(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087315
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】制御バルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 5/04 20060101AFI20230616BHJP
【FI】
F16K5/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201628
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】大関 哲史
【テーマコード(参考)】
3H054
【Fターム(参考)】
3H054AA02
3H054BB16
3H054CB16
3H054CD11
3H054EE01
3H054GG02
(57)【要約】
【課題】小型化や部品点数の削減を図ることができる制御バルブを提供する。
【解決手段】本発明の態様に係る制御バルブは、外部から流体が流入する流入口、及び流体が外部に流出する流出口を有するケーシングと、流体が流通する内部空間を形成する有底筒状の弁体を有し、弁体の軸線回りにケーシング内に回転可能に収容されるロータと、を備えている。ロータは、弁体に形成された連通口を通じて流入口及び流出口の少なくとも一方と内部空間との間の連通及び遮断が弁体の回転位置に応じて切り替えられる。ケーシングは、弁体の軸方向において弁体の外側から弁体の底部に摺接するとともに、底部を介して弁体を回転可能に支持する軸方向支持部を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から流体が流入する流入口、及び流体が外部に流出する流出口を有するケーシングと、
流体が流通する内部空間を形成する有底筒状の弁体を有し、前記弁体の軸線回りに前記ケーシング内に回転可能に収容されるロータと、を備え、
前記ロータは、前記弁体に形成された連通口を通じて前記流入口及び前記流出口の少なくとも一方と前記内部空間との間の連通及び遮断が前記弁体の回転位置に応じて切り替えられ、
前記ケーシングは、前記弁体の軸方向において前記弁体の外側から前記弁体の底部に摺接するとともに、前記底部を介して前記弁体を回転可能に支持する軸方向支持部を備えている制御バルブ。
【請求項2】
前記軸方向支持部は、前記軸線回りの全周に亘って連続的に延びている請求項1に記載の制御バルブ。
【請求項3】
前記軸方向支持部は、前記軸線回りに間欠的に設けられている請求項1に記載の制御バルブ。
【請求項4】
前記ケーシングのうち、前記軸方向支持部に対して径方向の外側に位置する部分には、前記軸方向支持部に対して前記軸方向に窪んだ窪み部が形成されている請求項1から請求項3の何れか1項に記載の制御バルブ。
【請求項5】
前記ケーシングは、
前記流入口及び前記流出口が形成されたケーシング本体と、
前記ケーシング本体のうち前記流入口の開口端面に接続された流入ジョイントと、を備え、
前記軸方向支持部は、前記ケーシング本体に一体形成されている請求項1から請求項4の何れか1項に記載の制御バルブ。
【請求項6】
前記ケーシングは、前記弁体の開口部を通じて前記内部空間内に進入するとともに、前記弁体の筒部を径方向の内側から回転可能に支持する径方向支持部を備えている請求項1から請求項5の何れか1項に記載の制御バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両には、発熱部(例えば、エンジンやモータ等)と、放熱部(例えば、ラジエータやヒータ等)と、の間で循環する冷却水によって発熱部を冷却する冷却システムが搭載されている。この種の冷却システムでは、発熱部と放熱部とを接続する流路上に制御バルブが設けられることで、冷却水の流通が制御されている。
【0003】
上述した制御バルブとして、例えば下記特許文献1には、冷却水の流出口を有するケーシングと、ケーシング内で回転可能に構成された有底筒状のロータと、を備えた構成が開示されている。ロータの筒部には、ロータの回転に応じてロータの内側空間と流出口とを連通させる連通口が形成されている。
この構成によれば、ロータを回転させることで、流出口と連通口との連通及び遮断が切り替えられる。制御バルブ内に流入した冷却水は、ロータの内側空間を流入した後、連通口と連通状態にある流出口を通じて制御バルブから流出する。これにより、制御バルブに流入した冷却水が、ロータの回転に応じて所望の放熱部に分配される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術において、ロータは、ロータの底部とケーシングとの間に設けられたスラスト軸受により、ケーシングに回転可能な状態で軸方向に支持されている。そのため、従来技術に係る制御バルブでは、部品点数の削減を図る点で未だ改善の余地があった。また、従来技術では、スラスト軸受を保持する箇所をケーシングに設ける必要があることから、小型化を図る点で未だ改善の余地があった。
【0006】
本発明は、小型化や部品点数の削減を図ることができる制御バルブを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は以下の態様を採用した。
本開示の一態様に係る制御バルブは、外部から流体が流入する流入口、及び流体が外部に流出する流出口を有するケーシングと、流体が流通する内部空間を形成する有底筒状の弁体を有し、前記弁体の軸線回りに前記ケーシング内に回転可能に収容されるロータと、を備え、前記ロータは、前記弁体に形成された連通口を通じて前記流入口及び前記流出口の少なくとも一方と前記内部空間との間の連通及び遮断が前記弁体の回転位置に応じて切り替えられ、前記ケーシングは、前記弁体の軸方向において前記弁体の外側から前記弁体の底部に摺接するとともに、前記底部を介して前記弁体を回転可能に支持する軸方向支持部を備えている。
【0008】
本態様によれば、ロータを回転可能に支持する軸方向支持部をケーシング自体が備えることで、別体のスラスト軸受等でロータを支持する構成に比べ、部品点数の削減を図ることができる。しかも、軸方向支持部によって弁体の底部を支持することで、例えばスラスト軸受用の段差面をロータの軸部に形成する場合に比べ、軸部の小径化を図ることができる。また、別体のスラスト軸受を保持する箇所をケーシングに設ける場合に比べ、ケーシングの小型化を図ることができる。その結果、制御バルブの小型化を図ることができる。
【0009】
上記態様において、前記軸方向支持部は、前記軸線回りの全周に亘って連続的に延びていることが好ましい。
本態様によれば、ケーシング内においてロータを安定して支持し易くなり、ロータの振れ回りや片当たり等を抑制できる。また、軸方向支持部とロータ(底部)との間を通じて、軸方向支持部よりも径方向の内側にコンタミ等が進入すること等を抑制できる。
【0010】
上記態様において、前記軸方向支持部は、前記軸線回りに間欠的に設けられていることが好ましい。
本態様によれば、軸方向支持部と底部との接触面積を低減させることができるので、軸方向支持部と底部との間の摩耗を抑制できる。
【0011】
上記態様において、前記ケーシングのうち、前記軸方向支持部に対して径方向の外側に位置する部分には、前記軸方向支持部に対して前記軸方向に窪んだ窪み部が形成されていることが好ましい。
本態様によれば、ケーシング内において、軸方向支持部に対して径方向の外側領域に流体の澱み領域を形成することができる。これにより、流体中に含まれるコンタミ等を軸方向支持部と底部との間に進入する前に捕捉することができる。その結果、軸方向支持部とロータ(底部)との間を通じてシール収容部内にコンタミ等が進入すること等を抑制できる。
【0012】
上記態様において、前記ケーシングは、前記流入口及び前記流出口が形成されたケーシング本体と、前記ケーシング本体のうち前記流入口の開口端面に接続された流入ジョイントと、を備え、前記軸方向支持部は、前記ケーシング本体に一体形成されていることが好ましい。
本態様によれば、例えばジョイント等に軸方向支持部を形成する場合に比べ、軸方向支持部の設計自由度を向上させることができる。これにより、所望の位置に所望の形状で軸方向支持部を形成することができ、ケーシング内においてロータを安定して支持し易くなる。
【0013】
上記態様において、前記ケーシングは、前記弁体の開口部を通じて前記内部空間内に進入するとともに、前記弁体の筒部を径方向の内側から回転可能に支持する径方向支持部を備えていることが好ましい。
本態様によれば、ロータを回転可能に支持する径方向支持部をケーシング自体が備えることで、従来のようにロータとケーシングとの間に滑り軸受を設ける構成等に比べ、部品点数の削減を図ることができる。しかも、径方向支持部によって弁体を径方向の内側から回転可能に支持することで、弁体を径方向の外側から回転可能に支持する構成に比べ、制御バルブについて特に径方向での小型化を図ることができる。
また、弁体を径方向の内側から支持することで、弁体を径方向の外側から支持する場合に比べ、径方向支持部と弁体の内周面との接触点から軸線までの径方向の距離を短くすることができる。その結果、弁体の内周面における周速を軽減し、径方向支持部と弁体の内周面との接触点での摩耗を抑制できる。また、接触点に作用するトルクを軽減することで、ロータを動作させる駆動ユニットの負荷を減らすことができるため、駆動ユニットを小さくできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、小型化や部品点数の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る冷却システムのブロック図である。
【
図3】実施形態に係る制御バルブの分解斜視図である。
【
図4】
図2のIV-IV線に対応する断面図である。
【
図6】変形例に係る制御バルブの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下で説明する実施形態や変形例において、対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。本実施形態において、「向かい合う」とは、2つの面それぞれの直交方向(法線方向)が互いに一致している場合に限らず、直交方向同士が交差している場合も含んでいる。
【0017】
[冷却システム1]
図1は、冷却システム1のブロック図である。
図1に示すように、冷却システム1は、例えば車両に搭載されている。本実施形態において、車両とは、車両駆動源としてエンジン(内燃機関)を有しているものに限らず、電動車両であってもよい。電動車両には、電気自動車やハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、燃料電池自動車等が含まれる。
【0018】
冷却システム1は、発熱部2と、放熱部3と、ウォータポンプ4(W/P)と、制御バルブ5(EWV)と、を備えている。冷却システム1では、ウォータポンプ4及び制御バルブ5が動作することで、発熱部2及び放熱部3間で冷却液が循環する。
【0019】
発熱部2は、冷却液による冷却対象(冷却液の吸熱対象)となる部品であって、車両の駆動源、その他の発熱部品である。電動車両の場合において、発熱部2には例えば駆動用モータやバッテリ、電力変換装置等が含まれる。
放熱部3は、冷却液の放熱対象となる部品である。本実施形態では、放熱部3として、ラジエータ8(RAD)と、ヒータコア9(HTR)と、を備えている。なお、放熱部3としては、通常動作時における温度が発熱部2を通過した後の冷却液の温度よりも低くなる部材であれば適宜選択可能である。このような部品として、放熱部3は、例えばEGRガスと冷却液との熱交換を行うEGRクーラや、潤滑油と冷却液との熱交換を行うヒートエクスチェンジャ等であってもよい。
【0020】
ウォータポンプ4、発熱部2及び制御バルブ5は、メイン流路10上で上流から下流にかけて順に接続されている。メイン流路10では、ウォータポンプ4の動作により冷却液が発熱部2及び制御バルブ5を順に通過する。
【0021】
メイン流路10には、ラジエータ流路11及び空調流路12がそれぞれ接続されている。
ラジエータ流路11には、ラジエータ8が設けられている。ラジエータ流路11は、ラジエータ8よりも上流に位置する部分において、制御バルブ5に接続されている。ラジエータ流路11は、ラジエータ8よりも下流に位置する部分において、発熱部2に接続されている。ラジエータ流路11では、ラジエータ8において、冷却液と外気との熱交換が行われる。
【0022】
空調流路12には、ヒータコア9が設けられている。空調流路12は、ヒータコア9よりも上流に位置する部分において、制御バルブ5に接続されている。空調流路12は、ヒータコア9よりも下流に位置する部分において、発熱部2に接続されている。ヒータコア9は、例えば空調装置のダクト(不図示)内に設けられている。空調流路12では、ヒータコア9において、冷却液とダクト内を流通する空調空気との熱交換が行われる。
【0023】
冷却システム1において、ウォータポンプ4の動作によって制御バルブ5内に流入した冷却液は、制御バルブ5の動作によって少なくとも何れかの放熱部3に対して選択的に供給される。放熱部3に供給される冷却液は、放熱部3を通過する過程で放熱部3との間で熱交換される。その結果、冷却液が放熱部3によって冷却される。放熱部3を通過した冷却液は、発熱部2に供給された後、発熱部2を通過する過程で発熱部2との間で熱交換される。これにより、冷却液によって発熱部2が冷却される。このように、冷却システム1では、発熱部2及び放熱部3間で冷却液を循環させる過程で、冷却液を放熱部3によって冷却しつつ、発熱部2を冷却液によって冷却する。これにより、冷却システム1では、発熱部2を所望の温度に制御することができる。
【0024】
<制御バルブ5>
図2は、制御バルブ5の斜視図である。
図3は、制御バルブ5の分解斜視図である。
図2、
図3に示すように、制御バルブ5は、ケーシング21と、駆動ユニット22と、ロータ23と、シール機構(第1シール機構24及び第2シール機構25)と、を備えている。
【0025】
<ケーシング21>
ケーシング21は、ケーシング本体31と、流入ジョイント32と、第1流出ジョイント33と、第2流出ジョイント34と、を備えている。
ケーシング本体31は、底壁部31a及び周壁部31bを有する有底筒状に形成されている。以下の説明では、ケーシング本体31の軸線O1に沿う方向を単に軸方向という。軸方向において、ケーシング本体31に対して流入ジョイント32側を第1側といい、第1側とは反対側を第2側という。また、軸方向から見て軸線O1に交差する方向を径方向といい、軸線O1回りの方向を周方向という。
【0026】
図4は、
図2のIV-IV線に対応する断面図である。
図4に示すように、底壁部31aは、周壁部31bから径方向の外側に張り出す大きさに形成されている。底壁部31aのうち、軸線O1上に位置する部分には、底壁部31aを軸方向に貫通する貫通孔31cが形成されている。
【0027】
ケーシング本体31において、周壁部31bには、流入口41及び複数の流出口(第1流出口42及び第2流出口43)が形成されている。
流入口41は、周壁部31bのうち軸方向の第1側を向く開口部である。
各流出口42,43は、周壁部31bを径方向に貫通している。各流出口42,43は、同一円周上(軸方向で同じ位置)で周方向に間隔をあけて形成されている。本実施形態において、各流出口42,43は、周方向で等間隔に形成されている。したがって、図示の例において、流入口41の開口方向と、流出口42,43の開口方向と、は互いに直交している。なお、流出口は、単数でもよく、3つ以上の複数であってもよい。流出口を複数設ける場合には、周方向で等間隔に設けることが好ましい。
【0028】
流入ジョイント32は、流入口41の開口端面に取り付けられている。流入ジョイント32は、メイン流路10と制御バルブ5との間を接続する。具体的に、流入ジョイント32は、ジョイント筒部32aと、フランジ部32bと、位置決め筒部32cと、径方向支持部32dと、を備えている。
【0029】
ジョイント筒部32aは、軸線O1と同軸に延びている。ジョイント筒部32aは、流入口41の開口端面に対して軸方向の第1側に突出した状態で配置されている。
フランジ部32bは、ジョイント筒部32aにおける軸方向の第2側端部から径方向の外側に張り出している。フランジ部32bは、流入口41の開口端面との間にパッキンを挟んだ状態で、ケーシング本体31にビス等により固定されている。なお、流入ジョイント32(フランジ部32b)は、流入口41の開口端面に溶着(例えば、振動溶着等)によって取り付けられていてもよい。
【0030】
位置決め筒部32cは、フランジ部32bから軸方向の第2側に向けて突出している。位置決め筒部32cは、軸線O1と同軸の筒状に形成されている。位置決め筒部32cは、流入口41(周壁部31b)内に挿入されている。位置決め筒部32cは、流入口41内において、流入口41の内周面に径方向の内側から近接又は当接した状態で配置されている。これにより、ケーシング本体31に対する流入ジョイント32の径方向の移動が規制されている。
【0031】
径方向支持部32dは、位置決め筒部32cから軸方向の第2側に向けて突出している。図示の例において、径方向支持部32dは、流出口42,43の一部と軸方向に重なる位置まで突出している。但し、径方向支持部32dにおける位置決め筒部32cからの突出量は、適宜変更が可能である。
【0032】
径方向支持部32dは、軸線O1と同軸の筒状に形成されている。すなわち、径方向支持部32dは、周方向の全周に亘って連続的に延びている。径方向支持部32dは、軸方向の第1側から第2側に向かうに従い内径が漸次拡大するテーパ状に形成されている。具体的に、径方向支持部32dの外径は、軸方向の全長に亘って一様に形成されている。本実施形態において、径方向支持部32dの外径は、ジョイント筒部32aの外径よりも大きく、位置決め筒部32cの外径よりも小さい。したがって、周壁部31bの内周面と径方向支持部32dの外周面との間には、径方向に隙間を有している。但し、径方向支持部32dの外径は、一様でなくてもよい。
【0033】
径方向支持部32dの内周面は、軸方向の第1側から第2側に向かうに従い径方向の外側に向けて延びる傾斜面32fに形成されている。本実施形態において、傾斜面32fは、位置決め筒部32cの内周面に至る範囲で連続的に形成されている。但し、傾斜面32fは、径方向支持部32dのみに形成されていてもよく、ジョイント筒部32aまで形成されていてもよい。また、径方向支持部32dの内径は、一様であってもよい。
【0034】
第1流出ジョイント33は、第1流出口42の開口端面に取り付けられている。第1流出ジョイント33は、例えばラジエータ8(ラジエータ流路11)と制御バルブ5との間を接続する。具体的に、第1流出ジョイント33は、ジョイント筒部51と、フランジ部52と、位置決め筒部53と、を備えている。
【0035】
ジョイント筒部51は、第1流出口42の開口端面に対して径方向の外側に突出した状態で配置されている。以下の説明において、ジョイント筒部51の軸線O2に沿う方向をジョイント軸方向といい、ジョイント軸方向から見てジョイント軸方向に交差する方向をジョイント径方向といい、軸線O2回りの方向をジョイント周方向という場合がある。
【0036】
ジョイント筒部51は、ジョイント軸方向の外側(ケーシング本体31から離間する向き)に向かうに従い径が縮小する多段筒状に形成されている。具体的に、ジョイント筒部51は、小径部55と、小径部55に対してジョイント軸方向の内側(ケーシング本体31に接近する向き)に連なる大径部56と、を備えている。
フランジ部52は、大径部56からジョイント径方向の外側に向けて張り出している。フランジ部52は、第1流出口42の開口端面との間にパッキンを挟んだ状態で、ケーシング本体31にビス等により固定されている。なお、第1流出ジョイント33(フランジ部52)は、第1流出口42の開口端面に溶着(例えば、振動溶着等)によって取り付けられていてもよい。
【0037】
位置決め筒部53は、フランジ部52の内周縁からジョイント軸方向の内側に向けて突出している。位置決め筒部53は、軸線O2と同軸の筒状に形成されている。位置決め筒部53の内径は、大径部56の内径と同等になっている。位置決め筒部53は、第1流出口42内に挿入されている。位置決め筒部53は、第1流出口42内において、第1流出口42の内周面にジョイント径方向の内側から近接又は当接した状態で配置されている。これにより、ケーシング本体31に対する第1流出ジョイント33のジョイント径方向の移動が規制されている。
【0038】
第2流出ジョイント34は、第2流出口43の開口端面に取り付けられている。第2流出ジョイント34は、例えばヒータコア9(空調流路12)と制御バルブ5との間を接続する。なお、第2流出ジョイント34は、第1流出ジョイント33と同様の構成である。したがって、第2流出ジョイント34のうち、第1流出ジョイント33に対応する構成について第1流出ジョイント33と同様の符号を付すことで、第2流出ジョイント34の説明を省略する。
【0039】
<駆動ユニット22>
駆動ユニット22は、底壁部31aに取り付けられている。駆動ユニット22は、図示しないモータや減速機構、制御基板等が収納されて構成されている。
【0040】
<ロータ23>
ロータ23は、ケーシング21内において軸線O1回りに回転可能に収容されている。ロータ23は、軸部23aと、弁体23bと、を備えている。
軸部23aは、軸線O1と同軸に配置されている。軸部23aは、貫通孔31cを通じて底壁部31aを貫通している。軸部23aにおける軸方向の第2側端部は、ケーシング21の外部において駆動ユニット22に連結されている。これにより、駆動ユニット22の動力が軸部23aを介してロータ23に伝達される。
【0041】
弁体23bは、軸方向の第1側に向けて開口するとともに、軸線O1と同軸に配置された有底筒状に形成されている。弁体23bのうち、底部61と筒部62とに囲まれた空間は、弁体23bの内部空間K1を構成している。すなわち、内部空間K1は、筒部62における軸方向の第1側を向く開口部を通じてケーシング21内に連通している。
【0042】
弁体23bの底部61は、軸部23aにおける軸方向の第1側端部から径方向の外側に張り出している。
弁体23bの筒部62は、底部61の外周縁から軸方向の第1側に延びている。筒部62は、流出口42,43よりも軸方向の第1側まで延びている。
【0043】
筒部62のうち、各流出口42,43と軸方向の同位置には、連通口62aが形成されている。連通口62aは、筒部62を径方向に貫通している。弁体23bは、連通口62aと、何れかの流出口42,43と、の少なくとも一部同士が径方向から見て重なり合う場合に、連通口62aを通じて何れかの流出口42,43と内部空間K1とを連通させる。本実施形態の連通口62aは、周方向に間隔をあけて2つ形成されている。図示の例において、軸線O1と各連通口62aそれぞれとを結ぶ直線がなす共役角のうち、劣角側の角度は90°よりも大きく、180°よりも小さくなっている。但し、連通口62aの数や隣り合う連通口62a同士の間隔等は適宜変更が可能である。
【0044】
ここで、ロータ23は、筒部62において径方向支持部32dに径方向の内側から支持され、底部61において軸方向支持部65に軸方向の第2側から支持された状態で、ケーシング21内で回転可能に収容されている。具体的に、径方向支持部32dは、筒部62における軸方向の第1側を向く開口部を通じて筒部62内に挿入されている。径方向支持部32dは、筒部62のうち軸方向の第1側端部において、筒部62の内周面に径方向の内側から近接又は当接している。これにより、径方向支持部32dは、ケーシング21に対するロータ23の径方向の移動を規制している。そして、径方向支持部32dは、ロータ23の回転に伴い、筒部62の内周面が摺動することでロータ23を回転可能に支持している。なお、径方向支持部32dにおける筒部62内への進入量は、適宜変更可能である。図示の例において、径方向支持部32dは、径方向から見て連通口62aと重ならず、かつシール機構24,25(後述する摺動リング71)の一部と重なり合う位置まで進入している。
【0045】
軸方向支持部65は、底壁部31aのうち軸方向から見て底部61と重なり合う部分から軸方向の第1側に向けて突出している。軸方向支持部65は、軸線O1と同軸に配置されるとともに、軸部23aの周囲を取り囲む筒状に形成されている。すなわち、軸方向支持部65は、周方向の全周に亘って連続的に延びている。
【0046】
軸方向支持部65のうち、軸方向の第1側端面は、軸方向に直交する平坦面に形成されている。軸方向支持部65は、底部61の外端面(軸方向の第2側を向く端面)に対して軸方向の第2側から近接又は当接している。これにより、軸方向支持部65は、ケーシング21に対するロータ23の軸方向の第2側への移動を規制している。そして、軸方向支持部65は、ロータ23の回転に伴い、底部61の外端面が摺動することでロータ23を回転可能に支持している。なお、軸方向支持部65は、底部61の外端面に対して外端面の外周部分で向かい合っていることが好ましい。図示の例において、軸方向支持部65は、底部61の半径を1:1に内分した箇所よりも径方向の外側であって、筒部62の内周面よりも径方向の内側に位置する部分で底部61の外端面に向かい合っている。
【0047】
底壁部31aのうち、軸方向支持部65に対して径方向の内側に位置する部分には、シール収容部66が形成されている。シール収容部66は、軸方向の第1側に向けて開口する凹部である。シール収容部66の底面上には、貫通孔31cが開口している。シール収容部66内には、リップシール67が嵌め込まれている。リップシール67は、断面視においてU字状に形成された環状の部材である。リップシール67は、シール収容部66内において、軸部23aの外周面とシール収容部66の内周面との間をシールしている。
【0048】
底壁部31aのうち、軸方向支持部65に対して径方向の外側に位置する部分には、窪み部68が形成されている。窪み部68は、冷却液の澱み領域を形成することで、冷却液中に含まれるコンタミ等を軸方向支持部65と底部61との間に進入する前に捕捉するためのものである。窪み部68は、軸方向支持部65に対して軸方向の第2側に窪み、かつ周方向の全周に亘って延びる溝状に形成されている。窪み部68の内面のうち、径方向の内側を向く面は、周壁部31bの内周面によって構成されている。一方、窪み部68の内面のうち、径方向の外側を向く面は、軸方向支持部65の外周面によって形成されている。
【0049】
<第1シール機構24及び第2シール機構25>
第1シール機構24は、第1流出ジョイント33と第1流出口42とで囲まれた部分に設けられて、第1流出ジョイント33及び弁体23b(筒部62)間をシールする。第2シール機構25は、第2流出ジョイント34と第2流出口43とで囲まれた部分に設けられて、第2流出ジョイント34及び弁体23b(筒部62)間をシールする。なお、各シール機構24,25は、何れも同様の構成であるため、第1シール機構24を例にして説明する。
【0050】
図5は、
図4のV-V線に対応する断面図である。
図5に示すように、第1シール機構24は、摺動リング71と、付勢部材72と、シールリング73と、を備えている。
摺動リング71は、第1流出口42内に挿入されている。摺動リング71は、軸線O2と同軸に延びるとともに、ジョイント軸方向の外側に向かうに従い径が縮小する多段筒状に形成されている。具体的に、摺動リング71は、大径部71aと、大径部71aからジョイント軸方向の外側に連なる小径部71bと、を備えている。
【0051】
大径部71aは、第1流出口42内において、第1流出口42の内周面にジョイント径方向の内側から近接又は当接した状態で配置されている。これにより、ケーシング本体31に対する摺動リング71のジョイント径方向の移動が規制されている。大径部71aにおけるジョイント軸方向の内側端面は、摺動面71cを構成している。摺動面71cは、軸方向から見て筒部62の外周面に倣って延びる円弧状に形成されている。摺動面71cは、ロータ23と摺動リング71との相対回転に伴い、筒部62の外周面上を摺動する。
【0052】
小径部71bの外周面は、大径部71aの外周面に対して段差面71dを介して連なっている。段差面71dは、ジョイント軸方向の内側に向かうに従いジョイント径方向の外側に傾斜した後、ジョイント径方向の外側にさらに延びている。したがって、小径部71bの外周面と、第1流出口42の内周面と、の間には、ジョイント径方向の隙間(以下、シール隙間Qという。)が設けられている。
一方、小径部71bの内周面は、大径部71aの内周面に滑らかに連なっている。小径部71bにおけるジョイント軸方向の外側端面(以下、座面71fという。)は、ジョイント軸方向に直交する平坦面に形成されている。座面71fは、ジョイント軸方向において第1流出口42の開口端面と同等の位置に配置されている。
【0053】
付勢部材72は、摺動リング71と第1流出ジョイント33との間に配置されている。付勢部材72は、例えばウェーブスプリングである。付勢部材72におけるジョイント軸方向の内側端部は、座面71fに当接している。付勢部材72におけるジョイント軸方向の外側端部は、第1流出ジョイント33のうち小径部55と大径部56との段差面に当接している。これにより、付勢部材72は、摺動リング71をジョイント軸方向の内側(筒部62の外周面)に向けて付勢している。
【0054】
シールリング73は、例えばYパッキンである。シールリング73は、開口部(二股部)をジョイント軸方向の内側に向けた状態で、摺動リング71(小径部71b)の周囲を取り囲んでいる。具体的に、シールリング73は、シール隙間Q内に配置された状態で、二股部の各先端部が小径部71bの外周面及び第1流出口42の内周面にそれぞれ密接している。シール隙間Q内において、シールリング73に対してジョイント軸方向の内側領域は、第1流出口42の内周面と摺動リング71との間を通じてケーシング21の液圧が導入される。この場合、段差面71dは、摺動リング71上で摺動面71cとジョイント軸方向で向かい合い、ケーシング21内の液圧を受けてジョイント軸方向の内側に押圧される受圧面を構成している。
【0055】
ところで、摺動リング71において、段差面71dの面積S1と、摺動面71cの面積S2とは、以下の式(1),(2)を満たすように設定されている。
S1<S2≦S1/k …(1)
α≦k<1 …(2)
k:摺動面71cと筒部62との間の微少隙間を流れる冷却液の圧力減少定数
α:冷却液の物性によって決まる圧力減少定数の下限値
なお、段差面71dの面積S1と摺動面71cの面積S2は、ジョイント軸方向に投影したときの面積を意味する。
【0056】
式(2)におけるαは、冷却液の種類や、使用環境(例えば、温度)等によって決まる圧力減少定数の標準値である。例えば、通常使用条件下において、水の場合にはα=1/2となる。使用する冷却液の物性が変化した場合には、α=1/3等に変化する。
また、式(2)における圧力減少定数kは、摺動面71cがジョイント径方向の外側端縁から内側端縁にかけて均一に筒部62に接しているときには、圧力減少定数の標準値であるα(例えば、1/2)となる。但し、摺動リング71の製造誤差や組付け誤差等によって、摺動面71cの外周部分と筒部62との間の隙間が摺動面71cの内周部分に対して僅かに増大することがある。この場合、式(2)における圧力減少定数kは、次第にk=1に近づくことになる。
【0057】
本実施形態では、摺動リング71の摺動面71cと筒部62の外周面との間に、摺動を許容するための微小な隙間があることを前提として、段差面71dと摺動面71cの各面積S1,S2の関係が式(1),(2)によって決められている。
すなわち、段差面71dには、ケーシング21内の冷却液の圧力がそのまま作用する。一方で、摺動面71cには、ケーシング21内の冷却液の圧力がそのまま作用しない。具体的に、冷却液の圧力は、摺動面71cと筒部62の間の微小な隙間を冷却液がジョイント径方向の外側端縁から内側端縁に向かって流れるときに圧力減少を伴いつつ作用する。このとき、冷却液の圧力は、ジョイント径方向の内側に向かって漸減しつつ、摺動リング71をジョイント軸方向の外側に押し上げようとする。
【0058】
その結果、段差面71dには、段差面71dの面積S1にケーシング21内の圧力Pを乗じた力がそのまま作用する。一方、摺動面71cには、摺動面71cの面積S2にケーシング21内の圧力Pと圧力減少定数kとを乗じた力が作用する。
【0059】
本実施形態の制御バルブ5は、式(1)からも明らかなようにk×S2≦S1が成り立つように面積S1,S2が設定されている。このため、P×k×S2≦P×S1の関係も成り立つ。
したがって、摺動リング71の段差面71dに作用する押し付け方向の力F1(F1=P×S1)は、摺動リング71の摺動面71cに作用する浮き上がり方向の力F2(F2=P×k×S2)以上に大きくなる。よって、本実施形態の制御バルブ5においては、ケーシング21内の冷却液の圧力の関係のみによっても、摺動リング71と筒部62との間をシールすることができる。
【0060】
一方、本実施形態では、段差面71dの面積S1が摺動面71cの面積S2よりも小さい。そのため、ケーシング21内の冷却液の圧力が大きくなっても、摺動面71cが過剰な力で筒部62に押し付けられるのを抑制できる。したがって、本実施形態の制御バルブ5を採用した場合には、ロータ23を回転駆動する駆動ユニット22の大型化及び高出力化を回避することができる上、径方向支持部32dや軸方向支持部65、摺動リング71の早期摩耗を抑制できる。
【0061】
このように、本実施形態では、摺動リング71に作用するジョイント軸方向の内側への押し付け力が、摺動リング71に作用するジョイント軸方向の外側への浮き上がり力を下回らない範囲で、摺動面71cの面積S2が段差面71dの面積S1よりも大きく設定されている。そのため、筒部62に対する摺動リング71の過剰な力での押し付けを抑制しつつ、摺動リング71と筒部62との間をシールできる。
【0062】
[制御バルブ5の動作方法]
次に、上述した制御バルブ5の動作方法を説明する。
図1に示すように、メイン流路10において、ウォータポンプ4により送り出される冷却液は、発熱部2で熱交換された後、制御バルブ5に向けて流通する。
図4に示すように、メイン流路10において発熱部2を通過した冷却液は、流入ジョイント32内を通じて内部空間K1内に流入する。なお、内部空間K1内に流入した冷却液は、連通口62aや、ロータ23と流入ジョイント32との隙間等を通じてケーシング本体31内の全域に満たされている。
【0063】
続いて、制御バルブ5において、冷却液の分配方法について説明する。
連通口62aと流出口42,43とが径方向から見て重なり合っていない場合、摺動リング71内を通じた内部空間K1と流出口42,43(流出ジョイント33,34)との連通は遮断されている(遮断状態)。遮断状態では、内部空間K1の冷却液が連通口62aを通じて流出口42,43内に流れることが規制されている。
【0064】
例えばラジエータ8に冷却液を供給したい場合には、連通口62aと第1流出口42とを連通させる。具体的には、駆動ユニット22を駆動させ、ロータ23を軸線O1回りに回転させる。この際、ロータ23は、筒部62の外周面上を摺動リング71(摺動面71c)が摺動しながら、軸線O1回りに回転する。そして、連通口62aと摺動リング71内との少なくとも一部が径方向から見て重なり合うことで、連通口62aと第1流出口42とが連通する(連通状態)。連通状態では、内部空間K1の冷却液が連通口62aを通じて流出する。内部空間K1から流出した冷却液は、摺動リング71内を通じて第1流出口42を通過することで、第1流出ジョイント33内を通ってラジエータ流路11に分配される。ラジエータ流路11に分配された冷却液は、ラジエータ8を通過した後、メイン流路10に戻され、再び制御バルブ5内に流入する。
【0065】
一方、ヒータコア9に冷却液を供給したい場合には、上述した方法と同様の方法によって連通口62aと第2流出口43とを連通させる。これにより、内部空間K1から流出した冷却液は、摺動リング71内を通じて第2流出口43を通過することで、第2流出ジョイント34内を通って空調流路12に分配される。
このように、本実施形態の制御バルブ5では、連通口62aを通じた内部空間K1と流出口42,43との連通及び遮断をロータ23の回転位置に応じて切り替える。これにより、所望の流路に対して冷却液を分配することができる。
【0066】
そして、本実施形態の制御バルブ5では、ケーシング21が、軸方向の第2側から弁体23bの底部61に摺接するとともに、底部61を介してロータ23を回転可能に支持する軸方向支持部65を備えている構成とした。
この構成によれば、ロータ23を回転可能に支持する軸方向支持部65をケーシング21自体が備えることで、別体のスラスト軸受等でロータ23を支持する構成に比べ、部品点数の削減を図ることができる。しかも、軸方向支持部65によって弁体23bの底部61を支持することで、例えばスラスト軸受用の段差面を軸部に形成する場合に比べ、軸部23aの小径化を図ることができる。また、別体のスラスト軸受を保持する箇所をケーシングに設ける場合に比べ、ケーシング21の小型化を図ることができる。その結果、制御バルブ5の小型化を図ることができる。また、軸部23aの小径化を図ることで、軸部23aとの摺動部(例えば、リップシール67や貫通孔31cの内周面)と、軸部23aと、の接触点から軸線O1までの径方向の距離を短くすることができる。その結果、軸部23aの外周面における周速を軽減し、軸部23aとの摺動部と軸部23aとの接触点での摩耗を抑制できる。また、接触点に作用するトルクを軽減することで、駆動ユニット22の負荷を減らすことができるため、駆動ユニット22を小さくできる。
【0067】
本実施形態の制御バルブ5では、軸方向支持部65が軸線O1回りの全周に亘って連続的に延びている構成とした。
この構成によれば、ケーシング21内においてロータ23を安定して支持し易くなり、ロータ23の振れ回りや片当たり等を抑制できる。また、軸方向支持部65とロータ23(底部61)との間を通じてシール収容部66内にコンタミ等が進入すること等を抑制できる。
【0068】
本実施形態の制御バルブ5では、ケーシング21のうち、軸方向支持部65に対して径方向の外側に位置する部分に、軸方向支持部65に対して軸方向に窪んだ窪み部68が形成されている構成とした。
この構成によれば、ケーシング21内において、軸方向支持部65に対して径方向の外側領域に冷却液の澱み領域を形成することができる。これにより、冷却液中に含まれるコンタミ等を軸方向支持部65と底部61との間に進入する前に捕捉することができる。その結果、軸方向支持部65とロータ23(底部61)との間を通じてシール収容部66内にコンタミ等が進入すること等を抑制できる。
【0069】
本実施形態の制御バルブ5では、軸方向支持部65がケーシング本体31に一体に形成されている構成とした。
この構成によれば、例えばジョイント等に軸方向支持部65を形成する場合に比べ、軸方向支持部65の設計自由度を向上させることができる。これにより、所望の位置に所望の形状で軸方向支持部65を形成することができ、ケーシング21内においてロータ23を安定して支持し易くなる。
【0070】
本実施形態の制御バルブ5では、ケーシング21が、弁体23bにおける軸方向の第1側を向く開口部を通じて内部空間K1内に進入するとともに、弁体23bを径方向の内側から回転可能に支持する径方向支持部32dを備えている構成とした。
この構成によれば、ロータ23を回転可能に支持する径方向支持部32dをケーシング21自体が備えることで、従来のようにロータとケーシングとの間に滑り軸受を設ける構成等に比べ、部品点数の削減を図ることができる。しかも、径方向支持部32dによってロータ23を径方向の内側から回転可能に支持することで、ロータを径方向の外側から回転可能に支持する構成に比べ、制御バルブ5について特に径方向での小型化を図ることができる。
また、ロータ23を径方向の内側から支持することで、ロータ23を径方向の外側から支持する場合に比べ、径方向支持部32dと筒部62の内周面との接触点から軸線O1までの径方向の距離を短くすることができる。その結果、筒部62の内周面における周速を軽減し、径方向支持部32dと筒部62の内周面との接触点での摩耗を抑制できる。また、接触点に作用するトルクを軽減することで、駆動ユニット22の負荷を減らすことができるため、駆動ユニット22を小さくできる。
【0071】
(変形例)
上述した実施形態では、軸方向支持部65が全周に亘って連続的に延びている構成について説明したが、この構成に限られない。
図6に示す制御バルブ5のように、軸方向支持部65が周方向に間欠的に設けられていてもよい。
この構成によれば、軸方向支持部65と底部61との接触面積を低減させることができるので、軸方向支持部65と底部61との間の摩耗を抑制できる。
【0072】
(その他の変形例)
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
例えば、上述した実施形態では、制御バルブ5が車両の冷却システム1に搭載された構成について説明したが、この構成のみに限らず、その他のシステムに搭載しても構わない。
上述した実施形態では、制御バルブ5に流入した冷却液を、ラジエータ流路11及び空調流路12に分配する構成について説明したが、この構成のみに限られない。制御バルブ5は、制御バルブ5内に流入する冷却液を複数の流路に分配する構成であれば構わない。
【0073】
上述した実施形態では、流入口41が軸方向を向き、流出口42,43が径方向を向く構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、流出口が軸方向を向き、流入口が径方向を向く構成や、流入口及び流出口の全てが軸方向又は径方向を向く構成であってもよい。
また、流入口又は流出口が径方向を向く構成について、流入口又は流出口は同一円周上に限らず、軸方向で異なる位置に設けられていてもよい。流入口又は流出口を周方向で不均等に配置する場合には、ケーシング21のうち流入口又は流出口と同一円周上に位置する部分にロータ23(筒部62)を支持するボス等が設けられていてもよい。この場合、同一円周上に配置される流入口、流出口又はボス同士が等間隔に配置されることで、ケーシング21内においてロータ23を安定して支持し易くなり、ロータ23の振れ回りや片当たり等を抑制できる。
【0074】
上述した実施形態では、ケーシング本体31(周壁部31b)の開口部を流入口41として機能させた構成について説明したが、この構成に限られない。ケーシング本体31の底壁部31aに流入口や流出口を形成してもよい。この場合、ロータ23の底部61に連通口が形成されていてもよい。
上述した実施形態では、流入口41が内部空間K1に常時連通する構成について説明したが、この構成に限られない。流入口41についても、ロータ23の回転に応じて内部空間K1との連通及び遮断が切り替えられる構成であってもよい。すなわち、本発明に係る制御バルブは、弁体に形成された連通口を通じて流入口及び流出口の少なくとも一方と内部空間との間の連通及び遮断が弁体の回転位置に応じて切り替えられる構成であればよい。
【0075】
上述した実施形態では、軸方向支持部65が底壁部31aから軸方向に突出する構成について説明したが、この構成に限られない。軸方向支持部をケーシング21の内面とした上で、ロータ23(例えば、底部61や筒部62)から軸方向支持部に向けて突出するとともに、軸方向支持部に摺動する突起部等を形成してもよい。
上述した実施形態では、シール機構を介してロータ23と流出口との間がシールされている構成について説明したが、この構成に限られない。例えばケーシング本体31の内周面とロータ23(筒部62)とが直接摺動することで、ケーシング本体31とロータ23との間がシールされていてもよい。
【0076】
上述した実施形態では、軸方向支持部65がケーシング本体31に一体形成された構成について説明したが、この構成に限られない。軸方向支持部65は、流入ジョイント32や流出ジョイント33,34に一体形成されていてもよい。
上述した実施形態では、径方向支持部32dがケーシング21に一体に形成される構成について説明したが、この構成に限られない。ロータ23を径方向で支持するために、ケーシング21とは別体の滑り軸受等が設けられていてもよい。
【0077】
上述した実施形態では、ロータ23(筒部62)及びケーシング21(周壁部31b)をそれぞれ円筒状(軸方向の全体に亘って一様な径)に形成した場合について説明したが、この構成に限られない。すなわち、筒部62が周壁部31b内を回転可能な構成であれば、筒部62の外径及び周壁部31bの内径を軸方向で変化させてもよい。この場合、筒部62及び周壁部31bは、例えば球状(軸方向の中央部から両端部に向かうに従い径が縮小する形状)や、球状が軸方向に複数連なった形状、テーパ状(軸方向の第1側から第2側にかけて漸次径が変化する形状)、階段状(軸方向の第1側から第2側にかけて段々と径が変化する形状)等、種々の形状を採用することが可能である。
【0078】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0079】
5:制御バルブ
21:ケーシング
23:ロータ
23b:弁体
31:ケーシング本体
32:流入ジョイント
32d:径方向支持部
41:流入口
42:第1流出口(流出口)
43:第2流出口(流出口)
61:底部
62:筒部
62a:連通口
65:軸方向支持部
68:窪み部
O1:軸線