝軸材220Rはそれぞれ水平より上方に傾いた状態で展開している。
【0050】
ところで、図7では左補助アーム602Lと右補助アーム602Rが設けられる例を示したが、これに代えて左接近制御材800Lと右接近制御材800Rを設ける構成とすることもできる。図11は、左接近制御材800Lと右接近制御材800Rを備えた緊張式屋根100を模式的に示す図であり、(a)は鉛直面で切断した断面図、(b)は左接近制御材800Lと右接近制御材800Rを備えた場合の2部材(第1左枝軸材と第2枝軸材)の接合部分を上方から見た部分拡大平面図である。なお便宜上、図11(a)では、右枝軸材220R(第1右枝軸材221Rと第2右枝軸材222R)のみを示し、左枝軸材220L(第1左枝軸材221Lと第2左枝軸材222L)は省略している。
【0051】
以下、図11を参照しながら、左接近制御材800Lと右接近制御材800Rの機能について説明する。なお、左接近制御材800Lも同様の機能を有するため、ここでは右接近制御材800Rの例で説明することとする。図11(a)に示すように右接近制御材800Rは、右伸縮手段600Rと第2右枝軸材222Rとの間に挟まれるように配置され、右伸縮手段600Rあるいは第2右枝軸材222Rに取り付けられる。この図から分かるように、右伸縮手段600Rと第2右枝軸材222Rとの間に右接近制御材800Rが介在することによって、右伸縮手段600Rが伸長したときに右伸縮手段600Rと第2右枝軸材222Rとの接近が制御され、すなわち右伸縮手段600Rの上方回転が規制され、その結果、第2右枝軸材222Rの上方回転も規制される。したがって、右接近制御材800Rの寸法を適宜設計することで、第2右枝軸材222Rの上方回転の上限を任意に設定することができるわけである。
【0052】
ここで図11(b)を参照しながら、第1右枝軸材221Rと第2右枝軸材222Rとの接合構造の例について詳しく説明する。なお、第1左枝軸材221Lと第2左枝軸材222Lも同様の接合構造であるため、ここでは第1右枝軸材221Rと第2右枝軸材222Rの例で説明することとする。この図の例では、第1右接合板223Rと第2右接合板224Rが設けられ、これら第1右接合板223Rと第2右接合板224Rが右蝶番225Rによって回転可能に接合されている。そして、第1右接合板223Rには第1右枝軸材221Rの外側端が固定され、第2右接合板224Rには第2右枝軸材222Rの内側端が固定されており、これにより第1右枝軸材221Rと第2右枝軸材222Rが回転可能に結合されている。また、右係止具601Rが第2右接合板224Rにピン結合されており、これにより右係止具601Rと第2右枝軸材222Rが回転可能に結合されている。なお右接近制御材800Rは、右係止具601Rと第2右接合板224Rとの間に挟まれるように配置されたうえで、右伸縮手段600R(あるいは第2右接合板224R)に取り付けられている。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本願発明の緊張式屋根は、キャンプ場における利用のほか、幼稚園や小学校など様々な場所や状況で利用することができる。本願発明が、幼児を含む低年齢層に対する有効な熱中症対策として期待できることを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明といえる。
【符号の説明】
【0054】
100 本願発明の緊張式屋根
200 (緊張式屋根の)骨組構造
210 (骨組構造の)主軸材
220 (骨組構造の)枝軸材
220L (枝軸材の)左枝軸材
221L (左枝軸材の)第1左枝軸材
222L (左枝軸材の)第2左枝軸材
223L (左枝軸材の)第1左接合板
224L (左枝軸材の)第2左接合板
225L (左枝軸材の)左蝶番
230L (骨組構造の)左副軸材
220R (枝軸材の)右枝軸材
221R (右枝軸材の)第1右枝軸材
222R (右枝軸材の)第2右枝軸材
223R (右枝軸材の)第1右接合板
224R (右枝軸材の)第2右接合板
225R (右枝軸材の)右蝶番
230R (骨組構造の)右副軸材
300 (緊張式屋根の)引張索材
400 (緊張式屋根の)天幕
500 (緊張式屋根の)支持体
510 (支持体の)支持本体
520 (支持体の)サポートジャッキ
530 (支持体の)索塔
540 (支持体の)吊ロープ
600L (緊張式屋根の)左伸縮手段
601L (左伸縮手段の)左係止具
602L (左伸縮手段の)左補助アーム
600R (緊張式屋根の)右伸縮手段
601R (右伸縮手段の)右係止具
602R (右伸縮手段の)右補助アーム
710 (緊張式屋根の)連結索材
720 (緊張式屋根の)開放制御材
730 (緊張式屋根の)回転制御材
800L (緊張式屋根の)左接近制御材
800R (緊張式屋根の)右接近制御材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12