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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087293
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20230616BHJP
【FI】
G05D1/02 S
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201599
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 夏美
(72)【発明者】
【氏名】山田 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】今西 裕人
(72)【発明者】
【氏名】タンチャン キム
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301AA10
5H301BB05
5H301BB07
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD01
5H301DD07
5H301DD15
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG28
5H301HH01
5H301LL01
5H301LL02
5H301LL06
(57)【要約】
【課題】作業者が走行車両の走行経路に立ち入った場合に、作業者の安全を確保しつつ作業効率が低下しないように、作業者の状況に応じて自律的に動作を判断する。
【解決手段】自律走行する車両1を制御する車両制御装置20であって、車両1の進路上の人物52を検出する人物検出部44と、進路上から人物52が退避するのに要する退避時間を予測する退避時間予測部45と、車両1の、目的地までの経路決定を含む動作計画を生成する動作計画生成部40と、生成された動作計画に従って車両を制御する車両制御部41と、を備え、動作計画生成部40は、進路を迂回して目的地まで移動する迂回経路を生成するとともに、迂回経路を移動した場合の目的地までの所要時間とを算出し、算出結果と、退避時間予測部45の予測した予測退避時間と、に基づいて、人物52が進路上から退避するまで待機するか、進路を迂回経路に変更するか、を判断する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
進路を自律走行する車両を制御する車両制御装置であって、
前記車両の進路上の人物を検出する人物検出部と、
前記進路上から前記人物が退避するのに要する退避時間を予測する退避時間予測部と、
前記車両の、目的地までの経路決定を含む動作計画を生成する動作計画生成部と、
生成された前記動作計画に従って前記車両を制御する車両制御部と、を備え、
前記動作計画生成部は、前記進路を迂回して前記目的地まで移動する迂回経路を生成するとともに、該迂回経路を移動した場合の目的地までの所要時間を算出し、該算出の結果と、前記退避時間予測部の予測した予測退避時間と、に基づいて、前記人物が前記進路上から退避するまで待機するか、前記進路を前記迂回経路に変更するか、を判断する、
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記動作計画生成部は、前記人物が前記予測退避時間よりも早く前記進路上から退避した場合には、前記動作計画を変更して前記進路のまま走行を継続することを決定する、
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記退避時間予測部が、前記人物の位置、歩行速度、作業内容のいずれかを含む前記人物に関する情報に基づいて、前記予測退避時間を算出する、
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両制御装置であって、前記人物に対し退避要求を提示する退避要求提示部をさらに備える、
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記動作計画生成部は、前記車両が走行し得る作業エリアの地図情報および/または前記作業エリア内を走行する他の車両の位置、走行予定経路、作業実行状況、作業実行予定のいずれかを含む他の車両に関する情報を使用して、前記人物が前記進路上から退避するまで待機するか、または前記進路を前記迂回経路に変更するか、の判断を行うことを特徴とする、
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記動作計画生成部が生成した前記動作計画を、前記人物に対し通知する通知部をさらに備える、
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項7】
進路を自律走行する車両を制御する車両制御装置であって、
前記車両の進路上の人物を検出する人物検出部と、
前記人物または前記車両制御装置と通信可能に接続され、前記進路上から前記人物が退避するのに要する退避時間を予測可能な外部機器に対し、前記人物が前記進路上から退避するのに要する退避時間に関する情報を要求する退避時間要求部と、
前記人物または前記外部機器から、前記退避時間要求部に対する、前記退避時間に関する情報を含む返答情報を取得する退避時間取得部と、
前記車両の、目的地までの経路決定を含む動作計画を生成する動作計画生成部と、
生成された前記動作計画に従って前記車両を制御する車両制御部と、を備え、
前記動作計画生成部は、前記進路を迂回して前記目的地まで移動する迂回経路を生成するとともに、該迂回経路を移動した場合の目的地までの所要時間を算出し、該算出の結果と、前記返答情報と、に基づいて、前記人物が前記進路上から退避するまで待機するか、前記進路を前記迂回経路に変更するか、を判断する、
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両制御装置であって、
前記人物の退避または前記人物による前記退避時間に関する情報の提供が所定時間内に行われない場合に、前記退避時間要求部による前記要求の提示を再度実行する、
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項9】
請求項7に記載の車両制御装置であって、
前記退避時間要求部が前記人物または前記外部機器から取得した退避時間及び前記迂回経路を移動した場合の前記目的地までの所要時間が所定の閾値を超えている場合に、前記動作計画生成部は、前記車両が走行している作業エリア内に、該車両が実行中の作業を移行可能な他の車両が存在するか判定する、
ことを特徴とする車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動搬送車両や自律フォークリフト、自動走行搬送ロボット等の自律走行する車両の動作を制御する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特許文献1が知られている。特許文献1には、「自動走行作業において、作業者等の安全や周囲状況に配慮すると共に作業の効率を落とすことのない自律的な動作を判断する」ことを課題とし、解決手段として、「事前に記憶した清掃プランに基づいて自律的に走行し自動で清掃する自動走行清掃を実行可能な自律走行作業装置は、周囲情報入力部によって、自動走行清掃の実行中に1以上の周囲情報を入力し、代替動作生成部によって、1以上の周囲情報の入力タイミングおよび/または組合せからなる入力パターンに応じて、清掃プランに基づく走行および/または清掃に代わる代替動作を生成して実行する」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-181434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の方式においては、作業者等が共存する作業エリア内で自律的に動作する走行車両が、人のジェスチャや発話、作業指示看板等の周囲情報を取得し、周囲情報に応じて自律的に代替動作を生成して実行する。車両の走行経路上に存在する作業者から「ちょっと待って」「迂回して」等の指示が音声やジェスチャ等によって与えられると、あらかじめ記憶または学習させた動作パターンに従って、与えられた指示に応じた動作を生成して実行する。
【0005】
同一の作業エリア内で複数の走行車両を動作させる場合、車両間で走行経路が重複するなどして干渉する場合がある。複数の走行車両の位置や走行経路を把握していない作業者がある車両に迂回の指示を与え、当該の車両がその指示に従ったとき、迂回先で他の車両の走行経路と干渉し、長時間の走行停止を要し、作業効率が低下する可能性がある。また、作業者が「ちょっと待って」の指示を車両に与え、作業者が走行再開の許可を与えるまで車両が待機した場合、当該の車両による作業完了に要する所要時間が待機時間だけ増加する。このとき、効率低下の小さい迂回経路を使用可能であれば、作業者の指示に従わずに迂回した方がより短時間で作業を完了できる可能性がある。
【0006】
以上のことから、作業者から車両への迂回/待機等の指示は、車両による作業効率をかえって低下させる要因になり得るといえる。このような効率低下を発生させないためには、作業者が作業エリアの構造や複数車両の位置、走行経路等を十分に把握し適切な指示を車両に与える必要があるが、作業者にとって大きな負担となる。
【0007】
本発明は上記の課題に対し、作業者が共存する環境で自律的に作業を行う走行車両において、作業者が走行車両の走行経路に立ち入った場合に、作業者の安全を確保しつつ作業効率が低下しないように、作業者の状況に応じて自律的に動作を判断可能にすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題は、進路を自律走行する車両を制御する車両制御装置であって、車両の進路上の人物を検出する人物検出部と、進路上から人物が退避するのに要する退避時間を予測する退避時間予測部と、車両の、目的地までの経路決定を含む動作計画を生成する動作計画生成部と、生成された動作計画に従って車両を制御する車両制御部と、を備え、動作計画生成部は、進路を迂回して目的地まで移動する迂回経路を生成するとともに、迂回経路を移動した場合の目的地までの所要時間とを算出し、算出の結果と、退避時間予測部の予測した予測退避時間と、に基づいて、人物が進路上から退避するまで待機するか、進路を迂回経路に変更するか、を判断することにより、解決が可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業者が共存する環境で自律的に作業する走行車両において、走行車両の進路上に存在する人物が退避するまでに要する時間を取得し、自律的に待機/迂回/走行再開を判断することで、作業者を回避する際に発生する効率低下を防止することを可能とする。
本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例1及び2における、自律走行車両の構成例を示す図。
図2】本発明の実施例1及び2における、自律走行車両の制御系統の構成例を示す図。
図3】本発明の実施例1における、車両制御装置の処理を示すブロック図。
図4】本発明の実施例1における、自律走行車両の走行経路を示す図。
図5】本発明の実施例1における、人物検出部が進路上に人物を検出した後に車両制御装置が実行する処理フローを示す図。
図6】本発明の実施例2における、車両制御装置の処理を示すブロック図。
図7】本発明の実施例2における、自律走行車両の走行経路を示す図。
図8】本発明の実施例2における、人物検出部が進路上に人物を検出した後に車両制御装置が実行する処理フローを示す図。
図9】本発明の実施例3における、車両制御装置の処理を示すブロック図。
図10】本発明の実施例3における、自律走行車両の走行経路を示す図。
図11】本発明の実施例3における、人物検出部が進路上に人物を検出した後に車両制御装置が実行する処理フローを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施例1]
以下、本発明に係る実施例について図面を用いて説明する。以下の実施例は、本発明に適した一つの具体例であり、本発明の適用が可能な技術範囲はこれらの様態に限定されない。例えば、以下の実施例は自律走行が可能なフォークリフトを例に本発明の実施例を説明しているが、AGV(Automated Guided Vehicle)やAMR(Autonomous Mobile Robot)等の搬送機器の他、人が共存する環境で自律的に走行する機器全般に適用可能である。
【0012】
図1に、本発明の一実施例による自律走行車両1(以下、車両1と称することもある)の構成例を示す。自律走行車両1はタイヤ2などの走行機構と、所定の作業を実行するためのフォーク3やマスト4等からなる作業機構を備える。車両1に設置された前方センサ5や後方センサ6により、車両1の周囲に存在する作業員や障害物を検出する。パネル7や表示灯8、スピーカ9を設置することで、車両1の状態(走行中、荷役動作実行中等)や動作の予定(走行開始、後退、旋回等)を周囲に通知することを可能とする。また、マイク10やカメラ11を設置することで、車両1周辺の作業員が発する音声や振る舞い、車両1周辺の状態を観測することを可能とする。また、タッチパネル12を操作することで、車両1に対し直接指示を入力することが可能である。
【0013】
図2に、自律走行車両1の制御系統の構成例を示す。車両制御装置20は、CPU21やメモリ22、入出力処理部23、通信部24などから構成され、自律走行車両1の走行や作業を実行するための指令を生成する。タイヤ2やブレーキ25を制御する走行機構PLC(Programmable Logic Controller)26とフォーク3やマスト4を制御する作業機構PLC27は、車両制御装置20による指令に基づき制御を実行する。前述の周辺検出手段28(前方センサ5、後方センサ6)と情報入力手段29(マイク10、カメラ11、タッチパネル12)から得られたデータは車両制御装置20に送信される。前述の情報出力手段30(パネル7、表示灯8、スピーカ9)で出力されるデータは車両制御装置20から送信される。車両制御装置20は通信モジュール31を介して管制サーバ32と通信し作業指示を受け取る。自車両1以外の他車両33の位置や走行経路、作業実行状況や、作業エリアに設置されたインフラセンサ34や作業員が所持するビーコン35から得られる作業員の位置情報や状態なども、管制サーバ32から入手することが可能である。
【0014】
本発明の第実施例1における車両制御装置が行う処理の概要を図3に、自律走行車両1の走行経路を図4に示す。動作計画生成部40は、管制サーバ32から与えられる作業指示に従って、車両1の走行経路を決定し動作計画を生成する。例えば、図4に示すように、管制サーバ32からの作業指令として目的地50での荷物ピックアップが指示された場合、動作計画生成部40は目的地50までの走行経路51を生成する。車両制御部41は、動作計画生成部40が生成した動作計画に従って、走行機構42および作業機構43を制御する。
【0015】
人物検出部44は、周辺検出手段28から得られる観測データを使用して、車両1の進路上に存在する人物(作業エリア内で作業している作業者)52を検出する。車両制御部41は、人物52の検出を受け、衝突を防止するために車両を停止させる。退避時間予測部45は、人物52が車両の進路上から退避するのに要する退避時間を予測する。動作計画生成部40は、退避時間予測部45で予測した退避時間を使用して、人物52が退避するまで待機し現状の走行経路51を継続して走行する場合の目的地50までの所要時間と、走行経路を迂回経路53に変更して走行する場合の目的地50までの所要時間とを比較し、より所要時間が短くなるように待機または迂回するかを判断する。
【0016】
車両制御部41は、動作計画生成部40によって修正された動作計画に従って車両を制御する。進路上の人物52が退避するまでに要する時間、すなわち車両1が停止して待機しなければならない時間を予測し、待機時間が長くなることが予想される場合には迂回することで、車両1の停止時間を削減し作業効率を向上する。ここで、車両1の接近後すぐに人物52が退避した場合や、予測した退避時間が経過する前に人物52が退避した場合、車両1はすぐに走行を再開してよい。これにより、不要な待機時間を削減することが可能である。
【0017】
退避時間予測部45における退避時間の予測には、人物52の位置、歩行速度、作業内容等の情報や、人物52周辺に存在する物体の位置、大きさ、重量、特性、個数、状態状況等の情報を使用する。人物に関する情報の例として、人物が荷物が保管されている棚の付近にいる(位置)、人物が立ち止まっている(歩行速度)、人物が荷物を持っていたり台車を押している(作業内容)場合などは、人物は作業中であり退避に一定の時間を要することが予測できる。
【0018】
一方、人物が周辺に物体のない広い通路にいる(位置)、人物が歩行している(歩行速度)場合などは、人物は移動中もしくは特に作業をしていない状態でありすぐに退避が可能であることが予測できる。また、人物周辺の物体に関する情報の例として、人物から離れた場所に荷物がある(位置)、人物周辺に大きい荷物がある(大きさ)、人物周辺に重量物がある(重量)、人物周辺に薬品や危険物等の取扱いに注意が必要な荷物がある(特性)、人物周辺に多数の荷物が散乱している(個数)、人物周辺に梱包が解かれた荷物がある(状態)場合などには、それらの荷物の撤収に時間を要しすぐには退避できないことが予想できる。反対にこれらの荷物が存在しない場合は、人物は短時間で退避可能であることが予想できる。これら人物周辺の物体に関する情報は、人物が行っている作業内容と関連付けて記憶され得る。
【0019】
退避要求提示部46では、人物検出部44による人物52の検出を受け、情報出力手段30を使用して人物52に対し進路上からの退避を要求するための情報(退避要求)54を提示する。スピーカ9を使用する場合、「退避してください」等の音声を出力する。音声による要求提示は車両を視認していない人物に対し有効である。パネル7を使用する場合、画面上に「退避してください」等のメッセージを表示する。表示灯8を使用する場合、あらかじめ周知された表示灯の表示パターンのうち、退避要求に該当するパターンを表示する。メッセージ表示や表示灯による退避要求は、騒音の大きい場所や耳栓をしている人物に対し有効である。
【0020】
また、プロジェクタを使用し、路面等に「退避してください」のようなメッセージを表示したり、人物の退避先として推奨される方向を矢印等で図示したりすることも可能である。また、作業員の位置情報計測のため作業員がビーコン35を所持している場合、ビーコン35に音声出力機能や画面表示機能等を搭載することで要求を通知してもよい。ビーコン35による要求通知は、遠方にいるなどして車両からの音声や表示による要求が難しい人物への要求に有効である。車両1の進路上の人物52に対し以上の手段を使用して積極的に退避を要求することで、人物52による車両接近に対する気づきや退避の遅れを防止し、車両1の作業効率を向上する。
【0021】
通知部47では、動作計画生成部40による待機/迂回/走行再開の判断結果を、情報出力手段30を使用して進路上の人物52に対し通知55を行う。通知方法は前述の退避要求提示部46による要求提示と同様に、スピーカ9による音声や、パネル7、表示灯8、プロジェクタによる表示、ビーコン35による通知が可能である。人物52の退避までの間車両1が待機する場合は、「退避するまで待機します」等のメッセージや該当する表示パターンを出力する。迂回する場合は、「迂回します」等のメッセージや該当する表示パターンを出力する。走行再開する際は、「走行を開始します」等のメッセージや該当する表示パターンを出力する。進路上の人物52に対し車両1の今後の動作を事前に通知することにより、人物52が車両1の動作を予測できずに発生する衝突等の危険を回避する。
【0022】
動作計画生成部40で待機を判断し、退避時間予測部45で予測した退避時間を経過しても人物52が退避しなかった場合は、退避要求提示部46による退避要求54を再度実行する。人物52が退避要求54の提示や待機の通知55に気づかないなどして退避が遅れた場合、車両1による作業効率の低下に直結する。従って、人物52による退避が遅い場合に要求提示を再度実行し退避を催促することで、作業効率の低下を防止する。
【0023】
図5は、人物検出部44が進路上に人物52を検出した後に車両制御装置20が実行する処理フローを示す図である。ステップ60で、車両制御部41において走行機構42を制御し車両1の走行を停止する。ステップ61で、退避要求提示部46において退避要求54を出力する。
【0024】
ステップ62で、退避時間予測部45において人物52が退避に要する時間を予測する。シミュレーションや機械学習等によってあらかじめ作成・記録された予測モデル63を使用し、人物52の位置や動作等の情報や人物周辺に存在する物体に関する情報64を入力として、人物52の退避時間を予測する。
【0025】
ステップ65で、動作計画生成部40において、予測した人物52の退避時間を使用して、人物52が退避するまで待機しその後走行を再開した場合の目的地50までの所要時間を算出する。
【0026】
ステップ66で、人物52がいる場所を回避する迂回経路のうち目的地50までの所要時間が最短の経路を生成し、所要時間を算出する。この時、管制サーバ32から作業エリアの地図情報や他車両33の位置、走行経路、作業実行状況等67を取得し、他車両33と干渉しない迂回経路53を生成する。図4に示すように、迂回経路53(a)(b)は自車両1が走行する同時刻に他車両33が走行予定のため、他車両33が走行しない迂回経路53(c)を生成する。後述のステップで迂回/待機を判断する際に、他車両33の走行に干渉しない迂回経路53(c)を使用して目的地50までの所要時間を比較することで、他車両33の影響で発生する効率低下を考慮した上で判断することが可能となる。
【0027】
ステップ68で、人物52の退避を待機した場合の所要時間と迂回経路53(c)を走行した場合の所要時間とを比較する。ステップ69で、迂回した場合の方が所要時間が短いと判断された場合は、ステップ70で、迂回経路53(c)を走行するよう動作計画を修正するとともに、人物52に対し迂回通知を出力する。
【0028】
ステップ72で、車両制御部41において迂回経路を使用して走行を再開する。待機した場合の方が所要時間が短くなる場合は、ステップ73で、人物52が退避するまで待機するとともに、人物52に対し待機通知74を出力する。ステップ75で、人物52が退避したと判断された場合には、走行を再開する。ステップ76で、人物52が退避しないまま、ステップ62で予測した退避時間を経過したと判定された場合は、ステップ77で、退避要求提示部46において再度退避要求54を出力する。
【0029】
以上説明した実施例1によれば、進路上の人物が退避に要する時間を予測し、目的地までの所要時間が短くなるよう迂回/待機および走行再開を判断することで、人物退避までの待機を回避またが待機時間を短縮し、車両の走行経路に人物が立ち入ることで発生する作業効率の低下を低減する。この時、他の車両の位置や走行経路も併せて考慮することで、迂回先で他車両と干渉して発生する効率低下を防止する。さらに、音声や表示を使用し進路上の人物に対し積極的に退避を働きかけることで、人物の退避動作の遅れを防止する。また、走行を再開する際の車両の動作を人物に通知することで、人物による車両の動作の予測を可能とし接触等の事故を防止することが可能になる。
【0030】
[実施例2]
本発明の実施例2における車両制御装置20が行う処理の概要を図6に、自律走行車両1の走行経路を図7に示す。人物検出部44、車両制御部41、通知部47の処理は実施例1と同様の処理であり、説明を省略する。
【0031】
本実施例が実施例1と異なる点は、退避時間要求部80及び退避時間取得部81をさらに有する点である。
【0032】
退避時間要求部80は、人物検出部44が検出した人物52に対し、情報出力手段30を使用して、人物52が退避するのに要する時間に関する情報の提供要求82を出力する。要求方法は、前述の退避要求提示部46および通知部47と同様に、スピーカ9やパネル7、ビーコン35等を使用して、「退避に要する時間を教えてください」等のメッセージや該当する表示パターンを出力する。
【0033】
退避時間取得部81は、人物52が、提供要求82に応じて情報入力手段29に入力した退避時間に関する返答情報83を人物52から取得する。人物52から取得する退避時間に関する返答情報は、必ずしも「○秒」「○分」のような数値でなくてよく、「1~2分」のような大きな粒度であったり、「大」「中」「小」のようにあらかじめ設定した選択肢から選択する形式であったり、「すぐに退避する」「退避できないから迂回して」のような情報や指示であってもよい。
【0034】
情報入力手段29としてマイク10を使用する場合、「1~2分かかります」「退避時間:中」等の人物の発話を音声として取得し、提示された退避時間情報や指示を識別する。タッチパネル12を使用する場合、画面に選択肢を表示し人物が押下するか、人物が数値等を入力する。カメラ11を使用する場合、人物52によるジェスチャ等を取得し、あらかじめ対応付けした退避時間情報や指示を識別する。ビーコン35を使用する場合は、ビーコン35にボタンを設置し人物が押下するなどしてもよい。
【0035】
動作計画生成部40は、退避時間取得部81により取得した退避時間に関する情報や指示に応じて、目的地50の所要時間が短くなるように待機/迂回/走行再開を判断する。実施例1における退避時間予測部45の精度が悪い場合、進路上の人物52の退避時間を適切に予測できず作業効率が低下するため、本実施例にように進路上の人物52から直接退避時間に関する情報を取得することで、待機/迂回/走行再開の判断による効率をより高い確度で向上させることが可能になる。
【0036】
退避時間取得部81において、人物52からの退避時間に関する返答情報83の提供が一定時間受けられなかった場合、退避時間要求部80による提供要求82を再度実行する。退避要求提示部46による退避要求54と同様に、人物52が気づかないなどして返答情報83の提供が遅れた場合、車両1による作業効率の低下に直結する。人物52による返答情報83の提供が遅い場合に提供要求82を再度実行し退避時間に関する返答情報83を催促することで、作業効率の低下を防止する。
【0037】
人物検出部44が人物52を検出した後に車両制御装置20が実行する処理フローを図8に示す。ステップ60、65、66、68、69、70、72、73、75、76、及び77は、実施例1と同様である。本実施例においてはさらに、ステップ84で、退避時間要求部80において、人物52に対し退避に要する時間に関する情報の提供要求82を出力する。
【0038】
ステップ86で、退避時間取得部81において、ステップ84に対する返答として退避時間に関する返答情報83を人物52から取得する(ステップ85で“Yes”)。退避時間に関する返答情報83が一定時間得られなかった場合(ステップ85で“No”)、ステップ84に戻り退避時間に関する情報を再度要求する。
【0039】
以上説明した実施例2では、進路上の人物から退避に要する時間の情報を直接取得することで、実施例1で必要な退避時間予測を避け、より確実に効率低下を低減する。また、本実施例を用いて得られた退避時間と、人物等に関する情報を蓄積し、機械学習等を行うことで、実施例1で用いた予測モデルの精度を向上させることも可能になる。
【0040】
[実施例3]
本発明の実施例3における車両制御装置20が行う処理の概要を図9に、自律走行車両1の走行経路を図10に示す。本実施例においても、人物検出部44、退避要求提示部46、車両制御部41、及び通知部47が行う処理は実施例1および実施例2と同様であり、説明を省略する。
【0041】
本実施例が実施例1及び実施例2と異なる点は、退避時間要求部80が、人物52に対してではなく、管制サーバ32に対して、退避時間に関する情報の提供を要求する点である。
【0042】
本実施例において退避時間要求部80は、管制サーバ32等の外部機器に対し、人物検出部44が検出した進路上の人物52に関して、人物52が退避するのに要する時間に関する情報の提供を要求する。管制サーバ32は、インフラセンサ34やビーコン35から取得した人物52の位置や動作、人物周辺の物体に関する情報から、退避時間予測部45と同様に、人物52が退避に要する時間を予測する。
【0043】
退避時間取得部81は、退避時間要求部80に対する返答情報として、管制サーバ32から人物52の退避時間に関する情報を取得する。人物52の退避時間の予測に計算量を要する場合、車両1が搭載する車両制御装置20上で予測するにはリソースが不足する可能性があるため、管制サーバ32等の外部機器で予測を行いその結果を車両制御装置20に提供することで、車両制御装置20の使用可能な計算量を圧迫することなく予測を行うことを可能とする。
【0044】
動作計画生成部40は、退避時間取得部81により取得した退避時間に関する情報に従って、目的地50の所要時間が短くなるように待機/迂回/走行再開を判断する。この点は実施例2と同様である。
【0045】
ここで、動作計画生成部40により生成された動作計画を実行した場合に、迂回/待機ともに大きな効率低下が発生する場合を考える。例として、予測した人物52の退避時間が非常に待機時間が長くなる場合、選択し得る迂回経路53の多くに他車両33が存在し効率が大きく低下する迂回経路53(c)のみが選択可能である場合などが挙げられる。これらの大きな効率低下により実行中の作業の完了が遅れることを防ぐため、自車両1に代わって作業を実行可能な他車両86に作業を移行する。作業の移行は管制サーバ32を介して実行可能である。これにより、複数車両を有効活用して作業効率の大きな低下を防止することが可能である。
【0046】
人物検出部44が人物52を検出した後に車両制御装置20が実行する処理フローを図11に示す。ステップ60、65、66、68、69、70、72、73、74、75、76、及び77は、実施例1および実施例2と同様である。
【0047】
本実施例においてはさらにステップ90において、退避時間要求部80が、管制サーバ32に対し、人物52が退避に要する時間に関する情報の要求91を出力する。ステップ92において、退避時間取得部81が、ステップ92に対する返答として退避時間に関する情報93を管制サーバ32から取得する。
【0048】
ステップ65及び66で算出した目的地50までの所要時間が迂回/待機ともに一定時間を超える場合(ステップ94で“No”)、動作計画生成部40は自車両1に代わって作業を実行可能な他車両86が存在するかを判定し、他の車両が存在する場合(ステップ95で“Yes”)は、ステップ96で自車両1が実行中の作業を他車両86に移行する。そしてステップ97で、動作計画生成部40は、現地点からの撤収または次に予定されている作業を実行するための動作計画を生成し、ステップ72で車両の走行を再開する。
【0049】
以上説明した実施例3では、車両上でなくサーバ等の外部機器による退避時間予測を可能とすることで、車両制御装置の処理負荷を低減するとともに予測精度の向上が期待できる。さらに、動作計画生成部40により生成された動作計画の実行が、非常に大きな効率低下を生じさせてしまうような場合には、実行を移行可能な他車両を検索し、動作を移行することで、システム全体として効率低下を抑制することが可能になる。
【0050】
以上で説明した本発明の実施例によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)本発明の一実施例に係る車両制御装置は、車両の進路上の人物を検出する人物検出部と、進路上から人物が退避するのに要する退避時間を予測する退避時間予測部と、車両の、目的地までの経路決定を含む動作計画を生成する動作計画生成部と、生成された動作計画に従って車両を制御する車両制御部と、を備え、動作計画生成部は、進路を迂回して目的地まで移動する迂回経路を生成するとともに、迂回経路を移動した場合の目的地までの所要時間とを算出し、算出の結果と、退避時間予測部の予測した予測退避時間と、に基づいて、人物が進路上から退避するまで待機するか、進路を迂回経路に変更するか、を判断する。
【0051】
上記構成により、作業者が共存する環境で自律的に作業する走行車両において、走行車両の進路上に存在する人物が退避するまでに要する時間を取得し、自律的に待機/迂回/走行再開を判断することで、作業者を回避する際に発生する効率低下を防止することを可能とする。
【0052】
(2)動作計画生成部は、人物が予測退避時間よりも早く進路上から退避した場合には、動作計画を変更して進路のまま走行を継続することを決定する。これにより、退避時間予測部が用いた予測モデルの精度が低かった場合や、人物による作業が想定よりも早く終了した場合等、予測時間が正確に算出されなかった場合でも迅速かつ的確に対応することが可能になる。
【0053】
(3)退避時間予測部が、人物の位置、歩行速度、作業内容のいずれかを含む人物に関する情報に基づいて、予測退避時間を算出する。これにより、予めこれらの情報を記憶させておくことで、種々の値をパラメータとして使用でき、予測精度が向上する。
【0054】
(4)人物に対し退避要求を提示する退避要求提示部をさらに備える。これにより、人物が、予測された退避時間を経過しても進路上に存在している場合に、該予測された経過時間を徒過していることや、車両の存在について認識させ、迅速な退避を促すことが可能になる。
【0055】
(5)動作計画生成部は、車両が走行し得る作業エリアの地図情報および/または作業エリア内を走行する他の車両の位置、走行予定経路、作業実行状況、作業実行予定のいずれかを含む他の車両に関する情報を使用して、人物が進路上から退避するまで待機するか、または進路を迂回経路に変更するか、の判断を行うことを特徴とする。これにより、(3)と同様に、予めこれらの情報を記憶させておくことで、種々の値をパラメータとして使用でき、予測精度が向上する。
【0056】
(6)動作計画生成部が生成した動作計画を、人物に対し通知する通知部をさらに備える。これにより、作業中の人物が、車両が今後どのように挙動するのか把握することが可能になり、例えば車両が迂回するのであれば作業の変更・追加することを検討し、車両が待機するのであれば作業の一部を割愛して迅速に作業を終了させる等、種々の選択肢を提供することが可能になる。
【0057】
(7)また、本発明の他の実施例に係る車両制御装置は、車両の進路上の人物を検出する人物検出部と、人物、または車両制御装置と通信可能に接続され、進路上から人物が退避するのに要する退避時間を予測可能な外部機器に対し、人物が進路上から退避するのに要する退避時間に関する情報を要求する退避時間要求部と、人物または外部機器から、退避時間要求部に対する、退避時間に関する情報を含む返答情報を取得する退避時間取得部と、車両の、目的地までの経路決定を含む動作計画を生成する動作計画生成部と、生成された動作計画に従って車両を制御する車両制御部と、を備え、動作計画生成部は、進路を迂回して目的地まで移動する迂回経路を生成するとともに、該迂回経路を移動した場合の目的地までの所要時間を算出し、該算出の結果と、返答情報と、に基づいて、人物が進路上から退避するまで待機するか、進路を迂回経路に変更するか、を判断する。
【0058】
上記構成により、進路上の人物から退避に要する時間の情報を直接取得することで、実施例1で必要な退避時間予測を避け、より確実に効率低下を低減する。また、本実施例を用いて得られた退避時間と、人物等に関する情報を蓄積し、機械学習等を行うことで、実施例1で用いた予測モデルの精度を向上させることも可能になる。
【0059】
(8)人物の退避または人物による退避時間に関する情報の提供が所定時間内に行われない場合に、退避時間要求部による要求の提示を再度実行する。これにより、例えば人物が最初の提示に気づいていない場合等に、そのまま無駄な時間が経過してしまうことを防止できる。
【0060】
(9)退避時間要求部が人物または外部機器から取得した退避時間及び迂回経路を移動した場合の目的地までの所要時間が所定の閾値を超えている場合に、前記動作計画生成部は、前記車両が走行している作業エリア内に、該車両が実行中の作業を移行可能な他の車両が存在するか判定する。これにより、生成された動作計画の実行が、非常に大きな効率低下を生じさせてしまうような場合には、実行を移行可能な他車両を検索し、動作を移行することで、システム全体として効率低下を抑制することが可能になる。
【0061】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1:自律走行車両、20:車両制御装置、28:周辺検出手段、29:情報入力手段、30:情報出力手段、31:通信モジュール、32:管制サーバ、33:他車両、40:動作計画生成部、41:車両制御部、44:人物検出部、45:退避時間予測部、46:退避要求提示部、47:通知部、50:目的地、51:走行経路、52:進路上の人物、53:迂回経路、54:退避要求、55:通知、80:退避時間要求部、81:退避時間取得部、83:返答情報、93:退避時間情報、86:作業移行が可能な他車両
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