(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008727
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】反射光弁別装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/47 20060101AFI20230112BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
G01N21/47 B
G02B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021132081
(22)【出願日】2021-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】521357766
【氏名又は名称】日浦 慎作
(72)【発明者】
【氏名】日浦 慎作
(72)【発明者】
【氏名】前田 涼汰
【テーマコード(参考)】
2G059
2H042
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059EE02
2G059FF01
2G059JJ15
2G059JJ30
2G059KK04
2H042AA02
2H042AA12
2H042AA21
(57)【要約】
【課題】被写体に照射した光の反射光のうち、直接光または間接光のみを選別し、その像を肉眼で直接観察する。
【解決手段】光源3から発したスリット光11が被写体7ないし8で反射される。このうち直接反射成分12はレンズ4を介し反射部5bで反射され、観察者9に観察されるが、間接反射成分13は非反射部5aへ到達するため観察されない。光は軸6のまわりに回転する多面体ミラー1上で3回反射されるが、それらの反射面のうち1aと1bは機械的に連動しているため、ミラーの回転角によらず直接反射成分は必ず5bに導かれる。そのスリット状の直接反射成分を2次元像として観察するために1cで3回目の反射が行われるが、反射面1bと1cは機械的に連動しているために被写体は観察者9にとって静止して観察される。マスク面5上の非反射部5aと反射部5bの配置を変えることで間接反射成分のみを観察することも出来る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から発した光を偏向する反射面aと、シーンから入射した光を偏向する反射面bと、反射面bで偏向された光の一部を遮断する光学系と、その光学系を通過した光を偏向する反射面cを備え、反射面aと反射面bと反射面cの面の向きが機械的に連結されていることを特徴とする反射光弁別装置。
【請求項2】
前記光学系は、入射する光線の方位に基づき光線の通過と遮断が決定されることを特徴とする反射光弁別装置。
【請求項3】
前記光学系は、入射する光線と出射する光線のなす角が一定であることを特徴とする反射光弁別装置。
【請求項4】
前記反射面bと観察対象物体との間に光を屈折または反射する光学系を備えないことを特徴とする反射光弁別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体に照射された光のうち、物体の表面で一度だけ反射した直接反射成分のみ、または物体内部を伝播した間接反射成分や物体間を2回以上反射した間接反射成分のみを選択的に観察する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直接反射成分と間接反射成分を、それらの空間周波数特性の違いを利用して分離する手法が知られている(非特許文献1)。この手法では市松模様などの空間周波数が高いパターンをプロジェクタで複数枚投影し、得られた複数の画像から各成分を計算機により算出する。計算機による演算を要するため、肉眼による目視でいずれかの成分を選択的に観察することはできない。
【0003】
Episcan3Dは、直接反射成分がエピポーラ拘束と呼ばれる幾何学的な条件を満たすのに対し、間接光はそれを必ずしも満たさないことを利用し、いずれかの反射成分を選択的に取得する手法である(非特許文献2)。この手法では走査型プロジェクタとローリングシャッター方式のカメラを、すべてのエピポーラ線がそれぞれの走査線に一致するように設置する。その上で、プロジェクタとカメラを電気的に同期させることでいずれかの成分を選択的に取得する。カメラの走査によるため、非特許文献1の方法と同様に肉眼による目視でいずれかの成分を選択的に観察することはできない。また、装置の位置合わせが複雑であるという欠点を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Nayar,S.K.,Krishnan,G.,Grossberg,M.D.and Raskar,R.,“Fast separation of direct and global components of a scene using high frequency illumination”,ACM SIGGRAPH 2006 Papers,(米),2006,p.935-944
【非特許文献2】O’Toole,M.,Achar,S.,Narasimhan,S.G.and Kutulakos,K.N.,“Homogeneous codes for energy-efficient illumination and imaging”,ACM Transactions on Graphics,(米),2015,Vol.34,No.4,p.1-13
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シーンに照射された光は反射・屈折・散乱などの多様な光学現象が繰り返された後に観測される。観測される光のうち、照射された光が物体の表面で一度だけ反射して観測される光を直接反射成分(または直接光)、相互反射や散乱による複数回の反射の後に観測される光を間接反射成分(または間接光)と呼ぶ。
【0006】
物体の計測・識別・検査などの分野において、多くの場合では特定の反射成分だけが用いられる。例えばパターン光の照射に基づく3次元計測では直接光のみが観測されることを前提としており、間接光は精度低下の原因になる。一方、間接光を用いることで半透明物体の内部構造の可視化や解析を行うことができる。そのため、反射成分分離は光を応用した様々な産業分野において重要な課題である。
【0007】
非特許文献1および非特許文献2のように、反射成分を分離する手法として公知のものはいずれも対象をカメラで撮影する必要があり、対象を肉眼で直接目視できない。そのため、熟練した検査員が微細な欠陥の検査をするような場合に画質や疲労等の問題が生じるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の反射光弁別装置は、
図1に示すように、光源3から発した光11を偏向する反射面1aと、シーンから入射した光12および13を偏向する反射面1bと、反射面1bで偏向された光の一部を遮断する光学系2と、その光学系を通過した光を偏向する反射面1cを備え、1aと1bと1cの面の向きが機械的に連結されていることにより、反射光を弁別する。
【0009】
前記光学系2では、入射する光線の方位に基づき光線の通過と遮断を決定する。
【0010】
前記光学系2では、入射する光線と出射する光線のなす角を一定とする。
【0011】
本発明の反射光弁別装置は、前記反射面1bと観察対象物体との間に光を屈折または反射する光学系を備えることなく反射光を弁別する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被写体に照射した光の反射光のうち、直接光または間接光のみを選別し、その像を肉眼で直接観察できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】多角形ミラーが回転したときの光線の向きを示す上面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は
図1に示すように、光源3から発したスリット光11が観察対象7で反射し、再び装置を通過して肉眼またはカメラ9で観察される装置である。3から発した光は表面が鏡に仕上げられた多面体ミラー1で反射され、7で反射した光12が再び1で反射した後にレンズ4を通過し、マスク面5上の反射部5bで反射した後に再び4を通過し、1で反射した後に9に到達し観察される。
【0015】
物体上で1度だけ反射した直接反射成分12は反射部5bで反射されることで9に到達するが、物体上で2度以上反射する間接反射成分13は12と方位が異なるためにマスク面5上の到達位置が異なり、非反射部5aへ到達するため反射されず、9で観察されない。
【0016】
多面体ミラー1が静止している場合はスリット光11が照らす物体上の一部しか観察することができないので、1を軸6まわりに回転させる。これにより光源3から発したスリット光が走査され、物体の広い範囲を照射する。このとき直接光12の入射方位も変化するが、12が反射される面1bは3から発したスリット光11が反射する面1aと向きが連動しているために、1の回転角によらず12が光学系2へ入射する際の方位が一定となり、結果、12はいつでも反射部5bに到達する。
【0017】
直接光12が反射部5bにより反射しレンズ4を再び通過したのちの光の方位は一定であるため、これをそのまま肉眼で観察してもスリット状の像しか観察されない。しかしその光はまた多面体ミラー1上の反射面1cで反射され9へ到達し、1は回転しているために肉眼には2次元像として観察される。
【0018】
図2および
図3に示すように、光源3から発したスリット光11が最初に反射される多面体ミラー上の面1aと、反射光12aが多面体ミラー上で反射される面1bと、反射部5bで反射された光12bが9に到達する前に反射される面1cの3つの面は互いに機械的に連結されているか、または同一面のため、それらの面の向きの関係は多面体ミラーの回転によらず常に一定である。
【0019】
図1の10はレンズ4とマスク面5との距離であるが、これを焦点距離に一致させることで、レンズ4は無限遠の像を5上に結像し、よってレンズ4に入射する直前の
図2の光線12aとレンズ4から射出された直後の光線12bは平行となる。前述のように面1bと1cの向きの関係は一定であるため、機器に入射する前の光線12aと1cで反射されたのちの光線12bは平行となり、多面体ミラー1が回転しても、9の観察者には対象物体7の静止像が観察される。
【実施例0020】
図4は本発明に係る装置の実施例を示す。この実施例では
図1と同様に4面の多角形ミラー1を用いており、反射面1aと反射面1bは同一面であり、反射面1cはそれらと直角の関係にある。よって観察者9は機器を介さない場合と同じ方位・同じ大きさに対象を観察することになる。
図4においてスリット光源3は縦に装着されており、直下の小さな固定鏡により多面体ミラーへ光を導いているが、これは狭隘な空間に光源を設置することを避けるためである。
【0021】
図5に直接光のみを観察するために中央に反射部を配置したマスク5dと、間接光のみを観察するために中央に非反射部を配置したマスク5eと、比較のために直接光と間接光の両方を通過させる鏡5fを示す。
図6はそれらのマスクを用い、観察者9の代わりにカメラを設置して対象を撮影したときの結果例である。15cはマスク5fを用いた場合の画像で、中央のミラーボールの反射光が背景の板上にみられ、またミラーボールの箇所には背景の板の反射光が観察される。15aはマスク5dを用いた場合の画像で、ミラーボールから背景の板への反射光が遮断されており、またミラーボールの左右に見られる背景の板の反射光が抑制されている。15bはマスク5eを用いた場合の画像で、ミラーボールから背景への反射がより明瞭に観察される。またミラーボール中央や背景板の中央に見られた強い直接反射成分が抑制されている。