(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087313
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】ダクト構造及び風力発電装置
(51)【国際特許分類】
F03D 9/39 20160101AFI20230616BHJP
F03D 1/02 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
F03D9/39
F03D1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201625
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】305050410
【氏名又は名称】池田 租
(74)【代理人】
【識別番号】100174805
【弁理士】
【氏名又は名称】亀山 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】池田 租
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA22
3H178AA43
3H178AA53
3H178AA66
3H178BB35
3H178BB41
3H178CC02
3H178CC22
(57)【要約】
【課題】安全性の高い風力発電装置及びそこに適用可能なダクト構造を提供する。
【解決手段】 風力発電装置2は、ダクト構造10と、ダクト構造10に収容された回転羽20と、回転羽20の回転運動から電力を発生する電力発生機構30と、電力発生機構30が発生した電力をためるバッテリ40と、バッテリ40と電力発生機構30を電気的に接続する配線(図示省略)と、を備える。ダクト構造10は、垂直に起立する中空部に回転羽20を収容する筒本体11と、流路の入口に設けられたフード構造17と、流路の出口に設けられた逆流防止構造19と、を備える。筒本体11は、二重筒構造を有するものであり、円筒状の外筒11Gと、外筒11Gの中空部に収容された円筒状の内筒11Nと、外筒11G及び内筒11Nの間に配された配管11Hと、外筒11Gと内筒11Nを連結する連結部材11Rと、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側から他方側へ延びる筒本体と、
前記筒本体の他方側の開口部を閉塞する閉塞構造と、を備え、
前記筒本体は、
前記筒本体の内壁面に開口する内壁吸気開口部と、前記内壁吸気開口部よりも一方側の外壁面に開口する外壁吸気開口部と、を連通する内部流路が形成されることを特徴とするダクト構造。
【請求項2】
前記内部流路は複数形成され、
第1の前記内部流路は、第1の前記内壁吸気開口部と、第1の前記外壁吸気開口部と、を連通し、
第2の前記内部流路は、第2の前記内壁吸気開口部と、第2の前記外壁吸気開口部と、を連通し、
前記第1の外壁吸気開口部と前記第2の外壁吸気開口部とは周方向に並び、
前記第1の内壁吸気開口部と前記第2の内壁吸気開口部とは周方向に並ぶことを特徴とする請求項1記載のダクト構造。
【請求項3】
前記第1の内壁吸気開口部に設けられた第1の開閉構造と、
前記第2の内壁吸気開口部に設けられた第2の開閉構造と、を備え、
前記開閉構造は、前記内壁吸気開口部を解放状態及び閉塞状態との間で切り替え可能であることを特徴とする請求項2記載のダクト構造。
【請求項4】
前記内部流路の圧力が前記筒本体の中空部未満の場合には、前記開閉構造は、前記内壁吸気開口部を閉塞状態にし、
前記内部流路の圧力が前記筒本体の中空部の圧力以上の場合には、前記開閉構造は、前記内壁吸気開口部を解放状態にすることを特徴とする請求項3記載のダクト構造。
【請求項5】
前記筒本体は、縦方向に延び、
前記筒本体の一方側は上部に位置し、
前記筒本体の他方側は下部に位置し、
前記開閉構造は、
前記筒本体の中空部に配された揺動軸と、
前記揺動軸に対して揺動する閉塞部材と、を備えることを特徴とする請求項4記載のダクト構造。
【請求項6】
前記揺動軸は、前記内壁吸気開口部の上方に設けられ、
前記開閉部材は、前記揺動軸の下方に位置するとともに、前記揺動軸に対して揺動自在に設けられることを特徴とする請求項5記載のダクト構造。
【請求項7】
前記筒本体は、
外部の気体を前記外壁吸気開口部へ誘導するフード構造を備え、
前記フード構造は、
前記外部の気体を取り込む入口と、
前記外壁吸気開口部と連通する出口と、を備えることを特徴とする請求項1ないし6のうちいずれか1項記載のダクト構造。
【請求項8】
請求項1ないし7のうちいずれか1項記載のダクト構造と、
前記筒本体の中空部に配された回転羽と、
前記回転羽の回転運動から電力を発生する電力発生機構と、を備えることを特徴とする風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクト構造及び風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、原子力エネルギーを利用して発電(電気エネルギーの生産)を行なうことは危険性が大きなことから世界的に敬遠されつつある。また、原子力ほど危険性が少ないと考えられる火力発電による電気エネルギーの生産は、酸性雨や二酸化炭素による温暖化現象などの環境破壊から地球を守るという気運の高まりもあるため、これもまた敬遠されてきている。
【0003】
そこで、係る酸性雨や二酸化炭素の増加による温暖化現象などの環境破壊、或いは、ダムによる生態系の環境破壊を伴わないクリ-ンなエネルギーの1つとして、風力発電装置が注目視されてきている。
【0004】
風力発電装置として、例えば、タワー(高さ40~50m程度)と、タワーの先端において回転自在に設けられたプロペラ(長さ30~45m程度)と、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の風力発電装置は、回転するプロペラが露出しているため、プロペラの破損やプロペラの落下は、危険であり、設置場所及びその周囲に対し損害を与えるため好ましくない。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、安全性の高い風力発電装置及びそこに適用可能なダクト構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のダクト構造は、一方側から他方側へ延びる筒本体と、前記筒本体の他方側の開口部を閉塞する閉塞構造と、を備え、前記筒本体は、前記筒本体の内壁面に開口する内壁吸気開口部と、前記内壁吸気開口部よりも一方側の外壁面に開口する外壁吸気開口部と、を連通する内部流路が形成されることを特徴とする。
【0009】
本発明の風力発電装置は、上記のダクト構造と、前記筒本体の中空部に配された回転羽と、前記回転羽の回転運動から電力を発生する電力発生機構と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安全性の高い風力発電装置及びそこに適用可能なダクト構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(A)は、風力発電装置の概要を示す平面図である。(B)は、風力発電装置の概要を示す側面図である。
【
図2】風力発電装置の概要を示すIIb-IIb’線断面図である。
【
図3】風力発電装置の上部分の概要を示すIIb-IIb’線断面図である。
【
図4】風力発電装置の下部分の概要を示すIIb-IIb’線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1~2に示すように、風力発電装置2は、ダクト構造10と、ダクト構造10に収容された回転羽20と、回転羽20の回転運動から電力を発生する電力発生機構30と、電力発生機構30が発生した電力をためるバッテリ40と、バッテリ40と電力発生機構30を電気的に接続する配線(図示省略)と、を備える。
【0013】
図2~4に示すように、ダクト構造10は、垂直に起立する中空部に回転羽20を収容する筒本体11と、筒本体11に形成された流路の入口に設けられたフード構造17と、流路の出口に設けられた逆流防止構造19と、を備える。
【0014】
筒本体11は、円筒状に形成され、直線状に延びる。筒本体11の長さは、特に限定されないが、小型であれば、例えば、5~8mであり、中型であれば、20~50mであり、大型であれば、80m~120m等となる。また、筒本体11の直径も、特に限定されないが、例えば、1m~5mである。筒本体11の下端は水平面に設置され、上端は、水平面の上方に向かって開口する。以下、説明の便宜上、筒本体11の長さ方向をZ方向と称し、Z方向に直交する水平面のうち任意の方向をX方向、水平面のうちX方向に直交する方向をY方向と称する。
【0015】
筒本体11は、二重筒構造を有するものであり、円筒状の外筒11Gと、外筒11Gの中空部に収容された円筒状の内筒11Nと、外筒11G及び内筒11Nの間に配された配管11Hと、外筒11Gと内筒11Nを連結する連結部材11Rと、を備える。
【0016】
内筒11Nの外径は、外筒11Gの内径よりも小さい。内筒11Nの下端側の開口は、閉塞構造11NZにより閉塞されている。内筒11NのZ方向の長さは、外筒11GのZ方向の長さよりも短い方が好ましい。
【0017】
Z方向において、外筒11Gの上端と内筒11Nの上端とは面一であることが好ましい。また、内筒11Nの下端は、外筒11Gの下端よりも上側に退避していることが好ましい。連結部材11Rは、外筒11Gの上端と内筒11Nの上端とを連結するとともに、外筒11Gの中途部と内筒11Nの下端とを連結する。
【0018】
内筒11Nの下側には、内筒開口部11NXが形成される。外筒11Gの上側には、外筒開口部11GXが形成される。外筒開口部11GXは、内筒開口部11NXよりも上方に位置する。配管11Hは、内筒開口部11NXと外筒開口部11GXと、を連通する。また、外筒開口部11GXは、Z方向において所定のピッチで並ぶことが好ましい。Z方向に並ぶ外筒開口部11GX同士は、同一の配管11Hと連通することが好ましい。これにより、外筒開口部11GXから入った気体は、配管11Hを通って、内筒開口部11NXから出る。
【0019】
配管11Hは、外筒開口部11GXに接続するエルボ管11HAと、内筒開口部11NXに接続するエルボ管11HBと、エルボ管11HA及びエルボ管11HBを接続するストレート管11HSと、を備えていることが好ましい。また、Z方向に並ぶ外筒開口部11GXが同一の配管11Hに接続する場合、エルボ管11HAとストレート管11HSとの間に、チーズ管11Cを接続させてもよい。
【0020】
エルボ管11HAは、外筒11Gの外側に開口する入口と下方に開口する出口を備え、入口から出口に向かってL字状に湾曲する流路を形成する。
【0021】
エルボ管11HBは、上方向に開口する入口と内筒11Nの内側に開口する出口を備え、入口から出口に向かってL字状に湾曲する流路を形成する。また、エルボ管11HBには、L字状に曲がった流路から分岐して下方に延びるドレン構造11HBXが形成されていることが好ましい。ドレン構造11HBXにより、気体とともに外部から流入した液体を貯めることができる。なお、ドレン構造11HBXを備えたエルボ管11HBとして、チーズ管を用いてもよい。
【0022】
図5に示すように、同一の配管11Hと連通する外筒開口部11GX及び内筒開口部11NXの組みは、筒本体11の周方向に沿って所定のピッチで並ぶことが好ましい。これにより、筒本体11の周囲にある気体をより多く取り込むことができる。
【0023】
図4に示すように、逆流防止構造19は、内筒開口部11NXに対して設けられるものであり、内筒11Nの中空部に配された揺動軸19Aと、揺動軸19Aに対して揺動する蓋部材19Bと、を備え、内筒開口部11NXが中空部に解放された解放状態と、内筒開口部11NXが中空部に対して解放状態から退避された閉塞状態と、の間で切り替え可能である。
【0024】
揺動軸19Aは、内筒開口部11NXの上方において、水平に配される。蓋部材19Bは、板状に形成され、上端部が揺動軸19Aに連結する。このため、蓋部材19Bは、揺動軸19Aを中心に揺動自在となる。
【0025】
逆流防止構造19は、配管11Hにおいて気体の流通がおこなわれないとき(配管11Hと及び内筒11Nの中空部との間の圧力差がないとき)や、配管11Hよりも内筒11Nの中空部における圧力が低いときは、蓋部材19Bが内筒開口部11NXを解放する解放状態となるため、配管11Hから内筒11Nの中空部への流通を許容する。一方、配管11Hよりも内筒11Nの中空部における圧力が高いときは、蓋部材19Bが内筒開口部11NXを閉じる閉塞状態となるため、内筒11Nの中空部から配管11Hへの気体の流通が規制される。これにより、任意のエルボ管11HBから流出した気体が、別のエルボ管11HBへ逆流することを防ぐ。なお、逆流防止構造19は、蓋部材19Bの自重によって閉塞状態となり、蓋部材19Bを揺動できる程度の圧力差になった場合に解放状態となっていてもよい。
【0026】
図1,5に示すように、フード構造17は、外筒11Gの外周にある気体を外筒開口部11GXへ誘導するためのエルボ状の流路を形成するためのものであり、外部の気体を取り込む外気入口と、外壁吸気開口部と連通する外気出口と、を備える。フード構造17によって形成されるエルボ状の流路は、基端部(外筒11G側)から先端部にかけて、外側が凸となるように湾曲していることが好ましい。
【0027】
図1,3に示すように、筒本体11は、回転羽20を支持する支持アーム12をさらに備える。支持アーム12は、内筒11Nの内壁面から起立するように設けられ、XY平面上に延びる。
【0028】
回転羽20は、自身の軸を中心に回動自在の状態で、支持アーム12上に支持される。回転羽20と支持アーム12の対は、Z方向において、1つ設けられてもよいし、複数設けられてもよい。また、複数の回転羽20が共通の回動軸に接続されていてもよい。
【0029】
電力発生機構30は、回転羽20の回転により、電力を発生する。バッテリ40は、外筒11Gの中空部において、内筒11Nよりも下方に収容される。
【0030】
次に、風力発電装置2の使用方法について説明する。
【0031】
筒本体11の外部空間で風が吹くと、外筒11Gに設けられた各フード構造17を介して、外筒開口部11GXに気体が流入する。外筒開口部11GXに流入した気体は、内筒開口部11NXから、内筒11Nの中空部へ向かう。外筒11Gには、多数の外筒開口部11GXがZ方向に並ぶため、多量の気体を取り込むことができる。そして、内筒11Nの下端側の開口は、閉塞構造11NZにより閉塞されているため、内筒11Nの中空部に流入した気体は、内筒11Nの中空部において下端から上端に向かって流れる。
【0032】
さらに、外筒11Gには、多数の外筒開口部11GXが周方向に並ぶため、風向きに関わらず、多量の気体を取り込むことができる。このとき、気体を取り込んだ配管11Hにおいては、内筒11Nの中空部よりも圧力が高いため、逆流防止構造19は解放状態となる。このため、外筒開口部11GXに流入した気体は、内筒11Nの中空部に流入する。一方、他の配管11H(例えば、気体を取り込んだ配管11Hとは反対側に位置する配管11H)の外筒開口部11GXにおいては、当該配管11よりも内筒11Nの中空部のほう圧力が高いため、逆流防止構造19は閉塞状態となる。このため、外筒開口部11GXに流入した気体は、当該配管11Hには流入せずに、内筒11Nの中空部において下端から上端に向かって流れる。
【0033】
このとき、内筒11Nの中空部に配された回転羽20が回転する。電力発生機構30は、回転羽20の回転運動から電力を発生させる。バッテリ40は、発電された電力を蓄電する。
【0034】
このように、風力発電装置2は、電力を発生させる回転羽20が筒本体11に収容されるため、安全性が高い。また、多数の外筒開口部11GXが形成されるため、十分な電力を発電できる。
【0035】
上記実施形態では、円筒状の筒本体11を用いたが、本発明はこれに限られず、楕円筒状や角筒状の筒本体11でもよい。また、筒本体の断面形状は、楕円、円弧と直線や、楕円弧と直線の組み合わせであってもよい。
【0036】
配管11Hは、外筒11Gの外壁面よりも外周に向けて突出していてもよいし、外筒11Gの外壁面と面一であってもよい。同様に、配管11Hは、内筒11Nの内壁面よりも内周に向けて突出していてもよいし、内筒11Nの内壁面と面一であってもよい。
【0037】
なお、周方向において隣り合う外筒開口部11GXは、Z方向における高い位置と低い位置との間で、互い違いとなるように配置されることが好ましい(
図1(B))。
【0038】
また、周方向において隣り合う外筒開口部11GXに対して取り付けられるフード構造17の向きは、上方から見て時計回りと、反時計回りとのように、互い違いとなっていることが好ましい。これにより、筒本体11の周囲にある気体を配管11Hへ取り入れやすくなる。
【0039】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0040】
2 風力発電装置
10 ダクト構造
11 筒本体
11C チーズ管
11G 外筒
11GX 外筒開口部
11H 配管
11HA エルボ管
11HB エルボ管
11HBX ドレン構造
11HS ストレート管
11N 内筒
11NX 内筒開口部
11NZ 閉塞構造
11R 連結部材
12 支持アーム
17 フード構造
19 逆流防止構造
19A 揺動軸
19B 蓋部材
20 回転羽
30 電力発生機構
40 バッテリ