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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087295
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/44 20060101AFI20230616BHJP
   F01D 17/10 20060101ALI20230616BHJP
   F16K 1/36 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
F16K1/44 B
F01D17/10 F
F16K1/36 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201602
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 勉
(72)【発明者】
【氏名】竹丸 竜平
(72)【発明者】
【氏名】二森 都
【テーマコード(参考)】
3G071
3H052
【Fターム(参考)】
3G071BA22
3H052AA01
3H052BA11
3H052BA33
3H052CA01
3H052CA02
3H052CA12
3H052CB01
3H052CC03
3H052CD03
3H052EA05
(57)【要約】
【課題】騒音および振動の発生を低減可能な弁装置を提供する。
【解決手段】実施形態の弁装置において、弁ケーシングは、流体が内部流路を介して弁ケーシング出口に流れる。弁座は、内部流路に設置され、流体が弁孔を通過する。第1弁体は、内部流路において第1弁棒に連結されており、内部流路のうち弁座よりも第2の側に位置する空間で軸方向に沿って移動する。第2弁体は、内部流路において第2弁棒に連結されており、内部流路のうち弁座よりも第2の側に位置する空間で軸方向に沿って移動する。ここでは、第2弁体は、基体部と円筒部とを有する。基体部は、第1弁体よりも第2の側に位置する。円筒部は、基体部よりも第1の側に設置されており、第1弁体を内部に収容する。そして、第1弁体は、第1の側に位置する面に凹部が第1弁棒を囲うように形成され、凹部の縁辺部分にエッジを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が弁ケーシング入口から内部流路を介して弁ケーシング出口に流れるように構成された弁ケーシングと、
前記内部流路に設置され、前記流体が弁孔を通過するように構成された弁座と、
前記弁座の中心軸線と同軸に設けられ、前記弁座の前記弁孔を貫通する部分を含むように、前記中心軸線に沿った軸方向のうち第1の側へ延在している第1弁棒と、
前記弁座の中心軸線と同軸に設けられ、前記軸方向のうち前記第1の側に対して反対側に位置する第2の側へ延在している第2弁棒と、
前記内部流路において前記第1弁棒に連結されており、前記内部流路のうち前記弁座よりも前記第2の側に位置する空間で前記軸方向に沿って移動するように構成された第1弁体と、
前記内部流路において前記第2弁棒に連結されており、前記内部流路のうち前記弁座よりも前記第2の側に位置する空間で前記軸方向に沿って移動するように構成された第2弁体と
を備える弁装置であって、
前記第2弁体は、
前記第1弁体よりも前記第2の側に位置する基体部と、
前記基体部よりも前記第1の側に設置されており、前記第1弁体を内部に収容するように構成されている円筒部と
を有し、
前記第1弁体は、前記第1の側に位置する面に凹部が前記第1弁棒を囲うように形成され、前記凹部の縁辺部分にエッジを備える、
弁装置。
【請求項2】
前記弁座は、
前記第1弁体が当接する第1当接部位を含む第1弁座面と、
前記第1弁座面よりも外周側に位置し、前記第2弁体が当接する第2当接部位を含む第2弁座面と
を有し、
前記第1弁座面および前記第2弁座面は、前記第1の側に向かうに伴って前記中心軸線に近づくように形成されており、
前記第1弁座面は、前記中心軸線を含む断面において、曲線状であり、
前記第2弁座面は、前記中心軸線を含む断面において、直線状である、
請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記エッジと前記中心軸線との間の距離R21、および、前記第1当接部位と前記中心軸線との間の距離D1は、下記(式1)に示す関係を満たす、
請求項2に記載の弁装置。
0.90D1≦R21≦D1 ・・・(式1)
【請求項4】
前記凹部は、
前記第1の側の一端が第2の側の他端よりも外周側に位置するように記軸方向に対して傾斜する傾斜面
を有し、
前記エッジは、前記傾斜面のうち前記第1の側の端部であり、
前記凹部の深さhは、下記(式2)に示す関係を満たし、
前記傾斜面が前記軸方向に対して傾斜する角度θは、下記(式3)に示す関係を満たす、
請求項1から3のいずれか記載の弁装置。
h≦15mm ・・・(式2)
θ=45° ・・・(式3)
【請求項5】
前記第1弁体は、タービンへ作動媒体として導入される流体の流量を加減する加減弁として用い、
前記第2弁体は、タービンへ作動媒体として導入される流体の流れを許可または遮断する止め弁として用いられる、
請求項1から4のいずれかに記載の弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、蒸気タービンを備えた発電設備においては、ボイラで生成された蒸気が高圧側蒸気弁を介して高圧タービンに供給される。高圧側蒸気弁は、主蒸気止め弁と蒸気加減弁とで構成されており、高圧タービンの回転速度を制御する等の主要な制御は、蒸気加減弁が微小な開度である状態で行われる。高圧側蒸気弁は、主蒸気止め弁と蒸気加減弁とが別体で構成されて直列に配置される場合の他に、製造コストを低減するために、両者が一体化された組み合わせ型弁として構成される場合がある。
【0003】
また、高圧タービンから排出された蒸気は、ボイラで再加熱された後に、再熱蒸気弁を介して中圧タービンに供給される。再熱蒸気弁は、再熱蒸気止め弁とインターセプト弁とで構成されており、中圧タービンの回転速度を制御する等の主要な制御は、インターセプト弁が微小な開度である状態で行われる。再熱蒸気弁は、再熱蒸気止め弁とインターセプト弁とは別体で構成されて、直列に配置される場合もある他に、製造コストを低減するために、両者が一体化された組み合わせ型弁として構成される場合がある。
【0004】
コンバインドサイクルプラント等の発電設備の場合においても、高圧側蒸気弁および再熱側蒸気弁として、上記のような組み合わせ型蒸気弁が用いられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4185029号公報
【特許文献2】特許第5022853号公報
【特許文献3】特開2020-204362
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図12は、関連技術に係る組み合わせ型蒸気弁である弁装置30Jを示す断面図である。図12は、弁装置30Jの斜視図であって、弁座50の中心軸線Lに沿った軸方向LDと、その軸方向LDに直交する方向とで規定される面の一部について断面を併せて示している。軸方向LDは、例えば、鉛直方向に沿っている。
【0007】
図12に示すように、関連技術に係る組み合わせ型蒸気弁である弁装置30Jは、弁座50と第1弁体34と第2弁体35とを含む。
【0008】
弁座50は、弁ケーシング(図示省略)の内部に設置され、流体である蒸気が弁孔51を通過するように構成されている。
【0009】
第1弁体34は、弁ケーシング(図示省略)の内部において、弁座50よりも上側US(第2の側)に位置する空間で軸方向LDに沿って移動するように構成されている。第1弁体34は、円板状であって、弁座50の中心軸線Lと同軸に設けられている。第1弁体34は、軸方向LDにおいて下側DS(第1の側)へ延在している第1弁棒37に連結されており、第1弁棒37の操作によって全閉状態にされるときには、第1弁体34が弁座50に当接する。
【0010】
第2弁体35は、第1弁体34と同様に、弁座50よりも上側USに位置する空間で軸方向LDに沿って移動するように構成されている。第2弁体35は、第1弁体34と異なり、基体部35aと円筒部35bとを含む。
【0011】
第2弁体35において、基体部35aは、円板状であって、第1弁体34よりも上側USに位置している。基体部35aは、軸方向LDにおいて上側USへ延在している第2弁棒(図示省略)に連結されている。第2弁体35において、円筒部35bは、円筒形状であって、基体部35aよりも下側DSに位置しており、弁座50の中心軸線Lと同軸に設けられている。第2弁体35では、基体部35aおよび円筒部35bが一体に形成されている。
【0012】
また、第2弁体35は、基体部35aよりも下側DSであって円筒部35bの内部に位置する空間に、第1弁体34を収容するように形成されている。そして、第2弁体35は、全閉状態にされるときには、弁座50において第1弁体34が当接する部分よりも外周側に位置する部分に円筒部35bの先端部分が当接する。
【0013】
関連技術において、第1弁体34は、例えば、主蒸気止め弁や再熱蒸気止め弁として用いられる。そして、第2弁体35は、蒸気加減弁やインターセプト弁として用いられる。このため、発電設備において蒸気タービンの回転速度を制御する際には、図12に示すように、主蒸気止め弁等として機能する第1弁体34を全開状態にした状態で、蒸気加減弁等として機能する第2弁体35の開度を制御する。これにより、第2弁体35の円筒部35bの先端部分と弁座50との間を流れる蒸気の流量が調整される。
【0014】
図13は、関連技術に係る組み合わせ型蒸気弁である弁装置30Jの一部断面図である。図13では、図12に示す場合と同様に、主蒸気止め弁等として機能する第1弁体34を全開状態にした状態で、蒸気加減弁等として機能する第2弁体35の開度を制御するときの様子を模式的に示している。つまり、蒸気タービンの速度等の主要な制御について、第2弁体35を微小開度(例えば、弁シート径に対して3%から5%)で運用する場合を示している。なお、図13では、断面にハッチングを付すことを省略している。
【0015】
図13に示すように、第2弁体35の円筒部35bの先端部分と弁座50との間は、微小であるため、その両者の間を通過した蒸気ASは、噴流となって、弁座50の面に沿って内周側へ流れる。蒸気ASは、弁座50の面に付着するように流れ、蒸気ASの流速が増大する。その結果、第1弁体34よりも下側DSに位置する空間においては、複数種の再循環流れAC1,AC2,AC3が発生する。
【0016】
具体的には、再循環流れAC1は、弁座50の弁孔51の内部であって、第1弁体34に連結された第1弁棒37の周囲に位置する空間に発生する。再循環流れAC1は、弁座50の面に近い外周側では下側DSへ向かい、弁座50の面から遠い内周側では上側USへ向かうように回転して流れる。
【0017】
そして、再循環流れAC2,AC3は、第2弁体35の円筒部35bの内部のうち第1弁体34よりも下側DSに位置する空間であって、再循環流れAC1が生じた部分よりも上側USに位置する空間に発生する。再循環流れAC2は、再循環流れAC3よりも内周側に発生し、再循環流れAC1と逆の方向に回転して流れる。再循環流れAC3は、再循環流れAC2よりも外周側に発生し、再循環流れAC1と同じ方向に回転して流れる。
【0018】
そして、第2弁体35の円筒部35bの内部のうち第1弁体34よりも上側USに位置する閉空間101においては、再循環流れAC3によって圧力の変動が生ずる。
【0019】
空間に生じる圧力変動に関して、具体的に説明する。
【0020】
空間に生じる圧力変動は、波動方程式によって表現される。具体的には、波動方程式は、半径方向(r)と周方向(θ)と軸方向(z)とで規定される円筒座標系(r,θ,z)では、下記の(式i)で示される。(式i)において、pは、圧力であり、cは、音速である。
【0021】
【数1】
【0022】
(式i)の解は、直交多項式であって、ベッセル関数およびノイマン関数で表される。ただし、ノイマン関数は、rがゼロである場合(r=0)、無限大に発散するので、解としては不適当である。波動方程式は、音速で伝播するため、振動数は、音響固有振動数と呼ばれ、モードは、音響モードと呼ばれる。
【0023】
単純な円筒空間(半径:r、長さ:L)では、音響固有振動数Fは、下記の(式ii)で示される。軸方向次数をiとし、半径方向次数をjとし、周方向次数をkとしたとき、λjkは、k次ベッセル関数のj番目の極値となる変数xの値である。
【0024】
【数2】
【0025】
λjkの一部(低値)は、以下の表に示される値である。
【0026】
【表1】
【0027】
図14Aから図14Cは、圧力振動モードの図を示している。各図において、「P」は、圧力が高いことを示し、「P」は、圧力が低いことを示している。また、破線は、圧力が一定であることを示す線である。
【0028】
図14Aでは、j=0およびk=1である場合の圧力振動モードを示している。図14Bでは、j=0およびk=2である場合の圧力振動モードを示している。図14Cでは、j=0およびk=1である場合(図14A参照)の圧力振動モードについて、時間に応じて変化する様子を示している。図14Cにおいては、圧力が高い部分と圧力が低い部分とが時間に応じて交互に現れる定在波を示している。
【0029】
このため、図13に示したように、第2弁体35の円筒部35bの内部のうち第1弁体34よりも上側USに位置する閉空間101においては、再循環流れAC3による圧力の変動に伴って、閉空間101のうち下側DSに位置する外周端が励起される。このため、閉空間101では、周1次モード等の音響モードが現れ、振動や騒音が発生する場合がある。
【0030】
図15は、関連技術に係る組み合わせ型蒸気弁である弁装置30Jに関する振動のパワースペクトルを示す図である。図15において、横軸は、振動の周波数を示し、パワースペクトルを示している。
【0031】
図15に示すように、関連技術に係る弁装置30Jに関する振動のパワースペクトルには、卓越ピークPK1および卓越ピークPK2が含まれる。卓越ピークPK1は、λ01(λjk,j=0,k=1)の音響固有振動数に一致し、卓越ピークPK2は、λ02(λjk,j=0,k=2)の音響固有振動数に一致している。
【0032】
このように、関連技術の弁装置30Jにおいては、振動や騒音が発生する場合がある。
【0033】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、騒音および振動の発生を低減可能な弁装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
実施形態の弁装置は、弁ケーシングと弁座と第1弁棒と第2弁棒と第1弁体と第2弁体とを備える。弁ケーシングは、流体が弁ケーシング入口から内部流路を介して弁ケーシング出口に流れるように構成されている。弁座は、内部流路に設置され、流体が弁孔を通過するように構成されている。第1弁棒は、弁座の中心軸線と同軸に設けられ、弁座の弁孔を貫通する部分を含むように、中心軸線に沿った軸方向のうち第1の側へ延在している。第2弁棒は、弁座の中心軸線と同軸に設けられ、軸方向のうち第1の側に対して反対側に位置する第2の側へ延在している。第1弁体は、内部流路において第1弁棒に連結されており、内部流路のうち弁座よりも第2の側に位置する空間で軸方向に沿って移動するように構成されている。第2弁体は、内部流路において第2弁棒に連結されており、内部流路のうち弁座よりも第2の側に位置する空間で軸方向に沿って移動するように構成されている。ここでは、第2弁体は、基体部と円筒部とを有する。基体部は、第1弁体よりも第2の側に位置する。円筒部は、基体部よりも第1の側に設置されており、第1弁体を内部に収容するように構成されている。そして、第1弁体は、第1の側に位置する面に凹部が第1弁棒を囲うように形成され、凹部の縁辺部分にエッジを備える。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、実施形態に係る発電設備1を模式的に示す図である。
図2図2は、実施形態に係る弁装置30を示す断面図である。
図3図3は、実施形態に係る弁装置30を示す斜視図(一部断面を含む図)である。
図4図4は、実施形態に係る弁装置30の一部を拡大して示す断面図である。
図5図5は、実施形態に係る弁装置30の弁座50を示す斜視図(一部断面を含む)である。
図6図6は、実施形態に係る弁装置30の弁座50を示す断面図である。
図7図7は、実施形態に係る弁装置30の一部を拡大して示す断面図である。
図8図8は、実施形態に係る弁装置30において、第2弁体35の第2外周曲面44と弁座50の第2弁座面55との間の隙間Gの出口における流路断面を示す図である。
図9図9は、実施形態に係る弁装置30の一部を拡大して示す断面図である。
図10図10は、実施形態に係る弁装置30における蒸気の流れを模式的に示す断面図である。
図11図11は、本実施形態の弁装置30に関する振動のパワースペクトルを示す図である。
図12図12は、関連技術に係る組み合わせ型蒸気弁である弁装置30Jを示す断面図である。
図13図13は、関連技術に係る組み合わせ型蒸気弁である弁装置30Jの一部断面図である。
図14A図14Aは、圧力振動モードの図を示している(j=0,k=1)。
図14B図14Bは、圧力振動モードの図を示している(j=0,k=2)。
図14C図14Cは、圧力振動モードの図を示している(時間変化)。
図15図15は、関連技術に係る組み合わせ型蒸気弁である弁装置30Jに関する振動のパワースペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[A]発電設備
図1は、実施形態に係る発電設備1を模式的に示す図である。図1では、発電設備1が火力発電設備である場合について例示している。
【0037】
発電設備1は、図1に示すように、ボイラ2、タービン3、発電機4、高圧側蒸気弁V10、および、再熱側蒸気弁V20を備える。本実施形態では、タービン3は、高圧タービン3a、中圧タービン3b、および、低圧タービン3cを含み、ボイラ2で生成された蒸気が作動媒体として供給されることにより駆動する。高圧側蒸気弁V10は、主蒸気止め弁V11と蒸気加減弁V12とを含み、再熱側蒸気弁V20は、再熱蒸気止め弁V21とインターセプト弁V22とを含む。
【0038】
本実施形態の発電設備1では、ボイラ2で生成された蒸気は、主蒸気止め弁V11と蒸気加減弁V12とが設置されたラインP1(主蒸気管)を経由して、高圧タービン3aに作動流体として導入され、高圧タービン3aにおいて仕事を行う。そして、高圧タービン3aから排出された蒸気は、ラインP2(低温再熱蒸気管)を経由して、ボイラ2に供給され、再熱される。
【0039】
ボイラ2で再熱された蒸気は、再熱蒸気止め弁V21とインターセプト弁V22が設置されたラインP3(高温再熱蒸気管)を経由して、中圧タービン3bに作動流体として導入され、中圧タービン3bにおいて仕事を行う。そして、中圧タービン3bから排出された蒸気は、ラインP4(クロスオーバ管)を経由して、低圧タービン3cに作動流体として導入され、低圧タービン3cにおいて仕事を行う。そして、低圧タービン3cから排出された蒸気は、復水器11で凝縮される。
【0040】
復水器11で凝縮された水(復水)は、給水ポンプ12において昇圧される。給水ポンプ12で昇圧された水(給水)は、ボイラ2に戻される。
【0041】
発電設備1のタービン3は、高圧タービン3aと中圧タービン3bと低圧タービン3cとの間においてタービンロータが連結されており、蒸気の仕事によってタービンロータが回転する。そして、そのタービンロータの回転によって発電機4が駆動し、発電が行われる。
【0042】
既に述べたように、タービン3の回転速度等の主要な制御は、蒸気加減弁V12およびインターセプト弁V22が微小な開度である状態で行われる。
【0043】
[B]弁装置30の構成
図2および図3は、実施形態に係る弁装置30を示す図である。
【0044】
図2は、弁装置30において、弁座50の中心軸線Lに沿った軸方向LDと、その軸方向LDに直交する方向とで規定される面の断面を示している。図2では、第1弁体34および第2弁体35が弁座50から遠ざかっており、両者が全開状態である場合を示している。
【0045】
図3は、弁装置30の斜視図であって、図2に示す断面の一部を併せて示している。図3では、図2の場合と異なり、第1弁体34が弁座50に近づいて開度が小さい状態である場合を示すと共に、第2弁体35が弁座50から遠ざかって全開状態である場合を示している。
【0046】
本実施形態の弁装置30は、組み合わせ弁であって、例えば、主蒸気止め弁V11と蒸気加減弁V12とが一体化された高圧側蒸気弁V10、または、再熱蒸気止め弁V21とインターセプト弁V22とが一体化された再熱側蒸気弁V20である(図1参照)。詳細については後述するが、本実施形態の弁装置30においては、関連技術の弁装置(図12参照)の場合と異なり、止め弁(主蒸気止め弁V11、再熱蒸気止め弁V21)として第2弁体35を用い、加減弁(蒸気加減弁V12、インターセプト弁V22)として第1弁体34を用いる。
【0047】
本実施形態の弁装置30は、図2および図3に示すように、弁ケーシング31と弁座50と第1弁棒37と第2弁棒39と第1弁体34と第2弁体35とを含む。
【0048】
[B-1]弁ケーシング31
弁ケーシング31は、流体である蒸気(白色の矢印)が弁ケーシング入口32から内部流路36を介して弁ケーシング出口33に流れるように構成されている。
【0049】
弁ケーシング31の上側US(第2の側)には、蓋体40が設置されている。蓋体40は、ボルト43などの固定部材で弁ケーシング31に固定されている。そして、弁ケーシング31の内部流路36には、ストレーナ42が設けられている。ここでは、ストレーナ42は、流体である蒸気に混入した異物を捕捉するための孔を複数有しており、蓋体40と弁座50との間に挟まれるように設置されている。
【0050】
[B-2]弁座50
弁座50は、弁ケーシング31の内部流路36に設置されている。弁座50は、リング形状であって、流体である蒸気が通過する開口である弁孔51を含む。弁孔51は、中心軸線Lに沿った軸方向LDのうち上側USに位置する部分では、中心軸線Lが直交する断面が下側DSへ向かうに伴って狭くなるように構成されている。そして、弁孔51は、下側DSに位置する部分では、中心軸線Lが直交する断面が下側DSへ向かうに伴って広くなるように構成されている。
【0051】
弁座50は、例えば、ボルトの取付部材(図示省略)を用いて弁ケーシング31に取り付けられている。この他に、弁座50は、溶接等によって弁ケーシング31に接合されていてもよい。
【0052】
[B-3]第1弁棒37
第1弁棒37は、弁座50の中心軸線Lと同軸に設けられ、弁座50の弁孔51を貫通する部分を含むように、中心軸線Lに沿った軸方向LDのうち下側DSへ第1弁体34から延在している。
【0053】
第1弁棒37は、弁ケーシング31に取り付けられた第1ガイド38を貫通しており、下側DSの端部が駆動装置(図示省略)に連結されている。第1ガイド38は、管状体であって、第1弁棒37が軸方向LDに沿って移動するように案内していると共に、弁ケーシング31の内部流路36から、流体である蒸気が外部へ漏出することを防止している。
【0054】
[B-4]第2弁棒39
第2弁棒39は、弁座50の中心軸線Lと同軸に設けられ、軸方向LDのうち下側DSに対して反対側に位置する上側USへ延在している。
【0055】
第2弁棒39は、蓋体40に取り付けられた第2ガイド41を貫通しており、上側USの端部が駆動装置(図示省略)に連結されている。
【0056】
[B-5]第1弁体34
第1弁体34は、例えば、中央部分が下側DSへ円錐状に突き出た部分を含む円形の板状体であって、弁座50の中心軸線Lと同軸に設けられている。第1弁体34は、弁ケーシング31の内部流路36において第1弁棒37に連結されている。
【0057】
第1弁体34は、弁ケーシング31の内部流路36のうち弁座50よりも上側USに位置する空間で軸方向LDに沿って移動するように構成されている。第1弁体34は、第1弁棒37の操作によって全閉状態になるときには、第1弁体34が弁座50に当接する。
【0058】
[B-6]第2弁体35
第2弁体35は、弁ケーシング31の内部流路36において第2弁棒39に連結されている。そして、第2弁体35は、第1弁体34と同様に、弁座50よりも上側USに位置する空間で軸方向LDに沿って移動するように構成されている。
【0059】
第2弁体35は、第1弁体34と異なり、基体部35aと円筒部35bとを含み、基体部35aおよび円筒部35bが一体に形成されている。
【0060】
第2弁体35において、基体部35aは、円板状であって、第1弁体34よりも上側USに位置している。基体部35aは、第2弁棒39に連結されている。
【0061】
第2弁体35において、円筒部35bは、円筒形状であって、基体部35aよりも下側DSに位置しており、弁座50の中心軸線Lと同軸に設けられている。
【0062】
また、第2弁体35は、基体部35aよりも下側DSであって円筒部35bの内部に位置する空間に、第1弁体34を収容するように形成されている。そして、第2弁体35は、第2弁棒39の操作によって全閉状態になるときには、弁座50において第1弁体34が当接する部分よりも外周側に位置する部分に円筒部35bの先端部分が当接する。
【0063】
[C]弁装置30の詳細構成
図4は、実施形態に係る弁装置30の一部を拡大して示す断面図である。図4は、図2と同じ断面の一部を示している。図4では、図3の場合と異なり、第1弁体34が弁座50から遠ざかって全開状態である場合を示すと共に、第2弁体35が弁座50に近づいて開度が小さい状態である場合を示している。なお、図4では、断面にハッチングを付すことを省略している。
【0064】
本実施形態の弁装置30を構成する弁座50と第1弁体34と第2弁体35とについて、図4を用いて詳細に説明する。
【0065】
[C-1]弁座50
本実施形態の弁装置30において、弁座50は、図4に示すように、弁座本体52と張出部53とを有する。ここでは、弁座50は、弁座本体52と張出部53とが一体に形成されていてもいる。弁座本体52と張出部53とは、一体でなく、別体で形成され、ボルトなどの締結部材を用いて両者が着脱自在に連結されていてもよい。
【0066】
図5および図6は、実施形態に係る弁装置30の弁座50を示す図である。図5は、弁座50の斜視図であって、図3と同様に断面の一部を併せて示している。図6は、図5と同じ断面の一部を拡大して示している。図6では、断面にハッチングを付すことを省略している。
【0067】
[C-1-1]弁座本体52
弁座50のうち、弁座本体52は、図5および図6に示すように、第1弁座面54と第2弁座面55と内周弁座面57とを有する。
【0068】
[C-1-1-1]第1弁座面54
第1弁座面54は、図6に示すように、点B1と点S2との間の面であって、弁座本体52の内周面のうち中心軸線Lを含む断面で曲線状の部分である。本実施形態では、第1弁座面54は、曲率半径Rs1で規定される円弧状の曲面であって、下側DSに向かうに伴って中心軸線Lに近づくように形成されている。
【0069】
第1弁座面54は、第1弁体34(図4参照)が当接する第1当接部位A1(図6参照)を含む。第1弁座面54において、第1当接部位A1は、点B1よりも内周側であって、点S2よりも外周側である。第1当接部位A1は、半径D1(中心軸線Lから第1当接部位A1までの間の距離に相当)のリング状である。
【0070】
[C-1-1-2]第2弁座面55
第2弁座面55は、図6に示すように、点B1と点B2との間の面であって、第1弁座面54よりも外周側に位置する。第2弁座面55は、第1弁座面54の上側USに位置しており、軸方向LDにおいて第1弁座面54と連続的に連なるように形成されている。
【0071】
本実施形態では、第2弁座面55は、弁座本体52の内周面のうち中心軸線Lを含む断面で直線状の部分である。第2弁座面55は、第1弁座面54と同様に、下側DSに向かうに伴って中心軸線Lに近づくように形成されている。つまり、第2弁座面55は、下側DSに向かうに伴って中心軸線Lに近づくように中心軸線Lに対して一定の傾斜角THで傾斜したテーパ面である。
【0072】
第2弁座面55は、第2弁体35(図4参照)が当接する第2当接部位A2(図6参照)を含む。第2弁座面55において、第2当接部位A2は、点B1よりも外周側であって、点B2よりも内周側である。第2当接部位A2は、半径D2(中心軸線Lから第2当接部位A2までの間の距離に相当)のリング状である。第2当接部位A2の半径D2は、第1当接部位A1の半径D1よりも大きい。(D1<D2)、つまり、第2当接部位A2は、第1当接部位A1よりも外周側に位置している。
【0073】
[C-1-1-3]内周弁座面57
内周弁座面57は、第1弁座面54の下側DSに位置しており、軸方向LDにおいて第1弁座面54と連続的に連なるように形成されている。
【0074】
内周弁座面57は、図6に示すように、弁座本体52の内周面のうち最も内側に位置する内周端である点S2よりも下側DSに位置する部分であって、下側DSに向かうに伴って中心軸線Lから遠ざかるように形成されている。
【0075】
具体的には、内周弁座面57のうち上側USの部分は、中心軸線Lを含む断面で見たときに円弧状であって、第1外周曲面45と同じ曲率半径Rv1の曲面である。これに対して、内周弁座面57のうち下側DSの部分は、中心軸線Lを含む断面で見たときに直線状であって、下側DSに向かって中心軸線Lから遠ざかるように中心軸線Lに対して傾斜している。
【0076】
[C-1-2]張出部53
弁座50のうち、張出部53は、図4および図5に示すように、弁座本体52の下側DSに設けられている。
【0077】
張出部53は、案内面56を有する。案内面56は、軸方向LDにおいて弁座本体52の内周弁座面57と連続的に連なるように形成されている。ここでは、案内面56は、下側DSに向かって中心軸線Lから遠ざかるように形成されている。
【0078】
具体的には、案内面56のうち上側USに位置する第1の案内面部58は、弁座本体52の内周弁座面57と同様に、中心軸線Lを含む断面で見たときに直線状であって、下側DSに向かって中心軸線Lから遠ざかるように中心軸線Lに対して傾斜している。第1の案内面部58が中心軸線Lに対して傾斜する傾斜角は、中心軸線Lの周方向において、例えば、一定である。この傾斜角は、周方向において一定でなくてもよい。例えば、この傾斜角は、中心軸線Lに対して一方の側(図5では右側)の方が、中心軸線Lに対して他方の側(図5では左側)よりも大きくなるように形成されていてもよい。
【0079】
そして、案内面56のうち下側DSに位置する第2の案内面部59は、中心軸線Lを含む断面で見たときに曲線状であって、下側DSに向かって中心軸線Lから遠ざかるように形成されている。
【0080】
本実施形態では、張出部53は、図5に示すように、中心軸線Lに対して非対称である。ここでは、軸方向LDにおける張出部53の長さは、中心軸線Lに対して一方の側(図5では右側)の方が、中心軸線Lに対して他方の側(図5では左側)よりも長くなるように形成されている。そして、図2に示すように、張出部53の長さが最も長い部分が弁ケーシング出口33に最も近くなるように、弁座50が設置されている。
【0081】
[C-2]第1弁体34
第1弁体34は、図4に示すように、第1外周曲面45(第1弁体面)を有する。第1弁体34において、第1外周曲面45は、軸方向LDで第1弁座面54に対面し、第1弁座面54に当接する面である。
【0082】
第1外周曲面45は、中心軸線Lを含む断面で見たときに曲線状であって、下側DSに向かって中心軸線Lから近づくように形成されている。第1外周曲面45は、例えば、中心軸線L上に中心点が位置する曲率半径Rv2で規定される円弧状の曲面である。第1外周曲面45は、第1弁座面54に対して線接触するように構成されている。
【0083】
本実施形態では、第1弁体34は、関連技術の場合と異なり、下側DSに位置する面に凹部341が形成されている。凹部341は、第1弁棒37の外周面を周方向において囲うように形成されている。凹部341は、外周側に傾斜面S341を有する。傾斜面S341は、下側DSの一端が上側USの他端よりも外周側に位置するように記軸方向に対して傾斜している。
【0084】
そして、凹部341の縁辺部分には、エッジ342を備える。エッジ342は、第1弁体34のうち下側DSに位置する面において下側DSへ突き出ている。エッジ342は、第1弁棒37の外周面を周方向において囲うようにリング状に形成されている。エッジ342は、傾斜面S341のうち下側DSの端部に相当する。
【0085】
[C-3]第2弁体35
第2弁体35は、図4に示すように、第2外周曲面44(第2弁体面)を有している。第2弁体35において、第2外周曲面44は、軸方向LDで第2弁座面55に対面し、第2弁座面55に当接する面である。
【0086】
第2外周曲面44は、中心軸線Lを含む断面で見たときに曲線状であって、下側DSに向かって中心軸線Lから近づくように形成されている。第2外周曲面44は、例えば、中心軸線L上に中心点が位置する曲率半径Rv2で規定される円弧状の曲面である。第2外周曲面44は、第2弁座面55に対して線接触するように構成されている。
【0087】
[D]弁装置30の使用方法
本実施形態の弁装置30を使用する方法について説明する。
【0088】
上述したように、関連技術の弁装置(図12参照)においては、タービン3(図1参照)へ作動媒体として導入される蒸気の流れを許可または遮断するための止め弁(主蒸気止め弁V11、再熱蒸気止め弁V21)として第1弁体34が用いられている。そして、関連技術の弁装置においては、タービン3へ作動媒体として導入される蒸気の流量を加減する加減弁(蒸気加減弁V12、インターセプト弁V22)として第2弁体35が用いられている。
【0089】
しかしながら、本実施形態の弁装置30(図2参照)においては、関連技術の弁装置(図12参照)の場合と異なり、止め弁(主蒸気止め弁V11、再熱蒸気止め弁V21)として第2弁体35を用い、加減弁(蒸気加減弁V12、インターセプト弁V22)として第1弁体34を用いる。
【0090】
具体的には、止め弁(主蒸気止め弁V11、再熱蒸気止め弁V21)が蒸気の流通を許可する場合には、図3に示すように、第2弁体35を全開状態にする。そして、本実施形態においてタービン3(図1参照)の回転速度を制御する際には、図3に示すように、止め弁(主蒸気止め弁V11、再熱蒸気止め弁V21)として機能する第2弁体35を全開状態にした状態で、加減弁(蒸気加減弁V12、インターセプト弁V22)として機能する第1弁体34の開度を制御する。ここでは、第1弁体34と弁座50との間に介在する隙間Gの大きさを変えることで、弁装置30(図2参照)を流れる蒸気の流量が調整される。
【0091】
これにより、本実施形態の弁装置30においては、騒音および振動の発生を低減することができる。
【0092】
以下より、本実施形態の弁装置30において上記効果を奏する理由に関して説明する。
【0093】
[D-1]理由1
図7は、実施形態に係る弁装置30の一部を拡大して示す断面図である。図7は、図4と同じ断面の一部を示している。図7では、図4の場合と同様に、第2弁体35が弁座50に近づいて開度が小さい状態である場合を示している。つまり、図3に示す場合と異なり、関連技術の場合と同様に、加減弁(蒸気加減弁V12、インターセプト弁V22)として第2弁体35を用いる場合に関して示している。なお、図7では、断面にハッチングを付すことを省略している。
【0094】
図7に示すように、第2弁体35の第2外周曲面44と弁座50の第2弁座面55との間の隙間Gに、蒸気ARが流入する。蒸気ARは、噴流として、破線BLと弁座50の表面との間の噴流領域を流れる。破線BLは、噴流領域と、噴流領域を流れる噴流よりも流速が小さい静止領域との境界であって、破線BLの近傍においては、せん断層が形成される。せん断層では、静止領域の影響によって、流速の減衰が生ずる。
【0095】
図7において、点S1は、第2弁座面55において、隙間Gから蒸気ARが流出する出口に相当する点である。点V1は、点S1から引いた第2弁座面55に対して垂直な線が、第2外周曲面44と交わる交点である。点S2は、弁座本体52の内周面のうち最も内側に位置する内周端であって、弁座内径Dth(弁シート径)と一致する点である。点V2は、破線BLにおいて、点S2と高さが等しい点である。
【0096】
そして、図7において、点S1と点V1とを結ぶ線分を中心軸線Lの周りに一回転させたときに形成される領域は、隙間Gの出口における流路断面に相当する。
【0097】
図8は、実施形態に係る弁装置30において、第2弁体35の第2外周曲面44と弁座50の第2弁座面55との間の隙間Gの出口における流路断面を示す図である。
【0098】
図8に示すように、隙間Gの出口における流路断面は、切頭円錐の側面に相当する。切頭円錐において、上面は、半径R2の円形状であり、下面は、半径R1の円形状である。半径R1は、中心軸線Lから点S1までの距離に相当し、半径R2は、中心軸線Lから点V1までの距離に相当する(図7参照)。
【0099】
切頭円錐の側面面積(流路断面積)は、切頭円錐の高さをHとすると下記の(式x)で示される。
【0100】
A=π(R1+R2)√((R1-R2)+H) ・・・(式x)
【0101】
図7に示すように、蒸気ARは、狭い隙間Gを通過した後には、点S1と点V1との間に位置する隙間出口から急激に大きな空間へ放出される。このとき、蒸気ARは、噴流となって流れる。噴流は、第2弁座面55と第1弁座面54と内周弁座面57とで構成される弁座面に沿って流れる。ここでは、噴流は、コアンダ効果によって、弁座面に付着するように流れる。その結果、破線BLで示すように、噴流領域と静止領域との境界が生ずる。このため、蒸気の流れの損失を低減でき、噴流のエネルギーは高い状態を保つことができる。
【0102】
図8に示すように、半径R2と半径R1は、R2<R1の関係にある。このため、境界線である破線BLと弁座面との間の噴流領域に関する流路断面積は、点S2に対応する部分の方が、点S1に対応する部分よりも小さくなる。すなわち、噴流領域の流路断面積は、内周側に向かって徐々に小さくなっている。
【0103】
また、流量保存則によれば、「流路断面積×速度=一定」の関係が成立する。このため、流路断面積が小さくなるに伴って、流体の流速が増加する。すなわち、弁座50の第2弁座面55に沿って内周側に向かう蒸気の流れは、静止領域の影響を受けるが、流路断面積の減少に伴って、噴流である蒸気の流速が増加する。
【0104】
図7に示すように、内周弁座面57は、弁座本体52の内周面のうち最も内側に位置する内周端である点S2よりも下側DSに位置する部分であって、下側DSに向かうに伴って中心軸線Lから遠ざかるように形成されている。このため、噴流である蒸気の流速は、減少する。
【0105】
点S1と点V1との間に位置する隙間出口から放出される蒸気は、流速が音速に達している。蒸気は、第2弁座面55に沿って流れるに伴って、流速が増加し、点S2に到達する前に、超音速になる場合がある。その結果、衝撃波が生ずる場合がある。
【0106】
上記の説明から判るように、図3に示す場合と異なり、関連技術の場合と同様に、加減弁(蒸気加減弁V12、インターセプト弁V22)として第2弁体35を用いる場合には、騒音や振動が生ずる場合がある。
【0107】
しかし、本実施形態では、上記したように、加減弁(蒸気加減弁V12、インターセプト弁V22)として第2弁体35を用いない。このように、本実施形態では、第2弁体35の開度を微小な状態にすることで騒音や振動が発生することに関して抑制可能である。
【0108】
[D-2]理由2
図9は、実施形態に係る弁装置30の一部を拡大して示す断面図である。図9は、図3と同じ断面の一部を示している。図9では、図3の場合と同様に、第1弁体34が弁座50に近づいて開度が小さい状態である場合を示している。つまり、図3に示す場合と同様に、関連技術の場合と異なり、加減弁(蒸気加減弁V12、インターセプト弁V22)として第1弁体34を用いる場合に関して示している。なお、図9では、断面にハッチングを付すことを省略している。
【0109】
図9に示すように、第1弁体34の第1外周曲面45と弁座50の第1弁座面54との間の隙間G1に、蒸気ARが流入する。蒸気ARは、噴流として、破線BLと弁座50の表面との間の噴流領域を流れる。
【0110】
図7において、点S11は、第1弁座面54において、隙間G1から蒸気ARが流出する出口に相当する点である。点V11は、点S11から引いた第1弁座面54に対して垂直な線が、第1外周曲面45と交わる交点である。点S2は、弁座本体52の内周面のうち最も内側に位置する内周端であって、弁座内径Dthと一致する点である。点V2は、破線BLにおいて、点S2と高さが等しい点である。
【0111】
そして、図7において、点S11と点V11とを結ぶ線分を中心軸線Lの周りに一回転させたときに形成される領域は、隙間G1の出口における流路断面に相当する。隙間G1の出口における流路断面は、切頭円錐において、上面が半径R2の円形状であり、下面が半径R1の円形状であり、高さH1で構成された切頭円錐の側面に相当する。
【0112】
第1弁体34が弁座50に当接する第1当接部位A1は、第2弁体35が弁座50に当接する第2当接部位A2とよりも、内周側に位置する。点S11から点S2までの距離Lb1は、点S1から点S2までの距離Lbよりも短い(Lb1<Lb)。このため、本実施形態では、噴流である蒸気ASの流速が増加する割合を低減することができる。その結果、本実施形態では、騒音や振動の発生を低減することができる。
【0113】
また、第1弁体34と弁座50との間において蒸気ARが通過する隙間G1の出口に位置する点V11は、エッジ342の先端に相当する。エッジ342は、第1弁体34に沿って流れる蒸気ARが剥離する位置よりも上流側に設けられている。これにより、蒸気ARは、衝撃波が発生しない亜臨界流れ(亜音速流れ)となり、安定した流れが維持されるので、騒音や振動の発生を更に抑制することができる。
【0114】
[E]作用
図10は、実施形態に係る弁装置30における蒸気の流れを模式的に示す図である。
【0115】
図10は、図3と同じ断面の一部を示している。図10では、図3の場合と同様に、第1弁体34が弁座50に近づいて開度が小さい状態である場合を示している。つまり、図10では、図3に示す場合と同様に、関連技術の場合と異なり、加減弁(蒸気加減弁V12、インターセプト弁V22)として第1弁体34を用いる場合に関して示している。なお、図10では、断面にハッチングを付すことを省略している。
【0116】
図10に示すように、本実施形態では、第1弁体34と弁座50との間の隙間G1から放出された蒸気ASは、弁座50の表面に沿って流れる。具体的には、蒸気ASは、弁座50を構成する弁座本体52において、順次、第1弁座面54と内周弁座面57とに沿って流れる。そして、蒸気ASは、更に、弁座50を構成する張出部53において、案内面56に沿って流れる。このため、本実施形態では、張出部53の案内面56によって、弁座50の表面における蒸気ASの流れが長く維持される。そして、蒸気ASの流れに伴い、循環流れAC1が発生する。
【0117】
本実施形態では、タービン3(図1参照)の回転速度を制御する際には、止め弁(主蒸気止め弁V11等)として機能する第2弁体35を全開状態にした状態で、加減弁(蒸気加減弁V12等)として機能する第1弁体34の開度を制御する(図3参照)。このため、本実施形態では、関連技術の場合(図12および図13参照)と異なり、第1弁体34よりも下側DSに位置する空間は、第2弁体35の円筒部35bの内部に収容される部分を含まない(図3参照)。これにより、本実施形態では、関連技術の場合に生じた再循環流れAC2,AC3(図13参照)は、発生しない。また、本実施形態では、第2弁体35の円筒部35bの内部のうち第1弁体34よりも上側USに位置する部分は、開放された状態であって(図3参照)、関連技術では存在する閉空間101(図12および図13参照)がない。
【0118】
したがって、関連技術の場合には、上述したように、再循環流れAC3に起因して、閉空間101のうち下側DSに位置する外周端が励起され、振動や騒音が発生する場合があるが、本実施形態では、関連技術の場合と異なり、振動や騒音の発生を効果的に防止可能である。
【0119】
図11は、本実施形態の弁装置30に関する振動のパワースペクトルを示す図である。図11においては、図15と同様に、横軸は、振動の周波数を示し、パワースペクトルを示している。
【0120】
図11に示すように、本実施形態に係る弁装置30に関する振動のパワースペクトルには、関連技術の場合(図15参照)と異なり、卓越ピークPK1および卓越ピークPK2が含まれない。具体的には、本実施形態では、破線で囲う領域113のパワースペクトルが低減されている。これから判るように、本実施形態では、関連技術の場合よりも、振動や騒音の発生を防止可能である。
【0121】
[F]変形例
上記した実施形態は、一例であって、適宜、変形例を採用可能である。
【0122】
[F-1]変形例1
上記実施形態において、エッジ342と中心軸線Lとの間の距離R21(図9参照)、および、第1当接部位A1と中心軸線Lとの間の距離D1(図6参照)は、下記(式1)に示す関係を満たすことが好ましい。これにより、振動や騒音の発生を、より効果的に防止可能である。
【0123】
0.90D1≦R21≦D1 ・・・(式1)
【0124】
[F-2]変形例2
上記実施形態において、凹部341の深さh(図4参照)は、下記(式2)に示す関係を満たすことが好ましい。深さhは、軸方向LDにおいて、エッジ342のうち最も下側DSに位置する部分と、凹部341のうち最も上側USに位置する部分との間の距離に相当する。また、傾斜面S341が軸方向LDに対して傾斜する角度θ(図4参照)は、下記(式3)に示す関係を満たすことが好ましい。これにより、振動や騒音の発生を、より効果的に防止可能である。
【0125】
h≦15mm ・・・(式2)
θ=45° ・・・(式3)
【0126】
[F-3]変形例3
上記実施形態において、中心軸線Lを含む断面において、中心軸線Lに対して第2弁座面55が傾斜している角度THは、下記(式A)に示す関係を満たすことが好ましい。
【0127】
40°≦TH≦45° ・・・(式A)
【0128】
角度THを上記範囲の下限値以上にすることで、第1弁体34が当接する第1当接部位A1と、第2弁体35が当接する第2当接部位A2とが、軸方向LDにおいて大きく離れることを抑制できる。これにより、第1弁体34と第1弁座面54との当接状態を安定化させることができる。また、第1弁体34が第1弁座面54に当接した場合の気密性を向上させることができる。更に、第1弁体34のストローク量が増大することを抑制できる。
【0129】
角度THを上記範囲の上限値以下にすることで、第2弁座面55に沿って流れる蒸気の流速が超音速に到達するまでの距離が短くならないので、蒸気の流れが第1弁座面54から剥離することを抑制できる。
【0130】
[F-4]変形例4
上記実施形態において、第1当接部位A1と中心軸線Lとの間の距離D1(図6参照)、および、弁座50において最も内周側に位置する内周端S2と中心軸線Lとの間の距離Dth(図6参照)が、下記(式B)に示す関係を満たすことが好ましい。
【0131】
0.93D1≦Dth≦0.95D1 ・・・(式B)
【0132】
上記の距離Dthが上記範囲の下限値以上であることによって、第2弁座面55に沿って流れる蒸気が、内周側へ導かれることを抑制できる。すなわち、蒸気の流れが内周側に導かれて流路断面積が小さくなり、蒸気の流れの速度が増大して第1弁座面54から剥離することを抑制可能である。
【0133】
また、上記の距離Dthが上記範囲の上限値以下であることによって、第1弁体34の第1弁座面54への当接状態を安定化させることができる。また、第1弁体34が第1弁座面54に当接した場合の気密性を向上させることができる。
【0134】
[F-5]変形例5
上記実施形態において、第1外周曲面45(第1弁体面)の曲率半径Rv1、第1当接部位A1と中心軸線Lとの間の距離D1、および、中心軸線Lを含む断面において、中心軸線Lに対して前記第2弁座面55が傾斜している角度THは、下記(式C)に示す関係を満たすことが好ましい。
【0135】
25°≦cos-1((D1/2)/Rv1)≦TH ・・・(式C)
【0136】
上記式に示す範囲の下限値以上にすることで、長期間の停止状態から起動する際に、第1弁体34が第1弁座面54に組み込みすぎて第1弁体34を第1弁座面54から離間させることが困難になることを抑制できる。
【0137】
上記式に示す範囲の下限値以上にすることで、第1弁体34と第2弁体35を共存した構成を可能にすることができる。
【0138】
[F-6]その他の変形例
上記の実施形態では、弁座50は、弁座本体52の他に、張出部53を含んでいるが、これに限らない。弁座50は、張出部53がなくてもよい。
【0139】
<その他>
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、これらの実施の形態を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0140】
1:発電設備、2:ボイラ、3:タービン、3a:高圧タービン、3b:中圧タービン、3c:低圧タービン、4:発電機、11:復水器、12:給水ポンプ、30:弁装置、30J:弁装置、31:弁ケーシング、32:弁ケーシング入口、33:弁ケーシング出口、34:第1弁体、35:第2弁体、35a:基体部、35b:円筒部、36:内部流路、37:第1弁棒、38:第1ガイド、39:第2弁棒、40:蓋体、41:第2ガイド、42:ストレーナ、43:ボルト、44:第2外周曲面(第2弁体面)、45:第1外周曲面(第1弁体面)、50:弁座、51:弁孔、52:弁座本体、53:張出部、54:第1弁座面、55:第2弁座面、56:案内面、57:内周弁座面、58:第1の案内面部、59:第2の案内面部、101:閉空間、113:領域、341:凹部、342:エッジ、A1:第1当接部位、A2:第2当接部位、AR:蒸気、AS:蒸気、DS:下側(第1の側)、G:隙間、G1:隙間、L:中心軸線、LD:軸方向、P1:ライン、P2:ライン、P3:ライン、P4:ライン、S341:傾斜面、US:上側(第2の側)、V10:高圧側蒸気弁、V11:主蒸気止め弁、V12:蒸気加減弁、V20:再熱側蒸気弁、V21:再熱蒸気止め弁、V22:インターセプト弁。
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